説明

シリンダ装置

【課題】 部品の軸方向寸法を小さくすることにより、シリンダ装置の軸方向寸法を小くする。
【解決手段】 ロッドガイド9の突起形成部9Cには、蓋体3の外径側3Aを支持する第1環状突起16と蓋体3の内径側3Bを支持する第2環状突起17とを形成する。従って、ロッドガイド9に設けた第1環状突起16は、外筒1の上端側をかしめたときに、そのかしめ部1Aとの間で蓋体3の外径側3Aを挟んで固定することができる。また、外筒1の上端側をかしめるときには、押圧具19を用いて蓋体3をロッドガイド9に向けて強く押圧するが、このときに蓋体3に作用する押圧力は、第2環状突起17によって受止めることができ、蓋体3の恒久的な変形を防止することができる。これにより、蓋体3の厚さ寸法を小さく形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両の振動を緩衝するのに用いて好適なシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は、車体と車輪との間にシリンダ装置を備えている。このシリンダ装置は、走行時に発生する振動を緩和するものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−257177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シリンダ装置は、車体と車輪との間の僅かなスペースに取付けられるものであるから、その軸方向寸法を小さくすることが望まれている。本発明の目的は、軸方向寸法が小さなシリンダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明が採用する構成の特徴は、ロッドガイドの蓋体との対向面には、前記蓋体の外径側を支持する第1環状突起と、前記第1環状突起の径方向内側に離間して設けられ蓋体の内径側を支持する第2環状突起とを形成する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シリンダ装置の軸方向寸法を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施の形態によるシリンダ装置を示す縦断面図である。
【図2】図1のシリンダ装置の上側部分を拡大して示す要部拡大の縦断面図である。
【図3】図2中のa部を示す要部拡大の縦断面図である。
【図4】第1の実施の形態によるロッドガイドを単体で拡大して示す縦断面図である。
【図5】図4のロッドガイドを示す平面図である。
【図6】外筒の他端側をかしめるために蓋体を押圧具で抑えた状態を図2と同様位置からみた縦断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態によるロッドガイドを示す縦断面図である。
【図8】図7のロッドガイドを示す平面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態によるロッドガイドを示す縦断面図である。
【図10】図9のロッドガイドを示す平面図である。
【図11】かしめ部を最も長くした場合の変形例を示す要部拡大の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態に係るシリンダ装置について、添付図面に従って詳細に説明する。
【0009】
まず、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は第1の実施の形態によるシリンダ装置の外形をなす有底筒状の外筒で、該外筒1は、一端側となる下端側がボトムキャップ2を溶接することによって閉塞され、他端側となる上端側は開口している。また、外筒1の上端部は、径方向内側に屈曲させることによってかしめ部1Aとなっている。
【0010】
ここで、外筒1の上端部に形成したかしめ部1Aは、その先端部1A1の位置、つまり、先端部の最小径部分の径方向位置を、後述する第1環状突起16に達するように配置している。具体的に、かしめ部1Aの先端部1A1は、軽量化、低コスト化を図るために、第1環状突起16との間に蓋体3の外径側3Aを挟むことができるほぼ最低限の位置に配置されている。これにより、かしめ部1Aの先端部1A1が蓋体3を押圧する後述の押圧具19に干渉するのを防止することができる。
【0011】
