説明

シャープペンシル

【課題】軸筒の前後端部からの筆記部およびノック部の突出動作、収納動作が円滑になされ、かつ筆記芯の円滑な繰り出し動作を実現することができるシャープペンシルを提供すること。
【解決手段】軸筒に対して相対的に軸回りの回転操作が可能な操作部3と、この操作部の回転操作に基づいて回転運動を受けるガイド筒12と、このガイド筒に軸方向に移動可能に配置された第1と第2の摺動コマ16,18と、前記ガイド筒の回転運動に伴って前記第1と第2の摺動コマを軸方向に移動させる第1と第2のカム部材16,17とが備えられる。前記第1の摺動コマ16にシャープペンシルユニットが接続され、前記第2の摺動コマ18にノック部21が接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操作部の回転操作により筆記部とノック部とが軸筒の前後からそれぞれ突出されると共に、前記ノック部のノック操作により、筆記部から筆記芯が繰り出されるように構成したシャープペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
ノック式のシャープペンシルは、軸筒の前後に筆記部とノック部とがそれぞれ突出した状態で配置された構成が主流であり、このような構成のシャープペンシルによると、これをペンケースなどに収納した場合、前記ノック部が不用意に押圧されて誤作動を起こしたり、先端の鋭い筆記部がペンケース内に当たって損傷を与えるなどの問題を招くことがある。
そこで、未使用時には前記筆記部およびノック部を軸筒内に収容することが可能なシャープペンシルが、特許文献1〜3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平4−32306号公報
【特許文献2】実開平4−90591号公報
【特許文献3】特開2006−248068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたシャープペンシルによると、軸筒内に配置されたカム筒に、縦溝部とその両端に連続して形成された斜溝部とによりガイド溝が形成され、筆記部側の第1のカム突起と、ノック部側の第2のカム突起が、前記ガイド溝に入り込んだ構成にされている。
この構成によると、第1と第2のカム突起が細いガイド溝内を摺動するために、円滑な摺動動作が保証し難く、動作の安定性に欠けるという問題を抱えている。
【0005】
また、特許文献2に開示されたシャープペンシルによると、軸筒の後端部を構成する鞘を回転させることで、後カムが前カムの斜面に沿って回転移動し、これにより筆記部が軸筒内から突出するようになされ、さらに鞘を回転させることで、今度は前カムの斜面に沿って後カムが後退し、これによりノック部が軸筒内から突出するようになされる。
この構成によると、筆記部およびノック部を軸筒から突出させるタイミングおよび回転力がそれぞれ異なるために、繰り出し操作に違和感が生じ、また内鞘を内カムに当接させて筆記芯を繰り出す方式であるために、ノック操作の繰り返しにより、内鞘もしくは内カムが衝撃を受けて損傷し易いという構造上の欠陥がある。
【0006】
さらに、特許文献3に開示されたシャープペンシルによると、後軸の回転操作により円筒状の回転子が回転され、このとき回転子の内部に配置された円筒状の押し棒が前進することによって、シャープペンシルユニットが軸筒内を前進し、筆記可能状態になされる。
この構成によると、前記押し棒によってシャープペンシルユニットを軸筒内で前進させて繰り出すように作用するが、繰り出し部分の機構部の部品点数が多く、これにより全体が大型化すると共に、シャープペンシルユニット(リフィール)の取り付け操作が難かしくなるなどの課題を残すものとなる。
【0007】
この発明は、前記した各特許文献に開示されたシャープペンシルにおける問題点を解消すると共に、軸筒の前端部および後端部における筆記部とノック部の突出動作、また筆記部とノック部の収納動作が円滑になされ、さらにノック操作による筆記芯の繰り出し動作を単純化させて、筆記芯の円滑な繰り出し動作を実現することができるシャープペンシルを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係るシャープペンシルは、軸筒に対して相対的に軸回りの回転操作が可能な操作部と、前記操作部の回転操作に基づいて回転運動を受ける前記軸筒内に収容されたガイド筒と、前記ガイド筒に軸方向に移動可能に配置された第1と第2の摺動コマと、前記ガイド筒の回転運動に伴って前記第1と第2の摺動コマを軸方向に移動させる第1と第2のカム部材とが備えられ、前記ガイド筒の一方向の回転運動に基づいて前記第1と第2の摺動コマが、前記第1と第2のカム部材のカム面に沿って互いに離れた状態になされる第1状態と、前記ガイド筒の他方向の回転運動に基づいて前記第1と第2の摺動コマが、前記第1と第2のカム部材のカム面に沿って互いに接近した状態になされる第2状態が選択されるように構成され、前記第1状態においては、前記第1の摺動コマに接続されたシャープペンシルユニットの筆記部および前記第2の摺動コマに接続されたノック部が、前記軸筒の前端部および後端部よりそれぞれ突出した状態になされ、この状態で前記ノック部をノック操作することで、前記第1と第2のカム部材、前記第1と第2の摺動コマが前記シャープペンシルユニットと共に前進動作するように構成したことを特徴とする。
【0009】
この場合、好ましい形態においては、前記第1と第2のカム部材が前記軸筒内に配置され、前記カム部材の外周面と軸筒の内周面のいずれか一方には軸方向に沿って突出するリブが形成されると共に、他方には軸方向に沿って溝部が形成され、前記溝部内に前記リブが収容されることで、前記第1と第2のカム部材が前記軸筒内において軸方向に摺動可能に配置される。
【0010】
また好ましくは、前記シャープペンシルユニットの前半部を覆うと共に、当該シャープペンシルユニットの筆記部が突出できる先口を開口した先口部材が軸筒内に配置され、前記先口部材内には前記ノック部のノック操作に基づくシャープペンシルユニットの前進動作を拒む当接部が形成され、前記シャープペンシルユニットの一部が前記当接部に当接することで、筆記芯の繰り出しがなされるように構成される。
【0011】
加えて好ましい形態においては、前記第1と第2のカム部材は、円筒状に形成されて前記ガイド筒を軸芯にして軸方向に摺動可能に配置され、かつ前記カム面は第1と第2のカム部材の軸方向の両端面においてそれぞれ両外側に向いて形成されると共に、それぞれ周方向に平坦なカム底面と、当該カム底面に続いて周方向に沿って傾斜面にされたカム斜面と、当該カム斜面に続いて周方向に平坦なカム頂面とが備えられ、前記第1と第2の摺動コマが前記カム頂面にそれぞれ当接することで前記第1状態になされ、前記第1と第2の摺動コマが前記カム底面にそれぞれ当接することで前記第2状態になされる。尚、第1と第2のカム部材は、射出形成等で一体にして形成してもよい。
【0012】
この場合、前記第1と第2のカム部材における周方向に平坦なカム頂面には、前記第1と第2の摺動コマの尖形部が落ち込む凹状部がそれぞれ形成されていることが望ましい。
【0013】
さらに前記ガイド筒内には、前記第1と第2の摺動コマを前記第1と第2のカム部材のカム面に向けて付勢する第1と第2のばね部材が収容されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
前記した構成のシャープペンシルによると、シャープペンシルユニット(リフィール)が接続された第1の摺動コマと、ノック部が接続された第2の摺動コマが、第1と第2のカム部材のカム面に沿って互いに離れた状態になされることで、筆記部およびノック部が前記軸筒の前後よりそれぞれ突出される。この状態において前記ノック部をノック操作することで、前記第1と第2のカム部材、前記第1と第2の摺動コマが前記シャープペンシルユニットと共に前進動作する。
【0015】
したがって、第1と第2のカム部材、第1と第2の摺動コマの対称的な組み合わせにより、筆記部およびノック部の突出動作およびその戻し動作を実現させることができ、動作を円滑にすることができる。
また、第1と第2のカム部材、第1と第2の摺動コマの主要な構成部分が前記シャープペンシルユニットと共にノック部のノック操作に応じて前後動し、この動作により筆記部から筆記芯が繰り出される。したがって、筆記芯の繰り出し動作を単純化することができ、筆記芯の円滑な繰り出し動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係るシャープペンシルについて、筆記部およびノック部が軸筒内に収容された第2状態における全体構成を示した中央断面図である。
【図2】同じく筆記部およびノック部が軸筒の前後に突出した第1状態における全体構成を示した中央断面図である。
【図3】先軸の単体構成を示した中央断面図である。
【図4】先軸内に収容される先筒の構成を示した正面図および中央断面図である。
【図5】先筒内に収容される口先部材の構成を示した中央断面図である。
【図6】後軸の単体構成を示した中央断面図である。
【図7】摺動コマ駆動ユニットの第2状態を示した斜視図および正面図である。
