説明

シルエット抽出方法

【課題】被写体のシルエットが精度よく抽出されうる方法の提供。
【解決手段】第一集合作成部24は全てのフレームからなる全フレーム集合を作成する。第二集合作成部26は、それぞれのフレームのそれぞれのピクセルが無彩色であるか有彩色であるかを決定し、それぞれのピクセルごとに、有彩色フレーム集合と無彩色フレーム集合とを作成する。輝度ヒストグラム作成部28は、全フレーム集合について、頻度がフレーム数であり、階級が輝度である輝度ヒストグラムを作成する。色ヒストグラム作成部30は、有彩色フレーム集合及び無彩色フレーム集合について、頻度がフレーム数であり、有彩色フレーム集合に関する階級が色相であり、無彩色フレーム集合に関する階級が輝度である第二ヒストグラムを作成する。判定部32は、両ヒストグラムに基づき、それぞれのピクセルのそれぞれのフレームが背景であるか被写体であるかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ等の動作を行う被写体のシルエットを抽出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルファーがゴルフボールを打撃するとき、左右の爪先を結ぶ線が打撃方向とほぼ平行となるようにアドレスする。右利きのゴルファーのアドレスでは、左足が打撃方向前側に位置し、右足が打撃方向後側に位置する。アドレスでは、ゴルフクラブのヘッドはゴルフボールの近くに位置する。この状態からゴルファーはテイクバックを開始し、ヘッドを後へ、次いで上方へと振り上げる。最もヘッドが振り上げられた位置がトップ位置である。トップ位置からダウンスイングが開始されてヘッドが振り下ろされ、ヘッドがゴルフボールと衝突する(インパクト)。インパクト後、ゴルファーはゴルフクラブを前方へ、次いで上方へと振り抜き(フォロースルー)、フィニッシュを迎える。
【0003】
ゴルファーの技量向上において、適切なスイングフォームの習得が重要である。技量向上の一助とすべく、スイング診断がなされている。スイング診断では、ビデオカメラでスイングが撮影される。ゴルフ用品の開発に役立つ資料の収集の目的で、スイングが撮影されることもある。
【0004】
古典的なスイング診断では、ティーチングプロ等が動画を見て、スイング中の問題点を指摘する。一方、画像処理によってスイングを診断しようとの試みも、なされている。画像処理による場合、ゴルファーが撮影されたピクセルと背景が撮影されたピクセルとが区別される必要がある。この区別により、ゴルファーのシルエットが抽出されうる。区別には、通常は差分処理が用いられる。この処理では、予め背景が撮影される。その後に、ゴルファーが撮影される。背景のみが撮影された画像と、背景及びゴルファーが撮影された画像との差分により、ゴルファーと背景とが区別される。具体的には、両画像において色情報が同じピクセルは背景と判断され、背景以外のピクセルがゴルファー(又はゴルフクラブ)と判断される。かかる診断方法が、特開2005−270534公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−270534公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
背景の撮影とスイングの撮影との間に、天候が変化する場合がある。例えば、背景の撮影時には曇りであったにもかかわらず、スイングの撮影時に日光が照っていることがある。日光によって影が生じた場合、この影のピクセルの色情報が、背景が撮影されたときの色情報と異なる。従って、差分処理により、背景のピクセルがゴルファーのピクセルと誤認識されてしまう。誤認識は、シルエットの抽出の精度を阻害する。ゴルファーは、精度のよいシルエット抽出を望んでいる。野球、テニス等の種々のスポーツにおいても、精度のよいシルエット抽出が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、被写体のシルエットが精度よく抽出されうる方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシルエット抽出方法は、
動作を行う被写体を背景と共に撮影し、それぞれが多数のピクセルを含む複数フレームを得るステップ、
それぞれのピクセルについて、全てのフレームからなる全フレーム集合を作成するステップ、
