説明

シングルジャージと編成方法

【課題】衣料用シングルジャージのようには伸縮せず、寸法安定性を兼ね備え、伝線の発生し難い内装材用シングルジャージを得る。
【解決手段】各ウェールWにおいて編成長さ方向Yに続く任意の編目が形成されてから次の編目が形成されるまでの選針回数が異なる短編目21と長編目11を編成長さ方向Yに交互に形成すると共に、隣り合うウェールの長編目と短編目を編幅方向Xにおいて隣り合わせにする。任意のウェールに隣り合う2つのウェールの編目と編目を、その任意のウェールにおいてウエルトに選針された編糸の形成するウエルトシンカーループ30を介して連続させ、ウエルトシンカーループ30と任意のウェールにおける長編目11を交叉させる。長編目11は、そのウェールにおいてタックに選針された編糸の形成するタックループ11tに重なり合った多重編目10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として内装材、特に、車両用内装材に使用されるシングルジャージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シングルジャージは、経編地に比して伸縮し易く、車両の天井、ドア、座席等の立体形状に成形し易いことから、車両用内装材に好んで使用される。しかし、シングルジャージでは、1個の編目が解れると、編成長さ方向に続くウェールにおいて連鎖して隣り合う編目と編目の連鎖が解れ、そのウェール方向に連鎖して続いていた編目間の連鎖が次々に解けて発生する”伝線”が問題となる。
【0003】
その伝線を防ぐ方法として、2種類の編糸を使用し、ニットループとタックループを入れ混ぜて編成する方法(例えば、特許文献1参照)や、ニットループとタックループの入り混じった混合ウェールと編目だけが続くニットウェールを編幅方向に交互に繰り返し形成する方法(例えば、特許文献2参照)が考えられている。
【0004】
【特許文献1】特開平08−100305号公報
【特許文献2】特開2004−124345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1・2に記載の何れの方法も衣料用シングルジャージにおける伝線防止方法であり、それを効果的に実施するためには弾性糸を併用し、先に解れ出た編目に連鎖して続く編目を弾性的に閉じ加減にし、その先に解れ出た編目を、それに連鎖して続く編目から解れ出た編目が抜け出さないようにしている。しかし、内装用シングルジャージを衣料用シングルジャージと同程度に伸縮自在にすると、内装用シングルジャージは寸法安定性を著しく欠くものとなり、それを内装材に使用すると、次第に弛緩して皺が発生し易く、又、摩耗し易い等の不具合が発生する。
【0006】
そこで本発明は、衣料用シングルジャージのようには伸縮せず、寸法安定性を兼ね備え、伝線の発生し難い内装材用シングルジャージを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシングルジャージは、任意のウェールWにおいて編成長さ方向Yに続く任意の編目が形成されてから次の編目が形成されるまでに編糸が給糸される選針回数が少ない選針回数Hの給糸によって形成された短編目21と、その選針回数が短編目21の選針回数Hよりも多い選針回数Kの給糸によって形成された長編目11が、各ウェールW1・W2の編成長さ方向Yにおいて前後して続いており、任意のウェールの短編目21が、その任意のウェールに隣り合う他のウェールの長編目11に編幅方向Xにおいて隣り合っており、任意のウェールに隣り合う2つのウェールの中の一方のウェールの何れかの編目(11・21)と、その任意のウェールに隣り合う2つのウェールの中の他方のウェールの何れかの編目(11・21)が、その任意のウェールにおいてウエルトに選針された編糸の形成するウエルトシンカーループ30を介して連続しており、任意のウェールに隣り合う2つのウェールの編目(11・21)と編目(11・21)の間で連続しているウエルトシンカーループ30が、その任意のウェールにおける長編目11に交叉しており、長編目11が、そのウェールにおいてタックに選針された編糸の形成するタックループ11tに重なり合って多重編目10を構成していることを第1の特徴とする。
【0008】
本発明に係るシングルジャージの第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、多重編目10を構成している長編目11のニットループ11nが、その多重編目を構成しているタックループ11tよりも長く、任意のウェールの多重編目10を構成している長編目11のニットループ11nから続くニットシンカーループ11mが、その任意のウェールにおける短編目21を潜り抜けて、その任意のウェールに隣り合うウェールにおける多重編目10を構成しているタックループ11tから続くタックシンカーループ11sへと続いている点にある。
