説明

シリンダ装置

【課題】簡単な構造で、高いシール性を有するシール要素を備えたシリンダ装置を提供すること。
【解決手段】油圧緩衝器(シリンダ装置)1は、シリンダ2とシリンダ2内から外部へ延出するピストンロッド10との間に、オイルシール4を備える。オイルシール4は、シリンダ2の外側に面して配設されてシリンダ2内に嵌合される環状の補強部材161と、シリンダ2の内側に面して補強部材161と接して配置される環状の補強部材171と、補強部材171の外周側に加硫接着された外周側非摺動シール部材172と、補強部材171の内周側に加硫接着された内周側非摺動シール部材173と、内周側非摺動シール部材173に嵌合され、ピストンロッド10と摺接するメインシール18とを有する。メインシール18、外周側及び内周側非摺動シール部材172、173をそれぞれ最適な特性を有する材料で形成することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を封入したシリンダとシリンダから外部へ延出されたロッドとの間にシール要素が設けられた緩衝器等のシリンダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のサスペンション装置に用いられる筒型の油圧緩衝器(シリンダ装置)においては、一般的に、油液が封入されたシリンダのピストンロッド突出側の端部に、シール要素が装着されて、ピストンロッドとの間を摺動可能にシールしている。このシール要素には、ピストンロッドの円滑な摺動を確保しつつ、高圧下における油液の漏れ及び埃、雨水等の異物の浸入を防止し、かつ、充分な耐久性を有することが要求される。
【0003】
そして、例えば特許文献1に記載されたシリンダ装置のシール要素は、金属製の補強部材にゴム製の内面リップ及びメインリップを加硫接着したメインシールと、フッ素樹脂材料で形成されたバックアップリングとを有し、バックアップリングとメインシールとが嵌合した構造を有する。詳細には、内面リップとメインリップとが同一のゴム材料により金属製の補強部材に加硫接着されている。
これにより、シール性を高めるとともに、サブアセンブリを可能にして、組付性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−23966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シール要素に最適な形成材料を選定して、シール特性を向上させることが望まれている。具体的には、上記メインリップには、ロッドに対する摺動性のシール機能が必要である。このため、メインリップの形成材料としては、例えば耐熱性、摺動性、シール性、および耐変形性などを有するものが要求される。
一方、内面リップには、シリンダ内側面に対するシール機能が要求されるが、摺動性は必要とされない。また、組付性及びシール性等の観点から、補強部材への接着性が必要とされる。このため、内面リップの形成材料としては、例えば非摺動性のシール性、および加硫接着による大きな接着強度を有するものなどが要求される。
【0006】
しかし、特許文献1に記載のシリンダ装置では、メインリップと内面リップとが、同一のゴム材料により補強部材に加硫接着されるため、メインリップに最適な形成材料と内面リップに最適な形成材料とを別材料として採用することができない。例えば、メインリップの形成材料として、耐熱性が高いものであっても、加硫接着による接着強度が低いものは採用することができない。つまり、特許文献1に記載のシリンダ装置では、メインリップと内面リップに最適な材料を選定する自由度が低くなっている。
【0007】
本発明は、ロッドに対する摺動シール部材、およびシリンダに対する非摺動シール部材がそれぞれ最適な材料で形成され、簡単な構造で、高いシール性を有するシール要素を備えたシリンダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、シリンダと該シリンダ内から外部へ延出するロッドとの間にシール要素が設けられたシリンダ装置であって、前記シール要素は、前記シリンダの外側に面して配設され、前記シリンダ内に嵌合される環状の第1補強部材と、前記シリンダの内側に面して前記第1補強部材と接して配置される環状の第2補強部材と、前記第2補強部材の外周側に加硫接着された外周側非摺動シール部材と、前記第2補強部材の内周側に加硫接着された内周側非摺動シール部材と、前記内周側非摺動シール部材に嵌合され、前記ロッドと摺接する摺動シール部材とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロッドに対する摺動シール部材および非摺動シール部材がそれぞれ最適な材料で形成され、簡単な構造で、高いシール性を有するシール要素を備えたシリンダ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るシリンダ装置としての油圧緩衝器の縦断面図である。