それぞれのフレームのそれぞれのピクセルが、無彩色であるか有彩色であるかを決定し、それぞれのピクセルごとに、有彩色フレーム集合と無彩色フレーム集合とを作成するステップ、
上記全フレーム集合について、頻度がフレーム数であり、階級が第一色情報である第一ヒストグラムを作成するステップ、
上記有彩色フレーム集合及び無彩色フレーム集合について、頻度がフレーム数であり、有彩色フレーム集合に関する階級が第二色情報であり、無彩色フレーム集合に関する階級が第三色情報である第二ヒストグラムを作成するステップ、
上記第一ヒストグラム及び第二ヒストグラムに基づいて、それぞれのピクセルのそれぞれのフレームが背景であるか被写体であるかを判定するステップ
を含む
【0009】
好ましくは、上記判定するステップは、
第一ヒストグラム及び第二ヒストグラムに基づいて、それぞれのピクセルにつき、全てのフレームにわたって背景であるピクセルであるか、背景であるフレームと被写体であるフレームとが混在するピクセルであるかを決定するステップ
を含む。
【0010】
好ましくは、上記判定するステップは、
背景であるフレームと被写体であるフレームとが混在するピクセルに関し、上記第一ヒストグラム及び第二ヒストグラムに基づいて、背景であるフレーム群と被写体であるフレーム群とに区分できるピクセルかできないピクセルかが判定されるステップ、
及び
背景であるフレーム群と被写体であるフレーム群とに区分できるピクセルに関し、この区分がなされるステップ
を含む。
【0011】
好ましくは、上記判定するステップは、
背景であるフレーム群と被写であるフレーム群とに区分できないと判断されたピクセルのそれぞれのフレームに関し、このピクセルと隣接する他のピクセルとの関係に基づいて、背景であるか被写体であるかを決定するステップ
を含む。
【0012】
本発明に係るシルエット抽出システムは、
(A)動作を行う被写体を背景と共に撮影するためのカメラ、
(B)撮影された画像のデータを記憶するメモリ
及び
(C)演算部
を備える。この演算部は、
(C1)上記画像のデータから、多数のピクセルを含む複数フレームを抽出するフレーム抽出部、
(C2)それぞれのピクセルについて、全てのフレームからなる全フレーム集合を作成する第一集合作成部、
(C3)それぞれのフレームのそれぞれのピクセルが、無彩色であるか有彩色であるかを決定し、それぞれのピクセルごとに、有彩色フレーム集合と無彩色フレーム集合とを作成する第二集合作成部、
(C4)全フレーム集合について、頻度がフレーム数であり、階級が第一色情報である第一ヒストグラムを作成する第一ヒストグラム作成部、
(C5)有彩色フレーム集合及び無彩色フレーム集合について、頻度がフレーム数であり、有彩色フレーム集合に関する階級が第二色情報であり、無彩色フレーム集合に関する階級が第三色情報である第二ヒストグラムを作成する第二ヒストグラム作成部、
(C6)第一ヒストグラム及び第二ヒストグラムに基づいて、それぞれのピクセルのそれぞれのフレームが背景であるか被写体であるかを判定する判定部
を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る方法により、動作を行う被写体のシルエットが精度よく抽出される。このシルエットを用いてなされる診断の精度は、高い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るシルエット抽出システムが示された概念図である。
【図2】図2は、図1のシステムの演算部の詳細が示された概念図である。
【図3】図3は、図1のシステムによってなされるシルエット抽出方法が示されたフローチャートである。
【図4】図4は、図1のカメラの画面が示された説明図である。
【図5】図5は、図3のシルエット抽出方法のためのマスクが示された説明図である。
【図6】図6は、図3のシルエット抽出方法の一部のステップの詳細が示されたフローチャートである。
【図7】図7は、あるピクセルについての輝度ヒストグラムである。
【図8】図8は、他のピクセルについての輝度ヒストグラムである。
【図9】図9は、さらに他のピクセルについての輝度ヒストグラムである。
【図10】図10は、図7のピクセルについての色ヒストグラムである。
【図11】図11は、図8のピクセルについての色ヒストグラムである。
【図12】図12は、図9のピクセルについての色ヒストグラムである。
【図13】図13は、図3の方法の判定ステップの第一ステージが示されたフローチャートである。
