説明

シャープペンシル

【課題】筆記芯の筆記圧や押圧力によりチャック体を回転させ、その回転力が芯パイプに伝達されないことにより芯パイプの回転に起因した不都合を解消すると共に、通常のノック操作でもチャック体を回転させることができるシャープペンシルを得ること。
【解決手段】軸筒1と、軸筒1内に軸方向へ移動可能に挿入されて後退方向に付勢された芯パイプ3と、芯パイプ3の前方で軸筒1内に配設されて筆記芯Sの挟持および挟持解除を行うチャック体45とを備え、芯パイプ3とチャック体45を分離し、芯パイプ3を軸筒1内に軸方向にのみ移動可能とし、その芯パイプ3の前方でチャック体45を軸筒1内に軸方向へ移動可能且つ軸回り方向へ回転可能に配置し、チャック体45の後部と芯パイプ3の前部との間には、ノック操作による芯パイプ3の前進・後退時と、筆記芯Sに筆記圧が加わった時、および、該筆記圧解除時にチャック体45を回転させる芯回転機構5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、芯回転機構を備えたシャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なシャープペンシルは、先具を有する軸筒と、該軸筒内に挿入されて後退方向に付勢された芯パイプと、該芯パイプの先端に連結されて筆記芯の挟持および挟持解除を行うチャック体とを備え、前記芯パイプをノック操作で前進移動させることにより、前記先具から筆記芯を突出させて筆記に供するようになっている。
【0003】
このような従来のシャープペンシルでは、先具から突出した筆記芯がチャック体で挟持されて軸回り方向には回転しない状態で筆記に供せられるため、軸筒を紙面に対して同じ向きに把持した状態で筆記すると、筆記芯の芯先には摩耗による片減りが生じ、これに起因して筆記線の太さや濃さが変化し、これを解消するためには、軸筒を間欠的に回しながら筆記しなければならず、このような操作は煩わしく使い勝手の点で不便であった。
【0004】
そこで、紙面等に対する筆記芯の押圧力でチャックユニットを後退させることにより、該チャックユニットと共に筆記芯を回転させる芯回転機構を備えたシャープペンシルも提供されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
特許文献1のシャープペンシルは、チャックリングで開閉されるチャック体が筆記芯を挟持している状態において、その筆記芯を後退させることにより、前記チャック体とチャックリングとからなる所謂チャックユニットを回転させるチャック体回転手段(芯回転機構)を軸筒内に配置すると共に、そのチャック体回転手段は、摺動子とその摺動子に当接する回転子、並びに、軸筒の内壁面に設けられたカム部とから構成され、前記チャック体の開閉を行うチャックリングの後端に前記摺動子を当接させ、その摺動子の移動に伴って移動する回転子を摺動子に当接させ、前記の摺動子とチャック体と回転子を前方に付勢させ、前記チャック体の後部に筆記芯タンクを固定(特許文献1の〔0005〕参照)した構造となっている。そして、筆記芯を紙面に少し強く押し付けると、前記の摺動子とチャック体と回転子が前方付勢力に抗して後退移動し、筆記芯の押し付けを解除すると、前記の摺動子とチャック体と回転子が前方付勢力で前進しながら回転し、その回転によって、芯タンクと共にチャック体が回転し、該チャック体に挟持された筆記芯が回転するというものである。
【0006】
特許文献2のシャープペンシルは、軸筒内にチャックユニットを前後移動可能に且つ回転可能に配設し、筆記芯の筆記圧による前記チャックユニットの後退移動に伴い、回転子を回転駆動させる回転駆動機構(芯回転機構)を備え、前記回転子の回転運動を前記チャックユニットを介して筆記芯に伝達するように構成されたものである。ここで、前記チャックユニットは芯ケースの先端に連結されている(特許文献2の段落〔0030〕参照)ので、前記回転駆動機構は、筆記芯を挟持した状態のチャックユニットと芯ケースを一体的に回転させるようになっている。
【0007】
【特許文献1】特許第3885315号公報(〔請求項1〕および図1) 特許第4240417号公報(〔請求項1〕および図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および2のシャープペンシルは、いずれも筆記芯の筆記圧によるチャックユニットの後退移動に伴って該チャックユニットを回転させる芯回転機構を備えているので、筆記芯を筆記圧で回転させて筆記芯の片減りを軽減することは可能である。しかしながら、前記チャックユニットは芯タンクや芯ケース(以下、これらを「芯パイプ」という)と一体的に連結されているので、前記チャックユニットの回転時には芯パイプも一体的に回転してしまい、その結果、芯回転系統の回転抵抗が大きくなって回転不良を引き起こすという危惧がある。
