説明

シリアルデータ伝送装置

【課題】データ送受信に要する信号線の本数を少なくできる安価なシリアルデータ伝送装置を提供する。
【解決手段】LRクロック線31、伝送クロック線32およびデータ線33aで接続された送信回路1と受信回路2を備え、送信回路は、第1および第2入力信号をLRクロックに同期してサンプリングして第1および第2データとしてそれぞれ出力する第1および第2データ変換手段13a、13bと、第1および第2データの各ビット位置が重ならないように重畳するデータ重畳手段14aと、重畳されたデータを伝送クロックに同期してデータ線に送出するデータ出力手段15aを備え、受信回路は、データ線からのデータをLRクロックおよび伝送クロックに同期して入力するデータ入力手段23aと、入力されたデータを第1データと第2データとに分離する信号分離手段24aと、分離されたデータを外部に出力するデータ出力手段25a、25bを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリアルデータ伝送装置に関し、特に音声データをシリアル伝送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音声データをシリアル伝送する技術が知られている。このシリアル伝送には、ビットクロックと呼ばれる伝送クロックを送受するための伝送クロック線、伝送周期を示すLRクロックを送受するためのLRクロック線および音声データを送受信するためのデータ線といった少なくとも3本の伝送線を用いた3線式が採用されている。音声データはステレオ信号として伝送されるため、左チャンネル用の音声データであるか右チャンネル用の音声データであるかの識別はLRクロックによって行われる。
【0003】
LRクロックの周波数は音声信号のサンプリング周波数(サンプリングレート)と一致しており、サンプリング周期毎にアナログの音声信号をサンプリングすることにより得られた音声データは、LRクロックに同期して伝送される。このような伝送方式として、例えば、標準的なインタフェースとして広く普及しているI2S(The Inter−IC Sound bus)方式が知られている。
【0004】
サンプリングレートと同一の周波数を有するLRクロックを用いて複数の音声信号を送信回路から受信回路へ伝送するシリアルデータ伝送装置では、伝送クロック線とLRクロック線は各音声データで共用されているが、データ線は、送受信すべきデータ量の如何に拘わらず音声信号毎に独立に設けられている。このため、伝送すべき音声信号の数が増加すると、送信回路と受信回路との間を接続する信号線が多くなり、配線が煩雑になるという問題がある。また、送信回路から送信可能な音声信号の数、または、受信回路で受信可能な音声信号の数に制限がある場合、所望の数の音声信号を伝送できないという問題がある。
【0005】
このような問題を解消するために、通信フォーマットを変換し、デジタルデータとクロックを重畳して1本の線で送受信するデジタル信号送受信回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。このデジタル信号送受信回路は送信回路と受信回路から構成されており、送信回路は、クロックに同期して入力されるデータを所定の時間幅のデータに変換するデータ変換手段と、クロックとデータ変換手段の出力とを重畳する重畳手段を備え、受信回路は、受信信号からクロックを抽出するクロック抽出手段と、クロック抽出手段で抽出したクロックを基準として、受信信号からデータを抽出するデータ抽出手段を備えている。
【0006】
【特許文献1】特開平05−14337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されたデジタル信号送受信回路では、伝送方式を変換するための変換回路を追加する必要があり、コストの増加や追加した変換回路により装置が小型化できないという問題がある。また、特許文献1に開示されたデジタル信号送受信回路において従来と同等の転送速度を得るためにはクロックを高速化する必要があるが、クロックを高速化すると、EMC(Electro−Magnetic Compatibility)性能が低下するという問題がある。
【0008】
