説明

シャッター装置用開閉体および該開閉体を用いたシャッター装置

【課題】金属製補強材で補強された防災シャッター用耐火シートでありながら、繰り出しと巻回の繰り返しに耐える、屈曲性に優れたシャッター装置用開閉体と、この開閉体を用いたシャッター装置を提供する。
【解決手段】収納部30から繰り出されて空間を仕切るように閉鎖動作するシャッター装置用開閉体10において、耐火性及び可撓性を有する金属線編織物11a1と、耐火性及び可撓性を有する樹脂被覆層11a2とを備え、前記樹脂被覆層に、接着性樹脂及び/または反応硬化性化合物を含有する可撓性接着層を含有させることによって、屈曲耐久性と作動性に優れたシャッター装置用開閉体、及びこの開閉体を用いたシャッター装置を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバーヘッドドアを含むシャッター装置に用いられる開閉体および該開閉体を用いたシャッター装置に関し、特に防火防煙目的として利用するのに好適なシャッター装置用開閉体および該開閉体を用いたシャッター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高層ビルや地下街において、火災延焼防止、煙拡散防止の目的でフレキシブルな耐火シートが遮炎・遮煙シャッターとしてビルや地下街の通路開口部分に格納設備されている。この耐火シートは、無機系繊維等による不燃性クロスが主であり、平時は巻回や折畳みの状態でコンパクトに格納されており、火災発生時に引き出されて遮蔽壁を急設するものである。この耐火シートは、従来の金属製スラット等からなるシャッター開閉体と比較し軽量かつフレキシブルであるため、施工性がよく建物構造体への強度的負担も少ない防災設備として従来の防災用金属製シャッター開閉体と同じように用いられている。
【0003】
しかし、前記不燃性クロスを用いた耐火シートでは、崩落物や、倒壊物などの衝突により膜材損傷を受けやすく、それにより破損部から煙が漏出したり、また消火栓設備からの放水圧によっては膜材自体が大きく裂けてしまうという問題があった。このため例えば、不燃性クロスの片面または両面に、金属細線をメッシュ状に編成した補強材を添着した耐火シート(特許文献1)が提案されている。この耐火シートによれば、耐火性膜材に補強材を添着することで強度を増大することができ、容易に切れたり破れたりするのを防止することができる。また同様な強度補強の試みとしては、金属ワイヤーメッシュを補強材に用いその表裏に不燃布を設けた防災シャッター用の遮熱スクリーン(特許文献2)が提案されている。
【0004】
これら特許文献1の耐火シートや、特許文献2の遮熱スクリーンは、金属補強材を用いることによって強度補強がなされたものであるが、金属製補強材と不燃性クロスとの積層(接着)が本質的に困難であるため、金属製補強材層と不燃性クロス層とが剥離する問題があり、実用時の性能不安が指摘されている。特に金属製補強材を基材として、その両面に不燃性クロス層を設けた耐火シートでは厚さが1ミリを超えてしまい、その巻回性に劣るため格納スペースが大きなものとなっていた。従って繰り出しと巻回の繰り返しに耐え得る耐久性を有する上、作動性にも優れた金属製補強耐火シートが望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−89955号公報
【特許文献2】特開2000−110459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、金属製補強材で補強された防災シャッター用耐火シートにより構成され、繰り出しと巻回の繰り返しに耐えることができ、屈曲性に優れたシャッター装置用開閉体と、その開閉体を用いたシャッター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための技術的手段は、シート状の開閉体本体を具備してなるシャッター装置用開閉体において、金属線編織物の1面以上に、樹脂被覆層を1層以上設けてなる可撓性積層体によって前記開閉体本体を構成するとともに、前記樹脂被覆層には、接着性樹脂または反応硬化性化合物、もしくは接着性樹脂及び反応硬化性化合物を含んでいることを特徴とする。
この構成によれば、屈曲性に優れたシャッター装置用開閉体を得ることができる。このシャッター装置用開閉体は、樹脂被覆層を、接着性樹脂または反応硬化性化合物、もしくは接着性樹脂及び反応硬化性化合物を含むものとすることで、金属線編織物と樹脂被覆層との層間剥離を良好に防ぐ。そのため、火災時において、金属線編織物はシャッター装置用開閉体の引裂強度の保持に効果的に作用し、また樹脂被覆層は炎や煙等の透過を阻む作用を効果的に発揮する。
【0008】
また、他の技術的手段では、前記金属線編織物が、開閉体幅方向の金属線と開閉体開閉方向の金属線とを内包し、前記開閉体幅方向の金属線数が、前記開閉体開閉方向の金属線数よりも1インチ間当り1本以上少ないことを特徴とする。
この構成によれば、シャッター装置用開閉体の繰り出しと巻回の作動性を良好にすることができる。また、シャッター装置用開閉体が巻回されて収納されるのでなく屈曲を経て収納される場合であっても、シャッター装置用開閉体の繰り出しと収納の作動性を良好にすることができる。
【0009】
また、他の技術的手段では、前記金属線編織物の編織空隙部面積の総和の比率が、3%未満であることを特徴とする。
この構成によれば、シャッター装置用開閉体の遮煙性・耐炎性を良好にすることができる。
【0010】
また、他の技術的手段では、前記金属線編織物の表面が、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤の内の1種以上の反応硬化性化合物によって被覆されていることを特徴とする。
