説明

ショートスクレーパを有する回転加圧脱水機

【課題】 環状濾過室の外側の領域における濾過脱水効率を向上させることにより、排出される部位によるケーキ含水率のばらつきを好適に解消することができ、全体のケーキ含水率を低下させることができる回転加圧脱水機を提供する。
【解決手段】 回転軸2周りに形成された環状濾過室10内を進行させるに従って、処理対象物に次第に圧力を加えて脱水処理を行う装置であって、回転するスクリーン5a,5bの内側面のうち、環状濾過室10の中心線CLよりも外側の領域にのみエッジが接触するショートスクレーパ15a〜15fを取り付けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥や、加工食品の原料又はその半加工品等、固体物質と液体物質の混合物(処理対象物)を濾過・圧縮して脱水処理を行う装置であって、特に、回転軸周りに形成された環状の濾室内を進行させるに従って、処理対象物に次第に圧力を加えて脱水処理を行う回転加圧脱水機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転加圧脱水機(ロータリープレスフィルタ)は、特開2001−113109号公報に示されているように、回転軸周りに形成された環状の濾室内に液状の処理対象物(処理原液)を導入し、二枚のドーナツ状スクリーンを回転させることによって処理対象物を前方へと進行させ、次第に圧力を加えて脱水処理を行う装置である。
【0003】
回転加圧脱水機に関しては、これまで様々な工夫や改変が行われてきており、例えば、特開2004−291036号公報には、回転するスクリーンの内側面に対してエッジが鋭角的に接触するスクレーパを多数取り付け、初期濾過ゾーンにおいて、処理原液中に含まれる微粒子塊によってスクリーンの表面が覆われてしまうことを防止できるように構成した回転加圧脱水機が開示されている。
【特許文献1】特開2001−113109号公報
【特許文献2】特開2004−291036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転加圧脱水機を用いて汚泥を脱水処理する場合、機内への導入時には液体の状態であった汚泥が、工程の約1/4(乃至約1/3)の位置を通過するまでの間に半固形状となり、最終的にはケーキ状(汚泥ケーキ、脱水ケーキ)となって、ケーキ出口より機外へと排出されることになるが、従来の回転加圧脱水機による場合、排出される部位によって汚泥ケーキの含水率にばらつきが生じてしまうという問題がある。
【0005】
この点について具体的に説明すると、従来の回転加圧脱水機によって汚泥の脱水処理を行った場合、ケーキ出口から排出される汚泥ケーキのうち、ディフレクタに近い位置から排出される汚泥ケーキよりも、外輪スペーサに近い位置から排出される汚泥ケーキの方が含水率が高く(即ち、脱水度が低く)なってしまう傾向があり、均一な含水率の汚泥ケーキを得ることができないという問題がある。そして、このような「排出部位による含水率のばらつき」は、次工程の処理に悪影響を及ぼしかねないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、環状濾過室の外側の領域における濾過脱水効率を向上させることにより、排出される部位によるケーキ含水率のばらつきを好適に解消し、また、全体のケーキ含水率を低下させることができる回転加圧脱水機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転軸周りに形成された環状濾過室内を進行させるに従って、処理対象物に次第に圧力を加えて脱水処理を行う回転加圧脱水機において、回転するスクリーンの内側面のうち、環状濾過室の中心線よりも外側の領域にのみエッジが接触するスクレーパ(ショートスクレーパ)を取り付けたことを特徴としている。
【0008】
尚、汚泥処理を行う回転加圧脱水機においては、ショートスクレーパの取り付け位置を、原液供給口から90°以上、かつ、200°以内の範囲内とすることが好ましい。また、ショートスクレーパの取付数については、片側について1〜3枚程度(両側で合計2〜6枚程度)が好ましく、これらのうち少なくとも1枚(両側で2枚)が、前記範囲内に設置されることが好ましい。
【0009】
また、原液供給口から140°の範囲内に、先端が内輪スペーサの直近まで達するスクレーパ(通常の長さのスクレーパ)を取り付けることもでき、更に、環状濾過室の中心線よりも外側の領域にのみエッジが接触するスクレーパとを混在させて配置することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の回転加圧脱水機は、ショートスクレーパが取り付けられているため、環状濾過室の外側の領域において、各スクリーンの表面をリフレッシュすることができる。このため、環状濾過室の外側領域における濾過脱水効率を向上させることができ、その結果、外輪スペーサに近い位置から排出される脱水ケーキの含水率が低下することになり、「排出部位による含水率のばらつき」を好適に解消することができる。それに加えて、脱水ケーキ全体の含水率を低下させることができる。
【0011】
