説明

シリカガラス中実棒材の製造方法

【課題】微小な気泡を含有せず高純度で高粘性のシリカガラス中実棒材の製造方法を提供する。
【解決手段】本シリカガラス中実棒材の製造方法は、天然シリカ質原料を用いて真空電気溶融法により円筒状シリカインゴットを作製し、この円筒状シリカインゴットを電解処理し、この電解処理された円筒状シリカインゴットを円周方向に分割し、この分割シリカインゴットIgをモールド34に収容し、このモールド34を加熱して収容された分割シリカインゴットIgを溶融し、溶融シリカガラスを棒引きする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリカガラス中実棒材の製造方法に係り、特に電解処理された天然シリカ質シリカガラスインゴットを円周方向に分割して用いるシリカガラス中実棒材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体ウェーハ熱処理用のウェーハボートのウェーハ支持棒に用いられるシリカガラス中実棒材においては、耐高熱変形性のため高粘性であり、ウェーハへの金属汚染がないように高純度であることが求められている。
【0003】
後者の純度としては、Na、Kなどのアルカリ金属が0.05ppm以下、さらに、Feが0.2ppm以下が必要とされる。
【0004】
従来、高純度の材料とするために、化学気相法による合成シリカ原料が用いられているが、粘性が十分とは言えず、耐高温変形性に難点があった。
【0005】
この問題を解決するために、電気溶融法によって得られた円筒状シリカガラスインゴットの内周部に円柱状電極を挿入配置し、また外周部に容器状電極を配置し、加熱下で前記電極間に直流電圧を印加して、少なくともFeの含有量が10ppb以下になるよう高純度化した後に、高純度化した円筒形状シリカガラスインゴットをクリーンルーム内で火炎加工する高純度シリカガラス製品の製造方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、特許文献1の製造方法により製造された高純度円筒状シリカガラスインゴットから、従来の溶融引き上げ法によってシリカガラス中実棒材を棒引きし製造すると、円筒状部に存在する空間に起因して、シリカガラス中実棒材に微小な気泡が混入し、十分な耐高温変形性が得られない問題があった。
【特許文献1】特開2002−80232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
微小な気泡を含有せず高純度で高粘性のシリカガラス中実棒材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明に係るシリカガラス中実棒材の製造方法は、天然シリカ質原料を用いて真空電気溶融法により円筒状シリカインゴットを作製し、この円筒状シリカインゴットを電解処理し、この電解処理された円筒状シリカインゴットを円周方向に分割し、この分割シリカインゴットをモールドに収容し、このモールドを加熱して収容された分割シリカインゴットを溶融し、溶融シリカガラスを棒引きすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、微小な気泡を含有せず高純度で高粘性のシリカガラス中実棒材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係るシリカガラス中実棒材の製造方法について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は本発明に係るシリカガラス中実棒材の製造方法の製造工程図である。
【0012】
図1に示すように、本発明に係るシリカガラス中実棒材の製造方法は、天然シリカ質原料を用いて円筒状シリカインゴットを作製し、この円筒状シリカインゴットを電解処理し、この電解処理された円筒状シリカインゴットを円周方向に分割して分割シリカインゴットを作製し、この分割シリカインゴットをモールドに収容し、このモールドを加熱して収容された分割シリカインゴットを溶融し、溶融シリカガラスを棒引きし、シリカガラス中実棒材を製造する。
【0013】
円筒状シリカインゴットを作製する工程は、水晶等の天然の結晶質二酸化ケイ素を粉砕して得た粒径10〜300μmの原料粉を精製後、真空電気溶融法によって円筒状シリカインゴットIgを得る。
【0014】
さらに、図2に示すように、円筒状シリカインゴットを電解処理する工程は、シリカガラス純化装置21を用いて行う。このシリカガラス純化装置21は、+極側電極をなし、中空円筒形状で2分割可能な金属ケース22と、この金属ケース22に沿って壁状に配された絶縁性トラップ粉Pを介して収容される円筒状シリカインゴットIgの電極挿入孔Igaに挿入される円柱状の−極側カーボン電極23からなる。
【0015】
従って、円筒状シリカインゴットの電解処理は、トラップ粉Pを敷き詰めた金属ケース22内に、円筒状シリカガラスインゴットIgを同心円的に挿入配置し、この円筒状シリカガラスインゴットIgの空間部(内周部)に、円柱状カーボン電極23を同じく同軸的に挿入配置する。その後、円筒状シリカガラスインゴットIgと金属ケース22との間に、同種の絶縁性トラップ粉末を充填する。加熱炉内に配置して、加熱炉内温度を1300〜1400℃程度として、カーボン電極23と金属ケース22との間に、3〜10KV程度の直流電圧を印加して、30〜100時間電界処理する。
【0016】
