シュウ酸塩低減化のための組成物および方法
本発明は、ヒトのシュウ酸塩を減少させるための方法および組成物を包含する。例えば、本発明は粒子組成物に包埋された1以上のシュウ酸塩低減酵素を送達するための方法および組成物を提供する。本発明の組成物は、高シュウ酸尿症、吸収性高シュウ酸尿症、腸管高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、外陰部痛、末期の腎臓病に伴うシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ならびに空回腸バイパス手術および肥満症治療手術(肥満のための手術)を受けた患者および/または抗生物質治療を受けた患者を含むが、これらに限定されない、シュウ酸塩関連症状の治療または予防の方法に適している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2005年12月16日出願の米国特許仮出願第60/750,896号に基づく優先権を主張するものであり、その全体を本明細書に組み入れる。
【0002】
発明の分野
本発明は、1以上のシュウ酸塩分解酵素がその効果を発揮する胃へ活性型の酵素を送達するための、1以上のシュウ酸塩分解酵素を含む組成物に関する。従って、本発明は胃内のシュウ酸塩を低減化する方法である。本発明の組成物は、第1のポリマー材料に包埋された1以上のシュウ酸塩分解酵素を含有する粒子を含み、ここで、包埋酵素は、USP人工胃液中で37℃で少なくとも60分間、同様の条件下でのインキュベーションに際して、同じバッチから得た1以上の非包埋遊離酵素の活性の少なくとも2倍の活性を維持する。
【0003】
本発明の背景
腎/尿路結石疾患(尿石症)は、世界中で主要な健康問題のひとつである。尿石症に関連する結石の多くは、シュウ酸カルシウムのみ、またはシュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムとから構成される。他の疾患もまた、過剰なシュウ酸塩に関連付けられてきた。これらは、外陰部痛、末期の腎臓病に伴うシュウ酸症、心臓伝導障害、クローン病および他の腸の病状を含む。
【0004】
シュウ酸および/またはその塩であるシュウ酸塩は、多種多様な食物中に見られ、ゆえに、ヒトおよび動物の食事における多くの構成物質の成分である。シュウ酸塩の吸収の増加は、シュウ酸を多く含む食物を摂取した後に起こり得る。ホウレンソウおよびルバーブ等の食物は、多量のシュウ酸塩を含むことがよく知られているが、しかし、数多くの他の食物および飲料もまたシュウ酸塩を含む。シュウ酸塩は、そのような多種多様な食物に見られるため、シュウ酸塩が少なく、かつ美味でもある食事を作るのは困難である。さらに、低シュウ酸塩の食事を遵守することは困難であることが多い。
【0005】
腎結石の形成に対する危険性は、未だ完全に理解されていない多くの因子による。腎臓または尿路結石疾患は、西欧諸国の12%もの人々に発症し、これらの結石の約70%がシュウ酸カルシウムまたはシュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムから構成される。ある個体(例えば、クローン病、炎症性腸疾患または脂肪便症等の腸疾患を患う患者、および空回腸バイパス手術を受けた患者も)は、他人よりも多くシュウ酸塩を食事から吸収する。これらの個体については、シュウ酸塩尿結石症の罹患率が顕著に増加する。疾患の罹患率増加は、腎臓および尿中シュウ酸塩レベルの増加によるもので、これは、ヒトにおいて最も一般的な高シュウ酸尿症候群であり、腸管高シュウ酸尿症として知られる。シュウ酸塩はまた、末期の腎臓病を患う患者においても問題であり、尿中のシュウ酸塩の増加はまた膣前庭炎(外陰部痛)にも関与するという最近の証拠がある。
【0006】
シュウ酸塩分解細菌を含有する腸溶性コーティング組成物は、シュウ酸塩濃度を低下させることが示唆されている。しかし、腸溶性コーティング組成物は、無傷形態(つまりコーティングが無傷であり、従って胃においてはシュウ酸塩が分解され得ない)で胃を通過する。従って、特に食餌性シュウ酸塩を分解するために、胃にすでに存在するシュウ酸塩の分解が可能である組成物を開発する必要性が依然としてある。さらに、そのような組成物は、再発性結石症を引き起こす高シュウ酸尿症等の腸管高シュウ酸尿症および吸収性高シュウ酸尿症の治療に用いるのに適している。このような治療を行う対象は、正常な尿中シュウ酸塩レベルを有する患者である。
【0007】
発明の概要
本発明は、シュウ酸塩関連症状を治療および予防する組成物および方法を包含する。本発明の組成物は、シュウ酸塩を減少させる酵素を含有する。本発明の方法は、シュウ酸塩関連症状を治療または予防するために組成物を投与することを含み、およびそのような組成物を製造および使用する方法を包含する。本発明の組成物は、低pHおよびプロテアーゼの存在下等の胃内条件下でシュウ酸塩を減少させる。本発明の組成物は、ヒトおよび他の動物の胃内シュウ酸塩を減少させる。組成物は、非全身性のシュウ酸塩(例えば、胃腸管内の、特に胃内のシュウ酸塩)を減少させ、外因性のシュウ酸塩(例えば食物由来の)が体循環に入るのを防ぐ。
【0008】
本発明の組成物は、第1のポリマー材料中に包埋された1以上の酵素を含有する粒子を含み、ここで、人工胃液(84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン、pHが1.0〜4.0の範囲)中で37℃で少なくとも60分間、包埋酵素および非包埋(遊離)酵素の双方をインキュベーションした後で、包埋酵素は、同じバッチ由来の1以上の非包埋酵素の活性の少なくとも2倍の活性を維持する。組成物は、第2のポリマー材料でさらにコーティングされ得る粒子を含む。組成物はまた、架橋され得るポリマー材料を含んでもよく、任意に架橋結合が還元され得る。特定の実施形態において、第1のポリマー材料は、キトサン、アルギン酸塩、ペクチン、またはヒアルロン酸である。1以上の酵素および第1のポリマー材料に加え、粒子組成物はまた、例えばpH調整剤、緩衝化剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤、酵素のための補因子、または例えば充填剤、希釈剤、担体等の1以上の医薬上許容され得る賦形剤などの1以上の添加剤も含み得る。
【0009】
本発明の方法は、非全身的な治療のための組成物を提供することを包含し、例えば、胃腸管からのシュウ酸塩の吸収を回避するために、胃内のシュウ酸塩を減少させることのできる組成物を提供することを包含する。本組成物は、胃内の酸性で酵素を損傷させる環境から、組成物中に包埋されたシュウ酸塩低減酵素を保護し、そしてそのような厳しい環境において酵素活性を維持する。治療および予防の方法は、本明細書に教示される組成物を提供することを含み、ここで、1以上のシュウ酸塩分解酵素が第1のポリマー材料中に包埋され、任意に、得られた粒子が第2のポリマー材料でコーティングされており、任意に第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料が架橋結合しており、そして任意に架橋結合が還元される。
【0010】
本発明の組成物は、シュウ酸塩関連症状の治療または予防の方法に適しており、これらのシュウ酸塩関連症状は、高シュウ酸尿症、吸収性高シュウ酸尿症、腸管高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、外陰部痛、末期の腎臓病に伴うシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ならびに空回腸バイパス手術および肥満症治療手術(肥満のための手術)を受けた患者および/または抗生物質治療を受けた患者を含むが、これらに限定されない。治療または予防の方法は、対象の胃内のシュウ酸塩を減少させるために、有効量の本発明の組成物を対象へ経口投与することを包含し、従って対象の全体的なシュウ酸塩負荷を、効率的かつ効果的に減少させる。このような組成物は、経口投与に対して医薬上許容され得る。
【0011】
本発明の組成物および方法において使用される酵素は、シュウ酸塩低減酵素であり、シュウ酸オキシダーゼ、シュウ酸デカルボキシラーゼ(本文脈において、OxDcと略記する)、オキサリルCoAデカルボキシラーゼ、またはホルミルCoAトランスフェラーゼ、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。さらに、シュウ酸塩分解経路の置換成分であるか、またはシュウ酸塩代謝経路、特にシュウ酸塩低減に関与する他の酵素、補因子および補酵素はまた、単独で、または1以上のシュウ酸塩低減酵素との組み合わせで用いるのに適している。本発明において、本明細書の定義に包含される酵素(タンパク質)だけでなく、シュウ酸塩低減化遺伝子およびタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列もまた、本発明によって企図される。本発明はまた、これらの酵素のあらゆる結合パートナーも企図し、そして、酵素に結合するかまたは酵素と相互作用する抗体および抗体断片を含む。
【0012】
本酵素は、生物からの単離によって得てもよく、これらは精製されてもよく、合成的に、半合成的に、または組換え法によって作製してもよく、または細胞溶解物として使用してもよい。本組成物に使用する酵素は、精製した組換えタンパク質であり得るが、酵素は安全な特定の細菌によっても作製することができるため、これらの細菌を全細胞または溶解物として使用することも企図する。
【0013】
シュウ酸塩分解酵素は、通常、標準食に通常存在する実質的にすべてのシュウ酸塩を分解するのに十分な量で本発明の組成物中に存在する。食品の選択によって、平均的な欧米の食事には、100〜300mgのシュウ酸塩/日が含まれ得る。一般的に、酵素を含む約0.2gの粒子(1mLの粒子懸濁液中の20mgのOxDcと等しい)が、人工胃内条件において、30分間以内に180mgのシュウ酸塩を除去し得る。
【0014】
本発明の1つの態様は、第1のポリマー材料に包埋された1以上のシュウ酸塩分解酵素を含有する粒子を含む組成物を包み、ここで、包埋酵素は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシンを含む、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5等、例えばpH約3)のUSP人工胃液中、37℃で少なくとも60分間のインキュベーションに際して、同じバッチ由来の1以上の非包埋遊離酵素の活性の少なくとも2倍の活性を維持する。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、シュウ酸塩関連症状を治療または予防するための組成物および方法を包含する。本発明の組成物は、シュウ酸塩を減少させる酵素を含む。本発明の組成物は、仮に組成物が胃内環境に曝露されても、酵素がそれらの活性を維持するように設計される。本発明の方法は、シュウ酸塩関連症状を治療または予防するための組成物を投与することを含み、およびそのような組成物を製造および使用する方法を包含する。さらに具体的には、本発明は、胃内条件下においてシュウ酸塩を減少させることが可能となるように設計され、その結果、すでに胃にあるシュウ酸塩を減少させることを可能とする組成物に関する。このような組成物は、特に、非全身的なシュウ酸塩(例えば、胃腸管内、特に胃内のシュウ酸塩)を減少させるように設計され、そして外因性のシュウ酸塩(例えば、食物由来の)が体循環に入るのを防ぐ。
【0016】
上記の通り、本発明の背景は、食餌性シュウ酸塩を分解するために、シュウ酸塩分解酵素を胃に投与することを可能とし、胃および腸管からのシュウ酸塩の吸収を防ぐ必要性であり、例えば、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、ならびに特に吸収性高シュウ酸尿症および腸管高シュウ酸尿症等のシュウ酸塩関連疾患および障害を予防する。投与された酵素は、胃の胃内条件下、つまり、低pHおよびペプシンの存在下で起こる、タンパク質分解および/またはpHもしくは酸性依存的分解から保護される。
【0017】
このように、本発明は組成物に関し、ここで、酵素は胃内条件下での分解から酵素を保護するポリマー材料中に包埋される。この組成物は、任意の酵素を含み得ることが想定され得るが、本発明の目的のために、例えば、シュウ酸デカルボキシラーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、またはオキサリルCoAデカルボキシラーゼとホルミルCoAトランスフェラーゼとの組み合わせ、あるいはこれらの任意の組み合わせ等のシュウ酸塩分解酵素が、本発明によって企図される。
【0018】
本発明の組成物は、第1のポリマー材料中に包埋された1以上の酵素を含有する粒子を含み、ここで、包埋酵素は、人工胃液(84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン、pHが1.0〜4.0の範囲)中で37℃で少なくとも60分間、包埋酵素および非包埋(遊離)酵素の双方をインキュベーションした後で、同じバッチ由来の1以上の非包埋酵素の活性の少なくとも2倍の活性を維持する。粒子はさらに第2のポリマー材料によりコーティングされ得る。本明細書で使用する用語「同じバッチ由来の酵素」は、同一条件下で単離または合成された酵素、そして通常は同じ単離手段もしくは合成手段で単離または合成された酵素を意味し、ここで、得られた酵素組成物を通常、バッチと呼ぶ。例えば、酵素溶液を2つに分け、ここで、一方の酵素が粒子内に包埋されてさらなる処理を受けてもよく、そしてもう一方の酵素が別に処理されるが、これらの酵素は同じバッチ由来であるとみなされる。
【0019】
通常、治療の目的が全身的か非全身的かによって、シュウ酸塩関連疾患の治療の異なる2つの手段が採用され得る。本発明の方法は、非全身的な治療をするための組成物を提供する(つまり、胃腸管からのシュウ酸塩の吸収を回避するために、胃内のシュウ酸塩を減少させることが可能な組成物を提供する)。発明者らの知る限りでは、そのような組成物は新規であり、一方では胃内の酸性で酵素を損傷させる環境から酵素を保護し、もう一方では酸性環境においてさえも酵素活性を維持するという、新規の原理に基く。この目的は、1以上のシュウ酸塩分解酵素を第1のポリマー材料中に包埋すること、任意に、得られた粒子を第2のポリマー材料でコーティングすること、任意に第2のポリマー材料を架橋結合すること、任意に架橋結合しコーティングした粒子を還元することによって達成され得る。
【0020】
1つの実施形態において、シュウ酸塩吸収の低減は、シュウ酸塩分解酵素を胃腸管、特に胃へ提供することによって達成される。本発明の組成物は、シュウ酸オキシダーゼ、シュウ酸デカルボキシラーゼ、オキサリルCoAデカルボキシラーゼ、もしくはホルミルCoAトランスフェラーゼ、またはこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されないシュウ酸塩低減酵素を含む。これらの酵素は、シュウ酸塩を基質として使用する。本発明の方法は、胃内の食餌性シュウ酸塩を分解するための酵素組成物を提供し、従って、胃内で吸収可能なシュウ酸塩の濃度を低下させることを包含する。これは、腸に入って胃腸管のこの部分で吸収されるシュウ酸塩の量も減少させるだろう。吸収経路に加え、シュウ酸塩分泌経路が、最近、ヒトの胃において同定された。本発明の組成物はまた、体循環から胃に分泌されるシュウ酸塩の分解に有用であり、従って、本発明の方法は、個体のシュウ酸負荷の全体的な減少を企図する。
【0021】
別の実施形態において、本発明は有効量のシュウ酸塩低減酵素を、ヒトまたは動物、特にシュウ酸塩関連疾患のリスクが増加しているヒトまたは動物の胃に送達するための組成物および方法を提供する。酵素活性は、胃においてシュウ酸塩を分解するために、ならびに胃および腸内に存在するシュウ酸塩の量を減少させるために用いられ、その結果、吸収可能なシュウ酸塩の量を減少させる。胃腸管における低レベルのシュウ酸塩もまた、シュウ酸塩分泌経路を介した血液から腸へのシュウ酸塩排出の増加をもたらし得る。
【0022】
本発明の組成物は、高シュウ酸尿症、吸収性高シュウ酸尿症、腸管高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、外陰部痛、末期の腎臓病に伴うシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ならびに空回腸バイパス手術および肥満症治療手術(肥満のための手術)を受けた患者および/または抗生物質治療を受けた患者を含むが、これらに限定されない、シュウ酸塩関連症状における使用に適している。
【0023】
本発明の組成物の特徴は、ペプシン等のプロテアーゼによる分解または酸性環境による分解を含むが、これらに限定されない胃内環境において見られるような条件による分解から、シュウ酸塩分解酵素を保護する粒子の能力である。
【0024】
本明細書で用いる用語「シュウ酸塩分解酵素」は、シュウ酸塩を減少させることが可能なあらゆる酵素を意味することを意図する。これは、それ自体がシュウ酸塩を減少させ得るか、および/またはシュウ酸塩低減化経路で機能し得る。本発明は、任意の既知のシュウ酸塩低減酵素または分解酵素の使用を企図し、そして「シュウ酸塩低減」および「シュウ酸塩分解」等の用語は、本明細書において同じ意味で用いられる。
【0025】
本発明の組成物および方法において使用される酵素は、シュウ酸オキシダーゼ、シュウ酸デカルボキシラーゼ(本文脈において、OxDcと略記する)、オキサリルCoAデカルボキシラーゼ、もしくはホルミルCoAトランスフェラーゼ、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。さらに、シュウ酸塩分解経路の置換成分であるか、またはシュウ酸塩代謝経路、特にシュウ酸塩の低減に関与する他の酵素、補因子および補酵素はまた、単独で、または1以上の上記酵素との組み合わせで用いるのに適している。本文脈において、この定義に包含される酵素だけでなく、シュウ酸塩低減遺伝子およびタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列もまた、本発明によって企図される。本発明はまた、これらの酵素のあらゆる結合パートナーも企図し、そして、酵素に結合するかまたは酵素と相互作用する抗体および抗体断片を含む。
【0026】
本酵素は、生物からの単離によって得てもよく、これらを精製してもよく、合成的に、半合成的に、または組換え法によって作製してもよく、または細胞溶解物として使用してもよい。通常は、本酵素は精製した組換えタンパク質として使用されるであろうが、酵素は安全な特定の細菌によっても作製することができるため、これらの細菌を全細胞または溶解物として使用することも企図する。本発明の組成物の医学的使用のために、使用する1以上の酵素は、純度および活性に関して明確であることが好ましい。細胞溶解物を使用するならば、シュウ酸塩低減作用を有するあらゆる微生物(例えばO.フォルミジェネス(O.formigenes))から作製され得る。
【0027】
本発明の組成物はまた、酵素活性を向上させ得る1以上の追加因子を含み得る。これらの追加因子は、例えばオキサリルCoA、MgCl2、および/またはチアミン二リン酸(ビタミンB1の活性型)であり得る。
【0028】
特定の実施形態において、シュウ酸塩分解酵素の3つの主なクラスからの1以上の酵素を使用する。
【0029】
シュウ酸塩分解酵素の3つの主なクラスは、以下を含む。第1は、シュウ酸オキシダーゼであり、高等植物において発現し、そしてH2O2の同時生成を伴う、シュウ酸塩のCO2への酸素依存性酸化を触媒する。この反応は、尿中のシュウ酸塩レベルを検出するための現在のアッセイの基礎を成す。高速三段階精製法が、オオムギの根からシュウ酸オキシダーゼを得るために開発されている。この酵素はまた、ビーツの茎および根、ハゲイトウ(amaranthus)の葉、ソルガム、および他の多くの穀物にも存在する。
【0030】
シュウ酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.2)は、シュウ酸塩代謝酵素の第2のクラスであり、主に種々の菌類に存在する。ミロテシウム・ベルカリア(Myrothecium verrucaria)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の特定の株、白色腐朽菌、コリオルス・ベルシカラー(Coriolus versicolor)、およびコリビア・ベルティペス(Collybia velutipes)等のいくつかの菌類において報告および特徴付けられている。この酵素は、酸素依存性反応においてシュウ酸(oxalate)をギ酸(formate)および二酸化炭素に変換する。シュウ酸デカルボキシラーゼはまた、血中および尿中のシュウ酸塩の臨床検査に使用されており、そして食物内および環境内のシュウ酸塩レベルを低下させるのに使用され得る。最初の細菌性シュウ酸デカルボキシラーゼは、枯草菌(Bacillus subtilis)の細胞質ゾルタンパク質として発現するYvrK遺伝子の産物として最近記載された。YvrKタンパク質(枯草菌のシュウ酸デカルボキシラーゼ)は大腸菌(E.coli)において機能性組換えタンパク質として発現し、均質に精製され、十分に特徴付けられている。
【0031】
第3のクラスは、細菌性酵素、オキサリルCoAデカルボキシラーゼであり、これはCoA活性化基質に作用し、そしてこれをホルミルCoAに変換する。次に、ホルミルCoAトランスフェラーゼは、CoA上でギ酸(formate)とシュウ酸(oxalate)を交換するように作用する。これらの酵素は、シュウ酸塩分解細菌である、土壌において普通に見られるシュードモナス・オキサラチカス(Pseudomonas oxalaticus)、ならびに脊椎動物およびヒトの胃腸管に存在するオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)において研究されている。
【0032】
これらの酵素は、"The enzymes of oxalate metabolism: Unexpected structures and metabolism" Svedruzic D.ら Arch Biochem Biophys. 2005 Jan 1; 433(1):176-92に十分に概説されており、本明細書にその全体が組み込まれる。酵素は、天然酵素、単離タンパク質、または組換え技術によって作製されたものであってもよく、組換え手段または化学的手段によって修飾してもよく、そして側基または他の付加分子を含み得る。例えば、酵素は他の分子または化合物と連結するためのリンカー分子を有するように修飾され得る。
【0033】
本発明の特定の実施形態において、シュウ酸塩レベルの減少は、例えば、シュウ酸塩分解酵素を発現するように形質転換された大腸菌または他の微生物等の、組換え手段によって生産されたシュウ酸塩分解酵素を使用することによって達成される。
【0034】
本発明に関連する組換え酵素の例示は:
i)例えば以下の配列の1つを有するオキサリルCoAデカルボキシラーゼ:
http://www.expasy.org/uniprot/P40149
UniProtKB/TrEMBL登録受付番号P40149
配列番号1
【化1】
【0035】
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=nucleotide&cmd=search&term=M77128&doptcmdl=GenBank
GenBank登録番号M77128
配列番号2
【化2】
【0036】
ii)例えば以下の配列を有するホルミルCoAトランスフェラーゼ:
http://www.expasy.org/uniprot/O06644
UniProtKB/TrEMBL登録受付番号O06644
配列番号3
【化3】
【0037】
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=nucleotide&cmd=search&term=U82167&doptcmdl=GenBank
GenBank登録番号U82167
配列番号4
【化4】
【0038】
iii)例えば以下の配列を有するシュウ酸デカルボキシラーゼ:
http://www.expasy.org/uniprot/O34714
UniProtKB/TrEMBL登録受付番号O34714
配列番号5
【化5】
【0039】
http://www.ebi.ac.uk/cgi-bin/dbfetch?db=emblcds&id=CAA11727
コード配列登録番号AJ223978
配列番号6
【化6】
【0040】
および/または
iv)例えば以下の配列を有するシュウ酸オキシダーゼ:
http://www.expasy.org/uniprot/O24004
UniProtKB/TrEMBL登録受付番号O24004
配列番号7
【化7】
【0041】
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=nucleotide&cmd=search&term=Y14203&doptcmdl=GenBank
GenBank登録番号Y14203
配列番号8
【化8】
【0042】
である。
【0043】
シュウ酸塩分解酵素をコードするDNA配列は当業者に知られており、例えば、WO 98/16632に記載され、これはその全体を本明細書に組み込む。
【0044】
さらに、本発明の組成物は、シュウ酸塩低減酵素のシュウ酸塩分解活性部位を含むドメインを用いて形成したキメラ、またはペプチド断片、特に活性部位を含むかもしくは活性部位からなるペプチド断片を含むがこれらに限定されない、修飾または突然変異を含む酵素を含有してもよく;修飾または突然変異は、欠失、挿入、置換、復帰突然変異、活性上昇のための突然変異、天然アミノ酸の合成アミノ酸による置換、または当業者に知られる他の修飾を含むがこれらに限定されない。そのような修飾酵素は、天然酵素より高い活性、低い活性、または同等の活性を有し得るか、あるいは天然もしくは非修飾化酵素と同じかまたは異なる特徴を有し得る。本発明は、シュウ酸塩低減酵素の全酵素、断片、ペプチド、結合領域、活性部位、または他の機能性領域、機能性部分、機能性配列、ならびにプロモーターおよび制御配列を含む方法および組成物を企図する。
【0045】
1つの例示において、シュウ酸デカルボキシラーゼを修飾した。合計で7つの遺伝子を元のyvrk遺伝子配列(野生型yvrk)から作出した。元の遺伝子は枯草菌由来であり、遺伝子配列は、GenScript Corporation, Piscataway, NJのアルゴリズムを用いて、大腸菌内での発現のために最適化した。コドン使用頻度、GC含量のバランス、反復配列の除去、およびクローニングのために内部の制限酵素認識部位が無いことを確保することについて、遺伝子を最適化した。コドン最適化遺伝子は、結果として、野生型yvrkと同一のアミノ酸配列を有するタンパク質となった。