この構成によれば、特に金属線編織物の表面を改質することで接着強度を高くして、屈曲耐久性を良好にすることができる。
【0011】
また、他の技術的手段では、前記樹脂被覆層に含む前記接着性樹脂が、α,β−不飽和カルボン酸単位を有する共重合体樹脂であることを特徴とする。
この構成によれば、特に金属線編織物に対する接着性を良好とし、シャッター装置用開閉体の繰り出しと巻回などに伴う屈伸の繰り返し性を良好にすることができる。
【0012】
また、他の技術的手段では、前記接着性樹脂が、1)ビニルモノマーとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体で、この共重合体中のカルボン酸の一部若しくは全部が2価金属イオン金属陽イオンで中和されたアイオノマー樹脂、2)α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとの共重合体、3)α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸エステルとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとの3元共重合体の内、1種以上を含むことを特徴とする。
この構成によれば、特に金属線編織物に対する接着性を良好とし、シャッター装置用開閉体の繰り出しと巻回などに伴う屈伸の繰り返し性を良好にすることができる。
【0013】
また、他の技術的手段では、前記樹脂被覆層に含まれる前記反応硬化性化合物が、イソシアネート系化合物、アジリジン系化合物、オキサゾリン系化合物、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤の内、1種以上を含むことを特徴とする。
この構成によれば、特に金属線編織物に対する接着性を良好とし、シャッター装置用開閉体の繰り出しと巻回などに伴う屈伸の繰り返し性を良好にすることができる。
【0014】
また、他の技術的手段では、前記樹脂被覆層が、さらにモンモリロナイト、スメクタイト、フッ素雲母の内、1種以上の層状鉱物を含んでいることを特徴とする。
この構成によれば、燃焼時に無機難燃剤、層状鉱物の分解残滓を金属線編織物の空隙内に残存させることによって、シャッター装置用開閉体の耐炎性・遮煙性を良好にすることができる。
【0015】
また、他の技術的手段では、前記樹脂被覆層上の少なくとも1面上に、さらに最外被覆層を有していることを特徴とする。
この構成によれば、シャッター装置用開閉体の耐炎性・遮煙性をさらに良好とすることができる。
【0016】
また、他の技術的手段では、前記開閉体本体は、前記可撓性積層体からなる複数の開閉体構成部材を、ステンレス製接続部材により接続してなることを特徴とする。
この構成によれば、特に大型・ワイドスパンのシャッター装置において、複数の開閉体構成部材を接続部材により接続一体化してシャッター装置用開閉体を構成する場合に、前記接続部材を不燃性、かつ耐腐食性のステンレス製とすることで、火災時に接合部の崩壊・破壊を抑制することができる。
【0017】
また、他の技術的手段では、前記開閉体本体をガイドレールに沿わせながら繰り返し開閉動作するようにしたシャッター装置を構成する。
この構成によれば、シャッター装置用開閉体を確実に繰り出して防火壁を迅速に構築することができ、さらに、シャッター装置用開閉体とガイドレールとの接触部分における密着性を向上させることで気密性を確保することができる。
【0018】
なお、上述のシャッター装置は、開閉体を巻取軸に巻き取って収納するようにした態様や、開閉体を巻取軸に巻き取ることなく屈曲状態を経てその開放方向側に収納するようにした態様(例えばオーバヘッドドア等)を含む。また、前記シャッター装置用開閉体の開閉方向は上下方向であることが好ましいが、斜め方向や、水平方向等とすることも可能である。
【0019】
また、本明細書中において「開閉体厚さ方向」とは、閉鎖状態の上記開閉体の厚さ方向を意味する。
また、本明細書中において「開閉体幅方向」とは、開閉体の開閉方向と略直交する方向であって、上記開閉体の厚さ方向ではない方向を意味する。なお、この「開閉体幅方向」は、当業者等によって「スパン方向」と呼称される場合もある。
また、本明細書中において「開閉体開閉方向」とは、開閉体が空間を仕切ったり開放したりするためにスライドする方向を意味する。
【発明の効果】
【0020】
本発明による耐火シャッター装置用開閉体は、以上に説明した要件で構成されているので、火炎に晒された状態、もしくは開閉体面に崩落物や倒壊物による衝撃を受けた状態、あるいは火炎に晒された状態で、消火栓による放水圧を受けた場合に、開閉体本体の損傷・破壊を最少限に留めることができ、ひいては、急激な火炎や煙の流延を防ぐことができる。さらに金属線編織物層を有するにも拘わらず、繰り出しと巻回などに伴う屈伸の繰り返し作動性に優れ、しかも金属線編織物層と樹脂被覆層とが層間剥離しにくい上、良好な屈曲性を有する。従って本発明のシャッター装置用開閉体を用いたシャッター装置は、高層ビルや地下街などに設置される防災設備として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本実施の形態の一例は、住宅やビル、倉庫、工場、地下街、トンネル、車両の荷台等の構築・構造物における開口部分や内部に配設され、前記開口部分を開閉したり、躯体内部の空間を仕切ったり開放したりする所謂シャッター装置、特に、火災などが発生した際に、火炎及び煙の拡散や蔓延を速やかに防止するのに好適な防火防煙シャッター装置、及び該シャッター装置に具備されるシャッター装置用開閉体について説明する。
【0022】
