説明

シャープペンシル

【課題】軸筒の先端から芯を突出させて筆記するシャープペンシルにおいて、軸筒を持ち変えなくても芯の筆記先端を回転できるようにしたシャープペンシルを提供する。
【解決手段】軸筒3の先端から芯6を突出させて筆記するようにしたシャープペンシル本体1と、筆記の際に保持される筒状の保持筒2を形成する。このシャープペンシル本体1を、保持筒2内に前後方向に移動可能にかつ回転可能に挿入する。この保持筒2とシャープペンシル本体1の間に、シャープペンシルが前後動するとき、シャープペンシル本体を回転させる機構を設ける。この機構は、保持筒2に設けられた前歯車24及び後歯車23と、この前歯車24及び後歯車23にそれぞれかみ合うようシャープペンシル本体1の外周に設けられた前方固定歯車19及び後方固定歯車16を含み、これらの前歯車及び前方固定歯車と、後歯車及び後方固定歯車の歯の位相をずらして設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記にともなって摩耗した芯の先端を回転できるようにしたシャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
筆記にともなって芯の先端は斜めに摩耗し、筆記された線の太さが変化してしまう。そのような現象を回避するためには、軸筒を持ち変えて芯の筆記先端の方向を変えればよいが、その都度、軸筒を握り直さなければならないので面倒である。そこで、軸筒を持ち変えずに、芯の先端を回転できるようにしたシャープペンシルが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載のシャープペンシルは、軸筒内に配設されたチャックユニットの前後動により筆記芯の解除と把持を行い、前記筆記芯を前方に繰り出すことができるように構成されたシャープペンシルであって、前記チャックユニットが、筆記芯を把持した状態で軸芯を中心にして回転可能となるように前記軸筒内に保持されると共に、前記筆記芯の筆記圧による前記チャックユニットの後退動作に伴い、回転子を回転駆動させる回転駆動機構が具備され、前記回転子の回転運動を前記チャックユニットを介して前記筆記芯に伝達するように構成されている。
【0003】
すなわち、上記シャープペンシルは、軸筒を回転させずに、チャックユニットを筆記圧により後退動させ、回転駆動機構を介して軸筒内でチャックユニットを回転させるよう構成してある。このチャックユニットには、芯を収納している芯ケースが接続されているから、チャックユニットを回転させるためには、芯ケースも軸筒内で回転されなければならない。そのために軸筒内にチャックユニット等の回転機構を設けると共にばね部材等に回転力を伝えないようトルクキャンセラー等を設ける必要があり、構成が複雑になる。
【0004】
上記のように、従来知られている芯回転式のシャープペンシルは、芯を把持しているチャックユニットやチャックユニットを取り付けた芯ケース(芯タンク)を軸筒内で回転させる機構であるので、構成が複雑になっている。一方、芯支持部と手支持部を分離し、芯支持部が手支持部に対して一方向に回転するようにしたシャープペンシルも提案されている(例えば特許文献2参照)。しかし、このシャープペンシルでは芯支持部の構成が不明であり、また芯支持部に形成した下部ストッパーの上面にのこぎり状の歯を設け、手支持部の先端にこの歯に係合するまっすぐな部材と先端がまがっている部材を固設し、これらの部材によりストッパーが上下に運動する毎にストッパーを一方向に回転させるよう構成されているが、上記部材の上下動と歯のかみ合わせによる回転操作に確実性がない。そのため、このシャープペンシルが実施されたかどうか知らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4240417号公報(請求項1、段落0048、段落0049、段落0066、図1)
【特許文献2】実開昭54−25339号(実用新案登録請求の範囲、第2図、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決課題は、軸筒を持ち変えたり、チャックユニットを軸筒内で回転させたりすることなく、芯を回転させることができ、従来のシャープペンシルの機構を殆ど利用して簡単に芯を回転できるようにしたシャープペンシルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、筆記する際に保持される筒状の保持筒と、軸筒の先端から芯を繰り出すように構成したシャープペンシル本体を有し、該シャープペンシル本体を前後方向に移動可能にかつ周方向に回転可能に保持筒内に挿入し、該保持筒の内面に前向きの歯を有する前歯車及び後