シフト反応装置及びガスタービンプラント
【課題】水性シフト反応の触媒層で生成されるメタノールを低減することにある。
【解決手段】
一酸化炭素と水を含む混合ガスが導入され、混合ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に転換する触媒層25と、触媒層25の出口部を加熱する加熱手段を備え、メタノールが生成される触媒層25の出口部を加熱して、生成されたメタノールを分解することを特徴とする。
【解決手段】
一酸化炭素と水を含む混合ガスが導入され、混合ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に転換する触媒層25と、触媒層25の出口部を加熱する加熱手段を備え、メタノールが生成される触媒層25の出口部を加熱して、生成されたメタノールを分解することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフト反応装置及びガスタービンプラントに係り、一酸化炭素と水を含む混合ガスをシフト反応装置に導入して一酸化炭素を二酸化炭素に転換し、一酸化炭素が低減されたガスをガスタービンの燃料とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭をガス化して生成した石炭ガスを燃焼しガスタービンを駆動して発電するガスタービンプラントが知られている。石炭ガスは、一酸化炭素を含んでいるので、燃焼すると二酸化炭素が発生して地球環境の負荷になる。そのため、特許文献1には、石炭ガスに水蒸気を添加して、触媒存在下で石炭ガス中の一酸化炭素と水蒸気を反応させて二酸化炭素と水素に転換する、所謂、水性シフト反応により石炭ガス中の一酸化炭素を低減してガスタービンの燃料とすることが提案されている。水性シフト反応で生成された二酸化炭素は、吸収液に吸収させて石炭ガスから除去するようにしている。
【0003】
一方、石炭ガスを燃焼させる熱機関の技術ではないが、特許文献2には、燃料電池に供給する水素を製造する技術として、一酸化炭素を含む改質ガスに水蒸気を添加して水性シフト反応により一酸化炭素を低減又は除去するシフト反応装置が提案されている。同文献のシフト反応装置は、触媒層をガスの流れ方向に2段配置し、前段を高温反応部とし、後段を低温反応部とし、高温反応部から排出されたガスを一旦冷却して、発熱反応である水性シフト反応を進行させている。これにより、燃料電池の触媒を被毒する一酸化炭素を低減又は除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−331701号公報
【特許文献2】WO01/047801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2は、水性シフト反応の触媒層でメタノールが生成されることがあることについては配慮されていない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、水性シフト反応の触媒層で生成されるメタノールを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、水性シフト反応の触媒層でメタノールが生成される原因について検討したところ、水性シフト反応により生成された二酸化炭素と水素が水性シフト反応の触媒層で反応してメタノールが生成されることを知見した。さらに、メタノールの生成反応は、触媒層の温度が低くなると促進されることを知見した。
【0008】
この現象を図1を用いて説明する。図1は、シフト反応装置におけるガス温度とガス中のメタノール濃度の関係を示す図である。一酸化炭素と水を含む混合ガスがシフト反応装置101の触媒層103に導入されると、水性シフト反応により混合ガス中の一酸化炭素と水が反応して二酸化炭素と水素が生成される。また、水性シフト反応は発熱反応であるから、水性シフト反応が進行している間はガス温度は上昇する。一方、水性シフト反応の触媒層103は、触媒が劣化しても必要な滞留時間を確保できるように触媒層が余分に形成されるから、初期の間は水性シフト反応が触媒層103の途中で完了する。発熱反応である水性シフト反応が完了するとガス温度が下がり、その位置の水性シフト反応の触媒層によりメタノールの生成反応が生じて、メタノールが生成される。すなわち、メタノールの生成反応は発熱反応であるから、温度が下がる触媒層の出口部で反応が生じてメタノールが生成される。
【0009】
とろこで、石炭ガスを燃焼する熱機関は、燃料となるガスに水が混じると熱量が低下するから、図1に示すように、シフト反応装置の出口側に冷却器105を配置し、水性シフト反応の未反応の水蒸気を凝縮させて除去している。この場合、シフト反応装置101から排出されたガス中のメタノールは、未反応の水蒸気とともに凝縮される。その結果、凝縮水にメタノールが混じるから、凝縮水の浄化処理の負荷が増加することになる。
【0010】
そこで、本発明の発明者らは、水性シフト反応が完了して温度が下がる触媒層の出口部でメタノールの生成が起きること、及びその触媒の温度をある温度以上にすればメタノールの反応を抑制できることを知見して、本発明を想到した。
【0011】
すなわち、上記課題を解決するため、本発明の第1の態様のシフト反応装置は、一酸化炭素と水を含む混合ガスが導入され、該混合ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に転換する触媒層と、該触媒層の出口部を加熱する加熱手段を備えてなることを特徴とする。
【0012】
ここで、水性シフト反応の触媒層においては、水性シフト反応で生成された二酸化炭素(CO2)と水素(H2)が、下記式1の反応によりメタノール(CH3OH)と水(H2O)に生成される反応と、式1の反応で生成されたメタノールが、下記式2の反応で二酸化炭素と水素に分解される反応が可逆的に起こる。
CO2 + 3H2 → CH3OH + H2O・・・(式1)
CH3OH + H2O → CO2 + 3H2・・・(式2)
ここで、式1と式2の反応が平衡する温度は、主としてメタノールの濃度と触媒層の温度に依存し、平衡温度より高くなると式2の吸熱反応が進みメタノールが分解され、平衡温度より低くなると式1の発熱反応が進みメタノールが生成される。すなわち、平衡温度より高くなるように触媒層の出口部を加熱すると、生成されたメタノールが分解されて、水性シフト反応の触媒層で生成されるメタノールの濃度を低減できる。なお、触媒層の出口部をメタノールが分解される温度、例えば、230℃以上、好ましくは、250℃以上、より好ましくは触媒の耐熱温度に加熱することにより、メタノールを低減できる。
【0013】
また、触媒層を容器に収容したシフト反応装置の触媒層の出口部を加熱する場合は、触媒層の出口部に対応する容器の外面に加熱手段を設けることができる。これによれば、触媒層と容器はそのまま利用できるので、既設のシフト反応装置に本発明を容易に適用できる。
【0014】
ところで、触媒層の出口部を加熱すると、出口部の触媒の劣化が速くなる。そこで、本発明の第2の態様のシフト反応装置は、混合ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に転換する第1触媒層と、第1触媒層の出口側に第1触媒層から離して設けられ、第1触媒層で生じたメタノールを分解する第2触媒層と、少なくとも第2触媒層をメタノールが分解する温度に加熱する加熱手段を備えてなることを特徴とする。
【0015】
これによれば、メタノールを分解する第2触媒層を第1触媒層と別にすることで、温度を上げてメタノールの分解量を多くできる。なお、第2触媒層の触媒は、劣化が速くなり交換頻度が増加することになるが、第1触媒層で生成されるメタノールは微量なので第2触媒層を小型にできるから、触媒層全体の交換する場合に比べて触媒の交換が容易となる。また、第2触媒層の触媒は、メタノールを分解できる触媒を適宜選択でき、例えば、水性シフト反応の触媒と同じ組成の触媒、又は、別の組成の触媒を用いることができる。
【0016】
また、第1触媒層と第2触媒層を同一の容器に収容することができる。この場合、第2触媒層から容器への放熱を抑制する断熱層を設けることができる。例えば、容器の内面から第2触媒層を離して配置し、容器の内面と第2触媒層との間に気体の層を形成して第2触媒層から容器への放熱を抑制できる。これによれば、第2触媒層の温度が下がり難くなり、第2触媒層を加熱する熱量を低減できる。
【0017】
また、第1触媒層と第2触媒層を別々の容器に収容することができる。この場合、第1触媒層が収容された容器から排出されたガスをメタノールが分解される温度に加熱して、第2容器に導入することができる。
【0018】