3は外筒1の上端側に設けられた環状円板からなる蓋体で、該蓋体3は、外筒1の上端側の開口を閉塞するものである。また、蓋体3の外径側3Aは、後述のロッドガイド9に当接した状態でかしめ部1Aによりかしめ固定されている。一方、蓋体3の内径側3Bには、後述のロッドシール11が設けられている。
【0012】
4は外筒1内に同軸上に設けられた内筒で、該内筒4は、下端側が後述するボトムバルブ5の外周側に嵌合して取付けられている。また、内筒4は、外筒1との間に環状のリザーバ室Aを画成し、該リザーバ室A内には油液と共にガスが封入されている。このガスは、大気圧の大気であってもよく、また圧縮された窒素ガスでもよい。
【0013】
5は内筒4の下端側に位置してボトムキャップ2と内筒4との間に設けられたボトムバルブで、該ボトムバルブ5は、内筒4の下端側とボトムキャップ2の上面との間に嵌合固着された段付円板状で表面および裏面に環状のバルブシートが形成されたバルブボディ5Aと、該バルブボディ5Aに設けられた油路5B、5Cと、前記バルブボディ5Aの上面側に設けられたチェックバルブ5Dと、前記バルブボディ5Aの下面側に設けられたディスクバルブ5Eとによって大略構成されている。
【0014】
そして、ボトムバルブ5は、ピストン6と一緒にピストンロッド7が伸長したときに、ディスクバルブ5Eが閉弁し、チェックバルブ5Dが開弁することにより、リザーバ室A側の油液を油路5Bを介して後述するボトム側油室Bへと流通させる。一方、ピストンロッド7が縮小したときには、チェックバルブ5Dが閉弁し、ディスクバルブ5Eが開弁することにより、ボトム側油室B側の油液をリザーバ室Aへと流通させる。このときにディスクバルブ5Eは、油路5Cを流通する油液に流動抵抗を与えて減衰力を発生する。
【0015】
6は内筒4内に摺動可能に挿嵌されたピストンで、該ピストン6は、内筒4内をボトム側油室Bとロッド側油室Cとに画成している。また、ピストン6には、ボトム側油室Bとロッド側油室Cとを連通可能な油路6A,6Bが形成されている。さらに、ピストン6の上端面には、ピストンロッド7の縮小によってピストン6が下向きに摺動変位するときに、油路6Aを流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生する縮小側のディスクバルブ6Cが配設されている。また、ピストン6の下端面には、ピストンロッド7の伸長によってピストン6が上向きに摺動変位するときに、油路6Bを流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生する伸長側のディスクバルブ6Dが配設されている。
【0016】
7はピストンロッドで、該ピストンロッド7は、下端側が内筒4内に挿入され、ナット8等によってピストン6の内周側に固着されている。また、ピストンロッド7の上端側は、図2に示すように、後述のロッドガイド9、蓋体3等を介して外部に突出している。
【0017】
9は内筒4の上端側に設けられた円筒状のロッドガイドである。このロッドガイド9は、内筒4の上側部分を外筒1の中央に位置決めすると共に、内周側でピストンロッド7を軸方向にガイドするものである。また、ロッドガイド9は、蓋体3を外筒1のかしめ部1Aにより外側からかしめ固定するときに、該蓋体3を内側から支持する支持構造物を構成している。さらに、ロッドガイド9は、例えば金属材料、硬質な樹脂材料等に成型加工、切削加工等を施すことにより所定の形状に形成されている。
【0018】
そして、ロッドガイド9は、図3、図4に示すように、上側に位置して外筒1の内周側に挿嵌される大径部9Aと、下側に位置して内筒4の内周側に挿嵌される小径部9Bとにより段付円筒状に形成され、該小径部9Bの内周側には、ピストンロッド7を軸方向に摺動可能にガイドするガイド部10が設けられている。このガイド部10は、金属筒の内周面を4フッ化エチレンコーティングしたものである。
【0019】
また、蓋体3と対向する大径部9Aの上端面は、円環状をしたほぼ平坦な突起形成部9Cとなり、該突起形成部9Cには、同心円をなすように後述の第1環状突起16と第2環状突起17とが形成されている。また、小径部9Bの上側で突起形成部9Cの径方向内側には、大径部9Aの内径側を軸方向に窪ませるようにして窪み部9Dが形成され、該窪み部9Dは、後述するロッドシール11の下側リップ部11B,11Cを収容すると共に、油溜め室15の周囲と下側の壁面をなしている。
【0020】
さらに、大径部9Aの外径側には、第1連通路9Eが設けられ、該第1連通路9Eは、周方向に離間した複数箇所、例えば3箇所に配置され、大径部9Aを軸方向に貫通した連通孔として形成されている。これにより、各第1連通路9Eは、リザーバ室Aと後述の環状空間18とを連通している。