【0009】
本発明に係るシングルジャージの第3の特徴は、上記第1の特徴に加えて、多重編目10を構成している長編目11のニットループ11nが、その多重編目を構成しているタックループ11tよりも長く、任意のウェールの多重編目10を構成している長編目11のニットループ11nから続くニットシンカーループ11mが、その任意のウェールにおける短編目21を潜り抜けて、その任意のウェールに隣り合うウェールに更に隣り合うウェールにおいて多重編目10を構成している長編目11のニットループ11nから続くニットシンカーループmへとウエルトシンカーループ30を介して連続している点にある。
【0010】
本発明に係るシングルジャージの第4の特徴は、上記第1と第2と第3の何れかの特徴に加えて、任意のウェールにおいて多重編目10aを構成しているタックループ11tから続くタックシンカーループ11sが、その任意のウェールに隣り合うウェールにおける長編目11または短編目21のニットシンカーループへと続いており、その任意のウェールに隣り合う2つのウェールの編目(11・21)と編目(11・21)の間で連続しているウエルトシンカーループ(30)に交叉している点にある。
【0011】
本発明に係るシングルジャージの第5の特徴は、上記第1と第2と第3と第4の何れかの特徴に加えて、長編目11と短編目21が互いに異なる編糸によって構成されており、長編目11を構成している編糸の総繊度が短編目21を構成している編糸の総繊度よりも太い点にある。
【0012】
本発明に係るシングルジャージの第6の特徴は、上記第5の特徴に加えて、長編目11を構成している編糸が捲縮繊維マルチフィラメント糸である点にある。
【0013】
本発明に係るシングルジャージの第7の特徴は、上記第1と第2と第3と第4と第5と第6の何れかの特徴に加えて、各ウェールW1・W2の編成長さ方向Yにおいて交互する長編目11と長編目11の間に介在する短編目21の数が1〜2個であり、短編目21と短編目21の間に介在する長編目11の数が1個である点にある。
【0014】
本発明に係るシングルジャージの編成方法は、隣り合う第1編針41の形成する第1ウェールW1と第2編針42の形成する第2ウェールW2を単位ウェール(L)とし、第1編針41と第2編針42に2〜3回編糸を供給する2〜3回の給糸(F1a、F1b、F1c)から成る第1給糸群F1と、第1編針41と第2編針42に第1給糸群F1における選針回数と同数となる2〜3回編糸を供給する2〜3回の給糸(F2a、F2b、F2c)から成る第2給糸群F2との合計4回または6回の給糸を単位給糸(E)とし、第1給糸群F1と第2給糸群F2の間においては、2〜3回の給糸における第1編針41と第2編針42の選針パターンを入れ替えてシングルジャージを編成する過程において、第1給糸群F1における第1編針41への2〜3回の全ての給糸をニットとし、第2編針42への2〜3回の何れか1回の給糸をウエルトとし、その残りの1〜2回の給糸をタックとし、第2給糸群F2における第1編針41への2〜3回の中の何れか1回の給糸をウエルトとし、その残りの1〜2回の給糸をタックとし、第2編針42への2〜3回の全ての給糸をニットとし、第1ウェールW1と第2ウェールW2の間で交互して2〜3回の連続する給糸において2〜3個の編目を連続形成し、その連続する2〜3回の給糸において、各ウェールに隣り合う2つのウェールの中の一方のウェールの1〜2個の編目(11・21)と、その隣り合う2つのウェールの中の他方の1〜2個のウェールの編目(11・21)の間を、ウエルトに選針した編糸によるウエルトシンカーループ30によって連続させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
図1に示すように、各ウェールWにおいて編成長さ方向Yに続く任意の編目が形成されてから次の編目が形成されるまでに編糸が給糸される選針回数が少ない選針回数Hの給糸によって形成された短編目21は、その選針回数が短編目21の選針回数Hよりも多い選針回数Kの給糸によって形成された長編目11に比して細かく、編成長さ方向Yに連鎖している細かい短編目21Pが長編目11Qの輪の中に遊嵌していて抜け易いとしても、解れ出た大きい長編目11Pは、それが連鎖していた細かい短編目21Rによる拘束から解放されると、その選針回数Kに応じて大きく輪状に脹らみ出し、それが連鎖している細かい短編目21Qから抜け出し難くなる。