向きの歯を有する後歯車を形成し、シャープペンシル本体の外周に該シャープペンシル本体が後退したとき上記前歯車に係合する歯を有する前方固定歯車及び上記シャープペンシル本体が前進したとき上記後歯車に係合する歯を有する後方固定歯車を形成し、筆圧が作用したとき上記シャープペンシル本体が後退することを許容し筆圧が消失したとき上記シャープペンシル本体を前進させて上記後歯車と後方固定歯車をかみ合わせるよう上記保持筒とシャープペンシルを付勢する筆圧スプリングを設け、シャープペンシル本体が前後動するときシャープペンシル本体を回転させるよう上記前歯車及び前方固定歯車の歯の位相と後歯車及び後方固定歯車の歯の位相をずらして設けたシャープペンシルが提供され、上記課題が解決される。
【0008】
また、本発明によれば、上記保持筒として、シャープペンシル本体の軸筒の外周にグリップや本体カバーを設けた上記シャープペンシルが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のように、筆記する際に保持される筒状の保持筒と、軸筒の先端から芯を繰り出すように構成したシャープペンシル本体を有し、該シャープペンシル本体を前後方向に移動可能にかつ周方向に回転可能に保持筒内に挿入し、該保持筒の内面に前向きの歯を有する前歯車及び後向きの歯を有する後歯車を形成し、シャープペンシル本体の外周に該シャープペンシル本体が後退したとき上記前歯車に係合する歯を有する前方固定歯車及び上記シャープペンシル本体が前進したとき上記後歯車に係合する歯を有する後方固定歯車を形成し、筆圧が作用したとき上記シャープペンシル本体が後退することを許容し筆圧が消失したとき上記シャープペンシル本体を前進させて上記後歯車と後方固定歯車をかみ合わせるよう上記保持筒とシャープペンシルを付勢する筆圧スプリングを設け、シャープペンシル本体が前後動するときシャープペンシル本体を回転させるよう上記前歯車及び前方固定歯車の歯の位相と後歯車及び後方固定歯車の歯の位相をずらして設けたから、筆記の際に芯先端を紙面に接離させると保持筒内でシャープペンシル本体を回転させることができ、これに伴って芯を回転させることができる。その上、シャープペンシル本体としては従来のノック式シャープペンシルやサイドノック式シャープペンシル、回転繰出式シャープペンシルその他公知のシャープペンシルのメカをそのまま使用することができるので、構成が著しく簡素化され、経済的に得ることができる。
【0010】
また、上記保持筒として、グリップや本体カバーを設ければ、シャープペンシルとして使い易く、外観も従来のシャープペンシルと殆ど変わらないものが得られる。さらに、上記前方固定歯車を軸筒と別体に形成し、保持筒にシャープペンシル本体を挿入してから軸筒に嵌着し、軸筒に連結されるテーパー部材で前方固定歯車を固定するようにすると、組立が簡単で経済的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図。
【図2】図1に示すシャープペンシルにおいて、筆圧が作用しない状態の一部を断面した側面図。
【図3】図1に示すシャープペンシルの筆記状態の一部を断面した側面図。
【図4】シャープペンシル本体の軸筒の一部を示す断面図。
【図5】前方固定歯車を示し、(A)は側面図、(B)半断面図。
【図6】グリップの一部を断面して示す側面図
【図7】本発明の他の実施例を示す断面図。
【図8】図7に示すシャープペンシルにおいて、筆圧が作用しない状態の一部を断面した側面図。
【図9】図7に示すシャープペンシルの筆記状態の一部を断面した側面図。
【図10】保持筒の前歯車、後歯車とシャープペンシル本体の前方固定歯車、後方固定歯車の関係を示し、(A)は筆記前の位置関係、(B)は筆記開始時に前歯車が前方固定歯車に当接した状態、(C)は歯車がかみ合って上記(B)の状態から1歯分回転したとき、(D)は筆記先端を紙面から離したときの各説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明のシャープペンシルの一実施例を示し、シャープペンシル本体1と、筆記する際手で保持される筒状の保持筒2を有している。該シャープペンシル本体1は、通常のノック式シャープペンシルやサイドノック式シャープペンシル、回転繰出式シャープペンシルその他適宜の機構であってもよく、図1に示す実施例では、ノック式シャープペンシルを用いている。すなわち、シャープペンシル本体1は、軸筒3を有し、該軸筒3の先端にはテーパー部材4が連結され、外周にはクリップ5が設けられている。この軸筒3内には、芯6を収納する芯タンク7と、該芯タンク7の先端に固定したチャック8及び該チャック8の開閉を制御するクラッチ9、該チャック等を後方に押圧するメカスプリング10があり、芯タンク7の後端には消しゴム11及びノックカバー12が装着されている。また、上記テーパー部材4には上記クラッチ9が前進したとき当接する内方段部13や繰出された芯を仮保持するブレーカーゴムや弾性片等の芯保持部材14が設けられている。これらの機構は公知の機構であって、軸筒3の後端から突出するノックカバー12をノックすることにより芯6をテーパー部材4の先端から繰出して筆記することができる。