【0021】
このように構成されたロッドガイド9は、大径部9Aを外筒1の内周側に圧入し、小径部9Bを内筒4の内周側に圧入して取付けられている。この状態で、ロッドガイド9は、内周側に設けたガイド部10によってピストンロッド7を軸方向にガイドしている。
【0022】
11は蓋体3の内径側に設けられたロッドシールである。このロッドシール11は、例えばニトリルゴム等の弾性材料によって段付筒状に形成され、ピストンロッド7の外周側に摺接することにより蓋体3とピストンロッド7との間をシールするものである。また、ロッドシール11の内径側には、図3に示すように、蓋体3から外部に突出した上側位置に上側リップ部11Aが設けられ、蓋体3から外筒1内に侵入した下側位置に上,下に離間して2つの下側リップ部11B,11Cが設けられている。
【0023】
また、ロッドシール11には、上側リップ部11Aの基端部から蓋体3の上面に沿って外径側に延びた上環状板部11Dと、下側リップ部11B,11Cの基端部から蓋体3の下面に沿って外径側に延びた下環状板部11Eとが互いに対面するように一体形成されている。これらの環状板部11D,11E間は取付凹溝11Fとなり、この取付凹溝11Fは、蓋体3の内径側に溶着、接着等の固着手段を用いて嵌合状態で固着されている。
【0024】
ここで、ロッドシール11の下環状板部11Eは、蓋体3の外径側3Aまで延び、その径方向の途中部位には後述のリップシール13が一体形成され、最外径部には後述のシールリング14が一体形成されている。
【0025】
そして、ロッドシール11は、上側リップ部11Aをリング状の抑えばね12Aによってピストンロッド7の外周側に締代をもって摺接させると共に、下側リップ部11B,11Cを抑えばね12Bによってピストンロッド7の外周側に締代をもって摺接させることにより、ピストンロッド7との間を気液密にシールしている。
【0026】
13はロッドシール11と一体的に形成されたチェック弁としてのリップシールで、該リップシール13は、ロッドシール11と同様にゴム等の弾性材料を用いて形成されている。また、リップシール13は、その基端側がロッドシール11を構成する下環状板部11Eの径方向中間位置に固着され、先端側が径方向外側へと斜め下向きに延びている。また、リップシール13は、後述する各環状突起16,17間の環状空間18に配置され、この位置で先端部がロッドガイド9の突起形成部9Cに締代をもって当接している。
【0027】
そして、リップシール13は、後述する油溜め室15とリザーバ室Aとの間に配置され、前記油溜め室15内の油液が環状空間18、ロッドガイド9の各連通路9Eを通じてリザーバ室A内に流通するのを許し、逆向きの流れ、即ち、リザーバ室A内のガス、油液が油溜め室15側に流れるのを阻止するものである。
【0028】
また、14は蓋体3の外径側3Aに位置してロッドシール11と一体的に形成されたシールリングである。このシールリング14は、リザーバ室A内のガス、油液が外筒1と蓋体3との間から外部に漏出するのを防止するものである。
【0029】
15はロッドガイド9とロッドシール11との間に設けられた油溜め室で、該油溜め室15は、ピストンロッド7、ロッドガイド9の窪み部9D、ロッドシール11の下側リップ部11Bに囲まれた環状の空間部として形成されている。そして、油溜め室15は、ロッド側油室C内の油液またはこの油液中に混入したガスがピストンロッド7とガイド部10との僅かな隙間等を介して漏出したときに、この漏出した油液等を溜め置くものである。
【0030】
16は第1環状突起で、該第1環状突起16は、外筒1のかしめ部1Aに対応するように、ロッドガイド9の突起形成部9Cの外径側に設けられている。また、第1環状突起16は、図3に示す如く、蓋体3の外径側3Aを支持するもので、蓋体3に向けて突出した断面が台形状の円環状突起としてロッドガイド9の突起形成部9Cに一体形成されている。また、第1環状突起16の軸方向の長さ寸法は、後述する第2環状突起17の軸方向の長さ寸法H2よりも長い寸法H1となっている。
【0031】
これにより、第1環状突起16は、外筒1の他端側をかしめ加工したときに、そのかしめ部1Aとの間で蓋体3の外径側3Aを挟んで固定することができる。また、第1環状突起16は、第2環状突起17よりも長く形成しているから、ロッドガイド9が内側から押圧された場合に、このときの荷重を蓋体3を介して強度部材である外筒1のかしめ部1Aで受承させることができる。
【0032】
