説明

シリカ構造体及びその製造方法、並びに、断熱材

【課題】高強度、低かさ密度、及び低熱伝導率を兼ね備えたシリカ構造体及びその製造方法、並びに、このようなシリカ構造体を用いた断熱材を提供すること。
【解決手段】球状メソポーラスシリカと、金属酸化物からなり、前記球状メソポーラス間を連結する連結部とを備えたシリカ構造体、及びこれを用いた低熱伝導体。このようなシリカ構造体は、細孔内にマスキング物質が充填された球状メソポーラスシリカと反応性結合剤を含む液体とを混合し、得られた混合物を成形し、反応性結合剤を反応させて前記球状メソポーラスシリカ間に連結部を形成し、前記細孔内から前記マスキング物質を除去することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ構造体及びその製造方法、並びに、断熱材に関し、さらに詳しくは、高強度、低かさ密度及び低熱伝導率を兼ね備えたシリカ構造体及びその製造方法、並びに、これを用いた断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔体は、内部に気孔を有しているので、緻密な材料に比べてかさ密度及び熱伝導率が低いという特徴がある。また、多孔体は、その材質に応じて、高耐熱性、高耐食性などの特徴も併せ持つ。そのため、多孔体は、断熱材、吸音材、フィルター、軽量化材、吸着材、触媒担体、分離膜担体などに応用されている。
【0003】
このような多孔体及びその製造方法については、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1、2及び非特許文献1には、粒径が100nm以下の中実のシリカ粒子を網目状に結合させたシリカエアロゲルが開示されている。
また、非特許文献2には、シリカを主成分とするセラミックス製のシェルを持つ中空粒子が開示されている。同文献には、粒径が20μm以上の比較的大きい中空粒子の記述がある。その中空粒子のかさ密度は0.25〜0.42g/cm3であり、圧縮強度(40%生存時)は70N/mm2であり、熱伝導率は0.1W/m℃である点が記載されている。
さらに、特許文献3には、アルミナゾルをバインダーに用いたゼオライト微小球状成形体の製造方法が開示されている。また、特許文献4には、アルミナゾルをバインダーに用いたゼオライト多孔体の製造方法が開示されている。
【0004】
シリカエアロゲルを用いた多孔体は、粒子間の空隙を多量に含んでいるので、多孔体のかさ密度を下げることができる。しかしながら、それに伴い、強度が低下するという問題がある。一方、十分な強度を得るためには、充填率を向上させる必要がある。しかしながら、その場合には、多孔体のかさ密度が増大し、熱伝導率も増大する。
また、発泡ガラスビーズのようなセラミックス製のシェルを持つ中空粒子は、強度をシェルで持たせている。そのため、中空粒子の径が小さくなっても強度を維持するためには、シェルにある一定の厚さを持たせる必要がある。しかしながら、シェルの厚さを一定にしたまま粒子径のみを小さくすると、中空粒子の体積に占めるシェルの割合が増大する。非特許文献2で開示されているような粒径の比較的大きい中空粒子では、粒子の密度も成形体の熱伝導率も抑えることができるが、中空粒子の粒径の減少と共に、粒子の密度は増大し、その結果、多孔体のかさ密度が増大し、熱伝導率も増大する。
ゼオライト粒子をアルミナゾルで結合させた多孔体も同様であり、1μm以下の粒子を連結させた構造を有し、強度を維持したまま、かさ密度及び熱伝導率を著しく低下させることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平10−509941号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第0171722号公報
【特許文献3】特開2004−123412号公報
【特許文献4】特開昭62−297211号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Mater.Res. vol.8, No.7, P.1736-1741
【非特許文献2】http://www.taiheiyo-cement.co.jp/cement/es/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、高強度、低かさ密度、及び低熱伝導率を兼ね備えたシリカ構造体及びその製造方法、並びに、このようなシリカ構造体を用いた断熱材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係るシリカ構造体は、
球状メソポーラスシリカと、
金属酸化物からなり、前記球状メソポーラスシリカ間を連結する連結部と
を備えていることを要旨とする。
本発明に係る断熱材は、本発明に係るシリカ構造体を用いたことを要旨とする。
【0009】
さらに、本発明に係るシリカ構造体の製造方法は、
細孔内にマスキング物質が充填された球状メソポーラスシリカと反応性結合剤を含む液体とを混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物を成形する成形工程と、
前記反応性結合剤を反応させ、前記球状メソポーラスシリカ間に金属酸化物からなる連結部を形成する反応工程と、
前記細孔内から前記マスキング物質を除去する除去工程と
を備えていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
球状メソポーラスシリカは、内部にメソ細孔を有しているので、かさ密度が低く、熱伝導率も低い。また、球状メソポーラスシリカは、剛性も高い。特に、放射状細孔及び/又は単分散性を持つ球状メソポーラスシリカは、剛性が高いだけでなく、粒子径の変化に伴うかさ密度、熱伝導率及び強度の変化も少ない。
このような球状メソポーラスシリカ間を連結部で連結させたシリカ構造体は、高強度、低かさ密度及び低熱伝導率を兼ね備えている。特に、放射状細孔及び/又は単分散性を持つ球状メソポーラスシリカ間を実質的に点で連結させると、高い剛性と低いかさ密度を両立させながら、熱伝導率を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(a)は、球状メソポーラスシリカ(MSS)の接点での結合の原理を示す模式図である。図1(b)は、本発明に係るシリカ構造体の概念図である。
【図2】実施例1で得られたシリカ構造体の破面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. シリカ構造体]
シリカ構造体は、球状メソポーラスシリカと、球状メソポーラスシリカ間を連結する連結部とを備えている。
【0013】
[1.1 球状メソポーラスシリカ]
[1.1.1 組成]
球状メソポーラスシリカ(以下、「MSS」という)は、シリカのみからなるものでも良く、あるいは、シリカを主成分とし、シリカ以外の金属元素Mの酸化物を含んでいても良い。金属元素Mは、特に限定されるものではないが、2価以上の金属アルコキシドを製造可能なものが好ましい。金属元素Mが2価以上の金属アルコキシドを製造可能なものである場合、金属元素Mの酸化物を含む球状粒子を容易に製造することができる。このような金属元素Mとしては、具体的には、Al、Ti、Mg、Zrなどがある。
