説明

シリンジ装置

【課題】製造コストが増大する事態を抑え、かつカートリッジケースが不用意に装置本体から脱落するのを防止すること。
【解決手段】内部にカートリッジ10を収容したカートリッジケース30が装置本体20に取り付けられた状態で動作した場合にカートリッジ10の充填物をその先端から外部に吐出させる吐出用駆動モータユニット45とを備えたシリンジ装置1において、装置本体20に係止突部23を設ける一方、カートリッジケース30において係止突部23に対応する部位に係止凹部34cを形成し、係止突部23を係止凹部34cに係止させた場合に装置本体20に対するカートリッジケース30の離脱方向への移動を規制するものであり、カートリッジ10のシリンジ筒体11は、弾性材料によって成形し、係止突部23を係止凹部34cに係止させる際に装置本体20及びカートリッジケース30によって弾性変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジの充填物を外部に吐出させるようにしたカートリッジ型のシリンジ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリンジ装置には、薬剤等の充填物をカートリッジ充填するようにしたものがある。この種のシリンジ装置では、装置本体に対してカートリッジケースが着脱可能に設けられており、カートリッジケースの内部にカートリッジが収容される。内部にカートリッジを収容したカートリッジケースを装置本体に取り付け、この状態から吐出駆動手段を動作させると、プランジャが進出移動し、カートリッジの内部に充填された充填物がカートリッジの先端から外部に吐出されることになる。カートリッジの充填物が空になった場合には、装置本体からカートリッジケースを取り外せば、空のカートリッジを廃棄することができる。その後、充填物が充填された新たなカートリッジをカートリッジケースの内部に収容させ、再び装置本体に取り付ければ、新たなカートリッジに充填された充填物を吐出させることが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−201969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のシリンジ装置では、カートリッジケースの環状溝に係止ボールを係止させることによってカートリッジケースを装置本体に保持させるようにしている。一方、カートリッジを抜き取る場合には、係止ボールを装置本体の凹部に配置させてカートリッジケースの環状溝から逸脱させるようにしている。
【0005】
こうした機構では、カートリッジケースの環状溝及び装置本体の凹部のそれぞれに対して係止ボールを移動させなければならないため、カートリッジケース及び装置本体とは別体となる係止ボールの保持手段が必要となる。しかも、装置本体にカートリッジケースを取り付けている間においては、カートリッジケースが不用意に脱落するのを防止するため、保持手段に保持した係止ボールを装置本体の凹部から逸脱した状態に維持するコイルスプリング等の付勢手段が必須の構成となる。このため、特許文献1のシリンジ装置においては数多くの部品が必要となり、製造コストの面で不利となる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、製造コストが増大する事態を抑え、かつカートリッジケースが不用意に装置本体から脱落するのを防止することのできるシリンジ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、内部にカートリッジを収容する収容部を有した柱状を成し、装置本体との間に構成した係止手段を係合させることによって当該装置本体に着脱可能に取り付けられるカートリッジケースと、内部にカートリッジを収容したカートリッジケースが装置本体に取り付けられた状態で動作した場合にカートリッジの充填物をその先端から外部に吐出させる吐出駆動手段とを備えたシリンジ装置において、前記係止手段は、カートリッジケース及び装置本体のいずれか一方に係止突部を有する一方、カートリッジケース及び装置本体のいずれか他方において前記係止突部に対応する部位に係止面を有し、係止突部を係止面に係止させた場合に装置本体に対するカートリッジケースの離脱方向への移動を規制するものであり、前記カートリッジは、弾性材料によって成形し、前記係止手段の係止突部を係止面に係止させる際に装置本体及びカートリッジケースによって弾性変形するものであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上述したシリンジ装置において、カートリッジケースは、一端が開口した円筒状を成すものであり、前記係止手段の係止面は、装置本体に対してカートリッジケースを軸心方向に沿って近接移動させた後、装置本体に対してカートリッジケースを軸心回りに回転させた場合に係止突部に係止するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置本体とカートリッジケースとの間に係止突部と係止面とから成る係止手段を設け、かつカートリッジケースを弾性材料によって成形すれば、カートリッジケースの弾性力によって係止突部と係止面とを互いに係止させた状態に維持することが可能となる。