説明

シリコーン放熱部材

【課題】高温高湿下においても長期的に熱伝導特性を維持できるとともに、弾性が低く基材に対する追従性、密着性に優れたシリコーン放熱部材を提供する。
【解決手段】SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン(a)、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(b)、付加反応触媒(c)、平均粒子径が1μm以上であり10μm未満であるアルミナ(d1)、平均粒子径が10μm以上であり25μm未満であるアルミナ(d2)、平均粒子径が30〜70μmであるアルミナ(d3)を含有するシリコーン樹脂組成物を硬化させてシリコーン放熱部材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高温高湿下においても長期的に熱伝導特性を維持できるとともに、弾性が低く基材に対する追従性、密着性に優れたシリコーン放熱部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部材の放熱材料として、各種無機フィラーを混合したシリコーン樹脂を硬化、成型したものが用いられている。放熱特性を向上させるため、これまでに無機フィラーの種類や粒子径、それらを組み合わせる検討が行われているが、未だ放熱特性は十分ではない。また、放熱部材の熱伝導率を向上させようとすると無機フィラーの配合割合は高くなるが、硬化物が硬くなるため基材への追従性、密着性が低下してしまい、かえって放熱特性が低下してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献1には、異なる平均粒子径を有する2種以上の無機フィラーを用いたシリコーン放熱部材が開示されているが、放熱特性に改善の余地があった。
【特許文献1】特開2002-3831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、高温高湿下においても長期的に熱伝導特性を維持できるとともに、弾性が低く基材に対する追従性、密着性に優れたシリコーン放熱部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン(a)、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(b)、付加反応触媒(c)、平均粒子径が1μm以上であり10μm未満であるアルミナ(d1)、平均粒子径が10μm以上であり25μm未満であるアルミナ(d2)、平均粒子径が30〜70μmであるアルミナ(d3)を含有するシリコーン樹脂組成物を硬化させることによって得られることを特徴とするシリコーン放熱部材である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のシリコーン放熱部材は放熱特性に優れ、高温高湿下においても長期的に熱伝導特性を維持でき、弾性が低く基材に対する追従性、密着性に優れるため、電子部材の放熱材料として適する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のシリコーン放熱部材は付加型シリコーン樹脂を樹脂成分として含有する。SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン(a)は、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基などの炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンである。オルガノポリシロキサンは例えば主鎖がジオルガノシロキサンの繰返し単位であり、末端がトリオルガノシロキサン構造であるものが例示され、分岐や環状構造を有するものであってもよい。末端や繰返し単位中のケイ素に結合したオルガノ構造としてはメチル基、エチル基、フェニル基などが例示される。具体例としては、両末端にビニル基を有するジメチルポリシロキサンが挙げられる。
【0008】
1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(b)は、末端および/または繰返し構造中において、2個以上のSiH基を含有するオルガノポリシロキサンである。オルガノポリシロキサンは例えば主鎖がジオルガノシロキサンの繰返し単位であり、末端がトリオルガノシロキサン構造であるものが例示され、分岐や環状構造を有するものであってもよい。末端や繰返し単位中のケイ素に結合したオルガノ構造としてはメチル基、エチル基、フェニル基、オクチル基などが例示され、これらの2個以上が水素基に置換されたものともいえる。前記オルガノポリシロキサン(a)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(b)の配合比は、(a):(b)=1:1.0〜2.0とすることが好ましく、より好ましくは(a):(b)=1:1.3〜1.6である。
【0009】
付加反応触媒(c)は、前記(a)成分と前記(b)成分のヒドロシリル化反応を促進させるために添加され、ヒドロシリル化反応の触媒活性を有する公知の金属、金属化合物、金属錯体などを用いることができる。特に白金、白金化合物、それらの錯体を用いることが好ましい。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、助触媒を併用してもよい。付加反応触媒(c)の配合量は組成物全体に対して1ppm〜50ppmとすることが好ましく、より好ましくは2〜10ppmである。
【0010】
本発明のシリコーン放熱部材は熱伝導性無機フィラーとして異なる粒子径を有する3種類のアルミナを含有する。具体的には平均粒子径が1μm以上であり10μm未満であるアルミナ(d1)、平均粒子径が10μm以上であり25μm未満であるアルミナ(d2)、平均粒子径が30〜70μmであるアルミナ(d3)を含有する。(d1)、(d2)、(d3)の合計を100重量部とした場合、(d1)が10〜30重量部、(d2)が5〜20重量部、(d3)が50〜85重量部となるように配合することが好ましい。また、(d1)、(d2)、(d3)の合計が、シリコーン樹脂組成物全体の85〜95重量%となるように配合することが好ましい。