なお、シフト反応装置を2段に分割し、前段を高温反応装置とし、後段を低温反応装置とし、高温反応装置から排出されるガスを冷却して低温反応装置に導入する場合は、低温反応装置に本発明の第1の態様又は第2の態様のシフト反応装置を用いることができる。つまり、発熱反応である水性シフト反応が進行すると、ガス温度が上昇して水性シフト反応が進行し難くなるから、水性シフト反応の途中でガスを一旦冷却して、残りの一酸化炭素を低温反応装置で二酸化炭素に転換している。そのため、低温反応装置で水性シフト反応が完了してメタノールが生成されるから、低温反応装置にのみ本発明の第1の態様又は第2の態様のシフト反応装置を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水性シフト反応の触媒層で生成されるメタノールを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】水性シフト反応の触媒層でメタノールが生成される現象を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1のガスタービンプラントの概念図である。
【図3】図2の低温反応装置の断面図である。
【図4】水性シフト反応の触媒層の劣化と温度の関係を示す図である。
【図5】水性シフト反応の触媒層でメタノールが分解される現象を示す図である。
【図6】ガス中のメタノール濃度と触媒層の温度の関係を示す図である。
【図7】本発明の実施形態2の低温反応装置の断面図である。
【図8】図7のセラミックボール層の水平方向の断面図である。
【図9】本発明の実施形態3の低温反応装置の断面図である。
【図10】図9の要部拡大図である。
【図11】本発明の実施形態4の低温反応装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
(実施形態1)
図2に示すように、実施形態1のガスタービンプラントは、例えば、石炭をガス化して生成された石炭ガスを燃焼しガスタービンを駆動して発電するようになっている。石炭ガスには、硫化水素等の硫黄分が含まれているので、石炭ガスを加熱器3で予熱して脱硫器5に導入し石炭ガス中の硫黄分を除去するようになっている。硫黄分が除去された石炭ガスは、ミキサー7に導入される。ミキサー7に導入された石炭ガスには、図示していない蒸気供給手段から高圧の水蒸気が添加され、ミキサー7で石炭ガスと水蒸気を均一混合するようになっている。水蒸気が混合された石炭ガスは、加熱器9で加熱された後、シフト反応装置11に導入される。
【0022】
シフト反応装置11は、触媒層の反応部の温度が、例えば、220℃〜470℃になる高温反応装置13と、触媒層の反応部の温度が、例えば、220℃〜260℃になる低温反応装置15を備えている。高温反応装置13には、触媒層18を収容する容器、例えば、円筒状の容器19が設けられている。触媒層18は、水性シフト反応を進行でき、かつ、耐熱温度の高い触媒、例えば、耐熱温度が480℃の鉄系の触媒で形成されている。高温反応装置13の出口側には、冷却器17が配置され、高温反応装置13の水性シフト反応で温度が上がったガスを冷却して、低温反応装置15に導入できるようになっている。冷却器17の入口側と出口側は、バイパス管20によりバイパスされ、バイパス管20の入口側には弁21が設けられている。これにより、冷却器17で冷却される混合ガスの量を調整できるようになっている。
【0023】
低温反応装置15には、触媒層25を収容する容器、例えば、円筒状の容器26が設けられている。触媒層25は、水性シフト反応を進行でき、かつ、メタノールを分解できる触媒、例えば、酸化銅40〜44%と酸化亜鉛45〜49%を主成分とする銅・亜鉛系の触媒で形成されている。触媒層25は、高温反応装置13の触媒層18より耐熱温度が低い触媒、例えば、耐熱温度が290℃の触媒で形成されている。
【0024】
低温反応装置15の出口側には、低温反応装置15から排出されるガスを冷却して、水性シフト反応の未反応の水蒸気を凝縮させる凝縮器27が設けられている。凝縮器27の後流側には、凝縮された水をガスから分離するノックアウトドラム28が設けられている。ノックアウトドラム28には、凝縮水を排水処理設備29に導く配管と、水蒸気が除去されたガスを吸収器30に導く配管が接続されている。排水処理設備29は、凝縮水を浄化処理する周知の設備を用いることができる。吸収器30は、導入されたガスに吸収液、例えば、アミン系の吸収液を添加して、ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させて除去するようになっている。二酸化炭素を吸収した吸収液は、図示していない再生装置で加熱又は減圧され吸収した二酸化炭素が分離された後、吸収器30に循環されるようになっている。吸収器30から排出されたガスは、燃料としてガスタービン31に供給され、ガスを燃焼してガスタービン31を駆動して発電できるようになっている。
【0025】
次に、実施形態1の特徴部に係る低温反応装置15について図3を用いて説明する。低温反応装置15の容器26は、容器26の頂部から底部に向かってガスが鉛直方向に流れるようになっている。容器26の頂部には、入口ノズル39が設けられている。容器26内の入口ノズル39側には、入口ノズル39から噴出されるガスが整流される空間40が設けられている。容器26の底部には出口ノズル41が設けられている。容器26内の出口ノズル41側には、触媒層25を通過したガスが整流される空間42が設けられている。
【0026】
容器26に収容された触媒層25の出口側には、触媒を効率的に充填できるように不活性で無機質な層、例えば、セラミックボール層43が設けられている。触媒層25とセラミックボール層43は格子板45に支持されている。触媒層25の出口部に対応する容器26の外面には、触媒層25の出口部を加熱する加熱手段、例えば、加熱流体を通流させる配管47が巻き付けられている。配管47は、触媒層25の出口部に対応する位置から容器26の底部に対応する容器26の外面に巻き付けられている。配管47には、図示していない供給源から弁49を介して加熱流体が供給されるようになっている。なお、配管47で加熱される部分には、保温材等が設けられている。
【0027】
触媒層25内には、温度計51、53が設けられている。温度計51は、容器26の水平方向断面の略中心に設けられ、温度計53は、触媒層25から容器26への放熱が大きい容器26の壁の近くに設けられている。温度計51は、図示していない調整手段に接続され、温度計51で検出された温度に基づいて弁21の開度が調整され、バイパス管20を通流させるガスの量を調整できるようになっている。温度計53は、図示していない調整手段に接続され、温度計53で検出された温度に基づいて弁49の開度が調整弁され、配管47に通流させる加熱流体の量を調整できるようになっている。
【0028】
次に、実施形態1のガスタービンプラントの動作を説明する。脱硫器5で硫黄分が除去された石炭ガスは、ミキサー7で水蒸気が添加される。ミキサー7から排出された石炭ガスと水蒸気の混合ガスは、加熱器9により高温反応装置13で水性シフト反応が生じる温度に加熱される。加熱された混合ガスは、高温反応装置13に導入され、高温反応装置13内の触媒層18により、下記式3の水性シフト反応により水蒸気(H2O)と石炭ガス中の一酸化炭素(CO)が反応して、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)が生成される。
CO+H2O=CO2+H2+41.4kJ/mol・・・(式3)
これにより、石炭ガス中の一酸化炭素の一部が二酸化炭素に転換される。この際、式3の水性シフト反応の発熱によりガス温度が上昇する。
【0029】
高温反応装置13から排出された混合ガスは、冷却器17により低温反応装置15で水性シフト反応が進行し易い温度に冷却される。冷却器17を通過した混合ガスは、低温反応装置15に導入され、触媒層25の存在下で、水性シフト反応により残りの一酸化炭素が二酸化炭素に転換される。
【0030】
低温反応装置15から排出されたガスは、凝縮器27で水蒸気が凝縮する温度、例えば、常温に冷却される。凝縮水を含むガスは、ノックアウトドラム28に導入され、ガス中の凝縮水が分離される。分離された凝縮水は、ノックアウトドラム28から排水処理設備29に導かれ、適宜浄化処理される。凝縮水が分離されたガスは、吸収器30に導入され、吸収器30でガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させて除去した後、ガスタービン31に燃料として供給される。なお、吸収液に吸収された二酸化炭素は、図示していない再生装置で吸収液から分離される。分離された二酸化炭素は、適宜液化、固化等の固定化処理される。二酸化炭素が分離された吸収液は、吸収器30に循環され供給される。
