説明

シリカ含有廃液の減容化方法及び装置

【課題】処理時間が短く、また、連続処理する場合にも、広いスペースが必要にならない、シリカ含有廃液の減容化方法とする。
【解決手段】シリカ含有廃液を中和処理した後、分画分子量10000〜200000のUF膜で、膜分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ含有廃液の減容化方法及び装置に関するものである。より詳しくは、シリカ含有廃液が、例えば、水ガラス系注入材を地盤に注入した際に発生する注入管洗水や、水ガラス系注入材の製造工程において発生する廃液など、である場合に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水ガラス系注入材を地盤に注入した際に発生する洗水は、シリカを含有する。したがって、河川などにそのまま放流することはできず、産業廃棄物として処分することになる。しかしながら、シリカを含有する廃液の処分代は高いため、そのままの状態で処分に出すと、注入工法自体のコスト高につながってしまう。そこで、シリカ含有廃液を減容化してから処分に出すことが望まれる。
この減容化の方法としては、例えば、シリカ含有廃液に水酸化アルカリ及び凝集剤を添加してシリカをいったん溶解した後、酸を添加してシリカ化合物を凝集させ、この凝集物を沈殿させて、減容化を図る方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、この方法によると、凝集したシリカ化合物が沈殿するのを待たなければならないため、処理時間が長くなる。また、この方法によると、シリカ含有廃液を、連続的に減容化する場合は、複数の沈殿槽を設け、この複数の沈殿槽を順に利用することになるため、この複数の沈殿槽を設けるための、広いスペースが必要になる。
【特許文献1】特開2002−102861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする主たる課題は、処理時間が短く、また、連続処理する場合にも、広いスペースが必要にならない、シリカ含有廃液の減容化方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
シリカ含有廃液を中和処理した後、分画分子量10000〜200000のUF膜で、膜分離する、ことを特徴とする、シリカ含有廃液の減容化方法。
【0005】
〔請求項2記載の発明〕
シリカ含有廃液の中和手段と、
分画分子量10000〜200000のUF膜が備わる膜分離手段と、
前記中和手段で得られた中和液を、前記膜分離手段に送る送液手段と、
を有する、ことを特徴とする、シリカ含有廃液の減容化装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、処理時間が短く、また、連続処理する場合にも、広いスペースが必要にならないものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
〔シリカ含有廃液〕
本発明が対象とするシリカ含有廃液は、シリカを含有する液であれば足り、それがいかなる原因で発生したものであるかは、限定されない。例えば、水ガラス系注入材を地盤に注入した際に発生する洗水や、水ガラスに酸を添加して得た酸性シリカゾルの脱塩処理に際して発生した廃液(通常、脱塩に際しては、シリカが若干リークしてしまうため、この処理に際して発生した廃液は、塩のほか、シリカを含有することになる。)などを例示することができる。
【0008】
〔減容化方法・装置〕
本形態においては、図1に示すように、まず、シリカ含有廃液を、貯槽1及び撹拌翼2が備わる中和手段に送り、処理液と混合して、中和処理する。この中和のための処理液としては、シリカ含有廃液が、酸性の場合は、例えば、苛性ソーダ等のアルカリ性成分を、シリカ含有廃液が、アルカリ性の場合は、例えば、塩酸や硫酸等の酸性成分を、例示することができる。この中和処理によって、安定(アルカリ性)又は準安定(酸性)状態にあったシリカ含有廃液が、非安定状態となり、浮遊物質濃度(SS)が高くなる。
【0009】
以上の中和処理によって得られた中和液Gは、管などからなる送液手段5によって、膜分離手段に送る。この膜分離手段は、中和液Gを受け入れる処理槽3と、この処理槽3からの液を膜分離する膜分離装置4と、から主になる。この膜分離手段においては、膜分離装置4によって、シリカを含有しない液が、透過液として、分離除去されるので、中和液Gの容量が、減少(減容化)することになる。
【0010】
本発明において、膜分離手段による中和液Gの処理方法は、特に限定されない。図1の上段に示すように、回分方式とすることも、図1の中段に示すように、半回分方式とすることも、図1の下段に示すように、連続方式とすることもできる。いずれの方法も、シリカの沈殿を待つというような消極的な処理を必要としないため、処理時間を短いものとすることができる。ただし、シリカ含有廃液を、連続的に減容化する場合は、複数の膜分離手段を設ける必要のない、半回分方式又は連続方式とするのが好ましい。これらによると、広いスペースが必要にならないためである。
【0011】
本形態において、膜分離装置4の膜は、分画分子量10000〜200000のUF膜を、使用する。分画分子量が10000未満であると、多大な分離圧力が必要になる。他方、分画分子量が200000超であると、膜の目詰まりが生じやすくなる。
【0012】
ただし、膜分離装置4の膜の構造、性能などは、特に限定されない。例えば、スパイラル膜、キャピラリー膜、チューブラー膜、カートリッジ膜、平膜などを使用することができる。また、中和液Gの流れと膜面との接触方向も、特に限定されない。例えば、膜面に垂直に液を流す全量ろ過方式とすることも、膜面と平行に液を流し液の流れの側方でろ過を行うクロスフローろ過方式とすることもできる。
【0013】
以上のUF膜としては、疎水性が強い膜を使用するのが好ましい。疎水性が強い膜によると、シリカや微生物などの親水性物質による汚れが少なくなる。疎水性が強い膜としては、例えば、PVDF製のUF膜等を例示することができる。
【実施例1】
【0014】
本発明者らは、3号水ガラスに硫酸を添加して得た酸性シリカゾルを、電気透析装置によって、脱塩処理に際した際に発生した廃液を対象として、試験を行った。廃液は、シリカ含有量:1000ppm、pH:約2.0、硫酸ナトリウム濃度:飽和付近、SS:0ppmであった。本試験では、この廃液に、苛性ソーダ(NaOH)を添加して、pH7に中和処理した。この中和処理によって得られた中和液は、SS:300〜500ppmであった。
【0015】
本試験では、この中和液を、分画分子量100000のUF膜で膜分離(チューブラー膜、クロスフローろ過方式)した。この膜分離により、pH:7、SS:0ppmの透過液と、pH:7の高粘度液体(減容化液)と、に分離された。減容化液の容量は、廃液の10〜20%になっており、大きく減容化されることが分かった。なお、透過液は、pH:7の非安定領域にあるにも関らず、SS:0ppmであることから、シリカを含まないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、水ガラス系注入材を地盤に注入した際に発生する洗水や、水ガラスに酸を添加して得た酸性シリカゾルの脱塩処理に際して発生した廃液などの、シリカを含有する廃液の減容化に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】減容化の処理フロー図である。
【符号の説明】
【0018】
1…貯槽、2…撹拌翼、3…処理槽、4…膜分離装置、5…送液手段、G…中和液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ含有廃液を中和処理した後、分画分子量10000〜200000のUF膜で、膜分離する、ことを特徴とする、シリカ含有廃液の減容化方法。
【請求項2】
シリカ含有廃液の中和手段と、
分画分子量10000〜200000のUF膜が備わる膜分離手段と、
前記中和手段で得られた中和液を、前記膜分離手段に送る送液手段と、
を有する、ことを特徴とする、シリカ含有廃液の減容化装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−313480(P2007−313480A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148289(P2006−148289)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】