異なる粒子径を有する3種類のアルミナを配合することにより、熱伝導性無機フィラーの充填率が高くなることが放熱特性に向上に寄与しているものと推察される。一方、充填率が高すぎても硬化物が硬くなってしまい、基材への追従性、密着性が低下するため、適度な充填率が得られているものと推察される。
【0011】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物には前記必須成分の他、各種樹脂、添加剤を配合できる。希釈剤の配合により、粘度、柔軟性等を調整できる。その具体例として、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ2−エチルヘキシルなどフタル酸エステル系の希釈剤、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アゼライン酸ジアルキル、セバシン酸ジブチル、エポキシ化大
豆油、ポリプロピレングリコール、アクリルポリマー、α−オレフィンやその誘導体、植物油由来脂肪酸の2−エチルヘキシルエステル化合物等が挙げられる。
【0012】
粘度調整、粘性調整、増量などを目的として、炭酸カルシウム、硅砂、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、カオリン、二酸化ケイ素、メラミン等の充填材、硬化樹脂の補強のためにガラス繊維等の補強材、軽量化及び粘度調整などのためにシラスバルーン、ガラスバルーン等の中空体を添加できる。その他、酸化防止剤、顔料、防腐剤などを適宜使用することができる。
【0013】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0014】
実施例1
粘度3.5Pa・sのポリメチルビニルシロキサン40重量部、SiH基を含有する粘度3.2Pa・sのオルガノハイドロジェンポリシロキサン60重量部に対して、熱伝導性無機フィラーとして、平均粒子径が4μmであるアルミナ(昭和電工株式会社製、商品名CB−P05)160重量部、平均粒子径が20μmであるアルミナ(昭和電工株式会社製、商品名CB−A20S)60重量部、平均粒子径が50μmであるアルミナ(昭和電工株式会社製、商品名CB−A50S)520重量部を混合し、フィラー充填率を88%とした。さらに、硬化遅延を目的として1−エチニル−1−シクロヘキサノール(ECH)を0.015重量部、着色剤としてカーボンブラック(旭カーボン株式会社製、商品名 アサヒサーマル)1重量部を添加し、付加反応触媒として白金−ビニルシロキサン錯体を組成物全体に対して10ppmとなるよう添加、混合することにより、実施例1のシリコーン樹脂組成物を作製した。
【0015】
比較例1
実施例1において、熱伝導性無機フィラーとして平均粒子径が12μmであるアルミナ(日本軽金属株式会社製、商品名V325F)40重量部、平均粒子径が20μmであるアルミナ(昭和電工株式会社製、商品名CB−A20S)120重量部、平均粒子径が50μmであるアルミナ(昭和電工株式会社製、商品名CB−A50S)400重量部を用い、フィラー充填率を85%とした他は実施例1と同様に行い、比較例1のシリコーン樹脂組成物を作製した。
【0016】
比較例2
実施例1において、熱伝導性無機フィラーとして平均粒子径が4μmであるアルミナ(昭和電工株式会社製、商品名CB−P05)160重量部、平均粒子径が50μmであるアルミナ(昭和電工株式会社製、商品名CB−A50S)400重量部を用い、フィラー充填率を85%とした他は実施例1と同様に行い、比較例2のシリコーン樹脂組成物を作製した。
【0017】
比較例3
実施例1において、熱伝導性無機フィラーとして平均粒子径が4μmであるアルミナ(昭和電工株式会社製、商品名CB−P05)370重量部、平均粒子径が20μmであるアルミナ(昭和電工株式会社製、商品名CB−A20S)190重量部を用い、フィラー充填率を85%とした他は実施例1と同様に行い、比較例3のシリコーン樹脂組成物を作製した。
【0018】
熱伝導率の測定方法
各硬化性シリコーン樹脂組成物を60×120mmに成型し、23℃雰囲気下で迅速熱伝導率計(京都電子工業株式会社製、商品名 QTM-500)を用いて、熱伝導率を測定した。
【0019】
【表1】

【0020】
実施例のシリコーン放熱部材は、比較例のシリコーン放熱部材よりも熱伝導性に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン(a)、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(b)、付加反応触媒(c)、平均粒子径が1μm以上であり10μm未満であるアルミナ(d1)、平均粒子径が10μm以上であり25μm未満であるアルミナ(d2)、平均粒子径が30〜70μmであるアルミナ(d3)を含有するシリコーン樹脂組成物を硬化させることによって得られることを特徴とするシリコーン放熱部材。
【請求項2】
前記平均粒子径が1μm以上であり10μm未満であるアルミナ(d1)、平均粒子径が10μm以上であり25μm未満であるアルミナ(d2)、平均粒子径が30〜70μmであるアルミナ(d3)の合計を100重量部とした場合、(d1)が10〜30重量部、(d2)が5〜20重量部、(d3)が50〜85重量部であることを特徴とする請求項1記載のシリコーン放熱部材。
【請求項3】
前記(d1)、(d2)、(d3)の合計が、シリコーン樹脂組成物全体の85〜95重量%であることを特徴とする請求項1または2記載のシリコーン放熱部材。



【公開番号】特開2012−214612(P2012−214612A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80627(P2011−80627)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】