シャッター装置Aは、空間を上下に仕切ったり開放したりする開閉体10(シャッター装置用開閉体)と、該開閉体10をその左右両側で開閉方向へ導くガイドレール20と、該開閉体10を繰り出したり収納したりする収納部30とを備え(図1参照)、開閉体10を耐火性及び可撓性を有する金属線編織物11a1および樹脂被覆層11a2によって構成している。
【0023】
開閉体10は、下部側に通過物(具体的には人や物等)を通過可能な開口部10aを有するシート状の開閉体本体11と、前記開口部10aを開閉可能に閉鎖するシート状の扉部材12と、開閉体本体11の下端部に幅方向へわたって接続された座板部材13とを一体的に具備し、前記開閉体本体11をガイドレール20に沿わせながら繰り返し開閉動作する。
【0024】
開閉体本体11は、耐火性及び可撓性を有するとともに開閉体幅方向へわたる略帯状の開閉体構成部材11aを、上下方向に複数連設し、上下に隣り合う開閉体構成部材11a間の端部同士を縫い繋げることで構成されている。
【0025】
各開閉体構成部材11aは、耐火性及び可撓性を有する金属線編織物11a1と、耐火性及び可撓性を有する樹脂被覆層11a2とを備え、前記金属線編織物11a1の全面の網目11a11を前記樹脂被覆層11a2によって塞ぐようにして、開閉体厚さ方向に接合している。
【0026】
金属線編織物11a1は、具体的に説明すれば、耐火性及び可撓性を有する金属製の線材からなる織物または編物である。金属線編織物11a1を織物とした場合、その織り方の具体例としては、平織、溶接平織、畳織、綾織、杉綾織、模紗織、絽織、三軸織、トンキャップ織などが挙げられる。
また、金属線編織物11a1は、2種以上の織編構造を有していてもよく、具体的には平織物と模紗織物との積層によるもの、または平織物の一部に模紗織構造を有するもの、或は模紗織物の一部に平織構造を有するものなどとすることができ、これらは多数の網目(空隙)11a11を有するように形成されている。
この金属線編織物11a1は、図2に示す一例によれば、ステンレス製(例えばSUS304等)の線材(例えば線径0.2mm)を、縦と横の各々において90本/インチ〜100本/インチとなるような打ち込み密度の平織物で構成されたものである。打ち込み密度は金属線材の線径との関係にもよるが、例えば、金属線編織物11a1の面積に対する空隙面積率(網目11a11の面積比率)を、3%未満とすることが好ましい。
また、金属線編織物11a1は、1インチ間に含む金属線数を縦と横で互いに非同一として、開閉体幅方向に位置する側の金属線数を、開閉体開閉方向の金属線数よりも1インチ間当り1本以上少なくすることが、繰り出しと巻回の作動性に優れ好ましい。
【0027】
この金属線編織物11a1を構成する線材の他例としては、例えば、鉄、亜鉛引鉄線、真鍮、銅、燐青銅、各種ステンレス、ニッケル、モネルメタル、二クローム、鉄クローム、アルミニウム、チタニウム等が挙げられる。なお、前記金属線編織物11a1における耐火性とは、少なくとも1000℃以上の耐熱性(融点)を有すればよく、好ましくは、開閉体10を構成した状態で、後述する耐火試験に耐えるものが好ましい。また、前記金属線編織物11a1における可撓性とは、開閉体10を構成した状態で、後述する巻取軸31により巻き取ったり繰り出したりすることが可能な程度の可撓性であればよい。
【0028】
金属線編織物11a1の表面は、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤から選ばれた1種以上の反応硬化性化合物によって被覆すことが好ましい。
この表面被覆は、金属線編織物11a1の表面に対し、上記の反応硬化性化合物を0.1〜10%質量濃度で含有する水溶液、もしくは溶剤を塗布し、乾燥することによって構成される。
この表面被覆によれば、金属線編織物11a1の表面に反応硬化性化合物の硬化物薄膜が形成されるため、金属線編織物11a1に対する樹脂被覆層の接着強度を一層強固なものにして、開閉体10の屈曲耐久性をより良好にすることができる。
【0029】
上記反応硬化性化合物の具体例を挙げれば、イソシアネート系化合物としては分子内にイソシアネート基を2個以上含有する有機化合物(例えば、2,4トリレンジイソシアネート等)、カルボジイミド系化合物としては分子内にイミド基を2個以上含有する有機化合物(例えば、ジ−p−トルイルカルボジイミド等)、オキサゾリン系化合物としては分子内にオキサゾリル基を2個以上含有する有機化合物(例えば、2,2’−ビス(2−オキサゾリン等))、チタン系カップリング剤としてはテトラ−n−ブトキシチタンなどの有機チタネート化合物、シラン系カップリング剤としてはアミノシラン類、エポキシシラン類、ビニルシラン類、メルカプトシラン類等の有機シラン化合物、例えばエポキシシラン類としてはγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等がある。
【0030】
樹脂被覆層11a2は、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂などからなるが、本発明においては、これらの樹脂に、接着性樹脂としてα,β-不飽和カルボン酸単位を有する共重合体樹脂を10〜100質量%含むもの、または、これらの樹脂に、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤から選ばれた1種以上の反応硬化性化合物を0.1〜10質量%含むもの、あるいはこれらの樹脂に接着性樹脂と反応硬化性化合物の両方を10.1〜100質量%含むものであって、厚さが0.05〜0.5mmの塗膜もしくはフィルムである。
【0031】
この樹脂被覆層11a2における耐火性とは、不燃性である場合を含み、少なくとも自己消火性の難燃性を有していればよく、好ましくは、開閉体10を構成した状態で、後述する耐火試験に耐え得る程度の耐火性とされる。また、樹脂被覆層11a2における可撓性とは、開閉体10を構成した状態で、後述する巻取軸31により巻き取ったり繰り出したりすることが可能な程度の可撓性であればよい。