【0031】
次に、実施形態1の特徴部に係る低温反応装置15の動作を説明する。高温反応装置13から排出されたガスは、冷却器17とバイパス管20に分岐される。この際、温度計51で検出された触媒層25の温度に基づいて、分岐されるガスの量が調整される。つまり、触媒層25の温度と容器26に導入されるガスの温度が相関するから、触媒層25の温度が一定の範囲になるように、ガスの冷却量を調整して、容器26に導入されるガスの温度を一定の範囲にする。これにより、触媒層25の温度が一定になり、水性シフト反応を安定して進行できる。
【0032】
入口ノズル39から噴出されたガスは、空間40内に広がり整流される。整流されたガスは、触媒層25に導入され、水性シフト反応によりガス中の残りの一酸化炭素が二酸化炭素に転換される。水性シフト反応により、ガス中の一酸化炭素がある濃度以下になると水性シフト反応が完了する。この際、触媒層25は、触媒が劣化しても必要な滞留時間を確保できるように余分に形成されるから、触媒層25の使用初期の間は水性シフト反応が触媒層25の途中で完了する。例えば、図4に示すように、触媒層25の使用初期55は、触媒の活性が高く、触媒層25のAの位置で水性シフト反応が完了する。一方、触媒層25の使用期間が長くなり、入口側の触媒層25が劣化すると、破線56に示すように、水性シフト反応が完了する位置Aが図4の矢印方向に移動する。つまり、入口側の触媒が劣化しても、余分に形成されている出口側の触媒で水性シフト反応を生じさせて必要な滞留時間を確保する。なお、一点破線57に示すように、触媒の劣化が進み触媒層25で水性シフト反応が完了しなくなると、触媒層25を交換する。
【0033】
ところで、触媒層25の使用初期は、触媒層25の途中で水性シフト反応が完了するから、触媒層25の出口部は容器26への放熱により温度が下がる。この温度が下がった触媒層25の出口部で、水性シフト反応で生成した二酸化炭素と水素が反応しメタノールが生成される。そこで、触媒層25の出口部の温度を温度計53で検出し、触媒層25の出口部の温度を、例えば、触媒層の耐熱温度である290℃に維持するように、配管47に通流させる加熱流体の量が調整される。これにより、触媒層25で生成されたメタノールが分解され、水性シフト反応の触媒層で再生されるメタノールが低減される。触媒層25を通過したガスは、空間42により整流されて容器26の底部に設けられた出口ノズル41から排出される。
【0034】
ここで、図5を用いて触媒層25で生成されるメタノールを低減できる現象を説明する。触媒層25の入口側は、水性シフト反応によりガス温度が上昇しているから触媒層25の温度が高くなっている。一方、水性シフト反応が完了している触媒層25の出口部は、温度が低くなり、触媒層25の出口部で二酸化炭素と水素が反応してメタノールが生成される反応と、生成したメタノールが二酸化炭素と水素に分解される反応が可逆的に生じている。この際、触媒層25の出口部をメタノールの生成と分解が平衡する温度より高くすると、メタノールが分解される吸熱反応が進みメタノールが分解される。これにより、触媒層25で生成されるメタノールを低減できる。なお、図6に示すように、触媒層25の出口部の温度とメタノールの濃度は相関し、触媒層25の出口部の温度が、例えば、230℃より下がるとメタノールの濃度が急激に増加する。そのため、触媒層25の出口部の温度を、例えば、230℃以上、好ましくは、250℃以上、より好ましくは触媒層25の耐熱温度に加熱することにより、メタノールを低減できる。
【0035】
これによれば、水性シフト反応の触媒層25で生成されたメタノールが分解されるから、低温反応装置15から排出されるガス中のメタノールを低減できる。その結果、水性シフト反応の未反応の水蒸気を凝縮させてガスから除去しても、凝縮水に混じるメタノールは低減するから、凝縮水を浄化処理する排水処理設備29の負荷が増加することを抑制できる。
【0036】
例えば、水性シフト反応の触媒層の出口部を加熱しないと、水性シフト反応の触媒層で200ppm〜400ppmのメタノールが生成され、このメタノールが水蒸気と共に凝縮するから、凝縮水中のメタノールの濃度は1500ppm〜3000ppmとなる。これに対し、水性シフト反応の触媒層の出口部を加熱すると、水性シフト反応の触媒層で生成されるメタノールの濃度を10ppm以下にできる。
【0037】
なお、実施形態1は、ガスの流れ方向に高温反応装置13と低温反応装置15を配置し、2段の反応装置でシフト反応装置11を構成しているが、これに限定されるものではない。例えば、1つの反応装置でシフト反応装置を構成できる。また一酸化炭素の濃度が高い石炭ガスを水性シフト反応する場合は、水性シフト反応による発熱が大きいので、高温反応装置13を複数段配置することができる。
【0038】
また、加熱手段の位置は、実施形態1に限定されるものではない。例えば、触媒層のガスの流れ方向下流側の半分を加熱するように加熱手段を設けることができる。また、触媒層25の出口部に対応する容器26の外面にのみ加熱手段を設けることができる。
【0039】
また、加熱手段は、実施形態1に限定されるものではない。例えば、電気式の加熱器を触媒層25の出口部に対応する容器26の外面に設けることができる。
【0040】
また、温度計51、53の位置及び数は実施形態1に限定されるものではない。例えば、ガスの流れ方向に沿って温度計を複数設ける、又は、容器26の水平断面に温度計を複数設ける等適宜選択できる。
【0041】
なお、シフト反応装置11に導入される石炭ガスの組成が、例えば、水素:25vol%、一酸化炭素:55vol%、二酸化炭素:2vol%、メタン:1vol%、窒素:17vol%の場合は、実施形態1のシフト反応装置11により石炭ガス中の一酸化炭素の約60%〜70%を二酸化炭素に転換する。
【0042】
(実施形態2)
図7を用いて、実施形態2のシフト反応装置を説明する。実施形態2が実施形態1と相違する点は、容器26内にガスの流れ方向に触媒層を2段設け、前段を水性シフト反応を生じさせる触媒層とし、後段をメタノールを分解させる触媒層としている点である。また、前段と後段の触媒層の間に、セラミックボール層を設け、セラミックボール層内に加熱流体を通流させる配管を設けている点である。さらに、後段の触媒層内に温度計を2つ配置し、2つの温度計のうち温度が低い方の温度計に基づいて、加熱流体の供給量を調整している点である。その他の構成は実施形態1と同一のであるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
容器26内には、水性シフト反応を生じさせる第1の触媒層61と、触媒層61の出口側に触媒層61から離して設けられ、触媒層61で生じたメタノールを分解する第2の触媒層63が設けられている。触媒層61は、例えば、銅・亜鉛系の触媒により形成されている。触媒層63は、メタノールを分解できる触媒により形成され、例えば、触媒層61と同じ触媒で形成されている。触媒層63内には、温度計67、69が設けられている。温度計67は、容器26の壁の内面の近くに設けられている。温度計69は、触媒層63の水平方向の断面の略中心に設けられている。温度計67、69は、切替手段71を介して弁49の開度を調整する調整手段に接続されている。
【0044】
触媒層61と触媒層63の間には、セラミックボール層65が設けられている。セラミックボール層65内には、加熱流体を通流させる配管73が設けられている。配管73には、弁49が接続されている。なお、配管73は、例えば、図7(a)に示すように、セラミックボール層65の水平方向の断面が渦巻き状になるように形成できる。また、図7(b)に示すように、セラミックボール層65の水平方向の断面が格子状に形成することができる。
【0045】
次に、実施形態2の特徴動作を説明する。容器26に導入されたガスは、触媒層61の存在下で水性シフト反応が生じ、ガス中の一酸化炭素が二酸化炭素に転換される。水性シフト反応は、触媒層61の途中で終了すると、触媒層61の出口部の温度が下がり、水性シフト反応により生成された二酸化炭素と水素が反応してメタノールが生じる。メタノールを含むガスは、配管47及び73内を通流する加熱流体で加熱されたセラミックボール層65に導入され、触媒層63の温度をメタノールが分解される温度に維持されるように加熱される。セラミックボール層65を通過したガスは、触媒層63に導入され、ガス中のメタノールが二酸化炭素と水素に分解される。この際、触媒層63は、容器26の外面に設けられた配管47を通流する加熱流体により、メタノールを分解できる温度に加熱されている。触媒層63の温度は、温度計67又は69で検出され、温度が低い方の温度計で検出された温度に基づいて弁49の開度が調整されるように、切替手段71は、温度計67又は69のいずれか一方を弁49の開度調整手段に接続する。これにより、触媒層63の水平方向の断面の温度のばらつきがあっても、触媒層63をメタノールが分解される温度以上に加熱できる。