【0046】
次に、野生型yvrk遺伝子および最適化したyvrk遺伝子の双方のただ1つのシステインコドンに修飾を施して、6つのさらなる独自の遺伝子配列を得た。システインコドンは、セリンコドン、アルギニンコドン、またはアラニンコドンに変更した。修飾は、ジスルフィド結合を除去し、そして、酵素の二次および三次構造を変更する目的のために実施した。
【0047】
野生型yvrk遺伝子の遺伝子配列は、同じ方法を用いて、ピチア属(Pichia)またはサッカロミセス属(Saccharomyces)等のさらなる発現系用に最適化され得る。さらに、バチルス属(Bacillus)発現系における発現は、至適コドン使用頻度およびGC含量、ならびに反復配列の除去について遺伝子を最適化することによって向上され得る。コドン最適化はまた、例えば、PEG化(pegylation)、マイクロ粒子の結合、もしくはカプセル化を向上させる方法として、低pHでのpH安定性を向上させる方法として、またはタンパク質の活性を向上させる方法として、すでに変更されたシステインコドン以外の部位において、またはシステインの変更に加えて、タンパク質の二次構造を変更するためにも使用され得る。
【0048】
配列番号9
システインコドンを太字で記した元のyvrk配列
【化9】
【0049】
5'末端および3'末端に制限酵素認識部位(下線)を有し、システインコドンを太字で記した、大腸菌に対して最適化されたYvrk遺伝子配列
配列番号10
【化10】
【0050】
シュウ酸塩分解酵素は、通常、標準食に通常存在する実質的にすべてのシュウ酸塩を分解するのに十分な量で本発明の組成物に存在する。食品の選択によって、平均的な欧米の食事には、100〜300mgのシュウ酸塩/日が含まれ得る。一般的に、酵素を含む約0.2gの粒子(1mLの粒子懸濁液中の20mgのOxDcと等しい)が、人工胃内条件において、30分間以内に180mgのシュウ酸塩を除去し得る。
【0051】
有効量は、組成物の投与前に存在するシュウ酸塩の量と比較して、存在するシュウ酸塩の一部を減少させることになるシュウ酸塩低減酵素活性の活性単位の量を含むか、または個体におけるシュウ酸塩の量の低減化を開始するか、もしくはシュウ酸塩の量を低く維持することになるシュウ酸塩低減酵素活性の活性単位のレベルを含む。単回用量組成物に使用され得るシュウ酸塩低減酵素活性の活性単位の数値は、約0.0001単位(units)〜約5,000単位、約5単位〜100単位、0.05単位〜50単位、0.5〜500、約0.01単位〜約50単位、約0.01単位〜約5単位、約1単位〜約100単位、約25単位〜約50単位、約30単位〜約100単位、約40単位〜約120単位、約60単位〜約15単位、約50単位〜約100単位、約100単位〜約500単位、約100単位〜約300単位、約100単位〜約400単位、約100単位〜約5,000単位、約1,000単位〜約5,000単位、約2,500単位〜約5,000単位、約0.001単位〜約2,000単位の範囲、およびこれらに包含されるすべての範囲であり得る。酵素の単位は、37℃で1分間に1マイクロモルのシュウ酸塩を分解する酵素の量である。
【0052】
本発明の組成物は、第1のポリマー材料中に包埋されたシュウ酸塩分解酵素を含有する粒子を含む。本明細書における非限定的な実施例において、第1のポリマー材料中に酵素を包埋する方法を記載する。当業者は、本発明の組成物を調製するために用いるのに適した他の方法を見出し得る。第1のポリマー材料中に酵素を組み込むことによって、酵素はpHおよびペプシンに関して胃液に類似した条件に対するある一定の保護を得る。得られた包埋酵素組成物は、粒子、つまりミクロンサイズまたはナノサイズの別個の単位のように見える。従って、本明細書において用語「粒子」、「マイクロ粒子」および「ナノ粒子」は、第1のポリマー材料中、または第1および第2のポリマー中に包埋された1種以上のシュウ酸塩低減酵素を含む組成物を表現するために使用する。一般的に、用語「粒子」は、最も広義の用語として、つまり、いかなる特定のサイズ属性または形状属性もなく用いられるが、一方、用語「マイクロ粒子」は、得られた粒子の平均粒子サイズが1μm〜1000μmの範囲内である場合に用いる。同様に、用語「ナノ粒子」は本明細書において、得られた粒子の平均粒子サイズが1nm〜1000nmの範囲内である場合に用いる。本明細書で使用する用語「酵素」の単数形は、タンパク質分子に関して通常理解されるように、複数のコピーの酵素分子を指す。本明細書で使用する用語「1以上の酵素」は、1種類の酵素が存在し得ること(例えばホルミルCoAトランスフェラーゼを意味する等)、または2種類以上の酵素が組成物中に存在すること(例えば、オキサリルCoAデカルボキシラーゼおよびホルミルCoAトランスフェラーゼ;シュウ酸デカルボキシラーゼおよびシュウ酸オキシダーゼ、もしくは野生型酵素および突然変異型酵素の組み合わせを含む組成物等)を意味する。
【0053】
通常、本発明の組成物の粒子は、約50nm〜約1mmの平均直径を有し、例えば約500nm〜約500μm、約1μm〜約500μm、約2μm〜約100μm、約4μm〜約80μm、約6μm〜約60μm、約8μm〜約40μm、約10μm〜約20μ等である。
【0054】
本明細書で使用する用語「包埋された」は、酵素が第1のポリマー材料と以下のような方法で混合されているかまたは接触していることを意味することを意図する。
i)第1のポリマー材料は実質的に酵素を包む、つまり、粒子は、第1のポリマー材料によって囲まれている酵素含有コアと考えることができ;コアは、例えばポリマー材料の一部等の酵素以外の他の物質をさらに含んでもよく、または
ii)粒子の表面の大部分は第1のポリマー材料から成るが、酵素の一部分は粒子の表面に露出し得るような方法で、酵素が第1のポリマー材料中に組み込まれる。通常、粒子の外表面の少なくとも50%が、第1のポリマー材料から成り、そして粒子中に存在する酵素の重量の最大約20%が粒子の外表面に存在し得ることを企図し、および/または
iii)酵素を第1のポリマー材料に実質的に均一に分布させる。
【0055】
従って、本発明の組成物において、シュウ酸塩分解酵素は(胃の)環境から保護される。さらに、本発明の組成物は、実質的には酵素を(胃の)環境に放出しない。つまり、酵素は経口投与の後、胃内のシュウ酸塩を分解するのに十分な時間、組成物中に残留する。組成物において、第1のポリマー材料は酵素の保護担体として機能し得ると同時に、基質、つまりシュウ酸塩が組成物中に拡散するか、またはさもなくば移動して、そこで(in situ)シュウ酸塩の分解を可能にし得る。本発明の組成物の特徴は、特に酸性条件下において、ポリマーマトリックス中に包埋されていない酵素で観察されるより長い時間、酵素活性を維持するための組成物の能力である。従って、本発明の1つの態様は、第1のポリマー材料に包埋された1以上のシュウ酸塩分解酵素を含有する粒子を含む組成物を包含し、ここで、包埋酵素は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシンを含む、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)のUSP人工胃液中、37℃で少なくとも60分間のインキュベーションに際して、同じバッチ由来の1以上の非包埋遊離酵素の活性の少なくとも2倍の活性を維持する。本発明の組成物および遊離の酵素に対する試験条件が同一であることが重要であり、例えば、酵素の性質および純度、酵素の初期濃度、試験容積、インキュベーション媒質の組成(例えば、人工胃液(gastric juice)または胃液(gastric fluid))、温度等である。
【0056】
通常、包埋酵素は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシンを含む、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)のUSP人工胃液中、37℃で少なくとも30分間、少なくとも45分間、少なくとも60分間、少なくとも75分間、少なくとも90分間、少なくとも105分間、または少なくとも120分間のインキュベーションに際して、同じバッチ由来の1以上の非包埋遊離酵素の活性の少なくとも3倍の活性、少なくとも4倍の活性、または少なくとも5倍の活性を維持する。
【0057】
特定の実施形態において、本発明の組成物中の1以上の包埋シュウ酸塩分解酵素は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間のインキュベーションに際して、同じバッチ由来の1以上の非包埋遊離酵素の活性の少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍の活性を維持する。
【0058】
上記の人工胃液(gastric juice)(胃液(gastric fluid))は、USP(アメリカ合衆国薬局方)に記載され、ペプシンを含み、そして、特定の比率の濃HClを含有する。USP人工胃液は、容積1L中に2g NaCl、3.2gペプシンおよび7mL濃HClを含む。この溶液のpHは通常1.2〜1.5の範囲であり、使用するHClの濃度に依存する。本明細書のいくつかの実施例において、pHは2より大きい値に調整した。これは、いかなるコーティングもないマイクロ粒子を使用した場合であり得る。本目的のために、pHは酸性の範囲、つまり、最大約7、最大6にするべきであり、そして、pHの範囲は通常約1〜約5、約2〜約5にするべきである。本明細書の実施例の節において、上記の試験および酵素活性の測定に関してさらに詳述する。
【0059】
ヒトの胃内の滞留時間は、平均約120分間である。本発明の組成物の酵素活性が、十分なレベル、有効なレベルで120分間以上維持されることを企図する。本明細書の実施例から、酸性環境に曝露されて120分後に、本発明の組成物の酵素活性の少なくとも50%を維持することが可能であると考えられる。使用する酵素がポリマーに包埋されていないと(例えば、非包埋酵素)、活性低下は非常に早く、そして酸性環境において、60分後には活性が残らない。
【0060】
通常、本発明の組成物中の1以上のシュウ酸塩分解酵素の活性は、pHが約1.0〜約5の範囲、約1.0〜約4.5の範囲、約1.5〜約4.5、約2.0〜約4.0、または約2.2〜約4.0であるバッファー水溶液中で、約60分間、約90分間、約105分間、または約120分間インキュベーションした場合に、初期活性を100%と設定して、最大約30%に減少、最大約40%に減少、最大約50%に減少、最大約60%に減少、または最大約70%に減少する。
【0061】
特定の実施形態において、本発明の組成物中のシュウ酸塩分解酵素の活性は、約2.0〜約4.0のpHで60分間試験した場合に、初期活性を100%と設定して、最大80%に減少する。
【0062】
さらに特定の実施形態において、本発明の組成物中の1以上のシュウ酸塩分解酵素の活性は、約2〜約4.5の範囲のpHであるバッファー水溶液中で、2時間インキュベーションした場合に、初期活性を100%と設定して、最大約20%に減少する。特に、活性は、初期活性を100%と設定して、最大30%に減少する。
【0063】
特定のpHを有するバッファー溶液を提供するのに適したバッファー基質は、当業者に知られる。例示は、グリシンバッファー(pH2〜3)、酢酸バッファー、リン酸バッファー、ホウ酸バッファー等である。バッファー溶液は、バッファー溶液のイオン強度を調整するために、例えば無機塩等のさらなる成分、または、バッファー溶液中の条件が、包埋酵素がそのような厳しい条件に耐えることが可能であるか試すことを確実にするために、例えばペプシン等の1以上のプロテアーゼを含み得る。1以上のプロテアーゼが含まれる場合、通常これらの濃度はUSP人工胃液に使用するのと同じレベルである。
【0064】
本明細書に上述したように、シュウ酸塩分解酵素は、種々の種類、クラス、固有性および性質のものであってよい。好ましい態様において、本発明の組成物は、シュウ酸デカルボキシラーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、もしくはオキサリルCoAデカルボキシラーゼとホルミルCoAトランスフェラーゼとの組み合わせ、またはこれらの組み合わせを含む1以上のシュウ酸塩分解酵素を含む。
【0065】
本発明の組成物において、第1のポリマー材料として使用するのに好ましいポリマー材料は、人工のポリマーまたは天然のポリマーを含むがこれらに限定されず、以下:
i)多糖類:アルギン酸を含むアルギン酸塩、例えばアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸-プロパン1,2-ジオールを含むアルギン酸塩、アラビアゴム、カラギーナン、キトサンおよびその誘導体、コンドロイチン硫酸、デキストラン誘導体、ヘパリン、ヒアルロン酸、イヌリン、セルロース、もしくはメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルメチルセルロース等のセルロース誘導体など、またはこれらの組み合わせ;ii)ムコ多糖類;iii)ローカストビーンゴム、グアーゴム、トラガカント、寒天、アラビアゴム、キサンタンゴム、インドゴム(karaya gum)、タラゴム、ジェランゴム等を含むゴムなど、またはそれらの組み合わせ;iv)寒天、カラギーナン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等の親水コロイドおよびヒドロゲル化剤を含むゲル化剤または膨張剤など、またはそれらの組み合わせ;v)例えば、タンパク質およびポリアミド等:コラーゲン、アルブミン、プロタミン、スペルミン、合成ポリマー:ポリ(アクリル酸)、ポリアミノ酸(ポリリジン等)、ポリリン酸、トリポリリン酸塩、ポリ(L-乳酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(DL-乳酸-co-グリコール酸)、またはこれらの混合物および組み合わせ等の他のもの
を含むが、これらに限定されない。
【0066】
特定の実施形態において、第1のポリマー材料は、キトサン、アルギン酸塩、ペクチン、またはヒアルロン酸である。さらに特定の実施形態において、第1のポリマー材料は、キトサンまたはアルギン酸塩である。
【0067】
他のポリマー材料は、生体ポリマーまたは合成ポリマーであり得る。生体ポリマーの例示は、タンパク質、多糖類、ムコ多糖類、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパリン類縁体(heparinoids)、デルマタン硫酸、ペントサン多硫酸、コンドロイチン硫酸、セルロース、アガロース、キチン、カラギーナン、リノレン酸、およびアラントイン、架橋結合コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、架橋結合エラスチン、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、キトサン、アルギン酸塩、デキストラン、メチルセルロース、ポリリジン、および天然ゴムを含むが、これらに限定されない。ポリマーマトリックスが形成される本発明の組成物において、これらのマトリックスは多孔性であるため、ポリマーマトリックスに小さな水溶性分子が出入りすることが可能であり、分子は、シュウ酸塩、ギ酸、ギ酸塩、二酸化炭素、酸素、またはオキサリルCoA等を含むが、これらに限定されない。本発明の組成物における第1のポリマー材料の濃度は、通常は総乾燥材料の20%〜70%の範囲である。
【0068】
1以上の酵素および第1のポリマー材料に加え、粒子はまた、例えば、pH調整剤、緩衝化剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤、酵素のための補因子、または例えば充填剤、希釈剤、担体等の1以上の医薬上許容され得る賦形剤等の1以上の添加剤も含み得る。
【0069】
さらに、生理的条件が酵素の適切な作用範囲を優に超えたpHを生じる場合に、タンパク質の周辺に局在化した酸性pH環境を作り出すことが有利となり得る。例えば、高いpHである場所において、pH3において最大活性を有するシュウ酸塩分解タンパク質は、酵素の周囲近辺の局所的なpHを3前後に低下させ得る送達ベヒクルから恩恵を受ける。
【0070】
局所的なpHを低下させるための1つの方法は、局所的なpHを低下させる酸性物質を産生するために、生理的条件において加水分解的に分解することのできるポリマーを組み込むことである。例えば、PLA、PGAおよびPLGA等のαポリエステルは、生体内(in vivo)で加水分解的に生分解して、酵素にとって機能的に望ましい範囲にまでpHを局所的に低下させることができる有機酸(乳酸およびグリコール酸)を形成する。ポリ(DL-ラクチド)(DLPLA)は、迅速に分解し得る乳酸の双方の異性体の無作為的な分配を示す、非晶質ポリマーである。
【0071】
さらに、生体内(in vivo)pHもしくは局所的pHに連動して、または酵素周辺の局所的pHを至適化/調整するために両方の組み合わせに連動して作用する塩基材料、塩基含有材料または塩基生成材料の形態で、バッファーを送達ベヒクル中に含むことが望ましい。これらのバッファーは、有機化合物もしくは無機化合物の塩、または多くの他のバッファーを含み得る。緩衝化剤が関連するかまたは由来する共役酸のpKaは、緩衝化剤の適切な選択に利用できることが理解される。
【0072】
粒子は、架橋結合手順の対象となり得る。そのような架橋結合手順は、例えば、保存中もしくは経口投与後に周囲環境からのpHもしくはペプシンの悪影響による酵素活性の損失を回避するために、あるいは粒子からの酵素の放出を減少させるために、あるいは粒子の表面への酵素の移行を低減もしくは防止するために、粒子の特性を強化し得る。架橋結合手順およびそのような手順に使用するのに適した材料を本明細書に記載する。
【0073】
本発明の粒子は、物理的または化学的架橋結合によって架橋結合したポリマーから構成され得る。物理的架橋結合は、塩結合によって互いに架橋結合している反対荷電を有するポリマー(例えば、正荷電を帯びたキトサンは、負帯電ポリマーであるトリポリリン酸またはヘパリンと架橋結合する)、反対荷電イオンと架橋結合した荷電ポリマー(例えば、Ca2+とのアルギン酸塩、Al3+とのカルボキシメチルセルロース)を含み得る。本文脈で使用する用語「物理的架橋結合」は、非共有結合および/または相互作用も含む。
【0074】
通常、化学的架橋結合は、タンパク質、ポリアミド、キトサンおよびその誘導体等のアミン基を有するポリマーによる等、2つの反応性官能基を有する架橋結合剤による架橋結合を含み、グルタルアルデヒドまたはゲニピンを介して架橋結合し得る。紫外線照射は、光感受性基を有するポリマーに、共有架橋結合の形成を誘導するのに使用され得る。
【0075】
ナノ粒子およびマイクロ粒子の調製のための方法は、当技術分野において知られており、エマルション法、液滴形成(coacervation)/沈殿法、噴霧乾燥法等を含む。ナノ粒子またはマイクロ粒子の特性(例えば:微環境バッファー容量、機械的強度、粒径、シュウ酸塩拡散速度、酵素との相互作用)は、選択するポリマー、ポリマーの組成および比率、架橋結合法および調製手順に大きく依存する。2種類以上の架橋結合が、本発明のマイクロ粒子に用いられ得る(例えば、化学的架橋結合ならびに物理的架橋結合であり、本明細書の実施例を参照のこと)。
【0076】
特定の実施形態において、第1のポリマー材料は、それ自身に架橋結合するか、および/または第1のポリマー材料に包埋された1以上の酵素に架橋結合する。
【0077】
第1のポリマー材料がそれ自身におよび/またはそれに包埋された酵素に架橋結合している組成物のような、本発明の組成物において、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えばpH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも30分間、少なくとも60分間、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間のインキュベーションに際して維持される酵素活性のレベルは、ポリマーに包埋されてはいるが架橋結合したポリマーを有さないか、もしくは酵素とポリマーとが架橋結合していない、同じバッチ由来の酵素の組成物と比較して、または同じバッチの遊離酵素と比較して、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍増加する。
【0078】
粒子は、任意に、第1のポリマー材料の少なくとも一部が架橋結合した粒子もまた、コーティングが施され得る。通常、そのようなコーティングは、第1のポリマーと同じ機能、つまり、保存中および/または経口投与後の第1のポリマーに包埋された酵素の酵素活性の実質的な減少を回避する機能を有する。
【0079】
従って、特定の実施形態において、粒子は第2のポリマー材料でコーティングされる。適切なコーティング材料は、シュウ酸塩を含む水性組成物が本発明の粒子中に拡散すること、またはそうでなければ侵入することを可能にするような材料である。上記の通り、基質(つまり、シュウ酸塩含有媒質)が本発明の粒子組成物中に侵入し、シュウ酸塩の酵素的分解を生じ得る。従って、拡散性コーティングまたはそうでなければ浸透性コーティングのどちらかをもたらすコーティング材料(例えば、実質的に水溶性である孔形成基質を含むコーティング)が利用され得る。
【0080】
適切なコーティング材料の例示は、第1のポリマー材料として企図される材料を含むが、これらに限定されない。コーティング材料は、第1のポリマー材料として使用されるものと異なるものを選択してもよいが、第1のポリマー材料およびこのコーティング材料が同じであってもよい。コーティング材料の特定の例示は、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリデキストロース、マルトデキストリン、またはキトサン、アルギン酸塩、およびヒアルロン酸を含む他の多糖類等のフィルム形成剤である。特定の実施形態において、コーティング材料は、もし存在するのであれば、例えばキトサンおよびアルギン酸塩などの架橋結合の対象となり得るものである。
【0081】
特定の実施形態において、第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料は、キトサン、アルギン酸塩、ペクチン、またはヒアルロン酸等の多糖類である。第1のポリマー材料および第2のポリマー材料は、同じであっても異なっていてもよい。
【0082】
通常、第1のポリマー材料および、存在するのであれば、第2のポリマー材料のポリマーの割合は、粒子の総乾燥材料の約10%〜約80%、約60%〜約80%である。
【0083】
存在するのであれば、コーティング材料は通常、粒子の重量増加が最大で約40%となる量で利用される。本明細書の例示のように、粒子組成物内のコーティング材料の濃度は、通常、最大25%w/w(最大約20%w/w、最大約15%w/w、または最大約10%等)である。コーティングを有する粒子は、本明細書においてコーティング組成物と称する。
【0084】
本発明のコーティング組成物等の本発明の組成物において、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えばpH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間のインキュベーションに際して維持される酵素活性のレベルは、コーティングされていない粒子に包埋された同じバッチの酵素の組成物と比較して、または同じバッチの遊離酵素と比較して、少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍増加する。
【0085】
上記および本明細書の実施例に示す通り、本発明の組成物中のシュウ酸塩分解酵素の酵素活性の安定性は、架橋結合されたコーティングでコーティングされた粒子を使用することによって、さらに向上し得る。ポリマー材料の架橋結合は、当技術分野においてよく知られており、そして物理的架橋結合によって、または化学的架橋剤を使用することによって実施され得る。
【0086】
本文脈において使用する適切な化学的架橋剤は、ジアルデヒド、1-エチル-3[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC)、ジスクシンイミジルスベラート(DSS)、またはN-[p-マレイミドフェニル]イソシアナート(PMPI)を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態において、架橋剤はジアルデヒド、特にグルタルアルデヒドまたはグリオキサールである。ある実施形態において、架橋剤はグルタルアルデヒドである。通常、架橋結合は、50mMリン酸バッファー(pH7.5)中の1〜5%グルタルアルデヒド中で、37℃で1〜2時間振盪することにより実施される。
【0087】
上記の通り、本発明の組成物の特徴は、第1のポリマー材料、および、もし存在するのであれば、第2のポリマー材料が、1以上の酵素によって触媒される反応の基質および産物が、前記ポリマー材料を介して拡散できるように、低分子に対して浸透性であることである。さらに、第1および/または第2のポリマー材料は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間のインキュベーションに際して、実質的に無傷(intact)のままである。
【0088】
別の実施形態において、第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料は、それ自身に、および/または互いに、および/または1以上の酵素に架橋結合する。
【0089】
本発明のコーティングしたコーティング組成物、またはコーティングし、架橋結合したコーティング組成物等の本発明の組成物において、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間のインキュベーションに際して維持される酵素活性のレベルは、粒子に包埋されているが、しかし粒子がポリマー材料の第2層(コーティング)もしくは架橋結合した第2層を有さない粒子である同じバッチの酵素の組成物と比較して、または同じバッチの遊離酵素と比較して、少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍増加する。
【0090】
本明細書の実施例の通り、化学的架橋剤と1以上の酵素および/または第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料との間の結合が、還元剤によって還元されている本発明の組成物は、組成物の酵素活性を維持することに関して、さらなる向上をもたらし得る。そのような還元剤は、例えばNaBH4またはNaCNBH3等の還元剤等の当技術分野においてよく知られたものであり得る。
【0091】