【0032】
次に、上記開閉体構成部材11aの製造方法について説明する。
本発明のシャッター装置用開閉体は、金属線編織物11a1の、少なくとも表部側に樹脂被覆層11a2を設けてなる構成であり、必要に応じて金属線編織物11a1の表部側と裏部側の両面に樹脂被覆層11a2を設けることができる。
樹脂被覆層11a2は、接着性樹脂または反応硬化性化合物、もしくは接着性樹脂及び反応硬化性化合物を含んでなる。この樹脂被覆層11a2は、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、及びこれらの共重合体樹脂などを使用し、これらの樹脂に接着性樹脂としてα,β-不飽和カルボン酸単位を有する共重合体樹脂を10〜100質量%含むもの、または、これらの樹脂に反応硬化性化合物として、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤から選ばれた1種以上の反応硬化性化合物を0.1〜10質量%含むもの、あるいはこれらの樹脂に接着性樹脂と反応硬化性化合物の両方を10.1〜100質量%含むものにより形成される。
樹脂被覆層11a2の形成方法は、金属線編織物11a1に対し、上記組成物を有機溶剤に可溶化させた液状組成物、または上記組成物を水にエマルジョン化させた液状組成物を、コーティング塗布、デッピング塗布、スプレー塗布等、公知の塗工手段によって塗布し、乾燥すればよい。これらの液状組成物の塗工・乾燥によって得られた樹脂被覆層11a2の質量は50〜500g/mである。
【0033】
上記α,β-不飽和カルボン酸単位を有する共重合体樹脂としては、i)ビニルモノマーとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体で、この共重合体中のカルボン酸の一部若しくは全部を亜鉛、マグネシウム、カルシウム等の2価金属イオン金属陽イオンで中和したアイオノマー樹脂、ii)α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとの共重合体、iii)α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸エステルとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとの3元共重合体から選ばれた1種以上が挙げられ、これらは具体的には、エチレン・メタクリル酸共重合体(金属イオン源:亜鉛)、エチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体樹脂(金属イオン源:亜鉛)、アクリル酸エチル・無水マレイン酸共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル−グリシルメタクリレート3元共重合体等である。
【0034】
上記反応硬化性化合物の具体例として、イソシアネート系化合物としては分子内にイソシアネート基を2個以上含有する有機化合物(例えば、2,4トリレンジイソシアネート等)、カルボジイミド系化合物としては分子内にイミド基を2個以上含有する有機化合物(例えば、ジ−p−トルイルカルボジイミド等)、オキサゾリン系化合物としては分子内にオキサゾリル基を2個以上含有する有機化合物(例えば、2,2’−ビス(2−オキサゾリン等))、チタン系カップリング剤としてはテトラ−n−ブトキシチタンなどの有機チタネート化合物、シラン系カップリング剤としてはアミノシラン類、エポキシシラン類、ビニルシラン類、メルカプトシラン類等の有機シラン化合物、例えばエポキシシラン類としてはγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの反応硬化性化合物は上記α,β-不飽和カルボン酸単位を有する共重合体樹脂と併用することもできる。
【0035】
また、樹脂被覆層11a2には、さらにモンモリロナイト、スメクタイト、フッ素雲母から選ばれた1種以上の層状鉱物を含むことがより好ましい。本発明のシャッター装置用開閉体が火炎に晒された時に、これらの層状鉱物が強固な燃焼残滓となって金属線編織物11a1に出来る僅かな編織空隙部(ピンホール)を塞ぐ作用によって、煙の漏出を抑制することができる。フッ素雲母としては平均粒子径10〜30μmのフッ素四珪素雲母を用いる。モンモリロナイトとしては、平均粒子径0.1〜2.0μmの八面体型含水層状珪酸塩鉱物、スメクタイトとしては、シリカ四面体(四配位)とアルミ八面体(六配位)が交互に層状となる構造であり、シリカ/アルミ比率が2:1、平均粒子径0.1〜2.0μmのものを用いる。これらの層状鉱物は樹脂被覆層11a2に対して固形分率で5〜30質量%用いる。この他、必要に応じて公知の無機難燃剤、例えば水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛などを併用することもできる。
【0036】
また、樹脂被覆層11a2には、さらに最外被覆層含むことができる。最外被覆層としては既製フィルムによる積層で良いが、本発明のシャッター装置用開閉体においては最外層が、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂などの耐熱性ポリマー塗膜、あるいはアルミナゾル、コロイダルシリカ、金属アルコキシド、ポリシラザンなどの無機系ゾル−ゲル塗膜などであることが防汚性と防炎性向上の観点において好ましい。
【0037】
また、開閉体構成部材11aの製造方法の他例としては、フィルム状の樹脂被膜層11a2を接着剤によって開閉体構成部材11aに接着するようにしてもよい。