【0046】
これによれば、メタノールを分解する触媒層63を、水性シフト反応の触媒層61と別に設けたから、触媒層63の温度を上げてメタノールの分解量を多くできる。つまり、メタノールの分解量が多くなるように触媒層を加熱すると触媒の劣化が速くなり、触媒層の交換頻度が高くなる。しかし、メタノールを分解する触媒層63のみを交換できるようにしたから、触媒層全体を交換する場合に比べて触媒の交換を容易にできる。また、交換が容易であるから、触媒層63を触媒の耐熱温度を超える温度、例えば、310℃に加熱でき、メタノールの分解量を一層多くできる。なお、触媒層61で生成されるメタノールは微量であるから、触媒層63を小型にできる。例えば、触媒層63を触媒層61の触媒量の1/30〜1/100の触媒で形成できる。
【0047】
また、容器26内のガスの流れ方向の断面全体に設けられたセラミックボール層65により、ガスを加熱するから触媒層63に導入されるガスの温度のばらつきを抑制でき、触媒層63の温度を均一にできるから、メタノールの分解反応を触媒層63で均一に進行でき、メタノールの分解量を一層増加できる。
【0048】
なお、触媒層63を加熱する加熱手段を、容器26の外面又は容器26内のセラミックボール層65いずれか一方に設けることができる。例えば、容器26の外面に加熱手段を設ける場合は、既設のシフト反応装置に加熱手段を容易に設けることができる。一方、容器26内のセラミックボール層65に加熱手段を設ける場合は、容器26内を直接加熱でき加熱に必要な熱量を低減できる。
【0049】
なお、触媒層63は、水性シフト反応を生じる触媒層に限定されるものではなく、メタノールを分解できる触媒を適宜選択できる。
【0050】
また、触媒層61の出口部に対応する容器26の外面に加熱手段を設けて、触媒層61の出口部を加熱することができる。
【0051】
また、セラミックボール層65内の配管73からの放熱により、触媒層61の出口部を加熱することができる。
【0052】
(実施形態3)
図9、10を用いて、実施形態2の変形例のシフト反応装置を説明する。実施形態3が実施形態2と相違する点は、触媒層63を容器26の壁から離している点である。その他の構成は、実施形態2と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
触媒層63は、出口に向かうに従い、水平方向の断面積が小さくなるように形成されている。これにより、触媒層63と容器26の内面との間に断熱層である空間75が形成されている。
【0054】
これによれば、触媒層63と容器26内面との間に空間75を形成したから、空間75により触媒層63から容器26への伝熱抵抗を大きくでき、触媒層63の温度が低下することを抑制できるので、触媒層63を加熱する熱量を低減できる。その結果、例えば、加熱流体を通流させる配管47又は配管73のいずれか一方を無くすことができ、シフト反応装置を簡略化できる。また、触媒層63の出口部を小さくしたことから、触媒層63の出口断面の温度分布のばらつきを抑制でき、メタノールの分解反応を均一化できるので、メタノールの分解量を一層低減できる。なお、触媒層63の出口の断面積を、例えば、触媒層63の入口の断面積の50〜70%の大きさに形成できる。
【0055】
(実施形態4)
図11を用いて、実施形態2の変形例のシフト反応装置を説明する。実施形態4が実施形態2と相違する点は、水性シフト反応の触媒層を収容された容器の出口側にメタノールを分解する触媒層が収容された容器を配置している点である。また、水性シフト反応の触媒層が収容された容器から排出されるガスを、メタノールを分解する触媒層が収容された容器に導く配管に、加熱流体を通流させる加熱器を設けている点である。その他の構成は、実施形態2と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
触媒層61が収容された容器26の出口側には、触媒層63が収容された容器77が設けられている。容器77内には、触媒層63を支える格子板79が設けられている。触媒層63の出口部には、容器77の壁の近くに温度計81が設けられている。温度計81は、図示していない弁49の開度を調整する調整手段に接続されている。容器26と容器77を接続する配管には、加熱流体を通流させる加熱器79が設けられ、容器26から排出されたガスを加熱するようになっている。
【0057】
次に、実施形態4の特徴動作を説明する。容器26から排出されたガスには、触媒層61の出口部で二酸化炭素と水素が反応して生成したメタノールが含まれている。このメタノールを含むガスは、加熱器79により加熱されて容器77に導入される。この際、加熱器79に通流される加熱流体の量は、温度計81で検出された触媒層63の出口部の温度に基づいて調整される。つまり、触媒層63の温度がメタノールを分解できる温度に維持されるように、加熱流体の量が調整される。容器77内に導入されたガスは、触媒層63の存在下でガス中のメタノールが二酸化炭素と水素に分解され、メタノールが低減される。
【0058】
これによれば、例えば、加熱器26と触媒層63が収容された容器77を設けることで、シフト反応装置から排出されるメタノールを低減できるから、例えば、既設のシフト反応装置から排出されるメタノールを容易に低減できる。
【符号の説明】
【0059】
1 ガスタービンプラント
11 シフト反応装置
13 高温反応装置
15 低温反応装置
25 触媒層
26 容器
27 凝縮器
30 吸収器
31 ガスタービン
47 配管
61 触媒層
63 触媒層
65 セラミックボール層
73 配管
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフト反応装置及びガスタービンプラントに係り、一酸化炭素と水を含む混合ガスをシフト反応装置に導入して一酸化炭素を二酸化炭素に転換し、一酸化炭素が低減されたガスをガスタービンの燃料とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭をガス化して生成した石炭ガスを燃焼しガスタービンを駆動して発電するガスタービンプラントが知られている。石炭ガスは、一酸化炭素を含んでいるので、燃焼すると二酸化炭素が発生して地球環境の負荷になる。そのため、特許文献1には、石炭ガスに水蒸気を添加して、触媒存在下で石炭ガス中の一酸化炭素と水蒸気を反応させて二酸化炭素と水素に転換する、所謂、水性シフト反応により石炭ガス中の一酸化炭素を低減してガスタービンの燃料とすることが提案されている。水性シフト反応で生成された二酸化炭素は、吸収液に吸収させて石炭ガスから除去するようにしている。
【0003】
一方、石炭ガスを燃焼させる熱機関の技術ではないが、特許文献2には、燃料電池に供給する水素を製造する技術として、一酸化炭素を含む改質ガスに水蒸気を添加して水性シフト反応により一酸化炭素を低減又は除去するシフト反応装置が提案されている。同文献のシフト反応装置は、触媒層をガスの流れ方向に2段配置し、前段を高温反応部とし、後段を低温反応部とし、高温反応部から排出されたガスを一旦冷却して、発熱反応である水性シフト反応を進行させている。これにより、燃料電池の触媒を被毒する一酸化炭素を低減又は除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−331701号公報
【特許文献2】WO01/047801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2は、水性シフト反応の触媒層でメタノールが生成されることがあることについては配慮されていない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、水性シフト反応の触媒層で生成されるメタノールを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、水性シフト反応の触媒層でメタノールが生成される原因について検討したところ、水性シフト反応により生成された二酸化炭素と水素が水性シフト反応の触媒層で反応してメタノールが生成されることを知見した。さらに、メタノールの生成反応は、触媒層の温度が低くなると促進されることを知見した。
【0008】
