説明

シリカ系複合酸化物粒子集合体およびその製造方法

【課題】シリカ以外の金属酸化物の含有率を、50モル%を越えるような高い含有率とすることができ、屈折率を高屈折率に調整することができるシリカ系複合酸化物粒子の集合体であって、該集合体を構成する粒子の粒子径が揃っている粒子集合体を提供する。
【解決手段】チタン、ジルコニウム、および、アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属とシリコンとの複合酸化物からなるシリカ系複合酸化物粒子の集合体であって、(A)シリカ系複合酸化物粒子を、円形度0.8以上である球状若しくは略球状の粒子とし、(B)シリカ系複合酸化物粒子の粒子径の変動係数を、30%以下とし、(C)シリカ系複合酸化物粒子に含まれるチタン、ジルコニウム、およびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属の合計グラム原子数をM、シリコンのグラム原子数をSiとしたときに、0.5<M/(M+Si)<1.0、の関係を満足するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ系複合酸化物粒子の粉体などの粒子集合体およびその製造方法に関する。特に、シリコン以外の金属の含有率が高いシリカ系複合酸化物粒子集合体、その製造方法、および、該粒子集合体が分散媒に分散したゾルに関する。
【背景技術】
【0002】
無機酸化物微粒子を製造する方法として、金属や半金属のアルコキシドを加水分解、縮合させる方法が知られている。該方法は、ゾル−ゲル法とも呼ばれ、反応条件によっては球状の微粒子を、粒子の径を揃えて大量に製造することができる。たとえば、アルコキシシランを原料としたゾル−ゲル法により、コロイダルシリカやスペーサーシリカなど様々なゾルや粉体が製造されており、用途に応じてナノレベル〜数μmの範囲で任意に粒子径を揃えることが可能である。
【0003】
なお、ゾル−ゲル法(又はゾルゲル法)とは、広義には、ゾル形成プロセス及びゲル形成プロセスを有するガラスやセラミックスの製造法を意味するが、無機フィラーの分野においては金属や半金属のアルコキサイドを加水分解、縮合することにより無機酸化物粒子を製造する方法をゾル−ゲル法(又はゾルゲル法)と呼ぶことがある。本発明においては、後者の意でゾル−ゲル法(又はゾルゲル法)という用語を用いている。
【0004】
ゾル−ゲル法においては、原料として、シリコンのアルコキシドとシリコン以外の金属のアルコキシドとを併用して、シリカ−チタニア、シリカ−アルミナ、シリカ−ジルコニア等のいわゆるシリカ系複合酸化物粒子を製造することも可能であり、このようにして得られるシリカ系複合酸化物粒子は、シリカのみからなる粒子では得られない、様々な特徴ある性能を発揮することができる。例えば、シリカとシリカ以外の金属酸化物の配合比率を変えることにより、製造される粒子の屈折率を調節することができる。これにより、例えば、樹脂材料に添加するフィラーとして使用した場合、剛性を付与する、熱膨張係数を下げる等のフィラーを添加することにより発現する効果を付与しつつ、樹脂材料の屈折率とフィラーの屈折率とを揃えることによって、樹脂材料の透明性を保つことができる。
【0005】
特許文献1には、シリカ以外の金属酸化物の含有率が30〜50モル%であって、粒子径の変動係数が30%以下の球状のシリカ系複合酸化物粒子が記載されている。
【0006】
また、球状のシリカ系複合酸化物粒子を製造する別の方法としては、金属粉末の爆燃現象を利用したVMC法と呼ばれる方法(特許文献2参照)や金属アルコキサイドを液状で火炎中に導入する方法がある。該方法では、金属粉末を酸素の気流中に導入して燃焼分解する方法(特許文献3)が知られており、これら燃焼法によってもシリカ系複合酸化物粒子を製造することができる。
【特許文献1】特開2003−252616号公報
【特許文献2】特公平7−23202号公報
【特許文献3】特公平7−61851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
樹脂系光学材料の分野においては、透明で高い屈折率を有する樹脂への要求があり、このような要求に応える樹脂の開発が行われている。例えば、ポリビニルナフタレン、ポリビニルカルバゾールは屈折率1.68であり、ポリエチレンナフタレートは屈折率1.75であり、今後さらに高屈折率の樹脂が開発されることも予想される。これら樹脂に無機フィラーを添加して透明性を損なわずに高機能化を図る場合、特に可視光の波長よりも長い粒子径を有するフィラーを使用する場合には、樹脂とフィラーとの屈折率を揃える必要があり、フィラーとしてより高屈折率のものが必要とされる。また、樹脂にナノ粒子を添加して複合化して複合体全体の透明性を損なわずに屈折率を変えることも可能であり、このような方法により高屈折率化を目指す場合にも、フィラーとしては、より高屈折率のものが必要とされる。しかし、特許文献1に記載のシリカ系複合酸化物粒子は、シリカ以外の金属酸化物の含有率が50モル%以下とされているので、フィラーの屈折率を高屈折率に調整するには限界があった。
【0008】
また、無機酸化物粉体に関しては、用途によっては、粉体を構成する粒子の単分散性が高いことが要求される。たとえば、樹脂にナノ粒子を添加して複合化して複合体全体の透明性を損なわずに屈折率を変えようとした場合、粒径の大きな粒子が混在すると透明性を損なうことになる。また、樹脂やモノマーにフィラーを添加したときの粘度は添加するフィラーの粒度分布の影響を受けるが、単分散性の高い粉体を用いれば、種々の粒径の(単分散)粉体を混合することにより、安定して所期の粒度分布の粉体を得ることが可能となる。
【0009】
ところが、前記特許文献2及び3に示される燃焼法では、生成する粒子の粒子径を厳密に制御するのが難しく、単分散性の高い粉体を得ることは困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、シリカ以外の金属酸化物の含有率を、50モル%を越えるような高い含有率とすることができ、屈折率を高屈折率に調整することができるシリカ系複合酸化物粒子の集合体であって、該集合体を構成する粒子の粒子径が揃っている粒子集合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、シリコンのアルコキシドとシリコン以外の金属のアルコキシドとの加水分解速度が異なっていることがシリカ以外の金属酸化物の含有率が高いシリカ系複合酸化物粒子を形成する上での阻害要因となっていることを見出した。シリコンのアルコキシドの加水分解速度とシリコン以外の金属のアルコキシドの加水分解速度とを同程度になるように揃えて、粒子の形成を行うことにより、上記の課題を解決することができることを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
【0012】
第1の本発明は、チタン、ジルコニウム、および、アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属とシリコンとの複合酸化物からなるシリカ系複合酸化物粒子の集合体であって、
(A)シリカ系複合酸化物粒子が、円形度0.8以上である球状若しくは略球状の粒子であり、
(B)シリカ系複合酸化物粒子の粒子径の変動係数が、30%以下であり、
(C)シリカ系複合酸化物粒子に含まれるチタン、ジルコニウム、およびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属の合計グラム原子数をM、シリコンのグラム原子数をSiとしたときに、0.5<M/(M+Si)<1.0、の関係を満足することを特徴とする、シリカ系複合酸化物粒子集合体である。
【0013】
