説明

ショットピーニング装置

【課題】施工効率を維持しつつも均一なピーニングが可能なショットピーニング装置を提供する。
【解決手段】被施工体3に対して噴射されるショットの供給部に接続されているノズル1aと、ノズル1aの被施工体3側にノズル1aと一体となって設けられ、被施工体3側に向かって末広形状のディフューザ1bとを備え、ディフューザ1bの被施工体3と相対する断面が円形状であり、ディフューザ1b内部に、被施工体3に対して噴射される前記ショットの流れを制御するショット流制御手段1cが少なくとも1つ設けられているショットピーニング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットピーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ショットピーニングは、金属あるいはセラミックス等からなる球状や粒状のショットを被施工部に衝突させることで被施工部(被施工体の表層部)に塑性変形を与え、当該被施工部周囲の弾性変形部に拘束させることにより圧縮残留応力を与える表面改質方法である。塑性変形時には表層部の引張残留応力が圧縮残留応力へと変換されるため、応力腐食割れの原因となる引張残留応力を除去することができ、応力腐食割れの防止を図ることができる。
【0003】
このような技術として、例えば特許文献1には、ショット供給部と、ショット供給部側に一端が接続されたホースの他端に接続されたノズルと、ノズルのショット噴射側に設けられ噴射したショットを取り囲むように構成されたディフューザとを備えるショットピーニング装置が記載されている。そして、当該ディフューザは、その断面が偏平状又は角筒状に形成され、施工対象側に向かって末広となっており、施工対象側先端部の内部に少なくとも1つのショット拡散体を設けたショットピーニング装置が記載されている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、ショットピーニングを用いた表面改質方法として、ショットの直径が1.5mm以上であり、且つ、当該ショットが施工対象部位の表面に衝突するときのショット速度を25m/秒以下にする表面改質方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−120153号公報
【特許文献2】特開2008−137141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ショットピーニング装置には、被施工体に対してショットが噴射される部材が備えられる。そして、ピーニング時には、通常はこの部材直下に存在する被施工部でのピーニング強度が最も強く、部材直下の被施工部からの距離が遠くなればなるほど、ピーニング強度は弱くなる。そのため、ピーニング時、局所的にピーニング強度が強くなる被施工部が発生し、ピーニング強度が強くなると、被施工部の加工硬化が大きくなってしまい、応力腐食割れを防止する効果が低下することが懸念される。また、ピーニング強度が被施工部の場所によって異なるため、被施工体の全域に亘って均一にピーニングを行うことが困難である。
【0007】
このような課題を解決するために、例えば特許文献1に記載の技術においてはディフューザ内に拡散体が設けられている。しかしながら、この技術において噴射されたショットは、角型のディフューザ内で拡散体によってショットが拡散されているのみである。従って、特許文献1に記載の技術においては施工ムラが生じることがあり、前記課題を解決するにあたって、特許文献1に記載の技術では依然として不十分である。
【0008】
また、被施工体を構成する材料によっては、ピーニング強度が強くなると被施工部の加工硬化が大きくなってしまい、応力腐食割れを防止する効果が低下することが懸念される。このような状況を避けるべく、例えば特許文献2に記載の技術のように、ショット直径やショット速度を制御する等してショット噴射時のピーニング強度を弱めることが考えられる。しかしながら、ショット噴射時のピーニング強度を弱めれば、通常は施工効率が低下する。さらには、前記特許文献1に記載の技術が有する課題を依然として解決できない。
【0009】
本発明は前記の課題に鑑みて為されたものであり、その目的は、施工効率を維持しつつも均一なピーニングが可能なショットピーニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、ショットピーニング装置を構成するディフューザを略円錐形状とし、さらにその内部にショット流を制御する手段を設けることにより前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0011】
