説明

シリカをベースとするゾル並びにそれらの製造及び使用

本発明は(a)水素形態のイオン交換能の少なくとも一部を有する陽イオン交換樹脂を用意し、(b)前記イオン交換樹脂をアルカリ金属ケイ酸塩水溶液と接触させて水性スラリーを生成し、(c)水相のpHが5.0から8.0までの範囲になるまで前記水性スラリーを撹拌し、(d)前記水相のpHを9.0以上に調節し、そして(e)前記イオン交換樹脂を工程(c)後又は工程(d)後に前記水相から分離することを特徴とする水性のシリカをベースとするゾルの製造方法に関する。また、本発明はこれらの方法により得られる水性のシリカをベースとするゾルだけでなく、(i)セルロース繊維を含む水性懸濁液を用意し、(j)その懸濁液に本発明の水性のシリカをベースとするゾルを含む一種以上の脱水兼歩留り助剤を添加し、そして(k)得られた懸濁液を脱水して紙のシート又はウェブを得ることを含む紙の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に抄紙における使用に適した水性のシリカをベースとするゾルに関する。更に特別には、本発明はシリカをベースとするゾル、それらの製造及び抄紙における使用に関する。本発明は高い安定性及びSiO2含量だけでなく、改良された脱水性能を有するシリカをベースとするゾルの改良された製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
製紙技術分野では、セルロース繊維並びに任意のてん料及び添加剤を含む水性懸濁液(紙料と称される)がヘッドボックス(これは紙料をフォーミングワイヤに排出する)に供給される。水が紙料から排出され、その結果、紙の湿潤ウェブが前記ワイヤ上に形成され、前記ウェブが抄紙機の乾燥部分中で更に脱水され、乾燥される。脱水兼歩留り助剤が脱水を促進し、かつセルロース繊維への微細な粒子の吸着を増大するために紙料に通常導入され、その結果、それらがワイヤ上の繊維で保持される。
【0003】
シリカをベースとする粒子のゾルが荷電された有機ポリマーと組み合わせて脱水兼歩留り助剤として広く使用される。このような添加剤系は製紙工業で現在使用中の最も有効なものの中にある。シリカをベースとするゾルの性質及び性能に影響するパラメーターの一つは比表面積である。安定な、高性能のシリカをベースとするゾルは通常少なくとも300m2/gの比表面積を有する粒子を含む。別のパラメーターはS値であり、これは凝集物又はミクロゲル形成の程度を示す。低いS値は高度の凝集を示す。高表面積及び或る程度の凝集物又はミクロゲル形成が性能の観点から有利であるかもしれないが、非常に高い表面積及び広範な粒子凝集又はミクロゲル形成がシリカをベースとするゾルのかなり低下された安定性をもたらし、それによりゲル形成を避けるようにゾルの極限の希釈を必要にする。
【0004】
米国特許第5,368,833号はケイ素原子の2〜25%の置換の程度までアルミニウムで表面変性される750〜1,000m2/gの範囲内の比表面積を有するシリカ粒子を含むシリカゾルを開示しており、そのゾルは8〜45%の範囲内のS値を有する。前記特許はまた水ガラス溶液を1〜4の範囲内のpHに酸性にする工程、この酸ゾルを7〜4.5重量%の範囲内のSiO2含量でアルカリ化する工程、このゾルの粒子成長を750〜1,000m2/gの範囲内の比表面積まで可能にする工程、及びこのゾルをアルミニウム変性にかける工程を含むシリカゾルの製造方法を開示している。
【0005】
米国特許第5,603,805号はアニオンシリカ粒子を含む15〜40%の範囲内のS値を有するシリカゾルを開示しており、前記シリカ粒子は必要によりアルミニウム変性されてもよく、300〜700m2/gの範囲内の比表面積を有する。前記特許はまた水ガラス溶液を1〜4の範囲内のpHに酸性にする工程、この酸ゾルを7〜5重量%の範囲内のSiO2含量でアルカリ化する工程、又7〜9のpH値へのこの酸ゾルのアルカリ化、及び300〜700m2/gの範囲内の比表面積までのこのゾルの粒子成長、続いて必要によりアルミニウム変性を含むシリカゾルの製造方法を開示している。
【0006】
国際特許出願公開WO 98/56715はアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液を11以下のpHを有するシリカをベースとする材料の水相と混合することを含む水性ポリシリケートミクロゲルの調製方法を開示している。このポリシリケートミクロゲルはパルプ及び紙の製造において、また水精製のために少なくとも一種のカチオン又は両性ポリマーと組み合わせて凝集剤として使用される。
【0007】
国際特許出願公開WO 00/66492はケイ酸塩水溶液を1〜4のpHまで酸性にして酸ゾルを生成し、この酸ゾルを第一アルカリ化工程でアルカリ化し、少なくとも10分間にわたってアルカリ化ゾルの粒子成長を可能にし、かつ/又はこのアルカリ化ゾルを少なくとも30℃の温度で熱処理し、得られたゾルを第二アルカリ化工程でアルカリ化し、必要によりシリカをベースとするゾルを、例えば、アルミニウムで変性することを含むシリカをベースとする粒子を含む水性ゾルの製造方法を開示している。
【0008】
米国特許第6,372,806号は(a)反応容器に水素形態のイオン交換能の少なくとも40%を有する陽イオン交換樹脂を仕込み(前記反応容器はコロイドシリカを前記イオン交換樹脂から分離するための手段を有する)、(b)前記反応容器に15:1から1:1までの範囲のSiO2対アルカリ金属酸化物のモル比及び少なくとも10.0のpHを有するアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を仕込み、(c)この内容物のpHが8.5から11.0までの範囲内になるまで前記反応容器の前記内容物を撹拌し、(d)追加量の前記金属ケイ酸塩を使用して前記反応容器の内容物のpHを10.0以上に調節し、そして(e)得られるコロイドシリカを前記イオン交換樹脂から分離するとともに前記コロイドシリカを前記反応容器から除去することを含む20-50のS値を有する安定なコロイドシリカ(前記シリカは700m2/gより大きい表面積を有する)の調製方法を開示している。
【0009】
米国特許第5,176,891号は(a)約0.1〜6重量%のSiO2を含むアルカリ金属ケイ酸塩の希薄な溶液を2〜10.5のpHに酸性にしてポリケイ酸を生成する工程、続いて(b)水溶性アルミン酸塩を前記ポリケイ酸と反応させる工程(その後にポリケイ酸がゲル化し、その結果、約1/100より大きいアルミナ/シリカモル比を有する生成物が得られる)、次いで(c)その反応混合物を希釈する工程(その後にゲル化が約2.0重量%以下のSiO2の当量まで起こってミクロゲルを安定化する)を含む、少なくとも約1,000m2/gの表面積を有する水溶性ポリアルミノシリケートミクロゲルの製造方法を開示している。