この現象を図1を用いて説明する。図1は、シフト反応装置におけるガス温度とガス中のメタノール濃度の関係を示す図である。一酸化炭素と水を含む混合ガスがシフト反応装置101の触媒層103に導入されると、水性シフト反応により混合ガス中の一酸化炭素と水が反応して二酸化炭素と水素が生成される。また、水性シフト反応は発熱反応であるから、水性シフト反応が進行している間はガス温度は上昇する。一方、水性シフト反応の触媒層103は、触媒が劣化しても必要な滞留時間を確保できるように触媒層が余分に形成されるから、初期の間は水性シフト反応が触媒層103の途中で完了する。発熱反応である水性シフト反応が完了するとガス温度が下がり、その位置の水性シフト反応の触媒層によりメタノールの生成反応が生じて、メタノールが生成される。すなわち、メタノールの生成反応は発熱反応であるから、温度が下がる触媒層の出口部で反応が生じてメタノールが生成される。
【0009】
とろこで、石炭ガスを燃焼する熱機関は、燃料となるガスに水が混じると熱量が低下するから、図1に示すように、シフト反応装置の出口側に冷却器105を配置し、水性シフト反応の未反応の水蒸気を凝縮させて除去している。この場合、シフト反応装置101から排出されたガス中のメタノールは、未反応の水蒸気とともに凝縮される。その結果、凝縮水にメタノールが混じるから、凝縮水の浄化処理の負荷が増加することになる。
【0010】
そこで、本発明の発明者らは、水性シフト反応が完了して温度が下がる触媒層の出口部でメタノールの生成が起きること、及びその触媒の温度をある温度以上にすればメタノールの反応を抑制できることを知見して、本発明を想到した。
【0011】
すなわち、上記課題を解決するため、本発明の第1の態様のシフト反応装置は、一酸化炭素と水を含む混合ガスが導入され、該混合ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に転換する触媒層と、該触媒層の出口部を加熱する加熱手段を備えてなることを特徴とする。
【0012】
ここで、水性シフト反応の触媒層においては、水性シフト反応で生成された二酸化炭素(CO2)と水素(H2)が、下記式1の反応によりメタノール(CH3OH)と水(H2O)に生成される反応と、式1の反応で生成されたメタノールが、下記式2の反応で二酸化炭素と水素に分解される反応が可逆的に起こる。
CO2 + 3H2 → CH3OH + H2O・・・(式1)
CH3OH + H2O → CO2 + 3H2・・・(式2)
ここで、式1と式2の反応が平衡する温度は、主としてメタノールの濃度と触媒層の温度に依存し、平衡温度より高くなると式2の吸熱反応が進みメタノールが分解され、平衡温度より低くなると式1の発熱反応が進みメタノールが生成される。すなわち、平衡温度より高くなるように触媒層の出口部を加熱すると、生成されたメタノールが分解されて、水性シフト反応の触媒層で生成されるメタノールの濃度を低減できる。なお、触媒層の出口部をメタノールが分解される温度、例えば、230℃以上、好ましくは、250℃以上、より好ましくは触媒の耐熱温度に加熱することにより、メタノールを低減できる。
【0013】
また、触媒層を容器に収容したシフト反応装置の触媒層の出口部を加熱する場合は、触媒層の出口部に対応する容器の外面に加熱手段を設けることができる。これによれば、触媒層と容器はそのまま利用できるので、既設のシフト反応装置に本発明を容易に適用できる。
【0014】
ところで、触媒層の出口部を加熱すると、出口部の触媒の劣化が速くなる。そこで、本発明の第2の態様のシフト反応装置は、混合ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に転換する第1触媒層と、第1触媒層の出口側に第1触媒層から離して設けられ、第1触媒層で生じたメタノールを分解する第2触媒層と、少なくとも第2触媒層をメタノールが分解する温度に加熱する加熱手段を備えてなることを特徴とする。
【0015】
これによれば、メタノールを分解する第2触媒層を第1触媒層と別にすることで、温度を上げてメタノールの分解量を多くできる。なお、第2触媒層の触媒は、劣化が速くなり交換頻度が増加することになるが、第1触媒層で生成されるメタノールは微量なので第2触媒層を小型にできるから、触媒層全体の交換する場合に比べて触媒の交換が容易となる。また、第2触媒層の触媒は、メタノールを分解できる触媒を適宜選択でき、例えば、水性シフト反応の触媒と同じ組成の触媒、又は、別の組成の触媒を用いることができる。
【0016】
また、第1触媒層と第2触媒層を同一の容器に収容することができる。この場合、第2触媒層から容器への放熱を抑制する断熱層を設けることができる。例えば、容器の内面から第2触媒層を離して配置し、容器の内面と第2触媒層との間に気体の層を形成して第2触媒層から容器への放熱を抑制できる。これによれば、第2触媒層の温度が下がり難くなり、第2触媒層を加熱する熱量を低減できる。
【0017】
また、第1触媒層と第2触媒層を別々の容器に収容することができる。この場合、第1触媒層が収容された容器から排出されたガスをメタノールが分解される温度に加熱して、第2容器に導入することができる。
【0018】
なお、シフト反応装置を2段に分割し、前段を高温反応装置とし、後段を低温反応装置とし、高温反応装置から排出されるガスを冷却して低温反応装置に導入する場合は、低温反応装置に本発明の第1の態様又は第2の態様のシフト反応装置を用いることができる。つまり、発熱反応である水性シフト反応が進行すると、ガス温度が上昇して水性シフト反応が進行し難くなるから、水性シフト反応の途中でガスを一旦冷却して、残りの一酸化炭素を低温反応装置で二酸化炭素に転換している。そのため、低温反応装置で水性シフト反応が完了してメタノールが生成されるから、低温反応装置にのみ本発明の第1の態様又は第2の態様のシフト反応装置を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水性シフト反応の触媒層で生成されるメタノールを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】水性シフト反応の触媒層でメタノールが生成される現象を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1のガスタービンプラントの概念図である。
【図3】図2の低温反応装置の断面図である。
【図4】水性シフト反応の触媒層の劣化と温度の関係を示す図である。
【図5】水性シフト反応の触媒層でメタノールが分解される現象を示す図である。
【図6】ガス中のメタノール濃度と触媒層の温度の関係を示す図である。
【図7】本発明の実施形態2の低温反応装置の断面図である。
【図8】図7のセラミックボール層の水平方向の断面図である。
【図9】本発明の実施形態3の低温反応装置の断面図である。
【図10】図9の要部拡大図である。
【図11】本発明の実施形態4の低温反応装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
(実施形態1)
図2に示すように、実施形態1のガスタービンプラントは、例えば、石炭をガス化して生成された石炭ガスを燃焼しガスタービンを駆動して発電するようになっている。石炭ガスには、硫化水素等の硫黄分が含まれているので、石炭ガスを加熱器3で予熱して脱硫器5に導入し石炭ガス中の硫黄分を除去するようになっている。硫黄分が除去された石炭ガスは、ミキサー7に導入される。ミキサー7に導入された石炭ガスには、図示していない蒸気供給手段から高圧の水蒸気が添加され、ミキサー7で石炭ガスと水蒸気を均一混合するようになっている。水蒸気が混合された石炭ガスは、加熱器9で加熱された後、シフト反応装置11に導入される。
【0022】
シフト反応装置11は、触媒層の反応部の温度が、例えば、220℃〜470℃になる高温反応装置13と、触媒層の反応部の温度が、例えば、220℃〜260℃になる低温反応装置15を備えている。高温反応装置13には、触媒層18を収容する容器、例えば、円筒状の容器19が設けられている。触媒層18は、水性シフト反応を進行でき、かつ、耐熱温度の高い触媒、例えば、耐熱温度が480℃の鉄系の触媒で形成されている。高温反応装置13の出口側には、冷却器17が配置され、高温反応装置13の水性シフト反応で温度が上がったガスを冷却して、低温反応装置15に導入できるようになっている。冷却器17の入口側と出口側は、バイパス管20によりバイパスされ、バイパス管20の入口側には弁21が設けられている。これにより、冷却器17で冷却される混合ガスの量を調整できるようになっている。
【0023】
低温反応装置15には、触媒層25を収容する容器、例えば、円筒状の容器26が設けられている。触媒層25は、水性シフト反応を進行でき、かつ、メタノールを分解できる触媒、例えば、酸化銅40〜44%と酸化亜鉛45〜49%を主成分とする銅・亜鉛系の触媒で形成されている。触媒層25は、高温反応装置13の触媒層18より耐熱温度が低い触媒、例えば、耐熱温度が290℃の触媒で形成されている。
【0024】