【0014】
[1.1.2 形状]
「球状」とは、同一条件下で製造された複数個(好ましくは、20個以上)の粒子を顕微鏡観察した場合において、各粒子の真球度の平均値が、13%以下であることをいう。また、「真球度」とは、各粒子の外形の真円からのずれの程度を表す指標であって、粒子の表面に接する最小の外接円の半径(r)に対する、外接円と粒子表面の各点との半径方向の距離の最大値(Δrmax)の割合(=Δrmax×100/r(%))で表される値をいう。後述する方法を用いると、真球度が7%以下、あるいは、3%以下である球状粒子が得られる。
【0015】
[1.1.3 単分散性]
「単分散」とは、次の(1)式で表される単分散度が10%以下であることをいう。単分散度は、さらに好ましくは、5%以下である。
単分散度=(粒子径の標準偏差)×100/(粒子径の平均値) ・・・(1)
MSSは、必ずしも単分散である必要はない。しかしながら、粒度分布の広いMSSを用いてシリカ構造体を作製すると、粒子間の間隔が不均一となり、粒子間の接点も多くなる。その結果、シリカ構造体の熱伝導率が増加する。一方、単分散性を備えた球状メソポーラスシリカ(MMSS)を用いてシリカ構造体を作製すると、粒子間の距離は比較的均一となり、粒子間の接点も相対的に少なくなる。その結果、シリカ構造体の熱伝導率を低く維持することが容易化する。
【0016】
[1.1.4 細孔]
MSSの細孔径は、1〜10nmが好ましい。一般に、細孔径が大きくなるほど、かさ密度及び熱伝導率の低いシリカ構造体が得られる。
MSSの細孔容積は、特に限定されるものではない。一般に、細孔容積が大きくなるほど、かさ密度及び熱伝導率の低いシリカ構造体が得られる。
MSSの細孔形状は、一般に、ナノオーダーで、かつ規則性の高いハニカム形状を有する。細孔の配列は、MSSの製造条件に応じて変化する。
特に、放射状細孔を持つMSS又はMMSSは、
(1)どの方向からの変形に対しても筒の長さ方向に外力を受けるので、剛性が高い、
(2)粒子径が小さくなってもこの構造は変わらないため、粒子径によらず高い剛性を持つ、
という特徴がある。そのため、放射状細孔を持つMSS又はMMSSは、シリカ構造体を構成する材料として特に好適である。
ここで、「放射状細孔」とは、球の中心から周囲に向けて放射状に配列している細孔をいう。
【0017】
[1.1.5 粒子径]
MSSの粒子径は、シリカ構造体の熱伝導率に影響を与える。一般に、MMSSの粒子径が大きくなりすぎると、MSS間の隙間が大きくなり過ぎ、空気の熱伝導を抑えることができなくなる。その結果、シリカ構造体の熱伝導率が高くなる。熱伝導率の低いシリカ構造体を得るためには、MSSの粒子径は、2μm以下が好ましい。
【0018】
[1.2 連結部]
[1.2.1 組成]
MSS間を連結する連結部は、金属酸化物からなる。連結部を構成する金属酸化物の組成は、特に限定されるものではない。また、本発明において、「金属酸化物」というときは、遷移金属元素や典型金属元素の酸化物だけでなく、Siなどの半金属の酸化物も含まれる。
連結部を構成する金属酸化物としては、具体的には、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニアなどがある。連結部は、これらのいずれか1種の酸化物からなるものでも良く、あるいは、2種以上の酸化物の混合物又は固溶体であっても良い。
【0019】
[1.2.2 連結部の形状]
連結部の形状は、特に限定されるものではない。MSS間に、相対的に半径の大きい円板状の連結部を介在させると、MSS間が面で接触する。MSS間の熱伝導は、連結部を介して行われるので、MSS間の接触面積が大きくなるほど、シリカ構造体の熱伝導率が増大する。
従って、熱伝導率の低いシリカ構造体を得るためには、連結部は、MSS間を接点で連結するものが好ましい。ここで、「MSS間を接点で連結する」とは、相対的に面積の小さい連結部を介して、MSS間を実質的に点で連結することをいう。
高強度、低かさ密度及び低熱伝導度を両立させるためには、MSSの最大断面積(S1)に対する連結部の最大面積(S2)の比(S2/S1)は、1/4以下が好ましい。連結部の面積比(S2/S1)は、さらに好ましくは、1/10以下である。
【0020】
[1.3 特性]
MSS間が連結部を介して連結しているシリカ構造体は、高強度、低かさ密度及び低熱伝導率を兼ね備えている。
MSS及び連結部の構造を最適化すると、シリカ構造体のかさ密度は、0.60g/mL以下、あるいは、0.50g/mL以下となる。
また、MSS及び連結部の構造を最適化すると、シリカ構造体の圧縮強度は、10MPa以上、15MPa以上、あるいは、20MPa以上となる。
さらに、MSS及び連結部の構造を最適化すると、シリカ構造体の熱伝導率は、0.10W/mK以下、あるいは、0.07W/mK以下となる。
【0021】
[2. 断熱材]
本発明に係る断熱材は、本発明に係るシリカ構造体を用いたことを特徴とする。本発明に係るシリカ構造体は、高強度、低かさ密度、及び低熱伝導率を兼ね備えているので、断熱材、吸音材、フィルター、軽量化材、吸着材、触媒担体、分離膜担体などに用いることができる。
【0022】
[3. シリカ構造体の製造方法]
本発明に係るシリカ構造体の製造方法は、混合工程と、成形工程と、反応工程と、除去工程とを備えている。
【0023】
[3.1 混合工程]
混合工程は、細孔内にマスキング物質が充填された球状メソポーラスシリカと、反応性結合剤を含む液体とを混合する工程である。
【0024】
[3.1.1 マスキング物質]
球状メソポーラスシリカ(MSS)の細孔内に充填されるマスキング物質は、分解除去が可能なものであれば良い。
マスキング物質としては、例えば、
(1)MSSを合成する際に使用した界面活性剤や拡径剤、
(2)界面活性剤や拡径剤を除去した後に、MSSの細孔内に新たに充填された高分子(例えば、ポリフルフリルアルコール(フルフリルアルコール重合体)、ショ糖などの糖類の脱水縮合物、ポリスチレン、PMMAなどの付加重合系ポリマー、ポリアミド、ポリエステルなどの縮合系ポリマーなどがある。モノマーを細孔内に、気体、液体、溶液などの状態で導入して細孔内で重合するか、高分子を溶媒に溶解させて細孔内に導入できるもので、かつ、後処理により分解除去できるものであれば、何でも良い)、
(3)界面活性剤や拡径剤を除去した後に、MSSの細孔内に新たに充填された有機物(例えば、エチレンカーボネートなど。溶解あるいは溶融などによって細孔内に導入できるもので、後処理により分解除去できるものであれば、何でも良い)、
(4)界面活性剤や拡径剤を除去した後に、MSSの細孔内に新たに充填された高粘調溶液(例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のN−メチル−ピロリドン(NMP)溶液、PMMAのトルエン溶液などがある。細孔内に導入でき、かつ、後処理により分解除去できるものであれば、何でも良い)、