【図8】摺動コマ駆動ユニットの第1状態を示した斜視図および正面図である。
【図9】ガイド筒の斜視図および中央断面図である。
【図10】第1摺動コマの斜視図および断面図である。
【図11】第2摺動コマの斜視図および断面図である。
【図12】第1カム部材の斜視図および正面図である。
【図13】第2カム部材の斜視図および正面図である。
【図14】シャープペンシルユニットの外観図および中央断面図である。
【図15】ボールペンリフィールの外観図および中央断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係るシャープペンシルについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
図1および図2に示したとおり、この実施の形態におけるシャープペンシルの外観は単純な円柱状に構成されており、外郭を構成する軸筒は先軸1および後軸2より構成され、後軸2の後端部には、相対的に軸回りの回転操作が可能な円筒状の操作部3が取り付けられている。
なお、図1は筆記部およびノック部が軸筒内に収容された第2状態を示し、図2は筆記部およびノック部が軸筒の前後に突出した第1状態を示している。そして、図1に示した状態に対して図2は軸回りに90度回転させた状態で示している。
【0018】
以下においては図1および図2に示す全体構成を主体にして説明すると共に、その他の各図を用いて、各構成部材の詳細な構成について個々に説明する。
図1および図2に示すように、前記先軸1の内周面には円筒状に形成された先筒5が嵌合されて取り付けられている。図3に前記先軸1の単体構成を中央断面図で示しており、図4に先軸1内に収容された先筒5の外観構成および中央断面図が示されている。
なお、図4において(A)は先筒5の正面図であり、(B)は(A)に示された状態の先筒5の縦断面図である。また(C)は(A)に示された状態に対して軸回りに90度回転した状態で示す先筒5の上面図であり、(D)は(C)に示された状態の先筒5の縦断面図である。
【0019】
図3に示すように、前記先軸1の前端部には後述するシャープペンシルユニット(リフィール)の筆記部を突出させるための丸孔状の開口1aが形成されており、また先軸1の内周面には軸方向の前端部からほぼ中央部に至るように直線状のリブ1bが形成されている。なお、この実施の形態おいては、前記リブ1bは先軸1の内周面における180度対向する位置にも形成され、合わせて2本のリブ1bが形成されている。
また、前記先軸1の内周面における後端部近傍には内周面に沿って突出する環状のリブ1cが形成されている。
【0020】
一方、図4(A)に示すように前記先筒5には、その外周面に軸方向の前端部からほぼ中央部に至るようにして直線状の溝5aが形成されている。なお、この溝5aは先筒5の背中合わせの外周面にも同様に形成されている。また先筒5の外周面の中央部よりも若干後方寄りには、外周面に沿って突出する環状のリブ5bが形成されている。
さらに、先筒5の後端部外周面には、雄ねじ5cが施されている。この雄ねじ5cは、前記した後軸2の内周面に形成された後述する雌ねじに螺合して両者が分離可能に連結される機能を果たす。
【0021】
前記した構成において、前記先軸1の後端部から前記先筒5を挿入し、前記リブ1bに溝5aを合わせて前記先筒5を先軸1内に押し込むことで、先軸1内に先筒5を嵌合させることができる。この時、先筒5の外周面に形成された環状のリブ5bが、先軸1の内周面に形成された環状のリブ1cの奥側に入り込み、これにより両者は嵌合状態で結合される。
なお、図4(B)および(D)に示されているように、前記先筒5の前端側の内周面には、軸方向に沿って6本のリブ5dが周方向に等間隔に配置されている。このリブ5dは、後述する口先部材の外周面に対して線状に接することで、口先部材が軸方向に円滑に摺動できるように作用する。
【0022】
また、図4(B)および(D)に示されているように、前記リブ5d上のさらに軸芯側には突出部5eが形成されており、この突出部5eは後述する口先部材を軸方向の後部側に付勢するばね部材の一端部を係止するように作用する。
さらに図4(D)に示されているように、先筒5の内周面のほぼ中央部には、段部5fが形成されており、これは後述する口先部材の軸方向の移動を規制する当接部として作用する。
【0023】
図1および図2に戻り、前記先筒5内にはさらに口先部材6が収容されている。この口先部材6は前記した先筒5内において、ある程度の範囲で軸方向に移動できるように配置されており、この口先部材6内にはシャープペンシルユニット7の前半部が収容されている。そして、前記口先部材6は、図1および図2に示すばね部材8によって軸方向の後方に向かって付勢されている。