【0010】
高い安定性及びSiO2含量だけでなく、改良された脱水性能を有するシリカをベースとするゾルを提供することができることが有利であろう。また、安定性及びSiO2含量だけでなく、改良された脱水性能を有するシリカをベースとするゾルの改良された調製方法を提供することができることが有利であろう。また、改良された脱水を有する抄紙方法を提供することができることが有利であろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は一般に
(a)水素形態のイオン交換能の少なくとも一部を有する陽イオン交換樹脂を用意し、
(b)前記イオン交換樹脂をアルカリ金属ケイ酸塩水溶液と接触させて水性スラリーを生成し、
(c)水相のpHが5.0から8.0までの範囲になるまで前記水性スラリーを撹拌し、
(d)前記水相のpHを9.0以上に調節し、そして
(e)前記イオン交換樹脂を工程(c)後又は工程(d)後に前記水相から分離することを特徴とする水性のシリカをベースとするゾルの製造方法に関する。
【0012】
更に、本発明は一般に
(a)反応容器を用意し、
(b)前記反応容器に
(i)水素形態のイオン交換能の少なくとも一部を有する陽イオン交換樹脂、及び
(ii)アルカリ金属ケイ酸塩水溶液
を用意して水性スラリーを生成し、
(c)水相のpHが5.0から8.0までの範囲になるまで前記水性スラリーを撹拌し、
(d)一種以上の材料を工程(c)後に得られた水相に添加して9.0以上のpHを有する水相を生成し、
(e)前記イオン交換樹脂を工程(c)後又は工程(d)後に水相から分離することを特徴とする水性のシリカをベースとするゾルの製造方法に関する。
【0013】
更に、本発明は水性のシリカをベースとするゾル及びこれらの方法により得られる水性のシリカをベースとするゾルに関する。更に、本発明は、特に抄紙における脱水兼歩留り助剤としての、また水精製のための、本発明のシリカをベースとするゾルの使用に関する。
【0014】
更に、本発明は一般に
(a)セルロース繊維を含む水性懸濁液を用意し、
(b)その懸濁液に本明細書に特定された発明の水性のシリカをベースとするゾルを含む一種以上の脱水兼歩留り助剤を添加し、そして
(c)得られた懸濁液を脱水して紙のシート又はウェブを得ることを含む紙の製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明によれば、水精製における凝集剤として、また抄紙における脱水兼歩留り助剤としての使用に適しているシリカをベースとするゾルが提供される。本発明のシリカをベースとするゾルは長期間にわたって良好な安定性、注目すべきは高い表面積安定性及び完全なゲル形成を避けるための高い安定性を示す。このシリカをベースとするゾルは更に抄紙に使用される場合の非常に良好な脱水及び歩留り、特に改良された脱水をもたらす。これにより、本発明は抄紙機の速度を増大し、かつ相当する脱水効果を生じるのに低用量の添加剤を使用することを可能にし、それにより改良された製紙方法及び経済的な利益をもたらす。本発明のシリカをベースとするゾルは簡単で、迅速で、かつ制御し、調節するのに容易である方法により調製でき、その方法は簡単かつ安価な製造装置を利用することを可能にする。これにより、本発明のシリカゾルは簡素化され、改良され、かつ一層経済的である方法により製造し得る。
【0016】
その方法に使用されるイオン交換樹脂はカチオン型であり、水素形態のイオン交換能の少なくとも一部を有し、即ち、酸陽イオン交換樹脂、好ましくは弱酸陽イオン交換樹脂である。好適には、このイオン交換樹脂は水素形態のイオン交換能の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%を有する。好適なイオン交換樹脂が幾つかの製造業者により、例えば、ローム&ハースからアンバーライト(登録商標)IRC84SPとして市場に提供される。好ましくは、混合のための手段、例えば、撹拌機を備えた反応容器に、前記イオン交換樹脂が仕込まれる。好ましくは、このイオン交換樹脂は、好ましくは製造業者の指示に従って、酸、例えば、硫酸の添加により再生される。
【0017】
その方法の工程(b)は陽イオン交換樹脂をアルカリ金属ケイ酸塩水溶液と一緒にすることを含む。好適には、これはイオン交換樹脂及びアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を反応容器に添加することにより達成される。好ましくは、再生されたイオン交換樹脂を含む反応容器に、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液が仕込まれ、それにより水性スラリーが生成される。通常、このアルカリ金属ケイ酸塩水溶液が水素形態のイオン交換能の100%を有するイオン交換樹脂として計算して、1分当りかつイオン交換樹脂1kg当り0.5〜50g、好適には1〜35、好ましくは2〜20のSiO2の範囲の速度で水素形態のイオン交換能の少なくとも一部を有するイオン交換樹脂を含む反応容器に添加される。また、前記アルカリ金属ケイ酸塩水溶液を含む反応容器に、再生されたイオン交換樹脂が仕込まれ、それにより水性スラリーが生成される。
【0018】
好適なアルカリ金属ケイ酸塩水溶液又は水ガラスの例として、通常の材料、例えば、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウム、好ましくはケイ酸ナトリウムが挙げられる。このケイ酸塩溶液中の、シリカ対アルカリ金属酸化物、例えば、SiO2対Na2O、K2OもしくはLi2O、又はこれらの混合物のモル比は15:1から1:1までの範囲、好適には4.5:1から1.5:1まで、好ましくは3.9:1から2.5:1までの範囲であってもよい。使用されるアルカリ金属ケイ酸塩水溶液は約2重量%から約35重量%まで、好適には約5重量%から約30重量%まで、好ましくは約15重量%から約25重量%までのSiO2含量を有し得る。このアルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpHは通常11以上、典型的には12以上である。
【0019】
その方法の工程(c)は水相のpHが5.0から8.0までの範囲になるまで工程(b)で生成された水性スラリーを撹拌することを含む。撹拌は水相のpHが6.0から8.0まで、好ましくは6.5から7.5までの範囲になるまで行なわれることが好適である。粒子成長が水性スラリーを撹拌している間に起こることが好ましい。生成されたシリカをベースとする粒子は通常少なくとも300m2/g、好ましくは少なくとも700m2/gの比表面積を有する。この比表面積は好適には1,500m2/gまで、好ましくは1,000m2/gまでである。このスラリーは粒子凝集及びミクロゲル生成を可能にするように撹拌されることが好ましく、通常5〜45%、好適には8〜35%、好ましくは10〜25%、最も好ましくは15〜23%の範囲のS値に相当することを可能にするように撹拌される。この撹拌は5〜240分、好ましくは15〜120分の時間の期間中に通常行なわれる。
