説明

シフトレバー装置

【課題】本発明は、シフトレバーの抜け止めが確実になされるとともに、支持部材の精度管理を容易にすることができるシフトレバー装置を提供することを課題とする。
【解決手段】シフトレバー装置は、球状のピボット軸24が設けられるシフトレバーLと、ピボット軸24を回動自在に支持するベースプレート6を備えている。そして、ベースプレート6には、シフトレバーLを前後方向へ揺動自在に支持するシャフトSHが設けられるとともに、ピボット軸24には、シャフトSHが挿入され、かつ、シフトレバーLの左右方向への傾動を許容する異形孔24aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートマチックモードとマニュアルモードとを任意に切り替えることができるシフトレバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オートマチックモードとマニュアルモードとを任意に切替可能なシフトレバー装置として、シフトレバーに球状のピボット軸を設けることで、このピボット軸を中心にしてシフトレバーの前後方向への揺動や左右方向への傾動を行うことができるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この特許文献1に開示されたシフトレバー装置は、以下のような構造となっている。
【0003】
特許文献1に開示されたシフトレバー装置では、シフトレバーの球状のピボット軸は、その左側や右側の略半球面となった部分の略全体が、略半球状の凹部を有した2つの支持部材によって支持されている。また、これらの支持部材には、ピボット軸の左右の適所に外側へ突出するように形成される細径のピン部と係合する異形孔がそれぞれ形成されている。そして、これらの異形孔は、それぞれピボット軸側から外側へ向かうにつれて広がる形状に形成されるとともに、ピボット軸の中心点を基準に点対称となっており、これによりシフトレバーの左右方向の傾動範囲が規制されるようになっている。なお、このようなシフトレバー装置では、ピボット軸に形成される細径のピン部と各異形孔との係合部分のみをシフトレバーの抜け止めに利用するには強度上好ましくないので、ピボット軸の左右に2つの支持部材を設け、これらの支持部材の各凹部によってピボット軸を上から抑えるようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平2005−125811号公報(図4,5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した装置では、シフトレバーの抜け止めのための2つの支持部材を別々の筐体として設定することから、同軸・同芯等の精度出しが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、シフトレバーの抜け止めが確実になされるとともに、支持部材の精度出しを容易にすることができるシフトレバー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明は、シフトレバーの前後方向への揺動操作または左右方向への傾動操作の中心となる球状のピボット軸が設けられるシフトレバーと、前記ピボット軸を回動自在に支持するベースプレートとを備えたシフトレバー装置であって、前記ベースプレートに前記シフトレバーを前後方向へ揺動自在に支持する支持軸を設けるとともに、前記支持軸が挿入される異形孔を前記ピボット軸に設け、この異形孔が少なくとも、オートマチックモード時において前記支持軸に当接するオートマチック用内周壁と、マニュアルモード時において前記支持軸に当接するマニュアル用内周壁とによって形成されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、異形孔に通す支持軸がシフトレバーの抜け止めに寄与するので、支持軸の剛性を上げるだけでシフトレバーの抜け止めが確実になされることとなる。また、支持軸のみでシフトレバーの抜け止めを行うことができることにより、従来のように2つの支持部材の凹部でピボット軸の上側を抑える必要がなくなるため、ピボット軸を回動自在に支持する支持部材としてはピボット軸の下半分を支持する凹部を有するものを1つだけ設ければよい。そのため、本発明によれば、支持部材を1つにすることができるので、支持部材の精度出しを容易にすることができる。
