説明

シャーボルト

【課題】切断面部の噛込みの不具合を防止できるシャーボルトを提供する。
【解決手段】シャーボルト11は、切断時に耕耘軸の軸状部内に残る残存軸部分40を有する軸部41と、この軸部41の基端に設けた頭部42とを備える。軸部41の外周面における残存軸部分40の軸方向両端部の隣接位置には、略レ字形状の切断用周溝43をそれぞれ対称的に形成する。各切断用周溝43の溝底面44は、残存軸部分40の軸方向端部側ほど軸部の軸芯側に位置する傾斜状となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断面部の噛込み等の不具合を防止できるシャーボルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば除雪機に用いられ駆動フランジとオーガフランジとを連結するシャーボルト(特許文献1参照)、或いは、例えば図7ないし図9に示すような駆動軸1の軸状部1aと従動軸2の筒状部2aとを連結するシャーボルト3が知られている。
【0003】
ここで、シャーボルト3は、切断時に駆動軸1の軸状部1a内に残る残存軸部分4を有する軸部5と、この軸部5の基端に設けられた頭部6とを備えている。そして、軸部5の外周面における残存軸部分4の軸方向両端部の隣接位置には略U字形状の切断用周溝7,7がそれぞれ形成され、軸部5の先端側外周面にはねじ溝8が形成され、このねじ溝8にナット9が螺合される。
【特許文献1】特開平11−61762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のシャーボルト3では、切断用周溝7が略U字形状であるため、切断時に残存軸部分4の軸方向両端側の切断面部10が従動軸2の筒状部2aの内周面に噛み込んでしまう不具合が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、切断面部の噛込み等の不具合を防止できるシャーボルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のシャーボルトは、軸部の外周面にねじ溝および切断用周溝が形成されたシャーボルトであって、前記切断用周溝は、前記軸部の外周面に略レ字形状に形成されているものである。
【0007】
そして、切断用周溝が軸部の外周面に略レ字形状に形成されているため、切断面部の噛込み等の不具合を防止することが可能である。
【0008】
請求項2記載のシャーボルトは、駆動軸の軸状部と従動軸の筒状部とを連結するためのシャーボルトであって、切断時に前記軸状部内に残る残存軸部分を有する軸部と、この軸部の基端に設けられた頭部とを備え、前記軸部の外周面における前記残存軸部分の軸方向両端部の隣接位置には、略レ字形状の切断用周溝がそれぞれ対称的に形成され、前記各切断用周溝の溝底面は、前記残存軸部分の軸方向端部側ほど前記軸部の軸芯側に位置する傾斜状となっているものである。
【0009】
そして、軸部の外周面における残存軸部分の軸方向両端部の隣接位置には略レ字形状の切断用周溝がそれぞれ対称的に形成され、各切断用周溝の溝底面が残存軸部分の軸方向端部側ほど軸部の軸芯側に位置する傾斜状となっているため、切断面部の噛込み等の不具合を防止することが可能である。
【0010】
請求項3記載のシャーボルトは、請求項2記載のシャーボルトにおいて、駆動軸は耕耘軸であり、従動軸は耕耘爪ホルダ部を有する爪軸であるものである。
【0011】
そして、耕耘爪ホルダ部を有する爪軸の内周面に対する切断面部の噛込み等の不具合を防止することが可能である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、切断用周溝が軸部の外周面に略レ字形状に形成されているため、切断面部の噛込み等の不具合を防止できる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、軸部の外周面における残存軸部分の軸方向両端部の隣接位置には略レ字形状の切断用周溝がそれぞれ対称的に形成され、各切断用周溝の溝底面が残存軸部分の軸方向端部側ほど軸部の軸芯側に位置する傾斜状となっているため、切断面部の噛込み等の不具合を防止できる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、耕耘爪ホルダ部を有する爪軸の内周面に対する切断面部の噛込み等の不具合を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のシャーボルトの一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1において、11はシャーボルトで、このシャーボルト11は、図2ないし図5に示すように、ロータリーカルチ等の農作業機12に対して六角ナット等のナット13とともに用いられ、駆動軸である耕耘軸15の軸状部16と従動軸である爪軸17の筒状部18とを連結するためのものである。なお、図6に示すように、爪軸17側に大きな負荷が作用した場合、耕耘軸15側が損傷しないよう、シャーボルト11が切断されて爪軸17が耕耘軸15に対して回転するようになっている。
【0017】
ここで、農作業機12は、走行車であるトラクタ(図示せず)の後部の3点リンク部に連結される機体21を備えている。
【0018】
機体21は、左右方向に長手状の主フレーム22を有し、この主フレーム22には耕耘作業をするロータリ式の耕耘手段23が左右位置調節可能に設けられ、この耕耘手段23の上方部がカバー体24にて覆われている。また、機体21の前部には左右一対のゲージ輪25が設けられている。
【0019】
耕耘手段23は、入力軸27からの動力を伝動シャフトおよびチェーン等からなる伝動手段(図示せず)を介して受けて駆動回転する耕耘軸15と、この耕耘軸15にシャーボルト11およびナット13にて連結された爪軸17と、この爪軸17の耕耘爪ホルダ部19に取り付けられた耕耘爪20とを有している。
【0020】
