説明

シリコーン含有ポリウレタンフォーム

本発明は剥離黒鉛を含有する有機ケイ素化合物をベースとする発泡性調製物、シリコーン含有ポリウレタンフォーム並びにその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離黒鉛を含有する有機ケイ素化合物をベースとする発泡性調製物、シリコーン含有ポリウレタンフォーム並びにその製造方法に関する。
【0002】
ポリウレタンフォームは既に公知である。ポリウレタンフォーム(PUフォーム)の大きな問題は、その固有の可燃性である。従って、ここ数十年間に、ポリマーフォームの遅燃性を改善する試みが不足することはなかった。ハロゲン又はリン含有の難燃剤を添加する他に、多数の無機充填剤、例えば三水酸化アルミニウムも前記フォームのポリマーマトリックス中に組み込まれた。
【0003】
PUフォームを難燃加工する他の方法は、剥離黒鉛の使用であり、この剥離黒鉛は、熱の作用下での体積増加により前記表面を閉鎖し、それによりその下にあるポリマーマトリックスの燃焼プロセスを著しく遅らせる。このために、例えばUS- A 4,698,369が参照される。しかしながら、比較的耐燃性のPUフォームを製造するためには大抵はかなりの量の剥離黒鉛が必要であり、それにより前記フォームの機械的特性が明らかに悪化するという欠点がある。さらに、それでいて燃焼を妨げるだけで、完全に不燃性のPUフォームは得ることはできない。
【0004】
シリコーン−ポリウレタン−軟質フォームによって、不燃性のPU軟質フォームを得る全く異なる方法がとられた。この場合、例えば標準PUフォーム中に使用された、良好に燃焼可能なのポリオール成分を、燃焼しないOH末端シロキサンに置き換える。
【0005】
シリコーン−ポリウレタン−コポリマー、つまりポリウレタン単位及び/又は尿素単位を含有するポリシロキサンを使用することにより、新規でかつそのつどの適応に関して正確に調整された特性の組合せを有する不燃性のフォームを開発することができる。
【0006】
DE-A 41 08 326にはシリコーンフォームが記載されており、前記シリコーンフォームはヒドロキシアルキル官能性ポリシロキサンとジイソシアナート又はポリイソシアナートとの反応により製造される。WO-A 03/080696にはシリコーンフォームが記載されており、前記シリコーンフォームは所定のヒドロキシアルキル官能性及び/又はアミノアルキル官能性ポリシロキサンと、ジイソシアナート又はポリイソシアナートとから製造される。
【0007】
こうして得られたシリコーン−ポリウレタンフォームの全ては、不燃性の共通の特徴を有するが、熱の作用下で著しく滴り落ちる傾向がある。
【0008】
本発明の主題は、
(A) 少なくとも1つのイソシアナート基を有するオルガノポリシロキサンと
(B) 剥離黒鉛と
を含有する発泡性調製物である。
【0009】
本発明の範囲内で、オルガノポリシロキサンの概念には、ポリマー、オリゴマー並びにダイマーのシロキサンも一緒に包含される。
【0010】
有利に本発明により使用されるシロキサン(A)は、式
a1b(R2O)cSiO4-a-b-c/2 (I)
[式中、
Rは、同じ又は異なることができ、1価の、SiC結合した、場合により置換された炭化水素基を表し、前記炭化水素基は酸素原子により中断されていても良い、
1は、同じ又は異なることができ、少なくとも1つのイソシアナート基を有する、1価の、場合により置換された炭化水素基を表し、前記炭化水素基はヘテロ原子によって中断されていても良い、
2は、同じ又は異なることができ、1価の、場合により置換された炭化水素基を表し、前記炭化水素基はヘテロ原子によって中断されていても良い、
aは0、1、2又は3を表し、
bは0、1、2又は3を表し、及び
cは0、1、2又は3を表し、
但し、a+b+cの合計は≦3であり、かつbが0ではない少なくとも1つの単位が存在する]の単位を含むものである。
【0011】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基;アルケニル基、例えばビニル基及びアリル基;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基;アリール基、例えばフェニル基及びナフチル基;アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基;アラルキル基、例えばベンジル基、α−及びβ−フェニルエチル基である。