本発明の粒子集合体は、チタン、ジルコニウム、および、アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属とシリコンとの複合酸化物からなる粒子の集合体からなるが、該集合体は、ゾル−ゲル法で製造することができるので、該集合体を構成する個々の粒子は、ゾル−ゲル法で得られる粒子の特徴、即ち、粒子が球状又は略球状であるという特徴、より具体的には粒子の円形度が0.8以上であるという特徴を有する。ここで、「円形度」とは、粒子の二次元映像から測定される値であり、粒子の球形度を表す尺度として用いられる。円形度が高い程、真球に近いことを示している(真球の円形度は、「1」である。)。本発明の粒子集合体を構成するシリカ系複合酸化物粒子の円形度は、0.9以上であることがより好ましい。
【0014】
また、本発明の粒子集合体は、ゾル−ゲル法で製造することができるので、単分散性が高く、該粒子集合体を構成する粒子の粒子径の変動係数は30%以下と小さい。粒子の変動係数は、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
【0015】
更に、本発明の粒子集合体を構成する粒子は、チタン、ジルコニウム、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(以下、これらの金属を「特定異種金属」といい、その酸化物を「特定異種金属酸化物」という場合がある。)とシリコンとの複合酸化物からなる。そして、その組成は、前記式{M/(M+Si)}の値が0.5を超え1.0未満となる組成である。ゾル−ゲル法で得られるシリカ系複合酸化物粒子として、このような組成を有するものは、従来得られていなかった。
【0016】
本発明の粒子集合体は、その構成粒子であるシリカ系複合酸化物粒子が、このような組成を有することによって、その屈折率を高屈折率に調整することができる。これにより、高屈折率の樹脂材料のフィラーとして用いた場合、フィラーの屈折率と該樹脂材料の屈折率とを合わせて、樹脂材料の透明性を維持することができる。本発明の粒子集合体の具体的な用途としては、上記の透明樹脂の充填材としての用途の他、アンチグレアフィルム(AGフィルム)の光散乱粒子、高透明フィルムのアンチブロッキング材(AB材)としての用途を挙げることができる。
【0017】
また、本発明の粒子集合体のうち、その平均粒子径が1〜1000nmであるものは、水やアルコール等の分散媒にコロイド分散するので、ゾルとして使用することも可能である。このようなゾルは、プラスチックフィルムやプラスチックレンズなどのハードコート液材料として有用である。
【0018】
第2の本発明は、第1の本発明のシリカ系複合酸化物粒子集合体を製造する方法であって、
(S1)シリコンのアルコキシドを水で部分加水分解して部分加水分解物を形成する工程、
(S2)チタン、ジルコニウム、および、アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属のアルコキシドと錯化剤とを混合して調製した錯体と、前記部分加水分解物とを混合して複合アルコキシド原料を調製する工程、及び
(S3)水を含有する溶媒または分散媒中で前記複合アルコキシド原料を加水分解・縮合させる工程を含み、
且つ工程(S2)における錯体と部分加水分解物との混合を、得られる複合アルコキシド原料に含まれるチタン、ジルコニウム、および、アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属の合計グラム原子数をM、シリコンのグラム原子数をSiとしたときに、0.5<M/(M+Si)<1.0、の関係を満足するようにして混合することを特徴とする、シリカ系複合酸化物粒子集合体の製造方法である。
【0019】
ゾル−ゲル法により粒子を合成する場合、核が生成する核生成過程と、生成した核が成長する粒成長過程を経るのが一般的である。特定異種金属のアルコキシドの加水分解速度はシリコンのアルコキシドの加水分解に比べて非常に速いため、特定異種金属のアルコキシドとシリコンのアルコキシドとの単なる混合物を用いてゾル−ゲル法により複合酸化物粒子を得ようとした場合には、特定異種金属の酸化物の核生成や粒成長が優先してしまう。このため、特に特定異種金属の含有量が多い場合には、粒成長が均一に起こらず、円形度の高いシリカ系複合酸化物粒子を得ることができなかった。
【0020】
そこで、本発明においては、特定異種金属のアルコキシドと錯化剤とを混合して錯体とすることによって、その加水分解速度をシリコンのアルコキシドの加水分解速度と同程度に揃える方法を採用した。そして、シリコンのアルコキシドを部分加水分解物とし、これと上記の錯体とを混合して、あらかじめ複合アルコキシド原料を調製し、これを加水分解・縮合することにより、組成の均一性を保ちながら核を形成し、これを成長させることによって、シリコンと特定異種金属とが均一に分散され、式{M/(M+Si)}で定義される特定異種金属の含有率が0.5を超え1.0未満のシリカ系複合酸化物粒子を得ることができる。
【0021】
なお、「水を含有する溶媒または分散媒」とは、溶媒または分散媒全体の質量を基準(100質量%)として、水を5〜100質量%含有している溶媒または分散媒である。中でも特に、粒子径が1nm〜100nmというナノ粒子を製造する場合は、水の含有量は60〜100質量%であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。また、単分散性を有し、粒子径が100nm以上の球形度の高いシリカ系複合酸化物粒子を得る場合においては、水の含有量は5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがさらに好ましい。なお粒子径が50〜150nmである場合、水の含有量がそれぞれ5〜50質量%、60〜100質量%であっても、使用する有機溶媒、温度などの条件を適切に選択することで所望の粒子を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の粒子集合体においては、その構成粒子であるシリカ系複合酸化物粒子は、球状若しくは略球状で単分散性が高いという従来のゾル−ゲル法で得られた粒子と同様の特徴を有すると共に、特定異種金属を前記含有率で表して0.5を越えるような高い含有率で含む。このため、従来のゾル−ゲル法で得られたシリカ系複合酸化物では実現不可能な高い屈折率を具備することが可能であり、このような複合粒子を用いることにより無機酸化物のゾルや粉体の用途を広げることができる。
【0023】
たとえば、本発明の粒子集合体を添加することにより、透明で高い屈折率を有する樹脂材料を提供することが可能となる。本発明の粒子集合体の構成粒子であるシリカ系複合酸化物粒子は、約1.4〜3の範囲で屈折率を制御することができるので、可視光の波長よりも長い粒子径を有する粒子を添加して高屈折率樹脂の高機能化(剛性の付与、熱膨張係数の低減等)を図る場合でも樹脂材料の屈折率とフィラーの屈折率とを揃えることによって、樹脂材料の透明性を保つことができる。また、樹脂にナノレベルのシリカ系複合酸化物粒子からなる本発明の粒子集合体を添加して複合化することにより、複合体全体の透明性を損なわずに屈折率を向上させることも可能である。また、低屈折率の樹脂と組み合わせて使用した場合には、屈折率差を大きくすることができるので、高い光散乱効果を得ることができる。このため、本発明のシリカ系複合酸化物粒子は、液晶ディスプレーの光拡散板などにも好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
<シリカ系複合酸化物粒子およびその集合体>
本発明の粒子集合体の構成粒子であるシリカ系複合酸化物粒子は、シリコンとシリコン以外の金属の複合酸化物からなる。ここで、シリコン以外の金属は、チタン、ジルコニウム、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種(特定異種金属)である必要がある。シリコン以外の金属が特定異種金属であることにより、その屈折率をシリカより高くすることができる。特定異種金属は、チタンであることが好ましい。チタンのアルコキシドは、他のジルコニウムやアルミニウムのアルコキシドに比べると加水分解速度が遅い。よって、以下において説明する本発明の製造方法において、錯体とすることにより、シリコンのアルコキシドと加水分解速度を揃えることが比較的容易である。