【0020】
その方法の工程(c)は工程(b)と同時かつ/又はその後に行ない得る。好ましい実施態様において、前記アルカリ金属ケイ酸塩水溶液が水素形態のイオン交換能の少なくとも一部を有するイオン交換樹脂を含む反応容器に撹拌下で添加され、次いで、添加を完結した後に、撹拌が上記のようなpH及び必要により粒子凝集又はミクロゲル生成を得るまで続く。別の好ましい実施態様において、前記アルカリ金属ケイ酸塩水溶液が水素形態のイオン交換能の少なくとも一部を有するイオン交換樹脂を含む反応容器に撹拌下で添加されて上記のようなpH及び必要により粒子凝集又はミクロゲル生成を得る。
【0021】
その方法の工程(d)は前記水相に一種以上の材料を添加することを含む。これにより、前記水相のpHが好適には9.0以上に調節され、好ましくは10.0以上のpHに上昇される。好適には、そのpHが9.2から11.5まで、好ましくは9.5から11.2まで、最も好ましくは10.0から11.0までの範囲である。少なくとも一種のアルカリ性材料が、単独で、又は少なくとも一種の第二の材料と組み合わせて添加されることが好ましい。
【0022】
好適なアルカリ性材料の例として、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液、例えば、先に特定されたもののいずれか、好ましくはケイ酸ナトリウム;アルカリ金属水酸化物水溶液、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、好ましくは水酸化ナトリウム;水酸化アンモニウム;アルカリ性アルミニウム塩、例えば、アルミン酸塩、好適にはアルミン酸塩水溶液、例えば、アルミン酸ナトリウム及びアルミン酸カリウム、好ましくはアルミン酸ナトリウムが挙げられる。
【0023】
好適な第二の材料の例として、アルミニウム化合物及び有機窒素含有化合物が挙げられる。好適なアルミニウム化合物の例として、中性及び実質的に中性のアルミニウム塩、例えば、硝酸アルミニウム、アルカリ性アルミニウム塩、例えば、先に特定されたもののいずれか、好ましくはアルミン酸ナトリウムが挙げられる。
【0024】
好適な有機窒素含有化合物の例として、一級アミン、二級アミン、三級アミン及び四級アミンが挙げられ、後者はまた四級アンモニウム化合物と称される。この窒素含有化合物は水溶性又は水分散性であることが好ましい。前記アミンは荷電されなくてもよく、又は陽イオンであってもよい。陽イオンアミンの例として、一級アミン、二級アミン及び三級アミンの酸付加塩及び、好ましくは、四級アンモニウム化合物だけでなく、それらの水酸化物が挙げられる。前記有機窒素含有化合物は通常1,000以下、好適には500以下、好ましくは300以下の分子量を有する。低分子量の有機窒素含有化合物、例えば、25個までの炭素原子、好適には20個までの炭素原子、好ましくは2個から12個までの炭素原子、最も好ましくは2個から8個までの炭素原子を有するこれらの化合物が使用されることが好ましい。好ましい実施態様において、前記有機窒素含有化合物は、例えば、ヒドロキシル基及び/又はアルキルオキシ基の形態の酸素を含む、一つ以上の酸素含有置換基を有する。この型の好ましい置換基の例として、ヒドロキシアルキル基、例えば、エタノール基、並びにメトキシ基及びエトキシ基が挙げられる。有機窒素含有化合物は1個以上、好ましくは1個又は2個の窒素原子を含んでもよい。好ましいアミンとして、少なくとも6、好適には少なくとも7、好ましくは少なくとも7.5のpKa値を有するものが挙げられる。
【0025】
好適な一級アミン、即ち、1個の有機置換基を有するアミンの例として、アルキルアミン、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン及びシクロヘキシルアミン;アルカノールアミン、例えば、エタノールアミン;並びにアルコキシアルキルアミン、例えば、2-メトキシエチルアミンが挙げられる。好適な二級アミン、即ち、2個の有機置換基を有するアミンの例として、ジアルキルアミン、例えば、ジエチルアミン、ジプロピルアミン及びジ-イソプロピルアミン;ジアルカノールアミン、例えば、ジエタノールアミン、及びピロリジンが挙げられる。好適な三級アミン、即ち、3個の有機置換基を有するアミンの例として、トリアルキルアミン、例えば、トリエチルアミン;トリアルカノールアミン、例えば、トリエタノールアミン;N,N-ジアルキルアルカノールアミン、例えば、N,N-ジメチルエタノールアミンが挙げられる。好適な四級アミン、又は四級アンモニウム化合物、即ち、4個の有機置換基を有するアミンの例として、テトラアルカノールアミン、例えば、テトラエタノール水酸化アンモニウム及びテトラエタノール塩化アンモニウム;アルカノール置換基及びアルキル置換基の両方を有する四級アミン又はアンモニウム化合物、例えば、N-アルキルトリアルカノールアミン、例えば、メチルトリエタノール水酸化アンモニウム及びメチルトリエタノール塩化アンモニウム;N,N-ジアルキルジアルカノールアミン、例えば、ジメチルジエタノール水酸化アンモニウム及びジメチルジエタノール塩化アンモニウム;N,N,N-トリアルキルアルカノールアミン、例えば、水酸化コリン及び塩化コリン;N,N,N-トリアルキルベンジルアミン、例えば、ジメチルココベンジル水酸化アンモニウム、ジメチルココベンジル塩化アンモニウム及びトリメチルベンジル水酸化アンモニウム;テトラアルキルアンモニウム塩、例えば、テトラメチル水酸化アンモニウム、テトラメチル塩化アンモニウム、テトラエチル水酸化アンモニウム、テトラエチル塩化アンモニウム、テトラプロピル水酸化アンモニウム、テトラプロピル塩化アンモニウム、ジエチルジメチル水酸化アンモニウム、ジエチルジメチル塩化アンモニウム、トリエチルメチル水酸化アンモニウム及びトリエチルメチル塩化アンモニウムが挙げられる。好適なジアミンの例として、アミノアルキルアルカノールアミン、例えば、アミノエチルエタノールアミン、ピペラジン及び1〜4個の炭素原子の1個又は2個の低級アルキル基を有する窒素置換ピペラジンが挙げられる。好ましい有機窒素含有化合物の例として、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、アミノエチルエタノールアミン、2-メトキシエチルアミン、N,N-ジメチル-エタノールアミン、水酸化コリン、塩化コリン、テトラメチル水酸化アンモニウム、テトラエチル水酸化アンモニウム及びテトラエタノール水酸化アンモニウムが挙げられる。