【図14】図14は、図3の方法の判定ステップの第二ステージが示されたフローチャートである。
【図15】図15は、図3の方法の判定ステップの第三ステージが示されたフローチャートである。
【図16】図16は、図3の方法で得られたシルエットが示された説明図である。
【図17】図17は、本発明の他の実施形態に係るシルエット抽出システムが示された概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1に示されたシステム2は、携帯電話機4とサーバ6とを備えている。携帯電話機4とサーバ6とは、通信回線8を介して接続されている。携帯電話機4は、カメラ10、メモリ12及び送受信部14を備えている。メモリ12の具体例としては、RAM、SDカード(ミニSD、マイクロSD等を含む)及びその他の記憶媒体が挙げられる。サーバ6は、演算部16、メモリ18及び送受信部20を備えている。
【0017】
典型的な演算部16は、CPUである。図2には、演算部16が示されている。この演算部16は、フレーム抽出部22、第一集合作成部24、第二集合作成部26、輝度ヒストグラム作成部28(第一ヒストグラム作成部)、色ヒストグラム作成部30(第二ヒストグラム作成部)及び判定部32を有している。
【0018】
図3には、図1のシステム2によってなされるシルエット抽出方法のフローチャートが示されている。この補正方法では、カメラ10によって撮影がなされる(STEP1)。図4には、撮影が開始される前の画面が示されている。この画面は、携帯電話機4のモニタ(図示されず)に表示される。この画面には、ゴルフクラブ33を持ったゴルファー34のアドレスが撮影されている。この画面では、ゴルファー34が後方から撮影されている。この画面には、第一枠36及び第二枠38が示されている。これらの枠36、38は、携帯電話機4のCPU(図示されず)の上で実行されるソフトウエアにより、表示される。これらの枠36、38は、撮影者がカメラ10のアングルを決定するときの一助となる。撮影者は、第一枠36にグリップ40が含まれ、第二枠38にヘッド42が含まれるように、カメラ10のアングルを決定する。これらの枠36、38は、カメラ10とゴルファー34との距離の決定の一助ともなる。
【0019】
図4に示された状態から、撮影が開始される。撮影開始後、ゴルファー34はスイングを開始する。ゴルフボール(図示されず)が打撃され、さらにスイングが終了するまで、撮影が継続される。撮影により、動画のデータが得られる。このデータは、メモリ12に記憶される(STEP2)。この動画の画素数は、例えば640×320である。
【0020】
撮影者又はゴルファー34が携帯電話機4を操作することにより、動画のデータがサーバ6へと送信される(STEP3)。データは、携帯電話機4の送受信部14から、サーバ6の送受信部20へ送信される。送信は、通信回線8を介してなされる。データは、サーバ6のメモリ18に記憶される(STEP4)。
【0021】
フレーム抽出部22は、動画のデータから多数のフレーム(すなわち静止画のデータ)を抽出する(STEP5)。1秒あたりの抽出数は30又は60である。必要に応じ、各フレームに補正処理がなされる。補正処理の具体例としては、手ぶれ補正処理が挙げられる。これらフレームには、第一フレームと、この第一フレームよりも後で撮影された他のフレームとが含まれている。
【0022】
第一集合作成部24は、それぞれのピクセルについて、全てのフレームからなる全フレーム集合を作成する(STEP6)。第二集合作成部26は、それぞれのフレームのそれぞれのピクセルが、無彩色であるか有彩色であるかを決定し、それぞれのピクセルごとに、有彩色フレーム集合と無彩色フレーム集合とを作成する(STEP7)。
【0023】
輝度ヒストグラム作成部28は、全フレーム集合について、輝度ヒストグラム(第一ヒストグラム)を作成する(STEP8)。この輝度ヒストグラムでは、頻度がフレーム数であり、階級が輝度(第一色情報)である。他の色情報に基づいて輝度ヒストグラムが作成されてもよい。色ヒストグラム作成部30は、有彩色フレーム集合及び無彩色フレーム集合について、色ヒストグラム(第二ヒストグラム)を作成する(STEP9)。この色ヒストグラムは、頻度がフレーム数であり、有彩色フレーム集合に関する階級が色相(第二色情報)であり、無彩色フレーム集合に関する階級が輝度(第三色情報)である。有彩色フレーム集合に関する階級が、色相以外の色情報であってもよい。無彩色フレーム集合に関する階級が、輝度以外の色情報であってもよい。