17はロッドガイド9の突起形成部9Cの内径側に設けられた第2環状突起である。この第2環状突起17は、後述する製造時に押圧具19に対向するように、第1環状突起16よりも径方向内側に離間して設けられている。また、第2環状突起17は、図6に示すように、後述の押圧具19によって蓋体3を上側から押圧したときに、蓋体3の内径側3Bを支持するものである。また、第2環状突起17は、図3に示す如く、蓋体3に向けて突設した軸方向断面が長方形状の円環状突起としてロッドガイド9の突起形成部9Cに一体形成されている。
【0033】
一方、第2環状突起17は、窪み部9Dに隣接する位置、即ち、突起形成部9Cの最内径位置に配置されている。これにより、第2環状突起17は、蓋体3の内径側3Bを確実に支持することができる。
【0034】
また、第2環状突起17の軸方向の長さ寸法は、前述した第1環状突起16の軸方向の長さ寸法H1よりも小さな寸法H2となっている。ここで、第1環状突起16の長さ寸法H1と第2環状突起17の長さ寸法H2との寸法差ΔHは、押圧具19によって蓋体3の内径側3Bを下向きに押圧したときに、蓋体3の弾性変形の範囲で該蓋体3に第2環状突起17の先端面を当接させることができる寸法に設定されている。
【0035】
さらに、ロッドガイド9に一体形成された第2環状突起17には、例えば周方向の4箇所に第2連通路17Aが設けられ、該各第2連通路17Aは第2環状突起17を半径方向に切欠いた連通路として形成されている。そして、各第2連通路17Aは、油溜め室15と後述の環状空間18とを連通するものである。
【0036】
18は第1環状突起16と第2環状突起17との間に設けられた環状空間で、該環状空間18は、ロッドガイド9の第1連通路9Eと第2環状突起17の第2連通路17Aとの間を繋ぐ円環状の空間として形成されている。また、環状空間18には、リップシール13が配置されている。
【0037】
第1の実施の形態によるシリンダ装置は、上述の如き構成を有するもので、外筒1の上端側にロッドガイド9、蓋体3等をかしめ固定する手順について述べる。
【0038】
まず、ロッドガイド9の大径部9Aを外筒1に、小径部9Bを内筒4に圧入した後、ロッドシール11、リップシール13等が取付けられた蓋体3をロッドガイド9の上側に配設する。次に、図6に示すように、ロッドガイド9が軸方向にがたつかないように、円筒状の押圧具19によって蓋体3を介してロッドガイド9を内筒4に押付ける。この状態で、外筒1の上端部を径方向内側に折曲げることにより、蓋体3の外径側3A、ロッドガイド9の大径部9Aをかしめ部1Aによって固定することができる。
【0039】
このときに、押圧具19によって蓋体3を押圧したときには、ロッドガイド9に設けた第2環状突起17が蓋体3の内径側3Bを下側から支持し、蓋体3の過大な変形を防止するようにしている。
【0040】
次に、シリンダ装置を組立てたら、ピストンロッド7の上端側を自動車の車体側に取付け、外筒1の下端側を車軸(いずれも図示せず)側に取付ける。これにより、自動車の走行時に振動が発生した場合には、ピストンロッド7を伸長、縮小させつつ、ピストン6のディスクバルブ6C,6D等によって減衰力を発生させ、このときの振動を減衰する。
【0041】
即ち、ピストンロッド7が伸長行程にある場合には、ロッド側油室C内が高圧状態となるから、ロッド側油室C内の圧油がディスクバルブ6Dを介してボトム側油室B内へと流通し、減衰力が発生する。そして、内筒4から進出したピストンロッド7の進出体積分に相当する分量の油液が、リザーバ室A内からボトムバルブ5のチェックバルブ5Dを介してボトム側油室B内に流入する。
【0042】
そして、このときにロッド側油室C内が高圧状態となるから、ロッド側油室C内の油液は、例えばピストンロッド7とガイド部10との僅かな隙間等を介して油溜め室15内に漏出することがある。また、油溜め室15内に漏出油が増えると、溢れた油液は、第2連通路17Aから環状空間18に流入し、リップシール13を開弁させつつ第1連通路9Eを通じてリザーバ室A内に還流される。
【0043】
さらに、ロッド側油室C内が高圧状態になると、ロッドガイド9を上側に移動させる方向に内部圧が作用する。この場合、ロッドガイド9の外径側に設けた第1環状突起16は、このときの圧力による荷重を蓋体3を介して強度部材である外筒1のかしめ部1Aで受承させることができる。
【0044】
