説明

シリコン精製方法

【課題】シリコンの精製を短時間で効率的に行なうことができるシリコン精製方法を提供する。
【解決手段】アルカリ金属の塩化物およびアルカリ土類金属の塩化物の少なくとも一方を含む材料が溶融されてなる溶融物に固体シリコンを接触させる工程と、溶融物に接触させた後の固体シリコンの表面を処理する工程とを含むシリコン精製方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題から石油などの代替としての自然エネルギの利用が注目されている。なかでも、シリコン半導体の光電変換原理を利用する太陽電池は、太陽エネルギから電気エネルギへの変換を容易に行なうことができることから特に注目されている。
【0003】
しかしながら、太陽電池は未だ高価であるため、太陽電池をさらに広く普及させるためには、太陽電池の製造コストの低減、特に太陽電池の本体部となる太陽電池級シリコンの製造コスト、特にシリコンの精製コストを低減させることが重要である。
【0004】
このような太陽電池の低コスト化のために、98〜99重量%程度の純度である金属シリコンからの直接的な冶金的精製が試みられている。
【0005】
このような治金的精製の一例として、シリコン融液の凝固偏析、特に一方向凝固を行なうことで偏析により金属シリコンを精製する方法(凝固偏析による精製)が知られている。しかしながら、凝固偏析による精製は、金属シリコン中の多くの不純物金属(鉄、アルミニウム、チタンおよびカルシウムなどの少なくとも1種の金属であり、以下これらを「メタル」と総称する場合がある。)を同時に低減できる点で優れるものの、ボロンについては偏析係数が0.8であり、リンについては偏析係数が0.35と上記メタルに比べて大きいため、原理的に凝固精製を効率的に行なうことができないことが知られている。
【0006】
よって、金属シリコンを冶金的精製により太陽電池用シリコンとするためには、少なくとも脱ボロン工程、脱リン工程および偏析(による脱メタル)工程をそれぞれ別途行う必要があると考えられてきた。
【0007】
たとえば、特許文献1においては、以下のA〜Eの工程からなる、金属シリコンを出発原料として太陽電池用の多結晶シリコンを得る精製工程が開示されている。
A・金属シリコンを、真空下において溶解し、その含有する燐を気化脱燐した後、溶湯から不純物成分を除去するための凝固を行い、鋳塊を得る。
B・上記鋳塊の不純物濃化部を切断、除去する。
C・切断除去後の残部を再溶解し、酸化性雰囲気下で溶湯からボロン及び炭素を酸化除去し、引き続きアルゴンガスあるいはアルゴンと水素の混合ガスを該溶湯に吹き込み、脱酸素する。
D・上記脱酸後の溶湯を、鋳型に鋳込み、一方向凝固を行い鋳塊を得る。
E・一方向凝固で得た鋳塊の不純物濃化部を切断、除去する。
【0008】
上記の工程からも明らかなように、金属シリコンの冶金的精製は複数の精製工程を順次組み合わせたものであり、このような手法は長時間かつ高コストなものになりがちである。
【0009】
また、冶金的精製に原料として用いられる金属シリコンは、天然材料である珪石を炭材で還元して製造されるので、珪石や炭材の純度により金属シリコンの不純物濃度が大きく変動する。
【0010】
さらに、脱ボロンや脱リンに要する時間は金属シリコンの初期不純物濃度によって大幅に変化するため、珪石の産地やロットごとに異なる不純物濃度を有する金属シリコンを精製して目的純度のシリコンを得るために、かなりの時間と労力を必要としていた。
【0011】
そこで、たとえば特許文献2には、金属シリコンに対して、より高純度な原料シリコン(太陽電池用シリコン以外の製造工程で発生したオフ・グレード・シリコン)を混合することで、目標純度の達成を短時間で行う方法が開示されている。
【0012】
しかしながら、「金属シリコンの純度のバラツキをある範囲内に抑えれば、その後の精製工程での負荷が減り、安定して目標純度のシリコンが短い操業時間で得られる」との考えに基づくとはいえ、そのままでも太陽電池用シリコンとして使用可能なオフ・グレード・シリコンを不純物濃度が高いシリコンに混合し、さらにそこから不純物除去を行うのは非効率であるため、好ましい方法ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3325900号
【特許文献2】特開平10−236815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来の問題点を解決することを目的とする。具体的には、本発明はシリコンに含まれる不純物であるボロン、リンおよびメタルのうち2つ以上を同時に(好ましくは3つ同時に)除去するシリコン精製方法を提供することを第1の目的とする。
【0015】
また、本発明は、精製前の原料シリコンに不純物濃度の変動がある場合において、ボロン、リンおよびメタルのうち2つ以上を同時に除去するシリコン精製方法を導入することにより、その後の精製工程での負荷を減らし、目標純度のシリコンを安定に、および/または短い操業時間で得ることができるシリコン精製方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは鋭意検討の結果、アルカリ金属の塩化物およびアルカリ土類金属の塩化物の少なくとも一方を含む材料が溶融されてなる溶融物に固体シリコンを接触させることにより、固体状態のままのシリコンからボロン、リンおよびメタルのうち2つ以上を同時に除去できることを見い出し、本発明を完成させた。
【0017】
すなわち、本発明は、アルカリ金属の塩化物およびアルカリ土類金属の塩化物の少なくとも一方を含む材料が溶融されてなる溶融物に固体シリコンを接触させる工程と、溶融物に接触させた後の固体シリコンの表面を処理する工程とを含むシリコン精製方法である。
【0018】
ここで、本発明のシリコン精製方法において、上記の材料は、アルカリ金属の単体、アルカリ土類金属の単体、アルカリ金属の化合物およびアルカリ土類金属の化合物からなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0019】
また、本発明のシリコン精製方法において、上記の材料は、マグネシウムと、塩化マグネシウムとの混合物であることが好ましい。
【0020】
また、本発明のシリコン精製方法において、上記の材料は、水酸化ナトリウムと、塩化ナトリウムとの混合物であることが好ましい。
【0021】
また、本発明のシリコン精製方法において、上記の材料は、塩化ナトリウムであることが好ましい。
【0022】
また、本発明のシリコン精製方法において、固体シリコンの表面を処理する工程は、固体シリコンの表面を水により洗浄する工程および固体シリコンの表面を酸により処理する工程の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0023】
また、本発明のシリコン精製方法において、上記の酸は、フッ酸、硝酸および塩酸からなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0024】
また、本発明のシリコン精製方法においては、溶融物に接触させる前、または表面処理後の固体シリコンに対して、酸化精錬を行なう脱ボロン工程、真空精錬を行なう脱リン工程および凝固偏析を行なう脱メタル工程からなる群から選択された少なくとも1つの工程を行なうことが好ましい。
【0025】