【0009】
また、特許文献1,2のシャープペンシルにおける前記芯回転機構は、チャックユニットで挟持された筆記芯の筆記圧や押圧力による前記チャックユニットの後退移動時にのみ該チャックユニットを回転させる構成となっているため、筆記芯繰出時の通常のノック操作では前記チャックユニットを回転させることはできなかった。
【0010】
この発明は上記事情に鑑みてなされたもので、チャック体で挟持された筆記芯の筆記圧や押圧力により前記チャック体を回転させ、その回転力が芯パイプには伝達されないようにすることによって芯パイプの回転に起因した不都合を解消できると共に、通常のノック操作でも前記チャック体を回転させることができるシャープペンシルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係るシャープペンシルは、軸筒と、該軸筒内に軸方向へ移動可能に挿入されて後退方向に付勢された芯パイプと、該芯パイプの前方で前記軸筒内に配設されて筆記芯の挟持および挟持解除を行うチャック体とを備え、前記芯パイプと前記チャック体を分離し、前記芯パイプを軸筒内に軸方向移動可能に挿入し、その芯パイプの前方で前記チャック体を軸筒内に軸方向へ移動可能に且つ軸回り方向へ回転可能に配置し、前記チャック体の後部と前記芯パイプの前部との間には、ノック操作による前記芯パイプの前進・後退時と、前記筆記芯に筆記圧が加わった時、および、該筆記圧解除時に前記チャック体を回転させて該回転力を前記芯パイプには伝達しない芯回転機構を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
この発明に係るシャープペンシルの芯回転機構は、軸方向移動が可能で且つ軸回り方向の回転が規制されて後退方向に付勢された状態で取り付けられた受け台と、前記チャック体におけるリードチャックの後部に固着され一体化されたチャック継手と共に軸方向移動が可能で且つ軸回り方向の回転が可能に配置され、ノック操作による前記芯パイプの前進・後退時と、前記筆記芯に筆記圧が加わった時、および、該筆記圧解除時に前記チャック継手を介して前記チャック体を回転させるように構成されているものである。
【0013】
この発明に係るシャープペンシルの芯回転機構は、前記受け台の先端に形成された非回転側の先端カム面と、前記チャック継手の後部内面に形成されて前記受け台の先端カム面に対峙する回転側の内側カム面とからなり、筆記芯の筆記圧によるチャック体の後退移動時、および、ノック操作による芯パイプと受け台の一体的前進時において、前記受け台の先端カム面と前記チャック継手の内側カム面が噛合しながら該チャック体を回転させるように構成されているものである。
【0014】
この発明に係るシャープペンシルの前記芯回転機構は、軸筒内に軸方向移動可能に挿入されて後退方向に付勢され軸回り方向の回転が規制された内筒を備え、該内筒の内側に形成された非回転側の内側カム面と、前記チャック継手の外側に形成されて前記内筒の内側カム面に対峙する回転側の外側カム面とを有し、筆記芯の筆記圧解除によるチャック体の前進移動時およびノック操作解除時に、前記チャック継手の外側カム面が前記内筒の内側カム面に噛合しながら前記チャック体を回転させるように構成されているものである。
【0015】
この発明に係るシャープペンシルにおいて、前記チャック継手の内側カム面と前記受け台の先端カム面は、チャック体が筆記芯を挟持して筆記圧が加わっていない通常の状態において、それぞれのカム面の頂点が軸回り方向に位相ずれしているものである。
【0016】
この発明に係るシャープペンシルにおいて、前記チャック継手の外側カム面と前記内筒の内側カム面は、筆記芯に筆記圧が加わった時およびノック操作時に、それぞれのカム面の頂点が軸回り方向に位相ずれした位置まで前記チャック継手が回転して該チャック継手の外側カム面と前記内筒の内筒の内側カム面が離間保持されるように構成されているものである。
【0017】