【0009】
また、本発明では、前記異形孔が、オートマチックモード時において前記支持軸に当接する左右一対のオートマチック用内周壁と、マニュアルモード時において前記支持軸に当接する左右一対のマニュアル用内周壁とによって、前記ピボット軸の中心を基準にして点対称に形成されていてもよい。
これによれば、シフトレバーの左右方向の傾動操作の行き過ぎを、左右一対のオートマチック用内周壁またはマニュアル用内周壁によって抑えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支持軸の剛性を上げるだけでシフトレバーの抜け止めが確実になされるとともに、ピボット軸を支持する支持部材を1つにすることが可能となるので支持部材の精度管理を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は本実施形態に係るシフトレバー装置を示す斜視図であり、図2はシフトレバー装置を分解した状態を示す分解斜視図である。図3は、シフトレバーの傾動操作を示す図であり、オートマチックモード時のシフトレバーの状態を示す断面図(a)と、マニュアルモード時のシフトレバーの状態を示す断面図(b)である。
なお、図1〜図3の各図においては、右ハンドル車用として組み立てられるシフトレバー装置を示しており、その前後左右および上下方向は、車両に搭載したときの前後左右および上下方向とし、図中の矢印で示す方向とする。
【0012】
図1に示すように、シフトレバー装置Sは、シフトレバーLと、マニュアルスイッチ3と、ガイドプレート(ガイド部材)4と、オートマチック用揺動アーム5と、ベースプレート6を主に備えて構成されている。
【0013】
シフトレバーLは、図2に示すように、レバー上部構造体1と、レバーキャップ2とで構成されている。
レバー上部構造体1は、把持部11とロッド12を備えている。
把持部11は、運転者が把持する有底筒状の部材であり、その側壁には、ロッド12を把持部11に対して上下に相対移動させるためのボタン13が設けられている。
ロッド12は、上下に延びる棒状部材であり、その上端に形成される突起12aがボタン13に形成された斜めの溝13aに係合することで、ボタン13の押し動作に伴って上方に移動し、ボタン13が元に戻る動作に伴って下方に移動するようになっている。
【0014】
レバーキャップ2は、ロッド収容部21と、枠状部22と、ディテントプランジャ収容部23と、ピボット軸24を備えている。
【0015】
ロッド収容部21は、ロッド12が収容される円筒状の部位であり、その上端に把持部11が固定されるとともに、その下端に枠状部22が一体に形成されている。
枠状部22は、略四角い枠状に形成されており、その両端の開口を前後に向けた状態で配設されている。そして、枠状部22の上壁22aの下面(内面)には、ロッド12の下端部12bを下方へ突出または上方へ退避させるための孔(図示せず)と、下方へ突出する突起部22bが形成されている。なお、この突起部22bは、枠状部22の左側壁22cから所定間隔離れた位置に設けられており、これにより、図3(b)に示すように、マニュアルモード時において突起部22bと左側壁22cとの間で後記するガイドプレート4の左側壁42が所定の隙間を介して挟まれるようになっている。また、この突起部22bと左側壁22cとの間には、マニュアルモード時においてガイドプレート4の左側壁42の切り欠き部42a(図2参照)内に位置する所定厚さのストッパ壁22gが形成されており、このストッパ壁22gが切り欠き部42aの前後の端面と当接することによって前後方向へのマニュアル操作が所定範囲に規制されている。
【0016】
また、図2に示すように、枠状部22の左側壁22cの内面には、マニュアルスイッチ3と係合するスイッチ係合部22dが形成されている。さらに、枠状部22の下壁22eには、ディテントプランジャDPの移動を上下方向に規制するガイド筒22fが形成されている。