さらに、本発明のシリコン精製方法は、固体シリコンの表面にアルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方とシリコンとの合金層を形成する工程と、合金層を除去する工程とを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、シリコンの精製を効率的に行なうことができるシリコンの精製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明におけるリーチング工程を含む本発明のシリコンの精製方法の一例のフローチャートである。
【図2】本発明におけるリーチング工程の一例のフローチャートである。
【図3】本発明におけるリーチング工程の一例について図解する模式図である。
【図4】本発明のシリコンの精製方法の他の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0029】
(実施の形態1)
まず、本発明の第1の目的を達成するためのシリコン精製方法の一例(実施の形態1とする)であるリーチング工程について説明する。
【0030】
本発明におけるリーチング工程はアルカリ金属の塩化物およびアルカリ土類金属の塩化物の少なくとも一方を含む材料が溶融されてなる溶融物に固体シリコンを接触させる工程と、その溶融物に接触させた後の固体シリコンの表面を処理する工程とからなる。
【0031】
なお、本発明の第1の目的は上述のように、シリコンに含まれる不純物であるボロン、リンおよびメタルのうち2つ以上を同時に(好ましくは3つ同時に)除去するシリコン精製方法を提供することなので、使用する原料シリコンはボロン、リンおよびメタルのうち1つ以上(好ましくは2つ以上)を太陽電池級シリコン(太陽電池として実用的な効率が得られる純度のシリコン)よりも高い濃度で含むものであればいかなるものであっても良い。
【0032】
よって、本発明の実施の形態においては、原料シリコンとして安価で大量に入手可能な金属シリコンを用いたが、これ以外にも、金属シリコンに対して何らかの精製工程(たとえば酸溶液による洗浄、あるいは一方向凝固など)を経たシリコンを原料シリコンとして使用可能であり、太陽電池用多結晶シリコンウエハ製造工程から発生したシリコン端材なども原料シリコンとして使用可能である。
【0033】
本実施の形態1ならびに以下の実施の形態2および3における原料シリコンは、たとえばシリコン塊を破砕することによって粒子状のシリコン粒子とされることが好ましい。このようにシリコン塊を破砕してシリコン粒子とした場合には、本発明におけるリーチング工程における反応効率を大幅に向上させることができる。
【0034】
なお、シリコン粒子の大きさは特に限定されるものではなく、たとえば、シリコン粒子の粒径の最大値を50μm〜500μmの範囲内に収まるようにすることができる。なお、シリコン粒子の粒径は遠心沈降光透過法やレーザー回折法などの従来公知の測定装置および方法を用いて行なうことができる。
【0035】
また、シリコン塊の破砕はジョークラッシャーによる機械的粉砕や加熱後の急速冷却による破壊など、従来公知の装置および方法を用いて行なうことができる。
【0036】
図2に、本発明におけるリーチング工程の一例のフローチャートを示す。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0037】
まず、ステップS1bに示すように、たとえば上記のようにシリコン塊を破砕して作製したシリコン粒子を所定の容器に収容した後、その容器にアルカリ金属の塩化物およびアルカリ土類金属の塩化物の少なくとも一方を含む材料(フラックス)を投入する。
【0038】
ここで、アルカリ金属の塩化物としては、たとえば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウムおよび塩化セシウムからなる群から選択された少なくとも1種を用いることができ、なかでも、不純物の除去効率を向上させる観点からは、塩化ナトリウムを用いることが好ましい。
【0039】
また、アルカリ土類金属の塩化物としては、たとえば、塩化ベリリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウムおよび塩化バリウムからなる群から選択された少なくとも1種を用いることができ、なかでも、不純物の除去効率を向上させる観点からは、塩化マグネシウムを用いることが好ましい。
【0040】
また、上記のフラックスには、アルカリ金属の塩化物および/またはアルカリ土類金属の塩化物に加えて、アルカリ金属の単体、アルカリ土類金属の単体、アルカリ金属の化合物およびアルカリ土類金属の化合物からなる群から選択された少なくとも1種が含まれていてもよい。
【0041】
ここで、アルカリ金属の単体としては、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0042】
また、アルカリ土類金属の単体としては、たとえば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0043】
また、アルカリ金属の化合物としては、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群から選択された少なくとも1種の塩化物以外の化合物を用いることができ、なかでも、不純物の除去効率を向上させる観点からは、水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。
【0044】
また、アルカリ土類金属の化合物としては、たとえば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群から選択された少なくとも1種の塩化物以外の化合物を用いることができる。
【0045】
次に、ステップS2bに示すように、上記のフラックスとシリコン粒子との混合物をフラックスの融点以上かつシリコンの融点未満の温度にて熱処理することによってフラックスを溶融させて溶融物とし、その溶融物とシリコン粒子とを接触させる。
【0046】
この接触により、シリコン粒子中の不純物がシリコン粒子の粒界やクラックなどを伝ってシリコン粒子の表面に拡散していき、シリコン粒子の表面に移動した不純物はシリコン粒子の表面に接触しているフラックスの溶融物と反応することによってフラックス中に取り込まれる。これにより、シリコン粒子中の不純物をフラックスに取り込むことができるため、シリコン粒子の純度を高めることができる。
【0047】
ここで、シリコン粒子中の不純物としては、たとえば、リン、ホウ素、鉄およびアルミニウムなどを挙げることができ、これらの不純物は上記構成のフラックスの溶融物に好適に取り出すことができる。
【0048】
また、上記のフラックスの溶融物とシリコン粒子との接触時におけるフラックスの溶融物の加熱温度は、シリコン粒子の融点未満の温度であれば適宜設定することができるが、不純物を効率的に除去する観点からは、700℃以上1050℃以下の温度とすることができる。
【0049】
また、上記のフラックスの溶融物とシリコン粒子との接触時間も適宜設定することができるが、不純物を効率的に除去する観点からは、5時間以上24時間以下とすることができる。
【0050】
このステップS2bでは、シリコン粒子の表面に、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方とシリコンとの合金層が形成され、シリコン粒子中に存在していた不純物がこの合金層に凝集されることになる。
【0051】