この発明に係るシャープペンシルにおいて、前記チャック継手の後端部には、前記受け台の後部に圧接して前記チャック体を前進方向に付勢する弾性片が一体形成されているものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明のシャープペンシルによれば、芯パイプとチャック体が分離され、その両者間に配設された芯回転機構は、ノック操作による芯パイプの前進・後退時と、筆記芯に筆記圧が加わった時、および、該筆記圧解除時に前記チャック体のみを回転させて該回転力が芯パイプの系統には伝達されないので、チャック体と芯パイプの一体的回転に起因した不都合を解消できると共に、通常のノック操作でも前記チャック体を回転させることができるという効果がある。
【0019】
この発明のシャープペンシルによれば、芯パイプの前部に受け台が固着され、該受け台は軸筒内に軸方向移動可能に挿入されて軸回り方向の回転が規制されているので、筆記芯の筆記圧やノック操作時にチャック体を円滑に回転させることができるという効果がある。
【0020】
この発明のシャープペンシルによれば、筆記芯の筆記圧によるチャック体の後退移動時、および、ノック操作による芯パイプと受け台の一体的前進移動時において、前記受け台の先端カム面とチャック継手の内側カム面との噛合によるカム作用により、チャック体を円滑に回転させることができるという効果がある。
【0021】
この発明のシャープペンシルによれば、筆記芯の筆記圧解除時には、内筒の内側カム面とチャック継手の外側カム面とが噛合し、カム作用によって、チャック体のみを円滑に回転させることができるという効果がある。
【0022】
この発明のシャープペンシルによれば、チャック体が筆記芯を挟持して筆記圧が加わっていない通常の状態において、チャック継手の内側カム面と受け台の先端カム面のそれぞれの頂点が軸回り方向に位相ずれしているので、筆記芯に筆記圧が加わった時およびノック操作時におけるチャック体の移動に伴う前記のカム作用を円滑に遂行させることができるという効果がある。
【0023】
この発明のシャープペンシルによれば、筆記芯に筆記圧が加わった時およびノック操作時に、チャック継手の外側カム面と内筒の内側カム面のそれぞれの頂点が軸回り方向に位相ずれした位置まで前記チャック体が回転して前記外側カム面と前記内側カム面が離間して停止保持されるので、筆記芯の筆記圧解除およびノック操作解除時のチャック体の前進移動時における前記外側カム面と前記内側カム面とを噛合させながらチャックユニットを円滑に回転させることができるという効果がある。
【0024】
この発明のシャープペンシルによれば、チャック継手の後端部に該チャック継手を前進方向に付勢する弾性片を一体形成したので、チャック継手と別体のバネ部材を不要化できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるシャープペンシルを示す断面図、図2(A)(B)は図1の動作説明を兼ねた要部拡大断面図、図3は図1中の中軸を示す平面図、図4は図3の軸方向断面図、図5はチャックユニットと内筒と受け台の組立構造を示す断面図、図6は図5の平面図、図7は図6の分解図、図8は受け台が組み付けられた内筒の断面図、図9(A)はチャック継手の平面図、図9(B)は図9(A)の左側面図、図9(C)は図9(A)の右側面図、図10は図9(A)の軸方向断面図である。
【0026】
この実施の形態1によるシャープペンシルは、軸筒1と、この軸筒1の先端に装着された先具2と、前記軸筒1内に挿入された筆記芯収容用の芯パイプ3と、この芯パイプ3とは分離されて該芯パイプ3の前方に配設され筆記芯Sを挟持および挟持解除するリードチャック40とチャック継手42からなるチャック体45を備えるメカユニット4と、芯パイプ3の前端とチャック体45との間に配設された芯回転機構5とを備え、前記芯パイプ3のノック操作による前進・後退移動時、および、筆記芯Sに筆記圧が加わった時、ならびに該筆記圧解除時に、前記芯回転機構5が前記チャック体45を回転させる構造となっており、以下に詳細な構造を説明する。
【0027】
まず、前記軸筒1は、先軸1Aと後軸1Bとに二分割され、先軸1Aの後部と後軸1Bの前部とを螺合等の手段で着脱可能に連結した構造となっている。前記先軸1A内の前部には段付き筒状の中軸10が着脱可能に挿入されている。この中軸10は、図3および図4に示すように、最も小径な先端部の第1筒状部10Aと、第1筒状部10Aの後端に連続した第2筒状部10Bと、第2筒状部10Bの後端に連続した第3筒状部10Cと、第3筒状部10Cの後端に連続した第4筒状部10Dとからなって、第1筒状部10Aが最も小径で第2筒状部10Bと第3筒状部10Cおよび第4筒状部10Dが順次大径となるように形成されている。