本発明に拠れば、施工効率を維持しつつも均一なピーニングが可能なショットピーニング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るショットピーニング装置が備える先端部材の断面図である。
【図2】ショット噴出部の(a)断面図、及び(b)下方からの斜視図である。
【図3】(a)ディフューザの下端面を格子状に区切った様子を示す図、(b)ショット噴出部走行時のピーニング強度を説明するための図である。
【図4】各ラインにおけるピーニング強度を示す図である。
【図5】ショット流制御手段の変形例を示す、下方からの斜視図である。
【図6】ショット流制御手段の変形例を示す、下方からの斜視図である。
【図7】ショット流制御手段の変形例を示す、下方からの斜視図である。
【図8】(a)ショット流制御手段を備えるリングについての上側面図、(b)A−A線断面図、(c)図8(a)に示すリングをディフューザの下端部に装着した状態のショット噴射部を示す、下方からの斜視図である。
【図9】図8(c)に示すショット噴射部をガンヘッドに装着した先端部材の断面図である。
【図10】リングの変形例を示す(a)上側面図、及び(b)B−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(本実施形態)を図面を適宜参照しながら説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を損なわない範囲で任意に変更して実施可能である。
【0014】
[1.第1実施形態]
[全体構成]
本実施形態に係るショットピーニング装置は、図1に示すように、ショットを被施工体3に噴射する先端部材10と、先端部材10とホース等(図示しない。)によって接続され、先端部材10にショットを供給するショット供給部(図示しない。)と、先端部材10内から回収されたショットを貯蔵するショット回収部(図示しない。)と、を少なくとも備えている。
【0015】
〔先端部材10〕
先端部材10は、ショット噴射部1Aと、ガンヘッド2とからなる。そして、ショット噴射部1Aのノズル1aが、ガンヘッド2の筒状部2bに嵌合され、ショット噴射部1Aがガンヘッド2に固定されている。このように固定されることで、ショット噴射部1Aから噴射されたショットが被施工体3に安定して供給されるようになっている。
【0016】
(ショット噴射部1A)
ショット噴射部1Aは、図2に示すように、ノズル1aと、ディフューザ1bと、2つのショット流制御手段1cと、間隙1dと、により構成される。
【0017】
ノズル1aは、その上端部にショット供給部が接続されている。従って、ショット供給部から供給されたショットは、はじめにノズル1a内部に供給される。ノズル1aの形状は円筒形状である。ただし、その内径に関しては、ショット供給部に接続される側の内径が、ディフューザ1bに接続される側の内径よりも大きくなるように構成されている。ノズル1aの内径がこのように構成されていることにより、即ち、ノズル1aがディフューザ1bに向けてやや絞られることにより、ショットと圧縮空気との混合物(詳細は後記する。)を被施工体3に噴射する際の噴射速度の高速化を図ることができる。なお、ノズル1aは、その外径が他の部分(ディフューザ1b)よりも細くなっている。
【0018】
ノズル1aは、セラミックス、硬質の鋼等の硬質の材料によって構成されている。このようにノズル1aを硬質の材料によって構成することにより、ショットの衝突によるノズル1aの磨耗を避けることができる。従って、ノズル1aの耐久性を向上させることができる。
【0019】
ディフューザ1bは、その内部で、ノズル1aに供給されたショットを均一に拡散するものである。ディフューザ1bは、ショット供給部が接続される側のノズル1aの反対側端部に、溶接等によって固定されている。ディフューザ1bの形状は、ノズル1aとの接続端からショットが噴射される被施工体3側に向かって、末広の略円錐形状となっている。ここで、略円錐形状とは、円錐の先端付近が、底面に平行な面を形成するように切除されている形状である。
【0020】
例えば前記特許文献1に記載の技術のように、ディフューザ1bが角型形状のものであると、ショットが被施工体3に噴射された際に噴射ムラを生じることがあり、均一なピーニングを行えないことがある。しかしながら、ディフューザ1bが略円錐形状を有することにより、ノズル1aから噴射されたショットをディフューザ1b内で均一に拡散することができる。そのため、被施工体3に対するピーニング強度を、計算式によって容易に算出することができる(詳細は後記する。)。
【0021】
ショット流制御手段1cは、被施工体3に対して噴射されるショットの流れを制御するものである。ショット流制御手段1cは、ディフューザ1bの下端部にボルト(図示しない。)によってディフューザ1bに固定されている。ボルトを用いてショット流制御手段1cを固定することにより、様々な大きさのショット流制御手段1cを適宜交換することができる。そのため、被施工体3におけるピーニングの程度を観察しながら適宜ショット流制御手段1cを交換して被施工体3に直接噴射されるショット数量を変更することにより、被施工体3に対するピーニング強度を容易に変更することができる。