【0026】
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液は単独で、又はアルミン酸ナトリウム水溶液もしくは有機窒素含有化合物水溶液と組み合わせて添加されることが好ましい。
【0027】
少なくとも一種のアルカリ性材料及び少なくとも一種の第二の材料を含む2種以上の材料を使用する場合、これらの材料はあらゆる順序で添加でき、好ましくは前記アルカリ性材料が最初に添加され、続いて第二の材料が添加される。
【0028】
好ましい実施態様において、アルカリ金属ケイ酸塩、例えば、ケイ酸ナトリウムが最初に添加され、次いでアルカリ性アルミニウム塩、例えば、アルミン酸ナトリウム水溶液が添加される。別の好ましい実施態様において、アルカリ金属水酸化物水溶液、例えば、水酸化ナトリウムが最初に添加され、次いでアルカリ性アルミニウム塩、例えば、アルミン酸ナトリウム水溶液が添加される。このアルミニウム化合物の添加がアルミン酸塩処理したシリカをベースとするゾルを与える。好適には、このアルミニウム化合物の添加がシリカをベースとする粒子のアルミニウム変性をもたらし、好ましくはこれらの粒子がアルミニウムにより表面変性される。使用されるアルミニウム化合物の量は広い制限内で変化し得る。通常、添加されるアルミニウム化合物の量は10:1から100:1まで、好適には20:1から50:1まで、好ましくは25:1から35:1まで、最も好ましくは25:1から30:1までのSi:Alのモル比に相当する。
【0029】
別の好ましい実施態様において、アルカリ金属ケイ酸塩、例えば、ケイ酸ナトリウムが最初に添加され、次いで有機窒素含有化合物、例えば、水酸化コリン水溶液が添加される。別の好ましい実施態様において、アルカリ金属水酸化物水溶液、例えば、水酸化ナトリウムが最初に添加され、次いで有機窒素含有化合物、例えば、水酸化コリン水溶液が添加される。この有機窒素含有化合物の添加が窒素変性されたシリカをベースとするゾルを与える。使用される有機窒素含有化合物の量は広い制限内で変化し得る。通常、添加される有機窒素含有化合物の量は2:1から100:1まで、好適には3:1から60:1まで、好ましくは4:1から40:1までのSi:Nのモル比に相当する。
【0030】
その方法の工程(d)では、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液を使用して前記水相のpHを調節する場合、工程(b)で使用されるアルカリ金属ケイ酸塩対工程(d)で使用されるアルカリ金属ケイ酸塩の重量比は広い制限内で変化し得る。通常、その比は99:1から1:9まで、好適には19:1から1:2まで、好ましくは4:1から1:1までの範囲である。
【0031】
その方法の工程(e)では、前記イオン交換樹脂が、例えば、濾過により水相から分離される。これは工程(c)後、例えば、工程(c)後であるが工程(d)の前に、又は工程(d)後に行ない得る。また、前記イオン交換樹脂を工程(d)中に水相から分離することが可能である。例えば、前記イオン交換樹脂がアルカリ性材料を添加した後であるが第二の材料を添加する前に分離し得る。また、一種のアルカリ性材料、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液の一部を添加し、次いで前記イオン交換樹脂を水相から分離し、続いてアルカリ性材料の残部を添加することが可能である。前記イオン交換樹脂は工程(d)後に水相から分離されることが好ましい。
【0032】
その方法に使用される出発材料水溶液、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液、アルカリ金属水酸化物水溶液及びアルミン酸ナトリウム水溶液の濃度は、通常、少なくとも3重量%、好適には少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも6重量%、最も好ましくは少なくとも7.5重量%、かつ好適には20重量%まで、好ましくは15重量%までのSiO2含量を有するシリカをベースとするゾルを得るように調節されることが好ましい。
【0033】
本発明のシリカをベースとするゾル水溶液はシリカをベースとする粒子、即ち、シリカ又はSiO2をベースとする粒子(これらはアニオンであり、コロイド、即ち、粒子サイズのコロイド範囲であることが好ましい)を含む。これらの粒子はアルミニウムで変性されてもよく、好適にはアルミニウムで変性され、好ましくはアルミニウムで表面変性される。本発明のシリカをベースとするゾルは10:1から100:1まで、好適には20:1から50:1まで、好ましくは25:1から35:1まで、最も好ましくは25:1から30:1までのSi:Alのモル比を有し得る。
【0034】
本発明のシリカをベースとするゾルは有機窒素含有化合物で変性し得る。本発明のシリカをベースとするゾルは2:1から100:1まで、好適には3:1から60:1まで、好ましくは4:1から40:1までのSi:Nのモル比を有し得る。
【0035】
本発明のシリカをベースとするゾルは10〜50%、好適には12〜40%、好ましくは15〜25%、最も好ましくは17〜24%の範囲のS値を有し得る。このS値はIler&Dalton著J. Phys. Chem. 60(1956), 955-957により記載されたように測定され、計算される。このS値は凝集物又はミクロゲル生成の程度を示し、低いS値は高度の凝集を示す。
【0036】
前記ゾル中に存在するシリカをベースとする粒子は少なくとも300m2/g、好適には少なくとも700m2/g、好ましくは少なくとも750m2/gの比表面積を有し得る。この比表面積は通常1,000m2/gまで、好適には950m2/gまでである。この比表面積は、例えば、Sears著Analytical Chemistry 28(1956):12, 1981-1983及び米国特許第5,176,891号により記載されたように、アルミニウム化合物、窒素化合物及びホウ素化合物のような滴定を乱し得るサンプル中に存在する化合物の適当な除去又はそれらについての調節後に、Searsの文献により記載されたようにNaOHによる滴定により測定される。
【0037】
本発明のシリカをベースとするゾルは通常少なくとも3:1、好適には少なくとも4:1、好ましくは少なくとも5:1、最も好ましくは少なくとも6:1のSi:X(Xはアルカリ金属である)のモル比を有する。このSi:X(Xはアルカリ金属である)のモル比は通常50:1まで、好適には20:1まで、好ましくは17:1まで、更に好ましくは15:1まで、最も好ましくは10:1までである。
【0038】