【0017】
ディテントプランジャ収容部23は、ディテントプランジャDPと、このディテントプランジャDPを常時ガイドプレート4の下面(ディテント溝7;図3参照)に押圧するスプリングSPが収容される有底円筒状の部位である。そして、このディテントプランジャ収容部23は、その上端が前記ガイド筒22fと同軸となるように枠状部22の下壁22eに一体に形成されるとともに、その下端にピボット軸24が一体に形成されている。
【0018】
ピボット軸24は、シフトレバーLの揺動・傾動中心となる部位であり、略球状に形成されている。また、このピボット軸24には、左右方向に貫通する異形孔24aが形成されており、この異形孔24aにベースプレート6に固定されるシャフト(支持軸)SHが挿入されることで、このシャフトSHを軸にシフトレバーLがベースプレート6に対して前後方向に揺動可能となっている。さらに、異形孔24aは、図3(a)に示すように、略球状のピボット軸24の中心点CPを基準に点対称となる形状となっており、これにより、シフトレバーLの左右方向への傾動が許容されるとともに、シフトレバーLのオートマチックモード位置またはマニュアルモード位置への左右方向の位置決めがなされるようになっている。すなわち、この異形孔24aは、シフトレバーLをマニュアルモードからオートマチックモード(右から左)へ切り替えたときにシャフトSHの左上に当たる水平上壁24bおよびシャフトSHの右下に当たる水平下壁24cと、オートマチックモードからマニュアルモードへ切り替えたときにシャフトSHの右上に当たる傾斜上壁24dおよびシャフトSHの左下に当たる傾斜下壁24eとによって形成されている。また、ピボット軸24は、後で詳述するベースプレート6に形成される中空半球状のレバー支持部62によってその外周面が支持されており、これによりシフトレバーLの支持剛性が高められるとともに、ピボット軸24の異形孔24aへのシャフトSHの取付作業も容易になっている。ここで、水平上壁24bおよび水平下壁24cが、特許請求の範囲にいう「左右一対のオートマチック用内周壁」に相当し、傾斜上壁24dおよび傾斜下壁24eが、特許請求の範囲にいう「左右一対のマニュアル用内周壁」に相当する。
【0019】
図2に示すように、マニュアルスイッチ3は、矩形状に形成されるスイッチ本体31と、その一面から突出するように設けられる一対のスイッチレバー32を備えている。そして、このマニュアルスイッチ3は、前記したレバーキャップ2の枠状部22内に配設されており、これにより、図3(b)に示すように、オートマチックモードからマニュアルモードへの切替時においてシフトレバーLを右に倒すと、一対のスイッチレバー32の間に枠状部22のスイッチ係合部22dが係合するようになっている。なお、このマニュアルスイッチ3は、そのスイッチレバー32がシフトレバーLによって中立位置から前方に押されるとギヤを一段上げる指令を図示せぬ制御装置に出力するとともに、スイッチレバー32が中立位置から後方に押されるとギヤを一段下げる指令を前記制御装置に出力するようになっている。
【0020】
図2に示すように、ガイドプレート4は、その上部に前後方向に延びるガイド溝41と、このガイド溝41を形成する左側壁42および右側壁43を備えている。そして、ガイド溝41は、レバーキャップ2の枠状部22の上壁22aから上下に進退するロッド12の下端部12bと係合することでシフトレバーLのオートマチック操作を前後方向に規制するように機能し、左側壁42は、前記した枠状部22の突起部22bと左側壁22cに挟まれることによって、シフトレバーLのマニュアル操作を前後方向に規制するように機能している。なお、右側壁43は、左ハンドル車におけるマニュアル操作の規制に寄与する。また、左側壁42および右側壁43の適所には、切り欠き部42a,43aが形成されており、これにより、シフトレバーLがこの切り欠き部42a,43aのところでのみ、左右に傾動可能となっている。
【0021】