【0025】
特定異種金属は、単独でシリコンと複合酸化物化してもよいし、二種以上の特定異種金属をシリコンと複合酸化物化してもよい。例えば、特定異種金属として、チタンとジルコニウムの両方を使用して、シリカ−チタニア−ジルコニアの3元系のシリカ系複合酸化物粒子としてもよいし、アルミニウムとチタンの両方を使用して、シリカ−アルミナ−チタニアの3元系のシリカ系複合酸化物粒子としてもよい。
【0026】
前記シリカ系複合酸化物粒子において、シリコンおよび特定異種金属は複合酸化物の形で化学的に結合して存在する(別言すればシリコン同士、シリコンと特定異種金属、或いは特定異種金属同士が酸素との結合を介して互いに連結した構造を有する)ものであり、これらの構成成分を物理的に分離することはできない。両成分が化学的に結合していることは、赤外スペクトルや屈折率(粒子の光学的な透明性)を測定することで確認できる。なお、前記シリカ系複合酸化物粒子において、シリコンと特定異種金属の分散状態は任意であり、ランダムに均一に分散していても良いし、微視的に同一種類のもが集まっていても良い。後者の場合にはシリカや特定異種金属酸化物(具体的には、チタニア、ジルコニア、又はアルミナなど)の微小ドメインが形成されることになるが、該ドメインは結晶であってもアモルファスであっても、両者の混在であってもよい。粒子の結晶性については、X線回折等の手段で確認することができる。
【0027】
通常、ゾル−ゲル法により得られる複合酸化物粒子は、そのほとんどが非晶質であるが、非晶質と一部結晶質との混合物になる場合もある。また、これら粒子を焼成することによりその結晶性を変化させることもできる。焼成前の粒子が非晶質であっても、高温で焼成することにより構成成分の一部又は全部を結晶質とすることができる。
【0028】
一般的に、光学的に透明であることが要求される場合には、本発明の粒子集合体を構成するシリカ系複合酸化物粒子は非晶質である方が好ましく、特に粒子径が40nm以上である場合は、全体が非晶質であるか、もしくは極一部の構成成分のみが結晶質に転化した程度であるのが好ましい。そのためには、粒子を焼成しないか、焼成するにしてもそのときの焼成温度を1100℃以下、特に1000℃以下とすることが好ましい。
【0029】
本発明の本発明の粒子集合体を構成するシリカ系複合酸化物粒子は、該複合酸化物粒子に含まれる特定異種金属の合計グラム原子数をM、シリコンのグラム原子数をSiとしたときにおける、M/(M+Si)で定義される特定異種金属の含有率が、0.5<M/(M+Si)<1.0、の範囲である。前述したような3元系のシリカ系複合酸化物粒子の場合は、Mは特定異種金属の総グラム原子数となる。特定異種金属の含有率は0.5を越え1.0未満であればよいが、組成の安定性の観点から0.51〜0.99、特に0.55〜0.95であるのが好ましい。
【0030】
上記Si及びMは、本発明のシリカ系複合酸化物粒子について構成元素の定量分析をすることにより決定することができる。定量分析法としては、例えば本発明のシリカ系複合酸化物粒子をフッ化水素酸、硝酸で溶解させ、得られた溶液についてICP発光分析する方法が挙げられる。また、蛍光X線分析やオージェ電子分光法(AES)により特定異種金属の含有率を求めることもできる。分析精度の観点からはICP発光分析を採用するのが好ましいが、蛍光X線分析やオージェ電子分光法(AES)でも前記含有率を±0.005程度の精度で測定することができる。
【0031】
従来のゾル−ゲル法によるシリカ系複合酸化物粒子の製造方法においては、特定異種金属の含有率が0.5を越えるものを得ようとした場合、粒子径の単分散性が低下したり、粒子同士が凝集したりするため、このような組成を有する粒子を製造することができなかった。本発明においては、粒子の製造方法を改良することによって、この問題を解決し、従来得られていなかった特定異種金属の含有率が0.5を超え1.0未満のシリカ系複合酸化物粒子を得ることに成功した。
【0032】
本発明の粒子集合体を構成するシリカ系複合酸化物粒子は、特定異種金属酸化物を高含有率で有することによって、その屈折率を高屈折率に調整することができる。粒子の屈折率は、特定異種金属の種類や組成を調整することにより、1.4〜3の範囲で制御することができる。
【0033】
たとえば、特定異種金属をチタンとした場合、粒子中のチタニア含有率を変化させると図1に示すように当該粒子の屈折率がほぼ直線的に変化する(後述の実施例においても図1の関係が成り立つことが確認されている)。チタン以外の特定異種金属についても図1と同様にして、あらかじめ特定異種金属の含有率と粒子の屈折率との関係を求めておき、所望の屈折率となるよう特定異種金属の含有率を決定できる。
【0034】
シリカ−チタニア複合酸化物粒子に関しては、チタニアの含有率が50モル%を越え100モル%未満である(Tiの含有率が0.5を越え1.0未満である)場合において、屈折率を約1.8〜2.8において調整することができる。具体的には、各成分が非晶質である場合、屈折率1.84(チタンの含有率:0.51)、屈折率2.00(チタニンの含有率:0.7)、屈折率2.16(チタンの含有率:0.9モル%)と、添加する樹脂材料の屈折率に合わせて、種々の高い屈折率を有する複合酸化物粒子を形成することができる。これらを熱処理することにより、チタニアを結晶化させてルチル型とすることで屈折率をさらに上げることができる。この場合、最大で屈折率は2.8となる(チタン含有率0.99の場合)。
【0035】
このように、本発明の粒子集合体を構成するシリカ系複合酸化物粒子は、通常のゾル−ゲル法で得られるシリカ系複合酸化物粒子では達成することができない高い屈折率を有することができるので、例えば、高屈折率を有する樹脂材料のフィラーとして用いた場合において、樹脂材料の屈折率とフィラーの屈折率とを揃えることにより、樹脂材料の透明性を維持することができる。また、このような特性を生かして、高屈折率であることが必要とされる種々の用途に用いることができる。必要とされる屈折率は当該粒子の用途によって異なり、透明性を保持しなければならない用途で当該粒子を使用する場合、粒子を混合する材料と粒子の屈折率差が小さくなるように特定異種金属の含有率を調節すればよい。一方、高い光散乱効果が必要な場合、粒子を混合する材料と粒子の屈折率差が大きくなるように特定異種金属の含有率を調節すればよい。
【0036】
また、本発明の粒子集合体を構成するシリカ系複合酸化物粒子は、真密度についても、特定異種金属の種類や組成を調整すること、或いは粒子の焼成温度を変えることにより、1.5〜5g/cmの範囲で制御することができる。なお、前記シリカ系複合酸化物粒子の粒子径は、1nm〜50μmの範囲、好ましくは5nm〜5μmの範囲、さらに好ましくは10nm〜1μmの範囲である。
【0037】
本発明の粒子集合体は、ゾル−ゲル法により製造することができるため、その構成粒子形状が球若しくは略球状となり、粒子の円形度は0.8以上となる。ここで、「円形度」とは、走査型や透過型の電子顕微鏡等を用いることによって粒子を観察し、その結果を画像処理したときの粒子の面積をS(μm)、粒子の周囲長をL(μm)とした場合において、「円形度」=(4πS)/(L)で定義される値を意味する。用途によっては、真球に近い形状を有する粒子が望まれることがあり、そのような用途に使用する場合には、本発明のシリカ系複合酸化物粒子の円形度は、0.9以上、特に0.95以上であることが好ましい。
【0038】
また、前記粒子径は、走査型や透過型の電子顕微鏡等を用いることによって粒子を観察した場合における「円相当径」意味する。該「円相当径」は、走査型や透過型の電子顕微鏡等の観察結果を画像処理したときの粒子の面積をS(μm)、粒子の周囲長をL(μm)とすると、「円相当径」=(4S/π)1/2として定義されるものである。