本発明のシリカをベースとするゾルは安定であることが好ましい。このゾルは暗所で撹拌しない条件で20℃の貯蔵又はエージングの少なくとも3ヶ月にわたって少なくとも300m2/g、好ましくは少なくとも700m2/gの比表面積を維持することが好適である。好適には、このゾルは暗所で撹拌しない条件で20℃の貯蔵又はエージングの少なくとも3ヶ月にわたって10〜50%、好ましくは12〜40%の範囲のS値を維持する。
【0039】
本発明のシリカをベースとするゾルは、例えば、パルプ及び紙の製造における凝集剤として、注目すべきは脱水兼歩留まり助剤としての使用、また異なる種類の廃水の精製及び特別にはパルプ及び紙工業からの白水の精製の両方のための、水精製の分野内の使用に適している。このシリカをベースとするゾルはアニオン性、両性、ノニオン性及びカチオン性のポリマー並びにこれらの混合物から選択し得る有機ポリマーと組み合わせて、凝集剤、注目すべきは脱水兼歩留り助剤として使用し得る。凝集剤及び脱水兼歩留り助剤としてのこのようなポリマーの使用は当業界で公知である。これらのポリマーは天然源又は合成源から誘導でき、それらは線状、分岐又は架橋であってもよい。一般に好適な主ポリマーの例として、アニオン性、両性及びカチオン性の澱粉;アニオン性、両性及びカチオン性のアクリルアミドをベースとするポリマー(実質的に線状、分岐及び架橋されたアニオン性及びカチオン性のアクリルアミドをベースとするポリマーを含む)だけでなく、カチオン性ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、カチオン性ポリエチレンイミン、カチオン性ポリアミン、カチオン性ポリアミドアミン及びビニルアミドをベースとするポリマー、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂及び尿素-ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。前記シリカをベースとするゾルは少なくとも一種のカチオン性又は両性ポリマー、好ましくはカチオン性ポリマーと組み合わせて使用されることが好適である。カチオン澱粉及びカチオン性ポリアクリルアミドが特に好ましいポリマーであり、それらは単独で、互いに一緒に、又はその他のポリマー、例えば、その他のカチオン性ポリマー及び/又はアニオン性ポリマーと一緒に使用し得る。そのポリマーの分子量は好適には1,000,000以上、好ましくは2,000,000以上である。その上限は重要ではない。それは約50,000,000、通常30,000,000、好適には約25,000,000であってもよい。しかしながら、天然源から誘導されたポリマーの分子量は一層高くてもよい。
【0040】
本シリカをベースとするゾルはまた、上記一種以上の有機ポリマーの同時使用とともに、又は同時使用しないで、一種以上のカチオン性凝固剤と組み合わせて使用し得る。好適なカチオン性凝固剤の例として、水溶性有機ポリマー凝固剤及び無機凝固剤が挙げられる。このカチオン性凝固剤は単独で、又は一緒に使用でき、即ち、ポリマー凝固剤は無機凝固剤と組み合わせて使用し得る。
【0041】
好適な水溶性有機ポリマーのカチオン性凝固剤の例として、カチオン性のポリアミン、ポリアミドアミン、ポリエチレンイミン、ジシアンジアミド縮合ポリマー及び水溶性エチレン性不飽和モノマー又はモノマーブレンド(これは50〜100モル%のカチオン性モノマー及び0〜50モル%のその他のモノマーから生成される)のポリマーが挙げられる。カチオン性モノマーの量は通常少なくとも80モル%、好適には100%である。好適なエチレン性不飽和カチオン性モノマーの例として、好ましくは四級化された形態の、ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミド及びジアルキルアミノアルキルメタクリルアミド、並びにジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、好ましくはDADMACのホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。前記有機ポリマーカチオン性凝固剤は通常1,000から700,000まで、好適には10,000から500,000までの範囲の分子量を有する。好適な無機凝固剤の例として、アルミニウム化合物、例えば、ミョウバン及びポリアルミニウム化合物、例えば、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸アルミニウム、ポリケイ酸硫酸アルミニウム並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
本発明の脱水兼歩留り助剤の各成分は通常の様式であらゆる順序で紙料に添加し得る。シリカをベースとするゾル及び有機ポリマーを含む脱水兼歩留り助剤を使用する場合、たとえ添加の反対の順序が使用されてもよいとしても、シリカをベースとするゾルを添加する前に有機ポリマーを紙料に添加することが好ましい。この有機ポリマーをせん断段階(これはポンプ輸送、混合、洗浄等から選ばれる)の前に添加し、シリカをベースとするゾルをそのせん断段階後に添加することが更に好ましい。カチオン性凝固剤を使用する場合、それはシリカをベースとするゾルの添加の前、また好ましくは一種以上の有機ポリマーの添加の前にセルロース懸濁液に添加されることが好ましい。
【0043】
本発明の脱水兼歩留り助剤の各成分は、とりわけ、各成分の型及び数、完成紙料の型、てん料含量、てん料の型、添加の時点等に応じて広い制限内で変化し得る量で脱水すべき紙料に添加される。一般に、これらの成分は各成分を添加しない場合に得られるよりも良好な脱水及び歩留りを与える量で添加される。シリカをベースとするゾルは乾燥完成紙料、即ち、乾燥セルロース繊維及び任意のてん料を基準としてSiO2として計算して、通常少なくとも0.001重量%、しばしば少なくとも0.005重量%の量で添加され、その上限は通常1.0重量%、好適には0.5重量%である。前記有機ポリマーは完成紙料を基準として、通常少なくとも0.001重量%、しばしば少なくとも0.005重量%の量で添加され、その上限は通常3重量%、好適には1.5重量%である。カチオン性ポリマー凝固剤を使用する場合、それは完成紙料を基準として、少なくとも0.05%の量で添加し得る。好適には、その量は0.07〜0.5%の範囲、好ましくは0.1〜0.35%の範囲である。アルミニウム化合物を無機凝固剤として使用する場合、添加される合計量は乾燥完成紙料を基準としてAl2O3として計算して、通常少なくとも0.05%である。好適には、その量は0.1〜3.0%の範囲、好ましくは0.5〜2.0%の範囲である。
【0044】