【0016】
その解れ出た長編目11Pが格別大きく脹らまないとしても、その大きな長編目11Pが長ければ、無限に長い糸条が針孔から抜け出さないように、その連鎖している細かい短編目21Qからは容易に抜け出さない(図1)。
【0017】
その長編目11のニットシンカーループ11m(11s)が、その長編目11Pの編成長さ方向(Y)の逆方向(Y)乃至直角方向(X)に折れ曲がって続いているので、そのニットシンカーループ11m(11s)に作用する張力は、大きい長編目11Pを細かい短編目21Qから引き抜く方向には作用し難くなる。
【0018】
その長編目11のニットループ11nが、その多重編目10に連鎖する短編目21の折れ曲がったニットシンカーループの折り目に、その多重編目10の一部を成すタックループ11tと一緒に挟み込まれているのでズレ動き難く、長編目11のニットループ11nがズレ動くときはタックループ11tが絡むので、短編目21も長編目11から外れ難くなる。
【0019】
そして、解れ出た長編目11Pに隣り合う左右のウェールとウェールの間は、その解れ出た長編目11Pに連続せず、その解れ出た長編目11Pに直交する異なる編糸によるウエルトシンカーループ30によって、その解れ出た長編目11Pに隣り合うウェールの編目(11・21)と編目(11・21)の間が連結されているので、解れた長編目11Pにウェールが大きく目開きすることはなく、長編目11Pが、その連鎖する細かい短編目21Qから抜け出し難い状態に維持される(図1)。
【0020】
編幅方向Xにおいて隣り合う短編目21と長編目11を編成長さ方向Yに交互に編成するためには、長編目11の編糸と短編目21の編糸とは同時に給糸せず、それらは別々に給糸することになるので、長編目11の編糸の総繊度を短編目21の編糸の総繊度よりも太くすると、短編目21が相対的に長編目11よりも隙間(輪奈)の細かいものとなり、又、その解れ出た長編目11Pが一層大きく膨らんで短編目21Qから更に抜け出し難くなる(図1)。
【0021】
そのように、長編目11の編糸の総繊度を短編目21の編糸の総繊度よりも太くするときは、長編目11がニードルループ面に隆起したループパイル状の凸部を形成することになるので(図1)、感触の柔らかいシングルジャージが得られる。
一方、短編目21は、その長編目11のループパイル状の凸部の下に隠れることになるので(図1)、長編目11の編糸に比して細い編糸を短編目21に使用しても何ら不都合は生じない。
本発明では、太い捲縮繊維マルチフィラメント糸を長編目11の編糸に使用したので、嵩高で感触が柔らかく、摩耗し難く、内装用シングルジャージに好適なシングルジャージが得られる。
【0022】
本発明では、各ウェールの編成長さ方向Yにおいて交互する長編目11と長編目11の間に介在する短編目21の数を1〜2個としたので、長編目11が長く浮き出て引っ掻き出されるようなことはなく、ニードルループ面を起毛して仕上げることも可能となり、シングルジャージが耐摩耗性に優れたものとなる。
【0023】
そのように、長編目11の編込み長さが、長く浮き出て引っ掻き出される程度ではなく、而も、各長編目11に隣り合う2つのウェールの編目(11・21)と編目(11・21)の間で連続しているウエルトシンカーループ30が長編目11に交叉しているので、編幅方向Xでの寸法安定性も向上し、その長編目11が解れ出ても2つのウェール間が大きく目開きすることがなく、寸法安定性と耐久性に優れたシングルジャージが得られる。
【0024】
本発明の編成方法によると、短編目21Pが解れ出すとしても、その解れは長編目11Qで止められ(図1)、伝線が発生せず、衣料用シングルジャージのようには伸縮せず、寸法安定性と耐久性に優れ、長編目11がループパイル状の凸部となって市松模様状に現われて内装用シングルジャージに好適なシングルジャージが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
長編目11の編糸に使用する捲縮繊維は、短編目21の編糸に使用する繊維に比して捲縮しているものであればよい。
しかし、長編目11が細かい短編目21に確り把持されて、解れても短編目21から抜け出し難くするためには、短編目21の編糸には無捲縮のマルチフィラメント糸を使用することが望ましく、そのように短編目21の編糸に無捲縮乃至低捲縮マルチフィラメント糸を使用することによって、シングルジャージのセット性(形状安定性)を高めることが出来る。
長編目11が細かい短編目21に確り把持されるようにするためには、長編目11の編糸の総繊度を短編目21の編糸の総繊度よりも太くし、長編目11の編糸の繊維を短編目21の編糸の繊維よりも高捲縮にすると共に、長編目11の編糸の単繊維繊度を、短編目21の編糸の単繊維繊度よりも細く、概して2dtex以下にすると効果的である。