【0039】
本発明のシリカ系複合酸化物粒子は、個々の粒子として前記したような優れた特徴を有するが、ゾル−ゲル法、具体的には後述する本発明の方法を採用することにより、粒子径を揃えて大量合成することができる。このため、本発明の粒子集合体を構成するシリカ系複合酸化物粒子の粒子径の変動係数を30%以下とすることができる。
【0040】
ここで、粒子径の変動係数とは、粒子集合体に含まれる構成粒子の単分散性を示す尺度であり、次のようにして決定される。即ち、電子顕微鏡で200個の粒子を観察し、画像処理によりそれぞれの粒子についての粒子径を求め、得られた結果から変動係数を求める。なお、変動係数CVは、U1/2を粒子径分布における標準偏差、Xをすべての粒子についての粒子径の平均値としたとき(U1/2/X)×100(%)で表される。
【0041】
本発明の粒子集合体を構成する粒子の変動係数は、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明の粒子集合体は、粉体として使用できるばかりでなく、ゾルとして使用することもできる。ゾルとして使用する場合、本発明の粒子集合体の分散媒として好適なものを例示すれば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノールなどのアルコール化合物;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの飽和炭化水素系化合物;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン化合物;酢酸エチルなどのエステル化合物;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド化合物;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル化合物などを挙げることができるが、水又は、水と水溶性アルコールとの混合物が好適に使用される。これら分散媒は、通常、粒子成分の合計質量の3倍未満の量で使用される。
【0043】
また、ゾルにおいて、上記分散媒に分散する本発明の粒子集合体の平均粒子径は、通常、1nm〜1000nmである。平均粒子径が1nm未満の粒子を製造するのは困難であり、平均粒子径が1000nmを越える場合には分散性が低下し、沈降しやすくなる。ゾルの安定性の観点から、上記平均粒子径は、3nm〜800nm、特に5〜500nmの範囲であることが好ましい。
【0044】
また、本発明の粒子集合体を粉体として使用する場合における平均粒子径は、通常、50nm〜5000nmである。平均粒子径が50nm未満のときは取り扱い難く、平均粒子径が5000nmを超えて大きいものは、これを製造しようとすると時間がかかり、得られる粒子の粒子径のばらつきが大きくなる(単分散性を維持するのが難しくなる)場合がある。取り扱いやすさ及び製造の容易さの観点から上記粉体の平均粒子径は70nm〜3000nm、特に100〜1000nmの範囲であるのが好ましい。
【0045】
ここで、平均粒子径とは、走査型や透過型の電子顕微鏡によりゾル又は粉体を構成する粒子を粒子を観察し、任意の200個の粒子について円相当径を求め、これを平均した値である。
【0046】
前記ゾル又は粉体においては、粒子の形状が球形であることによって、例えば樹脂等に充填する際に、複合樹脂の粘度を下げたり、樹脂中の粒子の充填率を上げたりすること等が可能である。また、粒子径の変動係数が30%以下であることによって、複合樹脂の粘度を制御しやすくなるという効果がある。
【0047】
<シリカ系複合酸化物粒子集合体の製造方法>
図2に本発明のシリカ系複合酸化物粒子集合体の製造方法の工程図を示した。本発明のシリカ系複合酸化物粒子集合体の製造方法は、シリコンのアルコキシドを水で部分加水分解し部分加水分解物を形成する工程S1、チタン、ジルコニウム、および、アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属(特定異種金属)のアルコキシドと錯化剤とを混合して調製した錯体と、前記部分加水分解物とを、所定の割合で混合して複合アルコキシド原料を調製する工程S2、水を含有する溶媒または分散媒中で、複合アルコキシド原料を加水分解・縮合させる工程S3を有している。
【0048】
本発明の製造方法では、金属アルコキシド原料を加水分解・縮合することにより粒子を形成するゾル−ゲル法を採用している。本発明の製造方法においては、特定異種金属のアルコキシドの加水分解速度と、シリコンのアルコキシドの加水分解速度とを同程度になるように揃え、シリコンのアルコキシドと特定異種金属のアルコキシドとから所定の方法で複合アルコキシド原料をあらかじめ形成して、該複合アルコシド原料を特定の条件下で加水分解・縮合することにより、特定異種金属の酸化物を高含有量で含有し、シリカと特定異種金属の酸化物とが均一に分散されたシリカ系複合酸化物粒子を製造することができる。以下、本発明の各工程について説明する。
【0049】
(部分加水分解物の形成工程S1)
シリコンのアルコキシドを部分加水分解する(工程S1)。シリコンのアルコキシドとしては、以下において説明する水を含有する溶媒または分散媒中での加水分解・縮合反応により、シリコンの酸化物を形成するものであれば、特に制限なく公知の化合物を用いることができる。例えば、一般式Si(OR)またはSiR’(OR)4−nで示されるシリコンのアルコキシド、またはシリコンのアルコキシドを部分的に加水分解・縮合して得られる低縮合物が工業的に入手し易く、好ましく用いられる。これらシリコンのアルコキシドは、二種以上を混合して用いてもよい。なお、上記一般式において、RおよびR’は、アルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基等の低級アルキル基であることが好ましい。nは1〜3の整数である。
【0050】
また、シリコンのアルコキシドを部分加水分解する際には、該アルコキシドと水の両方に対して相溶性のあるアルコール等の有機溶媒を併用することが好ましい。有機溶媒としては公知のものが制限無く使用できるが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、アセトン、メチルーエチルケトンなどのケトン類、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類、その他水と相溶性のある有機溶媒との複数混合溶媒が好適に用いられる。アルコール等の有機溶媒を使用しない場合は、シリコンのアルコキシドと水とが相分離する傾向があり、部分加水分解が進行しなかったり、非常に反応が遅くなったりする場合がある。また、部分加水分解を迅速に進めるために、前記の水には、触媒を添加することが好ましい。触媒としては酸が好適で、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸等が挙げられるが、特に制限はない。酸の濃度としては、水のpHが1〜4の範囲のものを使用するのが好ましい。アルカリ触媒を用いた場合と異なり酸触媒を用いた場合には、加水分解物の縮合を起こし難いため、工程S2を行う前における粒子の形成を防止することができる。
【0051】
以下、部分加水分解の機構として、本発明者が考えている事項を説明する。シリコンのアルコキシド(アルコキシシラン)として、テトラメチルシリケートを使用した場合について説明する。部分加水分解により、アルコキシシランの一部が加水分解され、分子内にシラノール基(SiOH)が生成する(下記の式(1)参照。)。そして、このシラノール基は、工程S2において、シリコン以外の金属のアルコキシドから形成される錯体と反応して、シリコンとシリコン以外の金属の複合アルコキシドを生成する。なお、アルコキシシランの加水分解反応は逐次的に進行し、使用した水の量に応じて下記式に従ったアルコキシヒドロキシシランが主要生成物として生成するものと考えられるが、実際の反応物は組成に分布を持った混合物(加水分解の程度の異なる化合物の混合物)となっていると考えられる。
