シフトレバー装置
【課題】動作信頼性を高く維持しながら小型化を実現して車両搭載性を向上したバイワイヤ式のシフトレバー装置を提供すること。
【解決手段】シフトレバー装置1は、X軸方向の操作に応じてシフトレバー21と一体をなして回動すると共に、その回動動作の中心をなす回動軸12の回りを回動するように配設されたマグネット230を含むレバーブロック2と、このレバーブロック2を回動可能な状態で支持するベースブロック3と、マグネット230が発生する磁気を検知可能なようにベースブロック3に配設された磁気センサ11と、を備え、マグネット230は、X軸方向におけるシフトレバー21の操作位置に関わらず極方向が回動軸12に向かうように配設され、磁気センサ11は、マグネット230の先端面に包含され得る大きさの磁気検知部を有すると共に、回動軸12よりもマグネット230の回動軌跡に近づけて配置されている。
【解決手段】シフトレバー装置1は、X軸方向の操作に応じてシフトレバー21と一体をなして回動すると共に、その回動動作の中心をなす回動軸12の回りを回動するように配設されたマグネット230を含むレバーブロック2と、このレバーブロック2を回動可能な状態で支持するベースブロック3と、マグネット230が発生する磁気を検知可能なようにベースブロック3に配設された磁気センサ11と、を備え、マグネット230は、X軸方向におけるシフトレバー21の操作位置に関わらず極方向が回動軸12に向かうように配設され、磁気センサ11は、マグネット230の先端面に包含され得る大きさの磁気検知部を有すると共に、回動軸12よりもマグネット230の回動軌跡に近づけて配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシフトレンジを選択するために車載される装置であって、シフトレバーの操作に応じた電気信号を出力するシフトレバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のシフトレバー装置には、機械的なリンク機構を採用したシフトチェンジ手段が用いられてきた。近年、車載機器の電子化の要請に対応できるよう、シフトレバーの操作を電気的に検出するシフトレバー装置が提案されている。このシフトレバー装置は、検出したシフトレバーの操作を電気信号に変換して出力する。
【0003】
上記のようなシフトレバー装置は、その出力信号に応じてアクチュエータを駆動することでシフトチェンジを実現可能な、いわゆるバイワイヤ式のシフトレバー装置と呼ばれている。バイワイヤ式のシフトレバー装置では、運転席とエンジンルームとの間に複雑なリンク機構を配設する必要がなく電気配線を敷設するだけで良い。このようなシフトレバー装置を採用すれば、車両におけるシフト操作機構の設計自由度や設置自由度等を格段に向上できる。
【0004】
バイワイヤ式のシフトレバー装置としては、シフトレバーの回動動作の中心をなす回動軸を超えてシフトレバーと同軸をなすように延設されたガイドロッドと、ガイドロッドの先端に配設されたマグネット部材と、マグネット部材と対面するように配置された磁気センサと、を備えた装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このシフトレバー装置では、ガイドロッドの変位を検知することでシフトレバーの操作を検出している。
【0005】
しかしながら、前記従来のシフトレバー装置では、次のような問題がある。すなわち、シフトレバーの軸方向における回動軸を超えた位置に磁気センサが配置されているので、前記軸方向に装置寸法が大きくなるおそれがあり、小型化を実現し難くなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−223384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、動作信頼性を高く維持しながら小型化を実現して車両搭載性を向上したシフトレバー装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両のシフトレンジを選択するために操作されるシフトレバーを含むシフトレバー装置であって、
前記シフトレバーの基部をなし、所定の第1方向の操作に応じて前記シフトレバーと一体をなして回動すると共に、その回動動作の中心をなす回動軸の回りを回動するように配設されたマグネットを含むレバーブロックと、
該レバーブロックを回動可能な状態で支持するベースブロックと、
磁気を検知する磁気検知部を含み、前記マグネットが発生する磁気のうち少なくとも前記第1方向が属する平面内の磁気の作用方向を検出可能なように前記ベースブロックに配設された磁気センサと、を備え、
前記マグネットは、前記第1方向における前記シフトレバーの操作位置に関わらず極方向が前記回動軸に向かうように配設されており、
前記磁気センサは、前記マグネットの先端面の大きさと比較した場合に当該先端面の内側に包含され得る大きさの前記磁気検知部を有していると共に、
前記回動軸よりも前記マグネットの回動軌跡に近づけて配置されていることを特徴とするシフトレバー装置にある(請求項1)。
【0009】
本発明のシフトレバー装置が備えるマグネットは、前記極方向が前記回動軸に向かう状態を維持しながら、前記回動軸を中心として回動するように配設されている。前記シフトレバーが前記第1方向に操作されると、前記マグネットが前記磁気センサの外周側を回動し、前記磁気検知部に対する磁気の作用方向が変化することになる。前記第1方向が属する平面内において前記磁気センサが検出する磁気の作用方向に基づけば、前記シフトレバーの前記第1方向の操作を検出可能である。
【0010】
本発明のシフトレバー装置では、前記回動軸よりも前記マグネットの回動軌跡に近づけて(オフセットして)前記磁気センサが配置されている。この場合には、前記回動軸を超えて前記シフトレバーの反対側に前記磁気センサを配置する場合と比べて、前記シフトレバーの軸方向の寸法を抑制することができる。前記シフトレバーの軸方向の寸法を抑制できれば、前記シフトレバー装置の小型化を実現でき、車両搭載性を向上できる。
【0011】
前記マグネットの周辺磁界では、前記極方向に直線的に伸びる磁力線を中心とし、この中心の磁力線からずれた磁力線が外側に湾曲している。中心の磁力線からのずれが大きくなればなるほど、湾曲の度合いが大きくなっている。本発明では、前記マグネットの回動軸よりも前記マグネット側に近づけて前記磁気センサを配置することにより上記のような磁力線の湾曲を有用に活用し、以下に説明するごとく良好な検出特性を実現している。
【0012】
本発明のシフトレバー装置では、例えば、前記回動軸と前記磁気検知部とを結ぶ直線上に前記マグネットが位置したとき(以下、基準位置という。)、前記極方向に向けて直線的に伸びる中心の磁力線が前記磁気検知部に作用する。前記マグネットが回動して基準位置からずれると、中心の磁力線が前記回動軸に向かう一方、前記磁気検知部に対しては湾曲する磁力線が作用するようになる。この湾曲した磁力線の作用方向の傾きは、前記マグネットの回動角、すなわち前記シフトレバーの操作角(レバー角)に一致する前記中心の磁力線の作用方向の傾きよりも大きくなっている。すなわち、前記磁気センサでは、レバー角を増幅した角度(センサ検出角)が磁気の作用方向として検出されることになる。
【0013】
本発明のシフトレバー装置では、前記レバー角が増幅された角度をもって傾く磁力線が前記磁気検知部に作用することになる。そして、前記マグネットの回動位置が前記基準位置からずれるほど、前記中心の磁力線からずれて湾曲度合いが大きい磁力線が前記磁気検知部に作用し、上記のような増幅の度合いが拡大することになる。
【0014】
このように本発明では、前記磁気センサを前記回動軌跡に近づけて配置したことで、前記レバー角の変化に応じたセンサ検出角の変化量が拡大されている。すなわち、前記第1方向の異なる操作位置の間で、センサ検出角の変化量が拡大されている。そのため、前記第1方向の特定の操作位置を検出するに当たって、他の操作位置との区別が容易となり、信頼性が高い安定した検出を実現できるようになっている。
【0015】