より詳細に説明すれば、樹脂被覆層11a2が前記接着剤を塗布した面を対向させて配置されるとともに、これら二つの樹脂被覆層11a2,11a2の間に金属線編織物11a1が配置され、前記接着剤を内在した状態の前記三つの層11a2,11a1,11a2が、図3に示すように、近接する一対のローラ1,1間に通されて押圧されることで、圧着される。この圧着により表裏の樹脂被覆層11a2,11a2間の空気は外部へ追い出される。この圧着状態においては、前記接着剤が、金属線編織物11a1の網目11a11に入り込むとともに、表裏の樹脂被覆層11a2,11a2を容易に剥がれることのないように接着する。そして、表裏の樹脂被覆層11a2,11a2間の空気が追い出されるため、より燃焼し難い開閉体構造を得ることができる。
【0038】
上記開閉体構成部材11aは、開閉方向(図示例によれば上下方向)に複数設けられる。そして、隣り合う開閉体構成部材11a間の端部同士が重ね合わせられ、その重ね合わせ部分が、開閉体幅方向へわたる複数のステンレス製接続部材11bによって接続される(図4参照)。ステンレス製接続部材11bの一例としては、例えばステープラ用つづり針が挙げられる。このステープラ用つづり針11bは、これはステンレス製(例えばSUS304等)の線材を略コ字状に曲げ加工したものであり、ステープラによって前記重ね合わせ部分に挿通され、各先端部分が折り曲げられる。なお、前記ステープラ用つづり針11bは、好ましい例として図4に示すようにチドリ状に配置されて、開閉体開閉方向に複数列(図示例によれば3列)設けられる。
前記構成によれば、ステープラ用つづり針11bは、その先端側部分を、前記重ね合わせ部分において、内部の金属線編織物11a1,11a1に対し複数個所挿通させて、上下の開閉体構成部材11a,11aを強固に接続する。よって、前記ステープラ用つづり針11bを用いた止着構造によれば、従来の耐火性縫い糸を用いた止着構造に比べて、耐久性及び耐火性を向上することができる。
【0039】
また、前記開閉体構成部材11aからなる開閉体本体11の幅方向の両端部には、開閉体開閉方向へ間隔を置いて複数の抜止部材11cが設けられる。この抜止部材11cは、開閉体本体11の面から開閉体厚さ方向へ突出してガイドレール20内に係合することで、開閉体10がガイドレール20から抜けてしまうのを防ぐ(図6参照)。
また、開閉体本体11の下端側には、人や物等の通過物を通過可能な略矩形切欠状の開口部10aが形成され、該開口部10aは、開閉可能な扉部材12によって閉鎖されている。この扉部材12は、開口部10aを挟むようにして、開閉体本体11の表側と裏側にそれぞれ設けられ、各扉部材12の上端側部分が、開閉体本体11における開口部10aの上側に縫い付ける等して止着される。各扉部材12は、開閉体構成部材11aと略同様の積層構造のシート材を、開閉体開閉方向へ縫い繋げて構成される。
【0040】
各扉部材12には、開閉体幅方向へわたる補強部材12aが止着される。この補強部材12aは、耐火性を有する金属製の棒状部材であり、扉部材12に対し、開閉体開閉方向に間隔置いて複数(図1によれば三つ)配設される。この補強部材12aは、扉部材12の撓みを抑制するとともに錘体として作用することにより、扉部材12の閉鎖性を良好にしている。
【0041】
また、座板部材13は、金属製の錘部材を複数組み合わせてなり、開閉体10における幅方向の略全長にわたって、開閉体本体11の閉鎖方向端部に接続されることで、開閉体10による閉鎖性を良好にするとともに、その自重により開閉体本体11を下方へ引っ張って、開閉体本体11に生じようとする撓みや皺等を抑制する。
【0042】
また、ガイドレール20は、開閉体10の開閉体幅方向の端部を囲む断面略コ字状の部材であり、開閉体開閉方向へわたって長尺状に設けられている。
【0043】
また、収納部30は、収納ケース32内で巻取軸31を回動させるように構成される。この収納部30は、前記巻取軸31により開閉体10を巻き取ったり巻き戻したりすることで、収納ケース32内へ開閉体10を収納したり、収納ケース32外へ開閉体10を繰り出したりする。なお、この収納部30内の機構は、モータ等の電動駆動源により巻取り軸31を回動させる機構や、スプリング等の付勢部材の付勢力により巻取り軸31を回動させる機構、錘体や開閉体10の自重により巻取り軸31を回動させる機構、あるいはこれらの機構を組み合わせてなる機構等、何れの態様であってもよいが、災害等による停電の際でも、開閉体10を閉鎖できるように、少なくとも開閉体10を繰り出す際の動作が電動でない機構(例えば前記した付勢部材や、錘体、開閉体10の自重を利用して閉鎖動作する機構)を備えるのが好ましい。
また、収納部30の他例としては、収納ケース32を具備せずに、巻取軸31を露出した構成であってもよい。
【0044】
次に、上述した実施の形態について、その特徴的な作用効果を説明する。
図5は、開閉体10に対する耐火試験の状況を示している。この耐火試験をおおまかに説明すれば、開閉体10を炉内に晒し、その炉内温度を、約1時間30分かけて常温から1000℃近く(より詳細には約978℃)まで上昇させる。そして、前記加熱の後に、開閉体10の表面に対し、水圧約207kPa、放水時間約16秒/m、流量約0.62m/minの放水による衝撃を与える。そして、前記加熱および放水試験中に、開閉体10に酸化劣化や破損等による開口が生じないこと等が確認される。
【0045】
本実施の形態の開閉体10によれば、前記耐火試験の際、樹脂被覆層11a2が多少酸化劣化したとしても、その樹脂被覆層11a2が金属線編織物11a1によって補強されているため、前記放水衝撃により樹脂被覆層11a2が崩れ落ちる等の破損を防ぐことができる。更に、耐火試験後に、開閉体10が上下に隣り合う開閉体構成部材11a,11a間で分離してしまうようなことを、チドリ状に配設された多数のステープラ用つづり針11bによって防ぐことができる。