【0024】
判定部32は、輝度ヒストグラム及び色ヒストグラムに基づいて、それぞれのピクセルのそれぞれのフレームが背景であるか被写体であるかを判定する(STEP10)。以下、主なステップが詳細に説明される。
【0025】
本実施形態では、第一フレームに、図5に示されるマスク44が設定される。図5から明らかなように、マスク44は、図4に示されたゴルファー34及びゴルフクラブ33を含む。マスク44の外縁は、ゴルファー34の外縁よりも外側であり、ゴルフクラブ33の外縁よりも外側である。それぞれのピクセルが無彩色であるか有彩色であるかの決定において、マスク44に含まれるピクセルは計算の対象とされない。
【0026】
図6のフローチャートには、それぞれのピクセルが無彩色であるか有彩色であるかを決定し、それぞれのピクセルごとに無彩色フレーム集合と有彩色フレーム集合とを作成するステップ(STEP7)の詳細が示されている。
【0027】
この方法では、ピクセルの彩度値sfが算出される(STEP71)。例えば、第1フレームから第60フレームまでの60のフレームに基づいてシルエットが抽出される場合、1つのピクセルあたりの輝度値sfの数は、60個である。
【0028】
これら60の輝度値sfのそれぞれに関し、閾値θsよりも小さいか否かが判定される。閾値θsは、適宜決定されうる。本発明者が用いた閾値θsは、0.15である。換言すれば、輝度値sfが0.15未満であるピクセルの色は、無彩色又は実質的に無彩色とみなされる。輝度値sfが閾値θsより小さいフレームにより、初期の無彩色フレーム集合Fmが得られる(STEP72)。
【0029】
無彩色フレーム集合Fmに属さないフレームfにおけるピクセルの色ベクトルCfに関し、集合Fmとの最小の色距離d(Cf)が計算される(STEP73)。計算は、下記数式に基づいてなされる。
【0030】
【数1】

【0031】
上記数式に基づき、無彩色フレーム集合Fmの中でフレームfとの色距離が最小である場合のnが探索される。
【0032】
得られたd(Cf)が閾値θd未満であるか否かが、判定される(STEP74)。閾値θdは、適宜決定されうる。本発明者が用いた閾値θdは、3.0である。換言すれば、d(Cf)が3.0未満であるピクセルの色は、無彩色又は実質的に無彩色とみなされる。d(Cf)が閾値θd未満である場合、当該フレームは無彩色フレーム集合Fmに追加される(STEP75)。この追加により、無彩色フレーム集合Fmが更新される。d(Cf)が閾値θd以上である場合、当該フレームは有彩色フレーム集合に区分される(STEP76)。かかるフローが、全フレームについての有彩色と無彩色との区分が完了するまで、繰り返される。
【0033】
図6に示されたフローが、マスク44を除く全てのピクセルについてなされる。例えば、マウスを除くピクセルの数が150000であり、フレーム数が60である場合、9000000(15000×60)の輝度値sfが計算される。
【0034】
輝度ヒストグラム作成部28は、全フレーム集合について、輝度ヒストグラムを作成する(STEP8)。あるピクセルについての輝度ヒストグラムの一例が、図7に示されている。この輝度ヒストグラムにおいて、階級は輝度である。このヒストグラムは、1から100までの100階級を含んでいる。このヒストグラムにおいて、頻度はフレーム数である。頻度に、平滑化処理がなされてもよい。図8には、他のピクセルについての輝度ヒストグラムの一例が示されている。図9には、さらに他のピクセルについての輝度ヒストグラムの一例が示されている。それぞれの輝度ヒストグラムにおいて、フレームの総数は98である。
【0035】
色ヒストグラム作成部30は、有彩色フレーム集合及び無彩色フレーム集合について、色ヒストグラムを作成する(STEP9)。あるピクセルについての色ヒストグラムの例が、図10に示されている。この色ヒストグラムは、有彩色フレーム集合のヒストグラムと無彩色フレーム集合のヒストグラムとが複合されたものである。この色ヒストグラムにおいて、有彩色フレーム集合の階級は色相である。色相の階級は、1から100までの100階級を含んでいる。この色ヒストグラムにおいて、無彩色フレーム集合の階級は輝度である。輝度の階級は、1から100までの100階級を含んでいる。階級の合計数は、200である。この色ヒストグラムにおいて、頻度はフレーム数である。頻度に、平滑化処理がなされてもよい。図11には、他のピクセルについての色ヒストグラムの一例が示されている。図12には、さらに他のピクセルについての色ヒストグラムの一例が示されている。それぞれの色ヒストグラムにおいて、フレームの総数は98である。