次に、ステップS3bに示すように、上記のフラックスの溶融物に接触させた後のシリコン粒子を水洗する。これにより、シリコン粒子の表面に付着したフラックスの溶融物を水により洗い流すことができる。なお、水としては、たとえば純水などを用いることができる。また、水洗は1回に限定されず、複数回行なってもよい。さらに、この水洗工程は以下の酸処理工程を行なうことで省略しても良い。
【0052】
次に、ステップS4bに示すように、上記の水洗後のシリコン粒子を酸処理する。これにより、シリコン粒子の表面に析出した不純物を多く含む層をエッチングすることができることから、シリコン粒子から不純物を除去することができる。
【0053】
ここで、酸としては、たとえば、フッ酸、硝酸および塩酸からなる群から選択された少なくとも1種を含むものを用いることができ、たとえば、フッ酸、硝酸および塩酸をそれぞれ単独で用いることができるだけでなく、フッ酸と硝酸との混合物であるフッ硝酸、硝酸と塩酸との混合物である王水なども用いることができる。また、酸処理は1回に限定されず、複数回行なってもよい。
【0054】
このステップS4bでは、シリコン粒子の表面に形成された合金層を除去することによって、シリコン粒子中に存在していた不純物を除去することになる。
【0055】
以下、図3の模式図を参照して、本発明におけるリーチング工程の一例について説明する。
【0056】
まず、ホウ素(B)、リン(P)および鉄(Fe)を多量に不純物として含む低品質のシリコン粒子(Si粒)を収容した容器に、マグネシウム(Mg)と塩化マグネシウム(MgCl2)との混合物であるフラックスを投入する。
【0057】
次に、低品質のSi粒とフラックスとの混合物をSi粒の融点未満の温度に加熱して熱処理することによってフラックスを溶融させて溶融物を作製し、Si粒とフラックスの溶融物とを接触させる。
【0058】
これにより、Si粒の表面にB、PおよびFeなどの不純物が移動し、当該不純物がSi粒の表面に接触するフラックスと反応して、フラックス中に取り込まれる。このとき、Si粒の表面には、シリコンとマグネシウムとの合金からなるSi−Mg合金層が形成され、Si粒の表面のSi−Mg合金層にB、PおよびFeなどの不純物が含まれることになる。
【0059】
また、Si−Mg合金層の表面にはフラックス中のMgが付着してMg層が形成されており、Mg層の表面にはフラックス中のMgCl2が付着してMgCl2層が形成されている。
【0060】
次に、上記のような層構成を有するSi粒を純水で洗浄することによって、Si粒の表面のMg層およびMgCl2層を除去して、Si−Mg合金層を露出させる。
【0061】
その後、Si−Mg合金層が露出したSi粒を酸処理する工程が行なわれるが、酸処理する工程は少なくとも以下の3パターンが考えられる。
【0062】
(1)パターン1
Si−Mg合金層が露出したSi粒をフッ硝酸に浸漬させることにより、B、PおよびFeなどの不純物を含むSi−Mg合金層をエッチングして除去する。これにより、B、PおよびFeなどの不純物の含有量が低減し、純度の高い高品質のSi粒を得ることができる。
【0063】
(2)パターン2
Si−Mg合金層が露出したSi粒を硝酸(硝酸濃度:6質量%)に浸漬させることにより、B、PおよびFeなどの不純物を含むSi−Mg合金層を、シリコンの酸化物からなる酸化層またはシリコンの酸化物を含む合金層に変質させる。
【0064】
その後、上記の酸化層または合金層を表面に有するSi粒をフッ硝酸に浸漬させることにより、上記の酸化層または合金層をエッチングして除去する。これにより、B、PおよびFeなどの不純物の含有量が低減し、純度の高い高品質のSi粒を得ることができる。
【0065】
(3)パターン3
Si−Mg合金層が露出したSi粒をフッ酸(フッ化水素濃度:0.6質量%)に浸漬させることにより、B、PおよびFeなどの不純物を含むSi−Mg合金層をエッチングして除去する。
【0066】
その後、上記のSi−Mg合金層の除去後のSi粒をフッ硝酸に浸漬させることによって、Si粒からさらにB、PおよびFeなどの不純物を除去してSi粒中における不純物の含有量をさらに低減する。これにより、さらに純度の高い高品質のSi粒を得ることができる。高純度で高品質のSi粒を得る観点からは、酸処理する工程のパターンとしてはパターン3で行なうことが好ましい。
【0067】
上記のように、本発明のリーチング工程によれば、ボロン、リンおよびメタルという、従来別々の精製方法を用いて精製していた複数種類の不純物を一括して除去できる上に、その精製温度も従来の冶金的精製に比べて低い温度(シリコン融点以下)でよいので、精製に必要な時間、装置コストおよびランニングコストを低く抑えることができる。
【0068】
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の目的を達成するための、本発明におけるリーチング工程を含むシリコン精製方法の一例(実施の形態2とする)について説明する。
【0069】
すなわち、本実施の形態2に示したシリコン精製方法は、異なる不純物濃度を有するおそれがある金属シリコンを精製対象とし、上記の本発明におけるリーチング工程に、公知の脱ボロン、脱リンおよび脱メタルのうち1種以上の精製工程を組み合わせることにより、それら(脱ボロン、脱リンおよび脱メタルのうち1種以上の)の精製工程での負荷を減らすことができるため、目標純度のシリコンを安定に、および/または短い操業時間で得ることができるシリコン精製方法である。
【0070】
図1に、本発明におけるリーチング工程を含むシリコンの精製方法の一例である実施の形態2のシリコンの精製方法のフローチャートを示す。図1に示されるように、本実施の形態2におけるシリコンの精製方法は、本発明におけるリーチング工程(S1a)、脱ボロン工程(S2a)、脱リン工程(S3a)、脱メタル工程(S4a)およびキャスト工程(S5a)の順序で行なわれる。これらの各工程について、以下詳細に説明する。なお、本実施の形態2において使用する原料シリコンも上記の本実施の形態1と同様のものを用いることができる。
【0071】
<リーチング工程(S1a)>
リーチング工程(S1a)については、上記の実施の形態1と同様の方法を用いることができるため、ここではその説明について省略する。
【0072】
<脱ボロン工程(S2a)>
脱ボロン工程は、シリコンに含まれるボロンを除去する工程であり、ボロンを除去することができるものであれば、ボロン以外の不純物が除去されてもよい。また、ボロンを除去するとは、シリコン中のボロン濃度を低減することをいい、必ずしも、シリコン中のすべてのボロンが除去されることを要するものではない。
【0073】
脱ボロン工程は、たとえば、従来公知の方法により行なうことができる。ボロンを除去する方法としては、たとえば、以下のスラグ法が例示される。スラグ法については、たとえば特開2003−213345号公報に開示されており、以下にその詳細を説明する。
【0074】
スラグ法は、フラックスの添加と後述のノロの除去とを繰り返すことによりシリコンに含まれるボロンを除去する方法である。具体的には、大気圧下において、溶融炉に投入したシリコンを溶融して、この溶融シリコンに酸化ケイ素、アルカリ金属酸化物などの酸化物を添加してできる溶融スラグと、溶融シリコンとを反応させる。上記酸化物を添加する前に、必要に応じてシリコンを追加してもよい。溶融状態にあるスラグとボロンを含むシリコンとの反応によりボロン酸化物が生成する。生成したボロン酸化物は、スラグに溶解して取り込まれるので、溶融シリコンからボロンを分離することができる。ボロン酸化物などを取り込んだ溶融スラグは、ノロと呼ばれ、溶融シリコンの表面に浮遊する。この浮遊したノロにおいてボロン濃度が高くなると、溶融スラグとボロンとの反応効率が低下する。したがって、ノロを坩堝上部に設けた樋などから掻き出して、再度溶融炉に新たな酸化物を添加する。このような酸化物の添加とノロの掻き出しとを繰り返すことによって、シリコンにおけるボロン濃度を低減させる。所望のボロン濃度を達成したところで、溶融炉を傾けて、溶融シリコンを鋳型に出湯し、大気圧下で放冷してシリコン塊を得る。