抄紙において通常である更なる添加剤が、勿論、本発明の添加剤と組み合わせて使用でき、例えば、乾燥強度増強剤、湿潤強度増強剤、蛍光増白剤、染料、ロジンをベースとするサイジング剤及びセルロース反応性サイジング剤のようなサイジング剤、例えば、アルキルケテン二量体及びアルケニルケテン二量体並びにケテン多量体、アルキル無水コハク酸及びアルケニル無水コハク酸等が挙げられる。前記セルロース懸濁液、又は紙料はまた通常の型の無機てん料、例えば、カオリン、チャイナクレー、二酸化チタン、石膏、タルク並びに天然及び合成の炭酸カルシウム、例えば、チョーク、粉砕大理石及び沈降炭酸カルシウムを含み得る。
【0045】
本発明の方法は紙の製造に使用される。本明細書に使用される“紙”という用語は、勿論、紙及びその製品だけでなく、その他のセルロースシート又はウェブのような製品、例えば、板紙及びペーパーボード、並びにこれらの製品を含む。その方法はセルロース含有繊維の異なる型の懸濁液からの紙の製造に使用でき、この懸濁液は乾燥物質を基準として、好適には少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも50重量%のこのような繊維を含むべきである。前記懸濁液は広葉樹及び針葉樹の両方からの、ケミカルパルプ、例えば、硫酸パルプ、亜硫酸パルプ及び有機溶剤パルプ、メカニカルパルプ、例えば、サーモメカニカルパルプ、ケモサーモメカニカルパルプ、リファイナパルプ及び砕木パルプからの繊維をベースとすることができ、また必要により脱インキされたパルプからの、リサイクル繊維、及びこれらの混合物をベースとすることができる。前記懸濁液、紙料のpHは約3から約10までの範囲内であってもよい。そのpHは好適には3.5以上、好ましくは4から9までの範囲内である。
【0046】
本発明が下記の実施例で更に説明されるが、これらの実施例は本発明を限定することを目的とするものではない。部数及び%は、特にことわらない限り、夫々重量部及び重量%に関する。
【実施例】
【0047】
下記の装置及び出発材料を実施例中で使用した。
(a)撹拌機を備えた反応器、
(b)イオン交換樹脂アンバーライト(登録商標)IRC84SP(ローム&ハースから入手し得る)(これは製造業者の指示に従って硫酸で再生された)、
(c)約21重量%のSiO2含量及び3.32のSiO2対Na2Oのモル比を有するケイ酸ナトリウム水溶液、
(d)2.44重量%のAl2O3を含むアルミン酸ナトリウム水溶液、
(e)35重量%の水酸化コリン含量を有する水酸化コリン水溶液、及び
(f)1キロ当り5モルの濃度を有する水酸化ナトリウム水溶液。
[実施例1]
【0048】
この実施例は本発明のシリカをベースとするゾルの調製を示す。再生されたイオン交換樹脂(471g)及び水(1,252g)を反応器に仕込んだ。得られたスラリーを強烈に撹拌し、30℃の温度に加熱した。次いでケイ酸ナトリウム水溶液(298g)を5g/分の速度で前記スラリーに添加した。ケイ酸ナトリウムの添加後に、このスラリーのpHは約7.3であった。次いでこのスラリーを更に44分間にわたって撹拌し、その後に水相のpHは6.9であった。その後に追加のケイ酸ナトリウム水溶液(487g)を5g/分の速度で前記スラリーに添加した。得られたシリカをベースとするゾルをイオン交換樹脂から分離した。
【0049】
得られたシリカをベースとするゾルは下記の性質を有していた:SiO2含量=8.6重量%;モル比Si:Na=11.0;pH=10.4;比表面積=680m2/g;及びS値=20%。
[実施例2]
【0050】
この実施例は本発明の別のシリカをベースとするゾルの調製を示す。ケイ酸ナトリウム水溶液(52g)を10分の期間中に激しい撹拌下で実施例1のゾル(527.4g)に添加した。
【0051】
得られたシリカをベースとするゾルは下記の性質を有していた:SiO2含量=7.7重量%;モル比Si:Na=7.5;モル比Si:Al=26.2;pH=10.7;比表面積=790m2/g;及びS値=18%。
[実施例3]
【0052】
この実施例は本発明の更に別のシリカをベースとするゾルの調製を示す。水酸化コリン水溶液(7.9g)を4g/分の速度で激しい撹拌下で実施例1のゾル(395g)に添加した。
【0053】
得られたシリカをベースとするゾルは下記の性質を有していた:SiO2含量=8.4重量%;モル比Si:Na=11.1;モル比Si:N=24.6;pH=10.8;比表面積=890m2/g;及びS値=18%。
[実施例4]
【0054】
この実施例は本発明の更に別のシリカをベースとするゾルの調製を示す。再生されたイオン交換樹脂(600g)及び水(1,600g)を反応器に仕込んだ。得られたスラリーを強烈に撹拌し、30℃の温度に加熱した。次いでケイ酸ナトリウム水溶液(764g)を6.8g/分の速度で前記スラリーに添加した。ケイ酸ナトリウムの添加後に、このスラリーのpHは約8であり、その後にイオン交換樹脂を水相から分離した。水酸化ナトリウム水溶液(30g)を10g/分の速度で水相に添加した。
【0055】
得られたシリカをベースとするゾルは下記の性質を有していた:SiO2含量=6.7重量%;モル比Si:Na=8.9;pH=10.6;比表面積=810m2/g;及びS値=25%。
[実施例5]
【0056】
この実施例は本発明の別のシリカをベースとするゾルの調製を示す。ケイ酸ナトリウム水溶液(83g)を10分の期間中に激しい撹拌下で実施例4のゾル(776g)に添加した。
【0057】
得られたシリカをベースとするゾルは下記の性質を有していた:SiO2含量=6.1重量%;モル比Si:Na=5.9;モル比Si:Al=20.3;pH=10.9;比表面積=930m2/g;及びS値=22%。
[実施例6]
【0058】
この実施例は本発明の更に別のシリカをベースとするゾルの調製を示す。水酸化コリン水溶液(14.3g)を4g/分の速度で激しい撹拌下で実施例4のゾル(714g)に添加した。
【0059】
得られたシリカをベースとするゾルは下記の性質を有していた:SiO2含量=6.6重量%;モル比Si:Na=9.0;モル比Si:N=18.9;pH=11;比表面積=1,010m2/g;及びS値=23%。
[実施例7]
【0060】
この実施例は本発明の更に別のシリカをベースとするゾルの調製を示す。再生されたイオン交換樹脂(595g)及び水(1,605g)を反応器に仕込んだ。このようにして得られたスラリーを強烈に撹拌し、30℃の温度に加熱した。次いでケイ酸ナトリウム水溶液(849g)を6.3g/分の速度で前記スラリーに添加した。次いでこのスラリーを更に135分間撹拌し、その後に水相のpHは7.9であった。その後に追加のケイ酸ナトリウム水溶液(326g)を6.3g/分の速度で前記スラリーに添加した。得られたシリカをベースとするゾルをイオン交換樹脂から分離した。