【0028】
前記中軸10において、第2筒状部10Bの外周には、前記先具2を螺合させるための雄ネジ部が設けられている。また、前記第3筒状部10Cの外周は断面多角形状に形成されており、これと同様に内周面が断面多角形状に形成された軸筒1(先軸1A)の先端開口部に前記第3筒状部10Cを嵌合することにより、軸筒1に対して中軸10が回り止め状態に取り付けられている。
【0029】
また、前記中軸10は、図4に詳細を示すように、前記メカユニット4の先端を係脱可能に当接させるための前部内段面10aと、後述するリターンスプリング14の前端を当接させる中間内段面10bとを有している。さらに、前記中軸10において、第4筒状部10Dには、前部スリット10−1と、この後方に連続する幅狭の中間スリット10−2と、この中間スリット10−2の後方に連続する幅広の後部スリット10−3が一連に設けられており、また、前記第4筒状部10Dの後部には後端が切欠開放された後端開放スリット10−4が軸方向に形成されている。
【0030】
そして、前記中軸10は、第3筒状部10Cが先軸1Aの先端開口部に嵌合されて軸回り方向が係合された回り止め状態において、第1および第2筒状部10A,10Bが先軸1Aの前方に突出しており、その突出部位における第2筒状部10Bの雄ネジ部に先具2が螺合されている。また、前記第1筒状部10A内にはスライダー6の後部が摺動自在に挿入され、該スライダー6の前部は前記先具2の中心孔に遊嵌され、該先具2の中心孔内周面と前記スライダー6の前部外周面との間に先端チップ7が摺動自在に嵌め込まれている。
【0031】
前記中軸10の内部には、固定側のカム筒を構成する内筒13が軸方向へ移動可能で軸回り方向の回転が規制された状態に組み込まれている。
【0032】
前記内筒13は、図5〜図8に示すように、前部の小径筒部13Aと後部の大径筒部13Bとからなっている。前記大径筒部13Bは、後述する受け台8の係止突起8bを係止させるための係止孔15と、該係止孔15の後端に連続形成された幅広開口部16と、該幅広開口部16の一側に連続して前記大径筒部13Bの後端に開放されたスリット17(図6参照)と、前記大径筒部13Bの後端における前記係止孔15との略対称位置に形成された後端切欠部18とを有しており、前記の幅広開口部16とスリット17と後端切欠部18とで囲繞された切欠片部19が形成されている。その切欠片部19の後端面には面取りテーパー面19aが形成されている。
【0033】
このような内筒13において、大径筒部13Bの外側には回り止め突起20(図6,7参照)が一体突設されており、この突起20を前記中軸10の前部スリット10−1に摺動自在に嵌め込むことにより、前記内筒13は中軸10に対して軸回り方向の回転が規制された状態で軸方向へ移動可能に組み付けられている。
【0034】
このようにして、中軸10に組み付けられた内筒13は、図1,2に示すように、リターンスプリング14によって後退方向に付勢されている。また、前記内筒13の内部には、芯パイプ3の前部に圧入固定された受け台8が軸方向へ移動可能に挿入されている。受け台8は、図5に示すように、軸方向中間部付近に一体形成された大径環状壁部8aと、該大径環状壁部8aの外径面に一体形成された係止突起8bとを有し、該係止突起8bを前記内筒13の係止孔15に係止させた段付き筒状体からなっている。したがって、前記の受け台8と内筒13は一体的に組み付けられている。このように構成された受け台8の前方にメカユニット4が配置されている。
【0035】
メカユニット4は、リードチャック40と、該リードチャック40の先端チャック部に外嵌めされたチャックリング41と、リードチャック40の後部に固着されたチャック継手42と、前記リードチャック40および前記チャック継手42の前部が軸方向へ移動可能に挿入されたスリーブ43とを備え、前記スリーブ43の前部に一体形成された内向きフランジ43aと前記チャック継手42の前端との間にチャックスプリング44を介在させたユニット構造とからなっている。なお、前記スリーブ43において、内向きフランジ43aの前方に延びるスリーブ前部には窓穴43bが設けられ、この窓穴43bの部位に前記チャックリング41が配置され、該チャックリング41の後端が前記内向きフランジ43aの前端面に当接・離間するようになっている。
【0036】