本発明の組成物、特にコーティングされ、架橋結合したコーティングを有し、還元性架橋結合する本発明の組成物において、ここで、第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料が架橋結合されていてもよく、そしてそのような架橋結合した材料が還元されていてもされていなくてもよく、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間のインキュベーションに際して維持される酵素活性のレベルは、還元剤にさらされていない粒子中の同じバッチの酵素の組成物と比較して、または同じバッチの遊離酵素と比較して、少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍増加する。
【0092】
本発明の特定の実施形態において、1以上の包埋酵素は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間のインキュベーションに際して、同じバッチの酵素由来の1以上の非包埋遊離酵素の活性の、少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍の活性を維持する。
【0093】
本発明の別の特定の実施形態において、1以上の包埋酵素は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間のインキュベーションに際して、包埋酵素の初期活性の、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%を維持する。
【0094】
本発明のさらなる特定の実施形態において、1以上の包埋酵素は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間のインキュベーションに際して、包埋酵素の初期活性の約95%〜約100%を維持する。
【0095】
本発明の粒子に包埋された酵素は、食物のシュウ酸塩含量を減少させることができる。本明細書の実施例に説明するように、20mgの1以上のシュウ酸塩分解酵素を含む本発明の組成物は、200gのホウレンソウ中に存在するシュウ酸塩の少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも95%、または少なくとも99%等を、1時間以内にpH=2.5で分解する。
【0096】
本発明の組成物は、種々のポリマー材料を使用することにより調製され得る。以下の注釈は本明細書の実施例において用いられる。
【0097】
OxDc XXナノ粒子は、例えばキトサンナノ粒子等であり、OxDcを包埋する第1のポリマー材料としてキトサンを使用するナノ粒子を表す。
【0098】
YYコーティングOxDc XXマイクロ粒子は、例えばアルギン酸塩コーティングOxDcキトサンナノ粒子等であり、OxDcを包埋する第1のポリマー材料としてキトサンを使用し、ナノ粒子がアルギン酸塩でコーティングされるナノ粒子を表す。
【0099】
ZZ架橋結合YYコーティングOxDc XXマイクロ粒子は、例えばグルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサンマイクロ粒子等であり、OxDcを包埋する第1のポリマー材料としてキトサンを使用し、ナノ粒子がアルギン酸塩でコーティングされてマイクロ粒子を形成し、そしてマイクロ粒子が実質的にグルタルアルデヒドと架橋結合するマイクロ粒子を表す。
【0100】
還元ZZ架橋結合YYコーティングOxDc XXマイクロ粒子は、例えば還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサンマイクロ粒子等であり、OxDcを包埋する第1のポリマー材料としてキトサンを使用し、そして形成されるナノ粒子をアルギン酸塩でコーティングしてマイクロ粒子を形成し、続いてマイクロ粒子がグルタルアルデヒドと架橋結合し、そして還元されるマイクロ粒子を表す。
【0101】
従って、
OxDcキトサン/TPPナノ粒子は、TPPを含有し、そのナノ粒子に包埋されたOxDcを有する、キトサンから作製されるナノ粒子である。
【0102】
アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子は、キトサンおよびTPPおよび包埋OxDcから形成されるナノ粒子を基にしたマイクロ粒子であり、ナノ粒子はアルギン酸塩でコーティングされてマイクロ粒子を形成する。
【0103】
グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子は、上記のマイクロ粒子に相当するが、しかしこのマイクロ粒子は架橋結合を構築するためにグルタルアルデヒド処理を受けている。
【0104】
還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子は、さらに還元プロセスを受けた上記のマイクロ粒子に相当する。
【0105】
本発明の組成物は、対象への経口投与に使用するのに適切である。組成物は、経口医薬製剤として提供され、口腔、口、口腔内パッチ、胃へ送達してもよく、胃粘膜に付着させてもよく、持続放出液中でもよく、口または胃内の速放性錠剤中でもよく、食道をコーティングしてもよく、食物に添加する液体または固体形態でよく、食物摂取の前でもよく、または食物摂取の直後でもよい。
【0106】
投与される組成物は通常、固体形態(例えば粒子の形態)または固体剤形(例えばサシェ剤(sachets)、カプセル剤もしくは錠剤(例えば粒子が、当業者によく知られる方法によってさらに加工されて適切な剤形となる)の形態)である。そのために、例えば充填剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、矯味剤、pH調整剤、安定化剤等の、適切な医薬上許容され得る賦形剤が添加され得る。さらに、1以上のさらなる治療的物質および/もしくは予防的物質、ならびに/または他の酵素、補因子、物質、補酵素、無機物、およびシュウ酸塩を低減するのに有用な他の薬剤が添加され得る。
【0107】
適切な医薬上許容され得る賦形剤の例示は、デキストリン、マルトデキストリン、デキストロース、フルクトース、グルコース、ラクトース、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、微結晶性セルロース(例えば種々の等級のAvicel(登録商標))を含む)、デンプンまたは加工デンプン(例えばバレイショデンプン、トウモロコシデンプン、コメデンプン、α化デンプン)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム(例えば塩基性リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム)、硫酸カルシウム、カルボキシアルキルセルロース、デキストラート、リン酸水素カルシウム(dibasic caicium phosphate)、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、および滑沢剤として:タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、硬化植物油等を含む。
【0108】
本発明の方法は、1以上のシュウ酸塩低減微生物、1以上のシュウ酸塩低減酵素、またはこれらの組み合わせおよび混合物を、本明細書に教示される粒子組成物中に含む有効量のシュウ酸塩低減組成物を投与することによって、ヒトおよび動物のシュウ酸塩関連症状を治療または予防することを包含する。本方法は、本明細書に教示される酵素包埋粒子を含む組成物を、対象(ヒトまたは動物)に提供すること、および対象に存在するシュウ酸塩を減少させること、シュウ酸塩関連症状を治療または予防すること、および/または摂取したシュウ酸塩の一部を減少させることを包含する。ヒトまたは動物のシュウ酸塩を減少させる方法は、1以上のシュウ酸塩低減酵素またはシュウ酸塩低減活性を有するフラグメントを本発明の包埋酵素粒子組成物中に含む有効量の組成物を、対象(ヒトまたは動物)に投与すること、および存在するシュウ酸塩を減少させることを包含する。減少は、対象のあらゆる組織または体液環境において起こり得る。体液は、鼻汁もしくは胃液分泌物等の身体の分泌物、唾液、血液、血清、尿、糜汁(chyme)または消化物、組織液、およびヒトもしくは動物によって作られる他の液体または半固形物質を含む。例えば、包埋酵素粒子組成物は、ヒトまたは動物に経口的に投与することができ、そしてシュウ酸塩低減酵素活性は、ヒトまたは動物の胃内に存在するシュウ酸塩を減少させる。本発明の包埋酵素粒子組成物は、液体、食物、または他の食品材料中に混合してもよく、粒子のシュウ酸塩低減酵素活性が胃の環境において有効となるように、ヒトまたは動物に提供され得る。本発明の包埋酵素粒子組成物はまた、シュウ酸塩が存在する食料または他の物質と混合してもよく、粒子のシュウ酸塩低減酵素活性は、食料または他の材料中に存在するシュウ酸塩を減少させる。
【0109】
シュウ酸塩関連症状を治療および予防する方法は、有効量のシュウ酸塩低減酵素を含む粒子を含有する組成物を投与することを包含する。有効量は、本組成物の投与前に存在するシュウ酸塩の量と比較して、存在するシュウ酸塩の一部を減少させることになるシュウ酸塩低減酵素活性の活性単位の量を含むか、または個体におけるシュウ酸塩量の減少を開始するか、もしくは個体のシュウ酸塩の量を低く維持することになるシュウ酸塩低減酵素活性の活性単位のレベルを含む。単回用量組成物に使用され得るシュウ酸塩低減酵素活性の活性単位の数は、約0.0001単位〜約5,000単位、約5単位〜100単位、0.05〜50単位、0.5〜500、約0.01単位〜約50単位、約0.01単位〜約5単位、約1単位〜約100単位、約25単位〜約50単位、約30単位〜約100単位、約40単位〜約120単位、約60単位〜約15単位、約50単位〜約100単位、約100単位〜約500単位、約100単位〜約300単位、約100単位〜約400単位、約100単位〜約5,000単位、約1,000単位〜約5,000単位、約2,500単位〜約5,000単位、約0.001単位〜約2,000単位の範囲、およびこれらに包含されるすべての範囲であり得る。本組成物はさらに、他の酵素、補因子、基質、補酵素、無機物、およびシュウ酸塩の減少に有用な他の薬剤を含み得る。酵素の単位は、1マイクロモルのシュウ酸塩を37℃で1分間当たりに分解する酵素の量である。
【0110】
治療法において、本明細書に教示される有効量の粒子組成物は、少なくとも1日に1回、少なくとも1日に2回、少なくとも1日に3回、少なくとも1日に4回、必要な場合はそれ以上、対象が摂取するために経口的に投与され、そのような投与は1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、もしくは1週間、2週間、3週間、もしくは1ヵ月間、2ヵ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヵ月間、6ヵ月間、6ヵ月間を上回る間、1年間、2年間、もしくは数年間、または患者の生涯に渡り継続的であり得る。そのような治療は、対象において望ましいシュウ酸塩レベルを維持し続け得る。
【0111】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される、単数形の「a」、「an」および「the」は、他に文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに注意するべきである。
【0112】
本明細書に含まれるすべての特許、特許出願および参照は、参照によりそれらの全体を具体的に組み込む。
【0113】
当然のことながら、上記は本発明の例示的な実施形態にのみに関するものであって、多数の改良または変更が、本開示に記載の発明の精神および範囲から逸脱することなく実施され得ることが理解されるべきである。
【0114】
本発明の例示的な実施形態が本明細書に提供されるが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。当業者に示唆し得る数多くの改良または変更が存在する。
【0115】
本発明は、本明細書に含まれ、明確に理解するために提供する実施例によってさらに説明する。例示的な実施形態は、本発明の範囲に制限を与えるように解釈するべきではない。むしろ、種々の他の実施形態、改良およびこれらと同等のものにつながる方策を有し得ることが明らかに理解され、このことは、本明細書の記載を読んだ後に、本発明の精神および/または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者に示唆され得る。
【実施例】
【0116】
方法
酵素活性についてアッセイ
サンプルをトリスバッファーで適当に希釈して(通常5または10倍)0.5〜1mg/mlとし、その10μLを1.5mLエッペンドルフ管に分注する。各々の管に、390μLの温かい基質バッファー(通常は20mMクエン酸バッファー(pH4)中の20mMシュウ酸塩)を添加し、直ちにサーモミキサーに正確に10分間置き、その時点で100μLの0.5M H2SO4を添加する。産生する全ギ酸(formate)をHPLCにより直接測定する。イオン交換カラム(Aminex HPX-87H, BioRad)および20mM H2SO4のアイソクラチック(isocratic)勾配を使用して、ギ酸を210nmでのUVによって、通常14.3分に溶出するピークで検出する。
【0117】
安定性試験
約2〜約3のpHのバッファー中でのインキュベーション
OxDc遊離酵素またはポリマー材料中に包埋されたOxDc酵素を含有する問題の(in question)組成物を、pH範囲が2〜3の100mMグリシンバッファー中で一定時間インキュベーションした後、残存するOxDc活性を解析した。
【0118】
人工胃液中でのインキュベーション
約2mgのOxDc〜約20mgのOxDcを含有する粒子組成物を、USPに従って(つまり、2g NaCl, 3.2gペプシンおよび濃HCl 7mLを最終容量1L中に溶解することによって)調製した100mLの人工胃液を含む容器に入れた。適切な時間毎に、サンプルを採取し、そして上記のようにOxDc活性についてアッセイした。
【0119】
バッファー中でのインキュベーション
(人工胃液についての)上記と同様の手順。しかし、対象のpH値によって種々のバッファー溶液を採用した。適切なバッファーは、グリシンバッファー(pH2〜3)、酢酸バッファー(pH3〜6)、リン酸バッファー(pH5〜8)、ホウ酸バッファー(pH8〜9)等を含む。例えばペプシン等のプロテアーゼは、通常はUSP人工胃液に規定されている濃度に相当する濃度で添加され得る。
【0120】
実施例1
OxDcアルギン酸塩マイクロ粒子の調製、および種々のプロセスパラメーターが安定性に及ぼす影響
この実施例は、OxDcアルギン酸塩マイクロ粒子の調製および安定性を説明し、さらに、種々のプロセスパラメーターがマイクロ粒子に包埋されたOxDcの安定性に及ぼす影響を説明する。
【0121】
OxDcアルギン酸塩マイクロ粒子の調製
マイクロ粒子I−乳化1:
50mMクエン酸バッファー(pH3.9)中のアルギン酸塩(1.8%, w/v)とOxDc(10:1, v/v; 10mM Tris-HCl, pH3.9中、OxDc, 20mg/ml)との混合物11mlを、0.5%triton x-100を含有する鉱油20mlと、マグネット式攪拌機で600rpmで10分間混合して、安定な乳化状態に達し、次に、CaCl2鉱油エマルション4ml(0.2M CaCl2 2ml+鉱油2ml)を添加し、30分間攪拌を継続した。次に、キトサン鉱油エマルション8ml(0.8%キトサン4mlおよび鉱油4ml)を添加し、さらに30分間攪拌した。マイクロ粒子を遠心分離によって回収した。以下、これらのマイクロ粒子をマイクロ粒子Iと表示する。
【0122】
マイクロ粒子II−乳化2:
アルギン酸とOxDcとの混合物を10mM TrisHClバッファー(pH8)中としたことを除き、「乳化1」と全く同様である。以下、これらのマイクロ粒子をマイクロ粒子IIと表示する。
【0123】
キトサンコーティングOxDcアルギン酸塩マイクロ粒子−異なる濃度でのアルギン酸塩のゲル化(乳化)およびマイクロ粒子のキトサンによるさらなるコーティング:
アルギン酸塩(1.2%または3%;w/v)8mlを、50mM TrisHClバッファー(pH9)中のOxDc(16mg/ml)0.5mlと混合し、次に、0.8%triton x-100を含有する鉱油15mlと、マグネット式攪拌機で600rpmで10分間混合して、安定な乳化状態に達し、次に、CaCl2鉱油エマルション8ml(1M CaCl24ml+鉱油4ml)を添加し、30分間攪拌を継続し、次に攪拌しながら1M CaCl2 50mlを添加した。マイクロ粒子を遠心分離によって回収し、水で2回洗浄した。すべてのマイクロ粒子(約4ml)を、0.4%キトサン(pH5.45)36mlと4mlの4M CaCl2との混合液中に溶かし込み、200rpmで1時間振盪した。以下、これらのマイクロ粒子を、キトサンコーティングOxDcアルギン酸塩マイクロ粒子と表示する。
【0124】
この実施例において得られたすべてのマイクロ粒子の粒子サイズ分布は、約1〜100μmの範囲と推定される範囲であった。
【0125】
得られたマイクロ粒子を、上記の通り酵素活性についてアッセイした。全酵素活性は、酵素をポリマーマトリックスに包埋する前の酵素の酵素活性であり、この量を100%と設定する。以下の結果が得られた。
【0126】
全酵素活性の約40%および48%が、各々pH3.9(マイクロ粒子I)およびpH8(マイクロ粒子II)で調製したマイクロ粒子において見られた。2種類のマイクロ粒子の安定性は、3.2mg/mlのペプシンを用いてpH3で試験した。全酵素活性の約42%および60%が、各々1.2%および3%のアルギン酸塩で調製したキトサンコーティングOxDcアルギン酸塩マイクロ粒子において見られた。2種類のキトサンコーティングOxDcアルギン酸塩マイクロ粒子の安定性は、3.2mg/mlのペプシンを用いてpH3で試験した(図2)。
【0127】
図1は、ペプシンを含むpH3条件下での、マイクロ粒子I(pH3.9で調製)およびマイクロ粒子II(pH8で調製)内のOxDcの安定性のグラフである。四角はマイクロ粒子I、三角はマイクロ粒子IIである。図2は、ペプシンを含むpH3条件下での、キトサンコーティングOxDcアルギン酸塩マイクロ粒子中のOxDcの安定性に対する、アルギン酸塩マイクロ粒子を形成するためのアルギン酸塩濃度の効果を示すグラフである。四角は3%アルギン酸塩で形成したマイクロ粒子、黒塗りの丸は1.2%アルギン酸塩で形成したマイクロ粒子である。
【0128】
その結果、マイクロ粒子の調製中に示すpHは、インキュベーション中のOxDcの安定性に影響を及ぼすように思われ、つまり、pHの上昇が、安定性をよりよくするのに有利であり、そして、アルギン酸塩濃度の上昇もまた安定性に対して好影響を与えるようである。
【0129】
実施例2
OxDcナノ粒子の調製およびそのコーティング
この実施例は、OxDc含有ナノ粒子の調製およびその種々のコーティングを説明する。
【0130】
OxDcキトサン/トリポリリン酸ナノ粒子:
0.5mg/ml OxDcを含有する0.15%(w/v)のトリポリリン酸(TPP)(pH8.1、OxDcを添加する前にHClで調整)40mlを、0.13%(w/v)酢酸(pH3.92)中の0.18%(w/v)キトサン120ml中に滴下した。ナノ粒子を遠心分離によって回収し、そして、水で2回洗浄した。このプロセスは、約4mlのナノ粒子懸濁液を生じた。
【0131】
アルギン酸塩でコーティングされたOxDcキトサン/TPPナノ粒子:
0.8mlのナノ粒子懸濁液を、攪拌しながら10mlの水で希釈し、次に5mlの1.2%アルギン酸塩溶液(25mM TrisHClバッファー(pH8.6)中)を滴下により添加した。混合液を5分間攪拌し続けた。コーティングしたナノ粒子のサイズが、2〜400μm、大部分は30μmに増加したのは(図3を参照)、ナノ粒子の凝集およびアルギン酸塩による架橋結合のためである。マイクロ粒子を、3000gで3分間の遠心分離によって回収した。マイクロ粒子を水で2回洗浄し、再懸濁した。図3において、容積統計値(計算)17795s3_07_01.$1s。計算値は0.040μm〜2000μm。容積:100%;平均値:48.53μm;中央値:29.10μm;平均値/中央値の比:1.668;最頻値:28.70μm;標準偏差:65.43μm;変動係数:135%;歪度:4.384(右歪み);尖度:26.90(急尖度);d10 8.814μm;d50 29.10μm;d90 109.9μm。
【0132】
カラギーナンでコーティングしたOxDcキトサン/TPPナノ粒子:
0.8mlのナノ粒子懸濁液を、攪拌しながら水10ml中に希釈し、次に5mlの0.5%カラギーナン溶液(そのままでpH8.9)を滴下により添加した。混合液を5分間攪拌し続けた。コーティングナノ粒子はマイクロ粒子を形成し、そして、アルギン酸塩でコーティングしたものと同様の分布を有するはずである(上記参照)。マイクロ粒子を遠心分離によって回収し、水で2回洗浄して、再懸濁した。
【0133】
アルギン酸塩またはカラギーナンのどちらかでコーティングしたOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子を、異なるグルタルアルデヒド濃度でグルタルアルデヒドと架橋結合した:
0.2mlのマイクロ粒子懸濁液を、攪拌しながら水0.8ml中に希釈し、次に2mlの0.15〜7.5%グルタルアルデヒド溶液(50mM KPB(pH8.9)中)を添加および混合した。混合液を15〜40分間攪拌し続け、そしてマイクロ粒子を遠心分離によって回収し、水で2回洗浄した。
【0134】
グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子の還元
2つの異なる種のグルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子を調製した:1つはCaCl2の添加なしで架橋結合し、そしてもう一方は架橋結合反応(1%のグルタルアルデヒド)開始から10分後に1.2M CaCl2を添加した。架橋結合反応を1時間実施した後、マイクロ粒子を遠心分離によって回収し、そして水で2回洗浄した。2種類のマイクロ粒子を、100mMのKPB(pH7.5)中にさらに懸濁した。一定量のNaBH4粉末を懸濁溶液に添加して、最終濃度を20mM NaBH4とし、暗下で14時間、振盪し続けた。
【0135】
以下の結果が得られた:
OxDcキトサン/TPPナノ粒子:
ナノ粒子はあまりに小さいため、光学顕微鏡下で視覚的に観察できなかった。OxDcは、ほとんど100%が現条件においてナノ粒子によってトラップされた。これらの条件下において、OxDcを高pH(8.6)のTPPで溶解し、そして次に低pH(3.92)のキトサン溶液中に滴下した。高pHから低pHに溶解する酵素の広い選択性は、ナノ粒子形成時においてナノ粒子内に酵素を維持する一因である。pH3.0でのOxDcキトサン/TPPナノ粒子内のOxDcの安定性は、実施例1および図1のマイクロ粒子Iとマイクロ粒子IIとの間であった。
【0136】
アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子:
pH3.0でのOxDcの安定性は、アルギン酸塩コーティングを利用した場合に、非コーティングナノ粒子と比較してさらに向上した。図4を参照せよ。ここで、四角は非コーティングナノ粒子、黒塗りの丸はアルギン酸塩コーティングしたマイクロ粒子、そして三角はカラギーナンコーティングしたマイクロ粒子である。
【0137】
カラギーナンコーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子:
pH3.0でのOxDcの安定性は、カラギーナンコーティングを利用した場合に、(非コーティングナノ粒子と比較して)さらに向上した(図4)。
【0138】
異なるグルタルアルデヒドの濃度で、粒子全体がグルタルアルデヒドと架橋結合する、アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子:
(いかなる理論にも束縛されることを望まないが、グルタルアルデヒド架橋結合は主にキトサン分子内で、キトサン分子の自身への結合および互いの結合で、ならびにキトサン分子と酵素分子との間で生じると考えられている。)
架橋結合を付加したアルギン酸塩コーティングマイクロ粒子は、低pHにおいて、アルギン酸塩コーティングのないナノ粒子より高い安定性を示した。高レベルの架橋結合は、低pHでのアルギン酸塩コーティングマイクロ粒子内のOxDc安定性を向上させた(図5)。最も安定なマイクロ粒子は、ペプシンを含むpH2.6の溶液中に、活性を損なうことなく4時間浸しておくことができる。活性は、ペプシンを含むpH2.4において3.5時間インキュベーション後、約30%であった。図5を参照せよ。これは、ペプシンを含むpH2.4での、グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子中のOxDcの安定性に対する、架橋結合についてのグルタルアルデヒド濃度の効果を示す。四角は非アルギン酸塩コーティングの1%グルタルアルデヒド、黒塗りの丸は0.5%グルタルアルデヒド、上向きの三角は1%グルタルアルデヒド、および下向きの三角は2%グルタルアルデヒド、ならびにひし形は5%グルタルアルデヒドである。
【0139】
グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子の還元:
シッフ塩基(Schiff's)の二重結合の還元後の、グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子の低pH下における安定性は、顕著に向上した。架橋結合中にCaCl2を添加したグルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子は、120分後に80%のOxDc活性を失い、一方、CaCl2を添加しなかったマイクロ粒子はpH約2.0下で、非常に短時間で80%の活性を失った。詳細には、図6を参照せよ。これはpH2.2および1.85での2種類の架橋結合および還元マイクロ粒子におけるOxDcの安定性を示すグラフであり、ここで、四角はCa2+なしのpH2.2、黒塗りの丸はCa2+を添加したpH2.2、上向きの三角はCa2+なしのpH1.85、および下向きの三角はCa2+存在下のpH1.85である。
【0140】
上記の一連の実験から、還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子の製剤を、さらなる開発に選択した。
【0141】
実施例3
人工胃内条件下において食物からシュウ酸塩を除去するin vitro試験のための実験