【0012】
有利に、基Rは、1価の、場合により置換された1〜40個の炭素原子を有する炭化水素基、特に有利に1〜30個の炭素原子を有する炭化水素基、殊に1〜6個の炭素原子を有する炭化水素基である。
【0013】
有利に、基R1は、式
−Y−A−C(O)−NH−Z−NCO (II)
[式中、Y及びZは、相互に無関係に、2価の、場合により置換された炭化水素基を表し、前記炭化水素基はヘテロ原子で中断されていても良く、Aは、−O−又は−NR3−の意味を有し、R3は、水素原子又は1価の、場合により置換された炭化水素基を表す]である。
【0014】
有利に、基R3は水素原子である。
【0015】
有利に、基Aは基−NR3−であり、R3は上記の意味と同じである。
【0016】
有利に、Yは2価の、脂肪族の、場合により−NCOで置換された炭化水素基であり、特に有利にプロピレン基及びメチルオキシエチレン基、殊にプロピレン基である。
【0017】
有利に、Zは2価の、芳香族の、場合により−NCOで置換された炭化水素基であり、特に有利にトルオリレン(Toluolylen)基及びメチレン−ビス−フェニレン基、殊にトルオリレン基である。
【0018】
基R2の例は、基Rについて示した例である。
【0019】
aの値は、有利に2である。
【0020】
bの値は、有利に0又は1である。
【0021】
cの値は、有利に0である。
【0022】
本発明により使用されるシロキサン(A)は、有利に分枝した及び線状のシロキサン、特にほぼ線状のシロキサンである。
【0023】
特に有利に、前記シロキサン(A)は、式(I)の単位からなるシロキサンである。
【0024】
本発明により使用されるシロキサン(A)は、有利に0.1〜20質量%、特に有利に0.1〜10質量%のイソシアナート含有率を有する。
【0025】
本発明により使用されるシロキサン(A)は、そのつど25℃で、有利に10〜10000mPas、特に有利には50〜500mPasの粘度を有する。
【0026】
本発明により使用されるシロキサン(A)は市販の生成物であるか、もしくはそのケイ素化学において一般に行われる方法により製造することができる。
【0027】
有利に、本発明により使用されるシロキサン(A)は、α,ω−アミノアルキル官能化された及び/又はα,ω−ヒドロキシ官能化されたシロキサン(A1)とポリイソシアナートとの反応により製造される。
【0028】
前記シロキサン(A1)と前記ポリイソシアナートとの反応の際に、ポリイソシアナートは有利に過剰量で使用されるため、前記オルガノポリシロキサン(A1)のアミノアルキル基もしくはヒドロキシ官能基1Mol当たり少なくとも1Molの、特に有利に2〜10Molのイソシアナート単位が使用される。このイソシアナートのモル過剰量は、有利にフォーム形成の際に水との反応のために消費される。
【0029】
剥離黒鉛は本発明の範囲内で、1種又は複数種の剥離剤を含有する黒鉛である。剥離黒鉛はこの技術において公知の方法により製造される。一般に、結晶層を開放させるために、黒鉛をまず酸化剤、例えば硝酸塩、クロム酸塩、過酸化物で変性するか又は電気分解により変性し、次いで硝酸塩又は硫酸塩を前記黒鉛内にインターカレーションするか又は侵入させる。熱の作用下で、剥離黒鉛の層は、熱分解により相互に引き離される。膨張が起こる温度は、開始温度と言われ、剥離黒鉛の種類に依存する。熱の作用下での体積増加は膨張率といわれ、剥離黒鉛の種類並びに作用させる温度に依存し、一般に温度の増加と共に増大する。
【0030】
本発明により使用される剥離黒鉛(B)は、1000℃でそれぞれ、有利に50〜500cm3/g、特に有利に100〜400cm3/gの膨張率を有する。
【0031】
本発明により使用される剥離黒鉛(B)の場合には、開始温度は有利に150〜300℃、特に有利に180〜250℃の範囲内にある。
【0032】
本発明により使用された剥離黒鉛(B)は、有利に85〜99.9質量%、特に90〜99.9質量%、殊に95〜99質量%の炭素含有率を有する。
【0033】
本発明により使用された剥離黒鉛(B)は、有利に0.05〜0.3mm、特に有利に0.1〜0.25mmの粒度を有する。
【0034】