【0024】
前記口先部材6は、図5に断面図で示したとおり円筒状に形成され、その前端部には前記シャープペンシルユニット7の筆記部7aが突出できる先口6aが開口されている。また先口6aの直後には環状の当接部6bが形成され、前記シャープペンシルユニット7がノック操作を受けて前進動作をした時に、ユニット7の先端部が前記当接部6bに当接して筆記芯の繰り出し動作がなされるように作用する。
【0025】
また、口先部材6における長さ方向の中央部には、外径を異にする環状の段部6cが形成されており、この段部6cは前記ばね部材8の他端部を受けるものである。すなわち、前記ばね部材8は、先筒5の内面に形成された突出部5eと、口先部材6の前記段部6cとの間に介在され、これにより口先部材6を軸方向の後方に向かって付勢するように作用する。
なお、図1および図2に示すように、前記先筒5内には円筒状に形成されたストッパ9が嵌め込まれており、先筒5内に収容され前記ばね部材8によって後方に向かって付勢される前記口先部材6は、前記ストッパ9によって後退位置が規制されている。
【0026】
さらに、前記口先部材6の後端部には外側に向かって鍔状部材6dが形成されている。この鍔状部材6dは前記シャープペンシルユニット7がノック操作を受けて前進動作をした時に、口先部材6も前進動作をするものの、前記した先筒5の内周面に形成された段部5fに当接して口先部材6の軸方向の移動を制限するように作用する。
【0027】
図6は前記した後軸2を断面図で示したものであり、この後軸2の前端側の内周面には雌ねじ2aが施されている。この雌ねじ2aは、前記先軸1に嵌合された先筒5の雄ねじ5cに螺合するものであり、両者の螺合により先軸1と後軸2とが分離可能に連結されている。また図6に示すように、後軸2の内周面における中央部から後部寄りの範囲には、軸方向に沿って突出する直線状のリブ2bが形成されている。このリブ2bは、後軸2内に収容される後述する第1と第2のカム部材が軸方向にのみ移動できるガイドとして作用する。
【0028】
さらに後軸2の後端側の内周面には、環状のリブ2cが形成されている。この環状のリブ2cは次に説明する摺動コマ駆動ユニット11を構成する円筒状に形成された操作部3が回転可能に装着され、操作部3を含む摺動コマ駆動ユニット11が脱落しないように係止する機能を果たす。
【0029】
図7および図8は、摺動コマ駆動ユニット11を組み立て状態で示したものであり、図7は第1と第2の摺動コマが第1と第2のカム部材のカム面に沿って互いに接近した第2状態、すなわち図1に示した状態を示している。また、図8は第1と第2の摺動コマが第1と第2のカム部材のカム面に沿って互いに離れた第1状態、すなわち図2に示した状態を示している。
なお、図7および図8における(A)は、摺動コマ駆動ユニット11を斜視図で示したものであり、図7および図8における(B)は、摺動コマが前面側に位置した状態の正面図で示している。
【0030】
図7および図8に示すように、前記摺動コマ駆動ユニット11には、ガイド筒12が備えられている。このガイド筒12の単体構成は図9に示されている。すなわち図9(A)はガイド筒12を斜視図で示したものであり、図9(B)はガイド筒12に施された割溝部分における断面図で示している。
【0031】
このガイド筒12は、前端部に鍔状の大径部12aが形成されており、この大径部12aには開口12bが形成され、この開口12bに前記したシャープペンシルユニット7の後端部が挿入できるように構成されている。また、前記大径部12aを除くガイド筒12の後端側には、軸方向に直線状の割溝12cが施されている。
【0032】
そして、図7および図8に示すように、ガイド筒12の後端部側から、第1ばね部材14が挿入され、続いて割溝12cに沿って第1摺動コマ15が挿入される。また、ガイド筒12の外周面に沿って円筒状の第1カム部材16が装着され、続いてガイド筒12の外周面に沿って円筒状の第2カム部材17が装着される。さらに前記割溝12cに沿って第2摺動コマ18が挿入され、続いて第2ばね部材19が挿入される。
最後に円筒状に形成された前記した操作部3における前端側の小径部3aが、前記ガイド筒12の後端部に被さるようにして嵌合され、これにより前記した摺動コマ駆動ユニット11が組み立てられている。
【0033】