ここで、仮に、前記マグネットの前記回動軸側の端面である前記先端面よりも前記磁気検知部が大きい場合には、該磁気検知部の位置に応じて、前記マグネットから作用する磁気の作用方向が大きくばらつくようになる。特に、本発明では、上記のごとく中心の磁力線からずれた湾曲した磁力線を積極的に利用しているため、前記磁気検知部の位置の違いによる磁気の作用方向のばらつきが一層顕著になるおそれがある。そこで、本発明では、前記磁気検知部の大きさを、前記マグネットの先端面に包含され得る大きさ、すなわち前記先端面よりも小さい大きさに設定してある。このように前記マグネットの先端面よりも小さい磁気検知部であれば、磁気の作用方向のばらつきを抑制でき、高精度な検出が可能となる。
【0016】
以上のように、本発明のシフトレバー装置は、前記磁気検知部の大きさや前記磁気センサの配置等を工夫することで前記シフトレバーの軸方向のサイズを抑制して小型化を実現すると共に、前記シフトレバーの操作位置の検出精度を高めた優れた特性の装置である。
【0017】
本発明における回動軸とは、前記第1方向に前記シフトレバーが操作されたときの回動動作の仮想中心をなす軸である。この回動軸の回りを前記マグネットが回動する際、該マグネットの回動平面と前記シフトレバーの回動平面とが同一平面であっても良いし異なる平面であっても良い。これらの回動平面は、互いに平行をなしていれば良い。さらに、前記マグネットの極方向が回動軸に向かっているとは、軸方向の長さに制限のない前記回動軸に対して前記極方向が交わることを意味している。
【0018】
また、前記レバーブロックと前記ベースブロックとは、前記回動軸と同軸をなすと共に前記軸方向に2分割された一対のシフト軸を介して連結されており、
前記マグネットは、前記一対のシフト軸の軸方向の間隙であるセンサ空間に対面するように配置されており、
前記ベースブロックは、前記センサ空間において前記回動軸を超えて前記シフトレバー側に突出するように形成された台座を有し、当該台座に前記磁気センサを保持していることが好ましい(請求項2)。
この場合には、前記回動軸と前記シフトレバーとの間隙の空間、すなわち前記シフトレバー装置の内部側に位置する前記センサ空間に前記磁気センサが配置されるようになる。前記センサ空間に前記磁気センサを配置すれば、外部から作用するおそれがある磁気的なノイズ等の影響を抑制できる。磁気的なノイズの影響を抑制するために必要となる構成を簡略化できるため、小型化を実現し易くなる。
【0019】
また、前記ベースブロックは、前記台座が設けられた基台と、前記第1方向に直交する第2方向における前記シフトレバーの操作に応じて回動可能な状態で前記基台に支持された揺動台と、を有し、
前記揺動台は、前記一対のシフト軸を介して前記レバーブロックを支持しており、
前記基台と前記揺動台とは、前記回動軸と直交すると共に前記センサ空間を介在して軸方向に2分割された一対のセレクト軸を介して連結されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、前記第1方向のほか、前記第2方向にも前記シフトレバーを操作できるようになる。
【0020】
また、前記磁気センサは、相互の直交する3方向の磁気成分を計測可能であることが好ましい(請求項4)。
この場合には、前記磁気検知部に対する磁気の作用方向を3次元的に検出できるようになる。磁気の作用方向を3次元的に検出できれば、前記第1方向と前記第2方向とを組み合わせた前記シフトレバーの2次元的な操作を検出できるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のシフトレバー装置は、小型化を実現して車両搭載性を向上したうえ、さらに動作信頼性を向上した優れた特性のシフトレバー装置を提供しようとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1における、シフトレバー装置を示す斜視図。
【図2】実施例1における、シフトレバー装置の構造を示す断面図。
【図3】実施例1における、シフトレバー装置の構造を示す断面図。
【図4】実施例1における、シフトレバー装置の構造を示す断面図。
【図5】実施例1における、磁気センサの検出原理を説明する説明図。
【図6】実施例1における、X軸(Y軸)方向の磁気成分が磁気センサに作用する様子を示す説明図。
【図7】実施例1における、XZ平面内のセンサ検出角θshを説明する説明図。
【図8】実施例1における、YZ平面内のセンサ検出角θslを説明する説明図。
【図9】実施例1における、磁気センサに作用する磁界を示す説明図。
【図10】実施例1における、磁気センサに作用する磁界を示す説明図。
【図11】実施例1における、磁気センサに作用する磁界を示す説明図。
【図12】実施例1における、レバー角(マグネットの回動角)とセンサ検出角との関係を示すグラフ。
【図13】実施例1における、センサ位置比と増幅率との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例)
本例は、車両のシフトレンジを選択するために操作されるシフトレバー21を含むシフトレバー装置1に関する例である。この内容について、図1〜図13を用いて説明する。
本例のシフトレバー装置1は、図1及び図2に示すごとく、シフトレバー21の基部をなし、所定の第1方向(以下、X軸方向)の操作に応じてシフトレバー21と一体的に回動すると共に、その回動動作の仮想中心をなす回動軸12の回りを回動するように配設されたマグネット230を含むレバーブロック2と、このレバーブロック2を回動可能な状態で支持するベースブロック3と、磁気を検知する磁気検知部110(図5)を含み、マグネット230が発生する磁気を検出可能なようにベースブロック3に配設された磁気センサ11と、を備えている。
【0024】
シフトレバー装置1におけるマグネット230は、X軸方向におけるシフトレバー21の操作位置に関わらず極方向が回動軸12に向かうように配設されている。
磁気センサ11は、マグネット230の先端面231の大きさと比較した場合に、その先端面231の内側に包含され得る大きさの磁気検知部110(図5)を有している。さらに、磁気センサ11は、回動軸12よりもマグネット230の回動軌跡に近づけて配置されている。
以下、この内容について、詳しく説明する。
【0025】
シフトレバー装置1は、図1に示すごとく、運転者がシフトレバー21を操作可能なように、車両の運転席と助手席との間のセンターコンソールや、運転者に対面するダッシュパネル等に設置される装置である。本例のシフトレバー装置1は、互いに略直交するX軸方向(第1方向)及びY軸方向(第2方向)にシフトレバー21を操作可能なゲート式のシフトレバー装置である。X軸方向は、運転者から見て前後方向の操作方向であり、Y軸方向は、左右方向の操作方向である。
【0026】
シフトレバー装置1では、図1に示すごとく、X軸方向の操作方向が3列設定されており、Y軸方向にシフトレバー21を操作することでX軸方向の列を切り換え可能である。本例のシフトレバー装置1では、ゲート150が十字に交差する中央位置がホームポジション151(Hポジション)となっている。シフトレバー21は、常時、Hポジション151に向けて付勢されている。
【0027】
例えば、Hポジション151に位置するシフトレバー21(図2参照。)を右側(Y軸方向)に操作した後に手前(X軸方向)に引くように操作すればDポジジョンに操作できDレンジを選択できる(図3参照)。その後、運転者がシフトレバー21から手を離すと、Dレンジが選択された状態が維持されたまま、シフトレバー21がHポジション151に復帰する。また、例えば、Dレンジが選択されているときに、Hポジション151のシフトレバー21を手前に引けば−ポジションに操作できギアを一段下げることができる。さらに、例えば、Dレンジが選択されているときに、Hポジション151のシフトレバー21を左側に倒してNポジションに操作し、所定時間保持すればNレンジを選択できる(図1及び図4参照)。さらに、奥側に押し込んでRポジションに操作して所定時間保持すればRレンジを選択できる。なお、シフトレバー21の操作パターンは、本例には限定されない。本例のシフトレバー装置1における操作位置の検出方法を採用すれば、前後左右あらゆる方向の操作に対応可能である。
【0028】
シフトレバー装置1は、図1及び図2に示すごとく、シフトレバー21が固定されたレバーブロック2と、X軸方向に回動可能な状態でレバーブロック2を軸支するベースブロック3と、を、保護カバー15に収めた装置である。ベースブロック3は、装置の底面をなす基台31と、セレクト軸30を介して基台31に軸支された揺動台32と、よりなる。レバーブロック2は、シフト軸20を介して揺動台32に軸支されている。保護カバー15の上面には、シフトレバー21の移動経路をなすゲート150が設けられている。各シフト位置には、D、Rなどのシフトレンジを表す記号が表示されている。