従って、従前のシリンジ装置のように数多くの部品を要することなくカートリッジケースが不用意に装置本体から脱落する事態を防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施の形態であるシリンジ装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示したシリンジ装置において一部を省略して示す要部分解斜視図である。
【図3】図3は、図1に示したシリンジ装置の断面図である。
【図4】図4は、図1に示したシリンジ装置に適用するカートリッジの分解斜視図である。
【図5】図5は、図1に示したシリンジ装置の装置本体において一部を省略して示す要部斜視図である。
【図6】図6は、図1に示したシリンジ装置に適用するカートリッジケースを先端部側から見た外観斜視図である。
【図7】図7は、図6に示したカートリッジを基端部側から見た外観斜視図である。
【図8−1】図8−1は、図1に示したシリンジ装置において装置本体にカートリッジケースを取り付ける前の状態を示す図である。
【図8−2】図8−2は、図1に示したシリンジ装置において装置本体にカートリッジケースを取り付ける直前の状態を示す図である。
【図9】図9は、図1に示したシリンジ装置において係止手段の係止突部と係止面とが互いに当接した状態を示す図である。
【図10】図10は、図1に示したシリンジ装置においてカートリッジケースを介してシリンジ筒体を弾性的に変形させた状態を示す断面図である。
【図11】図11は、図1に示したシリンジ装置においてシリンジ筒体の充填物を吐出している状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るシリンジ装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1〜図3は、本発明の実施の形態であるシリンジ装置を示したものである。ここで例示するシリンジ装置1は、カートリッジ10のシリンジ筒体11に充填した薬剤等の充填物を吐出するためのものである。
【0013】
シリンジ筒体11は、図4に示すように、両端が開口し、かつ先端部が細径の円筒状を成すもので、弾性を有した合成樹脂材料によって一体に成形してある。シリンジ筒体11には、先端部にセプタム12が配設してある一方、太径の基端内部にプランジャ13が配設してある。セプタム12は、ゴム等の弾性部材によって成形した蓋体であり、キャップ部材14を介してシリンジ筒体11の先端開口11aを閉塞するように取り付けてある。このセプタム12には、中心部にスリット孔12aが設けてある。スリット孔12aは、通常状態において弾性的に閉鎖された状態に維持される一方、圧力を加えた場合に弾性的に開口するように形成したものである。キャップ部材14は、セプタム12のスリット孔12aに対応する部位に開口14aを有したもので、シリンジ筒体11の先端部に螺合してある。プランジャ13は、軸方向の中央部から両端に向かうに従って漸次外径が増大し、両端部の外径がシリンジ筒体11の内径よりも僅かに太径となる円柱状に形成したものである。このプランジャ13は、弾性を有した部材によって成形したもので、シリンジ筒体11の内周面との間の気密状態を確保した状態でシリンジ筒体11の軸心方向に沿って移動可能に収容してある。
【0014】
このカートリッジ10は、軸方向の両端面から押圧力を加えた場合、弾性部材によって成形したシリンジ筒体11が弾性的に変形し、その全長を短縮することが可能である。
【0015】
一方、上記シリンジ装置1は、図1〜図3に示すように、装置本体20とカートリッジケース30とを備えている。
【0016】
装置本体20は、図3及び図5に示すように、円柱状を成す柱状部21と、柱状部21の一端面に接続した直方状を成すギヤケース部22とを有したもので、柱状部21の内部にギヤ駆動部材40を備えている。ギヤ駆動部材40は、外周部に一対の規制突起41を有するとともに、中心部に駆動ネジ部材42を備えた円柱状部材である。規制突起41は、柱状部21の内周面に形成したスライド溝21aに係合することによって柱状部21に対するギヤ駆動部材40の回転を規制する一方、柱状部21の軸心方向に沿った移動は許容するものである。このギヤ駆動部材40は、柱状部21の先端面に形成した開口21bを介して外部に突出することが可能である。駆動ネジ部材42は、ギヤ駆動部材40の中心部に形成したネジ孔40aに螺合したものである。この駆動ネジ部材42には、ギヤ駆動部材40の外部に位置する部位にドリブンギヤ43が設けてある。
【0017】