この発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、伝送方式の変換やクロックの高速化を行うことなく、データの送受信に要する信号線の本数を少なくできる安価なシリアルデータ伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るシリアルデータ伝送装置は、伝送周期を表すLRクロックを送受するためのLRクロック線、LRクロック内におけるデータの送受タイミングを規定する伝送クロックを送受するための伝送クロック線およびデータを送受するためのデータ線によって接続された送信回路と受信回路とを備えたシリアルデータ伝送装置において、送信回路は、外部から入力される第1入力信号を、受信回路で発生されてLRクロック線を介して送られてくるLRクロックに同期してサンプリングすることにより得られたデジタル信号を第1データとして出力する第1データ変換手段と、外部から入力される第2入力信号を、受信回路で発生されてLRクロック線を介して送られてくるLRクロックに同期してサンプリングすることにより得られたデジタル信号を第2データとして出力する第2データ変換手段と、第1データ変換手段からの第1データのビット位置と、第2データ変換手段からの第2データのビット位置が重ならないように重畳するデータ重畳手段と、データ重畳手段で重畳されたデータを受信回路から伝送クロック線を介して送られてくる伝送クロックに同期してデータ線にシリアルに送出するデータ出力手段とを備え、受信回路は、データ線からシリアルに送られてくるデータを、自己の内部で発生したLRクロックおよび伝送クロックに同期して入力するデータ入力手段と、データ入力手段により入力されたデータを第1データと第2データとに分離する信号分離手段と、信号分離手段で分離された第1データおよび第2データを外部に出力するデータ出力手段とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るシリアルデータ伝送装置によれば、第1データのビット位置と第2データのビット位置とが重ならないように重畳してデータ線をシリアルに伝送するように構成したので、伝送方式の変換やクロックの高速化を行うことなく、データの送受信に要する信号線の本数を少なくできる。また、従来は未使用のビット位置を使用してデータを送受信できるので、ハードウェアの追加などは不要であり、安価なシリアルデータ伝送装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、シリアルデータの伝送方式の標準的なインタフェースとして広く普及しているI2Sフォーマットにより音声データを伝送する場合について説明する。
実施の形態1.
一般に、音声データのシリアル伝送は、伝送クロックとしてのビットクロックを送受信する伝送クロック線、伝送周期を示すLRクロックを送受信するLRクロック線および音声データを送受信するデータ線といった3本の線を用いる3線式で行われる。音声データのシリアル伝送は、送信側と受信側は同一方式で動作することが前提である。
【0012】
伝送クロックとしては、様々な品質の音声を伝送できるように、多くの場合は、図2(a)に示すように、LRクロックの64倍の周波数を有するクロックが用いられる。この場合において、音楽CD相当の品質の音声に対応する16ビットの音声データを伝送する場合は、データ線で音声データを伝送する時間帯の半分は未使用となる。したがって、音楽CD相当の品質の音声を伝送すれば十分なシステムにおいては、この未使用部分に同一サンプリングレートの他の音声データを重畳することによりデータ線を効率的に利用することが可能となる。この発明は、このような未使用部分を有効に活用するようにしたものである。なお、図2(b)に示すように、伝送クロックとして、LRクロックの48倍の周波数が用いられる場合もある。この場合も、上述したLRクロックの64倍の周波数が用いられる場合と同様に、未使用部分を有効に活用することができる。
【0013】
この発明の実施の形態1に係るシリアルデータ伝送装置は、音楽CD相当の品質を有する4種類のステレオ音声データを、I2Sフォーマットによって伝送する。音楽CDはPCM(Pulse-code modulation)方式を採用しているため、音楽CDに記録されている音声データの伝送にもビットクロック線、LRクロック線およびデータ線を利用したシリアルデータ伝送方式が採用されている。音楽CDの音楽データは、サンプリング周波数44.1kHz(1秒問に44100回の数値化)でサンプリングされ、16ビット(0〜65535の65536段階で音声データを表現)に量子化されている。つまり16ビットのデータ長で音楽CD相当の品質の音声を得ることが可能である。以下では、伝送クロックとして、図2(a)に示すような、LRクロックの64倍の周波数が用いられる場合について説明する。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態1に係るシリアルデータ伝送装置の構成を示すブロック図である。このシリアルデータ伝送装置は、大きく分けると、送信回路1と受信回路2とから構成されている。これら送信回路1と受信回路2との間は、LRクロック線31、ビットクロック線32、第1データ線33aおよび第2データ線33bによって接続されている。ビットクロック線32は、この発明の伝送クロック線に対応する。