【0029】
基台31は、図1及び図2に示すごとく、装置の底部をなす部分である。矩形状を呈する底面の中央部分には、高さ方向に突出する台座部312が設けられている。台座部312の上面には、磁気センサ11が実装されたセンサ基板10が固定されている。基台31の4隅には、保護カバー15を取り付けるためのビス孔318が穿孔されている。基台31の外周部には、台座部312を介して相互に対面する一対の支持片311が立設されている。一対の支持片311には、それぞれ、セレクト軸30を貫通配置させるための軸孔が穿孔されている。
【0030】
揺動台32は、図1及び図2に示すごとく、略矩形環状を呈する一定厚さの部材である。互いに反対側に面する2組の側面のうち、基台31の支持片311に対面する1組の側面には、外側に突出する台座321がそれぞれ設けられている。台座321の端面は、支持片311の軸孔に貫通配置されたセレクト軸30が立設固定される面である。他方の1組の側面には、シフト軸20が立設されている。シフト軸20及びセレクト軸30は、揺動台32の厚さ方向における同じ高さに立設されるようになっている。それ故、本例のシフトレバー装置1では、シフト軸20及びセレクト軸30の軸方向が同一平面内に属している。
【0031】
図1〜図4に示すごとく、揺動台32の内側空間を取り囲む4辺のうち、一方のシフト軸20が立設される側面がなす1辺には、プランジャ322を進退可能な状態で保持する円筒状のピン保持部323が立設されている。プランジャ322は、ピン保持部323の内部に収容されたスプリング324の付勢力により突出方向に付勢されている。プランジャ322は、突出方向に配設された節度部材325(図1)との組合せによりX軸方向のシフトレバー21の操作にクリック感を与えている。節度部材325は、X軸方向に配列された各シフト位置に対応して凹状の窪みを設けた部材である。
【0032】
レバーブロック2は、図1〜図4に示すごとく、シフトレバー21の軸方向に沿って延設されたマグネットホルダ23と、マグネットホルダ23を介して対向する一対のアーム部22と、を備えている。アーム部22の先端には、それぞれ、シフト軸20を貫通配置するための軸孔が穿孔されている。レバーブロック2は、アーム部22の軸孔に貫通配置されたシフト軸20を介して揺動台32に連結されている。マグネットホルダ22の先端には、直径10mmの円柱形状のマグネット230が配設されている。マグネット230の極方向は、シフトレバー21の軸方向に一致しており、マグネット230の回動位置によらず、常に回動軸12に向かっている。本例では、マグネット230の先端面231の大きさが直径約10mmとなっている。
【0033】
本例では、マグネット230として、フェライト磁石よりなるマグネットを採用している。これに代えて、アルニコ磁石、ネオジム磁石等よりなるマグネットを採用することもできる。さらに、磁性粉を樹脂にバインドしたプラスチックマグネットを採用することも良い。また、永久磁石よりなるマグネットに代えて、電磁式のマグネットを採用することもできる。さらに、本例では、磁気センサ11にN極を対面させているが、S極であっても良い。
【0034】
センサ基板10は、図1、図2及び図5に示すごとく、図示しないCPU、ROM、RAM等のほか、1チップの磁気センサ11を実装した基板である。CPUは、磁気センサ11の検出結果に基づくデータ処理を実行し、シフトレバー21の操作を反映した電気信号を出力する。ROMには、CPUで実行するソフトウェアプログラム等が格納されている。
【0035】
磁気センサ11は、図5及び図6に示すごとく、鉛直方向に作用する磁気成分を検出する磁気検出素子111〜114を内蔵したICチップである。磁気センサ11では、強磁性体材料よりなる円板状の磁性板115の外周4カ所に同一仕様の磁気検出素子111〜114が配置されている。そして、磁性板115及び磁気検出素子111〜114が配置された略円形状の領域が磁気検知部110となっている。X軸方向に沿って磁気検出素子111、112が対向配置されており、Y軸方向に沿って磁気検出素子113、114が対向配置されている。なお、本例では、マグネット230の直径約10mmの先端面231に対して、磁気検知部110の大きさを直径0.5mm〜2.0mm程度に設定している。
【0036】
X軸、Y軸、Z軸に沿う磁気成分Bx、By、Bzよりなる磁気ベクトルBが磁気センサに作用した場合について、図5及び図6を用いて説明する。磁気成分のうち鉛直方向に作用するBzは、全ての磁気検出素子111〜114に対してほぼ均等に作用することになる。一方、X軸に沿う磁気成分Bxが磁気センサ11に作用すると、図6に示すごとく、磁性体である磁性板115に磁気誘導されて磁力線の湾曲が生じることになる。そうすると、X軸方向に配列された磁気検出素子111、112に対して、鉛直方向逆向きの磁力αBx(αは定数)が作用することになる。X軸方向と同じ仕様でY軸方向に配列された磁気検出素子113、114に対しても同様に、Y軸に沿う磁気成分Byに起因して鉛直方向逆向きの磁力αByが作用することになる。
【0037】
このとき、各磁気検出素子111〜114に作用する磁力B1〜B4は、次式のようになる。
B1= αBx+Bz
B2=−αBx+Bz
B3= αBy+Bz
B4=−αBy+Bz
【0038】
Bx、By、Bzは、上記の連立式に基づいて以下のように算出される。
Bx=(B1−B2)/2α
By=(B3−B4)/2α
Bz=(B1+B2+B3+B4)/4
このように、磁気センサ11によれば、磁気検知部110に作用する磁気について、3次元的な任意の作用方向を検出可能である。
【0039】
上記のように構成された本例のシフトレバー装置1では、図1及び図2に示すごとく、揺動台32の内側空間が磁気検出のためのセンサ空間100を形成している。このセンサ空間100には、センサ基板10が固定された基台31の台座部312が突出している。本例では、センサ基板10に実装された磁気センサ11の磁気検知部110と回動軸12との距離L1が10mmに設定されている。
【0040】
Hポジション151にシフトレバー21が位置するとき、マグネット230と磁気センサ11とがシフトレバー21の軸方向に沿って一直線上に並ぶ基準位置となる。この基準位置では、磁気検知部110とマグネット230の先端面231とのギャップが1.5mmとなる。また、マグネット230の先端面と回動軸12との距離L2が11.5mmとなる。さらに、この基準位置では、前記軸方向に沿ってマグネット230の先端面231(直径10mm)に磁気検知部110を射影したときの射影形状が、マグネット230の先端面231の内側中央に位置するようになっている。
【0041】
シフトレバー装置1では、図1に示すごとく、X軸方向のシフトレバー21の操作に応じて、磁気センサ11の外周側をマグネット230が回動する。このとき、磁気検知部110への磁気の作用方向が変化することになる。磁気センサ11により検出されるX軸に沿う磁気成分Bx、及びZ軸に沿う磁気成分Bzによれば、図7に示すごとくY軸に直交する平面内の磁気ベクトル(磁気の作用方向)の傾きθshをセンサ検出角として算出できる。
【0042】
この磁気ベクトルの傾きθshに基づけば、マグネット230の回動角、すなわちシフトレバー21の操作角であるレバー角を知ることができる。そのレバー角を利用すれば、シフトレバー21のX軸方向の操作位置を検出可能である。Y軸方向の操作についても、上記と同様に操作に応じて磁気検知部110に作用する磁気の作用方向が変化する。Y軸に沿う磁気成分By、及びZ軸に沿う磁気成分Bzによれば、図8に示すごとく、X軸に直交する平面内の磁気ベクトルの傾きθslをセンサ検出角として算出でき、これによりY軸方向のシフトレバー21の操作位置を検出可能である。
【0043】
本例のシフトレバー装置1では、回動軸12よりもマグネット230側に近づけて磁気センサ11が配置されている。このような磁気センサ11の配置は、以下に説明する通り、(1)磁気的な効果、(2)形状的な効果を産み出している。
【0044】