【0052】
【化1】

(式(1)において、「Me」はメチル基を表している(以下、同様である。)。また、「n」は1〜4の整数である。)
【0053】
本発明の製造方法においては、シリコンのアルコキシドを水で部分加水分解する際に使用する水の量はnが0.8〜1.5程度にとなるように制御するのが好ましい。水の量が上記範囲よりも少ない場合には粒子中のシリカおよび特定異種金属酸化物の分布が不均一になる場合があり、多い場合には複合アルコキシド原料を加水分解・縮合させてシリカ系複合酸化物粒子を得る際に反応を制御することが難しくなる傾向がある。このため、融着粒子が多く生成したり、極端な場合は粒子合成中に粒子同志が凝集してしまう場合がある。
【0054】
一方、前記式(1)からわかるように、アルコキシシランの部分加水分解反応で使用する水の量は生成するシラン化合物に導入されるシラノール基(Si−OH基)の数を決定する要因であり、アルコキシシラン部分加水分解物1分子が有するシラノール基の数は、工程S2で調製される複合アルコキシド原料の均一性に影響を与える。即ち、複合アルコキシド原料の調製工程S2においては、前記部分加水分解物と特定異種金属のアルコキシドから形成される錯体と混合した際に、錯体中のアルコキシドのアルコキシ基とシラノール基とが反応(脱アルコール反応)することによりSi−O−M’(但し、M’は特定異種金属原子を表す)結合を形成し、Si・M’・(OR)・(OH)(但し、a、b、c、およびdは、夫々1分子中に含まれるSi(シリコン)原子、M’(特定異種金属)原子、OR基、およびOH基の数を表す。)で示されるような複合アルコキシド原料が形成される。
【0055】
(複合アルコキシド原料の調製工程S2)
本発明の製造方法においては、工程S2において、チタン、ジルコニウム、および、アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属(特定異種金属)のアルコキシドと錯化剤とを混合して調製した錯体と、上記において調製した部分加水分解物とを、特定異種金属の含有率が0.5<M/(M+Si)<1.0となるようにして混合して複合アルコキシド原料を調製する。
【0056】
前記したように、アルコキシシランの加水分解速度と特定異種金属のアルコキシドの加水分解速度とは大きく異なるため、両者を単に混合して加水分解・縮合を行った場合には、特定異種金属の酸化物の含有率が高く、そして均一な組成を有する複合酸化物粒子を得ることは困難である。本発明においては、アルコキシシランの加水分解速度と特定異種金属のアルコキシドの加水分解速度とを揃えるために、特定異種金属のアルコキシドと錯化剤とを混合して錯体を形成させる。そして、この錯体とアルコキシシランの部分加水分解物とを混合して、複合アルコキシド原料を調製する。
【0057】
特定異種金属のアルコキシドとしては、チタンのアルコキシド(Ti(OR))、ジルコニウムのアルコキシド(Zr(OR))、およびアルミニウムのアルコキシド(Al(OR))を用いることができる。Rは、アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基等の低級アルキル基であることが好ましい。
【0058】
錯化剤としては、(1)アルキレングリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール等)、(2)グリコールアルキルエーテル類(エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等)、(3)グリコールアリールエーテル類(エチレングリコールモノフェニルエーテル等)、(4)β−ジカルボニル化合物(アセチルアセトン等)、(5)アミン類(エチレンジアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、(6)ヒドロキシアセトン、(7)アセタール類(アセトンジメチルアセタール等)、(8)カルボン酸類(酢酸、乳酸、クエン酸等)等が使用できる。この中でも、トリエタノールアミン等のアミン類、β−ジカルボニル化合物類、ヒドロキシアセトン、又はカルボン酸類を使用するのが好ましい。特に、比較的少量で加水分解速度を低下させることができるため、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸、及び乳酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用するのが最も好ましい。
【0059】
錯化反応は、特定異種金属のアルコキシドと錯化剤とを極性溶媒、好ましくはアルコール中で混合することにより行うことができる。反応温度は5℃〜溶媒の沸点の温度で行えばよく、室温でも十分に錯化反応は進行する。また、反応時間は反応温度にもよるが通常10分〜2時間程度である。
【0060】
錯化反応において、特定異種金属のアルコキシドと錯化剤との量比は、特定異種金属のアルコキシドの加水分解速度を制御するという観点から重要である。組成が均一な複合酸化物粒子を得るためには、形成する錯体の加水分解速度をアルコキシシランの加水分解速度と同程度に調整することが好ましい。特定異種金属のアルコキシドと錯化剤との量比を変えることにより錯体の加水分解速度を制御することができるので、使用する特定異種金属のアルコキシドと錯化剤との組み合わせに応じて、上記観点から適宜好適な量比を決定すればよい。このような量比の決定は、簡単な実験により容易に行うことができる。
【0061】
以下に、特定異種金属のアルコキシドとして、テトライソプロピルチタネート(テトライソプロポキシチタンともいう。以下、「TPT」と省略する場合がある。)を使用し、錯化剤として、トリエタノールアミン(以下、「TEA」と省略する場合がある。)を使用した場合における実験例を示す。
【0062】
この実験は、TPTとTEAとの量比と、得られた錯体の加水分解速度との関係を確認するために行われたものであり、次のような手順により行われた。すなわち、所定量の0.3%アンモニア水に、該アンモニア水と同質量の別途調製した“TPTおよびTEAを種々の割合(モル比)にて混合した50質量%メタノール溶液”を、撹拌子を用いた撹拌(電磁撹拌)下に一気に添加し、添加終了直後から溶液がゲル化するまでの時間を測定することにより加水分解速度を評価した。なお、ゲル化時間は、溶液の粘度上昇により撹拌子の動きが停止した時点をゲル化した時点として求めた。その時の結果を表1に示す。なお、別の実験において、シリコンのアルコキシドとして、テトラメチルシリケートを使用し、同様の条件にて実験を行った場合は、ゲル化時間は、14分であった。
【0063】
【表1】

【0064】
上記の結果より、TEA/TPT=0.5とした場合に、テトラメチルシリケートを使用した場合のゲル化時間(14分)に最も近いことがわかった。これより、以下において記載する実施例においては、TEA/TPT=0.5としている。しかし、本発明の思想は、特定異種金属のアルコキシドの加水分解速度と、シリコンのアルコキシド(アルコキシシラン)の加水分解速度とを、同程度に揃えることにある。よって、この思想を達成するものであれば、TEAとTPTの配合割合は、上記の値に限定されない。
【0065】
また、TEA/TPT=0.5として、TEAとTPTとを混合した場合には、以下の式(2)に示す錯体が形成されていると、本発明者は考えている。
【0066】
【化2】

(式(2)において、「iPr」はイソプロピル基を表している(以下、同様である。)。)
【0067】