また、原液供給口から200°以上の範囲にスクレーパを取り付けた場合には、処理対象物を回転するスクリーン内側面との摩擦力によって搬送しようとする上で障害となってしまう可能性があるが、原液供給口から200°以内の範囲であれば、そのような問題が生じるおそれはなく、回転加圧脱水機本来の性能を低下させることなく良好に機能させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る回転加圧脱水機1の内部構造を示す側面図である。この図において、2は回転軸、3は内輪スペーサ、4は外輪スペーサ、5a,5bはスクリーン(一部省略)、6はディフレクタである。この回転加圧脱水機1は、これらの要素のほか、外部ケーシング、駆動装置、制御装置等によって構成されている。
【0013】
また、図示されているように、この回転加圧脱水機1の外輪スペーサ4の両側面には、ショートスクレーパ15(15a〜15f)がそれぞれ3枚ずつ(両側で合計6枚)取り付けられている。これらのショートスクレーパ15は、各エッジが、スクリーン5の内側面に対しそれぞれ鋭角的に接触するようになっており、所定方向(図1において矢印Rの方向)へ回転するスクリーン5(5a,5b)の内側面に付着した微粒子塊を好適に除去できるようになっている。
【0014】
尚、ショートスクレーパ15a〜15fはいずれも、スクリーン5a,5bの各内側面のうち、環状濾過室10の中心線CLよりも外側の領域にのみ接するように構成されている。前述の通り、従来の回転加圧脱水機においては、ケーキ出口9から排出される脱水ケーキのうち、ディフレクタ6に近い位置から排出される脱水ケーキよりも、外輪スペーサ4に近い位置から排出される脱水ケーキの方が、含水率が高くなるという傾向がある。
【0015】
その理由は必ずしも定かではないが、この種の回転加圧脱水機においては、環状濾過室10内の外側の領域と内側の領域とでは、進行する処理対象物に作用する力や条件が同一ではなく、内側の領域の方が、外側の領域よりも濾過脱水効率において若干優れている、ということが分かっており、また、機内へ導入された液状の処理対象物が半固形状、ケーキ状に変化していく過程において、環状濾過室10内の外側の領域(外輪スペーサ4に近い領域)にあったものが、その後も外輪スペーサ4に近い領域を進行していき、ケーキ出口9から排出されることになる可能性が大きいと考えられる。従って、環状濾過室10の外側領域における濾過脱水効率を向上させることができれば、外輪スペーサ4に近い位置から排出される汚泥ケーキの含水率を低下させることができる、と考えられる。
【0016】
本実施形態の回転加圧脱水機1は、いずれのショートスクレーパ15a〜15fも、環状濾過室10の中心線CLよりも外側の領域においてのみスクリーン5a,5bの各内側面に接するように構成されているため、スクリーン5a,5bの内側面のうち、中心線CLよりも外側の部分に付着した微粒子塊を好適に除去することができる。このため、環状濾過室10内の外側の領域における濾過脱水効率を向上させることができ、その結果、外輪スペーサ4に近い位置から排出される脱水ケーキの含水率を低減させることができ、排出される脱水ケーキにおける含水率のばらつきを解消することができる。
【0017】
ところで、本実施形態の回転加圧脱水機1は、下水処理施設等において汚泥を処理する際に使用されるものであり、固形分濃度1〜4%の汚泥(処理原液)を濾過圧縮して、固形分濃度20〜30%程度(含水率70〜80%程度)の汚泥ケーキを排出することができる装置である。この回転加圧脱水機1を所定の条件で稼働させて、かかる汚泥処理を実施した場合、液体の状態で機内へ導入された汚泥は、図1に示すP1(原液供給口8から90°の位置)付近を通過するまでの間に半固形状となる。
【0018】
つまり、機内を進行する汚泥は、P1の位置を通過した辺りから、次第に流動性が小さくなっていくため、この時点で外輪スペーサ4に近い位置を進行している汚泥は、そのまま環状濾過室10の外側の領域を進行していく可能性がある。しかしながら、P1の位置を通過する以前の汚泥は流動性が高く、この時点では搬送位置は定まっていない。従って、P1の位置よりも原液供給口8側にショートスクレーパを配置したとしても、必ずしも「外輪スペーサ4に近い位置から排出される汚泥ケーキの含水率を低減させる」ということには繋がらない。
【0019】
また、図1に示すP2(原液供給口8から200°の位置)付近を通過した汚泥は、固形分濃度がかなり高くなっているため、P2の位置よりもケーキ出口9側(原液供給口8から200°以上の位置)にスクレーパを配置した場合、スクリーン5を回転させることによって搬送しようとする汚泥がスクレーパに引っ掛かり、スクレーパが搬送抵抗となってしまうほか、スクリーン5と汚泥との接触面積が減少し、汚泥の搬送に必要なスクリーン5内側面との摩擦力が低減してしまうため、環状濾過室10内における汚泥の円滑な進行が困難となり、また、進行中の汚泥に作用する圧縮力の低下を招いてしまうことになる。
【0020】
このようなことから、本実施形態の回転加圧脱水機1においては、ショートスクレーパ15a〜15fはいずれも、図1に示すP1からP2までの範囲内に配置されている。
【0021】
尚、図2(本発明の第2の実施形態に係る回転加圧脱水機1の内部構造を示す側面図)に示すように、ショートスクレーパ15と原液供給口8との間に、通常の長さのスクレーパ14(先端が内輪スペーサ2の直近まで達し、スクリーン5a,5bの内側面に付着した微粒子塊を全幅的に除去できるスクレーパ)を配置することもできる。つまり、本発明に係る回転加圧脱水機1のショートスクレーパ15は、通常の長さのスクレーパ14と組み合わせて用いることもできる。