まず、(1)磁気的な効果から説明する。シフトレバー21がHポジション151に位置するとき、図9のごとく、マグネット230の先端面231から法線方向に直線的に伸びる磁力線が磁気検知部110に作用する。一方、図10及び図11のごとくシフトレバー21がX軸方向に操作されたときには、法線方向に直線的に伸びる磁力線が回動軸12に向かう一方、回動軸12よりもマグネット230側にオフセットする磁気検知部110に対しては、湾曲した磁力線が作用するようになる。
【0045】
マグネット230の先端面231から放射線状に伸びる磁力線は、法線方向の磁力線が直線的である一方、法線方向からずれた磁力線は外側に湾曲している。そして、法線方向からのずれが大きくなるほど、その湾曲度合いが大きくなっている。そのため、図10と図11との対比から知られるように、マグネット230の回動角(レバー角)が大きくなるほど、法線方向からずれて一層湾曲した磁力線が磁気検知部110に作用するようになる。このような傾向は、回動軸12とマグネット230との間隙における磁気センサ11の位置、すなわちセンサ位置比(L1/L2)に応じて度合いが異なっている。
【0046】
図12は、レバー角とセンサ検出角との関係が、センサ位置比(L1/L2)に応じてどのように変化するかをシミュレーションした結果を示すグラフである。このシミュレーションでは、センサ位置比(L1/L2)を0〜0.87まで変化させている。同図中の横軸は、マグネット230の回動角に等しいレバー角を示し、縦軸は、磁気センサ11による検出角であるセンサ検出角を示している。
【0047】
図12のシミュレーション結果から知られるようにセンサ位置比(L1/L2)が大きくなるほど、磁気センサ11によるセンサ検出角が大きくなっている。例えば、レバー角5度の場合であれば、センサ位置比0のとき5度、同0.40のとき5.68度、同0.87のとき11.55度となっている。つまり、センサ位置比が大きくなるにつれて、レバー角に対するセンサ検出角の比率である増幅率が次第に大きくなっている。図13に示すごとく、センサ位置比が大きくなるほど、2次曲線的に増幅率が大きくなっている。
【0048】
本例のシフトレバー装置1では、センサ位置比(L1/L2)が0.87に設定されている。図12のシミュレーション結果を参照すれば、約2.3倍の増幅率が得られることになる。増幅率が大きくなれば、レバー角の変化に対するセンサ検出角の変化量が拡大されることになる。仮に、増幅率1で同様のセンサ検出角の変化量を確保しようとすると、例えば、ポジション151と+ポジションとの間の距離(操作ストローク)を2.3倍に長くしてレバー角の変化量自体を拡大する必要がある。一方、増幅率を高く設定できれば、操作ストロークを拡大することなくセンサ検出角の変化量を拡大でき、Hポジション151と+ポジションとの区別を容易にできる。隣り合うシフト位置の区別が容易になれば、検出精度が向上し、高い動作信頼性を確保できるようになる。また、増幅率を高く確保できれば、外部から作用するおそれがある磁気ノイズの影響を相対的に抑制できる。
【0049】
本例のシフトレバー装置1では、回動軸12よりもマグネット230側に近づけたことで、さらなる磁気的な効果が産み出されている。シフトレバー装置1では、マグネット230側に磁気センサ11を近づけるために、装置の内側に位置するセンサ空間100に磁気センサ11が配置されている。このように磁気センサ11を装置の内側に配置したことにより、シフトレバー装置1の外周面から磁気センサ11までの距離を大きく確保でき、外部から作用するおそれがある磁気ノイズの影響を抑制できるという磁気的な効果が得られている。磁気的なノイズの影響を抑制するために必要となる構成を簡略化できるので、装置の小型化の点において有利になる。
【0050】
次に、(2)形状的な効果について説明する。回動軸12よりもシフトレバー21側に近づけて磁気センサ11を配置すれば、回動軸12を介してシフトレバー21の反対側に磁気センサ11を配置する場合と比べて、高さ方向、すなわちシフトレバー21の軸方向の装置サイズを抑制でき、小型化を実現できる。これにより、本例のシフトレバー装置1は、省スペースで車両搭載性が良好な装置となっている。
【0051】
以上のように本例のシフトレバー装置1は、小型化を実現して車両搭載性を向上したうえ、さらに動作信頼性を向上した優れた特性の装置である。
【0052】
なお、磁気センサとしては、本例に代えて、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸に沿って配設された3基の磁気検出素子を内蔵した1チップICを採用することもできる。
なお、センサ位置比(L1/L2)としては、マグネット230の磁気を磁気センサ11が適正に検知できる範囲内で、できるだけ大きく設定することが好ましい。また、センサギャップ(マグネット230と磁気センサ11との間隔)としては、例えば、フェライト磁石であれば1.5〜3.0mm程度に設定するのが良い。
【0053】
なお、本例では、マグネット230の先端面231の直径を約10mmに設定する一方、磁気検知部110の直径を0.5〜2.0mmに設定している。マグネット230の先端面231及び磁気検知部110の大きさは、本例には限定されない。また、本例では、円形状の先端面231及び磁気検知部110を採用した例であるが、先端面231及び磁気検知部110としては、円形状のほか、楕円形状、四角形等の多角形状等、どのような形状であっても良い。当然ながら、円形状の先端面231に対して、四角形の磁気検知部110等、異なる形状を設定することも良い。先端面231の大きさと、磁気検知部110の大きさと、を比較した場合に、先端面231の内側に包含され得る大きさの磁気検知部110であれば、大きさの値や形状の如何に関わらず本発明の作用効果が実現される。
【0054】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形あるいは変更した技術を包含している。
【符号の説明】
【0055】
1 シフトレバー装置
10 センサ基板
100 センサ空間
11 磁気センサ
110 磁気検知部
111〜114 磁気検出素子
115 磁性板
12 回動軸
15 保護カバー
150 ゲート
151 Hポジション
2 レバーブロック
20 シフト軸
21 シフトレバー
230 マグネット
231 先端面
3 ベースブロック
30 セレクト軸
31 基台
32 揺動台
321 台座
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシフトレンジを選択するために車載される装置であって、シフトレバーの操作に応じた電気信号を出力するシフトレバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のシフトレバー装置には、機械的なリンク機構を採用したシフトチェンジ手段が用いられてきた。近年、車載機器の電子化の要請に対応できるよう、シフトレバーの操作を電気的に検出するシフトレバー装置が提案されている。このシフトレバー装置は、検出したシフトレバーの操作を電気信号に変換して出力する。
【0003】
上記のようなシフトレバー装置は、その出力信号に応じてアクチュエータを駆動することでシフトチェンジを実現可能な、いわゆるバイワイヤ式のシフトレバー装置と呼ばれている。バイワイヤ式のシフトレバー装置では、運転席とエンジンルームとの間に複雑なリンク機構を配設する必要がなく電気配線を敷設するだけで良い。このようなシフトレバー装置を採用すれば、車両におけるシフト操作機構の設計自由度や設置自由度等を格段に向上できる。
【0004】
バイワイヤ式のシフトレバー装置としては、シフトレバーの回動動作の中心をなす回動軸を超えてシフトレバーと同軸をなすように延設されたガイドロッドと、ガイドロッドの先端に配設されたマグネット部材と、マグネット部材と対面するように配置された磁気センサと、を備えた装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このシフトレバー装置では、ガイドロッドの変位を検知することでシフトレバーの操作を検出している。
【0005】
しかしながら、前記従来のシフトレバー装置では、次のような問題がある。すなわち、シフトレバーの軸方向における回動軸を超えた位置に磁気センサが配置されているので、前記軸方向に装置寸法が大きくなるおそれがあり、小型化を実現し難くなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−223384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、動作信頼性を高く維持しながら小型化を実現して車両搭載性を向上したシフトレバー装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両のシフトレンジを選択するために操作されるシフトレバーを含むシフトレバー装置であって、