本発明により使用された剥離黒鉛(B)は、有利に0.01〜5質量%、特に有利に0.1〜2質量%の灰分含有率を有する。
【0035】
本発明により使用された剥離黒鉛(B)は、有利に0.01〜2質量%、特に有利に0.1〜1質量%の湿分含有率を有する。
【0036】
本発明による調製物は、剥離黒鉛(B)を、シロキサン(A)100質量部に対してそれぞれ、有利に0.1〜50質量部、特に有利には0.1〜25質量部、殊に0.1〜15質量部の量で含有する。
【0037】
前記シロキサン(A)及び剥離黒鉛(B)の他に、本発明による調製物は他の材料、例えばイソシアナート(C)、充填剤(D)、乳化剤(E)、物理的発泡剤(F)、触媒(G)、化学的発泡剤(H)及び添加剤(I)を含有することができる。
【0038】
場合により使用されるイソシアナート(C)として、公知の全てのジイソシアナート又はポリイソシアナートを使用できる。
【0039】
有利に、一般式
Q(NCO)n (III)
[式中、Qはn−官能性の、場合により置換された炭化水素基であり、nは少なくとも2の整数、有利に2〜10の整数、特に有利に2又は3、殊に2を表す]
のポリイソシアナート(C)が使用される。
【0040】
有利に、Qは、場合により置換された4〜30個の炭素原子を有する炭化水素基、特に有利に6〜15個の炭素原子を有する炭化水素基である。
【0041】
ジイソシアナート(C)の例は、ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)(これは粗製MDI又は工業用MDIの形でも、純粋な4,4′−もしくは2,4′−異性体又はその調製物の形でもある)、トリレンジイソシアナート(TDI)(これは異なる位置異性体の形である)、ジイソシアナトナフタレン(NDI)、イソホロンジイソシアナト(IPDI)、1,3−(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(TMXDI)又はヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)である。ポリイソシアナート(C)の例は、ポリマーのMDI(p−MDI)、トリフェニルメタントリイソシアナート又は上記イソシアナートのビウレット−又はイソシアヌラート三量体である。前記ジイソシアナート及び/又はポリイソシアナート(C)は、単独又は混合物で使用することができる。
【0042】
特に有利に、場合により使用されたイソシアナート(C)は、式
OCN−Z′−NCO (IV)
[式中、Z′は、Zについて前記した意味を有する]である。
【0043】
特に、イソシアナート(C)は、シロキサン(A)の製造の際に使用されたものと同じである。その際、所望の場合に、シロキサン(A)の製造の際にイソシアナートを同様に過剰量で使用し、得られた混合物を有利に本発明の調製物の製造のために同様に更に使用することができる。
【0044】
本発明による調製物はイソシアナート(C)を含有する場合、これはシロキサン(A)100質量部に対してそれぞれ、有利に0.1〜50質量部、特に有利には0.1〜40質量部、殊に0.1〜30質量部の量である。
【0045】
本発明による調製物は、有利にイソシアナート(C)を含有する。
【0046】
充填剤(D)を使用する場合、全ての非強化性充填剤、つまり50m2/gまでのBET表面積を有する充填剤、例えばチョーク、又は強化性充填剤、つまり少なくとも50m2/gのBET表面積を有する充填剤、例えばカーボンブラック、沈降ケイ酸又は熱分解ケイ酸であることができる。特に疎水性、並びに親水性の熱分解ケイ酸がこの場合有利な充填剤である。本発明の特に有利な実施態様の場合に、表面がトリメチルシリル基で変性されている疎水性熱分解ケイ酸が使用される。使用された充填剤(D)、特に熱分解ケイ酸は、この場に多様な機能を担うことができる。前記充填剤は、発泡性混合物の粘度を調節するために使用することもできる。特に、前記充填剤は、発泡の間の「保護機能」を担い、より良好なフォーム構造を有するフォームを生じさせることができる。最終的に、生じるフォームの機械的特性は、充填剤(D)の使用により、特に熱分解ケイ酸の使用により、決定的に改善することもできる。
【0047】
本発明による調製物は、充填剤(D)を含有する場合、これはシロキサン(A)100質量部に対してそれぞれ、有利に0.1〜30質量部、特に有利には0.1〜20質量部、殊に0.1〜15質量部の量である。