【0022】
但し、通常の長さのスクレーパ14を配置する場合には、取付位置に注意する必要がある。具体的には、原液供給口8から140°(図2に示すP3の位置)までの範囲内に限定すべきである。P3付近を通過した後の汚泥は、固形分濃度がかなり高くなっているため、先端が内輪スペーサ3の直近まで達するような長いスクレーパ14がP3以降の位置に設置されていると、進行中の汚泥が引っ掛かり、スクレーパが搬送抵抗となってしまうほか、スクリーン5と汚泥との接触面積が減少し、汚泥の搬送に必要なスクリーン5内側面との摩擦力が低減してしまう可能性がある。
【0023】
尚、図1に示した第1の実施形態、及び、図2に示した第2の実施形態のいずれにおいても、ショートスクレーパ15(スクリーン5a,5bの各内側面のうち、環状濾過室10の中心線CLよりも外側の領域にのみ接するようなスクレーパ)は、片側に3枚ずつ(両側で合計6枚)取り付けられているが、取付数は必ずしもこれらに限定されるものではなく、図1に示したP1からP2の範囲内に、少なくとも片側に1枚ずつ(両側で合計2枚)取り付けられていれば、「排出部位による含水率のばらつきを解消する」という効果、及び、「全体のケーキ含水率を低下させる」という効果を期待することができる。
【0024】
また、図2に示したように、原液供給口8側に通常の長さのスクレーパ14のみを配置するのではなく、通常の長さのスクレーパ14とショートスクレーパ15とを混在させて配置する(例えば、図3に示すように、外輪スペーサ4の両側においてそれぞれ、通常の長さのスクレーパ14とショートスクレーパ15g,15hを交互に配置する)こともできる。
【0025】
この場合、通常の長さのスクレーパ14とショートスクレーパ15g,15hとを混在させた範囲において、内側領域(内輪スペーサ3に近い領域)を進行する処理対象物の半固形状化を遅らせることができ、外側領域(外輪スペーサ4に近い領域)を進行する処理対象物との関係において、バランスよく脱水を行うことができる。
【0026】
尚、図1〜図3のショートスクレーパ15a〜15fはいずれも、同一の寸法となっているが、必ずしも同じ長さに設定する必要はなく、汚泥の進行に従って次第に短くなるように設定することもできる。例えば、最も上流側のショートスクレーパ15a,15bをもう少し長いものに交換し、最も下流側のショートスクレーパ15e,15fをもう少し短いものに交換しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る回転加圧脱水機1の内部構造を示す側面図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る回転加圧脱水機1の内部構造を示す側面図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る回転加圧脱水機1の内部構造を示す側面図。
【符号の説明】
【0028】
1:回転加圧脱水機、
2:回転軸、
3:内輪スペーサ、
4:外輪スペーサ、
5,5a,5b:スクリーン、
6:ディフレクタ、
8:原液供給口、
9:ケーキ出口、
10:環状濾過室、
15,15a〜15h:ショートスクレーパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸周りに形成された環状濾過室内を進行させるに従って、処理対象物に次第に圧力を加えて脱水処理を行う回転加圧脱水機において、
回転するスクリーンの内側面のうち、環状濾過室の中心線よりも外側の領域にのみエッジが接触するスクレーパを取り付けたことを特徴とする回転加圧脱水機。
【請求項2】
汚泥を処理するために用いられる回転加圧脱水機であって、
原液供給口から90°以上、かつ、200°以内の範囲内に、前記スクレーパが、1つのスクリーンについて少なくとも1枚取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の回転加圧脱水機。
【請求項3】
原液供給口から140°の範囲内に、先端が内輪スペーサの直近まで達するスクレーパが、1つのスクリーンについて少なくとも1枚取り付けられていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の回転加圧脱水機。
【請求項4】
原液供給口から140°の範囲内に、先端が内輪スペーサの直近まで達するスクレーパと、環状濾過室の中心線よりも外側の領域にのみエッジが接触するスクレーパとを混在させて配置したことを特徴とする、請求項3に記載の回転加圧脱水機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−341258(P2006−341258A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166815(P2005−166815)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(591162022)巴工業株式会社 (32)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】