などがある。マスキング物質は、これに限定されるものではなく、細孔内に導入でき、後処理で分解除去可能なものであればよい。
【0025】
MSSは、後述するように、
(1)シリカ原料と、界面活性剤とを含む原料を溶媒中で混合し、界面活性剤を含む前駆体粒子を作製し、
(2)必要に応じて、前駆体粒子に拡径剤を添加し、前駆体粒子の細孔径を拡大する処理を行い、
(3)前駆体粒子から界面活性剤及び/又は拡径剤を除去する、
ことにより得られる。
シリカ構造体を製造するための出発原料には、細孔内に界面活性剤や拡径剤が充填されている前駆体粒子をそのまま用いても良い。あるいは、細孔内から界面活性剤等を除去した後、高分子や有機物を細孔内に充填しても良い。界面活性剤等が除去されたMSSに液体状の高分子や有機物又はその溶液を添加すると、MSSの細孔内に高分子や有機物を吸着させることができる。
【0026】
[3.1.2 反応性結合剤]
反応性結合剤とは、MSS表面のシラノール基と結合できる官能基を有し、又は、反応によってMSS表面のシラノール基と結合できる官能基を生成し、熱や光などの外部刺激によって、金属酸化物を形成可能な化合物をいう。
反応性結合剤としては、具体的には、
(1)MSSの合成に用いられる各種シリカ原料(例えば、後述するテトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)等のテトラアルコキシシラン、トリメトキシシラール、トリエトキシシラール等のトリアルコキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジメチルシラン等のジアルコキシシランなど)、
(2)MSSの合成に用いられる金属元素M1を含む原料(例えば、後述するAl、Ti、Mg、Zrなどを含むアルコキシド類やSn、Ge、W、Znなどを含むアルコキシド類)、
(3)アミノ基、アルコール性水酸基、エポキシ基、クロロ基などのシラノール基と反応する官能基と金属元素M2(例えば、Si、Al、Sn、Zr、Ti、Zn、W、Geなど)を含む原料(例えば、トリクロロメチルシラン、トリクロロエチルシラン、ジクロロジメチルシランなど)、
(4)熱分解や加水分解によって金属酸化物を生じる金属の金属塩(例えば、硝酸アルミニウム、硝酸マグネシウムなどの硝酸塩、水酸化亜鉛、水酸化銅などの水酸化物、酢酸亜鉛、乳酸アルミニウムなどの有機酸塩など)、
などがある。これらは、いずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、反応性結合剤は、溶媒で希釈して用いても良く、あるいは、溶解して溶液として用いても良い。
特に、アルコキシドは、MSS表面のシラノール基と容易に結合するので、反応性結合剤として好適である。
【0027】
反応性結合剤は、液体状態又は液体に溶解させた状態で使用される。これは、液体の表面張力によって、MSSの間に反応性結合剤が偏在しやすくなり、MSS間を接点で連結しやすくなるためである。
【0028】
反応性結合剤の添加量は、連結部の形状に影響を与える。混合工程においては、MSS間が接点で連結されるように、反応性結合剤を含む液体を添加するのが好ましい。
具体的には、混合工程は、MSS100重量部に対して、金属酸化物からなる連結部が40重量部以下となるように、反応性結合剤を含む液体を添加するのが好ましい。反応性結合剤を含む液体の添加量は、さらに好ましくは、連結部の重量割合に換算して20重量部以下である。
【0029】
[3.1.3 第3成分]
混合工程は、マスキング物質が充填されたMSSと反応結合剤を含む液体のみを混合するものでも良く、あるいは、これらに加えて第3成分が含まれていても良い。
第3成分としては、例えば、
(1)MSS間が反応性結合剤で強固に連結されるまでの間、MSS間を一時的に結合させておくためのバインダー、
(2)輻射伝熱の原因となる赤外線の透過を抑える赤外線遮蔽剤、
などがある。
バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、アクリル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PVDFなどがある。
赤外線遮蔽剤としては、例えば、金属箔のような赤外線を反射する材料、カーボンなどの赤外線を吸収する材料、高屈折率のセラミックス材料のように赤外線を散乱する材料などがある。
【0030】
第3成分の添加量は、目的に応じて最適な添加量を選択する。例えば、第3成分としてバインダーを添加する場合、一般に、バインダー添加量が多くなるほど、シリカ構造体の気孔率が大きくなり、熱伝導率を低下させることができる。一方、バインダー添加量が過剰になると、気孔率が過剰となり、空気の熱伝導を抑えることができなくなる。その結果、シリカ構造体の熱伝導率がかえって高くなる。
【0031】
[3.1.4 混合]
マスキング物質が充填されたMSS、反応性結合剤を含む液体、及び必要に応じて添加される第3成分の混合方法及び混合条件は、特に限定されるものではなく、材料の種類、配合比等に応じて最適な方法及び条件を選択する。
反応性結合剤を含む液体をMSS及び第3成分に添加し、所定の条件下で混合すると、反応性結合剤がMSSの粒子間に偏在している混合物が得られる。
【0032】
[3.2 成形工程]
成形工程は、混合工程で得られた混合物を成形する工程である。
成形方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。成形方法としては、プレス成形法、塗布法、スピンコート法、ディップコート法、ロールプレス法などがある。
成形条件は、特に限定されるものではなく、材料組成、成形方法、シリカ構造体の用途等に応じて最適な条件を選択する。
【0033】
[3.3 反応工程]
反応工程は、反応性結合剤を反応させ、球状メソポーラスシリカ間に連結部を形成する工程である。
成形体に対して、熱や光などの外部刺激を加えると、成形体内の反応性結合剤が反応して連結部となる。反応条件は、特に限定されるものではなく、反応性結合剤の種類に応じて、最適なものを選択する。
例えば、反応性結合剤がTMOS、TEOSなどのアルコキシドである場合、成形体を加熱すると、アルコキシドが重合して酸化物となり、MSS間を連結する連結部となる。
【0034】
[3.4 除去工程]
除去工程は、細孔内からマスキング物質を除去する工程である。
MSS間に連結部を形成した後、マスキング物質を除去すると、本発明に係るシリカ構造体が得られる。
マスキング物質の除去方法は、特に限定されるものではなく、マスキング物質の種類に応じて最適な方法を選択する。
マスキング物質の除去方法としては、具体的には、
(1) マスキング物質を含むシリカ構造体を大気中又は不活性雰囲気下において、300〜1000℃(好ましくは、300〜600℃)で、30分以上(好ましくは、1時間以上)焼成する焼成方法、
(2) シリカ構造体をマスキング物質の良溶媒(例えば、少量の塩酸を含むメタノール)中に浸漬し、所定の温度(例えば、50〜70℃)で加熱しながら攪拌し、マスキング物質を抽出するイオン交換法や溶媒抽出法、