【0061】
得られたシリカをベースとするゾルは下記の性質を有していた:SiO2含量=9.3重量%;モル比Si:Na=7.5;pH=10.4;比表面積=850m2/g;及びS値=23%。
[例8]
【0062】
下記のシリカをベースとするゾル、参考例1a〜参考例3を比較の目的のために調製した。
【0063】
参考例1aは米国特許第6,372,089号及び同第6,372,806号の実施例4の開示に従って調製されたシリカをベースとするゾルである。
【0064】
参考例1bは米国特許第6,372,089号及び同第6,372,806号の欄4の一般の開示に従って調製されたシリカをベースとするゾルであり、工程(c)で反応容器の内容物のpHが9.2になるまで反応容器の内容物を撹拌した。
【0065】
参考例1cは米国特許第5,447,604号の開示に従って調製されたシリカをベースとするゾルであり、これは約25%のS値、約19のSi:Alのモル比を有し、約900m2/g SiO2の比表面積を有する粒子を含んでいた。
【0066】
参考例1dは34%のS値を有する米国特許第5,603,805号の開示に従って調製されたシリカをベースとするゾルであり、約700m2/gの比表面積を有するシリカ粒子を含んでいた。
【0067】
参考例2aは米国特許第5,368,833号の開示に従って調製されたシリカをベースとするゾルであり、これは約25%のS値、約19のSi:Alのモル比を有し、約900m2/g SiO2の比表面積を有するシリカ粒子(これらはアルミニウムで表面変性された)を含んでいた。
【0068】
参考例2bは米国特許第5,368,833号の開示に従って調製されたシリカをベースとするゾルであり、これは20%のS値、約18のSi:Alのモル比を有し、約820m2/g SiO2の比表面積を有するシリカ粒子(これらはアルミニウムで表面変性された)を含んでいた。
【0069】
参考例3は米国特許第6,379,500号の開示に従って調製されたシリカをベースとするゾルであり、これは約30%のS値、約10のSi:Naのモル比、約21のSi:Nのモル比を有し、水酸化コリン及び約900m2/g SiO2の比表面積を有するシリカ粒子を含んでいた。
[実施例9]
【0070】
下記の試験では、実施例1〜3(夫々、“実施例1”、“実施例2”及び“実施例3”)のシリカをベースとするゾルの脱水性能を例8のシリカをベースとするゾルの脱水性能に対し試験した。この脱水性能をスウェーデンのアクリビから入手し得る動的脱水アナライザー(DDA)(これは栓を除去し、真空を紙料が存在する面と反対のワイヤの面に適用する場合にワイヤを通って設定容積の紙料を脱水する時間を測定する)により評価した。
【0071】
使用した紙料は60%の漂白硫酸カバ及び40%の漂白硫酸マツからなる通常の上級紙完成紙料をベースとした。30%の粉砕炭酸カルシウムをてん料として紙料に添加し、0.3g/lのNa2SO4・10H2Oを添加して導電率を増大した。紙料pHは8.1であり、導電率は1.5mS/cmであり、コンシステンシーは0.5%であった。これらの試験では、前記シリカをベースとするゾルを約0.042の置換度を有するカチオン澱粉であるカチオン性ポリマーと一緒に試験した。この澱粉を乾燥完成紙料の乾燥澱粉として計算して、8kg/トンの量で添加した。
【0072】
前記紙料を試験中に1,500rpmの速度でじゃま板付きジャー中で撹拌し、この紙料への薬品添加を以下のように行なった。
i)カチオン澱粉を添加し、続いて30秒撹拌し、
ii)シリカをベースとするゾルを添加し、続いて15秒撹拌し、そして
iii)脱水時間を自動的に記録しながら紙料を脱水する。
【0073】
表1〜3は種々の用量のシリカをベースとするゾル(乾燥完成紙料を基準としてSiO2として計算して、kg/トン)を使用する場合に得られた結果を示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

[実施例10]
【0077】
カチオン性ポリアクリルアミド(“PAM”)をカチオン澱粉に代えて使用した以外は、実施例1〜3のシリカをベースとするゾルを実施例9の操作に従って更に評価した。加えて、前記紙料を試験中に1,500rpmの速度でじゃま板付きジャー中で撹拌し、この紙料への薬品添加を以下のように行なった。
i)カチオン性ポリアクリルアミドを添加し、続いて20秒撹拌し、
ii)シリカをベースとするゾルを添加し、続いて10秒撹拌し、そして
iii)脱水時間を自動的に記録しながら紙料を脱水する。
【0078】
表4〜6は異なる用量のカチオン性ポリアクリルアミド(乾燥完成紙料の乾燥澱粉として計算して、kg/トン)、及びシリカをベースとするゾル(乾燥完成紙料を基準としてSiO2として計算して、kg/トン)を使用する場合に得られた結果を示す。
【0079】
【表4】

【0080】
【表5】

【0081】
【表6】

[実施例11]
【0082】
実施例4〜6のシリカをベースとするゾルを実施例9の操作に従って例8のシリカをベースとするゾルに対して試験した。
【0083】
表7〜9は種々の用量のシリカをベースとするゾル(乾燥完成紙料を基準としてSiO2として計算して、kg/トン)を使用する場合に得られた結果を示す。
【0084】
【表7】

【0085】
【表8】

【0086】
【表9】

[実施例12]
【0087】
実施例4〜6のシリカをベースとするゾルを実施例10の操作に従って例8のシリカをベースとするゾルに対して試験した。
【0088】
表10〜12は種々の用量のシリカをベースとするゾル(乾燥完成紙料を基準としてSiO2として計算して、kg/トン)を使用する場合に得られた結果を示す。
【0089】
【表10】

【0090】
【表11】

【0091】
【表12】

[実施例13]
【0092】
実施例7のシリカをベースとするゾルを実施例9の操作に従って例8のシリカをベースとするゾルに対して試験した。
【0093】
表13は種々の用量のシリカをベースとするゾル(乾燥完成紙料を基準としてSiO2として計算して、kg/トン)を使用する場合に得られた結果を示す。
【0094】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水素形態のイオン交換能の少なくとも一部を有する陽イオン交換樹脂を用意し、
(b)前記イオン交換樹脂をアルカリ金属ケイ酸塩水溶液と接触させて水性スラリーを生成し、
(c)水相のpHが5.0から8.0までの範囲になるまで前記水性スラリーを撹拌し、
(d)前記水相のpHを9.0以上に調節し、そして
(e)前記イオン交換樹脂を工程(c)後又は工程(d)後に前記水相から分離することを特徴とする水性のシリカをベースとするゾルの製造方法。
【請求項2】