【0022】
なお、ショット流制御手段1cは、溶接等によってディフューザ1bの下端部に固定されるようにしてもよい。
【0023】
ショット流制御手段1cがディフューザ1b内に設けられることにより、ノズル1aから噴射されたショットの一部のみが間隙1dを通じて被施工体3に直接噴射されることになる。従って、ショット流制御手段1cは、ピーニング施工分布を調整する手段としても機能する。つまり、ショット流制御手段1cを変化させることにより、ピーニング施工される被施工体3の範囲が変化する。
【0024】
ショット流制御手段1cは、セラミックス、硬質の鋼等の硬質の材料によって構成されている。このようにショット流制御手段1cを硬質の材料によって構成することにより、ノズル1aからのショットの衝突による磨耗を避けることができる。従って、ショット流制御手段1cの耐久性を向上させることができる。
【0025】
間隙1dは、2つのショット流制御手段1c,1cの間に設けられるものである。即ち、ディフューザ1bの下側端面の面積は一定であるため、間隙1dの大きさはショット流制御手段1cの大きさによって決定される。ここで、本発明者らの検討により得られた、ショット流制御手段1c及び間隙1dの大きさと、被施工体3に対するピーニング強度との関係について、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0026】
前記のように、被施工体3に対するピーニングは、ノズル1aから噴射された後ディフューザ1b内で均一に拡散したショットの一部のみによって行われる。即ち、ディフューザ1b内で拡散されたショットの一部のみが被施工体3に到達し、残りのショットはショット流制御手段1cに衝突して運動エネルギの大半を失うことになる。
【0027】
そして、このように運動エネルギの大半を失ったショットは、被施工体3に対するピーニングに関与することなく、間隙1dを通って被施工体3上に落下する。その後、ピーニングに関与しなかったショットは、被施工体3に直接到達してピーニングに関与したショットとともに、先端部材10(図1参照)の外部へ排出(回収)される。
【0028】
被施工体3に直接到達するショット数(即ち、ショット流制御手段3に衝突しなかったショット数)は、ショット流制御手段1cの形状や大きさを調整することにより、任意に制御可能である。このように、被施工体3に直接到達するショット数を制御することにより、被施工体3に対するピーニング強度を所望のものに制御することができる。即ち、ピーニング強度を所望のものに制御できれば、被施工体3におけるピーニング強度の局所的な強弱の発生を防止することができる。
【0029】
前記の検討のもと、図3(a)に示すようにディフューザ1bの下端面(ショット流制御手段1cが存在しない状態を考えている。)を格子状に分割して、各格子を通過するショットによるピーニング強度を考える。
【0030】
円形状のディフューザ1bの下端面(直径をDとする。)を、ショット噴射部1Aの走行直交方向(行)に1、2、・・・、i、・・・、n−1、nのように、1からnまで長さL毎に分割する。また、ショット噴射部1Aの走行平行方向(列)に1、2、・・・、j、・・・、N−1、Nのように、1からNまで長さL毎に分割する。このとき、n及びNは、下記式(1)を満たす数である。
【数1】

ただし、0<L≦Lとする。
【0031】
そして、このように分割して得られた任意の格子において、i行j列の格子を、「格子(i,j)」と表す。
【0032】
図3(b)はショット噴射部1Aを走行させてピーニング施工を行った際のピーニング施工範囲を、ショット噴射部1Aの走行方向に垂直な方向にn分割した図である。図3の紙面上側から下側に順に、ライン1、ライン2、・・・、ラインi、・・・、ラインn−1、ラインnとする。
【0033】
図3に示すように、ラインiのピーニング強度は、i行の各格子((i,1)、(i,2)、・・・、(i,N−1)及び(i,N))におけるピーニング強度の総和に等しい。従って、仮に、ショット流制御手段1cを設けない場合を考えると、この場合の各ラインのピーニング強度は下記式(2)で表される。ただし、このようなショット流制御手段1cを設けない場合には、格子の面積は間隙1dの面積と同じものとなる。
【0034】
【数2】

ここで、Fはラインiのピーニング強度、ai,jは格子(i,j)におけるピーニング強度、Nは分割数、Si,jは格子(i,j)に含まれる前記ディフューザ1bの下端面の面積である。
【0035】