【0048】
本発明による調製物は、有利に充填剤(D)を含有する。
【0049】
多くの場合、この発泡性調製物には乳化剤(E)が添加されているのが有利である。気泡安定剤としても利用される適当な乳化剤(E)として、例えば慣用のポリウレタンフォームの製造のためにも使用される、ポリマー側鎖により変性された全ての市販のシリコーンオリゴマーを使用することができる。
【0050】
乳化剤(E)を使用する場合、これは前記発泡性調製物の全質量に対してそれぞれ、有利に6質量%まで、特に有利に0.3〜3質量%の量である。
【0051】
本発明による調製物は、有利に乳化剤(E)を含有する。
【0052】
更に、前記調製物は、物理的発泡剤として利用することができる化合物(F)も含有することができる。成分(F)として、有利に低分子量の炭化水素、例えば、プロパン、ブタン又はシクロペンタン、ジメチルエーテル、フッ素化炭化水素、例えば1,1−ジフルオロエタン又は1,1,1,2−テトラフルオロエタン又はCO2が使用される。このフォーム製造は、この場合、場合により物理的発泡剤(F)によるだけで行うことができる。大抵は、このフォーム形成は特にイソシアナト官能性シロキサンを化学的発泡剤としての成分(H)と反応させることにより行われる。しかしながら、この場合でも、低い密度を有するフォームを得るために、物理的発泡剤(F)の使用を、化学的発泡剤としての成分(H)と組み合わせることも有利である。
【0053】
本発明による調製物は、成分(F)を含有する場合、これはシロキサン(A)100質量部に対してそれぞれ、有利に0.1〜30質量部、特に有利には0.1〜20質量部、殊に0.1〜15質量部の量で含有する。
【0054】
本発明による調製物は、有利に物理的発泡剤(F)を含有しない。
【0055】
更に、本発明による発泡性調製物は、フォームの硬化を促進する触媒(G)を含有することができる。触媒(G)として、特に有機スズ化合物が適している。例えば、ジブチルスズジラウラート、ジオクチルスズジラウラート、ジブチルスズジアセタート、ジブチルスズジオクトアート又はジブチルスズ−ビス−(ドデシルメルカプチド)である。更に、スズ不含の触媒(G)、例えば有機チタン酸塩、鉄触媒、例えば有機鉄化合物、有機及び無機の重金属化合物又はアミンも挙げられる。有機鉄化合物の例として、鉄(III)アセチルアセトナートが挙げられる。アミンの例は、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N−ビス−(N,N−ジメチル−2−アミノエチル)−エチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルフェニルアミン、ビス−N,N−ジメチルアミノエチルエーテル、N,N−ジメチル−2−アミノエタノール、N,N−ジメチルアミノピリジン、N,N,N,N−テトラメチル−ビス−(2−アミノエチル)メチルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン、N−エチルモルホリン又はN,N′−ジメチルアミノピリジンである。
【0056】
触媒(G)は単独で又は混合物として使用することができる。場合により、シロキサン(A)の製造の際に使用された触媒を同時に触媒(G)としてフォームの硬化のために利用することができる。
【0057】
触媒(G)を使用する場合、本発明による発泡性調製物の全質量に対してそれぞれ、有利に0.1〜6.0質量%、特に有利に0.3〜4.0質量%の量である。
【0058】
本発明による調製物は、有利に充填剤(G)を含有する。
【0059】
化学的発泡剤(H)として、原則として水も、有利にイソシアナートに対して反応性の少なくとも1つの官能基を有する全ての化合物も利用することができる。
【0060】
成分(H)の例は、アミノアルキル官能性又はヒドロキシ官能性のシロキサン(A1)、モノマーのアルコール、モノマーのジオール、例えばグリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、モノマーのオリゴオール、例えばペンタエリトリット又はトリヒドロキシメチルエタン、1つ、2つ以上のヒドロキシル基を有するオリゴマー又はポリマーのアルコール、例えばエチレングリコール又はプロピレングリコール、水、1つ、2つ以上のアミノ官能基を有するモノマーのアミン、例えばエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン並びに1つ、2つ以上のアミノ官能基を有するオリゴマー又はポリマーのアミンである。