また、ガイドプレート4は、マニュアルスイッチ3を支持する支持体としても機能しており、その中央部には、マニュアルスイッチ3を左向きおよび右向きの両方の向きで支持することができる支持孔44が左右方向に貫通するように形成されている。ここで、マニュアルスイッチ3の向きとは、スイッチレバー32が設けられている面の向きをいう。そして、本実施形態のような右ハンドル車においては、この支持孔44の右側から、マニュアルスイッチ3を左向きの状態で差し込んで取り付けることで、支持孔44の左側からスイッチレバー32が外部に臨むようになっている。
【0022】
さらに、ガイドプレート4の下面には、スプリングSPによって常時付勢されているディテントプランジャDPが係合するディテント溝7(図3参照)が形成されている。ここで、このディテント溝7は、前後方向に延びる中央溝71と、この中央溝71の左右両側に形成される左側溝72および右側溝73と、これらの溝71〜73を繋ぐように左右方向に延びる切替用溝(図示せず)とによって形成されている。なお、中央溝71は、オートマチックモード時においてディテントプランジャDPと係合することで運転者に適当な節度感を付与しながらシフトレバーLを所定のレンジに位置させるための波型形状の溝である。また、左側溝72または右側溝73は、右ハンドル車または左ハンドル車におけるマニュアルモード時においてディテントプランジャDPと係合する溝であり、切替用溝は、中央溝71から左側溝72または右側溝73へのディテントプランジャDPの移動やその逆方向への移動を許容するための溝である。
そして、以上のように構成されるガイドプレート4は、後で詳述するベースプレート6に固定されることで、レバーキャップ2の枠状部22内に配設されるようになっている。
【0023】
オートマチック用揺動アーム5は、長尺状の板体をクランク型に屈曲させた形状となるものであり、その略中央部がベースプレート6の適所に回動自在に固定されることで、前後方向に揺動自在な構造となっている。具体的に、このオートマチック用揺動アーム5は、略水平に配置される上壁部51と、この上壁部51の右端から下方へ向かって屈曲形成される側壁部52と、この側壁部52の下端から右方へ向かって屈曲形成される下壁部53と、この下壁部53の右端から一旦下方へ向かった後、再度上方へ折り返されるように屈曲形成される略コ字状のケーブル取付部54を備えている。
【0024】
上壁部51には、上面視略H型となる孔がその右側部分を外側に開口した状態で形成されており、これにより、その左右方向における略中央部に一対の係合部51a,51aが上壁部51の外縁から内側に向かって突出形成されるとともに、この係合部51a,51aの左右両側に一対の逃げ部51b,51cが形成されるようになっている。
係合部51a,51aは、前後方向で対向するように設けられており、オートマチックモード時においてシフトレバーL(詳しくは、レバーキャップ2のロッド収容部21)と前後方向で係合するようになっている。これにより、オートマチックモード時において、シフトレバーLとオートマチック用揺動アーム5とが一体に揺動するようになっている。
逃げ部51b,51cは、マニュアルモード時においてシフトレバーLのオートマチック用揺動アーム5に対する前後方向への相対移動を許容するためのものであり、前後方向に延びる所定長さの孔として形成されている。
【0025】
側壁部52には、その上端から略中央部にかけて逃げ孔52aが形成されている。これにより、左ハンドル車において左右に反転配置させるシフトレバーLの枠状部22の左側壁22cとオートマチック用揺動アーム5の側壁部52との干渉が防止されている。また、この側壁部52には、オートマチック用揺動アーム5の揺動中心として、ベースプレート6に固定される図示せぬピンに係合する揺動中心孔52bが形成されている。そして、この側壁部52の下端には、下壁部53を介してケーブル取付部54が、右側に所定量オフセットされた状態で配設されている。
【0026】
ケーブル取付部54は、自動変速機のギヤ段を切り替えるためのプッシュプルケーブル(図示せず)が取り付けられる部分であり、その適所に、プッシュプルケーブル取付用の取付孔54a,54aが形成されている。