【0015】
送信回路1は、クロック抽出手段11、タイミング制御手段12、データ変換手段13a、13b、13cおよび13d、データ重畳手段14aおよび14b、ならびに、データ出力手段15aおよび15bを備えている。
【0016】
クロック抽出手段11は、受信回路2からLRクロック線31を介して送られてくる信号からLRクロックを抽出するとともに、ビットクロック線32を介して送られてくる信号からビットクロックを抽出する。このクロック抽出手段11で抽出されたLRクロックおよびビットクロックはタイミング制御手段12に送られる。
【0017】
タイミング制御手段12は、音声データの送信タイミングを制御するための制御信号を生成する。このタイミング制御手段12で生成された制御信号は、データ変換手段13a、13b、13cおよび13d、データ重畳手段14aおよび14b、ならびに、データ出力手段15aおよび15bに送られる。
【0018】
データ変換手段13a、13b、13cおよび13dは、例えばA/D変換器から構成されている。データ変換手段13a(この発明の第1データ変換手段に対応する)は、外部から送られてくるステレオのアナログ音声信号A(この発明の第1入力信号に対応する)を、タイミング制御手段12から送られてくる制御信号に含まれるLRクロックに同期して、例えば44.1kHzでサンプリングし、データA(この発明の第1データおよび第1ステレオ音声データに対応する)としてデータ重畳手段14aに送る。
【0019】
データ変換手段13b(この発明の第2データ変換手段に対応する)は、外部から送られてくるステレオのアナログ音声信号B(この発明の第2入力信号に対応する)を、タイミング制御手段12から送られてくる制御信号に含まれるLRクロックに同期して、例えば44.1kHzでサンプリングし、データB(この発明の第2データおよび第2ステレオ音声データに対応する)としてデータ重畳手段14aに送る。
【0020】
データ変換手段13c(この発明の第1データ変換手段に対応する)は、外部から送られてくるステレオのアナログ音声信号C(この発明の第1入力信号に対応する)を、タイミング制御手段12から送られてくる制御信号に含まれるLRクロックに同期して、例えば44.1kHzでサンプリングし、データC(この発明の第1データおよび第1ステレオ音声データに対応する)としてデータ重畳手段14bに送る。
【0021】
データ変換手段13d(この発明の第2データ変換手段に対応する)は、外部から送られてくるステレオのアナログ音声信号D(この発明の第2入力信号に対応する)を、タイミング制御手段12から送られてくる制御信号に含まれるLRクロックに同期して、例えば44.1kHzでサンプリングし、データD(この発明の第2データおよび第2ステレオ音声データに対応する)としてデータ重畳手段14bに送る。
【0022】
データ重畳手段14aは、16ビットシフトレジスタ14a1および論理和回路(以下、「OR回路」という)14a2を備えている。16ビットシフトレジスタ14a1は、16ビット幅のシフタであり、データ変換手段13bから送られてくるデータBを、16ビットだけシフトし、データB’としてOR回路14a2に送る。OR回路14a2は、データ変換手段13aから送られてくるデータAと、16ビットシフトレジスタ14a1から送られてくるデータB’との論理和演算を行う。これにより、データAがLRクロックの前半周期の前部分(左チャンネル用音声データ)と後半周期の前部分(右チャンネル用音声データ)に位置し、データBがLRクロックの前半周期の後部分(左チャンネル用音声データ)と後半周期の後部分(右チャンネル用音声データ)に位置するように制御される。このデータ重畳手段14aでデータAとデータBとが重畳されたデータは、データ出力手段15aに送られる。
【0023】