【0075】
また、ボロンを除去する方法としては、たとえば、以下の酸化精錬も用いることができる。なお、上記のスラグ法は酸化精錬の一種であり、以下においてはフラックスを用いない場合の酸化精錬について説明する。
【0076】
酸化精錬は、シリコンに含まれる被酸化性不純物を酸化して除去する方法である。上記の被酸化性不純物としては、たとえば、炭素やボロンなどが例示される。このような酸化精錬としては、たとえば、溶融シリコンを、アルゴンガス雰囲気下において、酸素および/または水蒸気を添加して被酸化性不純物を酸化することにより除去する方法などが挙げられる。
【0077】
<脱リン工程(S3a)>
脱リン工程は、シリコンに含まれるリンを除去する工程であり、リンを除去することができるものであれば、リン以外の不純物が除去されてもよい。また、リンを除去するとは、シリコン中のリン濃度を低減することをいい、必ずしも、シリコン中のすべてのリンが除去されることを要するものではない。
【0078】
脱リン工程としては、たとえば、従来公知の方法により行なうことができる。リンを除去する方法としては、たとえば、以下の真空法が例示される。
【0079】
上記の真空法は、真空雰囲気下で溶融シリコンから不純物を除去する方法であり、溶融シリコンに含まれる不純物のうち、蒸気圧の高いP、Al、Caなどが蒸発により除去される方法である。
【0080】
この方法では、シリコン蒸気に含まれるリンなどの分圧が同圧同温条件下における溶融シリコン中の不純物濃度よりも大きいことを利用してリンなどの不純物を除去するものである。このような真空法においては、たとえば、反応炉の内部の真空度を1Pa以下程度とし、1412℃〜1800℃程度の温度に溶融シリコンを保持することによって上記の蒸発を行なうことができる。
【0081】
反応炉を真空雰囲気下とする方法は、特に限定されないが、たとえば油回転ポンプおよび油拡散ポンプにより排気する方法を例示することができる。また、加熱する方法は、たとえば、抵抗加熱方式または誘導加熱方式などを用いて加熱すればよい。
【0082】
上記のような条件で所定時間保持し、所望のリン濃度を達成した後、真空雰囲気下において反応炉を傾けて溶融シリコンを鋳型に出湯し、次いで真空雰囲気下で放冷してシリコン塊を得る。得られたシリコン塊は、再度反応炉に投入して溶融させて、真空法による不純物を除去する工程に用いてもよい。このような工程を繰り返すことによって、原料シリコン中のリンを含む不純物を除去することができる。このような真空法としては、たとえば特開平8−48514号公報に開示されている方法を適用することができる。
【0083】
また、リンを除去する方法としては、たとえば、以下の真空精錬も用いることができる。なお、上記の真空法は、以下の真空精錬と実質的に同様である。
【0084】
真空精錬は、原理的には上記の真空法と同様であり、不純物の蒸発速度とシリコンの蒸発速度との相違を利用して、シリコンからリンなどの不純物を除去する工程である。
【0085】
上記の真空精錬などのリンが除去される工程には、真空下において、たとえば水冷銅るつぼなどの反応容器に保持した溶融したシリコンの一部(表面部分)を電子ビームによって溶融して高温の溶融領域を形成することにより、シリコンとPやMnなどの不純物との蒸発速度の違いにより精製速度を向上させる方法を含んでいてもよい。真空精錬における真空度は、たとえば1Pa以下程度とすることができる。また、上記の溶融シリコンの温度が1412℃〜1800℃となるように加熱することが好ましい。
【0086】
<脱メタル工程(S4a)>
脱メタル工程は、シリコンに含まれるFeやAlなどのメタルを除去する工程であり、メタルを除去することができるものであれば、メタル以外の不純物が除去されてもよい。また、メタルを除去するとは、シリコン中のメタル濃度を低減することをいい、必ずしも、シリコン中のすべてのメタルが除去されることを要するものではない。
【0087】
脱メタル工程としては、たとえば、従来公知の方法により行なうことができる。メタルを除去する方法としては、たとえば、以下の凝固偏析が例示される。
【0088】
凝固偏析は、シリコンに含まれる不純物元素の液相と固相とに対する溶解度の差を利用して不純物を偏析させる方法である。シリコンを凝固させた際に、偏析効果により固相から液相に不純物が排出(偏析)されることになる。偏析の程度は、平衡偏析係数K0で示され、FeやAlなどは平衡偏析係数K0が小さく、それぞれ、6.4×10-6(Fe)、2.8×10-3(Al)程度であるので、凝固偏析による除去効率が大きいことが知られている。
【0089】
このような凝固偏析としては、一方向凝固法や、回転偏析法を例示することができ、これらの方法により凝固偏析を行なってシリコンから不純物となるメタルの除去を行なうことができる。
【0090】
一方向凝固は、従来公知の方法であり、凝固偏析を行なうための一般的な精製方法である。一方向凝固においては、たとえば、アルゴン雰囲気下において、溶融シリコンを内壁がシリカなどで構成されるるつぼに投入し、この溶融シリコンをヒーターなどで温度条件を調整しながら、るつぼの底面から表面に向けて順に溶融シリコンを冷却して、凝固シリコンを得る方法である。
【0091】
得られた凝固シリコンは、るつぼの表面側に不純物が偏析した状態となる。このような偏析した不純物部分を除去することにより、シリコンから不純物となるメタルを除去することができる。
【0092】
回転偏析は、たとえば特開昭63−045112号公報に開示されているように、一方向凝固に比較して偏析効率および凝固速度を高めることができる凝固偏析である。一般に、凝固偏析においては、凝固速度が速くなると液相と固相との界面において不純物の濃度が高くなるため、液相中の不純物の拡散が不十分となり、偏析効果が低下する傾向がある。この偏析効果の低下を防止するためには、溶融シリコンにおいて回転運動を加えることが好ましく、このような回転運動を加えた凝固偏析を回転偏析という。回転偏析においては、液相と固相との界面において不純物が高濃度となる層を回転により流動させて、固体表面から高濃度となる層を分離させることができるので、凝固速度が速くとも、良好な偏析効果を期待することができる。
【0093】
回転偏析においては、たとえば、内層に冷却機構を備えたカーボンからなる棒を溶融シリコンに浸漬して、冷却機構によりカーボンからなる棒の表面温度を低下させることにより、該カーボンからなる棒の表面に溶融シリコンを凝固偏析させる。このような、凝固偏析において、上記のような拡散が不十分となる状況が生じるため、このカーボンからなる棒に回転機構を備えておき、上述のように回転運動を加えることによって高い偏析効率で凝固シリコンを得ることができる。このような回転偏析の場合は、精製されたシリコンが上記カーボンからなる棒に析出し、メタルなどの不純物は溶融シリコンに残留することとなるので、一方向凝固のような不純物領域を除去する工程を省略することが可能である。
【0094】
<キャスト工程(S5a)>