などがある。
【0035】
[4. 球状メソポーラスシリカの製造方法]
シリカ構造体を製造するための出発原料となるMSSは、
(1)シリカ原料と、界面活性剤とを含む原料を溶媒中で混合し、界面活性剤を含む前駆体粒子を作製し、
(2)必要に応じて、前駆体粒子に拡径剤を添加し、前駆体粒子の細孔径を拡大する処理を行い、
(3)前駆体粒子から界面活性剤及び/又は拡径剤を除去する、
ことにより得られる。
この時、製造条件を最適化すると、単分散球状メソポーラスシリカ(MMSS)、あるいは、放射状細孔を備えたMSS又はMMSSを製造することができる。
【0036】
[4.1 前駆体粒子の製造]
[4.1.1 シリカ原料]
シリカ原料には、
(1)テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン(シラン化合物)、
(2)トリメトキシシラノール、トリエトキシシラノール、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン(シラン化合物)、
(3)ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン等のジアルコキシシラン(シラン化合物)、
(4)メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)、二ケイ酸ナトリウム(Na2Si25)、四ケイ酸ナトリウム(Na2Si49)、水ガラス(Na2O・nSiO2、n=2〜4)等のケイ酸ナトリウム、
(5)カネマイト(NaHSi25・3H2O)、二ケイ酸ナトリウム結晶(α、β、γ、δ−Na2Si25)、マカタイト(Na2Si49)、アイアライト(Na2Si817・xH2O)、マガディアイト(Na2Si1417・xH2O)、ケニヤイト(Na2Si2041・xH2O)等の層状シリケート、
(6)Ultrasil(Ultrasil社)、Cab−O−Sil(Cabot社)、HiSil(Pittsburgh Plate Glass社)等の沈降性シリカ、コロイダルシリカ、Aerosil(Degussa−Huls社)等のフュームドシリカ、
などを用いることができる。
【0037】
また、シリカ原料には、ヒドロキシアルコキシシランも用いることができる。ヒドロキシアルコキシシランとは、アルコキシシランのアルコキシ基の炭素原子にヒドロキシ基(−OH)がついたものをいう。ヒドロキシアルコキシシランとしては、ヒドロキシアルコキシ基を4個有するテトラキス(ヒドロキシアルコキシ)シラン、ヒドロキシアルコキシ基を3個有するトリス(ヒドロキシアルコキシ)シランを用いることができる。
ヒドロキシアルコキシ基の種類及びヒドロキシ基の数は特に制限されないが、2−ヒドロキシエトキシ基、3−ヒドロキシプロポキシ基、2−ヒドロキシプロポキシ基、2,3−ジヒドロキシプロキシ基等のように、ヒドロキシアルコキシ基中の炭素原子の数が比較的少ないもの(炭素数が1〜3程度のもの)が反応性の点から有利である。
【0038】
テトラキス(ヒドロキシアルコキシ)シランとしては、テトラキス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、テトラキス(3−ヒドロキシプロポキシ)シラン、テトラキス(2−ヒドロキシプロキシ)シラン、テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)シラン、などがある。
トリス(ヒドロキシアルコキシ)シランとしては、メチルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、エチルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、フェニルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、3−メルカプトプロピルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、3−アミノプロピルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、3−クロロプロピルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、などがある。
これらのヒドロキシアルコキシシランは、アルコキシシランとエチレングリコールやグリセリンなどの多価アルコールとを反応させることにより合成することができる(例えば、Doris Brandhuber et al., Chem.Mater. 2005, 17, 4262参照)。
【0039】
これらの中でも、テトラアルコキシシラン及びテトラキス(ヒドロキシアルコキシ)シランは、加水分解により生ずるシラノール結合の数が多くなり、強固な骨格を形成することができるので、シリカ原料として好適である。
なお、これらのシリカ原料は、単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。但し、2種以上のシリカ原料を用いると、前駆体粒子の製造時の反応条件が複雑化する場合がある。このような場合には、シリカ原料は、単独で使用するのが好ましい。
【0040】
また、前駆体粒子がシリカ以外の金属元素Mの酸化物を含む場合には、シリカ原料に加えて金属元素M1を含む原料を用いる。
金属元素Mを含む原料には、
(1)アルミニウムブトキシド(Al(OC49)3)、アルミニウムエトキシド(Al(OC25)3)、アルミニウムイソプロポキシド(Al(OC37)3)等のAlを含むアルコキシド類、及び、アルミン酸ナトリウム、塩化アルミニウム等の塩類、
(2)チタンイソプロポキシド(Ti(Oi−C37)4)、チタンブトキシド(Ti(OC49)4)、チタンエトキシド(Ti(OC25)4)等のTiを含むアルコキシド、
(3)マグネシウムメトキシド(Mg(OCH3)2)、マグネシウムエトキシド(Mg(OC25)2)等のMgを含むアルコキシド、
(4)ジルコニウムイソプロポキシド(Zr(Oi−C37)4)、ジルコニウムブトキシド(Zr(OC49)4)、ジルコニウムエトキシド(Zr(OC25)4)等のZrを含むアルコキシド、
などを用いることができる。
【0041】
[4.1.2 界面活性剤]
界面活性剤は、粒子内にメソ細孔を形成するための鋳型となる。界面活性剤の種類は、特に限定されるものではなく、種々の界面活性剤を用いることができる。使用する界面活性剤の種類、添加量などに応じて、粒子内の細孔構造を制御することができる。
【0042】
界面活性剤は、特に、アルキル4級アンモニウム塩が好ましい。アルキル4級アンモニウム塩とは、次の(a)式で表されるものをいう。
CH3−(CH2)n−N+(R1)(R2)(R3)X- ・・・(a)
(a)式中、R1、R2、R3は、それぞれ、炭素数が1〜3のアルキル基を表す。R1、R2、及び、R3は、互いに同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。アルキル4級アンモニウム塩同士の凝集(ミセルの形成)を容易化するためには、R1、R2、及び、R3は、すべて同一であることが好ましい。さらに、R1、R2、及び、R3の少なくとも1つは、メチル基が好ましく、すべてがメチル基であることが好ましい。