ドリブンギヤ43は、駆動ネジ部材42と一体に回転するように設けた平歯車である。このドリブンギヤ43は、ギヤケース部22に収容した複数段の減速ギヤ列44を介して吐出用駆動モータユニット(吐出駆動手段)45に接続してあり、吐出用駆動モータユニット45が駆動した場合に自身の軸心回りに回転されることになる。図には明示していないが、吐出用駆動モータユニット45と減速ギヤ列44との間には、不思議歯車による減速機構46が介在させてある。
【0018】
図1、図2及び図5に示すように、装置本体20の柱状部21には、突出端部の外周面に一対の係止突部23が設けてある。一対の係止突部23は、それぞれ円柱状を成すもので、柱状部21の軸心に直交する共通の軸心を中心とした位置に設けてある。
【0019】
装置本体20の柱状部21及び一対の係止突部23は、それぞれカートリッジ10のシリンジ筒体11よりも大きな剛性を有した硬質の合成樹脂材料によって一体に成形してある。
【0020】
カートリッジケース30は、図2、図3、図6及び図7に示すように、両端が開口し、かつ中心部にシリンジ筒体11を嵌合させることできる収容部31を有した円筒状を成すもので、装置本体20と同様、カートリッジ10のシリンジ筒体11よりも大きな剛性を有した硬質の合成樹脂材料によって成形してある。カートリッジケース30には、基端部に外フランジ32が形成してあるとともに、先端部に内フランジ33が形成してある。外フランジ32は、カートリッジケース30よりも大きな外径を有する部分であり、互いに平行となる二面幅32aを有している。内フランジ33は、カートリッジ10のキャップ部材14を通過させる一方、シリンジ筒体11の通過を阻止する内径を有するように形成してある。
【0021】
また、このカートリッジケース30には、基端部に一対の係止用溝34が形成してある。係止用溝34は、図6〜図9に示すように、装置本体20の柱状部21に形成した係止突部23を通過させることのできる幅に形成した切欠であり、カートリッジケース30の基端面から軸方向に沿って延在する直線部34aと、直線部34aの延在端部からカートリッジケース30の周面に沿って屈曲し、周回するに従って僅かに先端に向けて傾斜延在した傾斜部34bとを有している。係止用溝34の傾斜部34bにおいてカートリッジケース30の基端側に位置する内壁面(以下、「基端側内壁面」という)には、係止凹部34c(係止面)及び解除規制突起34dが形成してある。係止凹部34cは、係止突部23を係止させることのできる凹所であり、基端側内壁面の延在端部に僅かに窪んだ状態で形成してある。解除規制突起34dは、基端側内壁面と係止凹部34cとの間に構成される凸状部分である。これら一対の係止用溝34は、カートリッジケース30の周方向において互いに180°ずれた位置に形成してあり、一方の係止突部23を一方の係止用溝34に収容させた場合に他方の係止突部23が他方の係止用溝34に収容されることになる。
【0022】
図からも明らかなように、この係止用溝34において傾斜部34b及び直線部34aの基端部側に位置する部分は、内外を連通するようにカートリッジケース30の周壁を貫通するように形成してある一方、外フランジ32に対応する部分においてはカートリッジケース30の内壁面にのみ開口するように形成してある。つまり、カートリッジケース30の基端部は、係止用溝34が開口するものの、外フランジ32によって周方向に連続しているため、十分な強度が確保された状態にある。
【0023】
このカートリッジケース30の軸方向長さや係止用溝34の寸法、並びに上述したカートリッジ10の寸法は、以下の条件を満たすように構成してある。
【0024】
(1)装置本体20に設けた柱状部21の先端面にカートリッジ10を当接させた状態においてカートリッジ10を収容部31に収容させ、図8−1及び図8−2に示すように、係止突部23を係止用溝34に収容させた場合、係止突部23が係止用溝34における直線部34aに位置される。カートリッジケース30に外力が作用していなければ、図8−2に示すように、シリンジ筒体11の先端面がカートリッジケース30の内フランジ33に当接した状態において、係止突部23における基端側の周面が、カートリッジケース30の解除規制突起34dよりも距離αだけ基端側に位置される。従って、この状態からは、装置本体20の柱状部21に対してカートリッジケース30を軸心回りに回転させた場合にも、係止突部23が係止凹部34cに至ることはない。
【0025】
(2)上述の状態からカートリッジケース30に対してその先端面を装置本体20に向けて押圧する外力を加えると、この外力がカートリッジケース30の内フランジ33を通じてシリンジ筒体11に作用する。従って、図10に示すように、シリンジ筒体11が弾性的に変形し、その全長が短縮するため、係止突部23における基端側の周面を、カートリッジケース30の解除規制突起34dよりも先端側に位置することができる。従って、この状態からは、装置本体20の柱状部21に対してカートリッジケース30を軸心回りに回転させれば、図9に示すように、係止突部23が解除規制突起34dを超えて係止凹部34cに至ることになる。このとき、係止突部23が解除規制突起34dを超えて係止凹部34cに至る際にシリンジ筒体11が弾性復帰するため、操作者に対してクリック感を与えることができる。