【0013】
上記軸筒3の外面には、図4に示すように段部15が設けられ、この段部15より前方の外周面には前向きの歯を有する後方固定歯車16が形成され、該後方固定歯車16の前方の軸筒は小径に形成され、該小径部の前端には前方に開口し軸方向に延びる位置きめ溝17が形成されている。この小径部の前方にはねじ部18が形成され、上記テーパー部材4がねじ着される。そして、このテーパー部材4をねじ着する前に、軸筒3の先端から図5に示すような前方固定歯車19を嵌着する。この前方固定歯車19は、後向きの歯を有し、内面には突起20が形成され、該突起20を上記位置決め溝17に係合させることにより該前方固定歯車19は、回転不能に位置決めした状態で軸筒3に固定される。
【0014】
上記シャープペンシル本体1は保持筒2内に挿入され、保持筒2内で前後方向に移動可能でかつ回転可能である。上記保持筒2は、少なくとも上記軸筒の後方固定歯車16と前方固定歯車19を囲む部位に位置する。図1〜図3に示す実施例では、該保持筒2はグリップ21として使用できる適宜の長さに設けられている。該保持筒の内面にはスプリング受部22が形成され、該受部の後面には、上記後方固定歯車16に係合するよう後向きの歯を有する後歯車23が設けられている。また、上記受部の前方は少し内径が広げられ、この拡径部の端面には上記前方固定歯車19に係合するよう前向きの歯を有する前歯車24が形成されている。
【0015】
上記保持筒3とシャープペンシル本体1の間には、シャープペンシル本体1の上記段部15に保持筒2の後端が当接する位置まで上記シャープペンシル本体1を前進(保持筒を後退)させて上記後歯車23と後方固定歯車16をかみ合わせ、また、シャープペンシル本体1が後退(保持筒が前進)することを許容して上記前歯車24と前方固定歯車19をかみ合わせるよう上記保持筒2とシャープペンシル本体1を付勢する筆圧スプリング25が設けられている。図1に示す実施例では、この筆圧スプリング25は上記受部22と前方固定歯車19の突起20の間に挿入してあるが、その他適宜の部位に設けることもできる。
【0016】
上記保持筒2は上述したように適宜の長さに形成することができ、図1に示すグリップ21の長さよりも長く形成し、軸筒とほぼ同じ長さになるように形成した本体カバーとすることもできる。図7は、本体カバー26を軸筒3の外周に設けた実施例を示し、この本体カバー26には、クリップ27が設けられ、軸筒の後部に設けた段部28に本体カバー26が当接するようにしてある。他の構成は上記図1に示す実施例と同様であるので、説明を省略する。
【0017】
上記前歯車24及び前方固定歯車19、後歯車23及び後方固定歯車16に設けられる歯は、かみ合い時に回転力が生じるよう周方向に先端が傾斜した山形状に設けられている。そして、シャープペンシル本体1が前後動して上記前歯車24と前方固定歯車19がかみ合い、若しくは後歯車23と後方固定歯車16がかみ合うときシャープペンシル本体1が回転するよう上記前歯車24及び前方固定歯車19の歯の位相と後歯車23及び後方固定歯車16の歯の位相をずらして設けてある。
【0018】
上記歯車の相対的な動きを図10を参照して説明すると、同図(A)は保持筒2の後歯車23とシャープペンシル本体1の後方固定歯車16がかみ合っている状態であり、同図(B)は保持筒2が図において左行(シャープペンシル本体が右行)して保持筒2の前歯車24と前方固定歯車19が当接した状態である。上記(B)の状態よりさらに保持筒2が図において左行すると、同図(C)に示すように、保持筒2の前歯車24と前方固定歯車19がかみ合い、この際、前歯車24及び前方固定歯車19の歯の位相と後歯車23及び後方固定歯車16の歯の位相がずれているから、前方固定歯車19は保持筒2の前歯車24により回転される。そして、同図(C)の状態から保持筒2が図において右行(シャープペンシル本体が左行)すると、同図(D)に示すように、前歯車24は前方固定歯車19から離れ、後歯車23は後方固定歯車16にかみ合い、上記図(A)の状態に戻る。この際も歯の位相のずれにより後方固定歯車16が後歯車23により回転される。
【0019】