【図2】図1に示す油圧緩衝器の要部であるシール要素の取付部を拡大して示す縦断面図である。
【図3】図2に示すシール要素の縦断面図である。
【図4】図2に示すシール要素の分解縦断面図であり、(a)はダストシール、(b)はメインシール(摺動シール部材)、(c)は非摺動シール部材をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図1から図4を参照して説明する。
本実施形態に係るシリンダ装置としての油圧緩衝器1は、単筒式油圧緩衝器であって、有底円筒状のシリンダ2の開口部にロッドガイド3及びシール要素であるオイルシール4が取付けられ、シリンダ2内の底部側に、フリーピストン5が摺動可能に嵌装されている。シリンダ2の上端部には、キャップ6が外嵌されて、オイルシール4を保護している。
シリンダ2内は、フリーピストン5によって底部側のガス室7と他端側の油室8とに画成されており、ガス室7には高圧ガスが封入され、油室8には油液が封入されている。
【0012】
シリンダ2の油室8には、ピストン9が摺動可能に嵌装され、このピストン9によって、油室8内がシリンダ上室8Aとシリンダ下室8Bとの2室に画成されている。ピストン9には、ピストンロッド10の一端がナット11によって連結されており、ピストンロッド10の他端側は、ロッドガイド3およびオイルシール4に、摺動可能かつ液密的に挿通されて外部へ延出されている。
【0013】
ピストン9には、シリンダ上下室8A、8B間を連通させる伸び側油路12および縮み側油路13が設けられている。伸び側油路12および縮み側油路13には、それぞれ、その油液の流動を制御して減衰力を発生させるオリフィスおよびディスクバルブ等からなる伸び側減衰力発生機構14および縮み側減衰力発生機構15が設けられている。
【0014】
この構成により、ピストンロッド10が伸び行程時には、シリンダ2内のピストン9の摺動にともない、シリンダ上室8Aの油液がピストン9の伸び側油路12を通ってシリンダ下室8Bへ流れ、伸び側減衰力発生機構14によって減衰力が発生する。また、縮み行程時には、シリンダ下室8Bの油液が縮み側油路13を通ってシリンダ上室8Aへ流れ、縮み側減衰力発生機構15によって減衰力が発生する。このとき、ピストンロッド10の侵入、退出による油室8の容積変化をフリーピストン5が移動してガス室7の高圧ガスを圧縮、膨張することによって補償する。
【0015】
ロッドガイド3は、図2に示すように、段付円筒状に形成され、シリンダ2内に取付けられている。ロッドガイド3に形成されたガイドボア31には、摺動部材としてのガイドブッシュ32が圧入され、ガイドブッシュ32にピストンロッド10が挿通されている。ガイドブッシュ32は、ピストンロッド10を軸方向に摺動可能に案内する。
ロッドガイド3の上端部には、オイルシール4に当接する環状の当接部33が形成されている。ロッドガイド3は、シリンダ2内に嵌合され、シリンダ2をかしめて固定されている。詳細には、ロッドガイド3の外周部の下端に段部34が形成され、段部34がシリンダ2の内周面に内側に向かって突出した突出部21に当接することで、ロッドガイド3がシリンダ2内に軸方向に固定されている。
【0016】
シリンダ2の上端部には、ロッドガイド3の当接部33に当接し、ピストンロッド10が挿通されるオイルシール4が取付けられており、ロッドガイド3とオイルシール4との間に油室8Cが形成されている。油室8Cは、ロッドガイド3を軸方向に貫通する通路35を介してシリンダ上室8Aに連通されている。
【0017】
<オイルシール4>
次に、本実施形態の要部であるオイルシール4について、図2から図4を参照して説明する。オイルシール4は、シリンダ2内に嵌合され、下端面の一部分がロッドガイド3の当接部33に当接し、上端面の外周部付近が、シリンダ2の側壁の先端部を内側にかしめて形成されたカシメ部22に当接されることで固定されている。
