説明

シリアル成分抽出方法

本発明はシリアルからβ−グルカンを抽出する方法に関する。この方法は、湿潤シリアルからβ−グルカンを抽出する方法であって、pHが酸性の5.2以下の値に調整されるとともに、密閉空間において前記シリアルが5バール未満の処理圧力及び100℃〜130℃の温度下で処理され、減圧後に固形物から液相を分離し、この分離された液相からβ−グルカンを回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、シリアル穀粒に含まれる成分を抽出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抽出操作の対象物は、シリアルの炭水化物β−グルカンである。この成分の割合はシリアルの種類によって異なるが、特にオート麦に多い。例えば代謝などへの好適な効果が、ヒトの栄養摂取における高いβ−グルカン含有量によって誘発されることがわかっており、いわゆる溶性繊維と考えられるこの合成物を、これが自然に存在しない、あるいはその生来の含有量を増やすことが望ましい製品に添加するために、食品から抽出することが試みられてきた。
【0003】
適当なシリアル種からこの成分を抽出するためには、例えば、ドライミル工程とスクリーニング工程を繰り返すことにより、開始物質と比較してβ−グルカン含有量が相当高いシリアル成分を得ることが提案される。この方法はWO 01/26479号公報に開示されている。工業規模において、この方法で10%以上のグルカンを含有する成分が得られることが報告されている。
【0004】
【特許文献1】WO 01/26479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、シリアルからβ−グルカンを抽出する湿式の方法も公知である。これらの方法は、通常、アルカリ性剤を用いて種々の精製及び分離工程を行う抽出に基づくものである。下流工程は、工程状況において公知の問題を引き起こす有機溶剤による処理からなる。有機溶剤はまた、ドライミルに先立ってシリアルから脂肪成分を除去するためにも用いられ、製粉及びスクリーニング設備の操作における脂肪分の干渉を避ける。この場合にも、有機溶剤は、前記抽出方法の場合と同様の問題を引き起こす。
【0006】
本発明の目的は、強化成分としてシリアルに含まれるβ−グルカンを高い収率で得るためのシリアル処理方法を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の方法は基本的にいわゆる湿式方法である。開始時の材料は処理工程前に水分で湿らせてある。本発明の種々の実施例においては、開始材料として、粉粒シリアル、あるいはほぼ全粒のもののいずれかが用いられる。このため、実行される方法工程は、互いにわずかに異なる。本明細書においては、湿式とは、処理対象の開始材料に一定量の水分を加えて、その乾燥内容物を7%〜10%に調整することを意味する。粉粒シリアルを用いる場合は、小麦粉と水の混合物がほぼ即座に処理にかけられる。一方、全粒の場合は、必要な水分量を吸収させるために、まず、適当な時間水に浸す。本発明の格別な特徴によると、小麦粉に加える水分または穀粒に吸収される水分のpHは、処理工程において、5.2以下、好ましくは4.7以下に調整される。望ましい結果によると、得られるβ−グルカンの鎖長で、pHは4.2以下、あるいは3.6以下であってもよい。
【0008】
次の処理工程は、加圧状態での加熱処理である。この工程は100℃〜130℃の温度で実行される。圧力は5バール、好ましくは3〜4バールまで調整され、この圧力は、用いられる温度に対応する飽和水蒸気の圧力か、あるいは、処理対象物質に外力を付与することによって得られる圧力であるため、それぞれの温度において飽和水蒸気によって付与されるよりも高い値まで圧力を上げる。
【0009】
温度を上げるために、異なる加熱工程、間接加熱あるいは直接加熱のいずれかを用いてもよい。処理対象物質の局部過熱をより容易に避けることができるため、間接加熱の方がより好ましい。極端な温度は、処理対象物質の炭水化物を分解する反応が生じる可能性があるため、避けるべきである。しかし、特に、温度によって飽和水蒸気の圧力に対応する処理圧力を用いた方法の実施例においては、均一分散された蒸気を処理対象物質に直接に送ることによる制御加熱を用いることも可能である。
【0010】
処理対象物質には、外圧を異なる方法で付与してもよい。適切な方法は、排出口が適切な圧力を維持するために絞られている処理容器に、連続して物質を送り込み続ける処理を行うことである。圧力は適切な供給ポンプによって付与される。供給装置はまた、処理容器全体にわたって延設されていてもよく、例えばスクリューコンベヤ状であってもよい。
【0011】
これらの状況において、いわゆる気相蒸解としての処理が行われる。加熱処理の時間は主に用いられる処理温度によるが、10分〜20分、通常約15分である。
【0012】
用いられる圧力に関しては、加熱処理中の圧力変化は、β−グルカン収率に好ましい影響を与える。いったん処理対象物質が一定時間所定の処理圧力で処理されると、その物質は1回または数回の圧力変化を受ける。処理対象物質に付与される圧力は一時的に低下し、その後再び所定の処理値まで上昇する。この工程は処理中数回繰り返される。この処理は、回分工程でも連続工程でも用いることができる。連続工程では、圧力は、処理された製品を工程から除去するサイクルと関連して好都合に低下するため、一時的な圧力低下はこの除去によって生じるものである。
【0013】
圧力変化をもたらす別の方法は、物質に瞬間的に上昇した圧力を付与した後、所定の処理値へ圧力を回復させることである。この圧力衝撃は、例えば、物質に付与される圧縮力を備えている。これは、間欠作動する送り装置が、物質に伝達される所定の衝撃を生じさせる連続した工程における物質搬送の結果であってもよい。
【0014】
実際には、圧力は、所定の圧力より、少なくとも0.5バール下回って、あるいは上回って変動する。また、より大きい圧力変化、特に瞬間的な減圧が有益であるため、圧力は、短時間の間であれば実質的に大気圧まで低下してもよい。減圧の実際的な限度としては、所定の処理圧力値の半分の値を設定することができる。なぜなら、この減圧の後、物質を再び所定の処理圧力下に置く必要があるからである。