キャスト工程は、溶融シリコンを所望の形状に固化する工程であり、たとえば、上記の一方向凝固と同様の方法により行なうことができる。なお、キャスト工程においても、不純物が一部除去される場合もある。
【0095】
キャスト工程を経て得られた精製シリコンは高純度とすることができるため、太陽電池用基板の基板原料となるインゴットとすることができ、該インゴットをブロック形状に裁断し、その後スライス加工を行なうことによって、所望の太陽電池用基板を得ることができる。
【0096】
以上のように、本発明においては、上記のリーチング工程でシリコンからボロン、リンおよびメタルなどの不純物を一括して除去することができるため、脱ボロン工程、脱リン工程および脱メタル工程における処理時間を大幅に短縮することができる。したがって、本発明においては、シリコンの精製を効率的に行なうことができる。
【0097】
なお、本発明においては、リーチング工程(S1a)、脱ボロン工程(S2a)、脱リン工程(S3a)および脱メタル工程(S4a)の順序は特に限定されるものではなく、適宜入れ替えることが可能である。
【0098】
また、本発明においては、リーチング工程(S1a)によって、シリコン中の不純物を効率的に除去することができることから、脱ボロン工程(S2a)、脱リン工程(S3a)、脱メタル工程(S4a)およびキャスト工程(S5a)からなる群から選択された少なくとも1つの工程を省略することもできる。
【0099】
また、本発明においては、上記の各工程の間に上記以外の工程が含まれていてもよい。
(実施の形態3)
図4に、本発明のシリコンの精製方法の他の一例である実施の形態3のシリコンの精製方法のフローチャートを示す。図4に示されるように、本実施の形態3におけるシリコンの精製方法は、リーチング工程(S1a)、脱ボロン工程(S2a)、脱リン+脱メタル工程(S3a,S4a)およびキャスト工程(S5a)の順序で行なわれる。
【0100】
本実施の形態におけるシリコンの精製方法は、実施の形態1のように脱リン工程(S3a)と脱メタル工程(S4a)とを別々の装置で行なうのではなく、脱リン+脱メタル工程(S3a,S4a)において、脱リン工程(S3a)と脱メタル工程(S4a)とを同一の装置で行なうことを特徴としている。
【0101】
脱リン工程(S3a)と脱メタル工程(S4a)とを同一の装置で行なう方法としては、たとえば特開2007−326749公報に開示されるような公知の方法を用いることができる。
【0102】
上記以外の説明は、実施の形態1と同様であるため、その説明については省略する。
【実施例】
【0103】
<実験例1>
まず、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物(ボロン(B)、リン(P)、アルミニウム(Al)および鉄(Fe))の濃度を測定した。その結果、B濃度は3.3ppmw(parts per million weight)であり、P濃度は20.8ppmwであり、Al濃度は820ppmwであり、Fe濃度は2050ppmwであった。
【0104】
次に、上記の金属グレードのSi粒子を500gと、Mg粉末とMgCl2粉末との混合物(Mg:MgCl2=20:80(重量比))からなるフラックス200gとを黒鉛るつぼに収容し、Arガスフローの雰囲気で、フラックスの最高温度が1050℃となるように黒鉛るつぼを加熱してフラックスを溶融させて5時間保持した。
【0105】
そして、上記のフラックスの温度を室温付近まで低下させ、上記の黒鉛るつぼに純水500mlを注いで攪拌した後に20分間静置し、その後に純水を排出する作業を複数回行なって、Si粒子の表面からフラックスを洗い流した。
【0106】
その後、フッ酸(HF、フッ化水素濃度:0.5質量%)と硝酸(HNO3、硝酸濃度:12質量%)との混合液(フッ硝酸)にSi粒子を20時間浸漬させて、Si粒子の表面の酸処理を行なった。
【0107】
そして、再度、Si粒子の表面を純水で洗い流した後に、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物(ボロン(B)、リン(P)、アルミニウム(Al)および鉄(Fe))の濃度を測定した。その結果、B濃度は1.6ppmwであり、P濃度は9.6ppmwであり、Al濃度は53ppmwであり、Fe濃度は30ppmwになっていた(表1の条件2の欄の上段参照)。
【0108】
したがって、上記の実験例1の方法におけるBの除去率は52%であり、Pの除去率は54%であり、Alの除去率は94%であり、Feの除去率は99%であった(表1の条件2の欄の上段参照)。
【0109】
<実験例2>
実験例1と同様に、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は3.3ppmwであり、P濃度は20.8ppmwであり、Al濃度は820ppmwであり、Fe濃度は2050ppmwであった。
【0110】
その後、フラックスにおけるMg粉末とMgCl2粉末との重量比をMg:MgCl2=40:60に変更したこと以外は実験例1と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0111】
その結果、B濃度は2.4ppmwであり、P濃度は11.5ppmwであり、Al濃度は65ppmwであり、Fe濃度は41ppmwになっていた(表1の条件2の欄の上段参照)。
【0112】
したがって、上記の実験例2の方法におけるBの除去率は27%であり、Pの除去率は45%であり、Alの除去率は92%であり、Feの除去率は99%であった(表1の条件2の欄の上段参照)。
【0113】
<実験例3>
実験例1と同様に、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は3.3ppmwであり、P濃度は20.8ppmwであり、Al濃度は820ppmwであり、Fe濃度は2050ppmwであった。
【0114】
その後、Si粒子の投入量を250gとするとともに、フラックスにおけるMg粉末とMgCl2粉末との重量比をMg:MgCl2=40:60に変更したこと以外は実験例1と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0115】
その結果、B濃度は3.0ppmwであり、P濃度は12.5ppmwであり、Al濃度は64ppmwであり、Fe濃度は40ppmwになっていた(表1の条件2の欄の上段参照)。
【0116】
したがって、上記の実験例3の方法におけるBの除去率は9%であり、Pの除去率は40%であり、Alの除去率は92%であり、Feの除去率は98%であった(表1の条件2の欄の上段参照)。
【0117】
<実験例4>
実験例1と同様に、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は3.3ppmwであり、P濃度は20.8ppmwであり、Al濃度は820ppmwであり、Fe濃度は2050ppmwであった。
【0118】
その後、フッ硝酸の代わりに、王水を用いたこと以外は実験例1と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0119】
その結果、B濃度は3.3ppmwであり、P濃度は11.0ppmwであり、Al濃度は136ppmwであり、Fe濃度は700ppmwになっていた(表1の条件4の欄の上段参照)。
【0120】