図2に示すように、オイルシール4は、シリンダ2の外側に面して配置されるダストシール16と、シリンダ2の内側に面して配置される非摺動シール部材17と、摺動シール部材としてのメインシール(メインリップ)18とを有する。
【0018】
<ダストシール16>
ダストシール16は、金属等の剛性材料で形成された、第1補強部材としての環状の補強部材161と、ゴム材料で形成され弾性を備えるダストリップ162(摺動シール部)と、薄肉部163と、薄肉部164と、ばね165とを有する。補強部材161には、ダストリップ162と、薄肉部163と、薄肉部164とが加硫接着されている。ここで、加硫とは、加硫剤をゴム材料に配合し、架橋させることでゴムの弾性や強度を大きくすることであり、加硫剤として硫黄を用いるもののほか、そのゴム材料に適した硫黄以外の加硫剤を用いるポリアミン加硫、ポリオール加硫、パーオキサイド加硫等を含む概念である。
【0019】
補強部材161は、シリンダ2の内周面に嵌合する外径と、ピストンロッド10の外径よりやや大きい内径とを有する。補強部材161の外側端面(上端面)には、シリンダ2のカシメ部22が当接する。
【0020】
ダストリップ162は、補強部材161の外側端面の内周部に設けられ、先端部がピストンロッド10の外周面に摺動可能に密着して、埃、雨水等の異物の浸入を防止するとともに、ピストンロッド10の表面に付着した油液を掻き落す。ダストリップ162は、耐熱性が高い材料で形成されている。
【0021】
薄肉部163は補強部材161の内周面を覆い、薄肉部164は補強部材161の外側端面の一部を覆うように形成されている。薄肉部163と、薄肉部164と、ダストリップ162とは、所定のゴム材料で一体に補強部材161に加硫接着されている。
【0022】
ばね165は、環状に形成され、ダストリップ162の外周部に装着されており、ダストリップ162をピストンロッド10側に付勢することで、ダストリップ162とピストンロッド10との密着性を高める。
【0023】
<非摺動シール部材17>
非摺動シール部材17は、シリンダ2の内側に面して配置され、シリンダ2内に嵌合される。非摺動シール部材17は、金属等の剛性材料で形成された第2補強部材としての補強部材171と、内面リップとしての外周側非摺動シール部材172と、内周側非摺動シール部材173と、薄肉部174とを有する。
【0024】
補強部材171は、環状に形成され、外径が補強部材161の外径と略同じであり、内径がダストシール16の補強部材161の内径よりも大きく、メインシール18の外径よりも大きく、軸方向に沿った厚みが補強部材161の厚みと比較して大きい。また、補強部材171は、シリンダ2の内側に面して配置されるとともに、上端面171aが補強部材161の内側端面161aと接して配置される。
【0025】
外周側非摺動シール部材172は、補強部材171の外周側の内側端面に加硫接着され、外周部がシリンダ2の内周面に密着して、シリンダ2内の油液の漏れを防止する。つまり、外周側非摺動シール部材172は、シリンダ2の内周面に対して非摺動性の(すなわち、摺動性を要求されない)シール機能を有する。外周側非摺動シール部材172の耐熱性は、メインシール18と比較して小さい。
【0026】
内周側非摺動シール部材173は、補強部材171の内周側の端面に加硫接着されている。内周側非摺動シール部材173は、外径が補強部材171の内径と同じであり、内径が補強部材161の内径よりやや大きい形状に形成されている。内周側非摺動シール部材173の外周側の厚みは、補強部材171の厚みと略同じであり、中央部の厚みは外周側より大きい。
内周側非摺動シール部材173の内周側の上端側(補強部材161側)には、被嵌合部としての段部173aが形成されている。段部173aには、メインシール18が嵌合する。詳細には、段部173aは、径方向に平坦な面を備える平坦部173bと、平坦部173bに対して鋭角な傾斜面を備えた傾斜部173cとを有する。平坦部173bの内周側には、平坦部173bの端面から径方向内側に下方向に傾斜する傾斜部173dが形成されている。傾斜部173dには、メインシール18の外周部が当接される。図示の実施形態では、平坦部173bと内周側非摺動シール部材173の下端面173eとの間の距離は、内周側非摺動シール部材173の上端面173fと下端面173eとの間の距離に対して小さく、略半分となっている。
【0027】