【0036】
輝度ヒストグラム及び色ヒストグラムに基づいて、それぞれのピクセルが背景であるか被写体であるかが判定される(STEP10)。判定は、判定部32が行う。この判定は、第一ステージ、第二ステージ及び第三ステージからなる。以下、各ステージが詳説される。
【0037】
図13は、第一ステージが示されたフローチャートである。この第一ステージは、ピクセルごとになされる。第一ステージではまず、条件1が満たされるか否かが判断される(STEP1011)。この条件1は、下記の通りである。
条件1:輝度ヒストグラムにおいて、階級幅が20以下の範囲に全てのフレームが 含まれる
なお、階級幅として「20」以外の値が用いられてもよい。
【0038】
図7の輝度ヒストグラムでは、輝度が12から19まで(すなわち幅が8)の範囲に、全てのフレームが含まれている。従って、この輝度ヒストグラムは、上記条件1を満たす。図8の輝度ヒストグラムでは、階級の最小値は12であり、最大値は72である。従って、この輝度ヒストグラムは、上記条件1を満たさない。図9の輝度ヒストグラムでは、階級の最小値は13であり、最大値は77である。従って、この輝度ヒストグラムは、上記条件1を満たさない。
【0039】
次に、条件2が満たされるか否かが判断される(STEP1012)。この条件2は、下記の通りである。
条件2:色ヒストグラムにおいて、階級幅が20以下の範囲に全てのフレームが 含まれる
なお、階級幅として「20」以外の値が用いられてもよい。
【0040】
図10は、図7のピクセルについての色ヒストグラムである。図11は、図8のピクセルについての色ヒストグラムである。図12は、図9のピクセルについての色ヒストグラムである。図10の色ヒストグラムでは、色相が59から66まで(すなわち幅が7)の範囲に、全てのフレームが含まれている。従って、この色ヒストグラムは、上記条件2を満たす。図11の色ヒストグラムでは、色相の階級の最小値は40であり、最大値は65である。さらに、図11のヒストグラムでは、輝度の階級が頻度を有する。従って、この色ヒストグラムは、上記条件2を満たさない。図12の色ヒストグラムでは、色相の階級の最小値は16であり、最大値は64である。さらに、図12のヒストグラムでは、輝度の階級が頻度を有する。従って、この色ヒストグラムは、上記条件2を満たさない。
【0041】
図7及び10に示されたピクセルでは、輝度ヒストグラムが上記条件1を満たし、色ヒストグラムが上記条件2を満たす。スイングのとき、ゴルファー34は動く。この動きに起因して、ピクセルにゴルファー34及び背景の両方が撮影されうる。ゴルファー34及び背景の両方が撮影された場合、当該ピクセルの輝度又は色相は、大幅に変動する。上記条件1及び2の両方を満たすピクセルは、輝度及び色相の変動が小さなピクセルである。換言すれば、このピクセルには、第一フレームから最終フレームまでの間、ゴルファー34は撮影されていないと考えられる。上記条件1及び2を満たすピクセルについては、全てのフレームにおいて、「背景」と判定される(STEP1013)。
【0042】
互いに輝度が同じである有彩色と無彩色とは、輝度ヒストグラムでは区別され得ないが、色ヒストグラムでは区別されうる。互いに色相が同じで互いに輝度が異なる2つの有彩色は、色ヒストグラムでは区別され得ないが、輝度ヒストグラムでは区別されうる。本発明に係るシルエット抽出方法では、条件1及び2の両方が満たされれば、当該ピクセルについては、全てのフレームにおいて、「背景」と判定される。換言すれば、輝度ヒストグラム及び色ヒストグラムの両方が考慮されて、判定がなされる。従って、背景でないピクセルが背景と誤認定されることがほとんどない。
【0043】
なお、第一フレームから最終フレームまでの間にゴルファー34のみが撮影されたピクセルでも、上記条件1及び2が満たされうる。しかし、前述の通り、ゴルファー34にはマスク44によってマスキングがなされているので、上記条件1及び2を満たすピクセルについては、全てのフレームにおいて、「背景」と判定されうる。
【0044】
第一フレームから最終フレームまでの間に、ゴルファー34及び背景の両方が撮影されたピクセルは、上記条件1又は2を満たさない。条件1又は2を満たさないピクセルについては、判定は第二ステージに持ち越される。
