説明

ショーケース

【課題】冷気循環式のショーケースの冷気循環ファンおよび蒸発器の着霜および着霜による目詰まりを抑制し、保冷性能を向上できるショーケースを提供する。
【解決手段】庫内循環通風路内に設置された蒸発器により冷却された冷気を循環ファンにより循環させて庫内を冷却するショーケースにおいて、冷凍機の凝縮器から蒸発器への高圧側の冷媒配管内に直列に2個の膨張弁とこれらの膨張弁にそれぞれ並列に接続された開閉弁を有するバイパス管路とを設け、前記2個の膨張弁間の冷媒配管を庫内循環通風路の前記蒸発器の上流側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、庫内に陳列した商品を冷却するようにした冷気循環式のショーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
冷気循環式のショーケースは、一般に図4に示すような構成を有する。このショーケースは、断熱筐体からなるショーケース本体1とその内側に配置された内箱2との間に庫内循環通風路3が形成されている。この通風路3内には、冷凍機の蒸発器5が設けられ、冷気循環ファン4によりこの蒸発器5に庫内の循環空気が送られる。
このように構成されたショーケースの保冷運転は、冷気循環ファン4により矢印で示すように庫内を循環する空気を通風路3内に配置された冷凍機の蒸発器5により冷却することにより行われる。蒸発器5は図5に示すように、冷凍機の高圧冷媒配管から、膨張弁9により膨張され低温となった冷媒が供給されることによって、冷気循環ファン4により循環される空気を冷却して冷気にする。
蒸発器5で冷却された冷気が冷気循環ファン4により循環されることにより庫内が冷却されるが、循環する冷気が、吹出口6から吸込口7に戻る間にショーケースの周囲の空気を巻き込み、湿気を多く含む空気がファン4により吸い込まれる。この湿気を含む空気が、蒸発器5で熱交換されて冷却されると、湿気が霜となって蒸発器5のチューブコイルおよび放熱フィンの表面や冷気循環ファン4の表面に付着するようになる。この蒸発器5に付着する霜の量(厚さL)は、図2に特性線Aで示すように保冷運転の時間経過とともに増加する。これにより、蒸発器5の放熱フィン間の通風路の断面積が狭められて蒸発器5の通風圧力損失が増大したり、冷気循環ファン4の送風性能が低下したりすることにより庫内循環空気の量が減少するため、ショーケースの保冷性能が低下するようになる。
【0003】
このような着霜による保冷性能の低下を防止するために、従来から、特許文献1に示すように庫内循環通風路3の冷気循環ファン4の上流にシースヒータを設置し、このヒータをタイマー制御することにより間欠的に循環空気を加熱して冷気循環ファンおよび蒸発器の除霜を行う方式が知られている。また、この特許文献1には、凝縮器から蒸発器への冷媒配管の一部をファンの上流に配置し、この冷媒配管の熱により、循環空気を加熱して、ファンおよび蒸発器に付着した霜を除霜することも示されている。
【0004】
さらに、特許文献2に示されるように、蒸発器の入口側に配管した蒸発コイルの一部を放熱フィンの結合されないベア管とし、このベア管に高圧側の冷媒配管を接続することで、蒸発器に供給される空気を蒸発器の前で冷却し、除湿することにより、蒸発器への着霜を抑制する方式も知られている。
【特許文献1】特開平11−281232号公報
【特許文献2】特開2007−078228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記の特許文献1に示された方式は、ファンに付着した霜をヒータで過熱して除霜する方式であるため、除霜のための電力を消費することになり、また、間欠的に暖められた空気が蒸発器に流れ込むため、冷却効率が低下するという問題がある。この方式ではさらに、除湿時間が短いと完全に霜を除去することができない問題もある。
【0006】
また、前記の特許文献2に示された方式では、ベア管に着霜させて除湿しているが、このベア管への着霜量の増加量が、図2に示すように時間とともに減少し、除湿効果が弱まるとともに、ベア管への着霜量の増大とともに、冷気循環路における通風圧力損失が増大する問題がある。
【0007】