【0026】
内装用シングルジャージは、その内装材としての使用において、衣類に縫合されている雄形面ファスナーに擦られて綻ぶことが問題になり易い。
しかし、本発明によると、長編目11が短編目21に確り把持されており、その短編目は、ループパイル状に隆起した長編目の下に隠れて擦られ難いので、その長編目11の現われるニードルループ面を起毛して仕上げることが出来、そのように起毛して仕上げると、ニードルループ面が起毛毛羽に覆われて雄形面ファスナーが食い込み難く引っ掛かり難くなるので、雄形面ファスナーに対しても耐摩耗性のあるシングルジャージを得ることが出来る。
【0027】
本発明の編成方法によると、前記特徴を有するシングルジャージが得られる。
以下、図を参照しつつ、その編成方法を具体的に説明する。
【0028】
シングルジャージは、隣り合う第1編針41の形成する第1ウェールW1と第2編針42の形成する第2ウェールW2を単位ウェール(L)とし、第1編針41と第2編針42に2〜3回編糸を供給する第1〜第3給糸(F1a、F1b、F1c)から成る第1給糸群F1と、第1編針41と第2編針42に第1給糸群F1における選針回数と同数となる2〜3回編糸を供給する第1〜第3給糸(F2a、F2b、F2c)から成る第2給糸群F2との合計4回または6回の給糸を単位給糸(E)とし、第1給糸群F1と第2給糸群F2の間においては、第1〜第3給糸における第1編針41と第2編針42への選針パターンを入れ替えて編成される。
長編目11の編糸の総繊度は、短編目21の編糸の総繊度の1.5倍以上にする。
【0029】
[具体例1]
図1と図2に示すシングルジャージでは、2種類の編糸A・Bを順次給糸する第1給糸(F1a、F2a)と第2給糸(F1b、F2b)によって第1給糸群F1と第2給糸群F2が構成されている。第1給糸群F1における第1編針41への第1給糸F1aと第2給糸F1bは全てニットであり、第2編針42への編糸Aの第1給糸F1aはウエルト、編糸Bの第2給糸F1bはタックになっている。第2給糸群F2における第1編針41への編糸Aの第1給糸F2aはウエルト、編糸Bの第2給糸F2bはタックであり、第2編針42への第1給糸F2aと第2給糸F2bは全てニットになっている。
【0030】
第1給糸群F1と第2給糸群F2の間においては、第1〜第2給糸における第1編針41と第2編針42の選針パターンが入れ替るので、第1と第2給糸群(F1・F2)においてウエルトに選針された編糸Aは、それぞれ第1ウェールW1と第2ウェールW2の何れかに交叉するウエルトシンカーループ30を形成し、第1ウェールW1に交叉するウエルトシンカーループ30aと第2ウェールW2に交叉するウエルトシンカーループ30bが、シングルジャージのシンカーループ面に市松模様状に互い違いに現われる(図2)。
【0031】
第1編針41に対し、第2給糸群F2の第1給糸F2aにおいて編糸Aがウエルトで、第2給糸F2bにおいて編糸Bがタックで選針されてから、第1給糸群F1の第1給糸F1aにおいて編糸Aがニットで選針されて編目21を形成すると、第1給糸群F1の第2給糸F1bにおいてニットで選針された編糸Bは、その第1給糸群F1の第2給糸F1bから次の単位給糸(E)の第1給糸群F1の第1給糸F1aまで続く長編目11(ニットループ11n)を形成する。
その長ニットループ11nと共に、第2給糸群F2の第2給糸F2bでタックに選針された編糸Bはタックループ(11t)を形成し、長編目11のニットループ(11n)とタックループ(11t)は多重編目10aを形成し、第1給糸群F1の第1給糸F1aにおいてニットで選針された編糸Aは短編目21を形成する。
【0032】
第1給糸群F1と第2給糸群F2の間においては、第1〜第2給糸における第1編針41と第2編針42の選針パターンが入れ替るので、第2編針42に対し、第1給糸群F1の第1給糸F1aにおいて編糸Aがウエルトで、第2給糸F1bにおいて編糸Bがタックで選針されてから、第2給糸群F2の第1給糸F2aにおいて編糸Aがニットで選針されてニットループ21を形成すると、第2給糸群F2の第2給糸F2bにおいてニットで選針された編糸Bは、その第2給糸群F2の第2給糸F2bから次の単位給糸(E)の第2給糸群F2の第1給糸F2aまで続く長編目11(ニットループ11n)を形成する。
その長ニットループ11nと共に、第1給糸群の第1給糸F1bでタックに選針された編糸Bはタックループ(11t)を形成し、長編目11のニットループ(11n)とタックループ(11t)は多重編目10bを形成し、第2給糸群F2の第1給糸F2aにおいてニットで選針された編糸Aは短編目21を形成することになる。