【0045】
以下、第二ステージが詳説される。第一ステージにおいて、「ゴルファー34及び背景の両方が撮影されている」と判断されたピクセルに関し、第二ステージにおいて、さらに検討が加えられる。図14は、第二ステージが示されたフローチャートである。この第二ステージは、ピクセルごとになされる。第二ステージではまず、条件3が満たされるか否かが判断される(STEP1021)。この条件3は、下記の通りである。
条件3:輝度ヒストグラムにおいて、階級幅が20以下の範囲に、全フレームの6 0%以上が含まれる
なお、階級幅として「20」以外の値が用いられてもよい。比率として「60%」以外の値が用いられてもよい。
【0046】
図8の輝度ヒストグラムでは、輝度が12から19まで(すなわち幅が8)の範囲に、80(すなわち81.6%)のフレームが含まれている。従って、上記条件3を満たす。図9の輝度ヒストグラムでは、上記条件3は満たされない。
【0047】
次に、条件4が満たされるか否かが判断される(STEP1022)。この条件4は、下記の通りである。
条件4:色ヒストグラムにおいて、階級幅が20以下の範囲に、全フレームの6 0%以上が含まれる
なお、階級幅として「20」以外の値が用いられてもよい。比率として「60%」以外の値が用いられてもよい。
【0048】
図11の色ヒストグラムでは、輝度が59から65まで(すなわち幅が7)の範囲に、72(すなわち73.5%)のフレームが含まれている。従って、上記条件4を満たす。図12の輝度ヒストグラムでは、上記条件4は満たされない。
【0049】
図8及び11に示されたピクセルでは、輝度ヒストグラムが上記条件3を満たし、色ヒストグラムが上記条件4を満たす。階級幅が20以下の範囲に、全フレームの60%以上のフレームが含まれる場合、当該階級幅内のフレーム群の当該ピクセルでは、輝度又は色相の変動が小さいと考えられる。一方、当該階級幅外のフレーム群の当該ピクセルの輝度又は色相は、当該階級幅内のフレームの当該ピクセルの輝度又は色相とは大きく異なっていると考えられる。かかる現象から、第一フレームから最終フレームまでの間、当該ピクセルに主として背景が撮影されており、かつ、一時的にゴルファー34の人体が撮影されたと考えられる。上記条件3及び4を満たすピクセルについては、当該階級幅内のフレームを「背景」と判定し、その他のフレームを「被写体」と判定する(STEP1023)。
【0050】
互いに輝度が同じである有彩色と無彩色とは、輝度ヒストグラムでは区別され得ないが、色ヒストグラムでは区別されうる。互いに色相が同じで互いに輝度が異なる2つの有彩色は、色ヒストグラムでは区別され得ないが、輝度ヒストグラムでは区別されうる。本発明に係るシルエット抽出方法では、条件3及び4の両方に基づき、判定がなされる。換言すれば、輝度ヒストグラム及び色ヒストグラムの両方が考慮されて、判定がなされる。従って、誤認定が抑制される。
【0051】
図9及び12に示されるようなヒストグラムを呈するピクセルの判定は、第三ステージに持ち越される。
【0052】
以下、第三ステージが詳説される。第二ステージにおいて判定が持ち越されたピクセル、及びマスク44に該当するピクセルに関し、第三ステージにおいて、さらに検討が加えられる。以下、既に「背景」か「被写体」かの判定がなされたピクセルを「判定完了ピクセル」と称する。一方、「背景」か「被写体」かの判定が未だなされていないピクセルを「判定未完了ピクセル」と称する。
【0053】
図15は、第三ステージが示されたフローチャートである。第三ステージでは、判定未完了ピクセルに関し、距離画像dxyが生成される(STEP1031)。距離画像dxyは、二次元データに奥行きデータを付加したものである。ここで奥行きデータは、境界までの距離である。
【0054】
閾値θdの初期値が1であるとき、dxyがθd未満である判定未完了ピクセルの8近傍に、判定完了ピクセルが存在するか否かが検討される(STEP1032)。ここで8近傍とは、当該判定未完了ピクセルの左、左上、上、右上、右、右下、下及び左下に位置する8個のピクセルを意味する。
【0055】
8近傍に判定完了ピクセルが全く存在しない場合、当該ピクセルは、全てのフレームにおいて「被写体」であると判定される(STEP1033)。8近傍に1又は2以上の判定完了ピクセルが存在する場合、下記条件5が満たされるか否かが判断される(STEP1034)。この条件5は、下記の通りである。