低温反応装置15の出口側には、低温反応装置15から排出されるガスを冷却して、水性シフト反応の未反応の水蒸気を凝縮させる凝縮器27が設けられている。凝縮器27の後流側には、凝縮された水をガスから分離するノックアウトドラム28が設けられている。ノックアウトドラム28には、凝縮水を排水処理設備29に導く配管と、水蒸気が除去されたガスを吸収器30に導く配管が接続されている。排水処理設備29は、凝縮水を浄化処理する周知の設備を用いることができる。吸収器30は、導入されたガスに吸収液、例えば、アミン系の吸収液を添加して、ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させて除去するようになっている。二酸化炭素を吸収した吸収液は、図示していない再生装置で加熱又は減圧され吸収した二酸化炭素が分離された後、吸収器30に循環されるようになっている。吸収器30から排出されたガスは、燃料としてガスタービン31に供給され、ガスを燃焼してガスタービン31を駆動して発電できるようになっている。
【0025】
次に、実施形態1の特徴部に係る低温反応装置15について図3を用いて説明する。低温反応装置15の容器26は、容器26の頂部から底部に向かってガスが鉛直方向に流れるようになっている。容器26の頂部には、入口ノズル39が設けられている。容器26内の入口ノズル39側には、入口ノズル39から噴出されるガスが整流される空間40が設けられている。容器26の底部には出口ノズル41が設けられている。容器26内の出口ノズル41側には、触媒層25を通過したガスが整流される空間42が設けられている。
【0026】
容器26に収容された触媒層25の出口側には、触媒を効率的に充填できるように不活性で無機質な層、例えば、セラミックボール層43が設けられている。触媒層25とセラミックボール層43は格子板45に支持されている。触媒層25の出口部に対応する容器26の外面には、触媒層25の出口部を加熱する加熱手段、例えば、加熱流体を通流させる配管47が巻き付けられている。配管47は、触媒層25の出口部に対応する位置から容器26の底部に対応する容器26の外面に巻き付けられている。配管47には、図示していない供給源から弁49を介して加熱流体が供給されるようになっている。なお、配管47で加熱される部分には、保温材等が設けられている。
【0027】
触媒層25内には、温度計51、53が設けられている。温度計51は、容器26の水平方向断面の略中心に設けられ、温度計53は、触媒層25から容器26への放熱が大きい容器26の壁の近くに設けられている。温度計51は、図示していない調整手段に接続され、温度計51で検出された温度に基づいて弁21の開度が調整され、バイパス管20を通流させるガスの量を調整できるようになっている。温度計53は、図示していない調整手段に接続され、温度計53で検出された温度に基づいて弁49の開度が調整弁され、配管47に通流させる加熱流体の量を調整できるようになっている。
【0028】
次に、実施形態1のガスタービンプラントの動作を説明する。脱硫器5で硫黄分が除去された石炭ガスは、ミキサー7で水蒸気が添加される。ミキサー7から排出された石炭ガスと水蒸気の混合ガスは、加熱器9により高温反応装置13で水性シフト反応が生じる温度に加熱される。加熱された混合ガスは、高温反応装置13に導入され、高温反応装置13内の触媒層18により、下記式3の水性シフト反応により水蒸気(H2O)と石炭ガス中の一酸化炭素(CO)が反応して、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)が生成される。
CO+H2O=CO2+H2+41.4kJ/mol・・・(式3)
これにより、石炭ガス中の一酸化炭素の一部が二酸化炭素に転換される。この際、式3の水性シフト反応の発熱によりガス温度が上昇する。
【0029】
高温反応装置13から排出された混合ガスは、冷却器17により低温反応装置15で水性シフト反応が進行し易い温度に冷却される。冷却器17を通過した混合ガスは、低温反応装置15に導入され、触媒層25の存在下で、水性シフト反応により残りの一酸化炭素が二酸化炭素に転換される。
【0030】
低温反応装置15から排出されたガスは、凝縮器27で水蒸気が凝縮する温度、例えば、常温に冷却される。凝縮水を含むガスは、ノックアウトドラム28に導入され、ガス中の凝縮水が分離される。分離された凝縮水は、ノックアウトドラム28から排水処理設備29に導かれ、適宜浄化処理される。凝縮水が分離されたガスは、吸収器30に導入され、吸収器30でガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させて除去した後、ガスタービン31に燃料として供給される。なお、吸収液に吸収された二酸化炭素は、図示していない再生装置で吸収液から分離される。分離された二酸化炭素は、適宜液化、固化等の固定化処理される。二酸化炭素が分離された吸収液は、吸収器30に循環され供給される。
【0031】
次に、実施形態1の特徴部に係る低温反応装置15の動作を説明する。高温反応装置13から排出されたガスは、冷却器17とバイパス管20に分岐される。この際、温度計51で検出された触媒層25の温度に基づいて、分岐されるガスの量が調整される。つまり、触媒層25の温度と容器26に導入されるガスの温度が相関するから、触媒層25の温度が一定の範囲になるように、ガスの冷却量を調整して、容器26に導入されるガスの温度を一定の範囲にする。これにより、触媒層25の温度が一定になり、水性シフト反応を安定して進行できる。
【0032】
入口ノズル39から噴出されたガスは、空間40内に広がり整流される。整流されたガスは、触媒層25に導入され、水性シフト反応によりガス中の残りの一酸化炭素が二酸化炭素に転換される。水性シフト反応により、ガス中の一酸化炭素がある濃度以下になると水性シフト反応が完了する。この際、触媒層25は、触媒が劣化しても必要な滞留時間を確保できるように余分に形成されるから、触媒層25の使用初期の間は水性シフト反応が触媒層25の途中で完了する。例えば、図4に示すように、触媒層25の使用初期55は、触媒の活性が高く、触媒層25のAの位置で水性シフト反応が完了する。一方、触媒層25の使用期間が長くなり、入口側の触媒層25が劣化すると、破線56に示すように、水性シフト反応が完了する位置Aが図4の矢印方向に移動する。つまり、入口側の触媒が劣化しても、余分に形成されている出口側の触媒で水性シフト反応を生じさせて必要な滞留時間を確保する。なお、一点破線57に示すように、触媒の劣化が進み触媒層25で水性シフト反応が完了しなくなると、触媒層25を交換する。
【0033】
ところで、触媒層25の使用初期は、触媒層25の途中で水性シフト反応が完了するから、触媒層25の出口部は容器26への放熱により温度が下がる。この温度が下がった触媒層25の出口部で、水性シフト反応で生成した二酸化炭素と水素が反応しメタノールが生成される。そこで、触媒層25の出口部の温度を温度計53で検出し、触媒層25の出口部の温度を、例えば、触媒層の耐熱温度である290℃に維持するように、配管47に通流させる加熱流体の量が調整される。これにより、触媒層25で生成されたメタノールが分解され、水性シフト反応の触媒層で再生されるメタノールが低減される。触媒層25を通過したガスは、空間42により整流されて容器26の底部に設けられた出口ノズル41から排出される。
【0034】
ここで、図5を用いて触媒層25で生成されるメタノールを低減できる現象を説明する。触媒層25の入口側は、水性シフト反応によりガス温度が上昇しているから触媒層25の温度が高くなっている。一方、水性シフト反応が完了している触媒層25の出口部は、温度が低くなり、触媒層25の出口部で二酸化炭素と水素が反応してメタノールが生成される反応と、生成したメタノールが二酸化炭素と水素に分解される反応が可逆的に生じている。この際、触媒層25の出口部をメタノールの生成と分解が平衡する温度より高くすると、メタノールが分解される吸熱反応が進みメタノールが分解される。これにより、触媒層25で生成されるメタノールを低減できる。なお、図6に示すように、触媒層25の出口部の温度とメタノールの濃度は相関し、触媒層25の出口部の温度が、例えば、230℃より下がるとメタノールの濃度が急激に増加する。そのため、触媒層25の出口部の温度を、例えば、230℃以上、好ましくは、250℃以上、より好ましくは触媒層25の耐熱温度に加熱することにより、メタノールを低減できる。
【0035】
これによれば、水性シフト反応の触媒層25で生成されたメタノールが分解されるから、低温反応装置15から排出されるガス中のメタノールを低減できる。その結果、水性シフト反応の未反応の水蒸気を凝縮させてガスから除去しても、凝縮水に混じるメタノールは低減するから、凝縮水を浄化処理する排水処理設備29の負荷が増加することを抑制できる。