(a)式中、Xはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子の種類は特に限定されないが、入手の容易さからXは、Cl又はBrが好ましい。
(a)式中、nは7〜21の整数を表す。一般に、nが小さくなるほど、メソ孔の中心細孔径が小さいMSSが得られる。一方、nが大きくなるほど、中心細孔径は大きくなるが、nが大きくなりすぎると、アルキル4級アンモニウム塩の疎水性相互作用が過剰となる。その結果、層状の化合物が生成し、球状の多孔体が得られない。nは、好ましくは、9〜17、さらに好ましくは、13〜17である。
【0043】
(a)式で表されるものの中でも、アルキルトリメチルアンモニウムハライドが好ましい。アルキルトリメチルアンモニウムハライドとしては、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムハライド、ノニルトリメチルアンモニウムハライド、デシルトリメチルアンモニウムハライド、ウンデシルトリメチルアンモニウムハライド、ドデシルトリメチルアンモニウムハライド等がある。
これらの中でも、特に、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド又はアルキルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
【0044】
MSSを合成する場合において、1種類のアルキル4級アンモニウム塩を用いても良く、あるいは、2種以上を用いても良い。しかしながら、アルキル4級アンモニウム塩は、MSS内にメソ孔を形成するためのテンプレートとなるので、その種類は、メソ孔の形状に大きな影響を与える。より均一なメソ孔を有するMSSを合成するためには、1種類のアルキル4級アンモニウム塩を用いるのが好ましい。
【0045】
[4.1.3 溶媒]
溶媒には、水、アルコールなどの有機溶媒、水と有機溶媒の混合溶媒などを用いる。アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール等の1価のアルコール、エチレングリコール等の2価のアルコール、グリセリン等の3価のアルコールのいずれでも良い。
水と有機溶媒の混合溶媒を用いる場合、混合溶媒中の有機溶媒の含有量は、目的に応じて任意に選択することができる。一般に、溶媒中に適量の有機溶媒を添加すると、粒径や粒度分布の制御が容易化する。
【0046】
[4.1.4 配合比]
一般に、シリカ原料及び必要に応じて添加される金属元素M1を含む原料(以下、単に「シリカ源」という)の濃度が低すぎると、MSSを高収率で得ることができない。また、粒径及び粒度分布の制御が困難となり、粒径の均一性が低下する。従って、シリカ源の濃度は、0.005mol/L以上が好ましい。シリカ源の濃度は、さらに好ましくは、0.008mol/L以上である。
一方、シリカ源の濃度が高すぎると、メソ孔を形成するためのテンプレートとして機能する界面活性剤が相対的に不足し、規則配列したメソ孔が得られない。従って、シリカ源の濃度は、0.03mol/L以下が好ましい。シリカ源の濃度は、さらに好ましくは、0.015mol/L以下である。
【0047】
一般に、界面活性剤の濃度が低すぎると、メソ孔を形成するためのテンプレートが不足し、規則配列したメソ孔が得られない。従って、界面活性剤の濃度は、0.003mol/L以上が好ましい。界面活性剤の濃度は、さらに好ましくは、0.01mol/L以上である。
一方、界面活性剤の濃度が高すぎると、MSSを高収率で得ることができない。従って、界面活性剤の濃度は、0.03mol/L以下が好ましい。界面活性剤の濃度は、さらに好ましくは、0.02mol/L以下である。
【0048】
[4.1.5 反応条件]
シリカ原料として、アルコキシシラン、ヒドロキシアルコキシシラン等のシラン化合物を用いる場合には、これをそのまま出発原料として用いる。
一方、シリカ原料としてシラン化合物以外の化合物を用いる場合には、予め、水(又は、必要に応じてアルコールが添加されたアルコール水溶液)にシリカ原料を加えて、水酸化ナトリウム等の塩基性物質を加える。塩基性物質の添加量は、シリカ原料中のケイ素原子と等モル程度の量とするのが好ましい。シラン化合物以外のシリカ原料を含む溶液に塩基性物質を加えると、シリカ原料中に既に形成されているSi−(O−Si)4結合の一部が切断され、均一な溶液が得られる。溶液中に含まれる塩基性物質の量は、MSSの収量や気孔率に影響を及ぼすので、均一な溶液が得られた後、溶液に希薄酸溶液を加え、溶液中に存在する過剰の塩基性物質を中和させる。希薄酸溶液の添加量は、シリカ原料中のケイ素原子に対して1/2〜3/4倍モルに相当する量が好ましい。
【0049】
所定量の界面活性剤を含む溶媒中に、シリカ源を加え、加水分解及び重縮合を行う。これにより、界面活性剤がテンプレートとして機能し、シリカ及び界面活性剤を含む前駆体粒子が得られる。また、反応条件を最適化すると、放射状細孔及び/又は単分散性を持つ前駆体粒子が得られる。
【0050】
反応条件は、シリカ原料の種類、前駆体粒子の粒径等に応じて、最適な条件を選択する。一般に、反応温度は、−20〜100℃が好ましい。反応温度は、さらに好ましくは、0〜80℃、さらに好ましくは、10〜40℃である。
【0051】
[4.2 拡径処理]
合成された前駆体粒子は、そのまま又は界面活性剤を除去した後、シリカ構造体製造用の原料として用いることもできる。
しかしながら、一般に、合成直後の前駆体粒子は、細孔径が相対的に小さい。相対的に細孔径が大きい前駆体粒子又はMSSを得るためには、前駆体粒子の細孔径を拡大させる処理(拡径処理)を行うのが好ましい。
拡径処理は、具体的には、合成された前駆体粒子(界面活性剤の未除去のもの)を、拡径剤を含む溶液中で水熱処理することにより行う。この処理によって前駆体粒子の細孔径を拡大することができる。
【0052】
[4.2.1 拡径剤]
このような拡径剤としては、具体的には、アルキルアンモニウムハライド、鎖状炭化水素、環状炭化水素、鎖状脂肪族アミン、鎖状脂肪族アルコール、ヘテロ環化合物などがある。これらは、いずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
拡径剤としてアルキルアンモニウムハライドを用いる場合、このアルキルアンモニウムハライドが前駆体粒子の細孔内の界面活性剤と置換反応してシリカ中に導入されることで、細孔径が拡大する。
また、拡径剤として、鎖状炭化水素、環状炭化水素、鎖状脂肪族アミン、鎖状脂肪族アルコール、又はヘテロ環化合物を用いる場合には、拡径剤が溶媒から、より疎水性の高い前駆体粒子の細孔内に導入されることにより、前駆体粒子の細孔径が拡大する。
【0053】
(1) アルキルアンモニウムハライド:
アルキルアンモニウムハライドとは、下記一般式(b)で表されるものをいう。
CH3−(CH3)z−N+(R1)(R2)(R3)X- ・・・(b)