この発明は、このような問題を解決するため、冷気循環式のショーケースの冷気循環ファンおよび蒸発器の着霜および着霜による目詰まりを抑制し、保冷性能を向上できるショーケースを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため、この発明は、庫内循環通風路内に設置された蒸発器により冷却された冷気を冷気循環ファンにより循環させて庫内を冷却するショーケースにおいて、冷凍機の凝縮器から蒸発器への高圧側の冷媒配管内に直列に2個の膨張弁とこれらの膨張弁にそれぞれ並列に接続された開閉弁を有するバイパス管路とを設け、前記2個の膨張弁間の中間冷媒配管を延長して庫内循環通風路内の前記蒸発器の上流側に配置したことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記冷媒配管を前記冷気循環ファンの上流側に配置したことを特徴とするものである。
【0010】
さらに、蒸発器から遠い側の膨張弁を開き、開閉弁を閉じ、かつ蒸発器に近い側の膨張弁を閉じ、開閉弁を開いて保冷運転することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、庫内循環通風路内の蒸発器の上流側に凝縮器から蒸発器への高圧側の冷媒配管内に直列に設けた2個の膨張弁の間の中間冷媒配管を配置し、保冷運転中はこの中間冷媒配管を冷却管として作用させることにより、蒸発器の前でこれに循環される空気を冷却して除湿することができるので冷気循環ファンおよび蒸発器への着霜を抑えることができる。したがって、蒸発器の着霜による目詰まりが抑制され、保冷性能の低下を効果的に抑えることができる。また、ショーケースの除霜運転の回数が低減されるとともに、除霜運転を行うときは、前記冷媒配管に高圧冷媒を流して加熱管として作用させることにより、冷気循環ファンおよび蒸発器に付着した霜の除霜のために付加的に電力を加える必要がないことにより除霜運転のための消費電力を著しく低減ですることができるので省エネルギー効果の高いショーケースとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の実施の形態を図に示す実施例について説明する。
【0013】
図1はこの発明の実施例を示す冷媒配管の管路構成図である。
【0014】
図1において、5は、冷気循環式のョーケースの庫内循環通風路3(図4参照)内に配置された冷凍機の蒸発器である。この蒸発器5により冷却された冷気を冷気循環ファン4により庫内に循環させて庫内の冷却を行う。蒸発器5には図示しない冷凍器の凝縮器から供給される高圧の冷媒を供給する高圧側冷媒配管21と、蒸発器5から冷媒を凝縮器に戻す低圧側冷媒配管22とが接続されている。そして高圧側冷媒配管21には、この発明に従って2個の膨張弁9および12が直列に設けられ、かつ、この2個の膨張弁9と12との間の中間冷媒配管21aが、庫内循環通風路3内の蒸発器5および冷気循環ファン4の上流側に延長して配置されている。2個の膨張弁9および12には、それぞれ並列に開閉弁10および13を備えたバイパス管路11および14が接続される。冷媒は矢印で示すような、高圧側冷媒配管21から低圧側冷媒配管22側へ流れる。
【0015】
このように構成されたショーケースにおいて、保冷運転する場合は、高圧側冷媒配管21の上流側(蒸発器5から遠い側)の膨張弁12を開き、開閉弁13を閉じ、かつ下流側(蒸発器に近い側)の膨張弁9を閉じ、開閉弁10を開くようにする。これにより図示しない冷凍機の凝縮器から供給される高圧の冷媒が膨張弁12で膨張されて中間冷媒配管21a−バイパス管11を通して蒸発器5へ供給されるようになる。膨張弁12により膨張された冷媒は低温となるので、中間冷媒配管21aは冷却管として作用し、冷気循環ファン4および蒸発器5の上流において循環通風路3内を循環される空気を冷却し除湿を行う。除湿された湿気は霜として中間冷媒配管21aの表面付着しこの配管21aにより捕捉される。
【0016】
このため、冷気循環ファン4および蒸発器5には中間冷媒配管21aにより除湿され、乾燥された空気が供給されるので冷気循環ファン4および蒸発器5の表面への着霜が抑制され、長時間運転しても冷気循環ファン4および蒸発器5への着霜量を小さく抑えることができる。
【0017】