薄肉部(ゴム層)174は、補強部材171の内側端面(下面部)を覆っている。薄肉部174と、外周側非摺動シール部材172と、内周側非摺動シール部材173とは、同一のゴム材料により一体に補強部材171に加硫接着されており、補強部材171に対する接着強度が、例えば外周側非摺動シール部材172と内周側非摺動シール部材173それぞれが単体で補強部材171に加硫接着している場合と比較して高い。シリンダ2にオイルシール4を組付けた時、薄肉部174の下端面には、ロッドガイド3の当接部33が当接する。
本実施形態では、非摺動シール部材17に薄肉部174が形成されているが、この形態に限られるものではなく、薄肉部174を省略してもよい。
【0028】
外周側非摺動シール部材172の形成材料としては、外周側非摺動シール部材172が非摺動性のシール性、及び加硫接着による補強部材171に対する大きな接着強度を有するようなものを採用する。本実施形態では、外周側非摺動シール部材172、内周側非摺動シール部材173、薄肉部174が同一の形成材料で形成されており、例えば、NBR(ニトリルゴム)、H−NBR(水素添加ニトリルゴム)、アクリルゴム、シリコンゴム、FKM(フッ素ゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、混合材などを形成材料として採用することができ、本実施形態ではNBRを採用する。
上述したように、外周側非摺動シール部材172と、内周側非摺動シール部材173とを、同じ材料にて一体に補強部材171に加硫接着することで、低い製造コストで高いシール特性の非摺動シール部材17を製造することができる。
【0029】
<メインシール18>
メインシール18は、環状に形成されており、外周部が非摺動シール部材17の内周側非摺動シール部材173に嵌合し、内周部がピストンロッド10に摺接する。メインシール18は、下端部18aが油室8Cに面するように配置されている。
メインシール18の形成材料としては、メインシール18が、ピストンロッド10に対する摺動性、低摩擦性、耐熱性、シール性、耐変形性などを備えるような材料が用いられる。メインシール18の耐熱性は、外周側非摺動シール部材172および内周側非摺動シール部材173と比較して大きい。
【0030】
メインシール18の形成材料としては、例えば、FKM(フッ素ゴム)、シリコンゴム、ACM(アクリルゴム)、EPDM、ウレタン等を採用することができ、本実施形態ではFKMを採用する。
【0031】
環状のメインシール18は、径方向断面形状が略L字形状に形成されており、上端が径方向外側に延出した形状である。メインシール18は、内径がピストンロッド10の外径と略同じであり、外径が内周側非摺動シール部材173の段部173aの径と同じである。
【0032】
また、メインシール18は、内周側面に、径方向断面が径方向内側に向って下向きに傾斜した形状の傾斜面部181を有し、この傾斜面部181がピストンロッド10に対して摺動自在に当接するように構成されている。
【0033】
また、メインシール18は、径方向外側に向けて突出した形状の嵌合部182を有し、この嵌合部182が、内周側非摺動シール部材173の内周側に形成された被嵌合部としての段部173aに嵌合するように構成されている。嵌合部182は、詳細には、傾斜部183と、下部当接部184と、上部当接部185とを有する。
【0034】
傾斜部183は、径方向外側に向って下側(非摺動シール部材17側)に向って傾斜した形状に形成され、内周側非摺動シール部材173の傾斜部173cに当接する。
下部当接部184は、径方向外側に向けて突出した形状の嵌合部182の下端面に形成され、内周側非摺動シール部材173の平坦部173bに当接する。
上部当接部185は、ダストシール16の補強部材161の内側端面161aの内周部に当接する。
【0035】
また、メインシール18は、外周側端面に、下部当接部184から下方向に向って縮径する形状の傾斜部186を有し、傾斜部186が、内周側非摺動シール部材173の傾斜部173dに当接するように構成されている。
【0036】
次に、ダストシール16、非摺動シール部材17、及びメインシール18の組付けについて、図2、図3、図4を参照しながら説明する。
先ず、メインシール18の嵌合部182を、非摺動シール部材17の内周側非摺動シール部材173の被嵌合部としての段部173aに嵌合させ、詳細にはメインシール18の傾斜部183と、内周側非摺動シール部材173の傾斜部173cとを当接させることにより、メインシール18と非摺動シール部材17とを一体にサブアセンブリとすることができる。