前記シフトレバーの基部をなし、所定の第1方向の操作に応じて前記シフトレバーと一体をなして回動すると共に、その回動動作の中心をなす回動軸の回りを回動するように配設されたマグネットを含むレバーブロックと、
該レバーブロックを回動可能な状態で支持するベースブロックと、
磁気を検知する磁気検知部を含み、前記マグネットが発生する磁気のうち少なくとも前記第1方向が属する平面内の磁気の作用方向を検出可能なように前記ベースブロックに配設された磁気センサと、を備え、
前記マグネットは、前記第1方向における前記シフトレバーの操作位置に関わらず極方向が前記回動軸に向かうように配設されており、
前記磁気センサは、前記マグネットの先端面の大きさと比較した場合に当該先端面の内側に包含され得る大きさの前記磁気検知部を有していると共に、
前記回動軸よりも前記マグネットの回動軌跡に近づけて配置されていることを特徴とするシフトレバー装置にある(請求項1)。
【0009】
本発明のシフトレバー装置が備えるマグネットは、前記極方向が前記回動軸に向かう状態を維持しながら、前記回動軸を中心として回動するように配設されている。前記シフトレバーが前記第1方向に操作されると、前記マグネットが前記磁気センサの外周側を回動し、前記磁気検知部に対する磁気の作用方向が変化することになる。前記第1方向が属する平面内において前記磁気センサが検出する磁気の作用方向に基づけば、前記シフトレバーの前記第1方向の操作を検出可能である。
【0010】
本発明のシフトレバー装置では、前記回動軸よりも前記マグネットの回動軌跡に近づけて(オフセットして)前記磁気センサが配置されている。この場合には、前記回動軸を超えて前記シフトレバーの反対側に前記磁気センサを配置する場合と比べて、前記シフトレバーの軸方向の寸法を抑制することができる。前記シフトレバーの軸方向の寸法を抑制できれば、前記シフトレバー装置の小型化を実現でき、車両搭載性を向上できる。
【0011】
前記マグネットの周辺磁界では、前記極方向に直線的に伸びる磁力線を中心とし、この中心の磁力線からずれた磁力線が外側に湾曲している。中心の磁力線からのずれが大きくなればなるほど、湾曲の度合いが大きくなっている。本発明では、前記マグネットの回動軸よりも前記マグネット側に近づけて前記磁気センサを配置することにより上記のような磁力線の湾曲を有用に活用し、以下に説明するごとく良好な検出特性を実現している。
【0012】
本発明のシフトレバー装置では、例えば、前記回動軸と前記磁気検知部とを結ぶ直線上に前記マグネットが位置したとき(以下、基準位置という。)、前記極方向に向けて直線的に伸びる中心の磁力線が前記磁気検知部に作用する。前記マグネットが回動して基準位置からずれると、中心の磁力線が前記回動軸に向かう一方、前記磁気検知部に対しては湾曲する磁力線が作用するようになる。この湾曲した磁力線の作用方向の傾きは、前記マグネットの回動角、すなわち前記シフトレバーの操作角(レバー角)に一致する前記中心の磁力線の作用方向の傾きよりも大きくなっている。すなわち、前記磁気センサでは、レバー角を増幅した角度(センサ検出角)が磁気の作用方向として検出されることになる。
【0013】
本発明のシフトレバー装置では、前記レバー角が増幅された角度をもって傾く磁力線が前記磁気検知部に作用することになる。そして、前記マグネットの回動位置が前記基準位置からずれるほど、前記中心の磁力線からずれて湾曲度合いが大きい磁力線が前記磁気検知部に作用し、上記のような増幅の度合いが拡大することになる。
【0014】
このように本発明では、前記磁気センサを前記回動軌跡に近づけて配置したことで、前記レバー角の変化に応じたセンサ検出角の変化量が拡大されている。すなわち、前記第1方向の異なる操作位置の間で、センサ検出角の変化量が拡大されている。そのため、前記第1方向の特定の操作位置を検出するに当たって、他の操作位置との区別が容易となり、信頼性が高い安定した検出を実現できるようになっている。
【0015】
ここで、仮に、前記マグネットの前記回動軸側の端面である前記先端面よりも前記磁気検知部が大きい場合には、該磁気検知部の位置に応じて、前記マグネットから作用する磁気の作用方向が大きくばらつくようになる。特に、本発明では、上記のごとく中心の磁力線からずれた湾曲した磁力線を積極的に利用しているため、前記磁気検知部の位置の違いによる磁気の作用方向のばらつきが一層顕著になるおそれがある。そこで、本発明では、前記磁気検知部の大きさを、前記マグネットの先端面に包含され得る大きさ、すなわち前記先端面よりも小さい大きさに設定してある。このように前記マグネットの先端面よりも小さい磁気検知部であれば、磁気の作用方向のばらつきを抑制でき、高精度な検出が可能となる。
【0016】
以上のように、本発明のシフトレバー装置は、前記磁気検知部の大きさや前記磁気センサの配置等を工夫することで前記シフトレバーの軸方向のサイズを抑制して小型化を実現すると共に、前記シフトレバーの操作位置の検出精度を高めた優れた特性の装置である。
【0017】
本発明における回動軸とは、前記第1方向に前記シフトレバーが操作されたときの回動動作の仮想中心をなす軸である。この回動軸の回りを前記マグネットが回動する際、該マグネットの回動平面と前記シフトレバーの回動平面とが同一平面であっても良いし異なる平面であっても良い。これらの回動平面は、互いに平行をなしていれば良い。さらに、前記マグネットの極方向が回動軸に向かっているとは、軸方向の長さに制限のない前記回動軸に対して前記極方向が交わることを意味している。
【0018】
また、前記レバーブロックと前記ベースブロックとは、前記回動軸と同軸をなすと共に前記軸方向に2分割された一対のシフト軸を介して連結されており、
前記マグネットは、前記一対のシフト軸の軸方向の間隙であるセンサ空間に対面するように配置されており、
前記ベースブロックは、前記センサ空間において前記回動軸を超えて前記シフトレバー側に突出するように形成された台座を有し、当該台座に前記磁気センサを保持していることが好ましい(請求項2)。
この場合には、前記回動軸と前記シフトレバーとの間隙の空間、すなわち前記シフトレバー装置の内部側に位置する前記センサ空間に前記磁気センサが配置されるようになる。前記センサ空間に前記磁気センサを配置すれば、外部から作用するおそれがある磁気的なノイズ等の影響を抑制できる。磁気的なノイズの影響を抑制するために必要となる構成を簡略化できるため、小型化を実現し易くなる。
【0019】
また、前記ベースブロックは、前記台座が設けられた基台と、前記第1方向に直交する第2方向における前記シフトレバーの操作に応じて回動可能な状態で前記基台に支持された揺動台と、を有し、
前記揺動台は、前記一対のシフト軸を介して前記レバーブロックを支持しており、
前記基台と前記揺動台とは、前記回動軸と直交すると共に前記センサ空間を介在して軸方向に2分割された一対のセレクト軸を介して連結されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、前記第1方向のほか、前記第2方向にも前記シフトレバーを操作できるようになる。
【0020】
また、前記磁気センサは、相互の直交する3方向の磁気成分を計測可能であることが好ましい(請求項4)。
この場合には、前記磁気検知部に対する磁気の作用方向を3次元的に検出できるようになる。磁気の作用方向を3次元的に検出できれば、前記第1方向と前記第2方向とを組み合わせた前記シフトレバーの2次元的な操作を検出できるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のシフトレバー装置は、小型化を実現して車両搭載性を向上したうえ、さらに動作信頼性を向上した優れた特性のシフトレバー装置を提供しようとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1における、シフトレバー装置を示す斜視図。
【図2】実施例1における、シフトレバー装置の構造を示す断面図。
【図3】実施例1における、シフトレバー装置の構造を示す断面図。
【図4】実施例1における、シフトレバー装置の構造を示す断面図。