データ重畳手段14bは、16ビットシフトレジスタ14b1およびOR回路14b2を備えている。16ビットシフトレジスタ14b1は、16ビット幅のシフタであり、データ変換手段13dから送られてくるデータDを、16ビットだけシフトし、データD’としてOR回路14b2に送る。OR回路14b2は、データ変換手段13cから送られてくるデータCと、16ビットシフトレジスタ14b1から送られてくるデータD’との論理和演算を行う。これにより、データCがLRクロックの前半周期の前部分(左チャンネル用音声データ)と後半周期(右チャンネル用音声データ)の前部分に位置し、データDがLRクロックの前半周期の後部分(左チャンネル用音声データ)と後半周期の後部分(右チャンネル用音声データ)に位置するように制御される。このデータ重畳手段14bでデータCとデータDとが重畳されたデータは、データ出力手段15aに送られる。
【0024】
データ出力手段15aは、タイミング制御手段12から送られてくる制御信号に含まれるLRクロックおよびビットクロックに同期して、データ重畳手段14aのOR回路14a2から送られてくるデータを第1データ線33aに送出する。データ出力手段15bは、タイミング制御手段12から送られてくる制御信号に含まれるLRクロックおよびビットクロックに同期して、データ重畳手段14bのOR回路14b2から送られてくるデータを第2データ線33bに送出する。
【0025】
受信回路2は、クロック発生手段21、タイミング制御手段22、データ入力手段23aおよび23b、信号分離手段24aおよび24b、ならびに、データ出力手段25a、25b、25cおよび25dを備えている。
【0026】
クロック発生手段21は、データ伝送の基準となる44.1kHzのLRクロックを発生してLRクロック線31に送出するとともに、LRクロックの64倍の周波数である2822.4kHzのビットクロックを発生してビットクロック線32に送出する。また、クロック発生手段21は、発生したLRクロックおよびビットクロックをタイミング制御手段22に送る。
【0027】
タイミング制御手段22は、音声データの受信タイミングを制御するための制御信号を生成する。このタイミング制御手段22で生成された制御信号は、データ入力手段23aおよび23b、信号分離手段24aおよび24b、ならびに、データ出力手段25a、25b、25cおよび25dに送られる。
【0028】
データ入力手段23aは、タイミング制御手段22から送られてくる制御信号に含まれるLRクロックおよびビットクロックに同期して、第1データ線33aから音声データを取り込み、信号分離手段24aに送る。データ入力手段23bは、タイミング制御手段22から送られてくる制御信号に含まれるLRクロックおよびビットクロックに同期して、第2データ線33bから音声データを取り込み、信号分離手段24bに送る。
【0029】
信号分離手段24aは、上位16ビット抽出手段24a1および下位16ビット抽出手段24a2から構成されている。上位16ビット抽出手段24a1は、タイミング制御手段12から送られてくる制御信号に応じて、データ入力手段23aから送られてくる32ビットのデータの上位16ビットを抽出し、データ出力手段25aに送る。下位16ビット抽出手段24a2は、タイミング制御手段12から送られてくる制御信号に応じて、データ入力手段23aから送られてくる32ビットのデータの下位16ビットを抽出し、データ出力手段25bに送る。この信号分離手段24aで分離された上位16ビットのデータは、この発明の第1データに対応し、下位16ビットのデータは、この発明の第2データに対応する。
【0030】
信号分離手段24bは、上位16ビット抽出手段24b1および下位16ビット抽出手段24b2から構成されている。上位16ビット抽出手段24b1は、タイミング制御手段12から送られてくる制御信号に応じて、データ入力手段23bから送られてくる32ビットのデータの上位16ビットを抽出し、データ出力手段25cに送る。下位16ビット抽出手段24b2は、タイミング制御手段12から送られてくる制御信号に応じて、データ入力手段23bから送られてくる32ビットのデータの下位16ビットを抽出し、データ出力手段25dに送る。この信号分離手段24bで分離された上位16ビットのデータは、この発明の第1データに対応し、下位16ビットのデータは、この発明の第2データに対応する。
【0031】
データ出力手段25aは、信号分離手段24aの上位16ビット抽出手段24a1から送られてくるデータを、タイミング制御手段22から送られてくる制御信号に応じて、外部に送出する。データ出力手段25bは、信号分離手段24aの下位16ビット抽出手段24a2から送られてくるデータを、タイミング制御手段22から送られてくる制御信号に応じて、外部に送出する。