【0046】
また、火災時における開閉体10内外の圧力差に起因して、図6に示すように開閉体10が厚さ方向の一方側から風圧を受けた際には、開閉体10の幅方向の端部がガイドレール20の開口縁部に接触する。この際、樹脂被覆層11a2の表面とガイドレール20の開口縁部との接触により良好な遮煙性を得ることができる。同様に収納部30下端側の図示しないまぐさ部と樹脂被覆層11a2との接触箇所においても良好な遮煙性を得ることができる。
【0047】
なお、上記実施の形態によれば、金属線編織物11a1に対し樹脂被覆層11a2,11a2を接着する構成としたが、他例としては、図7に示すように、金属線編織物11a1と樹脂被覆層11a2とを、耐火性を有する一対の剛性部材11d,11d間に挟んで接合することも可能である。剛性部材11dは、開閉体幅方向へわたる金属製(例えばステンレスや鉄、チタン等)の長尺状部材であり、開閉体本体11を挟むようにして、開閉体本体11の表部側と裏部側との双方に設けられる。そして、これら両剛性部材11d,11d及びこれら部材間の開閉体本体11には、ボルトとナット等の締結具11eが貫通挿入され締め付けられる。
【0048】
一対の剛性部材11d,11dは、開閉体10に対し一組設ける場合、開閉体10において自重等による引張力が比較的大きい部分、具体的には開閉体10の開閉方向の略中央近傍又は該中央近傍よりも開放方向側の部分に配置するのが好ましい。また、金属線編織物11a1と樹脂被覆層11a2,11a2との密着性を、より向上するためには、一対の剛性部材11d,11dを、開閉体開閉方向に間隔を置くようにして、複数組設けるようにしてもよい。更に他例としては、金属線編織物11a1と樹脂被覆層11a2,11a2とを、上記した接着構造と、前記一対の剛性部材11d,11dによる挟持構造とを併用して、より強固に密着させるようにしてもよい。
【0049】
また、図2に示す態様によれば、開閉体構成部材11aを単一の金属線編織物11a1と二つの樹脂被覆層11a2とからなる三層構造としたが、開閉体構成部材の他例としては、図8に示すように単一の金属線編織物11a1と単一の樹脂被覆層11a2とを接着した構成とすることも可能である。この態様は、特に火災発生箇所が予測される場合に、その火災発生箇所側に、樹脂被覆層11a2を向けて用いるようにすればよく、必要最小限の樹脂被覆層11a2によって効果的に耐火性能を発揮する。
【0050】
また、開閉体構成部材の他例として、図9に示す態様は、特に耐久強度を向上するものであり、二つの金属線編織物11a1,11a1間に、樹脂被覆層11a2を挟みこみ、接着するようにしている。この構成において、樹脂被覆層11a2を挟み込む前記金属線編織物11a1,11a1同士は、網目の位置が一致していてもよいし一致していなくてもよい。また、これら金属線編織物11a1,11a1の織り方、編み方は、同じでもよいし異なっていてもよい。例えば、金属線編織物11a1,11a1の一方をメリアス編み、他方を平織りとするとともに巻取軸31に巻かれる構成とする場合には、巻取軸31に巻かれた際の外径側がメリアス編み、内径側が平織りとするのが好ましい。すなわち、前記外径側は、内径側よりも引張り量が多いため、比較的伸縮性のよいメリアス編みとするのが好ましい。
【0051】
また、開閉体構成部材の他例として、図10に示す態様では、耐火性及び可撓性を有する前記金属線編織物11a1と、耐火性及び可撓性を有する樹脂被覆層11a2’とを備え、金属線編織物11a1の網目11a11を前記樹脂被覆層11a2’によって塞ぐようにして、これらの層を開閉体厚さ方向に接合してなる。
【0052】
樹脂被覆層11a2’は、具体的に説明すれば、難燃性を有する合成樹脂材料(例えばウレタン系合成樹脂にシリカクロス繊維を混入したもの等)からなる平板状部材であり、加熱により半溶融状態にされ(図10(a)参照)、その後に、金属線編織物11a1に重ね合わせられる(図10(b)参照)。したがって、この樹脂被覆層11a2’は、金属線編織物11a1の網目11a11を埋めるようにして、該網目11a11を塞ぐとともに、金属線編織物11a1に対し密着した状態となる。なお、樹脂被覆層11a2’を構成する前記合成樹脂材料は、開閉体10の多少の撓み等でひび割れしたいりしない程度の可撓性、柔軟性を有するものであればよい。
【0053】
而して、図10に示す開閉体構成部材により構成されるシャッター装置用開閉体によれば、金属線編織物11a1と樹脂被覆層11a2’との密着性が高いため、上記耐火試験により、火炎放射および放水を受けたとしても、樹脂被覆層11a2’が崩れ落ちる等の破損を防ぐことができる。しかも、火災時における開閉体10内外の圧力差に起因して、開閉体10が厚さ方向の一方側から風圧を受けた際にも(図6参照)、開閉体10とガイドレール20との接触箇所や、収納部30下端の図示しないまぐさ部との接触箇所において遮煙性が良好である。
【0054】
なお、図10に示す開閉体構成部材は、金属線編織物11a1と樹脂被覆層11a2’とからなる二層構造としているが、金属線編織物11a1の表部側と裏部側に前記樹脂被覆層11a2’,11a2’を有する三層構造とすることも可能である。更に他例としては、金属線編織物11a1と前記樹脂被覆層11a2’とを、前記のように熱溶融させることなく接着剤によって接合した態様や、金属線編織物11a1に対し耐火性の合成樹脂塗料を塗布することで、前記樹脂被覆層11a2を構成するようにした態様等とすることも可能である。
【0055】