【0036】
例えば、水性シフト反応の触媒層の出口部を加熱しないと、水性シフト反応の触媒層で200ppm〜400ppmのメタノールが生成され、このメタノールが水蒸気と共に凝縮するから、凝縮水中のメタノールの濃度は1500ppm〜3000ppmとなる。これに対し、水性シフト反応の触媒層の出口部を加熱すると、水性シフト反応の触媒層で生成されるメタノールの濃度を10ppm以下にできる。
【0037】
なお、実施形態1は、ガスの流れ方向に高温反応装置13と低温反応装置15を配置し、2段の反応装置でシフト反応装置11を構成しているが、これに限定されるものではない。例えば、1つの反応装置でシフト反応装置を構成できる。また一酸化炭素の濃度が高い石炭ガスを水性シフト反応する場合は、水性シフト反応による発熱が大きいので、高温反応装置13を複数段配置することができる。
【0038】
また、加熱手段の位置は、実施形態1に限定されるものではない。例えば、触媒層のガスの流れ方向下流側の半分を加熱するように加熱手段を設けることができる。また、触媒層25の出口部に対応する容器26の外面にのみ加熱手段を設けることができる。
【0039】
また、加熱手段は、実施形態1に限定されるものではない。例えば、電気式の加熱器を触媒層25の出口部に対応する容器26の外面に設けることができる。
【0040】
また、温度計51、53の位置及び数は実施形態1に限定されるものではない。例えば、ガスの流れ方向に沿って温度計を複数設ける、又は、容器26の水平断面に温度計を複数設ける等適宜選択できる。
【0041】
なお、シフト反応装置11に導入される石炭ガスの組成が、例えば、水素:25vol%、一酸化炭素:55vol%、二酸化炭素:2vol%、メタン:1vol%、窒素:17vol%の場合は、実施形態1のシフト反応装置11により石炭ガス中の一酸化炭素の約60%〜70%を二酸化炭素に転換する。
【0042】
(実施形態2)
図7を用いて、実施形態2のシフト反応装置を説明する。実施形態2が実施形態1と相違する点は、容器26内にガスの流れ方向に触媒層を2段設け、前段を水性シフト反応を生じさせる触媒層とし、後段をメタノールを分解させる触媒層としている点である。また、前段と後段の触媒層の間に、セラミックボール層を設け、セラミックボール層内に加熱流体を通流させる配管を設けている点である。さらに、後段の触媒層内に温度計を2つ配置し、2つの温度計のうち温度が低い方の温度計に基づいて、加熱流体の供給量を調整している点である。その他の構成は実施形態1と同一のであるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
容器26内には、水性シフト反応を生じさせる第1の触媒層61と、触媒層61の出口側に触媒層61から離して設けられ、触媒層61で生じたメタノールを分解する第2の触媒層63が設けられている。触媒層61は、例えば、銅・亜鉛系の触媒により形成されている。触媒層63は、メタノールを分解できる触媒により形成され、例えば、触媒層61と同じ触媒で形成されている。触媒層63内には、温度計67、69が設けられている。温度計67は、容器26の壁の内面の近くに設けられている。温度計69は、触媒層63の水平方向の断面の略中心に設けられている。温度計67、69は、切替手段71を介して弁49の開度を調整する調整手段に接続されている。
【0044】
触媒層61と触媒層63の間には、セラミックボール層65が設けられている。セラミックボール層65内には、加熱流体を通流させる配管73が設けられている。配管73には、弁49が接続されている。なお、配管73は、例えば、図7(a)に示すように、セラミックボール層65の水平方向の断面が渦巻き状になるように形成できる。また、図7(b)に示すように、セラミックボール層65の水平方向の断面が格子状に形成することができる。
【0045】
次に、実施形態2の特徴動作を説明する。容器26に導入されたガスは、触媒層61の存在下で水性シフト反応が生じ、ガス中の一酸化炭素が二酸化炭素に転換される。水性シフト反応は、触媒層61の途中で終了すると、触媒層61の出口部の温度が下がり、水性シフト反応により生成された二酸化炭素と水素が反応してメタノールが生じる。メタノールを含むガスは、配管47及び73内を通流する加熱流体で加熱されたセラミックボール層65に導入され、触媒層63の温度をメタノールが分解される温度に維持されるように加熱される。セラミックボール層65を通過したガスは、触媒層63に導入され、ガス中のメタノールが二酸化炭素と水素に分解される。この際、触媒層63は、容器26の外面に設けられた配管47を通流する加熱流体により、メタノールを分解できる温度に加熱されている。触媒層63の温度は、温度計67又は69で検出され、温度が低い方の温度計で検出された温度に基づいて弁49の開度が調整されるように、切替手段71は、温度計67又は69のいずれか一方を弁49の開度調整手段に接続する。これにより、触媒層63の水平方向の断面の温度のばらつきがあっても、触媒層63をメタノールが分解される温度以上に加熱できる。
【0046】
これによれば、メタノールを分解する触媒層63を、水性シフト反応の触媒層61と別に設けたから、触媒層63の温度を上げてメタノールの分解量を多くできる。つまり、メタノールの分解量が多くなるように触媒層を加熱すると触媒の劣化が速くなり、触媒層の交換頻度が高くなる。しかし、メタノールを分解する触媒層63のみを交換できるようにしたから、触媒層全体を交換する場合に比べて触媒の交換を容易にできる。また、交換が容易であるから、触媒層63を触媒の耐熱温度を超える温度、例えば、310℃に加熱でき、メタノールの分解量を一層多くできる。なお、触媒層61で生成されるメタノールは微量であるから、触媒層63を小型にできる。例えば、触媒層63を触媒層61の触媒量の1/30〜1/100の触媒で形成できる。
【0047】
また、容器26内のガスの流れ方向の断面全体に設けられたセラミックボール層65により、ガスを加熱するから触媒層63に導入されるガスの温度のばらつきを抑制でき、触媒層63の温度を均一にできるから、メタノールの分解反応を触媒層63で均一に進行でき、メタノールの分解量を一層増加できる。
【0048】
なお、触媒層63を加熱する加熱手段を、容器26の外面又は容器26内のセラミックボール層65いずれか一方に設けることができる。例えば、容器26の外面に加熱手段を設ける場合は、既設のシフト反応装置に加熱手段を容易に設けることができる。一方、容器26内のセラミックボール層65に加熱手段を設ける場合は、容器26内を直接加熱でき加熱に必要な熱量を低減できる。
【0049】
なお、触媒層63は、水性シフト反応を生じる触媒層に限定されるものではなく、メタノールを分解できる触媒を適宜選択できる。
【0050】
また、触媒層61の出口部に対応する容器26の外面に加熱手段を設けて、触媒層61の出口部を加熱することができる。
【0051】
また、セラミックボール層65内の配管73からの放熱により、触媒層61の出口部を加熱することができる。
【0052】
(実施形態3)
図9、10を用いて、実施形態2の変形例のシフト反応装置を説明する。実施形態3が実施形態2と相違する点は、触媒層63を容器26の壁から離している点である。その他の構成は、実施形態2と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
触媒層63は、出口に向かうに従い、水平方向の断面積が小さくなるように形成されている。これにより、触媒層63と容器26の内面との間に断熱層である空間75が形成されている。
【0054】
これによれば、触媒層63と容器26内面との間に空間75を形成したから、空間75により触媒層63から容器26への伝熱抵抗を大きくでき、触媒層63の温度が低下することを抑制できるので、触媒層63を加熱する熱量を低減できる。その結果、例えば、加熱流体を通流させる配管47又は配管73のいずれか一方を無くすことができ、シフト反応装置を簡略化できる。また、触媒層63の出口部を小さくしたことから、触媒層63の出口断面の温度分布のばらつきを抑制でき、メタノールの分解反応を均一化できるので、メタノールの分解量を一層低減できる。なお、触媒層63の出口の断面積を、例えば、触媒層63の入口の断面積の50〜70%の大きさに形成できる。
【0055】
(実施形態4)
図11を用いて、実施形態2の変形例のシフト反応装置を説明する。実施形態4が実施形態2と相違する点は、水性シフト反応の触媒層を収容された容器の出口側にメタノールを分解する触媒層が収容された容器を配置している点である。また、水性シフト反応の触媒層が収容された容器から排出されるガスを、メタノールを分解する触媒層が収容された容器に導く配管に、加熱流体を通流させる加熱器を設けている点である。その他の構成は、実施形態2と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