還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子のin vitro試験
10、20および40gのホウレンソウを、12mlの人工胃液(stomach juice)(胃液(gastric fluid))(3.2mg/mlのペプシンを含む84mM HCl)と各々混合した。次に、水を添加して、最終容量を各々40、80および160mlとした。ホウレンソウ、人工胃液および水を均一化した後、還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子を添加して、ホウレンソウから放出されるシュウ酸塩を分解した。3つすべての条件について、ホウレンソウ/マイクロ粒子の(用量)比は、200(200gのホウレンソウを1gのマイクロ粒子と混合した)である。ホウレンソウをこの実験に選択したのは、大量のシュウ酸塩を含むためである(凍結ホウレンソウ葉中に、約200mMのシュウ酸塩)。
【0142】
結果および考察:
可溶性シュウ酸塩の量は、pHによって顕著に影響を受ける。pH値は、10、20および40gのホウレンソウの条件に対して、各々2.5、3.5および4.2であった。可溶性シュウ酸塩の初期濃度は、10、20および40gのホウレンソウの条件に対して、各々30.0、22.8および14.7mMであった(図7)。すべてのシュウ酸塩が可溶性であれば、その濃度は約48mMとなるはずである。従って、3つすべての条件下において、不溶性のシュウ酸塩が存在した。図7は、初期の可溶性シュウ酸塩は、数分間でほとんど完全に除去されたことを示唆する。残った可溶性シュウ酸塩は、0には下がらなかったが、期間中、低レベルで維持され、これは、より可溶性であるシュウ酸塩が除去された場合に不溶性シュウ酸塩が溶解し始めたためである。図7は、シュウ酸塩(可溶性部分)の生物学的利用能が3つすべての条件下で迅速に低下したことを示す。四角は0.05gの洗浄マイクロ粒子を含む10gのホウレンソウ、ひし形は0.1gの洗浄マイクロ粒子を含む20gのホウレンソウ、上向きの三角は0.2gのマイクロ粒子を含む40gのホウレンソウである。
【0143】
OxDcマイクロ粒子は、ますます可溶性シュウ酸塩を除去し続けた(図8)。1時間後、第1の条件(四角)のホウレンソウ中のほぼすべてのシュウ酸塩、および第2の条件(ひし形)の約90%が除去された。第3の条件(三角)については、たった50%のシュウ酸塩が除去されたが、可溶性部分は0に近かった。従って、3つすべての条件下において、シュウ酸塩の吸収も胃腸管において効果的に制限され得るものであり、これは、可溶性シュウ酸塩濃度が非常に低く、そしてシュウ酸塩の大部分が減少したからである。図8は、3つの異なる人工条件において、マイクロ粒子によって除去されたホウレンソウ中の全可溶性シュウ酸塩の経時変化のグラフである。各々のホウレンソウサンプル内の全シュウ酸塩濃度は、約50mMであった。四角は0.05gのマイクロ粒子を含む10gのホウレンソウ、ひし形は0.1gのマイクロ粒子を含む20gのホウレンソウ、上向きの三角は0.2gのマイクロ粒子を含む40gのホウレンソウである。
【0144】
これらの結果をin vivoでの治療を想定するのに用いる場合、胃に120mlの胃液を含む人が、全部で400gのホウレンソウを摂取し始めると仮定する。100gのホウレンソウを摂取した後、4gのマイクロ粒子を服用する。ほぼすべての可溶性シュウ酸塩が2分間以内に除去されるだろう。400gを食べるまでホウレンソウの摂取は継続するが、可溶性シュウ酸塩は、食べている間3mM以下に維持され、食後迅速に0に減少する。
【0145】
実施例4
本発明の製剤化OxDc
I.製剤化OxDc(マイクロ粒子)の調製、および低pHでのその安定性の試験
還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子は、以下のように作製した:
1.OxDcキトサン/TPPナノ粒子を、トリポリリン酸(TPP)溶液をキトサンとOxDcとの混合物中に滴下して形成する。
2.アルギン酸塩溶液を上記懸濁液に添加することにより、上記のナノ粒子をアルギン酸塩によってコーティングする。ナノ粒子の凝集およびこのプロセル中に生じるアルギン酸塩による物理的架橋結合のために、ナノ粒子はマイクロ粒子を形成する。
3.上記マイクロ粒子をグルタルアルデヒドによって架橋結合する。
4.シッフ塩基をNaBH4によって還元する。
【0146】
実施例2の記載に従って調製した。
【0147】
低pHでの遊離OxDcまたは製剤化OxDcの安定性試験:
遊離の酵素としてのOxDcまたはこのマイクロ粒子中のOxDcを、100mMグリシンバッファー中、pH2〜3の範囲で一定時間インキュベーションした後、残存OxDc活性を解析した。図9は、グルタルアルデヒド(0.5〜5%)での架橋結合が、pH2.4およびペプシン存在下でのアルギン酸塩コーティングキトサン/TPPマイクロ粒子中のOxDcの安定性を向上させることを示すグラフである。四角は0%グルタルアルデヒド、黒塗りの丸は0.5%グルタルアルデヒド、上向きの三角は1%グルタルアルデヒド、およびひし形は5%グルタルアルデヒドである。
【0148】
図9に示すように、四角で示される架橋結合のない(対照)アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子は、pHが2.4で15分未満で完全に崩壊する。一方、0.5〜5%のグルタルアルデヒドでの架橋結合は、アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子の酵素活性を、2時間まで安定化する。天然の(非製剤化、遊離、非包埋)OxDcは、pH<3.0で不可逆的に不活性化することが知られる。グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子の安定性は、これらのマイクロ粒子中のシッフ塩基の還元後にさらに向上した(図10)。
【0149】
図10は、シッフ塩基の還元が、pH2.2およびペプシン存在下(四角)でのグルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子中のOxDcの安定性を向上させることを示すグラフである。マイクロ粒子は、pH<2.0で急速に不活性化する(三角)。
【0150】
還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子は、pHが2.2程度の低さで安定性を維持する。非製剤化酵素(遊離、非包埋)はpH<3.0で不可逆的に不活性化するため、これは顕著な向上である。
【0151】
II.OxDcマイクロ粒子によるシュウ酸塩の分解に関する研究
A.低濃度範囲におけるシュウ酸塩(シュウ酸ナトリウムとして)の分解:
2mgまたは20mgのOxDcを含有するOxDcマイクロ粒子(上記の実施例4のIに記載するように調製したもの)を、0.05〜2mMの濃度のシュウ酸塩溶液100mlと、pH3、37℃で混合した。生じたギ酸(formate)を一定時間測定した。
【0152】
図11AおよびBに示すように、還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子は、少なくとも0.05mM〜2.0mMの濃度範囲のシュウ酸塩を分解することができる。
【0153】
ヒトの胃内の0.05mM〜2.0mMのシュウ酸塩濃度は、食事摂取の5mg〜180mgのシュウ酸塩および想定胃容量1Lに相当する。欧米の食事におけるシュウ酸塩の平均的な日常摂取は、食事全体で100〜500mg/日となると報告される。摂取は、ホウレンソウ等の相当な高シュウ酸塩を含む食物を食べた場合に、非常に高くなり得る。ホウレンソウ由来の15〜30mMの範囲のシュウ酸塩の分解も調査され、そして以下に記載する。
【0154】
図11AおよびBは、pH3で還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子によって除去されたシュウ酸塩を示すグラフである。Aは、シュウ酸塩溶液100ml中の20mg OxDcに相当するマイクロ粒子であり;Bは、シュウ酸塩溶液100ml中の2mg OxDcに相当するマイクロ粒子である。四角は、0.05mMシュウ酸塩濃度、黒塗りの丸は0.2mMシュウ酸塩濃度、上向きの三角は1.0mMシュウ酸塩濃度、そして下向きの三角は2.0mMシュウ酸塩濃度である。
【0155】
20mgのOxDc(1.0mlのマイクロ粒子製剤中の酵素タンパク質の推定量)は、2分間以内に0.05mM〜2mMのシュウ酸塩をほぼ完全に分解した。
【0156】
人工胃内条件におけるホウレンソウシュウ酸塩の分解:
人工胃液とホウレンソウを混合:10g、20gおよび40gのホウレンソウを12mlの人工胃液(3.2mg/mlペプシンを含む84mM HCl)と混合し、次に水を添加して各々最終容量を40ml、80mlおよび160mlとした。
【0157】
OxDcによるシュウ酸塩の除去:ホウレンソウ、胃液および水の懸濁液を均一化した後、OxDcマイクロ粒子を添加して、ホウレンソウから放出されるシュウ酸塩を分解した。3つすべての条件について、ホウレンソウ/OxDcの(用量)比は、およそ2000(2000gのホウレンソウを1gのOxDcの活性を有するマイクロ粒子と混合した)である。
【0158】
上記の調製物のすべてにおいて算出した全シュウ酸塩は、50mMであった(ホウレンソウは18g/kgの全シュウ酸塩を含むと報告される)。ホウレンソウの存在による胃液の異なる緩衝レベルのために、3つのホウレンソウ懸濁液の最終pHは、各々2.5、3.5および4.2であった。溶媒のpHは、可溶性シュウ酸塩の利用性に影響を与えることが知られ、従って、試験された3つの調製物における生物学的に利用可能なシュウ酸塩の濃度は、各々30mM(四角)、22mM(ひし形)、および15mM(三角)であった(図12)。
【表1】
【0159】
図12Aは、3つすべての条件下で迅速に減少したシュウ酸塩(可溶性部分)の生物学的利用能を示すグラフであり;12Bは、除去された全シュウ酸塩の割合を示す。四角は5mgのOxDcと等しい量(酵素活性による)のマイクロ粒子と10gのホウレンソウ;ひし形は10mgのOxDcと等しい量のマイクロ粒子と20gのホウレンソウ、上向きの三角は20mgのOxDcと等しい量のマイクロ粒子と40gのホウレンソウである。
【0160】
OxDcを含有するマイクロ粒子は、pHが2.5〜4.2の範囲の人工胃内条件(図12AおよびBを参照)またはpH3のバッファー(図11AおよびB)において、0.05mM〜30mMの広範囲のシュウ酸塩濃度を分解することが可能であった。この一連の実験から、OxDcを含む20mgのマイクロ粒子(1.0ml懸濁液中)は、180mgのシュウ酸塩を30分以内に分解することが可能であると推定され得る。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1は、ペプシンを含むpH3での、マイクロ粒子I(pH3.9で調製)およびマイクロ粒子II(pH8で調製)中のOxDcの安定性を示すグラフである。
【図2】図2は、ペプシンを含むpH3での、キトサンコーティングOxDcアルギン酸塩マイクロ粒子中のOxDcの安定性に対する、アルギン酸塩マイクロ粒子の形成のためのアルギン酸塩の濃度の影響を示すグラフである。
【図3】図3は、本明細書の実施例2に従って調製した粒子の粒子サイズ分布を示すグラフである。図3は、容積統計値(計算)17795s3_07_01.$1sを示す。計算値は0.040μm〜2000μm。容積:100%;平均値:48.53μm;中央値:29.10μm;平均値/中央値の比:1.668;最頻値:28.70μm;標準偏差:65.43μm;変動係数:135%;歪度:4.384(右歪み);尖度:26.90(急尖度);d10 8.814μm;d50 29.10μm;d90 109.9μm。
【図4】図4は、ペプシンを含むpH3での、キトサン/TPPナノ粒子中のOxDcの安定性に対する、アルギン酸塩またはカラギーナンによるコーティングの効果を示すグラフである。
【図5】図5は、ペプシンを含むpH2.4での、グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子中のOxDcの安定性に対する、架橋結合のためのグルタルアルデヒド濃度の影響を示すグラフである。
【図6】図6は、pH2.2および1.85での、2種類の架橋結合および還元マイクロ粒子における、OxDcの安定性を説明するグラフである。
【図7】図7は、本発明の組成物の投与後のシュウ酸塩(可溶性部分)の生物学的利用能を示すグラフである。
【図8】図8は、3つの異なる人工条件下でマイクロ粒子によって除去される、ホウレンソウ中の全可溶性シュウ酸塩の経時変化を説明するグラフである。
【図9】図9は、pH2.4およびペプシン存在下で、キトサンマイクロ粒子中のグルタルアルデヒド(1〜5%)による架橋結合の効果を示すグラフである。
【図10】図10は、異なるpHおよびペプシン存在下での、グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子中のシッフ塩基の還元を説明するグラフである。
【図11】図11AおよびBは、pH3で、還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子によって除去されるシュウ酸塩を示すグラフである。
【図12】図12Aは、本発明の組成物の投与後のシュウ酸塩(可溶性部分)の生物学的利用能を示すグラフである。図12Bは、除去された全シュウ酸塩の割合を説明するグラフである。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2005年12月16日出願の米国特許仮出願第60/750,896号に基づく優先権を主張するものであり、その全体を本明細書に組み入れる。
【0002】
発明の分野
本発明は、1以上のシュウ酸塩分解酵素がその効果を発揮する胃へ活性型の酵素を送達するための、1以上のシュウ酸塩分解酵素を含む組成物に関する。従って、本発明は胃内のシュウ酸塩を低減化する方法である。本発明の組成物は、第1のポリマー材料に包埋された1以上のシュウ酸塩分解酵素を含有する粒子を含み、ここで、包埋酵素は、USP人工胃液中で37℃で少なくとも60分間、同様の条件下でのインキュベーションに際して、同じバッチから得た1以上の非包埋遊離酵素の活性の少なくとも2倍の活性を維持する。
【0003】
本発明の背景
腎/尿路結石疾患(尿石症)は、世界中で主要な健康問題のひとつである。尿石症に関連する結石の多くは、シュウ酸カルシウムのみ、またはシュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムとから構成される。他の疾患もまた、過剰なシュウ酸塩に関連付けられてきた。これらは、外陰部痛、末期の腎臓病に伴うシュウ酸症、心臓伝導障害、クローン病および他の腸の病状を含む。
【0004】
シュウ酸および/またはその塩であるシュウ酸塩は、多種多様な食物中に見られ、ゆえに、ヒトおよび動物の食事における多くの構成物質の成分である。シュウ酸塩の吸収の増加は、シュウ酸を多く含む食物を摂取した後に起こり得る。ホウレンソウおよびルバーブ等の食物は、多量のシュウ酸塩を含むことがよく知られているが、しかし、数多くの他の食物および飲料もまたシュウ酸塩を含む。シュウ酸塩は、そのような多種多様な食物に見られるため、シュウ酸塩が少なく、かつ美味でもある食事を作るのは困難である。さらに、低シュウ酸塩の食事を遵守することは困難であることが多い。
【0005】
腎結石の形成に対する危険性は、未だ完全に理解されていない多くの因子による。腎臓または尿路結石疾患は、西欧諸国の12%もの人々に発症し、これらの結石の約70%がシュウ酸カルシウムまたはシュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムから構成される。ある個体(例えば、クローン病、炎症性腸疾患または脂肪便症等の腸疾患を患う患者、および空回腸バイパス手術を受けた患者も)は、他人よりも多くシュウ酸塩を食事から吸収する。これらの個体については、シュウ酸塩尿結石症の罹患率が顕著に増加する。疾患の罹患率増加は、腎臓および尿中シュウ酸塩レベルの増加によるもので、これは、ヒトにおいて最も一般的な高シュウ酸尿症候群であり、腸管高シュウ酸尿症として知られる。シュウ酸塩はまた、末期の腎臓病を患う患者においても問題であり、尿中のシュウ酸塩の増加はまた膣前庭炎(外陰部痛)にも関与するという最近の証拠がある。
【0006】
シュウ酸塩分解細菌を含有する腸溶性コーティング組成物は、シュウ酸塩濃度を低下させることが示唆されている。しかし、腸溶性コーティング組成物は、無傷形態(つまりコーティングが無傷であり、従って胃においてはシュウ酸塩が分解され得ない)で胃を通過する。従って、特に食餌性シュウ酸塩を分解するために、胃にすでに存在するシュウ酸塩の分解が可能である組成物を開発する必要性が依然としてある。さらに、そのような組成物は、再発性結石症を引き起こす高シュウ酸尿症等の腸管高シュウ酸尿症および吸収性高シュウ酸尿症の治療に用いるのに適している。このような治療を行う対象は、正常な尿中シュウ酸塩レベルを有する患者である。
【0007】
発明の概要
本発明は、シュウ酸塩関連症状を治療および予防する組成物および方法を包含する。本発明の組成物は、シュウ酸塩を減少させる酵素を含有する。本発明の方法は、シュウ酸塩関連症状を治療または予防するために組成物を投与することを含み、およびそのような組成物を製造および使用する方法を包含する。本発明の組成物は、低pHおよびプロテアーゼの存在下等の胃内条件下でシュウ酸塩を減少させる。本発明の組成物は、ヒトおよび他の動物の胃内シュウ酸塩を減少させる。組成物は、非全身性のシュウ酸塩(例えば、胃腸管内の、特に胃内のシュウ酸塩)を減少させ、外因性のシュウ酸塩(例えば食物由来の)が体循環に入るのを防ぐ。
【0008】
本発明の組成物は、第1のポリマー材料中に包埋された1以上の酵素を含有する粒子を含み、ここで、人工胃液(84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン、pHが1.0〜4.0の範囲)中で37℃で少なくとも60分間、包埋酵素および非包埋(遊離)酵素の双方をインキュベーションした後で、包埋酵素は、同じバッチ由来の1以上の非包埋酵素の活性の少なくとも2倍の活性を維持する。組成物は、第2のポリマー材料でさらにコーティングされ得る粒子を含む。組成物はまた、架橋され得るポリマー材料を含んでもよく、任意に架橋結合が還元され得る。特定の実施形態において、第1のポリマー材料は、キトサン、アルギン酸塩、ペクチン、またはヒアルロン酸である。1以上の酵素および第1のポリマー材料に加え、粒子組成物はまた、例えばpH調整剤、緩衝化剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤、酵素のための補因子、または例えば充填剤、希釈剤、担体等の1以上の医薬上許容され得る賦形剤などの1以上の添加剤も含み得る。
【0009】
本発明の方法は、非全身的な治療のための組成物を提供することを包含し、例えば、胃腸管からのシュウ酸塩の吸収を回避するために、胃内のシュウ酸塩を減少させることのできる組成物を提供することを包含する。本組成物は、胃内の酸性で酵素を損傷させる環境から、組成物中に包埋されたシュウ酸塩低減酵素を保護し、そしてそのような厳しい環境において酵素活性を維持する。治療および予防の方法は、本明細書に教示される組成物を提供することを含み、ここで、1以上のシュウ酸塩分解酵素が第1のポリマー材料中に包埋され、任意に、得られた粒子が第2のポリマー材料でコーティングされており、任意に第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料が架橋結合しており、そして任意に架橋結合が還元される。
【0010】
本発明の組成物は、シュウ酸塩関連症状の治療または予防の方法に適しており、これらのシュウ酸塩関連症状は、高シュウ酸尿症、吸収性高シュウ酸尿症、腸管高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、外陰部痛、末期の腎臓病に伴うシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ならびに空回腸バイパス手術および肥満症治療手術(肥満のための手術)を受けた患者および/または抗生物質治療を受けた患者を含むが、これらに限定されない。治療または予防の方法は、対象の胃内のシュウ酸塩を減少させるために、有効量の本発明の組成物を対象へ経口投与することを包含し、従って対象の全体的なシュウ酸塩負荷を、効率的かつ効果的に減少させる。このような組成物は、経口投与に対して医薬上許容され得る。
【0011】
本発明の組成物および方法において使用される酵素は、シュウ酸塩低減酵素であり、シュウ酸オキシダーゼ、シュウ酸デカルボキシラーゼ(本文脈において、OxDcと略記する)、オキサリルCoAデカルボキシラーゼ、またはホルミルCoAトランスフェラーゼ、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。さらに、シュウ酸塩分解経路の置換成分であるか、またはシュウ酸塩代謝経路、特にシュウ酸塩低減に関与する他の酵素、補因子および補酵素はまた、単独で、または1以上のシュウ酸塩低減酵素との組み合わせで用いるのに適している。本発明において、本明細書の定義に包含される酵素(タンパク質)だけでなく、シュウ酸塩低減化遺伝子およびタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列もまた、本発明によって企図される。本発明はまた、これらの酵素のあらゆる結合パートナーも企図し、そして、酵素に結合するかまたは酵素と相互作用する抗体および抗体断片を含む。
【0012】
本酵素は、生物からの単離によって得てもよく、これらは精製されてもよく、合成的に、半合成的に、または組換え法によって作製してもよく、または細胞溶解物として使用してもよい。本組成物に使用する酵素は、精製した組換えタンパク質であり得るが、酵素は安全な特定の細菌によっても作製することができるため、これらの細菌を全細胞または溶解物として使用することも企図する。
【0013】
シュウ酸塩分解酵素は、通常、標準食に通常存在する実質的にすべてのシュウ酸塩を分解するのに十分な量で本発明の組成物中に存在する。食品の選択によって、平均的な欧米の食事には、100〜300mgのシュウ酸塩/日が含まれ得る。一般的に、酵素を含む約0.2gの粒子(1mLの粒子懸濁液中の20mgのOxDcと等しい)が、人工胃内条件において、30分間以内に180mgのシュウ酸塩を除去し得る。
【0014】
本発明の1つの態様は、第1のポリマー材料に包埋された1以上のシュウ酸塩分解酵素を含有する粒子を含む組成物を包み、ここで、包埋酵素は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシンを含む、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5等、例えばpH約3)のUSP人工胃液中、37℃で少なくとも60分間のインキュベーションに際して、同じバッチ由来の1以上の非包埋遊離酵素の活性の少なくとも2倍の活性を維持する。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、シュウ酸塩関連症状を治療または予防するための組成物および方法を包含する。本発明の組成物は、シュウ酸塩を減少させる酵素を含む。本発明の組成物は、仮に組成物が胃内環境に曝露されても、酵素がそれらの活性を維持するように設計される。本発明の方法は、シュウ酸塩関連症状を治療または予防するための組成物を投与することを含み、およびそのような組成物を製造および使用する方法を包含する。さらに具体的には、本発明は、胃内条件下においてシュウ酸塩を減少させることが可能となるように設計され、その結果、すでに胃にあるシュウ酸塩を減少させることを可能とする組成物に関する。このような組成物は、特に、非全身的なシュウ酸塩(例えば、胃腸管内、特に胃内のシュウ酸塩)を減少させるように設計され、そして外因性のシュウ酸塩(例えば、食物由来の)が体循環に入るのを防ぐ。
【0016】
上記の通り、本発明の背景は、食餌性シュウ酸塩を分解するために、シュウ酸塩分解酵素を胃に投与することを可能とし、胃および腸管からのシュウ酸塩の吸収を防ぐ必要性であり、例えば、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、ならびに特に吸収性高シュウ酸尿症および腸管高シュウ酸尿症等のシュウ酸塩関連疾患および障害を予防する。投与された酵素は、胃の胃内条件下、つまり、低pHおよびペプシンの存在下で起こる、タンパク質分解および/またはpHもしくは酸性依存的分解から保護される。
【0017】
このように、本発明は組成物に関し、ここで、酵素は胃内条件下での分解から酵素を保護するポリマー材料中に包埋される。この組成物は、任意の酵素を含み得ることが想定され得るが、本発明の目的のために、例えば、シュウ酸デカルボキシラーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、またはオキサリルCoAデカルボキシラーゼとホルミルCoAトランスフェラーゼとの組み合わせ、あるいはこれらの任意の組み合わせ等のシュウ酸塩分解酵素が、本発明によって企図される。
【0018】
本発明の組成物は、第1のポリマー材料中に包埋された1以上の酵素を含有する粒子を含み、ここで、包埋酵素は、人工胃液(84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン、pHが1.0〜4.0の範囲)中で37℃で少なくとも60分間、包埋酵素および非包埋(遊離)酵素の双方をインキュベーションした後で、同じバッチ由来の1以上の非包埋酵素の活性の少なくとも2倍の活性を維持する。粒子はさらに第2のポリマー材料によりコーティングされ得る。本明細書で使用する用語「同じバッチ由来の酵素」は、同一条件下で単離または合成された酵素、そして通常は同じ単離手段もしくは合成手段で単離または合成された酵素を意味し、ここで、得られた酵素組成物を通常、バッチと呼ぶ。例えば、酵素溶液を2つに分け、ここで、一方の酵素が粒子内に包埋されてさらなる処理を受けてもよく、そしてもう一方の酵素が別に処理されるが、これらの酵素は同じバッチ由来であるとみなされる。
【0019】
通常、治療の目的が全身的か非全身的かによって、シュウ酸塩関連疾患の治療の異なる2つの手段が採用され得る。本発明の方法は、非全身的な治療をするための組成物を提供する(つまり、胃腸管からのシュウ酸塩の吸収を回避するために、胃内のシュウ酸塩を減少させることが可能な組成物を提供する)。発明者らの知る限りでは、そのような組成物は新規であり、一方では胃内の酸性で酵素を損傷させる環境から酵素を保護し、もう一方では酸性環境においてさえも酵素活性を維持するという、新規の原理に基く。この目的は、1以上のシュウ酸塩分解酵素を第1のポリマー材料中に包埋すること、任意に、得られた粒子を第2のポリマー材料でコーティングすること、任意に第2のポリマー材料を架橋結合すること、任意に架橋結合しコーティングした粒子を還元することによって達成され得る。