【0033】
このように、図2に示す具体例によると、
(a) 編糸Aの構成する1個の短編目21と、その短編目21の選針回数Hの約3倍の選針回数Kの編糸Bの構成する1個の長編目11が各ウェールW1・W2の編成長さ方向Yに交互に続き、
(b) 任意のウェールの短編目21が、その任意のウェールに隣り合う他のウェールの長編目11に編幅方向Xにおいて隣り合い、
(c) 任意のウェールに隣り合う2つのウェールの中の一方のウェールにおいて編糸Aの構成する短編目21と他方のウェールにおいて編糸Aの構成する短編目21がウエルトシンカーループ30を介して連続し、
(d) その隣り合う短編目21・21の間で連続しているウエルトシンカーループ30が長編目11に交叉しており、
(e) 長編目11がタックに選針された編糸Bの形成するタックループ11tに重なり合って多重編目10を構成しており、
(f) その多重編目10を構成している長編目11のニットループ11nが、その多重編目10を構成しているタックループ11tよりも長く、
(g) 任意のウェールの多重編目10を構成している長編目11のニットループ11nから続くニットシンカーループ11mが、その任意のウェールにおいて編糸Aの形成する短編目21を潜り抜けて、その任意のウェールに隣り合うウェールのタックループ11tへと続くシングルジャージが編成される。
【0034】
そして、第1給糸群F1と第2給糸群F2の間においては、第1〜第2給糸における第1編針41と第2編針42の選針パターンが入れ替るので、第1編針41の形成する多重編目10aと第2編針42の形成する多重編目10bがウェール(W1、W2)に交叉する斜め方向に位置し、任意のウェールにおいて多重編目10aを構成している編糸Bの形成するタックループ11tから続くタックシンカーループ11sが、その任意のウェールに隣り合うウェールにおける短編目21のニットシンカーループへと続いており、その任意のウェールに隣り合う2つのウェールにおいて編糸Aの形成する短編目21と短編目21の間で連続しているウエルトシンカーループ(30)に交叉することになる。
【0035】
[具体例2]
図3に示すシングルジャージでは、2種類の編糸A・Bを順次給糸する第1給糸(F1a、F2a)と第2給糸(F1b、F2b)によって第1給糸群F1と第2給糸群F2が構成されている。第1給糸群F1における第1編針41への第1給糸F1aと第2給糸F1bは全てニットであり、第2編針42への編糸Aの第1給糸F1aはタック、編糸Bの第2給糸F1bはウエルトになっている。第2給糸群F2における第1編針41への編糸Aの第1給糸F2aはタック、編糸Bの第2給糸F2bはウエルトであり、第2編針42への第1給糸F2aと第2給糸F2bは全てニットになっている。
【0036】
第1給糸群F1と第2給糸群F2の間においては、第1〜第2給糸における第1編針41と第2編針42の選針パターンが入れ替るので、第1と第2給糸群(F1・F2)においてウエルトに選針された編糸Bは、それぞれ第1ウェールW1と第2ウェールW2の何れかに交叉するウエルトシンカーループ30を形成し、第1ウェールW1に交叉するウエルトシンカーループ30aと第2ウェールW2に交叉するウエルトシンカーループ30bが、シングルジャージのシンカーループ面に市松模様状に互い違いに現われる(図3)。
【0037】
第1編針41に対し、第2給糸群F2の第1給糸F2aにおいて編糸Aがタックで、第2給糸F2bにおいて編糸Bがウエルトで選針されてから、第1給糸群F1の第1給糸F1aにおいて編糸Aがニットで選針されて編目21を形成すると、第1給糸群F1の第2給糸F1bにおいてニットで選針された編糸Bは、その第1給糸群F1の第2給糸F1bから次の単位給糸(E)の第1給糸群F1の第1給糸F1aまで続く長編目11(ニットループ11n)を形成する。
その長ニットループ11nと共に、第2給糸群F2の第1給糸F2aでタックに選針された編糸Aはタックループ(11t)を形成し、長編目11のニットループ(11n)とタックループ(11t)は多重編目10aを形成し、第1給糸群F1の第1給糸F1aにおいてニットで選針された編糸Aは短編目21を形成する。
【0038】
第1給糸群F1と第2給糸群F2の間においては、第1〜第2給糸における第1編針41と第2編針42の選針パターンが入れ替るので、第2編針42に対し、第1給糸群F1の第1給糸F1aにおいて編糸Aがタックで、第2給糸F1bにおいて編糸Bがウエルトで選針されてから、第2給糸群F2の第1給糸F2aにおいて編糸Aがニットで選針されてニットループ21を形成すると、第2給糸群F2の第2給糸F2bにおいてニットで選針された編糸Bは、その第2給糸群F2の第2給糸F2bから次の単位給糸(E)の第2給糸群F2の第1給糸F2aまで続く長編目11(ニットループ11n)を形成する。