ピーニング強度は、主に、ショット1個あたりのピーニング力(ショット速度、ショット重量等により決定される運動エネルギ)と、被施工体の単位面積あたりに衝突するショットの数等によって決定される。そして、被施工体におけるピーニング強度は、基本的には、ショット速度、ショット数量等を増加させると強くなり、減少させると弱くなる傾向にある。
【0036】
そこで、ショット流制御手段1cを設けることにより、各格子を通過するショット数量が調整可能となり、格子単位でのピーニング強度が制御可能となる。また、前記式(2)において示したように、各ラインのピーニング強度は当該ライン上の各格子におけるピーニング強度の総和に等しいことから、ライン毎のピーニング強度も制御可能となる。
【0037】
これらのことを鑑みると、ショット流制御手段1cを設けた場合、ラインiにおけるピーニング強度とショット流制御手段1c及び間隙1dの面積との関係は、下記式(3)で示される。
【0038】
【数3】

ここで、F、ai,j、N、及びSi,jは前記式(2)の場合と同様のものを表し、Ai,jは格子(i,j)に含まれるショット流制御手段1cの面積である。即ち、(Si,j−Ai,j)は、格子(i,j)に含まれる間隙1dの面積である。
【0039】
前記式(3)に示すように、ショット流制御手段1cの大きさ(即ち間隙1dの大きさ)を制御すると、ピーニング強度を制御することが可能となる。より具体的に言えば、先端部材10が移動する方向の各ライン内での、ショット流制御手段1cの面積によって、各ラインのピーニング強度が決定されることになる。換言すると、各ライン内でのショット流制御手段1cの占める面積が一定であれば、ディフューザ1b内でのショット流制御手段1cの具体的な形状は任意なものとなる。
【0040】
また、前記したように本実施形態においてはディフューザ1bが略円錐形状となっているため、ディフューザ1b内でショットが均一に拡散する。従って、前記式(3)に基づいて各ラインのピーニング強度を制御することにより、ピーニング強度を必要以上に低下させること無く、被施工体3の全域に亘って均一にピーニングを行うことができる。
【0041】
具体的に説明するために、本発明者らの検討によって得られたグラフを図4に示す。
【0042】
図4はショット流制御手段1cを設ける前と設けた後との、各ラインのピーニング施工範囲におけるピーニング強度を示すグラフである。破線がショット流制御手段1cを設ける前のピーニング強度、実線がショット流制御手段1cを設けた後のピーニング強度を示している。なお、詳細は後記するが、ノズル1aは紙面右方向に走査するようになっている。そして、図4に示すグラフは、ノズル1aが紙面右方向に走査しているときのピーニング強度を示している。
【0043】
図4に示すように、ショット流制御手段1cを設ける前は(破線)、ショットが噴射されるノズル1aの直下であるラインでピーニング強度が最も大きい。一方で、前記直下から離れたディフューザ1bの内壁面近傍(ライン1、ラインn等)では、ピーニング強度が低いものとなっている。
【0044】
しかしながら、ショット流制御手段1cを設けた後は(実線)、ノズル1aの直下であることや、ディフューザ1bの内壁面からの距離に関らず、均一なピーニング強度となっている。即ち、ショット流制御手段1cを設けることにより、ピーニング強度の大きかったラインのピーニング強度が、最もピーニング強度の小さかったライン(ライン1、ラインn)のピーニング強度と同程度まで均一化され、均一な分布になっている。
【0045】
このように、ディフューザ1bの下端部にショット流制御手段1cを設けることにより、均一な強度でピーニングを行うことができる。従って、ムラ無くピーニングを行うことができる。この際、ショット流制御手段1c(若しくは間隙1d)の大きさは、前記式(3)に基づいて決定することができる。
【0046】
(ガンヘッド2)
図1に示すように、先端部材10は、ショット噴射部1Aをガンヘッド2に固定されてなる。具体的には、ガンヘッド2を構成する筒状部2bに対し、ノズル1aを嵌合させることにより固定している。なお、図1においては図示していないが、ショット噴射部1Aのガンヘッド2への固定は、筒状部2bを貫通するボルト等によって、ノズル1aが筒状部2b(即ちガンヘッド2)に固定されている。なお、ショット噴射部1Aのガンヘッド2への固定は、溶接等によって行ってもよい。
【0047】
また、ガンヘッド2には、ノズル1aから噴射されたショットをショット回収部に回収するためのショット回収口2aが設けられている。これにより、ガンヘッド2内部と被施工体3の上面とに存在するショットを、ショット回収部に回収することができる。
【0048】
また、ガンヘッド2は、セラミックス、硬質の鋼等の硬質の材料により構成されている。このような材料によって構成することで、ショットによる磨耗を低減させることができ、その結果、ガンヘッド2の耐久性を向上させることができる。