【0061】
成分(H)を使用する場合、ヒドロキシ化合物が有利であり、その際、水が特に有利である。
【0062】
有利に、本発明による調製物は成分(H)を含有する。
【0063】
本発明による調製物は、成分(H)を、シロキサン(A)100質量部に対してそれぞれ、有利に0.1〜20質量部、特に有利には0.1〜15質量部、殊に0.1〜10質量部の量で含有する。
【0064】
更に、添加物(I)として、整泡剤、チキソトロープ剤及び/又は軟化剤の添加も有利である。耐燃性のさらなる改善のために、発泡性調製物にさらに難燃剤、例えばリン含有化合物、特にリン酸塩又はスルホン酸塩、並びにハロゲン化されたポリエステル及びポリオール又はクロロパラフィンも添加することができる。
【0065】
添加物(I)を使用する場合、これはシロキサン(A)100質量部に対してそれぞれ、有利に0.1〜30質量部、特に有利には0.1〜20質量部、殊に0.1〜15質量部の量である。
【0066】
本発明による調製物は、有利に添加剤(I)を含有しない。
【0067】
本発明により使用される成分は、それぞれ、前記成分の1種類でも、それぞれの成分の少なくとも2種類からなる混合物であることができる。
【0068】
有利に、本発明の調製物は、次の成分を含有する調製物である:
(A) 式(I)の単位を有するシロキサン、
(B) 剥離黒鉛、
場合により
(C) イソシアナート、
場合により
(D) 充填剤、
場合により
(E) 乳化剤、
場合により
(F) 物理的発泡剤、
場合により
(G) 触媒、
(H) 化学的発泡剤及び
場合により
(I) 添加物。
【0069】
本発明による調製物は、成分(A)、(B)並びに場合により1種以上の成分(C)〜(I)の他に、有利に他の成分を含有しない。
【0070】
本発明による調製物は、任意のかつ公知の方法、例えば単なる混合により製造することができ、その際、個々の成分の予備混合物を製造することもできる。この場合、1コンポーネント系、2コンポーネント系を製造することもできる。
【0071】
本発明による調製物が、有利である2コンポーネント系の形で準備される場合、本発明による発泡性調製物の両方のコンポーネントは、任意の組み合わせ及び量比ですべての成分を含有することができ、ただし、一つのコンポーネントは成分(A)及び(H)を同時に含有しない。
【0072】
例えば、本発明による調製物の製造のために、有利に成分(A)、成分(B)、場合により成分(C)、場合により成分(D)、場合により成分(F)及び場合により成分(I)を含有する混合物をコンポーネント1として調製し、成分(H)、場合により成分(E)及び場合により成分(G)を含有するコンポーネント2を調製し、これらを次いで本発明によるフォームの製造のために相互に混合する。
【0073】
しかしながら、望ましい場合には、本発明による調製物の製造のためにすべての成分を1つの行程で相互に混合することもできる。この1コンポーネント系の場合、フォーム形成は、有利に物理的発泡剤(F)の使用により行われる。前記フォームの適用後に、これは次いで空気水分との反応によりすぐに硬化される。
【0074】
本発明による調製物は、有利に液状〜粘性であり、有利に500〜20000mPas、特に有利に1000〜10000mPasの粘度を有する。
【0075】
本発明による調製物は、有利に、フォームの製造のために、特に有利に硬質フォーム又は軟質フォームの製造のために、特に軟質フォームの製造のために利用される。
【0076】
本発明の他の主題は、少なくとも1つのイソシアナート基を有するオルガノポリシロキサン(A)を、剥離黒鉛(B)及び化学的発泡剤(H)と混合し、かつ反応させることを特徴とする、シリコーン含有ポリウレタンフォームの製造方法である。
【0077】
本発明による方法の有利な実施態様の場合には、少なくとも1つのイソシアナート基を有するオルガノポリシロキサン(A)、剥離黒鉛(B)、触媒(G)及び化学的発泡剤(H)を混合し、かつ反応させる。
【0078】
本発明による方法は、有利に0〜100℃、特に有利に10〜40℃、殊に15〜30℃の温度で実施される。