【図5】実施例1における、磁気センサの検出原理を説明する説明図。
【図6】実施例1における、X軸(Y軸)方向の磁気成分が磁気センサに作用する様子を示す説明図。
【図7】実施例1における、XZ平面内のセンサ検出角θshを説明する説明図。
【図8】実施例1における、YZ平面内のセンサ検出角θslを説明する説明図。
【図9】実施例1における、磁気センサに作用する磁界を示す説明図。
【図10】実施例1における、磁気センサに作用する磁界を示す説明図。
【図11】実施例1における、磁気センサに作用する磁界を示す説明図。
【図12】実施例1における、レバー角(マグネットの回動角)とセンサ検出角との関係を示すグラフ。
【図13】実施例1における、センサ位置比と増幅率との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例)
本例は、車両のシフトレンジを選択するために操作されるシフトレバー21を含むシフトレバー装置1に関する例である。この内容について、図1〜図13を用いて説明する。
本例のシフトレバー装置1は、図1及び図2に示すごとく、シフトレバー21の基部をなし、所定の第1方向(以下、X軸方向)の操作に応じてシフトレバー21と一体的に回動すると共に、その回動動作の仮想中心をなす回動軸12の回りを回動するように配設されたマグネット230を含むレバーブロック2と、このレバーブロック2を回動可能な状態で支持するベースブロック3と、磁気を検知する磁気検知部110(図5)を含み、マグネット230が発生する磁気を検出可能なようにベースブロック3に配設された磁気センサ11と、を備えている。
【0024】
シフトレバー装置1におけるマグネット230は、X軸方向におけるシフトレバー21の操作位置に関わらず極方向が回動軸12に向かうように配設されている。
磁気センサ11は、マグネット230の先端面231の大きさと比較した場合に、その先端面231の内側に包含され得る大きさの磁気検知部110(図5)を有している。さらに、磁気センサ11は、回動軸12よりもマグネット230の回動軌跡に近づけて配置されている。
以下、この内容について、詳しく説明する。
【0025】
シフトレバー装置1は、図1に示すごとく、運転者がシフトレバー21を操作可能なように、車両の運転席と助手席との間のセンターコンソールや、運転者に対面するダッシュパネル等に設置される装置である。本例のシフトレバー装置1は、互いに略直交するX軸方向(第1方向)及びY軸方向(第2方向)にシフトレバー21を操作可能なゲート式のシフトレバー装置である。X軸方向は、運転者から見て前後方向の操作方向であり、Y軸方向は、左右方向の操作方向である。
【0026】
シフトレバー装置1では、図1に示すごとく、X軸方向の操作方向が3列設定されており、Y軸方向にシフトレバー21を操作することでX軸方向の列を切り換え可能である。本例のシフトレバー装置1では、ゲート150が十字に交差する中央位置がホームポジション151(Hポジション)となっている。シフトレバー21は、常時、Hポジション151に向けて付勢されている。
【0027】
例えば、Hポジション151に位置するシフトレバー21(図2参照。)を右側(Y軸方向)に操作した後に手前(X軸方向)に引くように操作すればDポジジョンに操作できDレンジを選択できる(図3参照)。その後、運転者がシフトレバー21から手を離すと、Dレンジが選択された状態が維持されたまま、シフトレバー21がHポジション151に復帰する。また、例えば、Dレンジが選択されているときに、Hポジション151のシフトレバー21を手前に引けば−ポジションに操作できギアを一段下げることができる。さらに、例えば、Dレンジが選択されているときに、Hポジション151のシフトレバー21を左側に倒してNポジションに操作し、所定時間保持すればNレンジを選択できる(図1及び図4参照)。さらに、奥側に押し込んでRポジションに操作して所定時間保持すればRレンジを選択できる。なお、シフトレバー21の操作パターンは、本例には限定されない。本例のシフトレバー装置1における操作位置の検出方法を採用すれば、前後左右あらゆる方向の操作に対応可能である。
【0028】
シフトレバー装置1は、図1及び図2に示すごとく、シフトレバー21が固定されたレバーブロック2と、X軸方向に回動可能な状態でレバーブロック2を軸支するベースブロック3と、を、保護カバー15に収めた装置である。ベースブロック3は、装置の底面をなす基台31と、セレクト軸30を介して基台31に軸支された揺動台32と、よりなる。レバーブロック2は、シフト軸20を介して揺動台32に軸支されている。保護カバー15の上面には、シフトレバー21の移動経路をなすゲート150が設けられている。各シフト位置には、D、Rなどのシフトレンジを表す記号が表示されている。
【0029】
基台31は、図1及び図2に示すごとく、装置の底部をなす部分である。矩形状を呈する底面の中央部分には、高さ方向に突出する台座部312が設けられている。台座部312の上面には、磁気センサ11が実装されたセンサ基板10が固定されている。基台31の4隅には、保護カバー15を取り付けるためのビス孔318が穿孔されている。基台31の外周部には、台座部312を介して相互に対面する一対の支持片311が立設されている。一対の支持片311には、それぞれ、セレクト軸30を貫通配置させるための軸孔が穿孔されている。
【0030】
揺動台32は、図1及び図2に示すごとく、略矩形環状を呈する一定厚さの部材である。互いに反対側に面する2組の側面のうち、基台31の支持片311に対面する1組の側面には、外側に突出する台座321がそれぞれ設けられている。台座321の端面は、支持片311の軸孔に貫通配置されたセレクト軸30が立設固定される面である。他方の1組の側面には、シフト軸20が立設されている。シフト軸20及びセレクト軸30は、揺動台32の厚さ方向における同じ高さに立設されるようになっている。それ故、本例のシフトレバー装置1では、シフト軸20及びセレクト軸30の軸方向が同一平面内に属している。
【0031】
図1〜図4に示すごとく、揺動台32の内側空間を取り囲む4辺のうち、一方のシフト軸20が立設される側面がなす1辺には、プランジャ322を進退可能な状態で保持する円筒状のピン保持部323が立設されている。プランジャ322は、ピン保持部323の内部に収容されたスプリング324の付勢力により突出方向に付勢されている。プランジャ322は、突出方向に配設された節度部材325(図1)との組合せによりX軸方向のシフトレバー21の操作にクリック感を与えている。節度部材325は、X軸方向に配列された各シフト位置に対応して凹状の窪みを設けた部材である。
【0032】
レバーブロック2は、図1〜図4に示すごとく、シフトレバー21の軸方向に沿って延設されたマグネットホルダ23と、マグネットホルダ23を介して対向する一対のアーム部22と、を備えている。アーム部22の先端には、それぞれ、シフト軸20を貫通配置するための軸孔が穿孔されている。レバーブロック2は、アーム部22の軸孔に貫通配置されたシフト軸20を介して揺動台32に連結されている。マグネットホルダ22の先端には、直径10mmの円柱形状のマグネット230が配設されている。マグネット230の極方向は、シフトレバー21の軸方向に一致しており、マグネット230の回動位置によらず、常に回動軸12に向かっている。本例では、マグネット230の先端面231の大きさが直径約10mmとなっている。
【0033】
本例では、マグネット230として、フェライト磁石よりなるマグネットを採用している。これに代えて、アルニコ磁石、ネオジム磁石等よりなるマグネットを採用することもできる。さらに、磁性粉を樹脂にバインドしたプラスチックマグネットを採用することも良い。また、永久磁石よりなるマグネットに代えて、電磁式のマグネットを採用することもできる。さらに、本例では、磁気センサ11にN極を対面させているが、S極であっても良い。
【0034】
センサ基板10は、図1、図2及び図5に示すごとく、図示しないCPU、ROM、RAM等のほか、1チップの磁気センサ11を実装した基板である。CPUは、磁気センサ11の検出結果に基づくデータ処理を実行し、シフトレバー21の操作を反映した電気信号を出力する。ROMには、CPUで実行するソフトウェアプログラム等が格納されている。
【0035】