【0049】
〔ショット供給部及びショット回収部〕
第1実施形態においては、先端部材10を構成するノズル1aとショット供給手段(図示しない。)とがホース等によって接続されている。そして、ショット供給手段において被施工体3に噴射するショットと圧縮空気とが混合され、当該混合物がホース等を介してノズル1aからディフューザ1b内部に拡散するようになっている。
【0050】
また、ショット回収部(図示しない。)は、前記のようにガンヘッド2を構成するショット回収口2aとホース等により接続されている。そして、前記のように、ノズル1aから噴射され、ショット流制御手段1cに衝突して運動エネルギの大半を失ったショット、並びに、間隙1dを通って被施工体3に直接衝突したショットが、ショット回収口2aを通ってショット回収部に回収されるようになっている。
【0051】
〔作用効果〕
図1及び図3(b)に示したように、被施工体3に先端部材10を密着させ、横方向に先端部材10(ノズル1a及びディフューザ1b等)を走行(走査)させることにより、加工効率を必要以上に低下させることなく、被施工体3の全面に亘って均一なピーニングを行うことができる。従って、例えば被施工体3が板状のものである場合、当該板の一端から他端に向かって複数回先端部材10を走行させることにより、板状の被施工体3の全面をピーニングできる。なお、横方向とは、1つのショット流制御手段1cの端部同士を結ぶ線に対して直交する方向を表す。
【0052】
[2.変更例]
以上、具体的な実施形態を挙げて本実施形態を説明したが、本発明は、その要旨を損なわない限り、前記の実施形態に何ら制限されるものではない。
【0053】
例えば、図5〜図7に示すように、ショット流制御手段1cの数を1つにしたり(図5)、間隙1dの数を複数にしたり(図6)、ショット流制御手段1cの形状を円弧状のものとしたり(図7)してもよい。また、ショット流制御手段1cが、ディフューザ1bの下端面とノズル1aの直下との交差点を中心として、左右対称に設けられてもよいし、左右非対称に設けられてもよい。
【0054】
例えば図5に示すショット噴射部1Aの製造時には、1つのショット流制御手段1cを作製すればよいため、ショット流制御手段1cの製造が容易になり、製造コストの削減になる。
【0055】
また、例えば図6に示すショット噴射部1Aの製造時には、例えば1つの円板部材を所望の断面積を有する角材等で当該円板部材を打ち抜くことで間隙1dを容易に形成することができる。そのため、ショット流制御手段1cの製造時間の短縮を図ることができる。
【0056】
さらに、例えば図7に示すショット噴射部1Aの製造時には、例えば2つの円板部材について、ディフューザ1bの下端部に固定できる形状にそれぞれ1箇所ずつ加工を施せばよいため、ショット流制御手段1cの製造時間の短縮を図ることができる。
【0057】
また、図8に示すように、ショット流制御手段1cが予め固定されたリング部材4を製造し、リング部材4をディフューザ1bの下端部に装着することで、ショット噴射部1Bが構成されていてもよい。リング部材4は、輪状突起4aと、リング本体4bと、ショット回収穴4cとを有して構成されているものである。
【0058】
例えばショット流制御手段1cの大きさ(つまり間隙1dの大きさ)を種々変更したリング部材4を用意し、それらを適宜ディフューザ1bの下端部に装着することにより、ショット噴射部1Bのショット流制御手段1cの大きさを容易に変更することができる。そのため、被施工体3でのピーニングの程度を観察しながら適宜リング部材4を変更することで、より確実かつ容易にピーニング強度の均一化を図ることができる。
【0059】
なお、図8において図示していないが、リング部材4のディフューザ1bへの固定はボルト等により行われている。従って、より確実かつ容易にピーニング強度の均一化を図りつつも、運動エネルギの大きなショットが衝突した際のリング部材4の脱離をより確実に防止することができる。
【0060】
そして、図8に示すショット噴射部1Bをガンヘッド2に固定した様子を示したものが図9である。図9に示す先端部材20においては、リング部材4のリング本体4bは、ガンヘッド2に内接する大きさ(直径)となるように構成されている。リング本体4bの大きさをこのように構成することで、ショット噴射部1Bをガンヘッド2に対してより確実に固定することができる。従って、被施工体3に対するピーニング強度を、より厳密に制御することができる。
【0061】
なお、リング部材4は、ガンヘッド2を貫通する図示しないボルトによって、ガンヘッド2に固定されるようにしてもよい。このようにすることで、さらにより確実に、ショット噴射部1Bをガンヘッド2に固定することができる。
【0062】