そして、以上のようにオートマチック用揺動アーム5が構成されることによって、このオートマチック用揺動アーム5の係合部51a,51aとシフトレバーLが係合する際には、シフトレバーLとオートマチック用揺動アーム5が一体に揺動することによってプッシュプルケーブルが押し引きされて自動変速が実現されるようになっている。また、係合部51a,51aからシフトレバーLが外れて逃げ部51c(51b)に位置する際には、シフトレバーLがオートマチック用揺動アーム5に対して相対的に揺動することで、オートマチック用揺動アーム5が動かされないので、プッシュプルケーブルによる自動変速も実現されないようになっている。
【0027】
ベースプレート6は、前記したシフトレバーL、ガイドプレート4およびオートマチック用揺動アーム5を支持するための略板状の基台であり、その略中央部には、シフトレバーLとオートマチック用揺動アーム5が挿入される矩形の孔6aが形成されている。なお、この孔6aの下方には、図3(a)に示すように、ベースプレート6の板状部分61から一体に形成される中空半球状のレバー支持部62が形成され、このレバー支持部62によってシフトレバーLのピボット軸24が回動自在に支持されている。
【0028】
また、板状部分61の孔6aの前後両側には、ガイドプレート4を支持するための一対のガイドプレート支持部63,64が上方へ突出するように形成されている。具体的に、前側のガイドプレート支持部63の後面には、ガイドプレート4の前面に形成された矩形の突起部45を嵌合させるための矩形の穴(図示せず)が形成されている。また、後側のガイドプレート支持部64は、ガイドプレート4の後部を挟み込むような二股形状に形成され、その一対の先端部には、ガイドプレート4の後部に左右方向へ貫通するように形成された貫通孔4aに一致する貫通孔64a,64aが形成され、これらの孔4a,64a,64aにピンPNが挿入されることで、ガイドプレート4の後部が後側のガイドプレート支持部64に固定されるようになっている。
【0029】
次に、本実施形態に係るシフトレバー装置Sの右ハンドル車仕様としての組立方法とその操作方法を説明した後、シフトレバー装置Sの左ハンドル車仕様としての組立方法とその操作方法を説明する。
【0030】
まず最初に、シフトレバー装置Sの右ハンドル車仕様としての組立方法について説明する。
シフトレバー装置Sを右ハンドル車仕様として組み立てる際には、図2に示すように、まず、ベースプレート6の孔6aにシフトレバーLとオートマチック用揺動アーム5を挿入し、これらをそれぞれベースプレート6に対して揺動自在に固定させる。このとき、シフトレバーLは、そのボタン13の向きが運転席側(右側)を向くようにして配設する。
【0031】
次に、マニュアルスイッチ3をガイドプレート4の支持孔44に左向きに固定した後、このガイドプレート4をベースプレート6の後側のガイドプレート支持部64側からシフトレバーLの枠状部22内を通しつつ、前側のガイドプレート支持部63に取り付ける。その後、後側のガイドプレート支持部64とガイドプレート4をピンPNによって結合させる。以上により、シフトレバー装置Sの右ハンドル車仕様としての組立作業が完了する。なお、ディテントプランジャDPおよびスプリングSPは、ガイドプレート4をシフトレバーLの枠状部22内に挿入する前に、ディテントプランジャ収容部23に適宜設置させておけばよい。
【0032】
続いて、右ハンドル車仕様のシフトレバー装置Sの操作方法について説明する。
図1に示すように、オートマチックモード時においては、シフトレバーLを略鉛直方向に沿って起立させた状態とすることにより、シフトレバーLとオートマチック用揺動アーム5の係合部51a,51aが係合することで、シフトレバーLを前後方向に揺動操作すると、このシフトレバーLと一体となってオートマチック用揺動アーム5も揺動する。これにより、図示せぬプッシュプルケーブルが適宜押し引きされて自動変速が実現されることとなる。なお、このとき、図3(a)に示すように、ディテントプランジャDPがガイドプレート4の下面に形成されるオートマチック用のディテント溝7(中央溝71)に係合することで、シフトレバーLには好適な節度感が付与される。また、このとき、シフトレバーLのスイッチ係合部22dがマニュアルスイッチ3のスイッチレバー32から外れた状態となることにより、マニュアルスイッチ3からの信号によるギヤ段の切替は行われないようになっている。さらに、このとき、シフトレバーLのロッド12の下端部12bが枠状部22の上壁22aの下面から突出してガイドプレート4のガイド溝41と係合することで、シフトレバーLの左右方向への移動が規制されている。