一方、ピストンロッド7が縮小行程にある場合には、ボトム側油室B内が高圧になるから、ボトム側油室B内の圧油がディスクバルブ5Eを介してロッド側油室C内へと流通し、減衰力を発生する。そして、内筒4内へのピストンロッド7の進入体積分に相当する分量の油液が、ボトム側油室Bからボトムバルブ5のディスクバルブ5Eを介してリザーバ室A内に流入し、ピストンロッド7の進入体積分を吸収する。
【0045】
以上のように、第1の実施の形態によれば、ロッドガイド9の突起形成部9Cには、外筒1のかしめ部1Aに対応する位置に蓋体3の外径側3Aを支持する第1環状突起16を設け、該第1環状突起16よりも径方向内側に離間した位置に蓋体3の内径側3Bを支持する第2環状突起17を設ける構成としている。従って、ロッドガイド9に設けた第1環状突起16は、外筒1の上端側をかしめたときに、そのかしめ部1Aとの間で蓋体3の外径側3Aを挟んで固定することができる。
【0046】
しかも、外筒1の上端側をかしめるときには、押圧具19を用いて蓋体3をロッドガイド9に向けて強く押圧するが、このときに蓋体3に作用する押圧力は、ロッドガイド9に設けた第2環状突起17によって受止めることができ、蓋体3の内径側3Bが恒久的に変形するのを防止することができる。
【0047】
また、このかしめ加工で形成されるかしめ部1Aの先端部1A1は、第2環状突起17よりも径方向外側に配置しているから、かしめ部1Aの先端部1A1が押圧具19に干渉するのを防止することができる。
【0048】
この結果、外筒1の上端側に設けた蓋体3は、厚さ寸法を小さく形成することができるから、蓋体3を薄くした分だけシリンダ装置の軸方向寸法を小さくすることができる。また、シリンダ装置を軽量化することができる。
【0049】
また、第1環状突起16の長さ寸法H1を第2環状突起17の長さ寸法H2よりも寸法ΔHだけ長くしているから、ロッドガイド9が内側から押圧された場合には、このときの荷重を前記第1環状突起16から蓋体3を介して外筒1のかしめ部1Aで受承させることができる。
【0050】
一方、ロッドガイド9とロッドシール11との間には油溜め室15を設けているから、内筒4内からロッドガイド9を介して漏出した油液は、油溜め室15に収容することができる。また、油溜め室15に収容した油液は、リップシール13を開弁させつつ、第2連通路17A、環状空間18、第1連通路9Fを介してリザーバ室Aに向けて流通させることができる。一方、リップシール13は、リザーバ室Aから油溜め室15にガスや油液が逆流するのを防止することができる。
【0051】
また、リップシール13は、ロッドシール11と一体的に形成しているから、例えば1回の成型加工でロッドシール11とリップシール13の両方を設けることができる。
【0052】
さらに、第2環状突起17は、ロッドガイド9の突起形成部9Cのうち、最も径方向内側となる窪み部9Dに隣接する位置に配置している。これにより、第2環状突起17によって蓋体3の内径側3Bを確実に支持することができ、蓋体3の塑性変形を防止することができる。また、第2環状突起17と蓋体3との間にはロッドシール11が介装されているので、軸方向のガタつきを吸収することができる。
【0053】
次に、図7および図8は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、第2環状突起を円環状に配設した複数個の突起によって形成したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0054】
図7、図8において、21は内筒4の上端側に設けられる第2の実施の形態による円筒状のロッドガイドを示している。このロッドガイド21は、第1の実施の形態によるロッドガイド9とほぼ同様に、大径部21A、小径部21B、突起形成部21C、窪み部21D、第1連通路21Eからなり、前記突起形成部21Cには、同心円をなすように後述の第1環状突起22と第2環状突起23とが形成されている。
【0055】
22はロッドガイド21の突起形成部21Cの外径側に設けられた第2の実施の形態による第1環状突起である。この第1環状突起22は、第1の実施の形態による第1環状突起16とほぼ同様の軸方向の長さ寸法をもった断面台形状の円環状突起として形成されている。
【0056】
23はロッドガイド21の突起形成部21Cの内径側に設けられた第2の実施の形態による第2環状突起である。この第2環状突起23は、第1環状突起16よりも径方向内側に離間して設けられている。また、第2環状突起23は、蓋体3を上側から押圧したときに、蓋体3の内径側3Bを支持するものである。また、第2環状突起23は、窪み部21Dに隣接する突起形成部21Cの最内径位置に配置されている。
【0057】
そして、第2環状突起23は、蓋体3に向けて突設した円形突起23Aを周方向に間隔をもって円環状に並べることにより、1つの環状突起を構成している。また、各円形突起23A間の隙間は、油溜め室15と各環状突起22,23間の環状空間24とを連通する第2連通路23Bとなっている。さらに、第2環状突起23の軸方向の長さ寸法は、第1の実施の形態による第2環状突起17とほぼ同様の長さ寸法となっている。
【0058】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、第2連通路23Bの通路面積を大きくすることができ、油溜め室15に漏出した油液等をリザーバ室Aに向け効率よく流通させることができる。
【0059】
次に、図9および図10は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、ロッドガイドを金属材料を用いたプレス成形加工により形成したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0060】
図9、図10において、31は内筒4の上端側に設けられる第3の実施の形態による円筒状のロッドガイドを示している。このロッドガイド31の機能は、第1の実施の形態によるロッドガイド9とほぼ同様となっている。しかし、第3の実施の形態によるロッドガイド31は、例えば鋼板、アルミニウム板等の金属板にプレス成形加工を施すことによって形成されている点で、第1の実施の形態によるロッドガイド9と相違している。
【0061】
即ち、ロッドガイド31は、ピストンロッド7の外周側に遊嵌される内側筒部31Aと、該内側筒部31Aの下端部を拡径して設けられた下側拡径部31Bと、該下側拡径部31Bの外径端から上向きに延設された中間筒部31Cと、該中間筒部31Cの上端部に設けられた拡径段部31Dと、該拡径段部31Dの上端部を拡径して設けられた上側拡径部31Eと、該上側拡径部31Eの外径端からから下向きに延設された外側筒部31Fとによって構成されている。また、内側筒部31Aと中間筒部31Cとの間は窪み部31Gとなっている。さらに、上側拡径部31Eには、後述の環状空間34とリザーバ室Aとを連通する例えば3個の第1連通路31Hが設けられている。
【0062】
ここで、ロッドガイド31は、中間筒部31C、外側筒部31Fを内筒4の内周側、外筒1の内周側に圧入して取付けている。また、上側拡径部31Eの上面にはリップシール13が当接し、外径側には後述の第1環状突起32が設けられている。一方、拡径段部31Dには後述の第2環状突起33が取付けられ、内側筒部31Aの内周側にはガイド部10が嵌着される。
【0063】
32はロッドガイド31の上側拡径部31Eの外径側に一体的に設けられた第3の実施の形態による第1環状突起である。この第1環状突起32は、第1の実施の形態による第1環状突起16とほぼ同様の軸方向の長さ寸法をもった断面台形状の円環状突起として一体的に形成されている。
【0064】
33は第1環状突起32よりも径方向内側に離間してロッドガイド31に設けられた第3の実施の形態による第2環状突起である。この第2環状突起33は、別部材からなる短尺な円筒体として形成され、その下端部が拡径段部31Dの内周側に例えば圧入、溶接、接着、螺着等の手段によって取付けられている。一方、第2環状突起33の上端部は、上側拡径部31Eの上面よりも上側に突出し、この上側拡径部31Eの上面よりも上側に突出した突出部33Aは、蓋体3の内径側3Bを下側から支持するものである。また、突出部33Aの軸方向の長さ寸法は、第1の実施の形態による第2環状突起17とほぼ同様の長さ寸法となっている。
【0065】
さらに、第2環状突起33には、例えば突出部33Aの周方向の4箇所に第2連通路33Bが設けられ、該各第2連通路33Bは、油溜め室(図示せず)と各環状突起32,33間の環状空間34とを連通するものである。
【0066】
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態によれば、ロッドガイド31は、例えば鋼板、アルミニウム板等の金属板にプレス成形加工を施すことによって形成しているから、ロッドガイド31を軽量化することができ、また安価に製造することができる。
【0067】