【0020】
1つの実施形態において、シュウ酸塩吸収の低減は、シュウ酸塩分解酵素を胃腸管、特に胃へ提供することによって達成される。本発明の組成物は、シュウ酸オキシダーゼ、シュウ酸デカルボキシラーゼ、オキサリルCoAデカルボキシラーゼ、もしくはホルミルCoAトランスフェラーゼ、またはこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されないシュウ酸塩低減酵素を含む。これらの酵素は、シュウ酸塩を基質として使用する。本発明の方法は、胃内の食餌性シュウ酸塩を分解するための酵素組成物を提供し、従って、胃内で吸収可能なシュウ酸塩の濃度を低下させることを包含する。これは、腸に入って胃腸管のこの部分で吸収されるシュウ酸塩の量も減少させるだろう。吸収経路に加え、シュウ酸塩分泌経路が、最近、ヒトの胃において同定された。本発明の組成物はまた、体循環から胃に分泌されるシュウ酸塩の分解に有用であり、従って、本発明の方法は、個体のシュウ酸負荷の全体的な減少を企図する。
【0021】
別の実施形態において、本発明は有効量のシュウ酸塩低減酵素を、ヒトまたは動物、特にシュウ酸塩関連疾患のリスクが増加しているヒトまたは動物の胃に送達するための組成物および方法を提供する。酵素活性は、胃においてシュウ酸塩を分解するために、ならびに胃および腸内に存在するシュウ酸塩の量を減少させるために用いられ、その結果、吸収可能なシュウ酸塩の量を減少させる。胃腸管における低レベルのシュウ酸塩もまた、シュウ酸塩分泌経路を介した血液から腸へのシュウ酸塩排出の増加をもたらし得る。
【0022】
本発明の組成物は、高シュウ酸尿症、吸収性高シュウ酸尿症、腸管高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、外陰部痛、末期の腎臓病に伴うシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ならびに空回腸バイパス手術および肥満症治療手術(肥満のための手術)を受けた患者および/または抗生物質治療を受けた患者を含むが、これらに限定されない、シュウ酸塩関連症状における使用に適している。
【0023】
本発明の組成物の特徴は、ペプシン等のプロテアーゼによる分解または酸性環境による分解を含むが、これらに限定されない胃内環境において見られるような条件による分解から、シュウ酸塩分解酵素を保護する粒子の能力である。
【0024】
本明細書で用いる用語「シュウ酸塩分解酵素」は、シュウ酸塩を減少させることが可能なあらゆる酵素を意味することを意図する。これは、それ自体がシュウ酸塩を減少させ得るか、および/またはシュウ酸塩低減化経路で機能し得る。本発明は、任意の既知のシュウ酸塩低減酵素または分解酵素の使用を企図し、そして「シュウ酸塩低減」および「シュウ酸塩分解」等の用語は、本明細書において同じ意味で用いられる。
【0025】
本発明の組成物および方法において使用される酵素は、シュウ酸オキシダーゼ、シュウ酸デカルボキシラーゼ(本文脈において、OxDcと略記する)、オキサリルCoAデカルボキシラーゼ、もしくはホルミルCoAトランスフェラーゼ、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。さらに、シュウ酸塩分解経路の置換成分であるか、またはシュウ酸塩代謝経路、特にシュウ酸塩の低減に関与する他の酵素、補因子および補酵素はまた、単独で、または1以上の上記酵素との組み合わせで用いるのに適している。本文脈において、この定義に包含される酵素だけでなく、シュウ酸塩低減遺伝子およびタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列もまた、本発明によって企図される。本発明はまた、これらの酵素のあらゆる結合パートナーも企図し、そして、酵素に結合するかまたは酵素と相互作用する抗体および抗体断片を含む。
【0026】
本酵素は、生物からの単離によって得てもよく、これらを精製してもよく、合成的に、半合成的に、または組換え法によって作製してもよく、または細胞溶解物として使用してもよい。通常は、本酵素は精製した組換えタンパク質として使用されるであろうが、酵素は安全な特定の細菌によっても作製することができるため、これらの細菌を全細胞または溶解物として使用することも企図する。本発明の組成物の医学的使用のために、使用する1以上の酵素は、純度および活性に関して明確であることが好ましい。細胞溶解物を使用するならば、シュウ酸塩低減作用を有するあらゆる微生物(例えばO.フォルミジェネス(O.formigenes))から作製され得る。
【0027】
本発明の組成物はまた、酵素活性を向上させ得る1以上の追加因子を含み得る。これらの追加因子は、例えばオキサリルCoA、MgCl2、および/またはチアミン二リン酸(ビタミンB1の活性型)であり得る。
【0028】
特定の実施形態において、シュウ酸塩分解酵素の3つの主なクラスからの1以上の酵素を使用する。
【0029】
シュウ酸塩分解酵素の3つの主なクラスは、以下を含む。第1は、シュウ酸オキシダーゼであり、高等植物において発現し、そしてH2O2の同時生成を伴う、シュウ酸塩のCO2への酸素依存性酸化を触媒する。この反応は、尿中のシュウ酸塩レベルを検出するための現在のアッセイの基礎を成す。高速三段階精製法が、オオムギの根からシュウ酸オキシダーゼを得るために開発されている。この酵素はまた、ビーツの茎および根、ハゲイトウ(amaranthus)の葉、ソルガム、および他の多くの穀物にも存在する。
【0030】
シュウ酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.2)は、シュウ酸塩代謝酵素の第2のクラスであり、主に種々の菌類に存在する。ミロテシウム・ベルカリア(Myrothecium verrucaria)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の特定の株、白色腐朽菌、コリオルス・ベルシカラー(Coriolus versicolor)、およびコリビア・ベルティペス(Collybia velutipes)等のいくつかの菌類において報告および特徴付けられている。この酵素は、酸素依存性反応においてシュウ酸(oxalate)をギ酸(formate)および二酸化炭素に変換する。シュウ酸デカルボキシラーゼはまた、血中および尿中のシュウ酸塩の臨床検査に使用されており、そして食物内および環境内のシュウ酸塩レベルを低下させるのに使用され得る。最初の細菌性シュウ酸デカルボキシラーゼは、枯草菌(Bacillus subtilis)の細胞質ゾルタンパク質として発現するYvrK遺伝子の産物として最近記載された。YvrKタンパク質(枯草菌のシュウ酸デカルボキシラーゼ)は大腸菌(E.coli)において機能性組換えタンパク質として発現し、均質に精製され、十分に特徴付けられている。
【0031】
第3のクラスは、細菌性酵素、オキサリルCoAデカルボキシラーゼであり、これはCoA活性化基質に作用し、そしてこれをホルミルCoAに変換する。次に、ホルミルCoAトランスフェラーゼは、CoA上でギ酸(formate)とシュウ酸(oxalate)を交換するように作用する。これらの酵素は、シュウ酸塩分解細菌である、土壌において普通に見られるシュードモナス・オキサラチカス(Pseudomonas oxalaticus)、ならびに脊椎動物およびヒトの胃腸管に存在するオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)において研究されている。
【0032】
これらの酵素は、"The enzymes of oxalate metabolism: Unexpected structures and metabolism" Svedruzic D.ら Arch Biochem Biophys. 2005 Jan 1; 433(1):176-92に十分に概説されており、本明細書にその全体が組み込まれる。酵素は、天然酵素、単離タンパク質、または組換え技術によって作製されたものであってもよく、組換え手段または化学的手段によって修飾してもよく、そして側基または他の付加分子を含み得る。例えば、酵素は他の分子または化合物と連結するためのリンカー分子を有するように修飾され得る。
【0033】
本発明の特定の実施形態において、シュウ酸塩レベルの減少は、例えば、シュウ酸塩分解酵素を発現するように形質転換された大腸菌または他の微生物等の、組換え手段によって生産されたシュウ酸塩分解酵素を使用することによって達成される。
【0034】
本発明に関連する組換え酵素の例示は:
i)例えば以下の配列の1つを有するオキサリルCoAデカルボキシラーゼ:
http://www.expasy.org/uniprot/P40149
UniProtKB/TrEMBL登録受付番号P40149
配列番号1
【化1】
【0035】
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=nucleotide&cmd=search&term=M77128&doptcmdl=GenBank
GenBank登録番号M77128
配列番号2
【化2】
【0036】
ii)例えば以下の配列を有するホルミルCoAトランスフェラーゼ:
http://www.expasy.org/uniprot/O06644
UniProtKB/TrEMBL登録受付番号O06644
配列番号3
【化3】
【0037】
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=nucleotide&cmd=search&term=U82167&doptcmdl=GenBank
GenBank登録番号U82167
配列番号4
【化4】
【0038】
iii)例えば以下の配列を有するシュウ酸デカルボキシラーゼ:
http://www.expasy.org/uniprot/O34714
UniProtKB/TrEMBL登録受付番号O34714
配列番号5
【化5】
【0039】
http://www.ebi.ac.uk/cgi-bin/dbfetch?db=emblcds&id=CAA11727
コード配列登録番号AJ223978
配列番号6
【化6】
【0040】
および/または
iv)例えば以下の配列を有するシュウ酸オキシダーゼ:
http://www.expasy.org/uniprot/O24004
UniProtKB/TrEMBL登録受付番号O24004
配列番号7
【化7】
【0041】
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=nucleotide&cmd=search&term=Y14203&doptcmdl=GenBank
GenBank登録番号Y14203
配列番号8
【化8】
【0042】
である。
【0043】
シュウ酸塩分解酵素をコードするDNA配列は当業者に知られており、例えば、WO 98/16632に記載され、これはその全体を本明細書に組み込む。
【0044】
さらに、本発明の組成物は、シュウ酸塩低減酵素のシュウ酸塩分解活性部位を含むドメインを用いて形成したキメラ、またはペプチド断片、特に活性部位を含むかもしくは活性部位からなるペプチド断片を含むがこれらに限定されない、修飾または突然変異を含む酵素を含有してもよく;修飾または突然変異は、欠失、挿入、置換、復帰突然変異、活性上昇のための突然変異、天然アミノ酸の合成アミノ酸による置換、または当業者に知られる他の修飾を含むがこれらに限定されない。そのような修飾酵素は、天然酵素より高い活性、低い活性、または同等の活性を有し得るか、あるいは天然もしくは非修飾化酵素と同じかまたは異なる特徴を有し得る。本発明は、シュウ酸塩低減酵素の全酵素、断片、ペプチド、結合領域、活性部位、または他の機能性領域、機能性部分、機能性配列、ならびにプロモーターおよび制御配列を含む方法および組成物を企図する。
【0045】
1つの例示において、シュウ酸デカルボキシラーゼを修飾した。合計で7つの遺伝子を元のyvrk遺伝子配列(野生型yvrk)から作出した。元の遺伝子は枯草菌由来であり、遺伝子配列は、GenScript Corporation, Piscataway, NJのアルゴリズムを用いて、大腸菌内での発現のために最適化した。コドン使用頻度、GC含量のバランス、反復配列の除去、およびクローニングのために内部の制限酵素認識部位が無いことを確保することについて、遺伝子を最適化した。コドン最適化遺伝子は、結果として、野生型yvrkと同一のアミノ酸配列を有するタンパク質となった。
【0046】
次に、野生型yvrk遺伝子および最適化したyvrk遺伝子の双方のただ1つのシステインコドンに修飾を施して、6つのさらなる独自の遺伝子配列を得た。システインコドンは、セリンコドン、アルギニンコドン、またはアラニンコドンに変更した。修飾は、ジスルフィド結合を除去し、そして、酵素の二次および三次構造を変更する目的のために実施した。
【0047】
野生型yvrk遺伝子の遺伝子配列は、同じ方法を用いて、ピチア属(Pichia)またはサッカロミセス属(Saccharomyces)等のさらなる発現系用に最適化され得る。さらに、バチルス属(Bacillus)発現系における発現は、至適コドン使用頻度およびGC含量、ならびに反復配列の除去について遺伝子を最適化することによって向上され得る。コドン最適化はまた、例えば、PEG化(pegylation)、マイクロ粒子の結合、もしくはカプセル化を向上させる方法として、低pHでのpH安定性を向上させる方法として、またはタンパク質の活性を向上させる方法として、すでに変更されたシステインコドン以外の部位において、またはシステインの変更に加えて、タンパク質の二次構造を変更するためにも使用され得る。
【0048】
配列番号9
システインコドンを太字で記した元のyvrk配列
【化9】
【0049】
5'末端および3'末端に制限酵素認識部位(下線)を有し、システインコドンを太字で記した、大腸菌に対して最適化されたYvrk遺伝子配列
配列番号10
【化10】
【0050】
シュウ酸塩分解酵素は、通常、標準食に通常存在する実質的にすべてのシュウ酸塩を分解するのに十分な量で本発明の組成物に存在する。食品の選択によって、平均的な欧米の食事には、100〜300mgのシュウ酸塩/日が含まれ得る。一般的に、酵素を含む約0.2gの粒子(1mLの粒子懸濁液中の20mgのOxDcと等しい)が、人工胃内条件において、30分間以内に180mgのシュウ酸塩を除去し得る。
【0051】
有効量は、組成物の投与前に存在するシュウ酸塩の量と比較して、存在するシュウ酸塩の一部を減少させることになるシュウ酸塩低減酵素活性の活性単位の量を含むか、または個体におけるシュウ酸塩の量の低減化を開始するか、もしくはシュウ酸塩の量を低く維持することになるシュウ酸塩低減酵素活性の活性単位のレベルを含む。単回用量組成物に使用され得るシュウ酸塩低減酵素活性の活性単位の数値は、約0.0001単位(units)〜約5,000単位、約5単位〜100単位、0.05単位〜50単位、0.5〜500、約0.01単位〜約50単位、約0.01単位〜約5単位、約1単位〜約100単位、約25単位〜約50単位、約30単位〜約100単位、約40単位〜約120単位、約60単位〜約15単位、約50単位〜約100単位、約100単位〜約500単位、約100単位〜約300単位、約100単位〜約400単位、約100単位〜約5,000単位、約1,000単位〜約5,000単位、約2,500単位〜約5,000単位、約0.001単位〜約2,000単位の範囲、およびこれらに包含されるすべての範囲であり得る。酵素の単位は、37℃で1分間に1マイクロモルのシュウ酸塩を分解する酵素の量である。
【0052】
本発明の組成物は、第1のポリマー材料中に包埋されたシュウ酸塩分解酵素を含有する粒子を含む。本明細書における非限定的な実施例において、第1のポリマー材料中に酵素を包埋する方法を記載する。当業者は、本発明の組成物を調製するために用いるのに適した他の方法を見出し得る。第1のポリマー材料中に酵素を組み込むことによって、酵素はpHおよびペプシンに関して胃液に類似した条件に対するある一定の保護を得る。得られた包埋酵素組成物は、粒子、つまりミクロンサイズまたはナノサイズの別個の単位のように見える。従って、本明細書において用語「粒子」、「マイクロ粒子」および「ナノ粒子」は、第1のポリマー材料中、または第1および第2のポリマー中に包埋された1種以上のシュウ酸塩低減酵素を含む組成物を表現するために使用する。一般的に、用語「粒子」は、最も広義の用語として、つまり、いかなる特定のサイズ属性または形状属性もなく用いられるが、一方、用語「マイクロ粒子」は、得られた粒子の平均粒子サイズが1μm〜1000μmの範囲内である場合に用いる。同様に、用語「ナノ粒子」は本明細書において、得られた粒子の平均粒子サイズが1nm〜1000nmの範囲内である場合に用いる。本明細書で使用する用語「酵素」の単数形は、タンパク質分子に関して通常理解されるように、複数のコピーの酵素分子を指す。本明細書で使用する用語「1以上の酵素」は、1種類の酵素が存在し得ること(例えばホルミルCoAトランスフェラーゼを意味する等)、または2種類以上の酵素が組成物中に存在すること(例えば、オキサリルCoAデカルボキシラーゼおよびホルミルCoAトランスフェラーゼ;シュウ酸デカルボキシラーゼおよびシュウ酸オキシダーゼ、もしくは野生型酵素および突然変異型酵素の組み合わせを含む組成物等)を意味する。
【0053】
通常、本発明の組成物の粒子は、約50nm〜約1mmの平均直径を有し、例えば約500nm〜約500μm、約1μm〜約500μm、約2μm〜約100μm、約4μm〜約80μm、約6μm〜約60μm、約8μm〜約40μm、約10μm〜約20μ等である。
【0054】
本明細書で使用する用語「包埋された」は、酵素が第1のポリマー材料と以下のような方法で混合されているかまたは接触していることを意味することを意図する。
i)第1のポリマー材料は実質的に酵素を包む、つまり、粒子は、第1のポリマー材料によって囲まれている酵素含有コアと考えることができ;コアは、例えばポリマー材料の一部等の酵素以外の他の物質をさらに含んでもよく、または
ii)粒子の表面の大部分は第1のポリマー材料から成るが、酵素の一部分は粒子の表面に露出し得るような方法で、酵素が第1のポリマー材料中に組み込まれる。通常、粒子の外表面の少なくとも50%が、第1のポリマー材料から成り、そして粒子中に存在する酵素の重量の最大約20%が粒子の外表面に存在し得ることを企図し、および/または
iii)酵素を第1のポリマー材料に実質的に均一に分布させる。
【0055】
従って、本発明の組成物において、シュウ酸塩分解酵素は(胃の)環境から保護される。さらに、本発明の組成物は、実質的には酵素を(胃の)環境に放出しない。つまり、酵素は経口投与の後、胃内のシュウ酸塩を分解するのに十分な時間、組成物中に残留する。組成物において、第1のポリマー材料は酵素の保護担体として機能し得ると同時に、基質、つまりシュウ酸塩が組成物中に拡散するか、またはさもなくば移動して、そこで(in situ)シュウ酸塩の分解を可能にし得る。本発明の組成物の特徴は、特に酸性条件下において、ポリマーマトリックス中に包埋されていない酵素で観察されるより長い時間、酵素活性を維持するための組成物の能力である。従って、本発明の1つの態様は、第1のポリマー材料に包埋された1以上のシュウ酸塩分解酵素を含有する粒子を含む組成物を包含し、ここで、包埋酵素は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシンを含む、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)のUSP人工胃液中、37℃で少なくとも60分間のインキュベーションに際して、同じバッチ由来の1以上の非包埋遊離酵素の活性の少なくとも2倍の活性を維持する。本発明の組成物および遊離の酵素に対する試験条件が同一であることが重要であり、例えば、酵素の性質および純度、酵素の初期濃度、試験容積、インキュベーション媒質の組成(例えば、人工胃液(gastric juice)または胃液(gastric fluid))、温度等である。
【0056】
通常、包埋酵素は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシンを含む、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)のUSP人工胃液中、37℃で少なくとも30分間、少なくとも45分間、少なくとも60分間、少なくとも75分間、少なくとも90分間、少なくとも105分間、または少なくとも120分間のインキュベーションに際して、同じバッチ由来の1以上の非包埋遊離酵素の活性の少なくとも3倍の活性、少なくとも4倍の活性、または少なくとも5倍の活性を維持する。
【0057】
特定の実施形態において、本発明の組成物中の1以上の包埋シュウ酸塩分解酵素は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間のインキュベーションに際して、同じバッチ由来の1以上の非包埋遊離酵素の活性の少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍の活性を維持する。
【0058】
上記の人工胃液(gastric juice)(胃液(gastric fluid))は、USP(アメリカ合衆国薬局方)に記載され、ペプシンを含み、そして、特定の比率の濃HClを含有する。USP人工胃液は、容積1L中に2g NaCl、3.2gペプシンおよび7mL濃HClを含む。この溶液のpHは通常1.2〜1.5の範囲であり、使用するHClの濃度に依存する。本明細書のいくつかの実施例において、pHは2より大きい値に調整した。これは、いかなるコーティングもないマイクロ粒子を使用した場合であり得る。本目的のために、pHは酸性の範囲、つまり、最大約7、最大6にするべきであり、そして、pHの範囲は通常約1〜約5、約2〜約5にするべきである。本明細書の実施例の節において、上記の試験および酵素活性の測定に関してさらに詳述する。
【0059】
ヒトの胃内の滞留時間は、平均約120分間である。本発明の組成物の酵素活性が、十分なレベル、有効なレベルで120分間以上維持されることを企図する。本明細書の実施例から、酸性環境に曝露されて120分後に、本発明の組成物の酵素活性の少なくとも50%を維持することが可能であると考えられる。使用する酵素がポリマーに包埋されていないと(例えば、非包埋酵素)、活性低下は非常に早く、そして酸性環境において、60分後には活性が残らない。
【0060】
通常、本発明の組成物中の1以上のシュウ酸塩分解酵素の活性は、pHが約1.0〜約5の範囲、約1.0〜約4.5の範囲、約1.5〜約4.5、約2.0〜約4.0、または約2.2〜約4.0であるバッファー水溶液中で、約60分間、約90分間、約105分間、または約120分間インキュベーションした場合に、初期活性を100%と設定して、最大約30%に減少、最大約40%に減少、最大約50%に減少、最大約60%に減少、または最大約70%に減少する。
【0061】
特定の実施形態において、本発明の組成物中のシュウ酸塩分解酵素の活性は、約2.0〜約4.0のpHで60分間試験した場合に、初期活性を100%と設定して、最大80%に減少する。
【0062】
さらに特定の実施形態において、本発明の組成物中の1以上のシュウ酸塩分解酵素の活性は、約2〜約4.5の範囲のpHであるバッファー水溶液中で、2時間インキュベーションした場合に、初期活性を100%と設定して、最大約20%に減少する。特に、活性は、初期活性を100%と設定して、最大30%に減少する。
【0063】
特定のpHを有するバッファー溶液を提供するのに適したバッファー基質は、当業者に知られる。例示は、グリシンバッファー(pH2〜3)、酢酸バッファー、リン酸バッファー、ホウ酸バッファー等である。バッファー溶液は、バッファー溶液のイオン強度を調整するために、例えば無機塩等のさらなる成分、または、バッファー溶液中の条件が、包埋酵素がそのような厳しい条件に耐えることが可能であるか試すことを確実にするために、例えばペプシン等の1以上のプロテアーゼを含み得る。1以上のプロテアーゼが含まれる場合、通常これらの濃度はUSP人工胃液に使用するのと同じレベルである。
【0064】
本明細書に上述したように、シュウ酸塩分解酵素は、種々の種類、クラス、固有性および性質のものであってよい。好ましい態様において、本発明の組成物は、シュウ酸デカルボキシラーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、もしくはオキサリルCoAデカルボキシラーゼとホルミルCoAトランスフェラーゼとの組み合わせ、またはこれらの組み合わせを含む1以上のシュウ酸塩分解酵素を含む。
【0065】
本発明の組成物において、第1のポリマー材料として使用するのに好ましいポリマー材料は、人工のポリマーまたは天然のポリマーを含むがこれらに限定されず、以下:
i)多糖類:アルギン酸を含むアルギン酸塩、例えばアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸-プロパン1,2-ジオールを含むアルギン酸塩、アラビアゴム、カラギーナン、キトサンおよびその誘導体、コンドロイチン硫酸、デキストラン誘導体、ヘパリン、ヒアルロン酸、イヌリン、セルロース、もしくはメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルメチルセルロース等のセルロース誘導体など、またはこれらの組み合わせ;ii)ムコ多糖類;iii)ローカストビーンゴム、グアーゴム、トラガカント、寒天、アラビアゴム、キサンタンゴム、インドゴム(karaya gum)、タラゴム、ジェランゴム等を含むゴムなど、またはそれらの組み合わせ;iv)寒天、カラギーナン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等の親水コロイドおよびヒドロゲル化剤を含むゲル化剤または膨張剤など、またはそれらの組み合わせ;v)例えば、タンパク質およびポリアミド等:コラーゲン、アルブミン、プロタミン、スペルミン、合成ポリマー:ポリ(アクリル酸)、ポリアミノ酸(ポリリジン等)、ポリリン酸、トリポリリン酸塩、ポリ(L-乳酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(DL-乳酸-co-グリコール酸)、またはこれらの混合物および組み合わせ等の他のもの
を含むが、これらに限定されない。
【0066】
特定の実施形態において、第1のポリマー材料は、キトサン、アルギン酸塩、ペクチン、またはヒアルロン酸である。さらに特定の実施形態において、第1のポリマー材料は、キトサンまたはアルギン酸塩である。
【0067】