図10は、前記した摺動コマ駆動ユニット11を構成する第1摺動コマ15を斜視図および断面図で示したものである。この第1摺動コマ15には、前記したガイド筒12内に摺動する円筒部15aと、この円筒部15aの前端部の周面に形成され、前記ガイド筒12の割溝12cに沿って移動するガイド突起15bとが備えられ、ガイド突起15bの後端側は尖形部15cになされ、この尖形部15cが前記第1カム部材16の後述するカム面に摺動するように構成されている。
【0034】
また図10(B)に示すように、第1摺動コマ15の円筒部15aにおける後端側内周面には、複数条のリブ15dが軸方向に沿って形成されており、この複数条のリブ15dはシャープペンシルユニット7に取り付けられた後述する尾栓、もしくはボールペンリフィール等の後端部が圧入されて接続される保持部として機能する。
【0035】
図11は、前記した摺動コマ駆動ユニット11を構成する第2摺動コマ18を斜視図および断面図で示したものである。この第2摺動コマ18には、前記したガイド筒12内に摺動する円筒部18aと、この円筒部18aの側面に形成され、前記ガイド筒12の割溝12cに沿って移動するガイド突起18bとが備えられ、ガイド突起18bの前端側は尖形部18cになされ、この尖形部18cが前記第2カム部材17の後述するカム面に摺動するように構成されている。
【0036】
また、第2摺動コマ18の円筒部18aに続いて小径部18dが形成されており、この小径部18dを取り巻くようにして前記した第2ばね部材19の一端が装着される。
また、第2摺動コマ18には前記小径部18dに続いて円錐形の頭部を備えた突出体18eが形成されており、この突出体18eには、図1および図2に示すノック部21が着脱可能に装着される。
【0037】
図12は、摺動コマ駆動ユニット11を構成する第1カム部材16の構成を示したものであり、(A)は溝部を形成した周面を前側にした斜視図であり、(B)は同じく溝部を前側にした状態の正面図、また(C)は(B)に示す状態に対して軸回りに90度回転させた状態で示す正面図である。
この第1カム部材16は円筒状に形成され、その内周面16aが前記したガイド筒12を軸芯にして軸方向に摺動可能に、かつガイド筒12に対して相対的に回転可能となるように装着される。
【0038】
また、前記した溝部16bが第1カム部材16の円筒面に直線状に形成されており、この溝部16bには、前記摺動コマ駆動ユニット11が後軸2内に収容された状態で、後軸2内に軸方向に沿って突出した直線状のリブ2bを収容するようにして配置される。これにより、第1カム部材16は前記後軸2内を軸方向に沿って摺動されることになる。
【0039】
さらに前記第1カム部材16の溝部16bが形成された円筒面の背面側には、図12(B)および(C)に示すようにカム面が形成されている。
このカム面は、周方向に平坦なカム底面16cと、当該カム底面に続いて周方向に沿って傾斜面にされたカム斜面16dと、当該カム斜面に続いて周方向に平坦なカム頂面16eとが備えられ、前記カム頂面16eには凹状部16fが形成されている。
【0040】
図13は、摺動コマ駆動ユニット11を構成する第2カム部材17の構成を示したものであり、(A)はカム面の形成部分を前側にした斜視図であり、(B)は溝部を前側にした状態の正面図、また(C)は(B)に示す状態に対して軸回りに90度回転させた状態で示す正面図である。
この第2カム部材17は円筒状に形成され、その内周面17aが前記したガイド筒12を軸芯にして軸方向に摺動可能に、かつガイド筒12に対して相対的に回転可能となるように装着される。
【0041】
また、溝部17bが第2カム部材17の円筒面に直線状に形成されており、この溝部17bには、前記摺動コマ駆動ユニット11が後軸2内に収容された状態で、後軸2内に軸方向に沿って突出した直線状のリブ2bを収容するようにして配置される。これにより、第2カム部材17は前記した第1カム部材16と共に、後軸2内を軸方向に沿って摺動されることになる。
【0042】
さらに前記第2カム部材17の溝部17bが形成された円筒面の背面側には、カム面が形成されている。このカム面は周方向に平坦なカム底面17cと、当該カム底面に続いて周方向に沿って傾斜面にされたカム斜面17dと、当該カム斜面に続いて周方向に平坦なカム頂面17eとが備えられ、前記カム頂面17eには凹状部17fが形成されている。
【0043】
斯くして、図7および図8に示す構成の摺動コマ駆動ユニット11は、図1および図2に示すように後軸2の後端部側から挿入されて後軸2内に装着される。
この場合、前記したように第1カム部材16に形成された溝部16b、および第2カム部材17に形成された溝部17b内に、後軸2の内周面に形成された直線状のリブ2b(図6参照)が収容されるようにして装着される。