前記チャック継手42は、特に図9および図10に詳細を示すように、前記リードチャック40の後部を圧入固定する小径筒状部42Aと、該小径筒状部42Aの後端に連続して該小径筒状部42Aよりも大径に形成された中間筒状部42Bと、該中間筒状部42Bの後端に連続して該中間筒状部42Bに比べ外径が大径で内径が同一径に形成された大径筒状部42Cと、該大径筒状部42Cの後端に連続形成された弾性片42Dとからなっている。このように構成されたチャック継手42は、前部の小径筒状部42A内にリードチャック41の後部が圧入固定されて後部(大径筒状部42Cと中間筒状部42B)が前記受け台8に対して回転可能に遊嵌されている。
【0037】
一方、前記芯パイプ3の外側には、受け台8の後部に位置するスペーサー9と、該スペーサー9の後方に位置するストッパー11と、前記スペーサー9とストッパー11との間にクッションスプリング12が取り付けられている。
【0038】
前記スペーサー9は段付き筒状体からなっており、その後部内周面に一体形成された内側環状突起9aと、後部外面に突設された回り止め突起9bとを有している。その回り止め突起9bを中軸10の後部スリット10−3に摺動可能に嵌め込むことにより軸方向へ移動可能に取付けられ、クッションスプリング12の弾発力で前進方向に付勢されて前記内側環状突起9aが内筒8の後部に当接するようになっている。
【0039】
前記ストッパー11は筒状体からなり、前部内周面に形成された内側環状突起11aと、前部外面に突設された回り止め突起11bとを有している。その回り止め突起11bを前記スペーサー9の回り止め突起9bの後方で中軸10の後部スリット10−3に嵌め込むことにより、前記スペーサー9との間に介在させたクッションスプリング12の弾発力で常に前記ストッパー11を後方に付勢して前記回り止め突起11bを前記後部スリット10−3の後端壁に圧接させている。これにより、前記ストッパー11は常に定位置に保持されている。
【0040】
芯回転機構5は、チャック継手42と受け台8との間、およびチャック継手42と内筒13との間に設けられている。
【0041】
芯回転機構5は、図5に明示したように、前記受け台8の先端に形成された非回転側の先端カム面50と、前記チャック継手42における中間筒状部42Bの内側段部に軸方向へ向けて形成されて前記受け台8の先端カム面50に対峙する回転側の内側カム面51とからなり、筆記芯Sの筆記圧によるチャック体45の後退移動時、および、ノック操作による芯パイプ3と受け台8の一体的前進時に、前記受け台8の先端カム面50と前記チャック継手42の内側カム面51が噛合しながら該チャック継手42を含むチャック体45全体を回転させるようになっている。
【0042】
また、前記芯回転機構5は、前述した受け台8の先端カム面50およびチャック継手42の内側カム面51のほかに、前記内筒13の内側段部に軸方向へ向けて形成された非回転側の内側カム面52(図5,10参照)と、前記チャック継手42における大径筒状部42Cの前端壁面に形成されて前記内筒13の内側カム面52に対峙する回転側の外側カム面53(図5,7,9,10参照)とを有し、筆記芯の筆記圧解除によるチャック体45の前進移動時に、前記チャック継手42の外側カム面53が前記内筒13の内側カム面52に噛合しながら前記チャック体45を回転させるようになっている。
【0043】
ここで、受け台8の先端カム面50とこれに対峙するチャック継手42の内側カム面51、および、内筒13の内側カム面52とこれに対峙するチャック継手42の外側カム面53は、互いに対峙するそれぞれの頂点がそれぞれ周方向に位相ずれした状態に設定されている。なお、前記カム面の位相ずれの角度は約3.5度とすることが好ましいが、この限りではない。
【0044】
さらに詳しく説明すると、図11(A)はチャック継手42の外側カム面53の形成部位を部分的に示す展開図であり、図11(B)はチャック継手42の内側カム面51の形成部位を部分的に示す展開図である。
図11(A)に示すように、チャック継手42の外側カム面53は、緩傾斜カム面53aと急傾斜カム面53bをチャック継手42の周方向へ交互に連続形成したものであり、これと同様に、図11(B)に示すチャック継手42の内側カム面51も緩傾斜カム面51aと急傾斜カム面51bをチャック継手42の周方向へ交互に連続形成されたものとなっている。
【0045】
このように形成されたチャック継手42の外側カム面53に対峙する内筒13の内側カム面52、および、チャック継手42の内側カム面51に対峙する受け台8の先端カム面50においても、チャック継手42の外側カム面53および内側カム面51と同様に緩傾斜カム面と急傾斜カム面とからなっている。