【0032】
データ出力手段25cは、信号分離手段24bの上位16ビット抽出手段24b1から送られてくるデータを、タイミング制御手段22から送られてくる制御信号に応じて、外部に送出する。データ出力手段25dは、信号分離手段24bの下位16ビット抽出手段24b2から送られてくるデータを、タイミング制御手段22から送られてくる制御信号に応じて、外部に送出する。
【0033】
次に、上記のように構成される、この発明の実施の形態1に係るシリアルデータ伝送装置の動作を説明する。
【0034】
音声データの伝送が行われる場合は、まず、受信回路2のクロック発生手段21は、LRクロックおよびビットクロックを発生し、LRクロック線31およびビットクロック線32をそれぞれ介して送信回路1に送るとともに、受信回路2の内部のタイミング制御手段22に送る。
【0035】
送信回路1の内部のクロック抽出手段11は、受信回路2からLRクロック線31を介して送られてくる信号からLRクロックを抽出するとともに、ビットクロック線32を介して送られてくる信号からビットクロックを抽出し、タイミング制御手段22に送る。タイミング制御手段22は、クロック抽出手段11から送られてくるLRクロックおよびビットクロックに同期してデータを送信するための制御信号を生成し、データ変換手段13a、13b、13cおよび13d、データ重畳手段14aおよび14b、ならびに、データ出力手段15aおよび15bに送る。
【0036】
ステレオのアナログ音声信号A〜Dは、データ変換手段13a〜13dへそれぞれ入力される。データ変換手段13a〜13dは、タイミング制御手段12から送られてくる制御信号に含まれるLRクロックに同期して、アナログ音声信号A〜Dをそれぞれサンプリングし、制御信号に含まれるビットクロックに同期した32ビットのシリアルデータに変換する。ただし16ビット精度の音声品質とし、データ長32ビットに対し上位16ビットのみが使用される。
【0037】
データ変換手段13aでの変換により得られた32ビットのシリアルデータであるデータAは、データ重畳手段14aのOR回路14a2に送られる。データ変換手段13bでの変換により得られた32ビットのシリアルデータであるデータBは、データ重畳手段14aの16ビットシフトレジスタ14a1に送られる。データ変換手段13cでの変換により得られた32ビットのシリアルデータであるデータCは、データ重畳手段14bのOR回路14b2に送られる。データ変換手段13dでの変換により得られた32ビットのシリアルデータであるデータDは、データ重畳手段14bの16ビットシフトレジスタ14b1に送られる。
【0038】
16ビットシフトレジスタ14a1は、タイミング制御手段12から送られてくる制御信号に含まれるビットクロックに同期して、データBを下位方向に16ビットだけシフトし、データB’としてOR回路14a2に送る。16ビットシフトレジスタ14b1は、タイミング制御手段12から送られてくる制御信号に含まれるビットクロックに同期して、データDを下位方向に16ビットだけシフトし、データD’としてOR回路14b2に送る。
【0039】
OR回路14a2は、データ変換手段13aから送られてくるデータAと16ビットシフトレジスタ14a1から送られてくるデータB’との論理和をとり、データ出力手段15aに送る。これにより、アナログ音声信号Aに対応する音声データとアナログ音声信号Bに対応する音声データとのビット位置が重なることなく、換言すれば、互いに干渉し合うことなく重畳される。同様に、OR回路14b2は、データ変換手段13cから送られてくるデータCと16ビットシフトレジスタ14b1から送られてくるデータD’との論理和をとり、データ出力手段15aに送る。これにより、アナログ音声信号Cに対応する音声データとアナログ音声信号Dに対応する音声データとのビット位置が重なることなく、換言すれば、互いに干渉し合うことなく重畳される。
【0040】
データ出力手段15aは、データAとデータBとが重畳されたデータを第1データ線33aに送出する。また、データ出力手段15bは、データCとデータDとが重畳されたデータを第2データ線33bに送出する。
【0041】
受信回路2においては、データ入力手段23aは、タイミング制御手段22から送られてくる制御信号に含まれるLRクロックおよびビットクロックに同期して、第1データ線33aから2つの音声が多重化されたデータを取り込み、信号分離手段24aに送る。同様に、データ入力手段23bは、タイミング制御手段22から送られてくる制御信号に含まれるLRクロックおよびビットクロックに同期して、第2データ線33aから2つの音声が多重化されたデータを取り込み、信号分離手段24bに送る。