【0015】
β−グルカンを分離するための一種の「ポンピング効果」を引き起こすことによる処理中の圧力変化が、β−グルカン収率には好ましい。
【0016】
所定の処理圧力に達するまでの圧力低下、あるいは場合によっては圧力上昇は、工程中数回、または少なくとも1回行われる。しかし、この処理は、特に圧力衝撃を利用する場合、工程中、5〜6回まで、あるいはそれ以上、数回繰り返すことができる。工程中の圧力差の大きさ及び圧力変化の回数は、β−グルカン収率に影響を与える。
【0017】
本方法で得られたβ−グルカンは、本工程で用いられる処理温度が128℃〜130℃、処理pHが4.1〜4.3の間で変動するときに最大の分子長さを持つことがわかっている。特に、工程で用いられるpH値が、得られたβ−グルカンの分子長さに影響を与える。
【0018】
本発明の工程では開始物質から解析される場合と量と同じレベルのβ−グルカン収率が得られる。これらの収率は、開始物質の分析が、解析される製品に有害である操作からなるとさえ示唆している。
【0019】
本発明の方法においては、特に全粒の場合、衝撃処理を、熱処理を経た穀粒構造を効果的に分解するのに用いることができる。この処理においては、加圧された穀粒物が瞬間的に実質的に大気圧下に置かれるため、穀粒の内圧の急激な低下により穀粒構造を分解する。
【0020】
熱処理後、β−グルカンを多く含む水溶成分が、得られた全体量から分離される。適切な後処理を用いて、β−グルカン含有量は47%のレベルまで上昇する。
【0021】
熱処理に続いて、水溶成分が、遠心分離法により、得られた全体量から分離されるが、異なる種類の圧力装置などの他の公知の分離方法を用いてもよい。固形物から分離された水溶成分は、従来のエバポレーション法だけでなく限外ろ過法などを含む後処理により濃縮される。また、これらの処理を組み合わせて用いることもできる。水溶成分の分離後得られる固形物、もろみは、例えば粉飼として利用してもよい。
【0022】
酸性化工程の上流で用いられる酸は、当然ながら食用品質酸であり、好ましくは、クエン酸または乳酸などの有機酸である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤シリアルからβ−グルカンを抽出する方法であって、pHが酸性の5.2以下の値に調整されるとともに、密閉空間において前記シリアルが5バール未満の処理圧力及び100℃〜130℃の温度下で処理され、減圧後に固形物から液相を分離し、この分離された液相からβ−グルカンを回収することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記湿潤シリアルのpHが、4.7〜3.6の値に調整されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記湿潤シリアルのpHが、4.2の値に調整されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記湿潤シリアルのpHが、3.6の値に調整されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記処理が3〜4バールの圧力で行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記シリアルが、処理中に少なくとも1回の圧力変化を受けることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記圧力変化が、所定の処理圧力から±0.5バールの範囲であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記圧力変化が、所定の処理圧力に対する瞬間的な減圧によって生じることを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記圧力変化が、所定の処理圧力より高い瞬間的な圧力衝撃によって生じることを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項10】
前記処理圧力が瞬間的に実質的に大気圧を下回ることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項11】
熱処理を受けた前記シリアルの乾燥成分の含有量が7〜10%の値に調整されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記シリアルが湿潤される前に粉砕されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記シリアルが全粒のまま処理される方法であって、前記シリアルが所定の水分を含むまで酸性化水に浸され、前記熱処理が前記所定の水分量で行われるとともに、前記熱処理が急激な減圧により終了することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記処理圧力を、外部圧力により、処理温度における飽和水蒸気圧よりも高い値まで上昇させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記処理圧力が、前記シリアルに付与される圧縮力分だけ上昇することを特徴とする請求項9または14に記載の方法。

【公表番号】特表2008−501354(P2008−501354A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526479(P2007−526479)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【国際出願番号】PCT/FI2005/050207
【国際公開番号】WO2005/120251
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(506404027)
【Fターム(参考)】