【0046】
そして、チャック継手42の外側カム面53の頂点(カム山)53cとその外側カム面53に対峙する内筒13の内側カム面52の頂点(図示せず)、および、チャック継手42の内側カム面51の頂点51cとその内側カム面51に対峙する受け台8の先端カム面50の頂点(図示せず)は、それぞれの周方向に位相ずれさせた配置となっているものである。
【0047】
このように構成された芯回転機構5において、受け台8の先端カム面50とこれに対峙するチャック継手42の内側カム面51は、チャック体45が筆記芯Sを挟持し筆記圧が加わっていない通常の状態あるいはノック操作を行っていない状態において前述のようにそれぞれの頂点が位相ずれした状態で離間保持されるようになっている。また、内筒13の内側カム面52とこれに対峙するチャック継手42の外側カム面53は、筆記芯を加えた状態あるいはノック操作状態時に、それぞれの頂点が軸回りに位相ずれした位置まで前記チャック継手42を含むチャック体45が回転することにより前記内側カム面52と前記外側カム面53が離間位置に保持されるようになっている。
【0048】
前記軸筒1の後部外側にはクリップ21が取付けられている。一方、芯パイプ3の後端部には、消しゴム22が嵌着された消しゴムホルダー23が嵌合され、該消しゴムホルダー23には、ノック部材を兼ねた消しゴムカバー24が嵌合されている。
【0049】
次に、上記実施の形態1によるシャープペンシルの組み立てについて説明する。
まず、スリーブ43の先端開口部から該スリーブ43内における窓穴43bの部位にチャックリング41およびリードチャック40を順次挿入する。次いで、スリーブ43の後端開口部よりチャックスプリング44を挿入後、チャック継手42の先端孔部(小径筒状部42A)にリードチャック40の後部を圧入固定することにより、メカユニット4が組み立てられる。
【0050】
一方、受け台8の後側内部に芯パイプ3の前部を圧入固定しておく。なお、その圧入固定は後工程で行ってもよい。次いで、内筒13の内部に該内筒13の後端開口部からメカユニット4を挿入後、前記受け台8を先端カム面21側から挿入し、該受け台8の外面に形成された係止突起8bを内筒13の係止孔15に係止させて固定する。この場合、受け台8の係止突起8bの前端を、内筒13の切欠片部19の面取りテーパー面19aに当接して押し込むと、前記係止突起8bは、前記切欠片部19を内筒13の径方向外方に押し広げながら前記切欠片部19を通過して内筒13の係止孔15に嵌め込み係止される。
【0051】
これによって、メカユニット4と受け台8が内筒13でユニット化されている。そのユニット化状態において、前記メカユニット4は内筒13に対して軸方向の移動および軸回り方向の回転が可能な状態に保持され、前記受け台8は、該受け台8の係止突起8bと内筒13の係止孔15との係止により前記内筒13に対して固定された状態に保持されている。なお、前記のメカユニット4と受け台8と内筒13とのユニットを、以下、内筒13のユニット体と称して説明する。
【0052】
次いで、中軸10内に後端開口部からリターンスプリング14を挿入後、その中軸10の後端開口部から該中軸10内に前記内筒13のユニット体をスリーブ43側より挿入する。この際、前記中軸10の後部には後端開放スリット10−4が形成されているので、中軸10内に後端開口部から内筒13を押し込むと、中軸10の後部が前記後端開放スリット10−4の部位で径方向外側に押し広げられて内筒13の回り止め突起20が前記中軸10の前部スリット10−1に摺動可能に嵌め込まれる。同様にして、前記内筒13の後部に嵌め込まれたスペーサー9を中軸10の幅広開口部16まで挿入して該スペーサー9の回り止め突起9bを前記中軸10の後部スリット10−3に嵌め込み係合させる。
【0053】
次に、クッションスプリング12を芯パイプ3に嵌め込んだ後、該芯パイプ3にストッパー11を嵌挿し、該ストッパー11の回り止め突起11bを前記中軸10の後部スリット10−3に嵌め込んで該後部スリット10−3の後端壁部に前記回り止め突起11bを係止させる。これにより、中軸10のユニットが組み立てられる。
【0054】