【0042】
信号分離手段24aの上位16ビット抽出手段24a1は、タイミング制御手段22から送られてくる制御信号に応じて、データ入力手段23aから送られてくる32ビットのデータの上位16ビットを抽出し、データ出力手段25aに送る。また、下位16ビット抽出手段24a2は、タイミング制御手段22から送られてくる制御信号に応じて、データ入力手段23aから送られてくる32ビットのデータの下位16ビットを抽出し、データ出力手段25bに送る。
【0043】
同様に、信号分離手段24bの上位16ビット抽出手段24b1は、タイミング制御手段12から送られてくる制御信号に応じて、データ入力手段23bから送られてくる32ビットのデータの上位16ビットを抽出し、データ出力手段25cに送る。また、下位16ビット抽出手段24b2は、タイミング制御手段12から送られてくる制御信号に応じて、データ入力手段23bから送られてくる32ビットのデータの下位16ビットを抽出し、データ出力手段25dに送る。
【0044】
データ出力手段25aは、上位16ビット抽出手段24a1から送られてくるデータを、アナログ音声信号Aに対応する音声データとして外部に出力する。また、データ出力手段25bは、下位16ビット抽出手段24a2から送られてくるデータを、アナログ音声信号Bに対応する音声データとして外部に出力する。同様に、データ出力手段25cは、上位16ビット抽出手段24b1から送られてくるデータを、アナログ音声信号Cに対応する音声データとして外部に出力する。また、データ出力手段25dは、下位16ビット抽出手段24b2から送られてくるデータを、アナログ音声信号Dに対応する音声データとして外部に出力する。
【0045】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係るシリアルデータ伝送装置によれば、音声データを多重化することにより、図3に示す従来のシリアルデータ伝送装置と比較して、同じ通信線の本数で、2倍の音声データを伝送することが可能になる。その結果、伝送方式の変換やクロックの高速化を行うことなく、データの送受信に要する信号線の本数を少なくできる。また、従来は未使用のビット位置を使用してデータを送受信できるので、ハードウェアの追加などは不要であり、安価なシリアルデータ伝送装置を提供できる。
【0046】
なお、上述した実施の形態1に係るシリアルデータ伝送装置では、複数のステレオ音声信号を伝送する場合について説明したが、図4に示すように、1系統のステレオ音声信号(ステレオ音声A(左)およびステレオ音声A(右))と2系統のモノラル音声信号(モノラル音声Bおよびモノラル音声C)とを重畳して伝送するように変形することができる。
【0047】
また、図5に示すように、品質の異なる音声信号を重畳して伝送するように変形することもできる。図5では、1系統の24ビットステレオ音声信号(24ビットステレオ音声A(左)および24ビットステレオ音声A(右))と、1系統のモノラル音声信号(モノラル音声B(上位8ビット)およびモノラル音声B(下位8ビット))とを伝送する場合を示している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の実施の形態1に係るシリアルデータ伝送装置の構成を示すブロック図である。
【図2】I2Sフォーマットを用いて音声データを伝送する動作を説明するための図である。
【図3】従来のシリアルデータ伝送装置の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るシリアルデータ伝送装置の変形例の動作を説明するための図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係るシリアルデータ伝送装置の他の変形例の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0049】