【0044】
そして、図7および図8に示されている操作部3の小径部3aに形成された環状のリブ3bが、後軸2の後端部内面に形成された環状のリブ2cの奥側に入り込むように、摺動コマ駆動ユニット11を押し込むことで、前記操作部3は回動可能にして、かつ摺動コマ駆動ユニット11が脱落しないように後軸2内に装着される。
【0045】
図14は筆記体として使われるシャープペンシルユニット7の一例を示したものであり、(A)は外観図で(B)は断面図で示している。
このシャープペンシルユニット7は、図14(A)に示すように、先端に筆記部7aを備えた先部材7bと、この先部材7bに接続された芯ケース7cと、前記先部材7bと芯ケース7cとの間に配置されたチャックばね7dを備えている。
【0046】
また、前記芯ケース7cの後端部には尾栓7eが取り付けられ、この尾栓7eが前記した摺動コマ駆動ユニット11における第1摺動コマ15の円筒部15a内(図10参照)に圧入されて接続される。
前記シャープペンシルユニット7の内部には、図14(B)に示すように、筆記芯7gを保持する金属製のチャック7j、このチャック7jを取り囲む環状の締め具7k、筆記芯を一時的に保持するゴム製の保持チャック7nなどが備えられている。
【0047】
次に、以上説明した構成のシャープペンシルについての動作を説明する。
すでに説明したとおり、この発明に係るシャープペンシルは、図1および図2に示すように、筆記部7aおよびノック部21が軸筒内に収容された第2状態、筆記部7aおよびノック部21が軸筒の前後に突出した第1状態が操作部3の回転操作により選択できるように構成され、前記第1状態においてノック部21をノック操作することで、筆記部7aより筆記芯が繰り出されるように作用する。
【0048】
前記筆記部7aおよびノック部21が軸筒内に収容された図1に示す第2状態においては、すでに説明した摺動コマ駆動ユニット11は、図7に示す状態になされている。すなわち、第1摺動コマ15における尖形部15c(図10参照)は、第1カム部材16におけるカム底面16cとカム斜面16dとの交差部分(図12参照)に位置するようになされている。
また、第2摺動コマ18における尖形部18c(図11参照)は、第2カム部材17におけるカム底面17cとカム斜面17dとの交差部分(図13参照)に位置するようになされている。
【0049】
すなわち、第1摺動コマ15および第2摺動コマ18は、互いに接近した状態になされており、これにより図1に示したとおり、第1摺動コマ15に取り付けられたシャープペンシルユニット7における筆記部7aは先軸1内に収容され、第2摺動コマ18に取り付けられたノック部21も後軸2内に収容されている。
【0050】
この状態において、軸筒の後端部に配置された前記操作部3を右回転させると、ガイド筒12も同方向に回転し、ガイド筒12の割溝12cに収容された第1および第2摺動コマの尖形部15cおよび18cも同方向への回転駆動を受ける。
一方、前記尖形部15cおよび18cがそれぞれ摺動されるカム面を有する前記第1カム部材16および第2カム部材17は、前記したとおり軸方向にのみ摺動し、軸方向には回転しない。
【0051】
したがって、前記第1および第2摺動コマの尖形部15cおよび18cは、前記第1および第2ばね部材14,19を圧縮しつつ、第1および第2カム部材16,17におけるカム斜面16d,17dに沿ってせり上る。
そして、前記各尖形部15c,18cは、第1および第2カム部材16,17における周方向に平坦なカム頂面16e,17eに至り、続いて各尖形部15c,18cは、それぞれのカム頂面に形成された凹状部16f,16fに落ち込む。
【0052】
この状態においては、第1摺動コマ15および第2摺動コマ18は、互いに離れた状態になされ、これにより図2に示したとおり、第1摺動コマ15に取り付けられたシャープペンシルユニット7における筆記部7aは先軸1から突出され、第2摺動コマ18に取り付けられたノック部21も後軸2から突出した第1状態になされる。
そして、この第1状態を選択した後に、前記操作部3を今度は左回転させると、前記した動作と逆の経過をたどって第2状態になされ、図1に示した状態に戻される。
【0053】
なお、前記した第1および第2カム部材16,17における周方向に平坦なカム頂面16e,17eには、それぞれ凹状部16f,16fが形成され、これに第1および第2摺動コマの各尖形部15c,18cが落ち込むように構成されている。