その長ニットループ11nと共に、第1給糸群の第1給糸F1aでタックに選針された編糸Aはタックループ(11t)を形成し、長編目11のニットループ(11n)とタックループ(11t)は多重編目10bを形成し、第2給糸群F2の第1給糸F2aにおいてニットで選針された編糸Aは短編目21を形成することになる。
【0039】
このように、図3に示す具体例によると、
(a) 編糸Aの構成する1個の短編目21と、その短編目21の選針回数Hの約3倍の選針回数Kの編糸Bの構成する1個の長編目11が各ウェールW1・W2の編成長さ方向Yに交互に続き、
(b) 任意のウェールの短編目21が、その任意のウェールに隣り合う他のウェールの長編目11に編幅方向Xにおいて隣り合い、
(c) 任意のウェールに隣り合う2つのウェールの中の一方のウェールにおいて編糸Bの構成する長編目11と他方のウェールにおいて編糸Bの構成する長編目11がウエルトシンカーループ30を介して連続し、
(d) その隣り合う長編目11・11の間で連続しているウエルトシンカーループ30が長編目11に交叉しており、
(e) 長編目11がタックに選針された編糸Aの形成するタックループ11tに重なり合って多重編目10を構成しており、
(f) その多重編目10を構成している長編目11のニットループ11nが、その多重編目10を構成しているタックループ11tよりも長く、
(g) 任意のウェールの多重編目10を構成している長編目11のニットループ11nから続くニットシンカーループ11mが、その任意のウェールにおいて編糸Aの形成する短編目21を潜り抜けて、その任意のウェールに隣り合うウェールのタックループ11tへと続くシングルジャージが編成される。
【0040】
そして、第1給糸群F1と第2給糸群F2の間においては、第1〜第3給糸における第1編針41と第2編針42の選針パターンが入れ替るので、第1編針41の形成する多重編目10aと第2編針42の形成する多重編目10bがウェール(W1、W2)に交叉する斜め方向に位置し、任意のウェールにおいて多重編目10aを構成している編糸Bの形成するタックループ11tから続くタックシンカーループ11sが、その任意のウェールに隣り合うウェールにおける長編目11のニットシンカーループへと続いており、その任意のウェールに隣り合う2つのウェールにおいて編糸Aの形成する長編目11と長編目11の間で連続しているウエルトシンカーループ(30)に交叉することになる。
【0041】
[具体例3]
図4に示すシングルジャージでは、3種類の編糸A・B・Cを順次給糸する第1給糸(F1a、F2a)と第2給糸(F1b、F2b)と第3給糸(F1c、F2c)によって第1給糸群F1と第2給糸群F2が構成されている。第1給糸群F1における第1編針41への第1給糸F1aと第2給糸F1bと第3給糸F1cは全てニットであり、第2編針42への編糸Aの第1給糸F1aはタック、編糸Bの第2給糸F1bはウエルト、編糸Cの第3給糸F1cはタックになっている。第2給糸群F2における第1編針41への編糸Aの第1給糸F2aはタック、編糸Bの第2給糸F2bはウエルト、編糸Cの第3給糸F2cはタックであり、第2編針42への第1給糸F2aと第2給糸F2bと第3給糸F2cは全てニットになっている。
【0042】
第1給糸群F1と第2給糸群F2の間においては、第1〜第3給糸における第1編針41と第2編針42の選針パターンが入れ替るので、第1と第2給糸群(F1・F2)においてウエルトに選針された編糸Bは、それぞれ第1ウェールW1と第2ウェールW2の何れかに交叉するウエルトシンカーループ30を形成し、第1ウェールW1に交叉するウエルトシンカーループ30aと第2ウェールW2に交叉するウエルトシンカーループ30bが、シングルジャージのシンカーループ面に市松模様状に互い違いに現われる(図4)。
【0043】
第1編針41に対し、第2給糸群F2の第1給糸F2aにおいて編糸Aがタックで、第2給糸F2bにおいて編糸Bがウエルトで、第3給糸F2cにおいて編糸Cがタックで選針されてから、第1給糸群F1の第1給糸F1aにおいて編糸Aがニットで選針されて編目21を形成すると、第1給糸群F1の第3給糸F1cにおいてニットで選針された編糸Cは、その第1給糸群F1の第3給糸F1cから次の単位給糸(E)の第1給糸群F1の第1給糸F1aまで続く長編目11(ニットループ11n)を形成する。