【0079】
本発明による方法は、有利に周囲大気の圧力、つまり約900〜1100hPaで実施される。
【0080】
本発明による方法の場合、有利にCO2が遊離され、これは大部分が本発明によるフォーム構造の構築のために利用される。
【0081】
本発明による他の主題は、剥離黒鉛(B)を含有するシリコーン含有ポリウレタンフォームである。
【0082】
本発明によるフォームは、フォームの全質量に対してそれぞれ、剥離黒鉛を有利に0.05〜30質量%、特に有利に0.1〜20質量%、殊に0.1〜15質量%の量で含有する。
【0083】
本発明によるフォームは、微細な連続気泡のフォーム構造を特徴とする。この機械的特性は、市販で入手可能なPUフォームと同等である。
【0084】
本発明によるフォームは、有利に50〜500kg/m3、特に有利に50〜200kg/m3、殊に50〜120kg/m3の密度を有する。
【0085】
本発明によるフォームは、今までポリウレタンフォームが使用されていたすべてのところで使用することができる。殊に、このフォームはクッション、断熱材及び遮音剤のために適している。
【0086】
本発明による発泡性調製物は、きわめて簡単にかつPU技術からの今まで公知の方法で加工することができるという利点を有する。
【0087】
さらに、本発明による調製物は、市販の簡単に入手可能な出発材料で製造することができるという利点を有する。
【0088】
更に、本発明による調製物は、容易に加工可能でかつ低粘度で製造することができるという利点を有する。
【0089】
本発明による、シリコーン含有PUフォームの製造方法は、実施が容易であるという利点を有する。
【0090】
本発明によるフォームは、極端な熱の作用下でも滴り落ちる傾向がないという利点を有する。
【0091】
更に、本発明によるフォームは、極端に難燃性であるという利点を有する。
【0092】
本発明によるフォームは、シリコーンPUフォームのポリマーマトリックス中への少量の剥離黒鉛の組み込みが、熱の作用の間で、例えば140℃を超える温度で液化されたポリマー成分を拘束し、前記フォームの滴り落ちを抑制するという利点を有する。
【0093】
次の実施例において、部および百分率の全データは、他に示されない限り、質量に対するものである。他に記載がない限り、以下の実施例は、周囲大気の圧力、即ち約1000hPaで、かつ室温、即ち約20℃で、もしくは反応物を、室温で付加的に加熱又は冷却せずに合わせる際に生じる温度で実施される。実施例で記載された全ての粘度データは、25℃の温度に関するものである。
【0094】
比較例1
予備混合物1の製造
無水アセトン25ml及び無水ジクロロメタン25mlからなる混合物中に溶かした式H2N−(CH23−[(CH32−SiO]129Si(CH32−(CH23−NH2の線状オルガノポリシロキサン50.00gを、ゆっくりとトルエンジイソシアナート(TDI)の溶液(無水アセトン20ml中4.3g)に滴加し、0℃で反応させ、その際、アミノ基は完全に反応した。
【0095】
こうして得られた、イソシアナートシロキサンOCN−(CH23−[(CH32−SiO]129Si(CH32−(CH23−NCO 51.7gの他になおTDI 2.6gを含有する反応混合物を、次いで室温に温め、10mbarの圧力で溶剤を除去した。
【0096】
こうして得られた予備混合物1 10.00gに、触媒としてビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル0.16g(Huntsman Corp.社、D-Hamburgの商品名「Jeffcat(登録商標) ZF-20」で購入可能)及び乳化剤0.15g(Wacker Chemie AG社、D-Muenchenの商品名「Belsil(登録商標) DMC 3071VP」で購入可能)を添加した。こうして得られた混合物を、まず高速で運転されるKPG撹拌機で均質なエマルションに加工した。引き続き水0.14gを迅速に添加し、高速で運転されるKPG撹拌機により均質な混合物に乳化させた。約5秒後に、フォーム形成と共に発熱反応が始まる。このフォーム形成は更に約20秒後に完了し、発熱は更に約30秒間続いた。無色の柔軟な、不燃性の軟質フォームが生じ、これはブンゼンバーナー炎中で著しく滴り落ちる傾向を示した。この場合、前記軟質フォームはブンゼンバーナー炎に当たる箇所ですぐに液化し、そこで形成された低粘度のシリコーン材料が床に直接滴り落ちることが観察された。