これにより、軸筒の前後に筆記部7aおよびノック部21を突出させる第1状態を選択した時には、操作部3の回動操作に程よいクリック感がもたらされ、前記第1状態に至ったことを感触として受け取ることができる。
【0054】
ここで、前記した第1状態を選択した状態において、軸筒の後端部に突出したノック部21をノック操作すると、このノック操作による前進動作が図8に示す状態の第2摺動コマ18、第2カム部材17、第1カム部材16、第1摺動コマ15に順次伝達され、第1摺動コマ15に取り付けられた前記シャープペンシルユニット7を後端側から押し出すように作用する。
【0055】
前記した作用によりシャープペンシルユニット7は、前記口先部材6と共に前進して先軸1より突出するものの、その途中で前記口先部材6の鍔状部材6dが、前記した先筒5の内周面に形成された段部5fに当接し、口先部材6の前進移動は停止される。
そこで、シャープペンシルユニット7の先部材7bに形成された段部7f(図14参照)が、口先部材6内の環状の当接部6bに当接して前進動作が拒まれる。これにより、図14に示すチャック7jがチャックばね7dを圧縮しながら先部材7b内を前進し、筆記芯7gの繰り出しがなされる。
すなわち、前記したノック部21のノック操作を繰り返すことで、筆記部7aより筆記芯7gが順次繰り出されることになる。
【0056】
以上説明した実施の形態によると、第1と第2のカム部材、第1と第2の摺動コマの対称的な組み合わせにより、筆記部およびノック部の突出動作およびその戻し動作を実現させることができ、また前記した主要な構成部分が前記シャープペンシルユニットと共にノック部のノック操作に応じて前後動するように構成されているので、筆記部からの筆記芯の円滑な繰り出し動作が実現できるなど、前記した発明の効果の欄に記載した作用効果を得ることができる。
【0057】
なお以上説明した実施の形態においては、第1と第2のカム部材16,17が、後軸2内において軸方向に沿ってのみ移動できるようにするために、後軸2内に直線状のリブ2bを施し、第1と第2のカム部材16,17にそれぞれ溝部16b,17bを施した構成にされているが、前記後軸2内に直線状の溝部を形成し、第1と第2のカム部材16,17にそれぞれ直線状のリブを形成するようにしても同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
また以上説明した実施の形態においては、筆記体としてシャープペンシルユニット7を利用する場合について説明したが、筆記体としてボールペンリフィールを利用することもできる。
図15はボールペンリフィール23の一例を示したものであり、(A)は外観図で(B)は断面図で示している。このボールペンリフィール23は周知のとおり、筆記部としてボールペンチップ23aが備えられ、その後端側にはインク23cを収容したインク収容管23bが取り付けられている。
【0059】
前記したボールペンリフィール23を利用する場合には、インク収容管23bの後端部を前記した摺動コマ駆動ユニット11における第1摺動コマ15の円筒部15a内(図10参照)に圧入することで取り付けることができる。
この状態で、前記した操作部3を右回転させると、ボールペンリフィール23の筆記部(ボールペンチップ23a)を軸筒の前端部から突出させることができ、ボールペンリフィール23による筆記が可能となる。
【0060】
ところで、前記したシャープペンシルユニット7またはボールペンリフィール23は、いずれもリフィール収納容器に収納された状態で提供される。このリフィール収納容器は、例えば特開2010−120684号公報に開示されているように、容器本体と、この容器本体の開口部を着脱可能に覆うキャップより構成されている。
そこで、前記リフィール収納容器のキャップを前記したノック部21として取り付け可能にとなるように寸法を合わせて提供する商形態が考えられる。
【0061】
すなわち、前記したシャープペンシルユニットやボールペンリフィールに応じて、またボールペンリフィールの中でもインク色に応じて、前記リフィール収納容器のキャップの色などを特定しておき、リフィールの交換と同時に前記キャップをノック部21として交換して利用することで、現在使用されている筆記体を容易に識別することができる筆記具を提供することができる。
【0062】
さらに、ノック部21の材質を消しゴムと略同等の材料で形成し筆記体をシャープペンシルにした場合は、ノック部21で筆記描線を消去することができたり、ゴム、エラストマー等のゴム弾性材料で形成し筆記体を摩擦熱等で変色する熱変色性インクや消しゴムの摩擦で剥離する消しゴム消去性インク等を収納したボールペンにした場合でも、ノック部21で筆記描線を擦る事で比較的容易に変色又は消去することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 先軸(軸筒)