その長ニットループ11nと共に、第2給糸群F2の第1給糸F2aでタックに選針された編糸Aと第3給糸F2cでタックに選針された編糸Cはタックループ(11t、11t)を形成し、長編目11のニットループ(11n)とタックループ(11t、11t)は多重編目10aを形成し、第1給糸群F1の第1給糸F1aにおいてニットで選針された編糸Aと第2給糸F1bにおいてニットで選針された編糸Bは短編目21・21を形成することになる。
【0044】
第1給糸群F1と第2給糸群F2の間においては、第1〜第3給糸における第1編針41と第2編針42の選針パターンが入れ替るので、第2編針42に対し、第1給糸群F1の第1給糸F1aにおいて編糸Aがタックで、第2給糸F1bにおいて編糸Bがウエルトで、第3給糸F1cにおいて編糸Cがタックで選針されてから、第2給糸群F2の第1給糸F2aにおいて編糸Aがニットで選針されて編目21を形成すると、第2給糸群F2の第3給糸F2cにおいてニットで選針された編糸Cは、その第2給糸群F2の第3給糸F2cから次の単位給糸(E)の第2給糸群F2の第1給糸F2aまで続く長編目11(ニットループ11n)を形成する。
その長ニットループ11nと共に、第1給糸群の第1給糸F1aでタックに選針された編糸Aと第3給糸F1cでタックに選針された編糸Cはタックループ(11t、11t)を形成し、長編目11のニットループ11nとタックループ(11t、11t)は多重編目10bを形成し、第2給糸群F2の第1給糸F2aにおいてニットで選針された編糸Aと第2給糸F2bにおいてニットで選針された編糸Bは短編目21・21を形成することになる。
【0045】
このように、図4に示す具体例によると、
(a) 編糸A・Bの構成する2個の短編目21・21と、その各短編目21の選針回数Hの約4倍の選針回数Kの編糸Cの構成する1個の長編目11が各ウェールW1・W2の編成長さ方向Yに交互に続き、
(b) 任意のウェールの短編目21が、その任意のウェールに隣り合う他のウェールの長編目11に編幅方向Xにおいて隣り合い、
(c) 任意のウェールに隣り合う2つのウェールの中の一方のウェールにおいて編糸Cの構成する短編目21と他方のウェールにおいて編糸Cの構成する短編目21がウエルトシンカーループ30を介して連続し、
(d) その隣り合う短編目21・21の間で連続しているウエルトシンカーループ30が長編目11に交叉しており、
(e) 長編目11がタックに選針された編糸A・Cの形成するタックループ11t・11tに重なり合って多重編目10を構成しており、
(f) その多重編目10を構成している長編目11のニットループ11nが、その多重編目10を構成しているタックループ11t・11tよりも長く、
(g) 任意のウェールの多重編目10を構成している長編目11のニットループ11nから続くニットシンカーループ11mが、その任意のウェールにおいて編糸Bの形成する短編目21を潜り抜けて、その任意のウェールに隣り合うウェールのタックループ11tへと続くシングルジャージが編成される。
【0046】
そして、第1給糸群F1と第2給糸群F2の間においては、第1〜第3給糸における第1編針41と第2編針42の選針パターンが入れ替るので、第1編針41の形成する多重編目10aと第2編針42の形成する多重編目10bがウェール(W1、W2)に交叉する斜め方向に位置し、任意のウェールにおいて多重編目10aを構成している編糸Aの形成するタックループ11tから続くタックシンカーループ11sが、その任意のウェールに隣り合うウェールにおける短編目21のニットシンカーループへと続いており、その任意のウェールに隣り合う2つのウェールにおいて編糸Bの形成する短編目21と短編目21の間で連続しているウエルトシンカーループ(30)に交叉することになる。
【0047】
[具体例4]
図5に示すシングルジャージでは、4種類の編糸A・B・C・Dを順次給糸する第1給糸(F1a、F2a)と第2給糸(F1b、F2b)と第3給糸(F1c、F2c)と第4給糸(F1d、F2d)によって第1給糸群F1と第2給糸群F2が構成されている。
第1給糸群F1における第1編針41への第1給糸F1aと第2給糸F1bと第3給糸F1cと第4給糸F1dは全てニットであり、第2編針42への編糸Aの第1給糸F1aはタック、編糸Bの第2給糸F1bはウエルト、編糸Cの第3給糸F1cはウエルト、編糸Dの第4給糸F1dはタックになっている。
第2給糸群F2における第1編針41への編糸Aの第1給糸F2aはタック、編糸Bの第2給糸F2bはウエルト、編糸Cの第3給糸F2cはウエルト、編糸Dの第4給糸F2dはタックであり、第2編針42への第1給糸F2aと第2給糸F2bと第3給糸F2cと第4給糸F2dは全てニットになっている。
【0048】