中間冷媒配管21aの設けられない従来のショーケースにおいては、運転時間の経過とともに着霜量が、図2に特性線Aで示すように増加するが、この発明のショーケースにおいては、着霜量の増加は図2の特性線Bで示すようにこれより緩やかとなる。このため、この発明のショーケースによれば、着霜した霜の厚さDが所定のD0となるまでの運転時間をT1からT2まで大幅に延ばすことができる。したがって、冷気循環ファン4の送風効率の低下および蒸発器5における通風路の目詰まりを長時間抑えることができるので、通風量が安定に維持され、長時間保冷運転効率を高く保つことができる。
【0018】
なお、保冷運転中に中間冷媒配管21aに着霜はあるが、蒸発器5のように放熱フィンがないため、この着霜による通風路の目詰まりはほとんど問題とならない。
【0019】
保冷運転時間が長くなって、蒸発器5への着霜量が所定量を超えると保冷運転効率が低下するので、除霜運転をして、除霜を行うことが必要になる。
【0020】
この発明のショーケースにおいて、除霜運転を行う場合は、高圧側の冷媒配管21の下流の蒸発器5に近い側の膨張弁9を開き、バイパス管路11の開閉弁10を閉じ、そして他方の膨張弁12を閉じ、バイパス管路14の開閉弁13を開くようにする。
【0021】
このようにすると、中間冷媒配管21aに高温の高圧の冷媒が流れ、蒸発器5だけに膨張弁9により膨張されて低温となった冷媒が流れるようになる。これにより中間冷媒配管21aが加熱管として作用し、庫内循環通風路3内の冷気循環ファン4および蒸発器5の上流でこの中間冷媒配管21aによって加熱されて高温となった循環空気により冷気循環ファン4および蒸発器5に付着した霜を解して除去することができる。この発明においては、除霜運転の際は、新たに除霜電力を加えることなく冷凍回路の高温の冷媒の熱を利用するので、除霜運転時の消費電力を低減することができ、省エネルギー効果を高めることができる。
【0022】
この発明によれば、保冷運転中に蒸発器への着霜を抑制することができるので、除霜運転の回数が減じられることにより、ショーケースの庫内温度の上昇を抑え、陳列商品の鮮度を長時間安定に維持することができる。これに加えて、除霜運転時にも余分な電力の投入が必要ないので、省エネルギー効果をより一層高くできる。
【0023】
なお、この発明においては、2個の膨張弁9と12の間の中間冷媒配管21aは、蒸発器5の上流側であれば、図3に示すように庫内循環通風路の冷気循環ファン4と蒸発器5の間に配置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施例によるショーケースの冷媒配管の管路構成図である。
【図2】ショーケースにおける保冷運転中の着霜量の時間変化特性を示す線図である。
【図3】この発明の異なる実施例によるショーケースの冷媒配管の管路構成図である。
【図4】一般的にショーケースの構成を示す断面図である。
【図5】従来のショーケースの冷媒配管の管路構成図である。
【符号の説明】
【0025】
1:ショーケース本体
3:庫内循環通風路
4:冷気循環ファン
5:蒸発器
9、12:膨張弁
10、13:開閉弁
11、14:バイパス管
21:高圧側冷媒配管
21a:中間冷媒配管
22:低圧側冷媒配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
庫内循環通風路内に設置された蒸発器により冷却された冷気を冷気循環ファンにより循環させて庫内を冷却するショーケースにおいて、冷凍機の凝縮器から蒸発器への高圧側の冷媒配管内に直列に2個の膨張弁とこれらの膨張弁にそれぞれ並列に接続された開閉弁を有するバイパス管路とを設け、前記2個の膨張弁間の中間冷媒配管を延長して庫内循環通風路内の前記蒸発器の上流側に配置したことを特徴とするショーケース。
【請求項2】
請求項1に記載のショーケースにおいて、前記冷媒配管を前記冷気循環ファンの上流側に配置したことを特徴とするショーケース。
【請求項3】
請求項1または2に記載のショーケースにおいて、蒸発器から遠い側の膨張弁を開き、開閉弁を閉じ、かつ蒸発器に近い側の膨張弁を閉じ、開閉弁を開いて保冷運転することを特徴とするショーケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−14362(P2010−14362A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175851(P2008−175851)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】