磁気センサ11は、図5及び図6に示すごとく、鉛直方向に作用する磁気成分を検出する磁気検出素子111〜114を内蔵したICチップである。磁気センサ11では、強磁性体材料よりなる円板状の磁性板115の外周4カ所に同一仕様の磁気検出素子111〜114が配置されている。そして、磁性板115及び磁気検出素子111〜114が配置された略円形状の領域が磁気検知部110となっている。X軸方向に沿って磁気検出素子111、112が対向配置されており、Y軸方向に沿って磁気検出素子113、114が対向配置されている。なお、本例では、マグネット230の直径約10mmの先端面231に対して、磁気検知部110の大きさを直径0.5mm〜2.0mm程度に設定している。
【0036】
X軸、Y軸、Z軸に沿う磁気成分Bx、By、Bzよりなる磁気ベクトルBが磁気センサに作用した場合について、図5及び図6を用いて説明する。磁気成分のうち鉛直方向に作用するBzは、全ての磁気検出素子111〜114に対してほぼ均等に作用することになる。一方、X軸に沿う磁気成分Bxが磁気センサ11に作用すると、図6に示すごとく、磁性体である磁性板115に磁気誘導されて磁力線の湾曲が生じることになる。そうすると、X軸方向に配列された磁気検出素子111、112に対して、鉛直方向逆向きの磁力αBx(αは定数)が作用することになる。X軸方向と同じ仕様でY軸方向に配列された磁気検出素子113、114に対しても同様に、Y軸に沿う磁気成分Byに起因して鉛直方向逆向きの磁力αByが作用することになる。
【0037】
このとき、各磁気検出素子111〜114に作用する磁力B1〜B4は、次式のようになる。
B1= αBx+Bz
B2=−αBx+Bz
B3= αBy+Bz
B4=−αBy+Bz
【0038】
Bx、By、Bzは、上記の連立式に基づいて以下のように算出される。
Bx=(B1−B2)/2α
By=(B3−B4)/2α
Bz=(B1+B2+B3+B4)/4
このように、磁気センサ11によれば、磁気検知部110に作用する磁気について、3次元的な任意の作用方向を検出可能である。
【0039】
上記のように構成された本例のシフトレバー装置1では、図1及び図2に示すごとく、揺動台32の内側空間が磁気検出のためのセンサ空間100を形成している。このセンサ空間100には、センサ基板10が固定された基台31の台座部312が突出している。本例では、センサ基板10に実装された磁気センサ11の磁気検知部110と回動軸12との距離L1が10mmに設定されている。
【0040】
Hポジション151にシフトレバー21が位置するとき、マグネット230と磁気センサ11とがシフトレバー21の軸方向に沿って一直線上に並ぶ基準位置となる。この基準位置では、磁気検知部110とマグネット230の先端面231とのギャップが1.5mmとなる。また、マグネット230の先端面と回動軸12との距離L2が11.5mmとなる。さらに、この基準位置では、前記軸方向に沿ってマグネット230の先端面231(直径10mm)に磁気検知部110を射影したときの射影形状が、マグネット230の先端面231の内側中央に位置するようになっている。
【0041】
シフトレバー装置1では、図1に示すごとく、X軸方向のシフトレバー21の操作に応じて、磁気センサ11の外周側をマグネット230が回動する。このとき、磁気検知部110への磁気の作用方向が変化することになる。磁気センサ11により検出されるX軸に沿う磁気成分Bx、及びZ軸に沿う磁気成分Bzによれば、図7に示すごとくY軸に直交する平面内の磁気ベクトル(磁気の作用方向)の傾きθshをセンサ検出角として算出できる。
【0042】
この磁気ベクトルの傾きθshに基づけば、マグネット230の回動角、すなわちシフトレバー21の操作角であるレバー角を知ることができる。そのレバー角を利用すれば、シフトレバー21のX軸方向の操作位置を検出可能である。Y軸方向の操作についても、上記と同様に操作に応じて磁気検知部110に作用する磁気の作用方向が変化する。Y軸に沿う磁気成分By、及びZ軸に沿う磁気成分Bzによれば、図8に示すごとく、X軸に直交する平面内の磁気ベクトルの傾きθslをセンサ検出角として算出でき、これによりY軸方向のシフトレバー21の操作位置を検出可能である。
【0043】
本例のシフトレバー装置1では、回動軸12よりもマグネット230側に近づけて磁気センサ11が配置されている。このような磁気センサ11の配置は、以下に説明する通り、(1)磁気的な効果、(2)形状的な効果を産み出している。
【0044】
まず、(1)磁気的な効果から説明する。シフトレバー21がHポジション151に位置するとき、図9のごとく、マグネット230の先端面231から法線方向に直線的に伸びる磁力線が磁気検知部110に作用する。一方、図10及び図11のごとくシフトレバー21がX軸方向に操作されたときには、法線方向に直線的に伸びる磁力線が回動軸12に向かう一方、回動軸12よりもマグネット230側にオフセットする磁気検知部110に対しては、湾曲した磁力線が作用するようになる。
【0045】
マグネット230の先端面231から放射線状に伸びる磁力線は、法線方向の磁力線が直線的である一方、法線方向からずれた磁力線は外側に湾曲している。そして、法線方向からのずれが大きくなるほど、その湾曲度合いが大きくなっている。そのため、図10と図11との対比から知られるように、マグネット230の回動角(レバー角)が大きくなるほど、法線方向からずれて一層湾曲した磁力線が磁気検知部110に作用するようになる。このような傾向は、回動軸12とマグネット230との間隙における磁気センサ11の位置、すなわちセンサ位置比(L1/L2)に応じて度合いが異なっている。
【0046】
図12は、レバー角とセンサ検出角との関係が、センサ位置比(L1/L2)に応じてどのように変化するかをシミュレーションした結果を示すグラフである。このシミュレーションでは、センサ位置比(L1/L2)を0〜0.87まで変化させている。同図中の横軸は、マグネット230の回動角に等しいレバー角を示し、縦軸は、磁気センサ11による検出角であるセンサ検出角を示している。
【0047】
図12のシミュレーション結果から知られるようにセンサ位置比(L1/L2)が大きくなるほど、磁気センサ11によるセンサ検出角が大きくなっている。例えば、レバー角5度の場合であれば、センサ位置比0のとき5度、同0.40のとき5.68度、同0.87のとき11.55度となっている。つまり、センサ位置比が大きくなるにつれて、レバー角に対するセンサ検出角の比率である増幅率が次第に大きくなっている。図13に示すごとく、センサ位置比が大きくなるほど、2次曲線的に増幅率が大きくなっている。
【0048】
本例のシフトレバー装置1では、センサ位置比(L1/L2)が0.87に設定されている。図12のシミュレーション結果を参照すれば、約2.3倍の増幅率が得られることになる。増幅率が大きくなれば、レバー角の変化に対するセンサ検出角の変化量が拡大されることになる。仮に、増幅率1で同様のセンサ検出角の変化量を確保しようとすると、例えば、ポジション151と+ポジションとの間の距離(操作ストローク)を2.3倍に長くしてレバー角の変化量自体を拡大する必要がある。一方、増幅率を高く設定できれば、操作ストロークを拡大することなくセンサ検出角の変化量を拡大でき、Hポジション151と+ポジションとの区別を容易にできる。隣り合うシフト位置の区別が容易になれば、検出精度が向上し、高い動作信頼性を確保できるようになる。また、増幅率を高く確保できれば、外部から作用するおそれがある磁気ノイズの影響を相対的に抑制できる。
【0049】
本例のシフトレバー装置1では、回動軸12よりもマグネット230側に近づけたことで、さらなる磁気的な効果が産み出されている。シフトレバー装置1では、マグネット230側に磁気センサ11を近づけるために、装置の内側に位置するセンサ空間100に磁気センサ11が配置されている。このように磁気センサ11を装置の内側に配置したことにより、シフトレバー装置1の外周面から磁気センサ11までの距離を大きく確保でき、外部から作用するおそれがある磁気ノイズの影響を抑制できるという磁気的な効果が得られている。磁気的なノイズの影響を抑制するために必要となる構成を簡略化できるので、装置の小型化の点において有利になる。
【0050】
次に、(2)形状的な効果について説明する。回動軸12よりもシフトレバー21側に近づけて磁気センサ11を配置すれば、回動軸12を介してシフトレバー21の反対側に磁気センサ11を配置する場合と比べて、高さ方向、すなわちシフトレバー21の軸方向の装置サイズを抑制でき、小型化を実現できる。これにより、本例のシフトレバー装置1は、省スペースで車両搭載性が良好な装置となっている。