工程S2においては、上記のようにして調製された錯体と、アルコキシシランの部分加水分解物とを混合することにより複合アルコキシド原料が調製される。アルコキシシランの部分加水分解物と錯体との混合割合は、最終的に得られるシリカ系複合酸化物粒子における特定異種金属の含有率をどのような値にしたいかによって決定する。即ち、使用するアルコキシシランの部分加水分解物に含まれるSi原子のモル数(グラム原子数)に基づいて、得ようとする複合酸化物粒子の組成に応じて必要とされる特定異種金属(M’)のモル数(グラム原子数)を決定し、それに見合う量の錯体を使用すればよい。
【0068】
例えば、チタンの含有率が0.8であるシリカ系複合酸化物粒子を製造する場合は、部分加水分解物中のシリコンのモル数をSi、錯体中のチタンのモル数をTiとして、{Ti/(Si+Ti)}=0.8となるようにして、部分加水分解物と錯体とを混合する。
【0069】
複合アルコキシド原料の調製は、アルコキシシランの部分加水分解を行った反応液と、錯体の溶液とを撹拌下で混合することにより好適に行うことができる。混合時の液温は5〜50℃に保つのが好適である。また、撹拌時間は反応温度にもよるが、10分〜2時間程度で十分である。
【0070】
例えば、以下の式(3)に示すような部分加水分解反応を行って得た反応液と特定異種金属のアルコキシドであるテトライソプロピルチタネート(テトライソプロポキシチタン)とを混合した場合には、下記式(4)に示すような複合化反応が起こり、テトライソプロピルチタネートの一部または全部がアルコキシシランと複合化していると考えられる。
【0071】
【化3】

【0072】
【化4】

なお、式(4)においては、チタンのアルコキシドから形成した錯体を、単にチタンのアルコキシド(Ti(O−iPr))として省略記載している。
【0073】
(加水分解・縮合工程S3)
本発明の方法では、上記で調製された複合アルコキシド原料を、水を含有する溶媒または分散媒中で加水分解・縮合することによりシリカ系複合酸化物粒子を製造する。上記複合アルコキシドは加水分解されるとほぼ瞬時に縮合して複合酸化物となる。
【0074】
加水分解・縮合を行う際に使用する「水を含有する溶媒または分散媒」とは、溶媒全体の質量を基準(100質量%)として、水を5〜100質量%含有している溶媒または分散媒である。1nm〜100nmというナノ粒子を得るという点からは、水の含有量は60〜100質量%であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。また、単分散性を有し、粒子径が100nm以上の球形度の高いシリカ系複合酸化物粒子を得るという点からは、水の含有量は5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。なお粒子径が50〜150nmである場合、水濃度の範囲がそれぞれ5〜50質量%、60〜100質量%であっても、使用する有機溶媒、温度などの条件を適切に選択することで所望の粒子を得ることができる。
【0075】
なお、複合アルコキシド原料の加水分解・縮合反応により水が消費されアルコールが副生するため、バッチで反応を行った場合、溶媒または分散媒中の水の濃度が低下するが、本発明においては、反応を開始してから終了するまでの間、溶媒または分散媒中の水の濃度を上記の範囲に保つように調整することが好ましい。
【0076】
上記溶媒または分散媒の水濃度が100質量%未満の場合、これら溶媒または分散媒は有機溶媒を含むことになる。このときの有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、その他水と相溶性のある有機溶媒が単独または複数混合して用いられる。これらの中でもメタノール、エタノール、イソプロパノールのような低級アルコール類が金属アルコキシドや水との相溶性も高く、また粘度も低いために、好ましい。
【0077】
また、複合アルコキシドを加水分解するための触媒としては、N(CH等のアミン、アンモニア、LiOH、NaOH、KOH、N(CHOH等の塩基が好適に使用できる。特に、アンモニアやアミンの場合は、製造したシリカ系複合酸化物粒子を焼成すれば粒子中に塩基が残留しないために、加水分解用の触媒として極めて好適である。触媒の添加量は、用いる触媒の種類や含水有機溶媒中の水と有機溶媒の種類や配合比率によって異なるために一概にはいえないが、pHが10以上、好ましくは11以上になるように添加するのが好ましい。触媒として最も好適なアンモニアの場合は、反応液中のNH濃度が0.005〜10質量%、好ましくは0.01〜7質量%の範囲となるように添加するのが好適である。
【0078】
上記複合アルコキシド原料は、液中滴下することが好ましい。液中滴下とは、上記アルコキシド原料を水溶媒中に滴下する際、滴下口先端が水溶媒中に浸されていることをいう。滴下口先端の位置は、液中にあれば特に限定されないが、撹拌羽根の近傍等の充分に撹拌が行われる位置が望ましい。液中滴下をせずに、例えば、反応液の上部から液上滴下した場合には粒子が凝集しやすいため好ましくない。
【0079】
また、上記複合アルコキシ原料と共に、別途調製されたアルカリ性水溶液を、溶媒または分散媒中に同時滴下しても良い。このアルカリ性水溶液としては、0.005〜30質量%のアンモニア水等が好適である。なお、上記原料中のシリコンと特定異種金属の総モル数に対して、該アルカリ性水溶液中の水のモル数が1〜6倍モル、好ましくは2〜5倍モルとなるような供給比でアルカリ性水溶液を滴下することが好ましい。
【0080】
アルカリ性水溶液の滴下は、特に液中滴下する必要はないが、撹拌羽根近傍で液中滴下した方が、水溶媒中での撹拌が充分に行われるので好ましい。上記のようにアルカリ性水溶液を同時滴下することによって、固形分濃度を高くして粒子を合成できるので、収率の高い合成が可能となる。
【0081】
複合アルコキシド原料は、それぞれ滴下を開始してから終了するまで連続的又は断続手に滴下することが好ましい。なお、断続的に添加する場合には、10分以上、特に3分以上の間隔を空けないことが好ましい。滴下速度は、必ずしも一定である必要はないが、滴下速度を変える場合には徐々に変えるのが望ましい。
【0082】
加水分解・縮合を行うときの反応槽の温度は、0〜50℃の範囲であれば良く、用いるアルコキシドの種類によって適宜選択される。その他、加水分解・縮合に使用する反応容器、上記以外の反応条件等は公知のものが何ら制限なく採用される。
【0083】
加水分解・縮合において生成する粒子の粒子径を制御する方法は複数存在するが、一般的には、使用する原料の量を制御することにより粒径制御を行うことができる。例えば、ある条件(温度、撹拌速度、反応液の溶媒組成など)で予備的に合成した粒子の径をr、目的とする粒子径をrとし、このとき使用した全ての金属アルコキシドのモル数をMとすると、粒子径rの粒子を得るために必要な全ての金属アルコキシドのモル数はM×(r/rとなる。すなわち、M×(r/rモルの原料を使用して上記の予備的な合成に使用した条件下で反応させることで目的とする粒子径rの粒子を得ることができる。
【0084】
また、反応開始時の反応液の量、反応温度、反応開始時における反応液の組成などの条件を調節することによって粒子径を制御することも可能である。一般に、反応液の量を減らせば粒子径は大きくなり、増加させれば小さくなる傾向がある。また、反応温度を上げると粒子径は大きくなる傾向がある。さらに、使用する有機溶媒の種類を変えることで粒子径が変化することがあるので、これを利用して粒径の制御をすることも可能である。
【0085】
合成終了後の粒子は、反応液中に分散した粒子分散液として得られる。用途によっては、そのまま使用しても良いし、反応液の溶媒を水もしくはアルコール等の有機溶媒に溶媒置換した後に使用しても良い。また、粒子を合成した後、遠心分離、ろ過、蒸留、スプレードライ等の手法で固液分離し、粉末の形で取り出しても良い。取り出した粉末は乾燥させることができる。乾燥温度は50〜300℃の範囲が好適である。乾燥した粉末はさらに高い温度で焼成することができる。焼成温度は100〜1300℃の範囲が好適で、焼成時間は1〜24時間の範囲が好適である。高温で焼成すると粒子の比表面積は小さくなり、低温で乾燥したものは比表面積が大きくなる傾向にある。なお、1300℃を超えた温度で焼成すると、粒子同志が焼結する場合があり、単分散性を損なってしまうことが懸念される。乾燥または焼成後の粒子は、ボールミルやジェットミル等を使用して粒子ひとつひとつに解砕することができる。また、乾燥または焼成した粒子は適当な溶媒に、対向衝突型分散装置、ビーズミル等を用いて分散させて使用することもできる。