したがって、上記の実験例4の方法におけるBの除去率は0%であり、Pの除去率は47%であり、Alの除去率は83%であり、Feの除去率は66%であった(表1の条件4の欄の上段参照)。
【0121】
<実験例5>
実験例1と同様に、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は3.3ppmwであり、P濃度は20.8ppmwであり、Al濃度は820ppmwであり、Fe濃度は2050ppmwであった。
【0122】
その後、フラックスにおけるMg粉末とMgCl2粉末との重量比をMg:MgCl2=40:60に変更したこと以外は実験例4と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0123】
その結果、B濃度は1.9ppmwであり、P濃度は6.2ppmwであり、Al濃度は90ppmwであり、Fe濃度は815ppmwになっていた(表1の条件4の欄の上段参照)。
【0124】
したがって、上記の実験例5の方法におけるBの除去率は42%であり、Pの除去率は70%であり、Alの除去率は89%であり、Feの除去率は60%であった(表1の条件4の欄の上段参照)。
【0125】
<実験例6>
実験例1と同様に、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は4.3ppmwであり、P濃度は10.4ppmwであり、Al濃度は825ppmwであり、Fe濃度は1700ppmwであった。
【0126】
その後、フラックスの最高温度が900℃となるように黒鉛るつぼを加熱してフラックスを溶融させるとともに、フッ硝酸の代わりにフッ酸(HF、フッ化水素濃度:0.5質量%)を用いたこと以外は実験例1と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0127】
その結果、B濃度は0.8ppmwであり、P濃度は1.7ppmwであり、Al濃度は30ppmwであり、Fe濃度は150ppmwになっていた(表1の条件1の欄の中段参照)。
【0128】
したがって、上記の実験例6の方法におけるBの除去率は81%であり、Pの除去率は84%であり、Alの除去率は96%であり、Feの除去率は91%であった(表1の条件1の欄の中段参照)。
【0129】
<実験例7>
実験例1と同様に、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は4.3ppmwであり、P濃度は18.2ppmwであり、Al濃度は1867ppmwであり、Fe濃度は1800ppmwであった。
【0130】
その後、フッ酸(HF、フッ化水素濃度:0.5質量%)の代わりに、フッ酸(HF、フッ化水素濃度:5質量%)と硝酸(HNO3、硝酸濃度:6質量%)との混合液(フッ硝酸)を用いたこと以外は実験例6と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0131】
その結果、B濃度は1.4ppmwであり、P濃度は11.0ppmwであり、Al濃度は250ppmwであり、Fe濃度は330ppmwになっていた(表1の条件2の欄の中段参照)。
【0132】
したがって、上記の実験例7の方法におけるBの除去率は67%であり、Pの除去率は40%であり、Alの除去率は87%であり、Feの除去率は82%であった(表1の条件2の欄の中段参照)。
【0133】
<実験例8>
実験例1と同様に、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は4.3ppmwであり、P濃度は18.2ppmwであり、Al濃度は1867ppmwであり、Fe濃度は1800ppmwであった。
【0134】
その後、フッ酸(HF、フッ化水素濃度:0.5質量%)の代わりに、フッ酸(HF、フッ化水素濃度:5質量%)と硝酸(HNO3、硝酸濃度:6質量%)との混合液(フッ硝酸)を用いたこと以外は実験例6と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0135】
その結果、B濃度は1.5ppmwであり、P濃度は12.0ppmwであり、Al濃度は52ppmwであり、Fe濃度は28ppmwになっていた(表1の条件2の欄の中段参照)。
【0136】
したがって、上記の実験例8の方法におけるBの除去率は65%であり、Pの除去率は34%であり、Alの除去率は97質量%であり、Feの除去率は98%であった(表1の条件2の欄の中段参照)。
【0137】
<実験例9>
実験例1と同様に、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は4.3ppmwであり、P濃度は18.2ppmwであり、Al濃度は1867ppmwであり、Fe濃度は1800ppmwであった。
【0138】
その後、フッ酸(HF、フッ化水素濃度:0.5質量%)の代わりに、フッ酸(HF、フッ化水素濃度:5質量%)と硝酸(HNO3、硝酸濃度:12質量%)との混合液(フッ硝酸)を用いたこと以外は実験例6と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0139】
その結果、B濃度は1.9ppmwであり、P濃度は14.5ppmwであり、Al濃度は93ppmwであり、Fe濃度は60ppmwになっていた(表1の条件2の欄の中段参照)。
【0140】
したがって、上記の実験例9の方法におけるBの除去率は56%であり、Pの除去率は20%であり、Alの除去率は95%であり、Feの除去率は97%であった(表1の条件2の欄の中段参照)。
【0141】
<実験例10>
実験例1と同様に、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は6.6ppmwであり、P濃度は21.7ppmwであり、Al濃度は1967ppmwであり、Fe濃度は2233ppmwであった。
【0142】
その後、フッ酸(HF、フッ化水素濃度:0.5質量%)の代わりに、フッ酸(HF、フッ化水素濃度:5質量%)と硝酸(HNO3、硝酸濃度:12質量%)との混合液(フッ硝酸)を用いたこと以外は実験例6と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0143】
その結果、B濃度は4.5ppmwであり、P濃度は11.0ppmwであり、Al濃度は47ppmwであり、Fe濃度は22ppmwになっていた(表1の条件2の欄の中段参照)。
【0144】
したがって、上記の実験例10の方法におけるBの除去率は32%であり、Pの除去率は49%であり、Alの除去率は98%であり、Feの除去率は99%であった(表1の条件2の欄の中段参照)。
【0145】
<実験例11>
実験例1と同様に、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は4.3ppmwであり、P濃度は18.2ppmwであり、Al濃度は1867ppmwであり、Fe濃度は1800ppmwであった。
【0146】
その後、フッ酸(HF、フッ化水素濃度:0.5質量%)を用いた酸処理ではなく、硝酸(HNO3、硝酸濃度:6質量%)による酸処理後にフッ酸(HF、フッ化水素濃度:5質量%)による酸処理を行なったこと以外は実験例6と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0147】
その結果、B濃度は3.9ppmwであり、P濃度は17.0ppmwであり、Al濃度は158ppmwであり、Fe濃度は275ppmwになっていた(表1の条件3の欄の中段参照)。