このようにして、前記内筒13のユニットを中軸10にセットした後、その中軸10を先軸1A内に後端開口部から挿入して該先軸1Aの先端開口部から前方に前記中軸10の前部を突出させ、先端チップ7がセットされたスライダー6を前記中軸10の先端孔部に挿入する。その後、前記中軸10の前部外周に形成されている雄ネジ部に先具2を螺合固定する。次いで、クリップ21が取付けられた後軸1Bを先軸1Aの後部に螺合固定すると共に、消しゴム22がセットされた消しゴムホルダー23を前記後軸1Bの後部に挿入し、その消しゴムホルダー23に消しゴムカバー24を被嵌させることによって、シャープペンシルの組み立てが完了する。
【0055】
次に動作について説明する。
チャック体45のリードチャック40が筆記芯Sを挟持して筆記圧が加わっていない通常の状態では、チャック継手42の外側カム面53と内筒13の内側カム面52は互いに噛み合った整合状態に保持されている。また、チャック継手42の内側カム面51と受け台8の先端カム面50は、これらの頂点が位相ずれした位置で離間状態に停止保持される。
【0056】
この状態において、リードチャック40で挟持された筆記芯Sに筆記圧が加わると、チャック体45が後退移動し、チャック継手42の内側カム面51と受け台8の先端カム面50が当接し、それらの内側カム面51と先端カム面50が噛み合い整合する位置までチャック体45が回転することにより筆記芯Sも回転する。このとき、チャック継手42の外側カム面53と内筒13の内側カム面52は互いに離間した停止位置に保持されている。
【0057】
そして、前記筆記芯Sの筆記圧が解除されると、チャック体45が前進移動することにより、チャック継手42の外側カム面53と内筒13の内側カム面52が互いに噛み合って整合する位置までチャック体45が回転して筆記芯Sが共に回転する。このとき、チャック継手42の内側カム面51と受け台8の先端カム面50は、それぞれの頂点が位相ずれした位置までチャック体45が回転して互いに離間した位置で停止する。
【0058】
一方、チャック体45のリードチャック40が筆記芯Sを挟持して筆記圧が加わっていない通常の状態において、芯パイプ3の後端をノック操作すると、該芯パイプ3と共に受け台8が前進移動する。これにより、受け台8の先端カム面50がチャック継手42の内側カム面51に噛み合い整合した当接状態で内筒13が共に前進移動する。そして、中軸10の内段部にスリーブ43の先端が当接して停止した後、チャック体45がさらに前進移動し、スリーブ43の前部内面に形成された段部にチャックリング41が当接して外れることにより、筆記芯Sが前方へ繰り出される。
【0059】
このようなノック操作によっても、受け台8の先端カム面50とチャック継手42の内側カム面51同士が噛み合い動作し、それらのカム面に沿ってチャック体45が回転しながら前進移動することにより、筆記芯Sが回転しながら繰り出される。
【0060】
以上説明した実施の形態1において、リードチャック40とチャック継手42は一体形成されたものであってもよい。また、スリーブ43は、他部材との摺接抵抗が小さな材料で形成されたものであれば、回転しなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の実施の形態1によるシャープペンシルを示す断面図である。
【図2】図2(A)(B)は図1の動作説明を兼ねた要部拡大断面図である。
【図3】図1中の中軸を示す平面図である。
【図4】図3の軸方向断面図である。
【図5】チャックユニットと内筒と受け台の組立構造を示す断面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】図6の分解図である。
【図8】受け台が組み付けられた内筒の断面図である。
【図9】図9(A)はチャック継手の平面図、図9(B)は図9(A)の左側面図、図9(C)は図9(A)の右側面図である。
【図10】図10は図9(A)の軸方向断面図である。
【図11】図11(A)は外側カム面を部分的に示す展開図、図11(B)は内側カム面を部分的に示す展開図である。
【符号の説明】
【0062】
1 軸筒
1A 先軸
1B 後軸
2 先具
3 芯パイプ
4 メカユニット
4 チャックユニット
5 芯回転機構
6 スライダー
7 先端チップ
8 受け台
8a 大径環状壁部
8b 係止突起
9 スペーサー
9a 内側環状突起
9b 回り止め突起
10 中軸
10A 第1筒状部
10B 第2筒状部
10C 第3筒状部
10D 第4筒状部
10a 前部内段面
10b 中間内段面
10−1 前部スリット
10−2 中間スリット
10−3 後部スリット
10−4 後端開放スリット
11 ストッパー
11a 内側環状突起
11b 回り止め突起
12 クッションスプリング
13 内筒
13A 小径筒部