2 後軸(軸筒)
3 操作部
5 先筒
6 口先部材
7 シャープペンシルユニット
8 ばね部材
11 摺動コマ駆動ユニット
12 ガイド筒
12c 割溝
14 第1ばね部材
15 第1摺動コマ
15c 尖形部
16 第1カム部材
16c カム底面
16d カム斜面
16e カム頂面
16f 凹状部
17 第2カム部材
17c カム底面
17d カム斜面
17e カム頂面
17f 凹状部
18 第2摺動コマ
18c 尖形部
19 第2ばね部材
21 ノック部
23 ボールペンリフィール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒に対して相対的に軸回りの回転操作が可能な操作部と、前記操作部の回転操作に基づいて回転運動を受ける前記軸筒内に収容されたガイド筒と、前記ガイド筒に軸方向に移動可能に配置された第1と第2の摺動コマと、前記ガイド筒の回転運動に伴って前記第1と第2の摺動コマを軸方向に移動させる第1と第2のカム部材とが備えられ、
前記ガイド筒の一方向の回転運動に基づいて前記第1と第2の摺動コマが、前記第1と第2のカム部材のカム面に沿って互いに離れた状態になされる第1状態と、前記ガイド筒の他方向の回転運動に基づいて前記第1と第2の摺動コマが、前記第1と第2のカム部材のカム面に沿って互いに接近した状態になされる第2状態が選択されるように構成され、 前記第1状態においては、前記第1の摺動コマに接続されたシャープペンシルユニットの筆記部および前記第2の摺動コマに接続されたノック部が、前記軸筒の前端部および後端部よりそれぞれ突出した状態になされ、この状態で前記ノック部をノック操作することで、前記第1と第2のカム部材、前記第1と第2の摺動コマが前記シャープペンシルユニットと共に前進動作するように構成したことを特徴とするシャープペンシル。
【請求項2】
前記第1と第2のカム部材が前記軸筒内に配置され、前記カム部材の外周面と軸筒の内周面のいずれか一方には軸方向に沿って突出するリブが形成されると共に、他方には軸方向に沿って溝部が形成され、前記溝部内に前記リブが収容されることで、前記第1と第2のカム部材が前記軸筒内において軸方向に摺動可能に配置されていることを特徴とする請求項1に記載されたシャープペンシル。
【請求項3】
前記シャープペンシルユニットの前半部を覆うと共に、当該シャープペンシルユニットの筆記部が突出できる先口を開口した先口部材が軸筒内に配置され、前記先口部材内には前記ノック部のノック操作に基づくシャープペンシルユニットの前進動作を拒む当接部が形成され、前記シャープペンシルユニットの一部が前記当接部に当接することで、筆記芯の繰り出しがなされるように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたシャープペンシル。
【請求項4】
前記第1と第2のカム部材は、円筒状に形成されて前記ガイド筒を軸芯にして軸方向に摺動可能に配置され、かつ前記カム面は第1と第2のカム部材の軸方向の両端面においてそれぞれ両外側に向いて形成されると共に、それぞれ周方向に平坦なカム底面と、当該カム底面に続いて周方向に沿って傾斜面にされたカム斜面と、当該カム斜面に続いて周方向に平坦なカム頂面とが備えられ、前記第1と第2の摺動コマが前記カム頂面にそれぞれ当接することで前記第1状態になされ、前記第1と第2の摺動コマが前記カム底面にそれぞれ当接することで前記第2状態になされることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載されたシャープペンシル。
【請求項5】
前記第1と第2のカム部材における周方向に平坦なカム頂面には、前記第1と第2の摺動コマの尖形部が落ち込む凹状部がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項4に記載されたシャープペンシル。
【請求項6】
前記ガイド筒内には、前記第1と第2の摺動コマを前記第1と第2のカム部材のカム面に向けて付勢する第1と第2のばね部材が収容されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載されたシャープペンシル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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