なお、第1の実施の形態では、外筒1のかしめ部1Aの先端部1A1を、軽量化、低コスト化を図るために、第2環状突起17との間に蓋体3の外径側3Aを挟むことができる最低限の位置に配置した場合を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図11に示す変形例による外筒41のように、そのかしめ部41Aを第2環状突起17の近傍まで延ばす構成としてもよい。このように、かしめ部41Aは、その先端部41A1が第2環状突起17よりも径方向外側に配置されていればより好ましいものであるが、かしめ部41Aの先端の最小径部41A1は、前記第2環状突起17の最内径よりも外側に配置されていればよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができる。
【0068】
また、第1の実施の形態では、蓋体3の下面側にチェック弁としてのリップシール13を設け、このリップシール13によって環状空間18を通る油液等を連通、遮断する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばロッドガイド9にチェック弁を設ける構成としてもよい。具体的には、第1連通路9Eのリザーバ室A側の開口を開,閉するようにチェック弁を設ける構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができる。
【0069】
また、第1の実施の形態では、チェック弁としてのリップシール13とシールリング14とをロッドシール11と一体形成するものとして説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばロッドシール11とリップシール13とシールリング14とを別個に設け、それぞれを蓋体3に取付ける構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができる。
【0070】
さらに、油溜め室15をロッドガイド9とロッドシール11との間に設けたが、それに限らず、例えば蓋体3とロッドシール11との間に設けてもよい。また、ロッドガイド9を複数の部材で構成してもよい。
【0071】
さらに、上記実施の形態では、全周かしめの例を説明したが、これに限らず外筒の他端を周方向に4箇所、部分的にかしめるものであってもよい。この場合、かしめられていない部分の最内径が第2の環状突起より外径側にあればよい。
【0072】
さらに、各実施の形態では、自動車に取付けるシリンダ装置を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、振動源となる種々の機械、建築物等に用いるシリンダ装置に用いてもよい。
【0073】
以上の実施の形態で述べたように、請求項1の発明によれば、ロッドガイドに設けた第1環状突起は、外筒の他端側をかしめたときに、そのかしめ部との間で蓋体の外径側を挟んで固定的に支持することができる。
【0074】
しかも、外筒の他端側をかしめるときには、蓋体をロッドガイドに向けて強く押圧しているが、このときに蓋体に作用する押圧力は、第1環状突起の径方向内側に離間してロッドガイドに設けた第2環状突起によって受止めることができ、蓋体の内径側が恒久的に変形するのを防止することができる。また、このかしめ加工で形成されるかしめ部の先端は、第2環状突起よりも径方向外側に配置しているから、蓋体を押圧する押圧具に第2環状突起を対向して配置した場合に、かしめ部の先端が押圧具に干渉するのを防止することができる。
【0075】
この結果、外筒の他端側に設けた蓋体は、厚さ寸法を小さく形成することができるから、シリンダ装置の軸方向寸法を小さくすることができる。また、軽量化することができる。
【0076】
請求項2の発明によれば、第2環状突起の軸方向の長さ寸法よりも第1環状突起の長さ寸法の方を長くしているから、ロッドガイドが内側から押圧された場合には、このときの荷重を前記第1環状突起から蓋体を介して外筒のかしめ部で受承させることができる。
【0077】
請求項3の発明によれば、ロッドガイドとロッドシールとの間には油溜め室を設けているから、内筒内からロッドガイドを介して漏出した油液を油溜め室に収容することができる。また、油溜め室に収容した油液は、チェック弁を開弁させつつリザーバ室に向けて流通させることができる。一方、チェック弁は、リザーバ室から油溜め室に流体が逆流するのを防止することができる。
【0078】
請求項4の発明によれば、リザーバ室と油溜め室とは、第1連通路、環状空間、第2連通路を介して連通させることができる。この上で、環状空間に設けたチェック弁は、油溜め室内の油液がリザーバ室に向けて流通するのを許し逆向きの流れを阻止することができる。