(b)式中、R1、R2、及びR3は、同一でも異なっていても良い炭素数1〜3のアルキル基を示す。
Xは、ハロゲン原子を示す。
zは17〜25の整数であって、かつ前駆体粒子の合成時に界面活性剤として使用されたアルキルアンモニウムハライドの式(a)中のnの値より大きい整数を示す。
1、R2及びR3、並びにXについては、前述の一般式(a)におけるR1、R2及びR3、並びにXと同義のものである。
【0054】
一般式(b)において、zは、17〜25の整数を示す。zが16以下であるアルキルアンモニウムハライドでは、前駆体粒子の細孔径を十分に拡大するのが困難である。一方、zが26以上のアルキルアンモニウムハライドでは、アルキル鎖が大きくなりすぎて、合成時に用いた界面活性剤と置換反応させて前駆体粒子中に導入するのが困難である。zは、さらに好ましくは20〜25、さらに好ましくは22〜24である。
【0055】
(2) 鎖状炭化水素:
鎖状炭化水素は、鎖状の炭化水素であれば良く,特に限定されないが、炭素数が6〜26(より好ましくは、6〜12)の鎖状炭化水素が好ましい。鎖状炭化水素の炭素数が下限未満では、疎水性が小さくなり、前駆体粒子の細孔内に導入され難くなる傾向がある。他方、上限を超えると、溶解性が低下する傾向がある。
【0056】
このような鎖状炭化水素としては、例えば、ヘキサン、メチルペンタン、ジメチルブタン、ヘプタン、メチルヘキサン、ジメチルペンタン、トリメチルブタン、オクタン、メチルヘプタン、ジメチルヘキサン、トリメチルペンタン、イソプロピルペンタン、ノナン、メチルオクタン、エチルヘプタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等が挙げられる。疎水性や溶解性等の観点から、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンが好ましい。
【0057】
(3) 環状炭化水素:
環状炭化水素は、その骨格に環状の炭化水素を含有するものであれば良く、特に限定されないが、環数が1〜3で炭素数が6〜20(より好ましくは、6〜16)の環状炭化水素が好ましい。環状炭化水素の炭素数が下限未満では、疎水性が小さくなり、前駆体粒子の細孔内に導入され難くなる傾向にある。他方、上限を超えると、溶解性が低下するため、細孔径の拡大が図れなくなる傾向にある。また、環状炭化水素の環数が3を超えると溶解性が低下するため、細孔径の拡大が図れなくなる傾向にある。
【0058】
このような環状炭化水素としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、メチルベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、インデン、ナフタレン、テトラリン、アズレン、ビフェニレン、アセナフチレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン等が挙げられる。疎水性や溶解性の観点から、シクロヘキサン、ベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、ナフタレンが好ましい。
【0059】
(4) 鎖状脂肪族アミン:
鎖状脂肪族アミンは、鎖状の脂肪族アミンであれば良く,特に限定されないが、炭素数が6〜26(より好ましくは、6〜20)の鎖状脂肪族アミンが好ましい。鎖状脂肪族アミンの炭素数が下限未満では、疎水性が小さくなり、前駆体粒子の細孔内に導入され難くなる傾向にある。他方、上限を超えると、溶解性が低下する傾向にある。
【0060】
このような鎖状脂肪族アミンとしては、例えば、ヘキシルアミン、メチルペンチルアミン、ジメチルブタチルアミン、ヘプチルアミン、メチルヘキシルアミン、ジメチルペンチルアミン、トリメチルブチルアミン、オクチルアミン、メチルヘプチルアミン、ジメチルヘキシルアミン、トリメチルペンチルアミン、イソプロピルペンチルアミン、ノニルアミン、メチルオクチルアミン、エチルヘプチルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、N,N'−ジメチル−n−へキシルアミン、N,N'−ジメチル−n−オクチルアミン、N,N'−ジメチル−n−デシルアミン、N,N'−ジメチル−n−ドデシルアミン、N,N'−ジメチル−n−テトラデシルアミン、N,N'−ジメチル−n−パルミチルアミンが挙げられる。疎水性や溶解性の観点から、N,N'−ジメチル−n−デシルアミン、N,N'−ジメチル−n−ドデシルアミン、N,N'−ジメチル−n−テトラデシルアミン、N,N'−ジメチル−n−パルミチルアミンが好ましい。
【0061】
(5) 鎖状脂肪族アルコール:
鎖状脂肪族アルコールは、鎖状の脂肪族アルコールであれば良く,特に限定されないが、炭素数が6〜26(より好ましくは、6〜20)の鎖状脂肪族アルコールが好ましい。鎖状脂肪族アルコールの炭素数が下限未満では、疎水性が小さくなり,前駆体粒子の細孔内に導入され難くなる傾向にある。他方、上限を超えると,溶解性が低下する傾向にある。
【0062】
このような鎖状脂肪族アルコールとしては、例えば、ヘキサノール、メチルペンタノール、ジメチルブタノール、ヘプタノール、メチルヘキサノール、ジメチルペンタノール、トリメチルブタノール、オクタノール、メチルヘプタノール、ジメチルヘキサノール、トリメチルペンタノール、イソプロピルペンタノール、ノナノール、メチルオクタノール、エチルヘプタノール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコールが挙げられる。疎水性や溶解性の観点から、ヘキサノール、オクタノール、デカノールが好ましい。
【0063】
(6) ヘテロ環化合物:
ヘテロ環化合物は、その骨格にヘテロ環を含有するものであれば良く、特に限定されないが、環数が1〜3で炭素数が4〜18(より好ましくは、5〜12)で、ヘテロ原子が窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1種の原子であるヘテロ環化合物が好ましい。ヘテロ環化合物の炭素数が下限未満では、疎水性が小さくなり、前駆体粒子の細孔内に導入され難くなる傾向にある。他方、上限を超えると溶解性が低下するため、細孔径の拡大が図れなくなる傾向にある。また、ヘテロ環化合物の環数が3を超えると溶解性が低下するため、細孔径の拡大が図れなくなる傾向にある。
【0064】
このようなヘテロ環化合物としては、例えば、ピロール、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、カルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン等が挙げられる。疎水性や溶解性の観点から、ピリジン、キノリン、アクリジン、フェナントロリンが好ましい。
【0065】
[4.2.2 溶液組成]
溶媒には、水とアルコールとの混合溶媒を用いる。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等の1価のアルコール、エチレングリコール等の2価のアルコール、グリセリン等の3価のアルコールのいずれでも良い。