他のポリマー材料は、生体ポリマーまたは合成ポリマーであり得る。生体ポリマーの例示は、タンパク質、多糖類、ムコ多糖類、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパリン類縁体(heparinoids)、デルマタン硫酸、ペントサン多硫酸、コンドロイチン硫酸、セルロース、アガロース、キチン、カラギーナン、リノレン酸、およびアラントイン、架橋結合コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、架橋結合エラスチン、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、キトサン、アルギン酸塩、デキストラン、メチルセルロース、ポリリジン、および天然ゴムを含むが、これらに限定されない。ポリマーマトリックスが形成される本発明の組成物において、これらのマトリックスは多孔性であるため、ポリマーマトリックスに小さな水溶性分子が出入りすることが可能であり、分子は、シュウ酸塩、ギ酸、ギ酸塩、二酸化炭素、酸素、またはオキサリルCoA等を含むが、これらに限定されない。本発明の組成物における第1のポリマー材料の濃度は、通常は総乾燥材料の20%〜70%の範囲である。
【0068】
1以上の酵素および第1のポリマー材料に加え、粒子はまた、例えば、pH調整剤、緩衝化剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤、酵素のための補因子、または例えば充填剤、希釈剤、担体等の1以上の医薬上許容され得る賦形剤等の1以上の添加剤も含み得る。
【0069】
さらに、生理的条件が酵素の適切な作用範囲を優に超えたpHを生じる場合に、タンパク質の周辺に局在化した酸性pH環境を作り出すことが有利となり得る。例えば、高いpHである場所において、pH3において最大活性を有するシュウ酸塩分解タンパク質は、酵素の周囲近辺の局所的なpHを3前後に低下させ得る送達ベヒクルから恩恵を受ける。
【0070】
局所的なpHを低下させるための1つの方法は、局所的なpHを低下させる酸性物質を産生するために、生理的条件において加水分解的に分解することのできるポリマーを組み込むことである。例えば、PLA、PGAおよびPLGA等のαポリエステルは、生体内(in vivo)で加水分解的に生分解して、酵素にとって機能的に望ましい範囲にまでpHを局所的に低下させることができる有機酸(乳酸およびグリコール酸)を形成する。ポリ(DL-ラクチド)(DLPLA)は、迅速に分解し得る乳酸の双方の異性体の無作為的な分配を示す、非晶質ポリマーである。
【0071】
さらに、生体内(in vivo)pHもしくは局所的pHに連動して、または酵素周辺の局所的pHを至適化/調整するために両方の組み合わせに連動して作用する塩基材料、塩基含有材料または塩基生成材料の形態で、バッファーを送達ベヒクル中に含むことが望ましい。これらのバッファーは、有機化合物もしくは無機化合物の塩、または多くの他のバッファーを含み得る。緩衝化剤が関連するかまたは由来する共役酸のpKaは、緩衝化剤の適切な選択に利用できることが理解される。
【0072】
粒子は、架橋結合手順の対象となり得る。そのような架橋結合手順は、例えば、保存中もしくは経口投与後に周囲環境からのpHもしくはペプシンの悪影響による酵素活性の損失を回避するために、あるいは粒子からの酵素の放出を減少させるために、あるいは粒子の表面への酵素の移行を低減もしくは防止するために、粒子の特性を強化し得る。架橋結合手順およびそのような手順に使用するのに適した材料を本明細書に記載する。
【0073】
本発明の粒子は、物理的または化学的架橋結合によって架橋結合したポリマーから構成され得る。物理的架橋結合は、塩結合によって互いに架橋結合している反対荷電を有するポリマー(例えば、正荷電を帯びたキトサンは、負帯電ポリマーであるトリポリリン酸またはヘパリンと架橋結合する)、反対荷電イオンと架橋結合した荷電ポリマー(例えば、Ca2+とのアルギン酸塩、Al3+とのカルボキシメチルセルロース)を含み得る。本文脈で使用する用語「物理的架橋結合」は、非共有結合および/または相互作用も含む。
【0074】
通常、化学的架橋結合は、タンパク質、ポリアミド、キトサンおよびその誘導体等のアミン基を有するポリマーによる等、2つの反応性官能基を有する架橋結合剤による架橋結合を含み、グルタルアルデヒドまたはゲニピンを介して架橋結合し得る。紫外線照射は、光感受性基を有するポリマーに、共有架橋結合の形成を誘導するのに使用され得る。
【0075】
ナノ粒子およびマイクロ粒子の調製のための方法は、当技術分野において知られており、エマルション法、液滴形成(coacervation)/沈殿法、噴霧乾燥法等を含む。ナノ粒子またはマイクロ粒子の特性(例えば:微環境バッファー容量、機械的強度、粒径、シュウ酸塩拡散速度、酵素との相互作用)は、選択するポリマー、ポリマーの組成および比率、架橋結合法および調製手順に大きく依存する。2種類以上の架橋結合が、本発明のマイクロ粒子に用いられ得る(例えば、化学的架橋結合ならびに物理的架橋結合であり、本明細書の実施例を参照のこと)。
【0076】
特定の実施形態において、第1のポリマー材料は、それ自身に架橋結合するか、および/または第1のポリマー材料に包埋された1以上の酵素に架橋結合する。
【0077】
第1のポリマー材料がそれ自身におよび/またはそれに包埋された酵素に架橋結合している組成物のような、本発明の組成物において、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えばpH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも30分間、少なくとも60分間、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間のインキュベーションに際して維持される酵素活性のレベルは、ポリマーに包埋されてはいるが架橋結合したポリマーを有さないか、もしくは酵素とポリマーとが架橋結合していない、同じバッチ由来の酵素の組成物と比較して、または同じバッチの遊離酵素と比較して、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍増加する。
【0078】
粒子は、任意に、第1のポリマー材料の少なくとも一部が架橋結合した粒子もまた、コーティングが施され得る。通常、そのようなコーティングは、第1のポリマーと同じ機能、つまり、保存中および/または経口投与後の第1のポリマーに包埋された酵素の酵素活性の実質的な減少を回避する機能を有する。
【0079】
従って、特定の実施形態において、粒子は第2のポリマー材料でコーティングされる。適切なコーティング材料は、シュウ酸塩を含む水性組成物が本発明の粒子中に拡散すること、またはそうでなければ侵入することを可能にするような材料である。上記の通り、基質(つまり、シュウ酸塩含有媒質)が本発明の粒子組成物中に侵入し、シュウ酸塩の酵素的分解を生じ得る。従って、拡散性コーティングまたはそうでなければ浸透性コーティングのどちらかをもたらすコーティング材料(例えば、実質的に水溶性である孔形成基質を含むコーティング)が利用され得る。
【0080】
適切なコーティング材料の例示は、第1のポリマー材料として企図される材料を含むが、これらに限定されない。コーティング材料は、第1のポリマー材料として使用されるものと異なるものを選択してもよいが、第1のポリマー材料およびこのコーティング材料が同じであってもよい。コーティング材料の特定の例示は、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリデキストロース、マルトデキストリン、またはキトサン、アルギン酸塩、およびヒアルロン酸を含む他の多糖類等のフィルム形成剤である。特定の実施形態において、コーティング材料は、もし存在するのであれば、例えばキトサンおよびアルギン酸塩などの架橋結合の対象となり得るものである。
【0081】
特定の実施形態において、第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料は、キトサン、アルギン酸塩、ペクチン、またはヒアルロン酸等の多糖類である。第1のポリマー材料および第2のポリマー材料は、同じであっても異なっていてもよい。
【0082】
通常、第1のポリマー材料および、存在するのであれば、第2のポリマー材料のポリマーの割合は、粒子の総乾燥材料の約10%〜約80%、約60%〜約80%である。
【0083】
存在するのであれば、コーティング材料は通常、粒子の重量増加が最大で約40%となる量で利用される。本明細書の例示のように、粒子組成物内のコーティング材料の濃度は、通常、最大25%w/w(最大約20%w/w、最大約15%w/w、または最大約10%等)である。コーティングを有する粒子は、本明細書においてコーティング組成物と称する。
【0084】
本発明のコーティング組成物等の本発明の組成物において、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えばpH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間のインキュベーションに際して維持される酵素活性のレベルは、コーティングされていない粒子に包埋された同じバッチの酵素の組成物と比較して、または同じバッチの遊離酵素と比較して、少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍増加する。
【0085】
上記および本明細書の実施例に示す通り、本発明の組成物中のシュウ酸塩分解酵素の酵素活性の安定性は、架橋結合されたコーティングでコーティングされた粒子を使用することによって、さらに向上し得る。ポリマー材料の架橋結合は、当技術分野においてよく知られており、そして物理的架橋結合によって、または化学的架橋剤を使用することによって実施され得る。
【0086】
本文脈において使用する適切な化学的架橋剤は、ジアルデヒド、1-エチル-3[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC)、ジスクシンイミジルスベラート(DSS)、またはN-[p-マレイミドフェニル]イソシアナート(PMPI)を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態において、架橋剤はジアルデヒド、特にグルタルアルデヒドまたはグリオキサールである。ある実施形態において、架橋剤はグルタルアルデヒドである。通常、架橋結合は、50mMリン酸バッファー(pH7.5)中の1〜5%グルタルアルデヒド中で、37℃で1〜2時間振盪することにより実施される。
【0087】
上記の通り、本発明の組成物の特徴は、第1のポリマー材料、および、もし存在するのであれば、第2のポリマー材料が、1以上の酵素によって触媒される反応の基質および産物が、前記ポリマー材料を介して拡散できるように、低分子に対して浸透性であることである。さらに、第1および/または第2のポリマー材料は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間のインキュベーションに際して、実質的に無傷(intact)のままである。
【0088】
別の実施形態において、第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料は、それ自身に、および/または互いに、および/または1以上の酵素に架橋結合する。
【0089】
本発明のコーティングしたコーティング組成物、またはコーティングし、架橋結合したコーティング組成物等の本発明の組成物において、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間のインキュベーションに際して維持される酵素活性のレベルは、粒子に包埋されているが、しかし粒子がポリマー材料の第2層(コーティング)もしくは架橋結合した第2層を有さない粒子である同じバッチの酵素の組成物と比較して、または同じバッチの遊離酵素と比較して、少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍増加する。
【0090】
本明細書の実施例の通り、化学的架橋剤と1以上の酵素および/または第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料との間の結合が、還元剤によって還元されている本発明の組成物は、組成物の酵素活性を維持することに関して、さらなる向上をもたらし得る。そのような還元剤は、例えばNaBH4またはNaCNBH3等の還元剤等の当技術分野においてよく知られたものであり得る。
【0091】
本発明の組成物、特にコーティングされ、架橋結合したコーティングを有し、還元性架橋結合する本発明の組成物において、ここで、第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料が架橋結合されていてもよく、そしてそのような架橋結合した材料が還元されていてもされていなくてもよく、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間のインキュベーションに際して維持される酵素活性のレベルは、還元剤にさらされていない粒子中の同じバッチの酵素の組成物と比較して、または同じバッチの遊離酵素と比較して、少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍増加する。
【0092】
本発明の特定の実施形態において、1以上の包埋酵素は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間のインキュベーションに際して、同じバッチの酵素由来の1以上の非包埋遊離酵素の活性の、少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍の活性を維持する。
【0093】
本発明の別の特定の実施形態において、1以上の包埋酵素は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間のインキュベーションに際して、包埋酵素の初期活性の、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%を維持する。
【0094】
本発明のさらなる特定の実施形態において、1以上の包埋酵素は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間のインキュベーションに際して、包埋酵素の初期活性の約95%〜約100%を維持する。
【0095】
本発明の粒子に包埋された酵素は、食物のシュウ酸塩含量を減少させることができる。本明細書の実施例に説明するように、20mgの1以上のシュウ酸塩分解酵素を含む本発明の組成物は、200gのホウレンソウ中に存在するシュウ酸塩の少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも95%、または少なくとも99%等を、1時間以内にpH=2.5で分解する。
【0096】
本発明の組成物は、種々のポリマー材料を使用することにより調製され得る。以下の注釈は本明細書の実施例において用いられる。
【0097】
OxDc XXナノ粒子は、例えばキトサンナノ粒子等であり、OxDcを包埋する第1のポリマー材料としてキトサンを使用するナノ粒子を表す。
【0098】
YYコーティングOxDc XXマイクロ粒子は、例えばアルギン酸塩コーティングOxDcキトサンナノ粒子等であり、OxDcを包埋する第1のポリマー材料としてキトサンを使用し、ナノ粒子がアルギン酸塩でコーティングされるナノ粒子を表す。
【0099】
ZZ架橋結合YYコーティングOxDc XXマイクロ粒子は、例えばグルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサンマイクロ粒子等であり、OxDcを包埋する第1のポリマー材料としてキトサンを使用し、ナノ粒子がアルギン酸塩でコーティングされてマイクロ粒子を形成し、そしてマイクロ粒子が実質的にグルタルアルデヒドと架橋結合するマイクロ粒子を表す。
【0100】
還元ZZ架橋結合YYコーティングOxDc XXマイクロ粒子は、例えば還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサンマイクロ粒子等であり、OxDcを包埋する第1のポリマー材料としてキトサンを使用し、そして形成されるナノ粒子をアルギン酸塩でコーティングしてマイクロ粒子を形成し、続いてマイクロ粒子がグルタルアルデヒドと架橋結合し、そして還元されるマイクロ粒子を表す。
【0101】
従って、
OxDcキトサン/TPPナノ粒子は、TPPを含有し、そのナノ粒子に包埋されたOxDcを有する、キトサンから作製されるナノ粒子である。
【0102】
アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子は、キトサンおよびTPPおよび包埋OxDcから形成されるナノ粒子を基にしたマイクロ粒子であり、ナノ粒子はアルギン酸塩でコーティングされてマイクロ粒子を形成する。
【0103】
グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子は、上記のマイクロ粒子に相当するが、しかしこのマイクロ粒子は架橋結合を構築するためにグルタルアルデヒド処理を受けている。
【0104】
還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子は、さらに還元プロセスを受けた上記のマイクロ粒子に相当する。
【0105】
本発明の組成物は、対象への経口投与に使用するのに適切である。組成物は、経口医薬製剤として提供され、口腔、口、口腔内パッチ、胃へ送達してもよく、胃粘膜に付着させてもよく、持続放出液中でもよく、口または胃内の速放性錠剤中でもよく、食道をコーティングしてもよく、食物に添加する液体または固体形態でよく、食物摂取の前でもよく、または食物摂取の直後でもよい。
【0106】
投与される組成物は通常、固体形態(例えば粒子の形態)または固体剤形(例えばサシェ剤(sachets)、カプセル剤もしくは錠剤(例えば粒子が、当業者によく知られる方法によってさらに加工されて適切な剤形となる)の形態)である。そのために、例えば充填剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、矯味剤、pH調整剤、安定化剤等の、適切な医薬上許容され得る賦形剤が添加され得る。さらに、1以上のさらなる治療的物質および/もしくは予防的物質、ならびに/または他の酵素、補因子、物質、補酵素、無機物、およびシュウ酸塩を低減するのに有用な他の薬剤が添加され得る。
【0107】
適切な医薬上許容され得る賦形剤の例示は、デキストリン、マルトデキストリン、デキストロース、フルクトース、グルコース、ラクトース、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、微結晶性セルロース(例えば種々の等級のAvicel(登録商標))を含む)、デンプンまたは加工デンプン(例えばバレイショデンプン、トウモロコシデンプン、コメデンプン、α化デンプン)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム(例えば塩基性リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム)、硫酸カルシウム、カルボキシアルキルセルロース、デキストラート、リン酸水素カルシウム(dibasic caicium phosphate)、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、および滑沢剤として:タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、硬化植物油等を含む。
【0108】
本発明の方法は、1以上のシュウ酸塩低減微生物、1以上のシュウ酸塩低減酵素、またはこれらの組み合わせおよび混合物を、本明細書に教示される粒子組成物中に含む有効量のシュウ酸塩低減組成物を投与することによって、ヒトおよび動物のシュウ酸塩関連症状を治療または予防することを包含する。本方法は、本明細書に教示される酵素包埋粒子を含む組成物を、対象(ヒトまたは動物)に提供すること、および対象に存在するシュウ酸塩を減少させること、シュウ酸塩関連症状を治療または予防すること、および/または摂取したシュウ酸塩の一部を減少させることを包含する。ヒトまたは動物のシュウ酸塩を減少させる方法は、1以上のシュウ酸塩低減酵素またはシュウ酸塩低減活性を有するフラグメントを本発明の包埋酵素粒子組成物中に含む有効量の組成物を、対象(ヒトまたは動物)に投与すること、および存在するシュウ酸塩を減少させることを包含する。減少は、対象のあらゆる組織または体液環境において起こり得る。体液は、鼻汁もしくは胃液分泌物等の身体の分泌物、唾液、血液、血清、尿、糜汁(chyme)または消化物、組織液、およびヒトもしくは動物によって作られる他の液体または半固形物質を含む。例えば、包埋酵素粒子組成物は、ヒトまたは動物に経口的に投与することができ、そしてシュウ酸塩低減酵素活性は、ヒトまたは動物の胃内に存在するシュウ酸塩を減少させる。本発明の包埋酵素粒子組成物は、液体、食物、または他の食品材料中に混合してもよく、粒子のシュウ酸塩低減酵素活性が胃の環境において有効となるように、ヒトまたは動物に提供され得る。本発明の包埋酵素粒子組成物はまた、シュウ酸塩が存在する食料または他の物質と混合してもよく、粒子のシュウ酸塩低減酵素活性は、食料または他の材料中に存在するシュウ酸塩を減少させる。
【0109】
シュウ酸塩関連症状を治療および予防する方法は、有効量のシュウ酸塩低減酵素を含む粒子を含有する組成物を投与することを包含する。有効量は、本組成物の投与前に存在するシュウ酸塩の量と比較して、存在するシュウ酸塩の一部を減少させることになるシュウ酸塩低減酵素活性の活性単位の量を含むか、または個体におけるシュウ酸塩量の減少を開始するか、もしくは個体のシュウ酸塩の量を低く維持することになるシュウ酸塩低減酵素活性の活性単位のレベルを含む。単回用量組成物に使用され得るシュウ酸塩低減酵素活性の活性単位の数は、約0.0001単位〜約5,000単位、約5単位〜100単位、0.05〜50単位、0.5〜500、約0.01単位〜約50単位、約0.01単位〜約5単位、約1単位〜約100単位、約25単位〜約50単位、約30単位〜約100単位、約40単位〜約120単位、約60単位〜約15単位、約50単位〜約100単位、約100単位〜約500単位、約100単位〜約300単位、約100単位〜約400単位、約100単位〜約5,000単位、約1,000単位〜約5,000単位、約2,500単位〜約5,000単位、約0.001単位〜約2,000単位の範囲、およびこれらに包含されるすべての範囲であり得る。本組成物はさらに、他の酵素、補因子、基質、補酵素、無機物、およびシュウ酸塩の減少に有用な他の薬剤を含み得る。酵素の単位は、1マイクロモルのシュウ酸塩を37℃で1分間当たりに分解する酵素の量である。
【0110】
治療法において、本明細書に教示される有効量の粒子組成物は、少なくとも1日に1回、少なくとも1日に2回、少なくとも1日に3回、少なくとも1日に4回、必要な場合はそれ以上、対象が摂取するために経口的に投与され、そのような投与は1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、もしくは1週間、2週間、3週間、もしくは1ヵ月間、2ヵ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヵ月間、6ヵ月間、6ヵ月間を上回る間、1年間、2年間、もしくは数年間、または患者の生涯に渡り継続的であり得る。そのような治療は、対象において望ましいシュウ酸塩レベルを維持し続け得る。
【0111】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される、単数形の「a」、「an」および「the」は、他に文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに注意するべきである。
【0112】
本明細書に含まれるすべての特許、特許出願および参照は、参照によりそれらの全体を具体的に組み込む。
【0113】
当然のことながら、上記は本発明の例示的な実施形態にのみに関するものであって、多数の改良または変更が、本開示に記載の発明の精神および範囲から逸脱することなく実施され得ることが理解されるべきである。
【0114】
本発明の例示的な実施形態が本明細書に提供されるが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。当業者に示唆し得る数多くの改良または変更が存在する。
【0115】
本発明は、本明細書に含まれ、明確に理解するために提供する実施例によってさらに説明する。例示的な実施形態は、本発明の範囲に制限を与えるように解釈するべきではない。むしろ、種々の他の実施形態、改良およびこれらと同等のものにつながる方策を有し得ることが明らかに理解され、このことは、本明細書の記載を読んだ後に、本発明の精神および/または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者に示唆され得る。
【実施例】
【0116】
方法
酵素活性についてアッセイ
サンプルをトリスバッファーで適当に希釈して(通常5または10倍)0.5〜1mg/mlとし、その10μLを1.5mLエッペンドルフ管に分注する。各々の管に、390μLの温かい基質バッファー(通常は20mMクエン酸バッファー(pH4)中の20mMシュウ酸塩)を添加し、直ちにサーモミキサーに正確に10分間置き、その時点で100μLの0.5M H2SO4を添加する。産生する全ギ酸(formate)をHPLCにより直接測定する。イオン交換カラム(Aminex HPX-87H, BioRad)および20mM H2SO4のアイソクラチック(isocratic)勾配を使用して、ギ酸を210nmでのUVによって、通常14.3分に溶出するピークで検出する。
【0117】
安定性試験
約2〜約3のpHのバッファー中でのインキュベーション
OxDc遊離酵素またはポリマー材料中に包埋されたOxDc酵素を含有する問題の(in question)組成物を、pH範囲が2〜3の100mMグリシンバッファー中で一定時間インキュベーションした後、残存するOxDc活性を解析した。
【0118】
人工胃液中でのインキュベーション
約2mgのOxDc〜約20mgのOxDcを含有する粒子組成物を、USPに従って(つまり、2g NaCl, 3.2gペプシンおよび濃HCl 7mLを最終容量1L中に溶解することによって)調製した100mLの人工胃液を含む容器に入れた。適切な時間毎に、サンプルを採取し、そして上記のようにOxDc活性についてアッセイした。
【0119】
バッファー中でのインキュベーション