また、図9に示す先端部材20においても、ノズル1aから噴射されたショットは、ショット流制御手段1cに衝突して運動エネルギの大半を失ったものと、間隙1dを通って直接被施工体3に衝突したものになる。そして、先端部材10において説明した場合と同様に、ショット流制御手段1cに衝突したショットは、大半の運動エネルギを失ったまま間隙1dを通って被施工体3まで落下することになる。その後、被施工体3に直接衝突したショットと、被施工体3に落下したショットとは、ともにショット回収穴4c及びショット回収口2aを通り、ショット回収部に回収されるようになっている。
【0063】
なお、ショット噴射部1Bの下端部に装着されるリング部材4としては、図10に示すものであってもよい。図10に示すリング部材4においては、ショット流制御手段1cが、ノズル1aの直下の位置に設けられている。このように、ショット流制御手段1
cをノズル1aの直下の位置を含むように設けることで、ノズル1aからのショットの噴射強度が最も強い部位でのピーニングを防止することができ、さらなるピーニング強度の均一化を図ることができる。なお、図10に示すショット流制御手段1cにおいては、ショット流制御手段1cの直径が、ショット流制御手段1cの端部同士を結ぶ線となる。
【0064】
そして、図10に示すショット流制御手段1cは、被施工体3へのショット流を極力妨げず、ショット流制御手段1cを確実に固定できる程度の太さのアーム部材1eにより、リング本体4bに溶接等により固定されている。このように、ショット流制御手段1cが円板状の部材であることにより、ショット流制御手段1cの加工を行う必要がない。そのため、リング部材4の製造コストの削減、製造時間の短縮等の利点がある。
【0065】
[3.その他の変更例]
前記[2.変更例]に挙げた変更例以外にも、種々の変更が可能である。例えば図1においては、ショット流制御手段1cの下側面(外側面)と被施工体3の上側面とが平行になるように設けているが、ショット流制御手段1cの上側面(内側面)が間隙1dに向かって下るように傾斜が設けられていてもよい。このようにすることで、ショット流制御手段1cに衝突したショットの、被施工体3への落下を促進することができる。
【0066】
また、ショット流制御手段1c及び間隙1dの数は、前記の説明及び図示した数に制限されず、それらの面積が前記式(3)を満たすように適宜変更して設定できる。
【0067】
また、図9に示す実施形態において、ガンヘッド2の内壁面に突起を形成し、リング本体4bの下端面と当該突起とが当接するようにして、リング部材4の位置を固定するようにしてもよい。このような構成にすることでも、ピーニング中にリング部材4がディフューザ1bから外れることをより確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0068】
1A,1B ショット噴射部
1a ノズル
1b ディフューザ
1c ショット流制御手段
1d 間隙
1e アーム部材
2 ガンヘッド
2a ショット回収口
2b 筒状部
3 被施工体
4a 輪状突起(リング部材)
4b リング本体(リング部材)
4c ショット回収穴(リング部材)
10,20 先端部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施工体に対して噴射されるショットの供給部に接続されているノズルと、
該ノズルの被施工体側に該ノズルと一体となって設けられ、前記被施工体側に向かって末広形状のディフューザとを備え、
該ディフューザの前記被施工体と相対する断面が円形状であり、
該ディフューザ内部に、前記被施工体に対して噴射される前記ショットの流れを制御するショット流制御手段が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする、ショットピーニング装置。
【請求項2】
前記ショット流制御手段における中央部の開口面積と端部との開口面積を比較した時に、前記中央部の開口面積が、前記端部の開口面積よりも小さくなるように前記ショット流制御手段が構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のショットピーニング装置。
【請求項3】
前記ショット流制御手段の端部同士を結ぶ線に対して直交する方向に、前記ノズル及び前記ディフューザが移動されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のショットピーニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−232355(P2012−232355A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100604(P2011−100604)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)