【0097】
実施例1
予備混合物2の製造
無水アセトン25ml及び無水ジクロロメタン25mlからなる混合物中に溶かした式H2N−(CH23−[(CH32−SiO]129Si(CH32−(CH23−NH2の線状オルガノポリシロキサン50.00gを、ゆっくりとトルエンジイソシアナート(TDI)の溶液(無水アセトン20ml中4.3g)に滴加し、0℃で反応させ、その際、アミノ基は完全に反応した。
【0098】
こうして得られた、イソシアナートシロキサンOCN−(CH23−[(CH32−SiO]129Si(CH32−(CH23−NCO 51.7gの他になおTDI 2.6gを含有する反応混合物を、次いで室温に温め、更に2時間撹拌し、その後で剥離黒鉛4.9g(NGS Naturgraphit GmbH社、D-Leinburgの商品名「EX-EF-80 SC」で購入可能)を前記溶液中に分散させた。引き続き、前記予備混合物2から10mbarの圧力で溶剤を除去した。
【0099】
こうして得られた予備混合物2 10.00gに、触媒としてビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル0.16g(Huntsman Corp.社、D-Hamburgの商品名「Jeffcat(登録商標) ZF-20」で購入可能)及び乳化剤0.15g(Wacker Chemie AG社、D-Muenchenの商品名「Belsil(登録商標) DMC 3071VP」で購入可能)を添加した。こうして得られた混合物を、まず高速運転されたKPG撹拌機で均質なエマルションに加工した。引き続き水0.14gを迅速に添加し、高速で運転されるKPG撹拌機により均質な混合物に乳化させた。約5秒後に、フォーム形成と共に発熱反応が始まる。このフォーム形成は更に約20秒後に完了し、発熱は更に約30秒間続いた。灰色の柔軟な軟質フォームが生じ、これはブンゼンバーナー炎中で不燃性でかつ全く滴り落ちないことが判明した。このブンゼンバーナー炎が前記軟質フォームに作用する際に、炎が当たる箇所で明らかな体積増加を観察することができ、この体積増加は同時にシリコーン材料の硬化を引き起こし、それにより滴り落ちることが抑制された。
【0100】
実施例2
予備混合物3の製造
無水アセトン25ml及び無水ジクロロメタン25mlからなる混合物中に溶かした式H2N−(CH23−[(CH32−SiO]129Si(CH32−(CH23−NH2の線状オルガノポリシロキサン50.00gを、ゆっくりとトルエンジイソシアナート(TDI)の溶液(無水アセトン20ml中4.30g)に滴加し、0℃で反応させ、その際、アミノ基は完全に反応した。
【0101】
こうして得られた、イソシアナートシロキサンOCN−(CH23−[(CH32−SiO]129Si(CH32−(CH23−NCO 51.7gの他になおTDI 2.6gを含有する反応混合物を、次いで室温に温め、更に2時間撹拌し、その後で剥離黒鉛2.45g(NGS Naturgraphit GmbH社、D-Leinburgの商品名「EX 180 SC」で購入可能)を前記溶液中に分散させた。引き続き、前記予備混合物3から10mbarの圧力で溶剤を除去した。
【0102】
こうして得られた予備混合物3 10.00gを用いて、実施例1に記載されたように実施した。
【0103】
灰色の柔軟な軟質フォームが生じ、これはブンゼンバーナー炎中で不燃性でありかつ全く滴り落ちないことが判明した。このブンゼンバーナー炎が前記軟質フォームに作用する際に、炎が当たる箇所で明らかな体積増加を観察することができ、この体積増加は同時にシリコーン材料の硬化を引き起こし、それにより滴り落ちることが抑制された。
【0104】
実施例3