触媒層61が収容された容器26の出口側には、触媒層63が収容された容器77が設けられている。容器77内には、触媒層63を支える格子板79が設けられている。触媒層63の出口部には、容器77の壁の近くに温度計81が設けられている。温度計81は、図示していない弁49の開度を調整する調整手段に接続されている。容器26と容器77を接続する配管には、加熱流体を通流させる加熱器79が設けられ、容器26から排出されたガスを加熱するようになっている。
【0057】
次に、実施形態4の特徴動作を説明する。容器26から排出されたガスには、触媒層61の出口部で二酸化炭素と水素が反応して生成したメタノールが含まれている。このメタノールを含むガスは、加熱器79により加熱されて容器77に導入される。この際、加熱器79に通流される加熱流体の量は、温度計81で検出された触媒層63の出口部の温度に基づいて調整される。つまり、触媒層63の温度がメタノールを分解できる温度に維持されるように、加熱流体の量が調整される。容器77内に導入されたガスは、触媒層63の存在下でガス中のメタノールが二酸化炭素と水素に分解され、メタノールが低減される。
【0058】
これによれば、例えば、加熱器26と触媒層63が収容された容器77を設けることで、シフト反応装置から排出されるメタノールを低減できるから、例えば、既設のシフト反応装置から排出されるメタノールを容易に低減できる。
【符号の説明】
【0059】
1 ガスタービンプラント
11 シフト反応装置
13 高温反応装置
15 低温反応装置
25 触媒層
26 容器
27 凝縮器
30 吸収器
31 ガスタービン
47 配管
61 触媒層
63 触媒層
65 セラミックボール層
73 配管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素と水を含む混合ガスが導入され、該混合ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に転換する触媒層と、該触媒層の出口部を加熱する加熱手段を備えてなるシフト反応装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシフト反応装置において、
前記触媒層は容器に収容され、前記加熱手段は、前記触媒層の出口部に対応する前記容器の外面に設けられてなることを特徴とするシフト反応装置。
【請求項3】
一酸化炭素と水を含む混合ガスが導入され、該混合ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に転換する第1触媒層と、該第1触媒層の出口側に前記第1触媒層から離して設けられ、前記第1触媒層で生じたメタノールを分解する第2触媒層と、少なくとも該第2触媒層をメタノールが分解する温度に加熱する加熱手段を備えてなるシフト反応装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシフト反応装置において、
前記第1触媒層と前記第2触媒層は、同一の容器に収容されてなることを特徴とするシフト反応装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシフト反応装置において、
前記加熱手段は、前記第2触媒層に対応する前記容器の外面に設けられてなることを特徴とするシフト反応装置。
【請求項6】
請求項4に記載のシフト反応装置において、
前記第2触媒層から前記容器への放熱を抑制する断熱層が設けられてなることを特徴とするシフト反応装置。
【請求項7】
請求項3に記載のシフト反応装置において、
前記第1触媒層と前記第2触媒層との間に無機質の層が設けられ、該無機質の層内に前記加熱手段が設けられてなることを特徴とするシフト反応装置。
【請求項8】
請求項3に記載のシフト反応装置において、
前記第1触媒層が収容された第1容器と、前記第2触媒層が収容された第2容器とを備え、前記第1容器から排出されるガスを前記第2容器に導入する配管に前記加熱手段が設けられてなることを特徴とするシフト反応装置。
【請求項9】
石炭をガス化して生成した一酸化炭素を含むガスに水を添加する添加手段と、水が添加されたガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に転換するシフト反応装置と、該シフト反応装置から排出されるガス中の未反応の水を凝縮して除去する凝縮器と、該凝縮器から排出されるガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させて除去する吸収器と、該吸収器から排出されるガスを燃焼して駆動されるガスタービンとを備えるガスタービンプラントであって、
前記シフト反応装置は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシフト反応装置であるガスタービンプラント。
【請求項1】
一酸化炭素と水を含む混合ガスが導入され、該混合ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に転換する触媒層と、該触媒層の出口部を加熱する加熱手段を備えてなるシフト反応装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシフト反応装置において、
前記触媒層は容器に収容され、前記加熱手段は、前記触媒層の出口部に対応する前記容器の外面に設けられてなることを特徴とするシフト反応装置。
【請求項3】
一酸化炭素と水を含む混合ガスが導入され、該混合ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に転換する第1触媒層と、該第1触媒層の出口側に前記第1触媒層から離して設けられ、前記第1触媒層で生じたメタノールを分解する第2触媒層と、少なくとも該第2触媒層をメタノールが分解する温度に加熱する加熱手段を備えてなるシフト反応装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシフト反応装置において、
前記第1触媒層と前記第2触媒層は、同一の容器に収容されてなることを特徴とするシフト反応装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシフト反応装置において、
前記加熱手段は、前記第2触媒層に対応する前記容器の外面に設けられてなることを特徴とするシフト反応装置。
【請求項6】
請求項4に記載のシフト反応装置において、
前記第2触媒層から前記容器への放熱を抑制する断熱層が設けられてなることを特徴とするシフト反応装置。
【請求項7】
請求項3に記載のシフト反応装置において、
前記第1触媒層と前記第2触媒層との間に無機質の層が設けられ、該無機質の層内に前記加熱手段が設けられてなることを特徴とするシフト反応装置。
【請求項8】
請求項3に記載のシフト反応装置において、
前記第1触媒層が収容された第1容器と、前記第2触媒層が収容された第2容器とを備え、前記第1容器から排出されるガスを前記第2容器に導入する配管に前記加熱手段が設けられてなることを特徴とするシフト反応装置。
【請求項9】
石炭をガス化して生成した一酸化炭素を含むガスに水を添加する添加手段と、水が添加されたガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に転換するシフト反応装置と、該シフト反応装置から排出されるガス中の未反応の水を凝縮して除去する凝縮器と、該凝縮器から排出されるガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させて除去する吸収器と、該吸収器から排出されるガスを燃焼して駆動されるガスタービンとを備えるガスタービンプラントであって、
前記シフト反応装置は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシフト反応装置であるガスタービンプラント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−224484(P2012−224484A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90827(P2011−90827)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】
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