【0033】
そして、オートマチックモードからマニュアルモードへ切り替える際には、シフトレバーLを前後方向の所定位置(ガイドプレート4の切り欠き部42a,43aの位置)へ移動させた後、右側(運転席側)に倒すことで、図3(b)に示すように、枠状部22の突起部22bと左側壁22cがガイドプレート4の左側壁42を挟むことが可能な位置に移動する。ここで、この位置へのシフトレバーLの位置決めは、ピボット軸24の傾斜上壁24dと傾斜下壁24eとがシャフトSHに当接することで確実に行われる。そして、その後マニュアル操作をすべく、シフトレバーLを前後動させると、枠状部22の突起部22bと左側壁22cがガイドプレート4の左側壁42を挟み込みつつ移動することで、シフトレバーLの左右方向への移動が規制されることとなる。なお、このとき、シフトレバーLのロッド12の下端部12bは、ガイドプレート4の切り欠き部43aの切り欠き幅の範囲で移動するため、ガイドプレート4の右側壁43とは干渉することなく移動することができる。
【0034】
また、シフトレバーLを前記したように右側に倒すと、シフトレバーLのスイッチ係合部22dがマニュアルスイッチ3のスイッチレバー32と係合することとなる。これにより、マニュアルスイッチ3からの信号によるギヤ段の切替が実行可能となり、マニュアル操作が実現されることとなる。なお、このとき、ディテントプランジャDPがガイドプレート4の下面に形成されるマニュアルモード用のディテント溝7(右側溝73)に係合するようになっている。また、このとき、シフトレバーLは、図1に示すオートマチック用揺動アーム5の右側の逃げ部51cに位置することにより、オートマチック用揺動アーム5が前後に動くことがないので、プッシュプルケーブルによる自動変速は行われないようになっている。なお、マニュアルモードから再度オートマチックモードへ切り替える際には、シフトレバーLを左側に倒すことで、ピボット軸24の水平上壁24bと水平下壁24cとがシャフトSHに当接して、シフトレバーLがオートマチックモードに対応した所定位置に位置決めされる。
【0035】
次に、シフトレバー装置Sの左ハンドル車仕様としての組立方法を説明する。
この組立方法は、基本的には、前記した右ハンドル車仕様のときの組立方法と同じであるが、シフトレバーLとマニュアルスイッチ3を左右に反転させて取り付ける点が異なる。すなわち、シフトレバーLとマニュアルスイッチ3を左右に反転させて取り付けるだけで、右ハンドル車仕様で用いた全ての部品を利用して、左ハンドル車仕様のシフトレバー装置Sが完成することとなる。
【0036】
続いて、左ハンドル車仕様のシフトレバー装置Sの操作方法について説明する。
この操作方法は、右ハンドル車仕様のシフトレバー装置Sの操作方法を左右逆にしただけである。すなわち、簡単に説明すると、オートマチックモード時においては、図4に示すように、シフトレバーLとオートマチック用揺動アーム5の係合部51a,51aが係合して、オートマチック操作が実行可能となる。また、マニュアルモード時においては、図5(a)および(b)に示すように、シフトレバーLを左側(運転席側)に倒すことで、シフトレバーLのスイッチ係合部22dがマニュアルスイッチ3のスイッチレバー32と係合して、マニュアル操作が実行可能となる。なお、このマニュアルモード時においては、シフトレバーLは、オートマチック用揺動アーム5の左側の逃げ部51b(図4参照)に位置し、ディテントプランジャDPは、ガイドプレート4の下面に形成されるマニュアルモード用のディテント溝7(左側溝72)に係合するようになっている。また、左ハンドル車仕様としてシフトレバーLを左右に反転させた場合であっても、右ハンドル車仕様のときと同様に、ピボット軸24の傾斜上壁24dと傾斜下壁24eとがシャフトSHに当接することでシフトレバーLがマニュアルモードに対応する位置に位置決めされ、ピボット軸24の水平上壁24bと水平下壁24cとがシャフトSHに当接することでシフトレバーLがオートマチックモードに対応する位置に位置決めされる。