また、上記何れの態様の開閉体構成部材においても、金属線編織物11a1の他の好ましい態様として、ステンレス製(例えばSUS304等)の線材(例えば外径約0.25mm)を、メリアス編み状に編んだ構成、亀甲模様に編んだ構成とすることが可能である。この態様によれば、比較的柔軟で伸縮性の良好な開閉体10を構成することができる。
【0056】
また、上記実施の形態によれば、開閉方向へ隣り合う開閉体構成部材11a,11a間の重ね合わせ部分の接合部材には、ステンレス製(例えばSUS304等)のワイヤロープによって縫い付けるようにしてもよい。このワイヤロープは、好ましくは外径が0.2mmよりも大きく且つ0.4mmよりも小さいものが用いられ、数本(例えば5〜9本)のステンレス線材をより合わせることで構成されている。すなわち、外径が0.2mm以下では、十分な耐久性および耐火性が得られず、また、外径が0.4mm以上では機械縫いが著しく困難となる。
【0057】
また、前述した開閉体構成部材の他例(図8〜図10参照)においても、開閉体開閉方向へ複数接続する際に、前記ステープラ用つづり針11b及び/又は前記ワイヤロープを用いることが可能である。更に、これら他例においても、金属線編織物11a1と樹脂被覆層11a2(又は11a2’)を、より強固に接合するために、上記一対の剛性部材11d,11dを併用するようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態において、樹脂被覆層と金属線編織物には可能な限り水分が入り込まないことが好ましい。すなわち、水分が浸入した場合には、その水分が加熱されて膨張した場合に、前記層間を隔離や破損等させてしまうおそれがある。このため、樹脂被覆層と金属線編織物とを開閉体厚さ方向に接合する作業は、乾燥雰囲気中で行うのが好ましい。
【0059】
また、上記実施の形態によれば開閉方向に隣り合う開閉体本体11,11の端部同士の接続のためにステンレス製のステープラ用つづり針11bやステンレス製のワイヤロープを用いたが、更に、開閉体構成部材11a同士以外の縫製(例えば開閉体本体11と扉部材12との縫製等)のためや、開閉体本体11における各層間の接合等のために、前記ステープラ用つづり針11bやワイヤロープを用いるようにしてもよい。
【0060】
また、本実施の形態のシャッター装置Aに用いた開閉体10、開閉体本体11、又は開閉体構成部材11aは、例えば、オーバーヘッドドアや、ロールスクリーン装置、オーニング装置、移動間仕切り装置(スライディングウォール装置)等に用いることも可能である。また、本実施の形態のシャッター装置Aは、防火防煙以外の目的で利用することも可能であり、例えば、冷気等の流通を防止し、保温性の低下を極力抑える目的等のために、保冷庫などに配設されるシャッター装置としても利用可能である。
【実施例1】
【0061】
1)〈金属線編織物〉
線径0.2mmのステンレス線(SUS304)を、縦30本/インチ×横200本/インチ×で打ち込んだ畳織金網(空隙面積率1%)を用いた。
2)〈樹脂被覆層〉
接着剤として一液型ポリウレタン系樹脂20質量部、接着性樹脂としてエチレン・メタクリル酸共重合体(金属イオン源:亜鉛)80質量部、反応硬化性化合物としてシランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)2質量部、を有効固成分として含む組成物とした。
3)〈製造工程〉
1)の金属線編織物の表面に対し、コーティング法により、上記2)の樹脂被覆層を形成する組成物を塗布、乾燥して各々200g/mの樹脂被覆層を設け、質量1800g/mの開閉体を得た。
【実施例2】
【0062】
実施例1の金属線編織物を下記金属線編織物に変更した以外は、実施例1と同様にして質量1800g/mの開閉体を得た。
〈金属線編織物〉
線径0.2mmのステンレス線(SUS304)を、縦30本/インチ×横200本/インチ×で打ち込んだ畳織金網(空隙面積率1%)を用い、この畳織金網に対し、シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)2質量部を含有する水溶液で処理し、これを乾燥したものを用いた。
【実施例3】
【0063】
実施例1の樹脂被覆層を下記樹脂被覆層に変更した以外は、実施例1と同様にして質量1800g/mの開閉体を得た。
〈樹脂被覆層〉
接着剤として一液型ポリウレタン系樹脂20質量部、接着性樹脂としてエチレン・メタクリル酸共重合体(金属イオン源:亜鉛)80質量部、反応硬化性化合物としてシランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)2質量部、難燃剤として水酸化アルムニウム100質量部、層状鉱物としてフッ素雲母30質量部、の以上を有効固成分として含む組成物とした。
[比較例1]
【0064】
実施例1の樹脂被覆層から接着性樹脂と反応硬化性化合物を省略し、一液型ポリウレタン系樹脂20質量部を100質量部に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして質量1800g/mの開閉体を得た。
3)〈樹脂被覆層〉
接着剤として一液型ポリウレタン系樹脂100質量部を有効固成分として含む組成物とした。
【0065】
実施例1〜3、及び比較例1で得た開閉体3mを直径3インチの巻軸に巻き付けた後、3mの巻き付けを引き出した。この巻き付けと引き出しの動作を1セットとして、これを繰り返した結果、樹脂被覆層と金属線編織物層との剥離破壊は、実施例1の開閉体では832回、実施例2の開閉体では1066回、実施例3の開閉体では795回、であったのに対し、比較例1の開閉体では117回であった。
また、実施例1〜3、及び比較例1で得た開閉体を1000℃の炉内に晒した時の遮煙性は実施例3の開閉体が最も優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係わるシャッター装置用開閉体を用いたシャッター装置の一例を示す正面図である。