1 送信回路、2 受信回路、11 クロック抽出手段、12 タイミング制御手段、13a〜13d データ変換手段、14a,14b データ重畳手段、14a1,14b1 16ビットシフトレジスタ、14a2,14b2 OR回路、15a,15b データ出力手段、21 クロック発生手段、22 タイミング制御手段、23a,23b データ入力手段、24a,24b 信号分離手段、24a1,24b1 上位16ビット抽出手段、24a2,24b2 下位16ビット抽出手段、25a〜25d データ出力手段、31 LRクロック線、32 ビットクロック線、33a 第1データ線、33b 第2データ線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送周期を表すLRクロックを送受するためのLRクロック線、LRクロック内におけるデータの送受タイミングを規定する伝送クロックを送受するための伝送クロック線およびデータを送受するためのデータ線によって接続された送信回路と受信回路とを備えたシリアルデータ伝送装置において、
前記送信回路は、
外部から入力される第1入力信号を、前記受信回路で発生されて前記LRクロック線を介して送られてくるLRクロックに同期してサンプリングすることにより得られたデジタル信号を第1データとして出力する第1データ変換手段と、
外部から入力される第2入力信号を、前記受信回路で発生されて前記LRクロック線を介して送られてくるLRクロックに同期してサンプリングすることにより得られたデジタル信号を第2データとして出力する第2データ変換手段と、
前記第1データ変換手段からの第1データのビット位置と、前記第2データ変換手段からの第2データのビット位置が重ならないように重畳するデータ重畳手段と、
前記データ重畳手段で重畳されたデータを前記受信回路から前記伝送クロック線を介して送られてくる伝送クロックに同期して前記データ線にシリアルに送出するデータ出力手段
とを備え、
前記受信回路は、
前記データ線からシリアルに送られてくるデータを、自己の内部で発生したLRクロックおよび伝送クロックに同期して入力するデータ入力手段と、
前記データ入力手段により入力されたデータを前記第1データと前記第2データとに分離する信号分離手段と、
前記信号分離手段で分離された前記第1データおよび前記第2データを外部に出力するデータ出力手段
とを備えたシリアルデータ伝送装置。
【請求項2】
データ重畳手段は、第1データ変換手段からの第1データがLRクロックの前半周期の前部分と後半周期の前部分に位置し、第2データ変換手段からの第2データがLRクロックの前半周期の残余部分と後半周期の残余部分に位置するように重畳する
ことを特徴とする請求項1記載のシリアルデータ伝送装置。
【請求項3】
第1データは第1ステレオ音声データから成り、第2データは第2ステレオ音声データから成り、
データ重畳手段は、前記第1ステレオ音声データの一方のチャンネル用の音声データがLRクロックの前半周期の前半分に位置し、前記第1ステレオ音声データの他方のチャンネル用の音声データがLRクロックの後半周期の前半分に位置し、前記第2ステレオ音声データの一方のチャンネル用の音声データがLRクロックの前半周期の後半分に位置し、前記第2ステレオ音声データの他方のチャンネル用の音声データがLRクロックの後半周期の後半分に位置するように重畳する
ことを特徴とする請求項2記載のシリアルデータ伝送装置。
【請求項4】
第1データはステレオ音声データから成り、第2データは第1モノラル音声データと第2モノラル音声データから成り、
データ重畳手段は、前記ステレオ音声データの一方のチャンネル用の音声データがLRクロックの前半周期の前半分に位置し、前記第1ステレオ音声データの他方のチャンネル用の音声データがLRクロックの後半周期の前半分に位置し、前記第1モノラル音声データがLRクロックの前半周期の後半分に位置し、前記第2モノラル音声データがLRクロックの後半周期の後半分に位置するように重畳する
ことを特徴とする請求項2記載のシリアルデータ伝送装置。
【請求項5】
第1データはステレオ音声データから成り、第2データはモノラル音声データから成り、
データ重畳手段は、前記ステレオ音声データの一方のチャンネル用の音声データがLRクロックの前半周期の前部分に位置し、前記第1ステレオ音声データの他方のチャンネル用の音声データがLRクロックの後半周期の前部分に位置し、前記モノラル音声データの一部がLRクロックの前半周期の残余部分に位置し、前記モノラル音声データの残余部分がLRクロックの後半周期の残余部分に位置するように重畳する
ことを特徴とする請求項2記載のシリアルデータ伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−200535(P2009−200535A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160100(P2006−160100)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】