【0037】
以上によれば、本実施形態において、以下のような効果を得ることができる。
異形孔24aに通すシャフトSHがシフトレバーLの抜け止めに寄与するので、シャフトSHの剛性を上げるだけでシフトレバーLの抜け止めが確実になされることとなる。また、このようにシャフトSHのみで抜け止めを行うことにより、従来のように2つの支持部材の凹部でピボット軸の上側を抑える必要がなくなるため、ピボット軸24を回動自在に支持する支持部材としては、ピボット軸24の約下半分を支持するレバー支持部62を1つだけ形成すれば済む。したがって、従来のように2つの支持部材を別々の筐体として設定する必要がなくなるので、支持部材(レバー支持部62)の精度出しが容易になる。
シフトレバーLの左右方向への傾動範囲が、異形孔24aによって決められるので、その他のストッパ部材を設けずに済み、コストダウンを図ることができる。なお、従来のようにピボット軸の外側にピンを設け、このピンを左右両側の異形孔に係合させることでも、シフトレバーの傾動範囲は規制できるが、このように球状のピボット軸の外側にピンを設ける構造に比べ、本実施形態のようなピボット軸に異形孔を開けるだけの構造の方が簡単に製造することができるというメリットもある。さらには、従来のような2つの支持部材のそれぞれに異形孔を形成する構造に比べ、1つの部材(ピボット軸)に異形孔を形成する本実施形態の構造の方が、異形孔の精度を向上させることができる。
【0038】
シフトレバーL、マニュアルスイッチ3、ガイドプレート4、オートマチック用揺動アーム5、ベースプレート6などのシフトレバー装置Sを構成する全ての部品を右ハンドル車および左ハンドル車のどちらにおいても共用できる共用部品とすることができるので、部品点数を少なくすることができる。
ガイドプレート4に形成されるシフトレバーLのマニュアル操作方向を規制するための手段が、オートマチック操作方向を規制するガイド溝41を形成する側壁42,43であるため、例えばガイドプレートにシフトレバーのオートマチック操作とマニュアル操作を規制する3列のガイド溝を設ける場合に比べ、左右方向の幅を小型化することができる。
【0039】
枠状部22の下壁22eからディテントプランジャDPを進退自在に設けるとともに、
ガイドプレート4の下面に3列のディテント溝7を設ける構造であるため、ディテント機構を別個用意する構造(例えば、本実施形態におけるシフトレバーの下端にディテントプランジャを設け、その下方にディテント溝を有する構造体を設ける構造)に比べ、装置全体を小型化することができる。
【0040】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、異形孔24aを、マニュアルモード時にシャフトSHに当接する傾斜上壁24dおよび傾斜下壁24eと、オートマチックモード時にシャフトSHに当接する水平上壁24bおよび水平下壁24cとによって形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、異形孔24aを形成する各壁24b〜24eを各モードのいずれにおいてもシャフトSHと当接しないように大きめに形成し、シフトレバーLの左右方向への傾動は、別途異なるストッパ部材によって規制するようにしてもよい。
前記実施形態では、シフトレバーLの中間位置(上下端の間の位置)に枠状部22を設けるようにしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、シフトレバーLの下端に枠状部22を設け、シフトレバーLの中間位置にピボット軸24を設けるようにしてもよい。また、前記実施形態では、レバーキャップ2に枠状部22を一体に形成したが、本発明はこれに限定されず、別体としてもよい。
【0041】
前記実施形態では、シフトレバーLの操作方向をガイドプレート4のガイド溝41、側壁42,43、切り欠き部42a,43aで規制するようにしたが、本発明はこれに限定されず、例えばディテント溝7のみでシフトレバーの操作方向を規制してもよい。