【0051】
以上のように本例のシフトレバー装置1は、小型化を実現して車両搭載性を向上したうえ、さらに動作信頼性を向上した優れた特性の装置である。
【0052】
なお、磁気センサとしては、本例に代えて、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸に沿って配設された3基の磁気検出素子を内蔵した1チップICを採用することもできる。
なお、センサ位置比(L1/L2)としては、マグネット230の磁気を磁気センサ11が適正に検知できる範囲内で、できるだけ大きく設定することが好ましい。また、センサギャップ(マグネット230と磁気センサ11との間隔)としては、例えば、フェライト磁石であれば1.5〜3.0mm程度に設定するのが良い。
【0053】
なお、本例では、マグネット230の先端面231の直径を約10mmに設定する一方、磁気検知部110の直径を0.5〜2.0mmに設定している。マグネット230の先端面231及び磁気検知部110の大きさは、本例には限定されない。また、本例では、円形状の先端面231及び磁気検知部110を採用した例であるが、先端面231及び磁気検知部110としては、円形状のほか、楕円形状、四角形等の多角形状等、どのような形状であっても良い。当然ながら、円形状の先端面231に対して、四角形の磁気検知部110等、異なる形状を設定することも良い。先端面231の大きさと、磁気検知部110の大きさと、を比較した場合に、先端面231の内側に包含され得る大きさの磁気検知部110であれば、大きさの値や形状の如何に関わらず本発明の作用効果が実現される。
【0054】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形あるいは変更した技術を包含している。
【符号の説明】
【0055】
1 シフトレバー装置
10 センサ基板
100 センサ空間
11 磁気センサ
110 磁気検知部
111〜114 磁気検出素子
115 磁性板
12 回動軸
15 保護カバー
150 ゲート
151 Hポジション
2 レバーブロック
20 シフト軸
21 シフトレバー
230 マグネット
231 先端面
3 ベースブロック
30 セレクト軸
31 基台
32 揺動台
321 台座
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシフトレンジを選択するために操作されるシフトレバーを含むシフトレバー装置であって、
前記シフトレバーの基部をなし、所定の第1方向の操作に応じて前記シフトレバーと一体をなして回動すると共に、その回動動作の中心をなす回動軸の回りを回動するように配設されたマグネットを含むレバーブロックと、
該レバーブロックを回動可能な状態で支持するベースブロックと、
磁気を検知する磁気検知部を含み、前記マグネットが発生する磁気のうち少なくとも前記第1方向が属する平面内の磁気の作用方向を検出可能なように前記ベースブロックに配設された磁気センサと、を備え、
前記マグネットは、前記第1方向における前記シフトレバーの操作位置に関わらず極方向が前記回動軸に向かうように配設されており、
前記磁気センサは、前記マグネットの先端面の大きさと比較した場合に当該先端面の内側に包含され得る大きさの前記磁気検知部を有していると共に、
前記回動軸よりも前記マグネットの回動軌跡に近づけて配置されていることを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項2】
請求項1において、前記レバーブロックと前記ベースブロックとは、前記回動軸と同軸をなすと共に前記軸方向に2分割された一対のシフト軸を介して連結されており、
前記マグネットは、前記一対のシフト軸の軸方向の間隙であるセンサ空間に対面するように配置されており、
前記ベースブロックは、前記センサ空間において前記回動軸を超えて前記シフトレバー側に突出するように形成された台座を有し、当該台座に前記磁気センサを保持していることを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項3】
請求項2において、前記ベースブロックは、前記台座が設けられた基台と、前記第1方向に直交する第2方向における前記シフトレバーの操作に応じて回動可能な状態で前記基台に支持された揺動台と、を有し、
前記揺動台は、前記一対のシフト軸を介して前記レバーブロックを支持しており、
前記基台と前記揺動台とは、前記回動軸と直交すると共に前記センサ空間を介在して軸方向に2分割された一対のセレクト軸を介して連結されていることを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項4】
請求項3において、前記磁気センサは、相互の直交する3方向の磁気成分を計測可能であることを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項1】
車両のシフトレンジを選択するために操作されるシフトレバーを含むシフトレバー装置であって、
前記シフトレバーの基部をなし、所定の第1方向の操作に応じて前記シフトレバーと一体をなして回動すると共に、その回動動作の中心をなす回動軸の回りを回動するように配設されたマグネットを含むレバーブロックと、
該レバーブロックを回動可能な状態で支持するベースブロックと、
磁気を検知する磁気検知部を含み、前記マグネットが発生する磁気のうち少なくとも前記第1方向が属する平面内の磁気の作用方向を検出可能なように前記ベースブロックに配設された磁気センサと、を備え、
前記マグネットは、前記第1方向における前記シフトレバーの操作位置に関わらず極方向が前記回動軸に向かうように配設されており、
前記磁気センサは、前記マグネットの先端面の大きさと比較した場合に当該先端面の内側に包含され得る大きさの前記磁気検知部を有していると共に、
前記回動軸よりも前記マグネットの回動軌跡に近づけて配置されていることを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項2】
請求項1において、前記レバーブロックと前記ベースブロックとは、前記回動軸と同軸をなすと共に前記軸方向に2分割された一対のシフト軸を介して連結されており、
前記マグネットは、前記一対のシフト軸の軸方向の間隙であるセンサ空間に対面するように配置されており、
前記ベースブロックは、前記センサ空間において前記回動軸を超えて前記シフトレバー側に突出するように形成された台座を有し、当該台座に前記磁気センサを保持していることを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項3】
請求項2において、前記ベースブロックは、前記台座が設けられた基台と、前記第1方向に直交する第2方向における前記シフトレバーの操作に応じて回動可能な状態で前記基台に支持された揺動台と、を有し、
前記揺動台は、前記一対のシフト軸を介して前記レバーブロックを支持しており、
前記基台と前記揺動台とは、前記回動軸と直交すると共に前記センサ空間を介在して軸方向に2分割された一対のセレクト軸を介して連結されていることを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項4】
請求項3において、前記磁気センサは、相互の直交する3方向の磁気成分を計測可能であることを特徴とするシフトレバー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−230581(P2011−230581A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100773(P2010−100773)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(591050970)津田工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(591050970)津田工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】
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