溶媒中のアルコールの含有量は、40〜90容量%である必要がある。アルコールの含有量は、50〜85容量%であることが好ましく、55〜75容量%であることがより好ましい。
この溶媒中におけるアルコールの含有量が90容量%を超える場合には、細孔内の界面活性剤とアルキルアンモニウムハライドとの置換反応や細孔内への鎖状炭化水素や環状炭化水素や鎖状脂肪族アミンや鎖状脂肪族アルコールやヘテロ環化合物の導入が十分に進まなくなる。
他方、この溶媒中におけるアルコールの含有量が40容量%未満の場合は、水の割合が多くなるため長いアルキル鎖を有するアルキルアンモニウムハライド、鎖状炭化水素、環状炭化水素、鎖状脂肪族アミン、鎖状脂肪族アルコール、ヘテロ環化合物が溶媒中に十分に溶解しなくなる。さらに、高温の水によって,シリカネットワークの再構築が促進された前駆体粒子の形状が変化してしまったり、前駆体粒子のシリカネットワークが崩壊したりする。
【0066】
さらに、この溶媒中における拡径剤の濃度は、溶液の全容量を基準として0.05〜10mol/L(好ましくは、0.05〜5mol/L、より好ましくは、0.1〜1mol/L)とする必要がある。また、このような溶媒中における拡径剤の濃度の上限値としては、溶液の全容量を基準として0.2mol/L以下であることがさらに好ましく、0.18mol/L以下であることが特に好ましい。
拡径剤の濃度が0.05mol/L未満の場合は、細孔内の界面活性剤とアルキルアンモニウムハライドとの置換反応や細孔内への鎖状炭化水素や環状炭化水素や鎖状脂肪族アミンや鎖状脂肪族アルコールやヘテロ環化合物の導入が十分に進行せず、得られる粒子の粒径や細孔構造の規則性が低下し、さらには細孔径を十分に拡大することができない。
他方、拡径剤の濃度が10mol/Lを超える場合は、粒径及び粒径分布の制御が困難となって、得られる粒子の粒径の均一性が低くなる。
【0067】
[4.2.3 処理条件]
拡径処理は、60〜150℃の温度条件下で行われる必要があり、70〜120℃の温度条件下で行われることが好ましい。また、このような温度条件の上限の値としては、100℃(さらに好ましくは90℃、特に好ましくは80℃)以下であることがより好ましい。このような温度が60℃未満では、前駆体粒子に含まれる界面活性剤と、拡径剤として使用したアルキルアンモニウムハライドとの置換反応や細孔内への鎖状炭化水素や環状炭化水素や鎖状脂肪族アミンや鎖状脂肪族アルコールやヘテロ環化合物の導入が十分に進行しない。他方、150℃を超えると、粒径及び粒径分布の制御が困難となる。
【0068】
[4.3 界面活性剤の除去]
乾燥後、前駆体粒子から界面活性剤(及び、必要に応じて添加された拡径剤)を除去すると、MSSが得られる。界面活性剤の除去方法としては、
(1) 前駆体粒子を大気中又は不活性雰囲気下において、300〜1000℃(好ましくは、300〜600℃)で、30分以上(好ましくは、1時間以上)焼成する焼成方法、
(2) 前駆体粒子を界面活性剤又は拡径剤の良溶媒(例えば、少量の塩酸を含むメタノール)中に浸漬し、所定の温度(例えば、50〜70℃)で加熱しながら攪拌し、前駆体粒子中の界面活性剤を抽出するイオン交換法、
などがある。
【0069】
[5. シリカ構造体及びその製造方法、並びに、断熱材の作用]
図1に、液状の反応性結合剤を用いたシリカ構造体及びその製造方法の概念図を示す。
図1(a)に示すように、マスキング物質で細孔内を埋めたMSSに、反応性結合剤を含む溶液を少量加えて良く混合すると、マスキング物質が細孔内への反応性結合剤の侵入を抑制する。この状態から揮発成分を除去すると、MSSの粒子間にのみ反応性結合剤を含む液体が残る。
次に、このような混合物を適当な形状に成形し、反応性結合剤に熱や光などの外部刺激を加えると、反応性結合剤がMSSの外表面と反応しながら重合する。その結果、MSSの粒子間が金属酸化物からなる連結部で連結している構造体が得られる。
さらに、得られた構造体に対してマスキング物質を除去する処理(例えば、酸化処理)を行うと、図1(b)に示すように、MSS間が連結部で連結されたシリカ構造体が得られる。
【0070】
MSSは、内部にメソ細孔を有しているので、高い細孔容積を持ち、かさ密度が低く、熱伝導率も低い。また、MSSは、剛性も高い。特に、放射状細孔を持つMMSSは、どの方向からの変形に対しても、円筒孔の筒の長さ方向に外力を受けるので、剛性が高い。しかも、放射状細孔を持つMSSは、粒子径の変化に伴うかさ密度、熱伝導率及び強度の変化も少ない。これは、放射状細孔を持つMSSの場合、粒子径が変化しても内部構造が変わらないためである。
このようなMSS間を連結部で連結させたシリカ構造体は、高強度、低かさ密度及び低熱伝導率を兼ね備えている。特に、放射状細孔を持つMSS間を実質的に点で連結させたシリカ構造体は、高い剛性と低いかさ密度を併せ持つ。また、熱は、粒子内では放射状細孔の壁に沿って伝わり、粒子間では接点を通じて伝わるので、熱伝導率も低く抑えることができる。特に、放射状細孔に代えて、又は、これに加えて、単分散性を持つMSS(MMSS)は、粒子間隔が均一となり、接点の増加も抑制することができる。
【実施例】
【0071】
(実施例1)
[1. 試料の作製]
[1.1. 単分散球状メソポーラスシリカの作製]
精製水:3166g及びメタノール(MeOH):4770gの混合溶媒にオクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド(C18TMACl)を溶解し、25℃に保ち、攪拌した。さらに、1M NaOH:34.2g、MeOH:30gで希釈したテトラメトキシシラン(TMOS):26.4gを加えた。約8時間攪拌し、一晩静置した後、ろ過と精製水への再分散とを2回繰り返した。その後、45℃で乾燥し、白色粉末(界面活性剤で細孔が満たされたMMSS):19.25gを得た。
【0072】
[1.2 拡径処理]
精製水:297mL、EtOH:243mLの混合溶媒に、得られた白色粉末:9gを超音波処理によって分散させ、さらにトリメチルベンゼン(TMB):19.3gを加えて攪拌した。複合体を分散させた溶液を、容量1Lの内筒容器を持つオートクレーブに入れ、100℃×3日間水熱処理した。水熱処理後にオートクレーブを冷却し、減圧して生成物を取り出した。生成物のろ過とEtOHへの再分散を2回繰り返し、洗浄した。その後、45℃で乾燥させ、細孔内が界面活性剤とTMBで満たされた大細孔径MMSSを得た。界面活性剤とTMBが、マスキング物質の役割をする。
なお、得られた大細孔径MMSSの細孔径は6nm、細孔容量は1.55mL/gであった(550℃×6h焼成後の試料で確認)。
【0073】
[1.3 シリカ構造体の作製]
細孔内がマスキング物質で満たされた大細孔径MMSS:150mgに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)パウダー:7.5mgと、TEOS:45μLを加えて、乳鉢で混練した。得られた混合物を、ハンドプレスを用いて、20MPaの圧力でφ13に成形した。得られた成形体を550℃×6h、空気中で焼成し、シリカ構造体を得た。