【実施例】
【0086】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0087】
実施例1(チタン含有率0.51のシリカ系複合酸化物ナノ粒子の製造例)
2リットルの三角フラスコに、メチルシリケート(Si(OMe)、多摩化学工業(株)、商品名;正珪酸メチル)152.2gを仕込み、撹拌しながら、メチルアルコール76.1gと0.04質量%塩酸18.0gを加え、室温で約20分間撹拌することによってメチルシリケートを部分加水分解した(溶液A)。
上記とは別に、テトライソプロポキシチタン(Ti(OiPr)、日本曹達(株)、品名;A−1(TPT))295.8gとメタノール284.2gとトリエタノールアミン149.2gを加え室温で30分間撹拌した後、溶液Aと混合し、30分間撹拌した(溶液B)。
攪拌機付きのガラス製反応容器(内容積5リットル)に、イオン交換水1775.6g、アンモニア水(25質量%)4.4gを混合して反応液を調製し、反応液の温度を40℃に保持した。これに上記反応液Bを約5時間かけて液中滴下した。滴下終了後、更に1時間攪拌を続けた後、系内の溶液を取り出し、5リットルのビーカーに移して静置した。得られた溶液を逆浸透膜により2倍に濃縮したあと、水を加えて2倍に希釈した。この濃縮・希釈操作を5回繰り返し、微粒子の水分散液を得た。
得られた粒子について、SEM観察を行った。その結果、粒子径が0.02μm、円形度が0.92、変動係数が10%の粒子が得られた。また、上記水分散液を乾燥させて得られた粉末について蛍光X線分析を行ったところ、Tiの含有率が0.51であることがわかった。
【0088】
実施例2(チタン含有率0.7のシリカ系複合酸化物ナノ粒子の製造例)
2リットルの三角フラスコに、メチルシリケート(Si(OMe)、多摩化学工業(株)、商品名;正珪酸メチル)91.3gを仕込み、撹拌しながら、メチルアルコール45.7gと0.04質量%塩酸10.8gを加え、室温で約20分間撹拌することによってメチルシリケートを部分加水分解した(溶液A)。
上記とは別に、テトライソプロポキシチタン(Ti(OiPr)、日本曹達(株)、品名;A−1(TPT))397.9gとイソプロピルアルコール795.8gとトリエタノールアミン208.8gを加え室温で30分間撹拌した後、溶液Aと混合し、30分間撹拌した(溶液B)。
攪拌機付きのガラス製反応容器(内容積5リットル)に、イオン交換水1775.6g、アンモニア水(25質量%)4.4gを混合して反応液を調製し、反応液の温度を40℃に保持した。これに上記反応液Bを約5時間かけて液中滴下した。滴下終了後、更に1時間攪拌を続けた後、系内の溶液を取り出し、5リットルのビーカーに移して静置した。得られた溶液を逆浸透膜により2倍に濃縮したあと、水を加えて2倍に希釈した。この濃縮・希釈操作を5回繰り返し、微粒子の水分散液を得た。
得られた粒子について、SEM観察を行った。その結果、粒子径が0.01μm、円形度が0.89、変動係数が14%の粒子が得られた。また、上記水分散液を乾燥させて得られた粉末について蛍光X線分析を行ったところ、Tiの含有率が0.70であることがわかった。
【0089】
実施例3(チタン含有率0.9のシリカ系複合酸化物ナノ粒子の製造例)
3リットルの三角フラスコに、メチルシリケート(Si(OMe)、多摩化学工業(株)、商品名;正珪酸メチル)17.6gを仕込み、撹拌しながら、メチルアルコール8.8gと0.04質量%塩酸2.0gを加え、室温で約20分間撹拌することによってメチルシリケートを部分加水分解した(溶液A)。
上記とは別に、テトライソプロポキシチタン(Ti(OiPr)、日本曹達(株)、品名;A−1(TPT))294.4gとイソプロピルアルコール588.4gとトリエタノールアミン154.4gを加え室温で30分間撹拌した後、溶液Aと混合し、30分間撹拌した(溶液B)。
攪拌機付きのガラス製反応容器(内容積5リットル)に、イオン交換水1775.6g、アンモニア水(25質量%)4.4gを混合して反応液を調製し、反応液の温度を40℃に保持した。これに上記反応液Bを約5時間かけて液中滴下した。滴下終了後、更に1時間攪拌を続けた後、系内の溶液を取り出し、5リットルのビーカーに移して静置した。得られた溶液を逆浸透膜により2倍に濃縮したあと、水を加えて2倍に希釈した。この濃縮・希釈操作を5回繰り返し、微粒子の水分散液を得た。
得られた粒子について、SEM観察を行った。その結果、粒子径が0.01μm、円形度が0.83、変動係数が22%の粒子が得られた。また、上記水分散液を乾燥させて得られた粉末について蛍光X線分析を行ったところ、Tiの含有率が0.90であることがわかった。
【0090】
実施例4〜6(錯化剤を変えた、チタン含有率0.7のシリカ系複合酸化物ナノ粒子の製造例)
トリエタノールアミンの代わりにジエタノールアミン、アセト酢酸メチル、乳酸を用いた以外は実施例2と同様にして粒子を合成した。得られた粒子の性状を表2に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
実施例7(ジルコニウム含有率0.7のシリカ系複合酸化物ナノ粒子の製造例)
テトライソプロポキシチタンの代わりにテトラ−n−ブトキシジルコニウムを用いた以外は実施例2と同様にして粒子を合成した。
得られた粒子について、SEM観察を行ったところ、粒子径が0.02μm、円形度が0.81、変動係数が28%の粒子が得られた。また、上記水分散液を乾燥させて得られた粉末について蛍光X線分析を行ったところ、Zrの含有率が0.70であることがわかった。
【0093】
実施例8(アルミニウム含有率0.7のシリカ系複合酸化物ナノ粒子の製造例)
テトライソプロポキシチタンの代わりにアルミニウムsec−ブトキシドを用いた以外は実施例2と同様にして粒子を合成した。
得られた粒子についてSEM観察を行ったところ、粒子径が0.02μm、円形度が0.82、変動係数が24%の粒子が得られた。また、上記水分散液を乾燥させて得られた粉末について蛍光X線分析を行ったところ、Alの含有率が0.70であることがわかった。
【0094】
実施例9(チタン含有率0.51のシリカ系複合酸化物0.2μm粒子の製造例)
2リットルの三角フラスコに、メチルシリケート(Si(OMe)、多摩化学工業(株)、商品名;正珪酸メチル)152.2gを仕込み、撹拌しながら、メチルアルコール76.1gと0.04質量%塩酸18.0gを加え、室温で約20分間撹拌することによってメチルシリケートを部分加水分解した(溶液A)。
上記とは別に、テトライソプロポキシチタン(Ti(OiPr)、日本曹達(株)、品名;A−1(TPT)295.8gとイソプロピルアルコール568.5gとトリエタノールアミン74.6gを加え室温で30分間撹拌した後、溶液Aと混合し、30分間撹拌した(溶液B)。
攪拌機付きのガラス製反応容器(内容積5リットル)に、アセトニトリル、およびアンモニア水(25質量%)をそれぞれ266.7g、133.3gを混合して反応液を調製し、反応液の温度を40℃に保持した。これに上記反応液Bとアンモニア水(25質量%)488.7gを反応液中にそれぞれ独立に液中同時滴下した。滴下を開始してから約10分後に反応液が白濁し始め、複合酸化物粒子が生成していることがわかった。約4時間かけて全ての原料を滴下し、滴下終了後、更に1時間攪拌を続けた後、系内の溶液を取り出し、5リットルのビーカーに移して静置した。溶媒として純水を用いて数回デカンテーションを繰り返して生成物を洗浄した。沈殿物を乾燥後、900℃で10時間、空気中で焼成し、無機酸化物粒子130gを得た。