【0148】
したがって、上記の実験例11の方法におけるBの除去率は9%であり、Pの除去率は7%であり、Alの除去率は92%であり、Feの除去率は85%であった(表1の条件3の欄の中段参照)。
【0149】
<実験例12>
実験例1と同様に、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は5.9ppmwであり、P濃度は19.0ppmwであり、Al濃度は1367ppmwであり、Fe濃度は1933ppmwであった。
【0150】
その後、フッ酸(HF、フッ化水素濃度:0.5質量%)を用いた酸処理ではなく、王水による処理を行なったこと以外は実験例6と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0151】
その結果、B濃度は5.1ppmwであり、P濃度は10.0ppmwであり、Al濃度は190ppmwであり、Fe濃度は930ppmwになっていた(表1の条件4の欄の中段参照)。
【0152】
したがって、上記の実験例12の方法におけるBの除去率は14%であり、Pの除去率は47%であり、Alの除去率は86%であり、Feの除去率は52%であった(表1の条件4の欄の中段参照)。
【0153】
<実験例13>
実験例1と同様に、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は6.6ppmwであり、P濃度は21.7ppmwであり、Al濃度は1967ppmwであり、Fe濃度は2233ppmwであった。
【0154】
その後、フラックスにおけるMg粉末とMgCl2粉末との重量比をMg:MgCl2=40:60に変更したこと以外は実験例9と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0155】
その結果、B濃度は5.3ppmwであり、P濃度は14.5ppmwであり、Al濃度は61ppmwであり、Fe濃度は25ppmwになっていた(表1の条件2の欄の中段参照)。
【0156】
したがって、上記の実験例13の方法におけるBの除去率は20%であり、Pの除去率は33%であり、Alの除去率は97%であり、Feの除去率は99%であった(表1の条件2の欄の中段参照)。
【0157】
<実験例14>
実験例1と同様に、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は6.6ppmwであり、P濃度は21.7ppmwであり、Al濃度は1967ppmwであり、Fe濃度は2233ppmwであった。
【0158】
その後、Si粒子の投入量を250gとするとともに、フラックスにおけるMg粉末とMgCl2粉末との重量比をMg:MgCl2=40:60に変更したこと以外は実験例9と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0159】
その結果、B濃度は3.2ppmwであり、P濃度は8.3ppmwであり、Al濃度は39ppmwであり、Fe濃度は17ppmwになっていた(表1の条件2の欄の中段参照)。
【0160】
したがって、上記の実験例14の方法におけるBの除去率は52%であり、Pの除去率は62%であり、Alの除去率は98%であり、Feの除去率は99%であった(表1の条件2の欄の中段参照)。
【0161】
<実験例15>
実験例1と同様に、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は7.4ppmwであり、P濃度は23.0ppmwであり、Al濃度は1900ppmwであり、Fe濃度は2133ppmwであった。
【0162】
その後、フラックスにおけるMg粉末とMgCl2粉末との重量比をMg:MgCl2=5:95に変更し、フラックスの最高温度が850℃となるように黒鉛るつぼを加熱してフラックスを溶融させるとともに、フッ硝酸の代わりにフッ酸(HF、フッ化水素濃度:0.5質量%)を用いたこと以外は実験例1と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0163】
その結果、B濃度は6.3ppmwであり、P濃度は20.0ppmwであり、Al濃度は260ppmwであり、Fe濃度は320ppmwになっていた(表1の条件1の欄の下段参照)。
【0164】
したがって、上記の実験例15の方法におけるBの除去率は15%であり、Pの除去率は13%であり、Alの除去率は86%であり、Feの除去率は85%であった(表1の条件1の欄の下段参照)。
【0165】
<実験例16>
実験例1と同様に、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は7.4ppmwであり、P濃度は23.0ppmwであり、Al濃度は1900ppmwであり、Fe濃度は2133ppmwであった。
【0166】
その後、フラックスにおけるMg粉末とMgCl2粉末との重量比をMg:MgCl2=10:90に変更したこと以外は実験例15と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0167】
その結果、B濃度は6.3ppmwであり、P濃度は21.0ppmwであり、Al濃度は200ppmwであり、Fe濃度は180ppmwになっていた(表1の条件1の欄の下段参照)。
【0168】
したがって、上記の実験例16の方法におけるBの除去率は15%であり、Pの除去率は9%であり、Alの除去率は89%であり、Feの除去率は92%であった(表1の条件1の欄の下段参照)。
【0169】
<実験例17>
実験例1と同様に、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は7.4ppmwであり、P濃度は23.0ppmwであり、Al濃度は1900ppmwであり、Fe濃度は2133ppmwであった。
【0170】
その後、フラックスにおけるMg粉末とMgCl2粉末との重量比をMg:MgCl2=20:80に変更したこと以外は実験例15と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0171】
その結果、B濃度は7.4ppmwであり、P濃度は21.0ppmwであり、Al濃度は240ppmwであり、Fe濃度は210ppmwになっていた(表1の条件1の欄の下段参照)。
【0172】
したがって、上記の実験例17の方法におけるBの除去率は0%であり、Pの除去率は9%であり、Alの除去率は87%であり、Feの除去率は90%であった(表1の条件1の欄の下段参照)。
【0173】
<実験例18>
まず、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物(ボロン(B)、リン(P)、アルミニウム(Al)および鉄(Fe))の濃度を測定した。その結果、B濃度は2.1ppmwであり、P濃度は2.1ppmwであり、Al濃度は977ppmwであり、Fe濃度は697ppmwであった。
【0174】
次に、上記の金属グレードのSi粒子を500gと、NaOH粉末とNaCl粉末との混合物(NaOH:NaCl=30:70(重量比))からなるフラックス200gをマッフル炉に収容し、所定時間だけ乾燥させた後に、Arガスフローの雰囲気で、フラックスの最高温度が950℃となるようにマッフル炉を加熱してフラックスを溶融させて10時間保持した。
【0175】