直流電圧の印加により、円筒状シリカガラスインゴットIg中のFe不純物は、−極側(シリカガラスインゴットの外周側)に拡散移動して、外周面に密着的に介在するトラップ粉末Pにトラップされる。そして、所定時間の電界処理終了後は、加熱炉内で室温まで冷却してから金属ケース22などの組み立体を炉外に取り出し、金属ケース22を分割することで、Fe含有量10ppb以下の高純度化させた円筒状シリカガラスインゴットIgが得られる。
【0017】
図3及び図4に示すように、この電解処理された円筒状シリカインゴットIgを円周方向に1/4〜1/3に分割して円弧状とし、円弧状の分割シリカインゴットIgを得る。なお、円筒状シリカガラスインゴットIgは外径が後述する円筒形状のモールド34の内径よりも大きなものを用いるのが好ましい。これにより、分割シリカインゴットIgはより平板に近くなり、後述の空隙部が減少させることができる。
【0018】
また、分割シリカインゴットIgの長さ方向の角部をR10以上面取りするのが好ましい。これにより、後工程において分割シリカインゴットIgがモールド内で安定し、倒れたり巻き込まれることがなく、泡を残すことがない。
【0019】
図5に示すように、ガラス棒引き工程は、ガラス棒引き装置31を用いて行う。ガラス棒引き装置31は炉体32と、原料となる分割インゴットIgを熔融加熱する円筒形状の加熱手段33が炉体32内に配置され、加熱手段33内に収容され、モールド孔34aが設けられたモールド34と、このモールド34の下方に配され、昇降するチャック機構35からなる。
【0020】
図6に示すように、棒引き工程に先立って分割シリカインゴットIgをモールド34に収容するが、モールド34への収納は、円筒形状のモールド34内に補助モールド36を収容して、分割シリカインゴットIgの形状に類似する収容部34sを設け、この収容部34sに分割シリカインゴットIgを収納するようにするのが好ましい。これにより、空隙部が減少して、泡を残すことがない。
【0021】
可能な限り空隙部を減じるようにモールド34に収納された分割シリカインゴットIgを加熱手段33で1800〜2000℃に加熱溶融し、予め製造されたシリカガラス引き出し棒gをモールド孔34aから流出する溶融ガラスに接着させた後、シリカガラス引き出し棒gをチャック機構35により降下させてシリカガラス中実棒材を引く。
【0022】
上記のように、高粘性の天然シリカ質原料を用いて真空電気溶融法により円筒状シリカインゴットを作製し、電解処理によって高純度化し、円筒状シリカガラスインゴットを円周方向に分割して円弧形状の分割シリカインゴットにし、空隙部が減少するようにモールドに収納し溶融してシリカガラス棒を引き、泡のないシリカガラス中実棒材が製造される。
【0023】
本実施形態のシリカガラス中実棒材の製造方法によれば、微小な気泡を含有せず高純度で高粘性のシリカガラス中実棒材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るシリカガラス中実棒材の製造方法の製造工程図。
【図2】本発明に係るシリカガラス中実棒材の製造方法に用いられるシリカガラス純化装置を示す概念図。
【図3】本発明に係るシリカガラス中実棒材の製造方法に用いられる円筒形状シリカガラスインゴットの斜視図。
【図4】本発明に係るシリカガラス中実棒材の製造方法に用いられる分割シリカガラスインゴットの斜視図。
【図5】本発明に係るシリカガラス中実棒材の製造方法に用いられるガラス棒引き装置を示す概念図。
【図6】本発明に係るシリカガラス中実棒材の製造方法に用いられるモールドの使用状態を示す概念図。
【符号の説明】
【0025】
1 インゴット製造装置
21 シリカガラス純化装置
31 ガラス棒引き装置
34 モールド
34a モールド孔
36 補助モールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然シリカ質原料を用いて真空電気溶融法により円筒状シリカインゴットを作製し、
この円筒状シリカインゴットを電解処理し、
この電解処理された円筒状シリカインゴットを円周方向に分割し、
この分割シリカインゴットをモールドに収容し、
このモールドを加熱して収容された分割シリカインゴットを溶融し、
溶融シリカガラスを棒引きすることを特徴とするシリカガラス中実棒材の製造方法。
【請求項2】
前記分割シリカインゴットの長さ方向の角部を面取りすることを特徴とする請求項1に記載のシリカガラス中実棒材の製造方法。
【請求項3】
前記モールド内に補助モールドを収容して、分割シリカインゴット収容後のモールド内空隙部の容積を減ずるようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載のシリカガラス中実棒材の製造方法。
【請求項4】
前記モールドはモールド孔が設けられた有底円筒形状をなし、分割シリカインゴットは前記モールドの内径よりも大きな外径を有する円筒状シリカインゴットから分割されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシリカガラス中実棒材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−254226(P2007−254226A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82957(P2006−82957)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000221122)東芝セラミックス株式会社 (294)
【Fターム(参考)】