説明

シリコンの製造方法

【課題】工業的にかつ安価に生産可能な、高純度のシリコンの製造方法が求められている。
【解決手段】SiOまたはSiOを含有する物質の粒子と、Cを含有する物質の粒子からなる混合粒子を、酸素燃焼炎を形成する燃焼炎ノズル中央部に供給することで、SiOまたはSiOを還元することを特徴とするシリコンの製造方法。微細混合粒子の径が50〜500μmであり、粒子を瞬間的に酸素燃焼することで、不純物を蒸発させる特徴も持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiOを原料として、高純度の金属シリコンを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体や太陽電池などの普及により、その主要な材料であるシリコンの需要は拡大している。シリコンは、珪石とコークスを混合し、カーボン電極のアークにより溶解還元して製造される。この製造法は電力消費量が大きいこと、ある程度純度の高いシリコンを得るためには純度の高い珪石が必要なことから、産地が限定される。この製造法は以下のような反応による。
【0003】
SiO + 2C → Si + 2CO または、
2SiO + 2C → 2Si + 2CO
この製造法の電力消費量が大きいのは、以下の理由による。すなわち、珪石自身は溶融状態でも導電性が殆どないため、アークによる溶解が効率良く進行せず、実際は珪石と混合したコークスが電極と放電し、コークスの温度上昇で間接的に珪石が加熱されるため、珪石を溶解するのに非常に高いエネルギーを投入する必要がある。さらに導電性は、原料珪石の純度が高いほど低くなるので、最近の高純度化の需要により、ますます電力消費量が大きくなるという問題がある。
【0004】
この問題を解決するために、最近ではハロゲン化シランを金属によって還元する方法(特許文献1参照)、SiOを電解還元する方法(特許文献2参照)、あるいは酸素濃度や温度の反応条件を最適化する方法(特許文献3参照)等が提案されている。
【特許文献1】特開2008−156208号公報
【特許文献2】特開2006−321688号公報
【特許文献3】特開2008−69064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば上記の特開2008−156208号公報に記載されているような、ハロゲン化シランを原料とするものは、ハロゲン化シランの原料に、既存の溶解還元によるシリコンを使用するものである。従ってこれらの方法は、シリコンの高純度化というべきであり、問題の解決にはなっていない。
【0006】
また、上記特開2006−321688号公報に記載のものは、陰極に粗シリコンを用いて、陽極に高純度シリコンを析出するものであり、上記特開2008−156208号公報記載のものと同じ問題があるばかりか、バッチ式となり大量生産には向かない。
【0007】
さらに、特開2008−69064号公報に記載されているものは、極端に低い酸素分圧下で微粒子化したシリカを還元するものであり、簡易な方法とは言い難い。
【0008】
このように、シリコンの需要が高まっているのにもかかわらず、簡易で純度の高いシリコンを生産する方法は未だに得られていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、SiOまたはSiOを含有する物質の粒子と、Cを含有する物質の粒子からなる混合粒子を、酸素燃焼炎を形成する燃焼炎ノズル中央部に供給することで、SiOまたはSiOを還元することを特徴とするシリコンの製造方法である。
【0010】
また、上記微細混合粒子の径が50〜500μmであることを特徴とする上記のシリコンの製造方法である。
【0011】
さらに、SiOまたはSiOを含有する物質の粒子を瞬間的に酸素燃焼することで、不純物を蒸発させることを特徴とする、上記のシリコンの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大量の電力を消費せずに、SiOから純度の高いシリコンを連続でかつ効率的に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明を実施するのに用いる装置の基本的な構成の一例であり、SiOまたはSiOを含有する物質の粒子と、Cを含有する物質の粒子からなる混合粒子を燃焼炎ノズル2の中央部の原料供給口3から連続的に供給し、1500〜3000℃の酸素燃焼炎4を通過させる。この酸素燃焼炎を通過する間にSiOは瞬時にC分と反応・還元されるためシリコンが生成し、そしてその生成シリコン6を排出口5より連続的に取り出すことができる。
【0014】
ここで、原料となる微細混合粒子の径は50〜500μmとし、形成される混合粒子毎で変動が少なく、均一な粒子構成になることが望ましい。混合粒子が50μm未満ではSiOまたはSiOを含有する物質の粒子と、Cを含有する物質の粒子の粉砕に多大な時間やコストがかかるため望ましくない。また500μmを超えると、混合粒子の原料供給時の空気搬送が困難となり、また酸素燃焼炎中での還元効率が悪くなるため好ましくない。より好ましくは100〜300μmである。
【0015】
SiOまたはSiOを含有する物質としては、天然原料である珪石や珪砂、あるいは合成シリカ、ケイ酸塩などSiOまたはSiO分を含有していれば問題ない。またこの粒子の径は1〜400μmとする。1μm未満では粒子の粉砕に多大な時間やコストがかかるため望ましくない。また400μmを超えると酸素燃焼炎中での還元が難しくなるため好ましくない。より好ましくは、5〜250μmである。
【0016】
Cを含有する物質の粒子としては、カーボン、セルロースパウダーなど他の物質を還元する物質であれば良く、また高温でSiOまたはSiOを還元するようなSiCでも問題無い。またこの粒子の径は50〜400μmとする。50μm未満では粒子の粉砕に多大な時間やコストがかかる上に、酸素燃焼炎中でSiOまたはSiOを還元できずにすぐに燃焼してしまうため望ましくない。また400μmを超えると酸素燃焼炎中での効率良い還元が難しくなるため好ましくない。より好ましくは、50〜250μmである。
【0017】
さらに、前記粒子を粒状に成形して微細混合粒子を調製する方法としては、スプレードライ法などの方法が使用でき、各粒子を分散溶解させた水溶液を高温奮起中に噴霧させて瞬間的に乾燥固化させる方法が好ましい。
【0018】
酸素燃焼においては、火炎温度が好ましくはSiOまたはSiOが還元されやすくなる1800℃以上で、かつ生成したシリコンが出来る限り揮発しないようにシリコンの沸点2300℃以下になるように燃焼量などを調整する必要があり、また燃焼における酸素比は0.80〜1.20、SiOまたはSiOの還元効率や生成したシリコンの酸化を考慮して好ましくは0.90〜1.10程度にする。
【0019】
還元され生成したシリコンは、融点以上である火炎内で液体状態となり、このときB、C、P等の不純物は、酸化生成物の蒸気圧が高く蒸発する。これにより、純度の高いシリコンを得ることが出来る。
【0020】
燃焼に使用する燃料はLNG、LPGや灯油などいずれでも良い。しかし、先に述べたように多くの不純物が蒸発されて除かれるとはいえ、生成したシリコンに出来る限り不純物が移行しないように、燃料中にはB、C、Pなどの不純物が少ない方が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るシリコンの製造装置の模式縦断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 炉体
2 燃焼炎ノズル
3 原料供給口
4 酸素燃焼炎
5 生成シリコン排出口
6 生成シリコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiOまたはSiOを含有する物質の粒子と、Cを含有する物質の粒子からなる混合粒子を、酸素燃焼炎を形成する燃焼炎ノズル中央部に供給することで、SiOまたはSiOを還元することを特徴とするシリコンの製造方法。
【請求項2】
前記混合粒子の径が50〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載のシリコンの製造方法。
【請求項3】
SiOまたはSiOを含有する物質の粒子を瞬間的に酸素燃焼することで、不純物を蒸発させることを特徴とする、請求項1または2に記載のシリコンの製造方法。


【図1】
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