以上のように、前後の歯車のかみ合いにより保持筒2内でシャープペンシル本体1は回転するから、筆記に際し、芯の先端を紙面に当ててシャープペンシル本体1に筆圧を作用させて、シャープペンシル本体1を後退(保持筒を前進)させると、保持筒2の前歯車24と前方固定歯車19がかみ合うから、上述のようにシャープペンシル本体1を回転させて芯6を回転することができる(図3、図9)。このとき、上記後歯車23と後方固定歯車16の間及び保持筒2の後端と段部15の間には隙間29が形成される。そして、芯の先端を紙面から離すと、筆圧が消失し、筆圧スプリング25によりシャープペンシル本体1は前進(保持筒は後退)し、保持筒2の前歯車24は前方固定歯車19から離れ、後歯車23とシャープペンシル本体1の後方固定歯車16がかみ合うから、上述のようにシャープペンシル本体を回転させて芯を回転することができる(図2、図8)。このとき、保持筒とシャープペンシル本体1の相対的な移動は、保持筒2の後端が段部15に当接することにより停止し、前歯車24と前方固定歯車16間には、隙間29が形成される。このように、紙面に芯を接離させることにより、グリップ21や本体カバー26を回転させることなく、芯6を回転させることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 シャープペンシル本体
2 保持筒
3 軸筒
15 段部
16 後方固定歯車
19 前方固定歯車
21 グリップ
23 後歯車
24 前歯車
25 筆圧スプリング
26 本体カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記する際に保持される筒状の保持筒と、軸筒の先端から芯を繰り出すように構成したシャープペンシル本体を有し、該シャープペンシル本体を前後方向に移動可能にかつ周方向に回転可能に保持筒内に挿入し、該保持筒の内面に前向きの歯を有する前歯車及び後向きの歯を有する後歯車を形成し、シャープペンシル本体の外周に該シャープペンシル本体が後退するとき上記前歯車に係合する歯を有する前方固定歯車及び上記シャープペンシル本体が前進するとき上記後歯車に係合する歯を有する後方固定歯車を形成し、筆圧が作用したとき上記シャープペンシル本体が後退することを許容し筆圧が消失したとき上記シャープペンシル本体を前進させて上記後歯車と後方固定歯車をかみ合わせるよう上記保持筒とシャープペンシル本体を付勢する筆圧スプリングを設け、上記シャープペンシル本体が前後動するとき該シャープペンシル本体が回転するよう上記前歯車及び前方固定歯車の歯の位相と後歯車及び後方固定歯車の歯の位相をずらして設けたことを特徴とするシャープペンシル。
【請求項2】
上記保持筒はシャープペンシル本体の軸筒に嵌着したグリップである請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項3】
上記シャープペンシル本体の外周には段部が形成され、上記グリップの後端は該段部に当接可能に設けられている請求項2に記載のシャープペンシル。
【請求項4】
上記保持筒はシャープペンシル本体の軸筒に沿って延びる長さを有する本体カバーである請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項5】
上記シャープペンシル本体の外周には段部が形成され、上記本体カバーの後端は該段部に当接可能に設けられている請求項4に記載のシャープペンシル。
【請求項6】
ノック操作により軸筒の先端から芯を繰り出すように構成したノック式シャープペンシル本体を有し、シャープペンシル本体の軸筒の外周に段部を設け、その前方に前向きの歯を有する後方固定歯車を形成し、該軸筒の先部に位置決め溝を形成し、該軸筒の後向きに歯を有する前方固定歯車を嵌着し、該前方固定歯車の内面に形成した突起を上記位置決め溝に係合させて上記前方固定歯車を軸筒の外周に回転不能状態に固定し、上記後方固定歯車及び前方固定歯車を囲んで筆記の際に保持される保持筒を上記段部の前方に嵌着し、該保持筒の内面に上記前方固定歯車に係合するよう前向きの歯を有する前歯車と上記後方固定歯車に係合するよう後向きの歯を有する後歯車を形成し、筆圧が作用したとき上記シャープペンシル本体が後退することを許容し筆圧が消失したとき上記シャープペンシル本体を前進させて上記後歯車と後方固定歯車をかみ合わせるよう上記保持筒とシャープペンシルを付勢する筆圧スプリングを設け、上記シャープペンシル本体が前後動する際、該シャープペンシル本体が回転するよう前歯車及び前方固定歯車の歯の位相と後歯車及び後方固定歯車の歯の位相をずらして設けたことを特徴とするシャープペンシル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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