【0074】
[2. 評価]
走査型電子顕微鏡(SEM)で、成形体の破面を観察したところ、球状のMMSSが連結した構造が観察された(図2参照)。得られたシリカ構造体のかさ密度は0.45g/mL、圧縮強度は10.2MPa、熱伝導率は0.05W/mKであった。
【0075】
(実施例2)
ハンドプレスの成形圧力を60MPaとした以外は、実施例1と同様の手順に従い、シリカ構造体を得た。
得られたシリカ構造体のかさ密度は0.55g/mL、圧縮強度は19.8MPa、熱伝導率は0.08W/mKであった。
【0076】
(実施例3)
[1. 試料の作製]
[1.1 大細孔径MMSSの作製]
実施例1と同様の手順に従い、細孔内にマスキング物質が充填された大細孔径MMSSを作製した。さらに、これを550℃×6h焼成し、大細孔径MMSS(細孔径:6nm、細孔容量:1.55mL/g)を得た。
[1.2 マスキング物質の充填]
PFA製容器(容量15mL)に大細孔径MMSS:0.5gを入れ、フルフリルアルコール(FA)を細孔容量分だけ加えて、シリカの細孔内に浸透させた。これを150℃×24h熱処理することにより、細孔内でFAを重合させ、細孔をポリフルフリルアルコール(PFA)で満たした。このPFAがマスキング物質の役割をする。
【0077】
[1.3 シリカ構造体の作製]
細孔内がPFAで満たされた大細孔径MMSS:150mgに、PFTEパウダー:7.5mgとTEOS:45μLを加えて、乳鉢で混練した。得られた混合物を、ハンドプレスを用いて、20MPaの圧力でφ13に成形した。得られた成形体を550℃×6h、空気中で焼成し、シリカ構造体を得た。
【0078】
[2. 評価]
得られたシリカ構造体のかさ密度は0.46g/mL、圧縮強度は13.2MPa、熱伝導率は0.06W/mKであった。
【0079】
(実施例4)
[1. 試料の作製]
[1.1 MMSSの作製]
実施例1の[1.1]と同様にして、細孔内が界面活性剤で満たされたMMSSを作製した。このMMSSは、拡径処理がされておらず、その細孔径は2.2nmであった(550℃で焼成した試料で確認)。この界面活性剤がマスキング物質の役割をする。
【0080】
[1.2 シリカ構造体の作製]
細孔内が界面活性剤で満たされた大細孔径MMSS:150mgに、PFTEパウダー:7.5mgとTEOS:45μLを加えて、乳鉢で混練した。得られた混合物を、ハンドプレスを用いて、20MPaの圧力でφ13に成形した。得られた成形体を550℃×6h、空気中で焼成し、シリカ構造体を得た。
【0081】
[2. 評価]
得られたシリカ構造体のかさ密度は0.56g/mL、圧縮強度は21.0MPa、熱伝導率は0.09W/mKであった。
【0082】
(実施例5)
[1. 試料の作製]
[1.1 大細孔径MMSSの作製]
実施例1と同様にして、細孔内が界面活性剤とTMBで満たされた大細孔径MMSSを得た。これらの界面活性剤とTMBがマスキング物質の役割をする。なお、大細孔径MMSSの細孔径は6nm、細孔容量は1.55mL/gであった(550℃×6h焼成後の試料で確認)。
【0083】
[1.2 シリカ構造体の作製]
細孔内がマスキング物質で満たされた大細孔径MMSS:150mgに、PFTEパウダー:7.5mgと、チタンイソプロポキシド:45μLを加えて、乳鉢で混練した。得られた混合物を、ハンドプレスを用いて、20MPaの圧力でφ13に成形した。得られた成形体を550℃×6h、空気中で焼成し、シリカ構造体を得た。
【0084】
[2. 評価]
得られたシリカ構造体のかさ密度は0.45g/mL、圧縮強度は11.2MPa、熱伝導率は0.05W/mKであった。
【0085】
(比較例1)
[1.1 試料の作製]
実施例4の[1.1]と同様にして、細孔内が界面活性剤で満たされたMMSSを作製した。このMMSS:150mgに、TEOSを加えることなくPTFEパウダー:7.5mgを加えて、乳鉢で混練した。得られた混合物を、ハンドプレスを用いて、20MPaの圧力でφ13に成形した。得られた成形体を550℃×6h、空気中で焼成した。
しかしながら、MMSS間は相互に連結せず、成形体は崩れてしまった。
【0086】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係るシリカ構造体及びその製造方法は、断熱材、吸音材、フィルター、軽量化材、吸着材、触媒担体、分離膜担体など、及びその製造方法として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状メソポーラスシリカと、
金属酸化物からなり、前記球状メソポーラスシリカ間を連結する連結部と
を備えたシリカ構造体。
【請求項2】
前記球状メソポーラスシリカは、単分散である請求項1に記載のシリカ構造体。
【請求項3】
前記球状メソポーラスシリカは、放射状細孔を持つ請求項1又は2に記載のシリカ構造体。
【請求項4】
前記連結部は、前記球状メソポーラスシリカ間を接点で連結するものである請求項1から3までのいずれかに記載のシリカ構造体。
【請求項5】
前記球状メソポーラスシリカの最大断面積(S1)に対する、前記連結部の最大面積(S2)の比(S2/S1)は、1/4以下である請求項4に記載のシリカ構造体。
【請求項6】
前記球状メソポーラスシリカは、細孔径が1〜10nmであり、粒径が2μm以下である請求項1から5までのいずれかに記載のシリカ構造体。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれかに記載のシリカ構造体を用いた断熱材。
【請求項8】
細孔内にマスキング物質が充填された球状メソポーラスシリカと、反応性結合剤を含む液体とを混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物を成形する成形工程と、
前記反応性結合剤を反応させ、前記球状メソポーラスシリカ間に金属酸化物からなる連結部を形成する反応工程と、
前記細孔内から前記マスキング物質を除去する除去工程と
を備えたシリカ構造体の製造方法。
【請求項9】
前記反応性結合剤は、アルコキシドである請求項8に記載のシリカ構造体の製造方法。
【請求項10】
前記混合工程は、前記球状メソポーラスシリカ間が接点で連結されるように、前記反応性結合剤を含む液体を添加するものである請求項8又は9に記載のシリカ構造体の製造方法。
【請求項11】
前記混合工程は、前記球状メソポーラスシリカ100重量部に対して、前記金属酸化物からなる連結部が40重量部以下となるように、前記反応性結合剤を含む液体を添加するものである請求項10に記載のシリカ構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−180100(P2010−180100A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25272(P2009−25272)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】