【0037】
そして、非摺動シール部材17の補強部材171の上端面171aと、内周側非摺動シール部材173の上端面173fと、メインシール18の上部当接部185とをそれぞれ、ダストシール16の補強部材161の内側端面161aに当接させた状態で、これらがシリンダ2に固定される。
【0038】
次に、オイルシール4のシリンダ2への取付部の構造について、図2を参照しながら説明する。ロッドガイド3は、上述のようにシリンダ2内に嵌合され、シリンダ2の周囲をかしめて軸方向に固定されている。オイルシール4は、シリンダ2内に嵌合され、非摺動シール部材17の補強部材171の下端面が、直接又は薄肉部174を介してロッドガイド3の当接部33に当接する。そして、ダストシール16の補強部材161の外側端面の外周側が、シリンダ2のカシメ部22に当接させることにより、シリンダ2内にオイルシール4を固定する。すなわち、オイルシール4が、シリンダ2のカシメ部22と、ロッドガイド3の当接部33とにより挟持されることにより、オイルシール4がシリンダ2内の所定位置に固定される。
【0039】
上記実施形態の油圧緩衝器1のオイルシール4は、シリンダ2に装着された状態で、ダストリップ162によって、ピストンロッド10との間をシールして埃、雨水などの異物の浸入を防止し、メインシール18によってピストンロッド10との間をシールし、外周側非摺動シール部材172によって、シリンダ2の内周面との間をシールする。これにより、オイルシール4は、シリンダ2内の油液の漏れを防止する。
【0040】
以上、説明したように、本実施形態のシリンダ装置としての油圧緩衝器1は、シリンダ2とシリンダ2内から外部へ延出するピストンロッド10との間に、シール要素としてのオイルシール4を備える。オイルシール4は、シリンダ2の外側に面して配設され、シリンダ2内に嵌合される環状の補強部材161と、シリンダ2の内側に面して補強部材と接して配置される環状の補強部材171と、補強部材171の外周側に加硫接着された外周側非摺動シール部材172と、補強部材171の内周側に加硫接着された内周側非摺動シール部材173と、内周側非摺動シール部材173に嵌合され、ピストンロッド10と摺接する摺動シール部材としてのメインシール18とを有する。
【0041】
このため、メインシール18に最適な形成材料と、外周側非摺動シール部材172及び内周側非摺動シール部材173に最適な形成材料とを別材料として採用することができる。つまり、メインシール18と外周側非摺動シール部材172に最適な材料を選定する自由度が高くなり、補強部材毎に機能別シールを加硫接着、又は配設することで、シール機能に特化した材料選定が可能になる。
そして、上述したように、簡単な構造で、高いシール性のオイルシール4を有する油圧緩衝器1を提供することができる。
また、メインシール18の形成材料としてフッ素ゴムを採用することで、高い摺動性及びシール性を有するオイルシール4を備えた油圧緩衝器1を提供することができる。
【0042】
本実施形態では、メインシール18は、補強部材171に加硫接着されておらず、嵌合部182が補強部材171に加硫接着された内周側非摺動シール部材173の段部173aに嵌合する構造を有する。このため、メインシール18の材料選定自由度が高い。例えば、メインシール18の形成材料として、外周側非摺動シール部材172及び内周側非摺動シール部材173の形成材料と比較して、補強部材171に対する加硫接着による接着強度が低くても、耐熱性が大きい材料を採用する。こうすることで、高いシール性を有するオイルシール4を備えた油圧緩衝器1を提供することができる。
【0043】
また、本実施形態のオイルシール4は、メインシール18の嵌合部182と、非摺動シール部材17の内周側非摺動シール部材の段部173aとを嵌合させることにより、これらを一体にサブアセンブリとすることができ、このサブアセンブリをシリンダ2に簡単に組み付けることが可能である。つまり、オイルシール4は高い組付性を有する。この高い組付性により油圧緩衝器1の製造コストを低減することができる。また、上述のサブアセンブリ化によりメインシール18の組忘れを防止することができ、オイルシール4の品質安定性を確保することが可能である。
【0044】
また、本実施形態では、外周側非摺動シール部材172と、内周側非摺動シール部材173とが、補強部材171に同一材料にて加硫接着されているので、オイルシール4の製造コストを低減することができる。