(a)反応容器を用意し、
(b)前記反応容器に
(i)水素形態のイオン交換能の少なくとも一部を有する陽イオン交換樹脂、及び
(ii)アルカリ金属ケイ酸塩水溶液
を用意して水性スラリーを生成し、
(c)水相のpHが5.0から8.0までの範囲になるまで前記水性スラリーを撹拌し、
(d)一種以上の材料を工程(c)後に得られた水相に添加して9.0以上のpHを有する水相を生成し、
(e)前記イオン交換樹脂を工程(c)後又は工程(d)後に水相から分離することを特徴とする水性のシリカをベースとするゾルの製造方法。
【請求項3】
前記方法が(f)10〜50%のS値を有する水性のシリカをベースとするゾルを用意することを更に含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
工程(c)で、前記水相のpHが6.5から7.5までの範囲になるまで水性スラリーを撹拌する、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程(c)で、前記スラリーを撹拌して4〜45%の範囲のS値に相当する粒子凝集又はミクロゲル形成を可能にする、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程(c)で、スラリーを撹拌して10〜25%の範囲のS値に相当する粒子凝集又はミクロゲル形成を可能にする、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記イオン交換樹脂を工程(c)の後で工程(d)の前に水相から分離する、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記イオン交換樹脂を工程(d)後に水相から分離する、請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
工程(d)で、前記水相のpHを約9.5から約11.2までの範囲であるように調節する、請求項1から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
工程(d)がアルカリ性材料を添加することを含む、請求項1から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
工程(d)がアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を添加することを含む、請求項1から10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
工程(d)がアルカリ金属水酸化物水溶液を添加することを含む、請求項1から11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
工程(d)がアルミニウム化合物を添加することを含む、請求項1から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
工程(d)がアルミン酸ナトリウムを添加することを含む、請求項1から13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
工程(d)が有機窒素含有化合物を添加することを含む、請求項1から14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
工程(d)が水酸化コリンを添加することを含む、請求項1から15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
工程(d)で、最初にケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、続いてアルミン酸ナトリウム水溶液を添加することにより水相のpHを調節する、請求項1から16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
工程(d)で、最初にアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を添加することにより前記水相のpHを調節し、次いで前記イオン交換樹脂を水相から分離し、続いてアルミニウム化合物水溶液を得られた水相に添加する、請求項1から17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
得られたシリカをベースとするゾルが10〜50%の範囲のS値を有する、請求項1から18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
得られたシリカをベースとするゾルが700〜950m2/gの比表面積を有するシリカをベースとする粒子を含む、請求項1から19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか1項記載の方法により得られるシリカをベースとするゾル。
【請求項22】
(i)セルロース繊維を含む水性懸濁液を用意し、
(ii)その懸濁液にシリカをベースとするゾルを含む一種以上の脱水兼歩留り助剤を添加し、そして
(iii)得られた懸濁液を脱水して紙のシート又はウェブを得る紙の製造方法であって、
前記シリカをベースとするゾルが請求項21記載の水性のシリカをベースとするゾルであることを特徴とする紙の製造方法。
【請求項23】
前記脱水兼歩留り助剤がカチオン澱粉を含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記脱水兼歩留り助剤がカチオン合成ポリマーを含む、請求項22又は23記載の方法。
【請求項25】
前記脱水兼歩留り助剤がアニオンポリマーを含む、請求項22から24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記方法がカチオン凝固剤を懸濁液に添加することを含む、請求項22から25のいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2007−532457(P2007−532457A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507273(P2007−507273)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【国際出願番号】PCT/SE2005/000489
【国際公開番号】WO2005/100241
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(595024087)アクゾ ノーベル エヌ.ブイ. (38)
【Fターム(参考)】