【図2】同シャッター装置用開閉体の内部構造を示す斜視図である。
【図3】同シャッター装置用開閉体の製造方法を示す断面図である。
【図4】同シャッター装置用開閉体の接続箇所を示す要部正面図である。
【図5】同シャッター装置用開閉体に対する耐火試験を行っている状態を示す縦断面図である。
【図6】同シャッター装置用開閉体が風圧を受けた状態を示す要部横断面図である。
【図7】同シャッター装置用開閉体において金属線編織物と樹脂被覆層との接合構造の他例を示す要部斜視図である。
【図8】本発明に係わるシャッター装置用開閉体の他例について内部構造を示す斜視図である。
【図9】本発明に係わるシャッター装置用開閉体の他例について内部構造を示す斜視図である。
【図10】本発明に係わるシャッター装置用開閉体の他例の断面図であり、(a)は金属線編織物と樹脂被覆層とを接合する前の状態を示し、(b)は金属線編織物と樹脂被覆層とを接合した後の状態を示す。
【符号の説明】
【0067】
10:開閉体 11:開閉体本体
11a:開閉体構成部材 11a1:金属線編織物
11a2,11a2’:樹脂被覆層 11a11:網目
11b:ステープラ用つづり針 20:ガイドレール
30:収納部 A:シャッター装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の開閉体本体を具備してなるシャッター装置用開閉体において、
金属線編織物の1面以上に、樹脂被覆層を1層以上設けてなる可撓性積層体によって前記開閉体本体を構成するとともに、前記樹脂被覆層には、接着性樹脂または反応硬化性化合物、もしくは接着性樹脂及び反応硬化性化合物を含んでいることを特徴とするシャッター装置用開閉体。
【請求項2】
前記金属線編織物が、開閉体幅方向の金属線と開閉体開閉方向の金属線とを内包し、前記開閉体幅方向の金属線数が、前記開閉体開閉方向の金属線数よりも1インチ間当り1本以上少ないことを特徴とする請求項1に記載のシャッター装置用開閉体。
【請求項3】
前記金属線編織物の編織空隙部面積の総和の比率が、3%未満であることを特徴とする請求項1または2に記載のシャッター装置用開閉体。
【請求項4】
前記金属線編織物の表面が、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤の内の1種以上の反応硬化性化合物によって被覆されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のシャッター装置用開閉体。
【請求項5】
前記樹脂被覆層に含む前記接着性樹脂が、α,β−不飽和カルボン酸単位を有する共重合体樹脂であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のシャッター装置用開閉体。
【請求項6】
前記接着性樹脂が、1)ビニルモノマーとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体で、この共重合体中のカルボン酸の一部若しくは全部が2価金属イオン金属陽イオンで中和されたアイオノマー樹脂、2)α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとの共重合体、3)α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸エステルとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとの3元共重合体の内、1種以上を含むことを特徴とする請求項5に記載の屈曲性に優れたシャッター装置用開閉体。
【請求項7】
前記樹脂被覆層に含まれる前記反応硬化性化合物が、イソシアネート系化合物、アジリジン系化合物、オキサゾリン系化合物、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤の内、1種以上を含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のシャッター装置用開閉体。
【請求項8】
前記樹脂被覆層が、さらにモンモリロナイト、スメクタイト、フッ素雲母の内、1種以上の層状鉱物を含んでいることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のシャッター装置用開閉体。
【請求項9】
前記樹脂被覆層上の少なくとも1面上に、さらに最外被覆層を有していることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のシャッター装置用開閉体。
【請求項10】
前記開閉体本体は、前記可撓性積層体からなる複数の開閉体構成部材を、ステンレス製接続部材により接続してなることを特徴とする請求項1〜9何れか1項に記載のシャッター装置用開閉体。
【請求項11】
前記開閉体本体をガイドレールに沿わせながら繰り返し開閉動作するようにしたことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のシャッター装置用開閉体を用いたシャッター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−1659(P2010−1659A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161717(P2008−161717)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(594017075)株式会社グロー工業 (5)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)