【0045】
また、本実施形態では、組付時、メインシール18の嵌合部182が、内周側非摺動シール部材173の段部173aに嵌合し、詳細には、嵌合部182の傾斜部183が、内周側非摺動シール部材173の傾斜部173cに当接し、下部当接部184が平坦部173bに当接している。このため、メインシール18と内周側非摺動シール部材173との結合強度が大きくなる。
また、メインシール18の上部当接部185がダストシール16の補強部材161の内側端面161aに当接し、下部当接部184が平坦部173bに当接し、傾斜部186が内周側非摺動シール部材173の傾斜部173dに当接している。つまり、メインシール18が、ダストシール16と、内周側非摺動シール部材173とにより挟持された状態で、シリンダ2内に組み付けられているので、メインシール18と内周側非摺動シール部材173との結合強度が大きくなる。
【0046】
また、例えば、メインシール18が高い耐熱性と高い剛性とを有し、内周側非摺動シール部材173が低い剛性を有する構造とすることで、摺動時におけるピストンロッド10とメインシール18との密着性を高めることができる。
【0047】
また、本実施形態では、オイルシール4は、メインシール18の傾斜部186と内周側非摺動シール部材173の傾斜部173dとが当接し、メインシール18の傾斜部183と内周側非摺動シール部材173の傾斜部173cとが当接した構造であるので、ピストンロッド10からオイルシール4に作用する軸力に対して、メインシール18を安定的に保持してピストンロッド10との密着性を維持することができる。
【0048】
また、本実施形態では、ダストシール16の補強部材171の内周部がゴム製の薄肉部163に覆われてピストンロッド10側に露出していないので、組付時にピストンロッド10を傷付けることがない。
【0049】
シリンダ2内に嵌合されたオイルシール4は、シリンダ2の側壁の先端部をかしめてカシメ部22を補強部材161に当接させることによって固定されるので、補強部材161を支点としてカシメ部22を折曲することができ、容易かつ確実にカシメ固定を行うことがきる。
【0050】
なお、上記実施形態では、一例として、本発明を単筒式油圧緩衝器に適用した場合について説明しているが、本発明は、これに限らず、複筒式の油圧緩衝器に適用することもできる。また、本発明は、油圧緩衝器以外にも、流体を封入したシリンダからロッドが外部へ延出する構造のものであれば、他のシリンダ装置にも適用することが可能である。また、上記実施形態の油圧緩衝器1内の作動流体は、油液に限らず、ガス等の他の流体でもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 油圧緩衝器(シリンダ装置)、4 オイルシール(シール要素)、10 ピストンロッド(ロッド)、16 ダストシール、17 非摺動シール部材、18 メインシール(摺動シール部材)、161 補強部材(第1補強部材)、171 補強部材(第2補強部材)、172 外周側非摺動シール部材、173 内周側非摺動シール部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと該シリンダ内から外部へ延出するロッドとの間にシール要素が設けられたシリンダ装置であって、
前記シール要素は、
前記シリンダの外側に面して配設され、前記シリンダ内に嵌合される環状の第1補強部材と、
前記シリンダの内側に面して前記第1補強部材と接して配置される環状の第2補強部材と、
前記第2補強部材の外周側に加硫接着された外周側非摺動シール部材と、
前記第2補強部材の内周側に加硫接着された内周側非摺動シール部材と、
前記内周側非摺動シール部材に嵌合され、前記ロッドと摺接する摺動シール部材とを備えていることを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
前記摺動シール部材は、前記外周側非摺動シール部材及び前記内周側非摺動シール部材と比して、耐熱性が高いことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−214639(P2011−214639A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82424(P2010−82424)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】