得られた粒子について、SEM観察を行った。その結果、平均粒子径が0.2μm、変動係数が10%、電子顕微鏡の撮影像から求められる円形度が0.90の単分散性の高い球状粒子であることがわかった。
また、確認のためにオージェ電子分光法(AES)を用いて上記粒子の表面分析を行なったところ、粒子の表面層からはSiとTiが検出され、Tiの含有率が0.70であることがわかった。
【0095】
実施例10(チタン含有率0.7のシリカ系複合酸化物0.2μm粒子の製造例)
2リットルの三角フラスコに、メチルシリケート(Si(OMe)、多摩化学工業(株)、商品名;正珪酸メチル)91.3gを仕込み、撹拌しながら、メチルアルコール45.7gと0.04質量%塩酸10.8gを加え、室温で約20分間撹拌することによってメチルシリケートを部分加水分解した(溶液A)。
上記とは別に、テトライソプロポキシチタン(Ti(OiPr)、日本曹達(株)、品名;A−1(TPT))397.9gとイソプロピルアルコール795.8gとトリエタノールアミン104.4gを加え室温で30分間撹拌した後、溶液Aと混合し、30分間撹拌した(溶液B)。
攪拌機付きのガラス製反応容器(内容積5リットル)に、アセトニトリル、およびアンモニア水(25質量%)をそれぞれ266.7g、133.3gを混合して反応液を調製し、反応液の温度を40℃に保持した。これに上記反応液Bとアンモニア水(25質量%)600.9gを反応液中にそれぞれ独立に液中同時滴下した。滴下を開始してから約10分後に反応液が白濁し始め、複合酸化物粒子が生成していることがわかった。約4時間かけて全ての原料を滴下し、滴下終了後、更に1時間攪拌を続けた後、系内の溶液を取り出し、5リットルのビーカーに移して静置した。溶媒として純水を用いて数回デカンテーションを繰り返して生成物を洗浄した。沈殿物を乾燥後、900℃で10時間、空気中で焼成し、無機酸化物粒子140gを得た。
得られた粒子について、SEM観察を行った。その結果、平均粒子径が0.2μm、変動係数が17%、電子顕微鏡の撮影像から求められる円形度が0.87の単分散性の高い球状粒子であることがわかった。
また、確認のためにオージェ電子分光法(AES)を用いて上記粒子の表面分析を行なったところ、粒子の表面層からはSiとTiが検出されTiの含有率が0.70であることがわかった。
【0096】
実施例11(チタン含有率0.9のシリカ系複合酸化物0.2μm粒子の製造例)
3リットルの三角フラスコに、メチルシリケート(Si(OMe)4、多摩化学工業(株)、商品名;正珪酸メチル)17.6gを仕込み、撹拌しながら、メチルアルコール8.8gと0.04質量%塩酸2.0gを加え、室温で約20分間撹拌することによってメチルシリケートを部分加水分解した(溶液A)。
上記とは別に、テトライソプロポキシチタン(Ti(OiPr)、日本曹達(株)、品名;A−1(TPT))294.4gとイソプロピルアルコール588.4gとトリエタノールアミン154.4gを加え室温で30分間撹拌した後、溶液Aと混合し、30分間撹拌した(溶液B)。
攪拌機付きのガラス製反応容器(内容積5リットル)に、アセトニトリル、およびアンモニア水(25質量%)をそれぞれ266.7g、133.3gを混合して反応液を調製し、反応液の温度を40℃に保持した。これに上記反応液Bとアンモニア水(25質量%)438.4gを反応液中にそれぞれ独立に液中同時滴下した。滴下を開始してから約10分後に反応液が白濁し始め、複合酸化物粒子が生成していることがわかった。約4時間かけて全ての原料を滴下し、滴下終了後、更に1時間攪拌を続けた後、系内の溶液を取り出し、5リットルのビーカーに移して静置した。溶媒として純水を用いて数回デカンテーションを繰り返して生成物を洗浄した。沈殿物を乾燥後、900℃で10時間、空気中で焼成し、無機酸化物粒子80gを得た。
得られた粒子について、SEM観察を行った。その結果、平均粒子径が0.2μm、変動係数が25%、電子顕微鏡の撮影像から求められる円形度が0.85の単分散性の高い球状粒子であることがわかった。
また、確認のためにオージェ電子分光法(AES)を用いて上記粒子の表面分析を行なったところ、粒子の表面層からはSiとTiが検出されTiの含有率が0.90であることがわかった。
【0097】
比較例1
トリエタノールアミンを用いない以外は実施例1と同様にして粒子を合成した。得られた粒子についてSEM観察を行ったところ、円形度が0.5〜0.7の粒子を多量に含んでいることが明らかとなった。
【0098】
比較例2
トリエタノールアミンを用いない以外は実施例9と同様にして粒子を合成した。得られた粒子についてSEM観察を行ったところ、円形度が0.5〜0.7の粒子を多量に含んでいることが明らかとなった。
【0099】
以上、現時点において、最も、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うシリカ系複合酸化物粒子集合体、その製造方法、および、該粒子集合体が分散媒に分散したゾルもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】チタニア含有率と粒子の屈折率の関係を示すグラフである。
【図2】本発明のシリカ系複合酸化物粒子集合体の製造工程を示す概略図である。
【符号の説明】
【0101】
S1 部分加水分解物の形成工程
S2 複合アルコキシド原料の調製工程
S3 加水分解・縮合工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン、ジルコニウム、および、アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属とシリコンとの複合酸化物からなるシリカ系複合酸化物粒子の集合体であって、
(A) 前記シリカ系複合酸化物粒子が、円形度0.8以上である球状若しくは略球状の粒子であり、
(B) 前記シリカ系複合酸化物粒子の粒子径の変動係数が、30%以下であり、
(C) 前記シリカ系複合酸化物粒子に含まれるチタン、ジルコニウム、およびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属の合計グラム原子数をM、シリコンのグラム原子数をSiとしたときに、0.5<M/(M+Si)<1.0、の関係を満足することを特徴とする、シリカ系複合酸化物粒子集合体。
【請求項2】
請求項1に記載のシリカ系複合酸化物粒子集合体であって、平均粒子径が1〜1000nmである粒子集合体が分散媒に分散したゾル。
【請求項3】
請求項1に記載のシリカ系複合酸化物粒子集合体を製造する方法であって、
(S1) シリコンのアルコキシドを水で部分加水分解して部分加水分解物を形成する工程、
(S2) チタン、ジルコニウム、および、アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属のアルコキシドと錯化剤とを混合して調製した錯体と、前記部分加水分解物とを混合して複合アルコキシド原料を調製する工程、及び
(S3) 水を含有する溶媒または分散媒中で前記複合アルコキシド原料を加水分解・縮合させる工程を含み、
且つ前記工程(S2)における錯体と部分加水分解物との混合を、得られる複合アルコキシド原料に含まれるチタン、ジルコニウム、および、アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属の合計グラム原子数をM、シリコンのグラム原子数をSiとしたときに 0.5<M/(M+Si)<1.0 の関係を満足するようにして混合することを特徴とする、シリカ系複合酸化物粒子集合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−37700(P2008−37700A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213923(P2006−213923)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】