【0026】
この状態においては、装置本体20に対してカートリッジケース30を逆方向に回転させようとした場合にも係止突部23が解除規制突起34dに当接するためこれが阻止されることになり、係止突部23が係止凹部34cに当接された状態を維持することになる。
【0027】
(3)図9に示す状態からカートリッジケース30に対してその先端面を装置本体20に向けて押圧する外力を加えると、再び図10に示すように、シリンジ筒体11が弾性的に変形して全長が短縮するため、この状態から装置本体20の柱状部21に対してカートリッジケース30を軸心回りに逆方向へ回転させれば、図8−1に示すように、係止突部23を直線部34aに位置するため、装置本体20の柱状部21からカートリッジケース30を取り外してカートリッジ10を交換することができる。
【0028】
このように、上記の条件を満足するように、カートリッジケース30及びカートリッジ10を構成すれば、従前のシリンジ装置のように数多くの部品を要することなくカートリッジケース30が不用意に装置本体20から脱落する事態を防止することができるようになり、製造コストが大幅に増大する事態を抑えることが可能となる。
【0029】
上記のように構成したシリンジ装置1では、カートリッジケース30を介して装置本体20にカートリッジ10を取り付け、この状態から吐出用駆動モータユニット45を駆動すると、不思議歯車による減速機構46、減速ギヤ列44及びドリブンギヤ43を介して駆動ネジ部材42が回転することになり、ギヤ駆動部材40に形成したネジ孔40aとのネジの作用により、図11に示すように、当該ギヤ駆動部材40が柱状部21の先端面に形成した開口21bを介して外部に突出する。この結果、カートリッジ10のシリンジ筒体11に対してプランジャ13が進出移動することになり、セプタム12のスリット孔12a及びキャップ部材14の開口を介してシリンジ筒体11に充填された充填物が外部に吐出されることになる。
【0030】
尚、上述した実施の形態では、装置本体に係止突部を設ける一方、カートリッジケースに係止面を設けるようにしているが、装置本体に係止面を設ける一方、カートリッジケースに係止突部を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 シリンジ装置
10 カートリッジ
11 シリンジ筒体
20 装置本体
21 柱状部
23 係止突部
30 カートリッジケース
31 収容部
34 係止用溝
34a 直線部
34b 傾斜部
34c 係止凹部
34d 解除規制突起
40 ギヤ駆動部材
40a ネジ孔
41 規制突起
42 駆動ネジ部材
43 ドリブンギヤ
44 減速ギヤ列
45 吐出用駆動モータユニット
46 減速機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にカートリッジを収容する収容部を有した柱状を成し、装置本体との間に構成した係止手段を係合させることによって当該装置本体に着脱可能に取り付けられるカートリッジケースと、内部にカートリッジを収容したカートリッジケースが装置本体に取り付けられた状態で動作した場合にカートリッジの充填物をその先端から外部に吐出させる吐出駆動手段とを備えたシリンジ装置において、
前記係止手段は、カートリッジケース及び装置本体のいずれか一方に係止突部を有する一方、カートリッジケース及び装置本体のいずれか他方において前記係止突部に対応する部位に係止面を有し、係止突部を係止面に係止させた場合に装置本体に対するカートリッジケースの離脱方向への移動を規制するものであり、
前記カートリッジは、弾性材料によって成形し、前記係止手段の係止突部を係止面に係止させる際に装置本体及びカートリッジケースによって弾性変形するものである
ことを特徴とするシリンジ装置。
【請求項2】
カートリッジケースは、一端が開口した円筒状を成すものであり、
前記係止手段の係止面は、装置本体に対してカートリッジケースを軸心方向に沿って近接移動させた後、装置本体に対してカートリッジケースを軸心回りに回転させた場合に係止突部に係止するものである
ことを特徴とする請求項1に記載のシリンジ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−264116(P2010−264116A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118897(P2009−118897)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(503366841)株式会社アイカムス・ラボ (27)
【Fターム(参考)】