【0056】
条件5:輝度ヒストグラムにおいて、下記数式を満たすフレーム群が存在する
【0057】
min(LQ) > min(LB)−θw
max(LQ) < max(LB)+θw
これら数式において、min(LQ)は判定未完了ピクセルの輝度ヒストグラムにおける上記フレーム群の階級幅最小値であり、max(LQ)は判定未完了ピクセルの輝度ヒストグラムにおける上記フレーム群の階級幅最大値であり、min(LB)は8近傍に存在する1つの判定完了ピクセルの輝度ヒストグラムにおける背景であるフレーム群の階級幅最小値であり、max(LB)は8近傍に存在する1つの判定完了ピクセルの輝度ヒストグラムにおける背景であるフレーム群の階級幅の最大値である。θwは、適宜設定される。本発明者は、θwとして6を用いた。
【0058】
8近傍に1又は2以上の判定完了ピクセルが存在する場合、さらに、下記条件6が満たされるか否かが判断される(STEP1035)。この条件6は、下記の通りである。
【0059】
条件6:色ヒストグラムにおいて、下記数式が満たすフレーム群が存在する
【0060】
min(CQ) > min(CB)−θw
max(CQ) < max(CB)+θw
これら数式において、min(CQ)は判定未完了ピクセルの色ヒストグラムにおける上記フレーム群の階級幅最小値であり、max(CQ)は判定未完了ピクセルの色ヒストグラムにおける上記フレーム群の階級幅最大値であり、min(CB)は8近傍に存在する1つの判定完了ピクセルの色ヒストグラムにおける背景であるフレーム群の階級幅最小値であり、max(CB)は8近傍に存在する1つの判定完了ピクセルの色ヒストグラムにおける背景であるフレーム群の階級幅最大値である。θwは、適宜設定される。本発明者は、θwとして6を用いた。
【0061】
上記条件5及び6を満たすフレーム群の当該ピクセルは「背景」と判定され、満たさないフレーム群の当該ピクセルは「被写体」と判定される(STEP1036)。当該判定完了ピクセルとの関係において上記条件5及び6のいずれかが満たされず、かつ8近傍に他の判定完了ピクセルが存在する場合、他の判定完了ピクセルとの関係において、上記条件5及び6が満たされるか否かが、判断される。
【0062】
全ての判定未完了ピクセルについて条件5及び6の検討が完了した後、θdに「1」が加算される(STEP1037)。そして、判定未完了ピクセルの8近傍に判定完了ピクセルが存在するか否かの検討(STEP1032)から、判定(STEP1036)までのフローが繰り返される。この繰り返しは、θdがθdmaxとなるまでなされる。θdmaxは、距離画像における最大値である。
【0063】
以上のフローにより、全てのフレームの全てのピクセルが、「背景」及び「被写体」のいずれかに区分される。各フレームにおいて、被写体とされたピクセルの集合は、被写体のシルエットである。図16には、1つのフレームのシルエットが示されている。図1では、被写体のピクセルが黒で示され、他のピクセルが白で示されている。図16から明らかなように、この方法により、被写体(ゴルファー34)のシルエットがほぼ忠実に再現されている。このようなシルエットを用い、ゴルファー34のスイングが画像処理によって診断されうる。撮影開始から終了までは短時間なので、この間に天候が大幅に変化することは少ない。従って、天候変化に起因する誤認識は生じにくい。
【0064】
図17は、本発明の他の実施形態に係るシルエット抽出システム46が示された概念図である。このシステム46は、携帯電話機48からなる。この携帯電話機48は、カメラ50、メモリ52及び演算部54を備えている。図示されていないが、この演算部54は、図2に示された演算部16と同様、フレーム抽出部、第一集合作成部、第二集合作成部、輝度ヒストグラム作成部、色ヒストグラム作成部及び判定部を含んでいる。この演算部54は、図2に示された演算部16と同等の機能を果たす。つまり、この演算部54が、シルエットの抽出を行う。従って、携帯電話機48とサーバとの接続は不要である。撮影者は、携帯電話機48のみを持参すれば、その場でスイングを診断しうる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明されたシルエット抽出方法は、スイングの診断、ゴルフクラブの開発、ゴルフシューズの開発等において有用である。この抽出方法は、テニス、野球等の種々のスポーツのフォーム診断に用いられうる。