耕耘軸15は、軸方向が左右方向に一致した丸軸状の軸状部16を有し、この軸状部16には径方向のボルト挿通用孔31が形成されている。また、爪軸17は、耕耘軸15の軸状部16の外周側に嵌合された円筒状の筒状部18を有し、この筒状部18には径方向のボルト挿通用孔32が形成されている。そして、互いに一致した軸状部16のボルト挿通用孔31および筒状部18のボルト挿通用孔32に対してシャーボルト11が挿通され、この挿通されたシャーボルト11に対してナット13が螺合され、これらシャーボルト11およびナット13にて爪軸17の筒状部18が耕耘軸15の軸状部16に連結されている。なお、耕耘軸15の軸状部16の軸方向端面にはボルト33、ワッシャ34および座金35にて構成された抜止め手段36が設けられ、この抜止め手段36にて爪軸17の筒状部18が耕耘軸15の軸状部16から抜け出ないようになっている。
【0021】
一方、シャーボルト11は、図1および図5等に示されるように、切断時に耕耘手段23の耕耘軸15の軸状部16内に残る円柱状の残存軸部分40を軸方向中間に有する軸部41と、この軸部41の基端に設けられた六角柱状の頭部42とを備えている。
【0022】
また、軸部41の外周面における残存軸部分40の軸方向両端部の隣接位置には、略レ字形状の切断用周溝43,43がそれぞれ対称的に形成されている。また、各切断用周溝43の溝底面44は、対向する残存軸部分40の軸方向端部側ほど軸部41の軸芯側に位置する傾斜状となっている。すなわち、各切断用周溝43の截頭円錐面状の溝底面44は、残存軸部分40の軸方向端面40aに向って徐々に軸部41の軸芯側に接近するように傾斜している。なお、残存軸部分40の軸方向端面40aの外周側が切断用周溝43の一部を構成している。
【0023】
さらに、軸部41の先端側外周面にはねじ溝46が軸部41の先端側の切断用周溝43に隣接して形成され、このねじ溝46にナット13が螺合される。なお、図1に示す正面視で軸部41の軸芯と切断用周溝43の溝底面44とがなす角度αは、例えば25度〜35度で、好ましくは約32度である。
【0024】
次に、上記一実施の形態のシャーボルト11の作用等を説明する。
【0025】
農作業機12をトラクタに連結し、このトラクタの走行により農作業機12を移動させると、耕耘手段23の耕耘爪20にて耕耘作業が行なわれる。すなわち、入力軸27側からの動力で耕耘軸15が所定方向に駆動回転すると、この耕耘軸15からの動力がシャーボルト11を介して爪軸17に伝わり、この爪軸17が耕耘爪20とともに回転し、この回転する耕耘爪20にて圃場が耕耘される。
【0026】
この耕耘作業時に、耕耘爪20に大きな負荷が作用した場合、図6に示すように、シャーボルト11の軸部41が2本の切断用周溝43の最溝深位置で切断され、耕耘軸15の軸状部16内に残存軸部分40が残る。
【0027】
そして、図6から明らかなように、この耕耘軸15の軸状部16内に位置する残存軸部分40の軸方向両端側の切断面部50、つまり残存軸部分40の軸方向端面40aから若干突出した突出状の切断面部50は、耕耘軸15の軸状部16の内周面より内方に位置し、耕耘軸15の軸状部16の内周面に噛み込むようなことはない。
【0028】
このようにシャーボルト11によれば、軸部41の外周面における残存軸部分40の軸方向両端部の隣接位置には略レ字形状の切断用周溝43が軸部41の軸方向に対してそれぞれ対称的に形成され、各切断用周溝43の溝底面44が残存軸部分40の軸方向端部側ほど軸部41の軸芯側に位置する傾斜状となっているため、耕耘軸15の軸状部16に対する残存軸部分40の軸方向両端側の切断面部50の噛込み等の不具合を適切に防止できる。よって、例えば切断後において残存軸部分40を耕耘軸15の軸状部16内から簡単に取り出すことができる。
【0029】
なお、シャーボルト11は、軸部41の外周面に2本の略レ字形状の切断用周溝43が形成された構成には限定されず、例えば軸部41の外周面に1本の略レ字形状の切断用周溝43が形成された構成等でもよい。
【0030】
また、シャーボルト11は、ロータリーカルチ等の農作業機12以外の各種作業機にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のシャーボルトの一実施の形態を示す正面図である。
【図2】同上シャーボルトで耕耘軸と爪軸とが連結された農作業機の正面図である。
【図3】同上農作業機の側面図である。
【図4】同上農作業機の要部断面図である。
【図5】同上シャーボルトの切断前の要部断面図である。
【図6】同上シャーボルトの切断後の要部断面図である。
【図7】従来のシャーボルトの正面図である。
【図8】従来のシャーボルトの切断前の要部断面図である。
【図9】従来のシャーボルトの切断後の要部断面図である。
【符号の説明】
【0032】
11 シャーボルト
15 駆動軸である耕耘軸
16 軸状部
17 従動軸である爪軸
18 筒状部
19 耕耘爪ホルダ部
40 残存軸部分
41 軸部
42 頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部の外周面にねじ溝および切断用周溝が形成されたシャーボルトであって、
前記切断用周溝は、前記軸部の外周面に略レ字形状に形成されている
ことを特徴とするシャーボルト。
【請求項2】
駆動軸の軸状部と従動軸の筒状部とを連結するためのシャーボルトであって、
切断時に前記軸状部内に残る残存軸部分を有する軸部と、
この軸部の基端に設けられた頭部とを備え、
前記軸部の外周面における前記残存軸部分の軸方向両端部の隣接位置には、略レ字形状の切断用周溝がそれぞれ対称的に形成され、
前記各切断用周溝の溝底面は、前記残存軸部分の軸方向端部側ほど前記軸部の軸芯側に位置する傾斜状となっている
ことを特徴とするシャーボルト。
【請求項3】
駆動軸は耕耘軸であり、従動軸は耕耘爪ホルダ部を有する爪軸である
ことを特徴とする請求項2記載のシャーボルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−194354(P2006−194354A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6578(P2005−6578)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】