(人工胃液についての)上記と同様の手順。しかし、対象のpH値によって種々のバッファー溶液を採用した。適切なバッファーは、グリシンバッファー(pH2〜3)、酢酸バッファー(pH3〜6)、リン酸バッファー(pH5〜8)、ホウ酸バッファー(pH8〜9)等を含む。例えばペプシン等のプロテアーゼは、通常はUSP人工胃液に規定されている濃度に相当する濃度で添加され得る。
【0120】
実施例1
OxDcアルギン酸塩マイクロ粒子の調製、および種々のプロセスパラメーターが安定性に及ぼす影響
この実施例は、OxDcアルギン酸塩マイクロ粒子の調製および安定性を説明し、さらに、種々のプロセスパラメーターがマイクロ粒子に包埋されたOxDcの安定性に及ぼす影響を説明する。
【0121】
OxDcアルギン酸塩マイクロ粒子の調製
マイクロ粒子I−乳化1:
50mMクエン酸バッファー(pH3.9)中のアルギン酸塩(1.8%, w/v)とOxDc(10:1, v/v; 10mM Tris-HCl, pH3.9中、OxDc, 20mg/ml)との混合物11mlを、0.5%triton x-100を含有する鉱油20mlと、マグネット式攪拌機で600rpmで10分間混合して、安定な乳化状態に達し、次に、CaCl2鉱油エマルション4ml(0.2M CaCl2 2ml+鉱油2ml)を添加し、30分間攪拌を継続した。次に、キトサン鉱油エマルション8ml(0.8%キトサン4mlおよび鉱油4ml)を添加し、さらに30分間攪拌した。マイクロ粒子を遠心分離によって回収した。以下、これらのマイクロ粒子をマイクロ粒子Iと表示する。
【0122】
マイクロ粒子II−乳化2:
アルギン酸とOxDcとの混合物を10mM TrisHClバッファー(pH8)中としたことを除き、「乳化1」と全く同様である。以下、これらのマイクロ粒子をマイクロ粒子IIと表示する。
【0123】
キトサンコーティングOxDcアルギン酸塩マイクロ粒子−異なる濃度でのアルギン酸塩のゲル化(乳化)およびマイクロ粒子のキトサンによるさらなるコーティング:
アルギン酸塩(1.2%または3%;w/v)8mlを、50mM TrisHClバッファー(pH9)中のOxDc(16mg/ml)0.5mlと混合し、次に、0.8%triton x-100を含有する鉱油15mlと、マグネット式攪拌機で600rpmで10分間混合して、安定な乳化状態に達し、次に、CaCl2鉱油エマルション8ml(1M CaCl24ml+鉱油4ml)を添加し、30分間攪拌を継続し、次に攪拌しながら1M CaCl2 50mlを添加した。マイクロ粒子を遠心分離によって回収し、水で2回洗浄した。すべてのマイクロ粒子(約4ml)を、0.4%キトサン(pH5.45)36mlと4mlの4M CaCl2との混合液中に溶かし込み、200rpmで1時間振盪した。以下、これらのマイクロ粒子を、キトサンコーティングOxDcアルギン酸塩マイクロ粒子と表示する。
【0124】
この実施例において得られたすべてのマイクロ粒子の粒子サイズ分布は、約1〜100μmの範囲と推定される範囲であった。
【0125】
得られたマイクロ粒子を、上記の通り酵素活性についてアッセイした。全酵素活性は、酵素をポリマーマトリックスに包埋する前の酵素の酵素活性であり、この量を100%と設定する。以下の結果が得られた。
【0126】
全酵素活性の約40%および48%が、各々pH3.9(マイクロ粒子I)およびpH8(マイクロ粒子II)で調製したマイクロ粒子において見られた。2種類のマイクロ粒子の安定性は、3.2mg/mlのペプシンを用いてpH3で試験した。全酵素活性の約42%および60%が、各々1.2%および3%のアルギン酸塩で調製したキトサンコーティングOxDcアルギン酸塩マイクロ粒子において見られた。2種類のキトサンコーティングOxDcアルギン酸塩マイクロ粒子の安定性は、3.2mg/mlのペプシンを用いてpH3で試験した(図2)。
【0127】
図1は、ペプシンを含むpH3条件下での、マイクロ粒子I(pH3.9で調製)およびマイクロ粒子II(pH8で調製)内のOxDcの安定性のグラフである。四角はマイクロ粒子I、三角はマイクロ粒子IIである。図2は、ペプシンを含むpH3条件下での、キトサンコーティングOxDcアルギン酸塩マイクロ粒子中のOxDcの安定性に対する、アルギン酸塩マイクロ粒子を形成するためのアルギン酸塩濃度の効果を示すグラフである。四角は3%アルギン酸塩で形成したマイクロ粒子、黒塗りの丸は1.2%アルギン酸塩で形成したマイクロ粒子である。
【0128】
その結果、マイクロ粒子の調製中に示すpHは、インキュベーション中のOxDcの安定性に影響を及ぼすように思われ、つまり、pHの上昇が、安定性をよりよくするのに有利であり、そして、アルギン酸塩濃度の上昇もまた安定性に対して好影響を与えるようである。
【0129】
実施例2
OxDcナノ粒子の調製およびそのコーティング
この実施例は、OxDc含有ナノ粒子の調製およびその種々のコーティングを説明する。
【0130】
OxDcキトサン/トリポリリン酸ナノ粒子:
0.5mg/ml OxDcを含有する0.15%(w/v)のトリポリリン酸(TPP)(pH8.1、OxDcを添加する前にHClで調整)40mlを、0.13%(w/v)酢酸(pH3.92)中の0.18%(w/v)キトサン120ml中に滴下した。ナノ粒子を遠心分離によって回収し、そして、水で2回洗浄した。このプロセスは、約4mlのナノ粒子懸濁液を生じた。
【0131】
アルギン酸塩でコーティングされたOxDcキトサン/TPPナノ粒子:
0.8mlのナノ粒子懸濁液を、攪拌しながら10mlの水で希釈し、次に5mlの1.2%アルギン酸塩溶液(25mM TrisHClバッファー(pH8.6)中)を滴下により添加した。混合液を5分間攪拌し続けた。コーティングしたナノ粒子のサイズが、2〜400μm、大部分は30μmに増加したのは(図3を参照)、ナノ粒子の凝集およびアルギン酸塩による架橋結合のためである。マイクロ粒子を、3000gで3分間の遠心分離によって回収した。マイクロ粒子を水で2回洗浄し、再懸濁した。図3において、容積統計値(計算)17795s3_07_01.$1s。計算値は0.040μm〜2000μm。容積:100%;平均値:48.53μm;中央値:29.10μm;平均値/中央値の比:1.668;最頻値:28.70μm;標準偏差:65.43μm;変動係数:135%;歪度:4.384(右歪み);尖度:26.90(急尖度);d10 8.814μm;d50 29.10μm;d90 109.9μm。
【0132】
カラギーナンでコーティングしたOxDcキトサン/TPPナノ粒子:
0.8mlのナノ粒子懸濁液を、攪拌しながら水10ml中に希釈し、次に5mlの0.5%カラギーナン溶液(そのままでpH8.9)を滴下により添加した。混合液を5分間攪拌し続けた。コーティングナノ粒子はマイクロ粒子を形成し、そして、アルギン酸塩でコーティングしたものと同様の分布を有するはずである(上記参照)。マイクロ粒子を遠心分離によって回収し、水で2回洗浄して、再懸濁した。
【0133】
アルギン酸塩またはカラギーナンのどちらかでコーティングしたOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子を、異なるグルタルアルデヒド濃度でグルタルアルデヒドと架橋結合した:
0.2mlのマイクロ粒子懸濁液を、攪拌しながら水0.8ml中に希釈し、次に2mlの0.15〜7.5%グルタルアルデヒド溶液(50mM KPB(pH8.9)中)を添加および混合した。混合液を15〜40分間攪拌し続け、そしてマイクロ粒子を遠心分離によって回収し、水で2回洗浄した。
【0134】
グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子の還元
2つの異なる種のグルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子を調製した:1つはCaCl2の添加なしで架橋結合し、そしてもう一方は架橋結合反応(1%のグルタルアルデヒド)開始から10分後に1.2M CaCl2を添加した。架橋結合反応を1時間実施した後、マイクロ粒子を遠心分離によって回収し、そして水で2回洗浄した。2種類のマイクロ粒子を、100mMのKPB(pH7.5)中にさらに懸濁した。一定量のNaBH4粉末を懸濁溶液に添加して、最終濃度を20mM NaBH4とし、暗下で14時間、振盪し続けた。
【0135】
以下の結果が得られた:
OxDcキトサン/TPPナノ粒子:
ナノ粒子はあまりに小さいため、光学顕微鏡下で視覚的に観察できなかった。OxDcは、ほとんど100%が現条件においてナノ粒子によってトラップされた。これらの条件下において、OxDcを高pH(8.6)のTPPで溶解し、そして次に低pH(3.92)のキトサン溶液中に滴下した。高pHから低pHに溶解する酵素の広い選択性は、ナノ粒子形成時においてナノ粒子内に酵素を維持する一因である。pH3.0でのOxDcキトサン/TPPナノ粒子内のOxDcの安定性は、実施例1および図1のマイクロ粒子Iとマイクロ粒子IIとの間であった。
【0136】
アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子:
pH3.0でのOxDcの安定性は、アルギン酸塩コーティングを利用した場合に、非コーティングナノ粒子と比較してさらに向上した。図4を参照せよ。ここで、四角は非コーティングナノ粒子、黒塗りの丸はアルギン酸塩コーティングしたマイクロ粒子、そして三角はカラギーナンコーティングしたマイクロ粒子である。
【0137】
カラギーナンコーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子:
pH3.0でのOxDcの安定性は、カラギーナンコーティングを利用した場合に、(非コーティングナノ粒子と比較して)さらに向上した(図4)。
【0138】
異なるグルタルアルデヒドの濃度で、粒子全体がグルタルアルデヒドと架橋結合する、アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子:
(いかなる理論にも束縛されることを望まないが、グルタルアルデヒド架橋結合は主にキトサン分子内で、キトサン分子の自身への結合および互いの結合で、ならびにキトサン分子と酵素分子との間で生じると考えられている。)
架橋結合を付加したアルギン酸塩コーティングマイクロ粒子は、低pHにおいて、アルギン酸塩コーティングのないナノ粒子より高い安定性を示した。高レベルの架橋結合は、低pHでのアルギン酸塩コーティングマイクロ粒子内のOxDc安定性を向上させた(図5)。最も安定なマイクロ粒子は、ペプシンを含むpH2.6の溶液中に、活性を損なうことなく4時間浸しておくことができる。活性は、ペプシンを含むpH2.4において3.5時間インキュベーション後、約30%であった。図5を参照せよ。これは、ペプシンを含むpH2.4での、グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子中のOxDcの安定性に対する、架橋結合についてのグルタルアルデヒド濃度の効果を示す。四角は非アルギン酸塩コーティングの1%グルタルアルデヒド、黒塗りの丸は0.5%グルタルアルデヒド、上向きの三角は1%グルタルアルデヒド、および下向きの三角は2%グルタルアルデヒド、ならびにひし形は5%グルタルアルデヒドである。
【0139】
グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子の還元:
シッフ塩基(Schiff's)の二重結合の還元後の、グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子の低pH下における安定性は、顕著に向上した。架橋結合中にCaCl2を添加したグルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子は、120分後に80%のOxDc活性を失い、一方、CaCl2を添加しなかったマイクロ粒子はpH約2.0下で、非常に短時間で80%の活性を失った。詳細には、図6を参照せよ。これはpH2.2および1.85での2種類の架橋結合および還元マイクロ粒子におけるOxDcの安定性を示すグラフであり、ここで、四角はCa2+なしのpH2.2、黒塗りの丸はCa2+を添加したpH2.2、上向きの三角はCa2+なしのpH1.85、および下向きの三角はCa2+存在下のpH1.85である。
【0140】
上記の一連の実験から、還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子の製剤を、さらなる開発に選択した。
【0141】
実施例3
人工胃内条件下において食物からシュウ酸塩を除去するin vitro試験のための実験
還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子のin vitro試験
10、20および40gのホウレンソウを、12mlの人工胃液(stomach juice)(胃液(gastric fluid))(3.2mg/mlのペプシンを含む84mM HCl)と各々混合した。次に、水を添加して、最終容量を各々40、80および160mlとした。ホウレンソウ、人工胃液および水を均一化した後、還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子を添加して、ホウレンソウから放出されるシュウ酸塩を分解した。3つすべての条件について、ホウレンソウ/マイクロ粒子の(用量)比は、200(200gのホウレンソウを1gのマイクロ粒子と混合した)である。ホウレンソウをこの実験に選択したのは、大量のシュウ酸塩を含むためである(凍結ホウレンソウ葉中に、約200mMのシュウ酸塩)。
【0142】
結果および考察:
可溶性シュウ酸塩の量は、pHによって顕著に影響を受ける。pH値は、10、20および40gのホウレンソウの条件に対して、各々2.5、3.5および4.2であった。可溶性シュウ酸塩の初期濃度は、10、20および40gのホウレンソウの条件に対して、各々30.0、22.8および14.7mMであった(図7)。すべてのシュウ酸塩が可溶性であれば、その濃度は約48mMとなるはずである。従って、3つすべての条件下において、不溶性のシュウ酸塩が存在した。図7は、初期の可溶性シュウ酸塩は、数分間でほとんど完全に除去されたことを示唆する。残った可溶性シュウ酸塩は、0には下がらなかったが、期間中、低レベルで維持され、これは、より可溶性であるシュウ酸塩が除去された場合に不溶性シュウ酸塩が溶解し始めたためである。図7は、シュウ酸塩(可溶性部分)の生物学的利用能が3つすべての条件下で迅速に低下したことを示す。四角は0.05gの洗浄マイクロ粒子を含む10gのホウレンソウ、ひし形は0.1gの洗浄マイクロ粒子を含む20gのホウレンソウ、上向きの三角は0.2gのマイクロ粒子を含む40gのホウレンソウである。
【0143】
OxDcマイクロ粒子は、ますます可溶性シュウ酸塩を除去し続けた(図8)。1時間後、第1の条件(四角)のホウレンソウ中のほぼすべてのシュウ酸塩、および第2の条件(ひし形)の約90%が除去された。第3の条件(三角)については、たった50%のシュウ酸塩が除去されたが、可溶性部分は0に近かった。従って、3つすべての条件下において、シュウ酸塩の吸収も胃腸管において効果的に制限され得るものであり、これは、可溶性シュウ酸塩濃度が非常に低く、そしてシュウ酸塩の大部分が減少したからである。図8は、3つの異なる人工条件において、マイクロ粒子によって除去されたホウレンソウ中の全可溶性シュウ酸塩の経時変化のグラフである。各々のホウレンソウサンプル内の全シュウ酸塩濃度は、約50mMであった。四角は0.05gのマイクロ粒子を含む10gのホウレンソウ、ひし形は0.1gのマイクロ粒子を含む20gのホウレンソウ、上向きの三角は0.2gのマイクロ粒子を含む40gのホウレンソウである。
【0144】
これらの結果をin vivoでの治療を想定するのに用いる場合、胃に120mlの胃液を含む人が、全部で400gのホウレンソウを摂取し始めると仮定する。100gのホウレンソウを摂取した後、4gのマイクロ粒子を服用する。ほぼすべての可溶性シュウ酸塩が2分間以内に除去されるだろう。400gを食べるまでホウレンソウの摂取は継続するが、可溶性シュウ酸塩は、食べている間3mM以下に維持され、食後迅速に0に減少する。
【0145】
実施例4
本発明の製剤化OxDc
I.製剤化OxDc(マイクロ粒子)の調製、および低pHでのその安定性の試験
還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子は、以下のように作製した:
1.OxDcキトサン/TPPナノ粒子を、トリポリリン酸(TPP)溶液をキトサンとOxDcとの混合物中に滴下して形成する。
2.アルギン酸塩溶液を上記懸濁液に添加することにより、上記のナノ粒子をアルギン酸塩によってコーティングする。ナノ粒子の凝集およびこのプロセル中に生じるアルギン酸塩による物理的架橋結合のために、ナノ粒子はマイクロ粒子を形成する。
3.上記マイクロ粒子をグルタルアルデヒドによって架橋結合する。
4.シッフ塩基をNaBH4によって還元する。
【0146】
実施例2の記載に従って調製した。
【0147】
低pHでの遊離OxDcまたは製剤化OxDcの安定性試験:
遊離の酵素としてのOxDcまたはこのマイクロ粒子中のOxDcを、100mMグリシンバッファー中、pH2〜3の範囲で一定時間インキュベーションした後、残存OxDc活性を解析した。図9は、グルタルアルデヒド(0.5〜5%)での架橋結合が、pH2.4およびペプシン存在下でのアルギン酸塩コーティングキトサン/TPPマイクロ粒子中のOxDcの安定性を向上させることを示すグラフである。四角は0%グルタルアルデヒド、黒塗りの丸は0.5%グルタルアルデヒド、上向きの三角は1%グルタルアルデヒド、およびひし形は5%グルタルアルデヒドである。
【0148】
図9に示すように、四角で示される架橋結合のない(対照)アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子は、pHが2.4で15分未満で完全に崩壊する。一方、0.5〜5%のグルタルアルデヒドでの架橋結合は、アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子の酵素活性を、2時間まで安定化する。天然の(非製剤化、遊離、非包埋)OxDcは、pH<3.0で不可逆的に不活性化することが知られる。グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子の安定性は、これらのマイクロ粒子中のシッフ塩基の還元後にさらに向上した(図10)。
【0149】
図10は、シッフ塩基の還元が、pH2.2およびペプシン存在下(四角)でのグルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子中のOxDcの安定性を向上させることを示すグラフである。マイクロ粒子は、pH<2.0で急速に不活性化する(三角)。
【0150】
還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子は、pHが2.2程度の低さで安定性を維持する。非製剤化酵素(遊離、非包埋)はpH<3.0で不可逆的に不活性化するため、これは顕著な向上である。
【0151】
II.OxDcマイクロ粒子によるシュウ酸塩の分解に関する研究
A.低濃度範囲におけるシュウ酸塩(シュウ酸ナトリウムとして)の分解:
2mgまたは20mgのOxDcを含有するOxDcマイクロ粒子(上記の実施例4のIに記載するように調製したもの)を、0.05〜2mMの濃度のシュウ酸塩溶液100mlと、pH3、37℃で混合した。生じたギ酸(formate)を一定時間測定した。
【0152】
図11AおよびBに示すように、還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子は、少なくとも0.05mM〜2.0mMの濃度範囲のシュウ酸塩を分解することができる。
【0153】
ヒトの胃内の0.05mM〜2.0mMのシュウ酸塩濃度は、食事摂取の5mg〜180mgのシュウ酸塩および想定胃容量1Lに相当する。欧米の食事におけるシュウ酸塩の平均的な日常摂取は、食事全体で100〜500mg/日となると報告される。摂取は、ホウレンソウ等の相当な高シュウ酸塩を含む食物を食べた場合に、非常に高くなり得る。ホウレンソウ由来の15〜30mMの範囲のシュウ酸塩の分解も調査され、そして以下に記載する。
【0154】
図11AおよびBは、pH3で還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子によって除去されたシュウ酸塩を示すグラフである。Aは、シュウ酸塩溶液100ml中の20mg OxDcに相当するマイクロ粒子であり;Bは、シュウ酸塩溶液100ml中の2mg OxDcに相当するマイクロ粒子である。四角は、0.05mMシュウ酸塩濃度、黒塗りの丸は0.2mMシュウ酸塩濃度、上向きの三角は1.0mMシュウ酸塩濃度、そして下向きの三角は2.0mMシュウ酸塩濃度である。
【0155】
20mgのOxDc(1.0mlのマイクロ粒子製剤中の酵素タンパク質の推定量)は、2分間以内に0.05mM〜2mMのシュウ酸塩をほぼ完全に分解した。
【0156】
人工胃内条件におけるホウレンソウシュウ酸塩の分解:
人工胃液とホウレンソウを混合:10g、20gおよび40gのホウレンソウを12mlの人工胃液(3.2mg/mlペプシンを含む84mM HCl)と混合し、次に水を添加して各々最終容量を40ml、80mlおよび160mlとした。
【0157】
OxDcによるシュウ酸塩の除去:ホウレンソウ、胃液および水の懸濁液を均一化した後、OxDcマイクロ粒子を添加して、ホウレンソウから放出されるシュウ酸塩を分解した。3つすべての条件について、ホウレンソウ/OxDcの(用量)比は、およそ2000(2000gのホウレンソウを1gのOxDcの活性を有するマイクロ粒子と混合した)である。
【0158】
上記の調製物のすべてにおいて算出した全シュウ酸塩は、50mMであった(ホウレンソウは18g/kgの全シュウ酸塩を含むと報告される)。ホウレンソウの存在による胃液の異なる緩衝レベルのために、3つのホウレンソウ懸濁液の最終pHは、各々2.5、3.5および4.2であった。溶媒のpHは、可溶性シュウ酸塩の利用性に影響を与えることが知られ、従って、試験された3つの調製物における生物学的に利用可能なシュウ酸塩の濃度は、各々30mM(四角)、22mM(ひし形)、および15mM(三角)であった(図12)。
【表1】
【0159】
図12Aは、3つすべての条件下で迅速に減少したシュウ酸塩(可溶性部分)の生物学的利用能を示すグラフであり;12Bは、除去された全シュウ酸塩の割合を示す。四角は5mgのOxDcと等しい量(酵素活性による)のマイクロ粒子と10gのホウレンソウ;ひし形は10mgのOxDcと等しい量のマイクロ粒子と20gのホウレンソウ、上向きの三角は20mgのOxDcと等しい量のマイクロ粒子と40gのホウレンソウである。
【0160】
OxDcを含有するマイクロ粒子は、pHが2.5〜4.2の範囲の人工胃内条件(図12AおよびBを参照)またはpH3のバッファー(図11AおよびB)において、0.05mM〜30mMの広範囲のシュウ酸塩濃度を分解することが可能であった。この一連の実験から、OxDcを含む20mgのマイクロ粒子(1.0ml懸濁液中)は、180mgのシュウ酸塩を30分以内に分解することが可能であると推定され得る。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1は、ペプシンを含むpH3での、マイクロ粒子I(pH3.9で調製)およびマイクロ粒子II(pH8で調製)中のOxDcの安定性を示すグラフである。
【図2】図2は、ペプシンを含むpH3での、キトサンコーティングOxDcアルギン酸塩マイクロ粒子中のOxDcの安定性に対する、アルギン酸塩マイクロ粒子の形成のためのアルギン酸塩の濃度の影響を示すグラフである。
【図3】図3は、本明細書の実施例2に従って調製した粒子の粒子サイズ分布を示すグラフである。図3は、容積統計値(計算)17795s3_07_01.$1sを示す。計算値は0.040μm〜2000μm。容積:100%;平均値:48.53μm;中央値:29.10μm;平均値/中央値の比:1.668;最頻値:28.70μm;標準偏差:65.43μm;変動係数:135%;歪度:4.384(右歪み);尖度:26.90(急尖度);d10 8.814μm;d50 29.10μm;d90 109.9μm。
【図4】図4は、ペプシンを含むpH3での、キトサン/TPPナノ粒子中のOxDcの安定性に対する、アルギン酸塩またはカラギーナンによるコーティングの効果を示すグラフである。
【図5】図5は、ペプシンを含むpH2.4での、グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子中のOxDcの安定性に対する、架橋結合のためのグルタルアルデヒド濃度の影響を示すグラフである。
【図6】図6は、pH2.2および1.85での、2種類の架橋結合および還元マイクロ粒子における、OxDcの安定性を説明するグラフである。
【図7】図7は、本発明の組成物の投与後のシュウ酸塩(可溶性部分)の生物学的利用能を示すグラフである。
【図8】図8は、3つの異なる人工条件下でマイクロ粒子によって除去される、ホウレンソウ中の全可溶性シュウ酸塩の経時変化を説明するグラフである。
【図9】図9は、pH2.4およびペプシン存在下で、キトサンマイクロ粒子中のグルタルアルデヒド(1〜5%)による架橋結合の効果を示すグラフである。
【図10】図10は、異なるpHおよびペプシン存在下での、グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子中のシッフ塩基の還元を説明するグラフである。
【図11】図11AおよびBは、pH3で、還元グルタルアルデヒド架橋結合アルギン酸塩コーティングOxDcキトサン/TPPマイクロ粒子によって除去されるシュウ酸塩を示すグラフである。
【図12】図12Aは、本発明の組成物の投与後のシュウ酸塩(可溶性部分)の生物学的利用能を示すグラフである。図12Bは、除去された全シュウ酸塩の割合を説明するグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマー材料に包埋された1以上のシュウ酸塩分解酵素を含有する粒子を含む組成物であって、ここで、包埋酵素は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシンを含むUSP人工胃液中、pH>2(例えば、pH約2.5〜pH約3.5の範囲、例えばpH約3等)、37℃で少なくとも60分間のインキュベーションに際して、同じバッチ由来の1以上の非包埋酵素の活性の少なくとも2倍の活性を維持する、前記組成物。
【請求項2】