前記実施形態では、シフトレバーLを左右に反転させることで右ハンドル車や左ハンドル車に対応するようにしたが、シフトレバーLを左右対称構造(例えばボタン13の位置が把持部11の上面にある構造)とすることで反転させないようにしてもよい。さらに、マニュアルスイッチ3についても、スイッチレバー32を左右両側に設けることによって反転させないようにしてもよい。
【0042】
前記実施形態では、マニュアルスイッチ3を支持する支持体としてガイドプレート4を用いたが、本発明はこれに限定されず、ガイドプレート4とは別の部品を用いてもよい。
前記実施形態では、オートマチック操作を規制する中央ガイド部としてロッド12の下端部12bと係合するガイド溝41を採用したが、本発明はこれに限定されず、中央ガイド部をガイド壁とし、かつ、ロッド12の下端部12bを溝状に形成してもよい。
【0043】
前記実施形態では、シフトレバーLを運転席側に倒すことでマニュアルモードに切り替える態様としたが、本発明はこれに限定されず、助手席側に倒すことでマニュアルモードに切り替える態様としてもよい。
前記実施形態では、ガイドプレート4にマニュアルスイッチ3を取り付けるための支持孔44を形成したが、本発明はこれに限定されず、例えばガイドプレート4の両側壁にスイッチ取付用の凹部をそれぞれ形成するようにして、各凹部にマニュアルスイッチ3を取り付けるようにしてもよい。ただし、支持孔44を採用した場合には、ガイドプレート4とマニュアルスイッチ3を略同じ幅に形成してもマニュアルスイッチ3のスイッチレバー32以外の部分がガイドプレート4の側面から突出しないので、これらガイドプレート4とマニュアルスイッチ3の結合体全体の幅を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態に係るシフトレバー装置を示す斜視図である。
【図2】シフトレバー装置を分解した状態を示す分解斜視図である。
【図3】シフトレバーの傾動操作を示す図であり、オートマチックモード時のシフトレバーの状態を示す断面図(a)と、マニュアルモード時のシフトレバーの状態を示す断面図(b)である。
【図4】左ハンドル車仕様のシフトレバー装置を示す斜視図である。
【図5】図4のシフトレバーの傾動操作を示す図であり、オートマチックモード時のシフトレバーの状態を示す断面図(a)と、マニュアルモード時のシフトレバーの状態を示す断面図(b)である。
【符号の説明】
【0045】
1 レバー上部構造体
2 レバーキャップ
3 マニュアルスイッチ
4 ガイドプレート
5 オートマチック用揺動アーム
6 ベースプレート
24 ピボット軸
24a 異形孔
24b 水平上壁(オートマチック用内周壁)
24c 水平下壁(オートマチック用内周壁)
24d 傾斜上壁(マニュアル用内周壁)
24e 傾斜下壁(マニュアル用内周壁)
DP ディテントプランジャ
L シフトレバー
S シフトレバー装置
SP スプリング
SH シャフト(支持軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトレバーの前後方向への揺動操作または左右方向への傾動操作の中心となる球状のピボット軸が設けられるシフトレバーと、
前記ピボット軸を回動自在に支持するベースプレートとを備えたシフトレバー装置であって、
前記ベースプレートに前記シフトレバーを前後方向へ揺動自在に支持する支持軸を設けるとともに、
前記ピボット軸に、前記支持軸が挿入され、かつ、前記シフトレバーの左右方向への傾動を許容する異形孔を設けた特徴とするシフトレバー装置。
【請求項2】
前記異形孔は、オートマチックモード時において前記支持軸に当接する左右一対のオートマチック用内周壁と、マニュアルモード時において前記支持軸に当接する左右一対のマニュアル用内周壁とによって、前記ピボット軸の中心を基準にして点対称に形成されることを特徴とするシフトレバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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