【符号の説明】
【0066】
2・・・シルエット抽出システム
4・・・携帯電話機
6・・・サーバ
8・・・通信回線
10・・・カメラ
12・・・メモリ
16・・・演算部
22・・・フレーム抽出部
24・・・第一集合作成部
26・・・第二集合作成部
28・・・輝度ヒストグラム作成部
30・・・色ヒストグラム作成部
32・・・判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作を行う被写体を背景と共に撮影し、それぞれが多数のピクセルを含む複数フレームを得るステップ、
それぞれのピクセルについて、全てのフレームからなる全フレーム集合を作成するステップ、
それぞれのフレームのそれぞれのピクセルが、無彩色であるか有彩色であるかを決定し、それぞれのピクセルごとに、有彩色フレーム集合と無彩色フレーム集合とを作成するステップ、
上記全フレーム集合について、頻度がフレーム数であり、階級が第一色情報である第一ヒストグラムを作成するステップ、
上記有彩色フレーム集合及び無彩色フレーム集合について、頻度がフレーム数であり、有彩色フレーム集合に関する階級が第二色情報であり、無彩色フレーム集合に関する階級が第三色情報である第二ヒストグラムを作成するステップ、
上記第一ヒストグラム及び第二ヒストグラムに基づいて、それぞれのピクセルのそれぞれのフレームが背景であるか被写体であるかを判定するステップ
を含むシルエット抽出方法。
【請求項2】
上記判定するステップが、
上記第一ヒストグラム及び第二ヒストグラムに基づいて、それぞれのピクセルにつき、全てのフレームにわたって背景であるピクセルであるか、背景であるフレームと被写体であるフレームとが混在するピクセルであるかを決定するステップ
を含む請求項1に記載のシルエット抽出法。
【請求項3】
上記判定するステップが、
上記背景であるフレームと被写体であるフレームとが混在するピクセルに関し、上記第一ヒストグラム及び第二ヒストグラムに基づいて、背景であるフレーム群と被写体であるフレーム群とに区分できるピクセルかできないピクセルかが判定されるステップ、
及び
背景であるフレーム群と被写体であるフレーム群とに区分できるピクセルに関し、この区分がなされるステップ
を含む請求項2に記載のシルエット抽出法。
【請求項4】
上記判定するステップが、
上記背景であるフレーム群と被写であるフレーム群とに区分できないと判断されたピクセルのそれぞれのフレームに関し、このピクセルと隣接する他のピクセルとの関係に基づいて、背景であるか被写体であるかを決定するステップ
を含む請求項3に記載のシルエット抽出法。
【請求項5】
(A)動作を行う被写体を背景と共に撮影するためのカメラ、
(B)撮影された画像のデータを記憶するメモリ
及び
(C)演算部
を備えており、
この演算部が、
(C1)上記画像のデータから、多数のピクセルを含む複数フレームを抽出するフレーム抽出部、
(C2)それぞれのピクセルについて、全てのフレームからなる全フレーム集合を作成する第一集合作成部、
(C3)それぞれのフレームのそれぞれのピクセルが、無彩色であるか有彩色であるかを決定し、それぞれのピクセルごとに、有彩色フレーム集合と無彩色フレーム集合とを作成する第二集合作成部、
(C4)全フレーム集合について、頻度がフレーム数であり、階級が第一色情報である第一ヒストグラムを作成する第一ヒストグラム作成部、
(C5)有彩色フレーム集合及び無彩色フレーム集合について、頻度がフレーム数であり、有彩色フレーム集合に関する階級が第二色情報であり、無彩色フレーム集合に関する階級が第三色情報である第二ヒストグラムを作成する第二ヒストグラム作成部、
(C6)第一ヒストグラム及び第二ヒストグラムに基づいて、それぞれのピクセルのそれぞれのフレームが背景であるか被写体であるかを判定する判定部
を含む、シルエット抽出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−78069(P2011−78069A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230417(P2009−230417)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【出願人】(504005747)
【出願人】(504005219)
【Fターム(参考)】