【0079】
請求項5の発明によれば、ロッドシールとチェック弁を一体的に形成することができるから、例えば1回の成型加工でロッドシールとチェック弁の両方を設けることができる。
【0080】
請求項6の発明によれば、第2環状突起は、ロッドガイドの突起形成部のうち、最も径方向内側となる窪み部に隣接する位置に配置しているから、この第2環状突起によって蓋体の径方向内側部分を確実に支持することができる。
【符号の説明】
【0081】
1,41 外筒
1A,41A かしめ部
1A1,41A1 先端部
2 ボトムキャップ
3 蓋体
3A 外径側
3B 内径側
4 内筒
6 ピストン
7 ピストンロッド
9,21,31 ロッドガイド
9A,21A 大径部
9B,21B 小径部
9C,21C 突起形成部
9D,21D,31G 窪み部
9E,21E,31H 第1連通路
11 ロッドシール
13 リップシール(チェック弁)
15 油溜め室
16,22,32 第1環状突起
17,23,33 第2環状突起
17A,23B,33B 第2連通路
18,24,34 環状空間
19 押圧具
A リザーバ室
B ボトム側油室
C ロッド側油室
H1 第1環状突起の長さ寸法
H2 第2環状突起の長さ寸法
ΔH 第1環状突起の長さ寸法と第2環状突起の長さ寸法との差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が閉塞され他端側が開口された外筒と、
前記外筒の他端側の開口を塞ぐように設けられる環状の蓋体と、
前記外筒内に設けられ前記外筒との間に環状のリザーバ室を形成する内筒と、
一端側が前記内筒内に挿入され他端側が前記蓋体を介して前記外筒から外部に突出するピストンロッドと、
前記内筒の他端側に設けられ前記ピストンロッドを摺動可能にガイドする筒状のロッドガイドと、
前記蓋体の内径側に設けられ前記ピストンロッドの外周側に摺接することにより前記ピストンロッドをシールするロッドシールとからなり、
前記外筒の他端側の先端が前記蓋体に向けて内側にかしめ加工されたかしめ部となったシリンダ装置において、
前記ロッドガイドの前記蓋体との対向面には、前記かしめ部に対応する位置に設けられ前記蓋体の外径側を支持する第1環状突起と、前記第1環状突起よりも径方向内側に離間して設けられ前記蓋体の内径側を支持する第2環状突起とを形成する構成としたことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
前記第1環状突起と前記第2環状突起の軸方向の長さ寸法は、前記第2環状突起よりも前記第1環状突起の方が長い構成としてなる請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記ロッドガイドと前記ロッドシールとの間には、前記内筒内から前記ロッドガイドを介して漏出した油液を収容する油溜め室を設け、
前記油溜め室と前記リザーバ室との間には、前記油溜め室内の油液が前記リザーバ室に向けて流通するのを許し逆向きの流れを阻止するチェック弁を設ける構成としてなる請求項1または2に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
前記ロッドガイドには、前記第1環状突起と前記第2環状突起との間の環状空間と前記リザーバ室とを連通する第1連通路と、前記油溜め室と前記環状空間とを連通する第2連通路とを形成し、
前記チェック弁は前記環状空間に設ける構成としてなる請求項3に記載のシリンダ装置。
【請求項5】
前記チェック弁は、前記ロッドシールと一体的に形成する構成としてなる請求項3または4に記載のシリンダ装置。
【請求項6】
前記ロッドガイドの前記蓋体との対向面は、前記第1環状突起と第2環状突起が形成される突起形成部と、前記突起形成部の径方向内側に位置して軸方向に窪んで前記ロッドシールを収容し前記油溜め室となる窪み部とからなり、
前記第2環状突起は、前記窪み部に隣接する位置に配置する構成としてなる請求項1,2,3,4または5に記載のシリンダ装置。
【請求項7】
前記かしめ部先端の最小径部は、前記第2の環状突起の内径よりも外側に位置することを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6に記載のシリンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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