1以上のシュウ酸塩分解酵素の活性が、pHが約1.0〜約4.5の範囲(例えば、pH約2.0〜pH約3.0)であるバッファー水溶液中で60分間インキュベーションし、初期活性を100%と設定した場合に、最大約30%に減少する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記活性が、初期活性を100%と設定した場合に、最大約40%に減少(例えば、最大約50%に減少、最大約60%に減少、または最大約70%に減少等)する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記活性が、初期活性を100%と設定した場合に、最大80%に減少する、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
1以上のシュウ酸塩分解酵素の活性が、pHが約1.0〜約4.5の範囲(例えば、pH約2.0〜pH約3.0等)のバッファー水溶液中で2時間インキュベーションし、初期活性を100%と設定した場合に、最大約20%に減少する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記活性が、初期活性を100%と設定した場合に、最大30%に減少する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記バッファーが、プロテアーゼ(例えばペプシン等)をさらに含む、請求項2〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ペプシンの濃度が約0.5mg/ml〜約10mg/mlの範囲(例えば、約1mg/ml〜約7.5mg/ml、約2.5mg/ml〜約4mg/ml、例えば約3.2mg/ml等)である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
1以上のシュウ酸塩分解酵素が、単離/精製酵素である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
1以上のシュウ酸塩分解酵素が、シュウ酸デカルボキシラーゼ、オキサリルCoAデカルボキシラーゼ、またはシュウ酸オキシダーゼとホルミルCoAトランスフェラーゼとの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
1以上のシュウ酸塩分解酵素が、シュウ酸デカルボキシラーゼである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
1以上の包埋シュウ酸塩分解酵素が、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>2(例えば、pH約2.5〜pH約3.5の範囲、例えばpH約3等)、37℃で少なくとも60分間のインキュベーションに際して、同じバッチ由来の1以上の非包埋遊離酵素の活性の少なくとも2倍(例えば、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍)の活性を維持する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1のポリマー材料が、それ自身および/または1以上の酵素に架橋結合する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>2(例えば、pH約2〜pH約5の範囲、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも30分間(例えば、少なくとも60分間、例えば少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間等)のインキュベーションに際して維持される酵素活性のレベルが、架橋結合していないが同じバッチの組成物と比較して、少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍等)に増加する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記粒子が第2のポリマー材料でコーティングされている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>2(例えば、pH約2〜pH約5の範囲、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間(例えば、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間等)のインキュベーションに際して維持される酵素活性のレベルが、第2のポリマー材料でコーティングされていないが同じバッチの組成物と比較して、少なくとも2倍(例えば、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍等)に増加する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記第1のポリマー材料および/または前記第2のポリマー材料が、それ自身に、および/または互いに、および/または1以上の酵素に架橋結合する、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間(例えば、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間等)のインキュベーションに際して維持される酵素活性のレベルが、架橋結合および第2のポリマー材料の層の両方を有さないが同じバッチの組成物と比較して、少なくとも2倍(例えば、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍等)に増加する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記架橋結合が物理的架橋結合によって形成される、請求項13〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記架橋結合が化学的架橋剤の使用によって形成される、請求項13〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記化学的架橋剤が、ジアルデヒド、1-エチル-3[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC)、ジスクシンイミジルスベラート(DSS)、およびN-[p-マレイミドフェニル]イソシアナート(PMPI)からなる群より選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記ジアルデヒドが、グルタルアルデヒドおよびグリオキサルからなる群より選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記ジアルデヒドがグルタルアルデヒドである、請求項21または22に記載の組成物。
【請求項24】
化学的架橋剤と1以上の酵素および/または第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料との間の結合が、還元剤によって還元された、請求項20〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記還元剤が、NaBH4およびNaCNBH3からなる群より選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間(例えば、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間等)のインキュベーションに際して維持される酵素活性のレベルが、還元剤に曝露されていない同じバッチの組成物と比較して、少なくとも2倍(例えば、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍)に増加する、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
1以上の包埋酵素が、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間(例えば、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間等)のインキュベーションに際して、同じバッチ由来の1以上の非包埋遊離酵素の活性の、少なくとも2倍(例えば、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍等)の活性を維持する、請求項1〜26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
1以上の包埋酵素が、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間(例えば、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間等)のインキュベーションに際して、これらの初期活性の少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%等)を維持する、請求項1〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
1以上の酵素が、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間(例えば、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間等)のインキュベーションに際して、これらの初期活性の約95%〜約100%を維持する、請求項1〜28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記第1のポリマー材料、および、もし存在するのであれば、前記第2のポリマー材料が、1以上の酵素によって触媒される反応の基質および産物が前記ポリマー材料を介して拡散できるように、低分子に対して浸透性である、請求項1〜29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
前記粒子が、約50nm〜約1mm(例えば約500nm〜約500μm、約1μm〜約500μm、約2μm〜約100μm、約4μm〜約80μm、約6μm〜約60μm、約8μm〜約40μm、約10μm〜約20μ等)の直径を有する、請求項1〜30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
前記第1のポリマー材料および/または前記第2のポリマー材料が、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間(例えば、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間等)のインキュベーションに際して、実質的に無傷のままである、請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
前記第1のポリマー材料および/または前記第2のポリマー材料が多糖類である、請求項1から32のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
前記多糖類が、キトサン、アルギン酸塩、ペクチン、およびヒアルロン酸からなる群より選択される、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記第1のポリマー材料および前記第2のポリマー材料が同一であるかまたは異なる、請求項15〜34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
前記第1のポリマー材料、および、もし存在するのであれば、前記第2のポリマー材料のポリマー割合が、約1%〜約10%(例えば約2%〜約3%等)である、請求項1〜35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
200gのホウレンソウ中に存在するシュウ酸塩の少なくとも40%(例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも95%、または少なくとも99%等)が、20mgの1以上のシュウ酸塩分解酵素を含む組成物によって1時間以内にpH=2.5で分解される、請求項1〜36のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項1】
第1のポリマー材料に包埋された1以上のシュウ酸塩分解酵素を含有する粒子を含む組成物であって、ここで、包埋酵素は、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシンを含むUSP人工胃液中、pH>2(例えば、pH約2.5〜pH約3.5の範囲、例えばpH約3等)、37℃で少なくとも60分間のインキュベーションに際して、同じバッチ由来の1以上の非包埋酵素の活性の少なくとも2倍の活性を維持する、前記組成物。
【請求項2】
1以上のシュウ酸塩分解酵素の活性が、pHが約1.0〜約4.5の範囲(例えば、pH約2.0〜pH約3.0)であるバッファー水溶液中で60分間インキュベーションし、初期活性を100%と設定した場合に、最大約30%に減少する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記活性が、初期活性を100%と設定した場合に、最大約40%に減少(例えば、最大約50%に減少、最大約60%に減少、または最大約70%に減少等)する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記活性が、初期活性を100%と設定した場合に、最大80%に減少する、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
1以上のシュウ酸塩分解酵素の活性が、pHが約1.0〜約4.5の範囲(例えば、pH約2.0〜pH約3.0等)のバッファー水溶液中で2時間インキュベーションし、初期活性を100%と設定した場合に、最大約20%に減少する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記活性が、初期活性を100%と設定した場合に、最大30%に減少する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記バッファーが、プロテアーゼ(例えばペプシン等)をさらに含む、請求項2〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ペプシンの濃度が約0.5mg/ml〜約10mg/mlの範囲(例えば、約1mg/ml〜約7.5mg/ml、約2.5mg/ml〜約4mg/ml、例えば約3.2mg/ml等)である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
1以上のシュウ酸塩分解酵素が、単離/精製酵素である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
1以上のシュウ酸塩分解酵素が、シュウ酸デカルボキシラーゼ、オキサリルCoAデカルボキシラーゼ、またはシュウ酸オキシダーゼとホルミルCoAトランスフェラーゼとの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
1以上のシュウ酸塩分解酵素が、シュウ酸デカルボキシラーゼである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
1以上の包埋シュウ酸塩分解酵素が、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>2(例えば、pH約2.5〜pH約3.5の範囲、例えばpH約3等)、37℃で少なくとも60分間のインキュベーションに際して、同じバッチ由来の1以上の非包埋遊離酵素の活性の少なくとも2倍(例えば、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍)の活性を維持する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1のポリマー材料が、それ自身および/または1以上の酵素に架橋結合する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>2(例えば、pH約2〜pH約5の範囲、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも30分間(例えば、少なくとも60分間、例えば少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間等)のインキュベーションに際して維持される酵素活性のレベルが、架橋結合していないが同じバッチの組成物と比較して、少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍等)に増加する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記粒子が第2のポリマー材料でコーティングされている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>2(例えば、pH約2〜pH約5の範囲、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間(例えば、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間等)のインキュベーションに際して維持される酵素活性のレベルが、第2のポリマー材料でコーティングされていないが同じバッチの組成物と比較して、少なくとも2倍(例えば、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍等)に増加する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記第1のポリマー材料および/または前記第2のポリマー材料が、それ自身に、および/または互いに、および/または1以上の酵素に架橋結合する、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間(例えば、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間等)のインキュベーションに際して維持される酵素活性のレベルが、架橋結合および第2のポリマー材料の層の両方を有さないが同じバッチの組成物と比較して、少なくとも2倍(例えば、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍等)に増加する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記架橋結合が物理的架橋結合によって形成される、請求項13〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記架橋結合が化学的架橋剤の使用によって形成される、請求項13〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記化学的架橋剤が、ジアルデヒド、1-エチル-3[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC)、ジスクシンイミジルスベラート(DSS)、およびN-[p-マレイミドフェニル]イソシアナート(PMPI)からなる群より選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記ジアルデヒドが、グルタルアルデヒドおよびグリオキサルからなる群より選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記ジアルデヒドがグルタルアルデヒドである、請求項21または22に記載の組成物。
【請求項24】
化学的架橋剤と1以上の酵素および/または第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料との間の結合が、還元剤によって還元された、請求項20〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記還元剤が、NaBH4およびNaCNBH3からなる群より選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間(例えば、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間等)のインキュベーションに際して維持される酵素活性のレベルが、還元剤に曝露されていない同じバッチの組成物と比較して、少なくとも2倍(例えば、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍)に増加する、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
1以上の包埋酵素が、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間(例えば、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間等)のインキュベーションに際して、同じバッチ由来の1以上の非包埋遊離酵素の活性の、少なくとも2倍(例えば、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍等)の活性を維持する、請求項1〜26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
1以上の包埋酵素が、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間(例えば、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間等)のインキュベーションに際して、これらの初期活性の少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%等)を維持する、請求項1〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
1以上の酵素が、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間(例えば、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間等)のインキュベーションに際して、これらの初期活性の約95%〜約100%を維持する、請求項1〜28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記第1のポリマー材料、および、もし存在するのであれば、前記第2のポリマー材料が、1以上の酵素によって触媒される反応の基質および産物が前記ポリマー材料を介して拡散できるように、低分子に対して浸透性である、請求項1〜29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
前記粒子が、約50nm〜約1mm(例えば約500nm〜約500μm、約1μm〜約500μm、約2μm〜約100μm、約4μm〜約80μm、約6μm〜約60μm、約8μm〜約40μm、約10μm〜約20μ等)の直径を有する、請求項1〜30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
前記第1のポリマー材料および/または前記第2のポリマー材料が、84mM HClおよび3.2mg/mlペプシン中、pH>1(例えば、pH約1〜pH約5の範囲、例えば、pH約2〜pH約5、pH約2.5〜pH約4.5、pH約2.5〜pH約3.5、例えばpH約3)、37℃で少なくとも60分間(例えば、少なくとも80分間、少なくとも100分間、少なくとも120分間、少なくとも140分間、少なくとも160分間、少なくとも180分間、少なくとも200分間、少なくとも220分間、または少なくとも240分間等)のインキュベーションに際して、実質的に無傷のままである、請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
前記第1のポリマー材料および/または前記第2のポリマー材料が多糖類である、請求項1から32のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
前記多糖類が、キトサン、アルギン酸塩、ペクチン、およびヒアルロン酸からなる群より選択される、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記第1のポリマー材料および前記第2のポリマー材料が同一であるかまたは異なる、請求項15〜34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
前記第1のポリマー材料、および、もし存在するのであれば、前記第2のポリマー材料のポリマー割合が、約1%〜約10%(例えば約2%〜約3%等)である、請求項1〜35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
200gのホウレンソウ中に存在するシュウ酸塩の少なくとも40%(例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも95%、または少なくとも99%等)が、20mgの1以上のシュウ酸塩分解酵素を含む組成物によって1時間以内にpH=2.5で分解される、請求項1〜36のいずれか1項に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−519950(P2009−519950A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545854(P2008−545854)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/047967
【国際公開番号】WO2007/075447
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(508178191)オクセラ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/047967
【国際公開番号】WO2007/075447
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(508178191)オクセラ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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