実施例2に記載された予備混合物3 10.00gに、触媒としてビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル0.16g(Huntsman Corp.社、D-Hamburgの商品名「Jeffcat(登録商標) ZF-20」で購入可能)、乳化剤0.15g(Wacker Chemie AG社、D-Muenchenの商品名「Belsil(登録商標) DMC 3071VP」で購入可能)並びに疎水性の高分散性ケイ酸0.5g(Wacker Chemie AG社、D-Muenchenの商品名「HDK(登録商標) 2000」で購入可能)を添加した。こうして得られた混合物を、まず高速運転されたKPG撹拌機で均質なエマルションに加工した。引き続き水0.14gを迅速に添加し、高速で運転されるKPG撹拌機により均質な混合物に乳化させた。約5秒後に、フォーム形成と共に発熱反応が始まる。このフォーム形成は更に約20秒後に完了し、発熱は更に約30秒間続いた。灰色の柔軟な軟質フォームが生じ、これはブンゼンバーナー炎中で不燃性でありかつ全く滴り落ちないことが判明した。このブンゼンバーナー炎が前記軟質フォームに作用する際に、炎が当たる箇所で明らかな体積増加を観察することができ、この体積増加は同時にシリコーン材料の硬化を引き起こし、それにより滴り落ちることが抑制された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1つのイソシアナート基を有するオルガノポリシロキサン及び(B)剥離黒鉛を含有する、発泡性調製物。
【請求項2】
前記シロキサン(A)は、式
a1b(R2O)cSiO4-a-b-c/2 (I)
[式中、
Rは、同じ又は異なることができ、1価の、SiC結合した、場合により置換された炭化水素基を表し、前記炭化水素基は酸素原子により中断されていても良い、
1は、同じ又は異なることができ、少なくとも1つのイソシアナート基を有する、1価の、場合により置換された炭化水素基を表し、前記炭化水素基はヘテロ原子によって中断されていても良い、
2は、同じ又は異なることができ、1価の、場合により置換された炭化水素基を表し、前記炭化水素基はヘテロ原子によって中断されていても良い、
aは0、1、2又は3を表し、
bは0、1、2又は3を表し、及び
cは0、1、2又は3を表し、
但し、a+b+cの合計は≦3であり、かつbが0ではない少なくとも1つの単位が存在する]の単位を含むシロキサンであることを特徴とする、請求項1記載の調製物。
【請求項3】
剥離黒鉛(B)を、シロキサン(A)100質量部に対して、0.1〜50質量部の量で含有することを特徴とする、請求項1又は2記載の調製剤。
【請求項4】
(A) 式(I)の単位を有するシロキサン、
(B) 剥離黒鉛、
場合により
(C) イソシアナート、
場合により
(D) 充填剤、
場合により
(E) 乳化剤、
場合により
(F) 物理的発泡剤、
場合により
(G) 触媒、
(H) 化学的発泡剤及び
場合により
(I) 添加物
を含有する調製物であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の調製物。
【請求項5】
化学的発泡剤(H)を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の調製物。
【請求項6】
化学的発泡剤(H)が水であることを特徴とする、請求項5記載の調製物。
【請求項7】
少なくとも1つのイソシアナート基を有するオルガノポリシロキサン(A)を、剥離黒鉛(B)及び化学的発泡剤(H)と混合し、かつ反応させることを特徴とする、シリコーン含有ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項8】
少なくとも1つのイソシアナート基を有するオルガノポリシロキサン(A)、剥離黒鉛(B)、触媒(G)及び化学的発泡剤(H)を混合し、かつ反応させることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
剥離黒鉛を含有する、シリコーン含有ポリウレタンフォーム。
【請求項10】
剥離黒鉛を、フォームの全質量に対して0.05〜30質量%の量で含有することを特徴とする、請求項9記載のフォーム。

【公表番号】特表2010−530457(P2010−530457A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512634(P2010−512634)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057159
【国際公開番号】WO2008/155249
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】