その後、塩酸(塩化水素濃度:7質量%)にSi粒子を浸漬させて、Si粒子の表面の酸処理を行なった。
【0176】
そして、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物(ボロン(B)、リン(P)、アルミニウム(Al)および鉄(Fe))の濃度を測定した。その結果、B濃度は1.8ppmwであり、P濃度は0.5ppmwであり、Al濃度は770ppmwであり、Fe濃度は550ppmwになっていた(表2の上段参照)。
【0177】
したがって、上記の実験例18の方法におけるBの除去率は14%であり、Pの除去率は76%であり、Alの除去率は21%であり、Feの除去率は21%であった(表2の上段参照)。
【0178】
<実験例19>
まず、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は2.1ppmwであり、P濃度は2.1ppmwであり、Al濃度は977ppmwであり、Fe濃度は697ppmwであった。
【0179】
その後は、塩酸(塩化水素濃度:7質量%)で酸処理を行なった後に、フッ酸(フッ化水素濃度:0.5質量%)でも酸処理を行なったこと以外は実施例18と同様にして、Si粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0180】
そして、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は2.1ppmwであり、P濃度は0.5ppmwであり、Al濃度は220ppmwであり、Fe濃度は690ppmwになっていた(表2の上段参照)。
【0181】
したがって、上記の実験例19の方法におけるBの除去率は0%であり、Pの除去率は76%であり、Alの除去率は77%であり、Feの除去率は1%であった(表2の上段参照)。
【0182】
<実験例20>
まず、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は2.1ppmwであり、P濃度は2.1ppmwであり、Al濃度は977ppmwであり、Fe濃度は697ppmwであった。
【0183】
その後は、フラックスとしてNaClのみを用い、塩酸(塩化水素濃度:7質量%)による酸処理の代わりに純水による水洗を行なったこと以外は実施例18と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0184】
そして、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は0.8ppmwであり、P濃度は1.8ppmwであり、Al濃度は760ppmwであり、Fe濃度は700ppmwになっていた(表2の下段参照)。
【0185】
したがって、上記の実験例20の方法におけるBの除去率は62%であり、Pの除去率は14%であり、Alの除去率は22%であり、Feの除去率は0%であった(表2の下段参照)。
【0186】
<実験例21>
まず、粒径が50μm〜400μmの金属グレードのSi粒子を用意し、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は2.1ppmwであり、P濃度は2.1ppmwであり、Al濃度は977ppmwであり、Fe濃度は697ppmwであった。
【0187】
その後は、純水による水洗を行なった後に、フッ酸(フッ化水素濃度:0.5質量%)による酸処理を行なったこと以外は実施例20と同様にしてSi粒子から不純物の除去を行ない、不純物濃度の測定を行なった。
【0188】
そして、ICP発光分析により、そのSi粒子に含まれる不純物の濃度を測定した。その結果、B濃度は1.7ppmwであり、P濃度は1.7ppmwであり、Al濃度は390ppmwであり、Fe濃度は220ppmwになっていた(表2参照)。
【0189】
したがって、上記の実験例21の方法におけるBの除去率は19%であり、Pの除去率は19%であり、Alの除去率は60%であり、Feの除去率は68%であった(表2参照)。
【0190】
【表1】

【0191】
【表2】

【0192】
上記のように、実験例1〜21においては、ボロン、リン、アルミニウムおよび鉄からなる群から選択された少なくとも3種の不純物を除去することが確認できた。
【0193】
したがって、実験例1〜21の方法をシリコンの精製方法に用いることにより、脱ボロン工程、脱リン工程および脱メタル工程の処理時間を短縮することができるため、シリコンの精製を効率的に行なうことができると考えられる。
【0194】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明は、特にシリコンからの不純物の除去およびシリコンの精製に好適に利用することができる。特に金属シリコンからの太陽電池用シリコン精製に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属の塩化物およびアルカリ土類金属の塩化物の少なくとも一方を含む材料が溶融されてなる溶融物に固体シリコンを接触させる工程と、
前記溶融物に接触させた後の固体シリコンの表面を処理する工程とを含む、シリコン精製方法。
【請求項2】
前記材料は、アルカリ金属の単体、アルカリ土類金属の単体、アルカリ金属の化合物およびアルカリ土類金属の化合物からなる群から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載のシリコン精製方法。
【請求項3】
前記材料は、マグネシウムと、塩化マグネシウムとの混合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載のシリコン精製方法。
【請求項4】
前記材料は、水酸化ナトリウムと、塩化ナトリウムとの混合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載のシリコン精製方法。
【請求項5】
前記材料は、塩化ナトリウムであることを特徴とする、請求項1または2に記載のシリコン精製方法。
【請求項6】
前記固体シリコンの表面を処理する工程は、前記固体シリコンの表面を水により洗浄する工程および前記固体シリコンの表面を酸により処理する工程の少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のシリコン精製方法。
【請求項7】
前記酸は、フッ酸、硝酸および塩酸からなる群から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項6に記載のシリコン精製方法。
【請求項8】
前記溶融物に接触させる前、または前記表面処理後の固体シリコンに対して、
酸化精錬を行なう脱ボロン工程、真空精錬を行なう脱リン工程および凝固偏析を行なう脱メタル工程からなる群から選択された少なくとも1つの工程を行なうことを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のシリコン精製方法。
【請求項9】
固体シリコンの表面にアルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方とシリコンとの合金層を形成する工程と、前記合金層を除去する工程とを含む、シリコン精製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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