13B 大径筒部
14 リターンスプリング
15 係止孔
16 幅広開口部
17 スリット
18 後端切欠部
19 切欠片部
19a テーパー面
20 回り止め突起
21 クリップ
22 消しゴム
23 消しゴムホルダー
24 消しゴムカバー
40 リードチャック
41 チャックリング
42 チャック継手
42A 小径筒状部
42B 中間筒状部
42C 大径筒状部
42D 弾性片
43 スリーブ
43a 内向きフランジ
43b 窓穴
44 チャックスプリング
45 チャック体
50 先端カム面
51,52 内側カム面
53 外側カム面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、該軸筒内に軸方向へ移動可能に挿入されて後退方向に付勢された芯パイプと、該芯パイプの前方で前記軸筒内に配設されて筆記芯の挟持および挟持解除を行うチャック体とを備えたシャープペンシルであって、
前記芯パイプと前記チャック体を分離し、前記芯パイプを軸筒内に軸方向移動可能に挿入し、その芯パイプの前方で前記チャック体を軸筒内に軸方向へ移動可能に且つ軸回り方向へ回転可能に配置し、前記チャック体の後部と前記芯パイプの前部との間には、ノック操作による前記芯パイプの前進・後退時と、前記筆記芯に筆記圧が加わった時、および、該筆記圧解除時に前記チャック体のみを回転させて該回転力を前記芯パイプには伝達しない芯回転機構を設けたことを特徴とするシャープペンシル。
【請求項2】
前記芯回転機構は、軸方向移動が可能で且つ軸回り方向の回転が規制されて後退方向に付勢された状態で取り付けられた受け台と、前記チャック体におけるリードチャックの後部に固着され一体化されたチャック継手と共に軸方向移動が可能で且つ軸回り方向の回転が可能に配置され、ノック操作による前記芯パイプの前進・後退時と、前記筆記芯に筆記圧が加わった時、および、該筆記圧解除時に前記チャック継手を介して前記チャック体のみを回転させるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のシャープペンシル。
【請求項3】
前記芯回転機構は、前記受け台の先端に形成された非回転側の先端カム面と、前記チャック継手の後部内面に形成されて前記受け台の先端カム面に対峙する回転側の内側カム面とからなり、筆記芯の筆記圧によるチャック体の後退移動時、および、ノック操作による芯パイプと受け台の一体的前進時において、前記受け台の先端カム面と前記チャック継手の内側カム面が噛合しながら該チャック体を回転させるように構成されていることを特徴とする請求項2記載のシャープペンシル。
【請求項4】
前記芯回転機構は、前記軸筒内に軸方向移動可能に挿入されて後退方向に付勢され軸回り方向の回転が規制された内筒を備え、該内筒の内側に形成された非回転側の内側カム面と、前記チャック継手の外側に形成されて前記内筒の内側カム面に対峙する回転側の外側カム面とを有し、筆記芯の筆記圧解除によるチャック体の前進移動時およびノック操作解除時に、前記チャック継手の外側カム面が前記内筒の内側カム面に噛合しながら前記チャック体を回転させるように構成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のシャープペンシル。
【請求項5】
前記チャック継手の内側カム面と前記受け台の先端カム面は、チャック体が筆記芯を挟持して筆記圧が加わっていない通常の状態およびノック操作を行っていない状態において、それぞれのカム面の頂点が軸回り方向に位相ずれしていることを特徴とする請求項3記載のシャープペンシル。
【請求項6】
前記チャック継手の外側カム面と前記内筒の内側カム面は、筆記芯に筆記圧が加わった時およびノック操作時に、それぞれのカム面の頂点が軸回り方向に位相ずれした位置まで前記チャック継手が回転して該チャック継手の外側カム面と前記内筒の内筒の内側カム面が離間保持されるように構成されていることを特徴とする請求項4記載のシャープペンシル。
【請求項7】
前記チャック継手の後端部には、前記受け台の後部に圧接して前記チャック体を前進方向に付勢する弾性片が一体形成されていることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載のシャープペンシル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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