第1給糸群F1と第2給糸群F2の間においては、第1〜第4給糸における第1編針41と第2編針42の選針パターンが入れ替るので、第1と第2給糸群(F1・F2)においてウエルトに選針された編糸B・Cは、それぞれ第1ウェールW1と第2ウェールW2の何れかに交叉するウエルトシンカーループ30を形成し、第1ウェールW1に交叉するウエルトシンカーループ30aと第2ウェールW2に交叉するウエルトシンカーループ30bが、シングルジャージのシンカーループ面に市松模様状に互い違いに現われる(図5)。
【0049】
第1編針41に対し、第2給糸群F2の第1給糸F2aにおいて編糸Aがタックで、第2給糸F2bにおいて編糸Bがウエルトで、第3給糸F2cにおいて編糸Cがウエルトで、第4給糸F2dにおいて編糸Dがタックで選針されてから、第1給糸群F1の第1給糸F1aにおいて編糸Aがニットで選針されて編目21を形成すると、第1給糸群F1の第4給糸F1dにおいてニットで選針された編糸Dは、その第1給糸群F1の第4給糸F1dから次の単位給糸(E)の第1給糸群F1の第1給糸F1aまで続く長編目11(ニットループ11n)を形成する。
その長ニットループ11nと共に、第2給糸群F2の第1給糸F2aでタックに選針された編糸Aと第4給糸F2dでタックに選針された編糸Dはタックループ(11t、11t)を形成し、長編目11のニットループ(11n)とタックループ(11t、11t)は多重編目10aを形成し、第1給糸群F1の第1給糸F1aにおいてニットで選針された編糸Aと第2給糸F1bにおいてニットで選針された編糸Bと第3給糸F1cにおいてニットで選針された編糸Cは短編目21・21・21を形成することになる。
【0050】
第1給糸群F1と第2給糸群F2の間においては、第1〜第4給糸における第1編針41と第2編針42の選針パターンが入れ替るので、第2編針42に対し、第1給糸群F1の第1給糸F1aにおいて編糸Aがタックで、第2給糸F1bにおいて編糸Bがウエルトで、第3給糸F1cにおいて編糸Cがウエルトで、第4給糸F1dにおいて編糸Dがタックで選針されてから、第2給糸群F2の第1給糸F2aにおいて編糸Aがニットで選針されてニットループ21を形成すると、第2給糸群F2の第4給糸F2dにおいてニットで選針された編糸Dは、その第2給糸群F2の第4給糸F2dから次の単位給糸(E)の第2給糸群F2の第1給糸F2aまで続く長編目11(ニットループ11n)を形成する。
その長ニットループ11nと共に、第1給糸群の第1給糸F1aでタックに選針された編糸Aと第4給糸F1dでタックに選針された編糸Dはタックループ(11t、11t)を形成し、長編目11のニットループ(11n)とタックループ(11t、11t)は多重編目10bを形成し、第2給糸群F2の第1給糸F2aにおいてニットで選針された編糸Aと第2給糸F2bにおいてニットで選針された編糸Bと第3給糸F2cにおいてニットで選針された編糸Cは短編目21・21・21を形成することになる。
【0051】
このように、図5に示す具体例によると、
(a) 編糸A・B・Cの構成する3個の短編目21・21・21と、その各短編目21の選針回数Hの約5倍の選針回数Kの編糸Dの構成する1個の長編目11が各ウェールW1・W2の編成長さ方向Yに交互に続き、
(b) 任意のウェールの短編目21が、その任意のウェールに隣り合う他のウェールの長編目11に編幅方向Xにおいて隣り合い、
(c) 任意のウェールに隣り合う2つのウェールの中の一方のウェールにおいて編糸B・Cの構成する短編目21・21と他方のウェールにおいて編糸B・Cの構成する短編目21・21がウエルトシンカーループ30を介して連続し、
(d) その隣り合う短編目21・21の間で連続しているウエルトシンカーループ30・30が長編目11に交叉しており、
(e) 長編目11がタックに選針された編糸A・Dの形成するタックループ11t・11tに重なり合って多重編目10を構成しており、
(f) その多重編目10を構成している長編目11のニットループ11nが、その多重編目10を構成しているタックループ11t・11tよりも長く、
(g) 任意のウェールの多重編目10を構成している長編目11のニットループ11nから続くニットシンカーループ11mが、その任意のウェールにおいて編糸Cの形成する短編目21を潜り抜けて、その任意のウェールに隣り合うウェールのタックループ11tへと続くシングルジャージが編成される。
【0052】
そして、第1給糸群F1と第2給糸群F2の間においては、第1〜第4給糸における第1編針41と第2編針42の選針パターンが入れ替るので、第1編針41の形成する多重編目10aと第2編針42の形成する多重編目10bがウェール(W1、W2)に交叉する斜め方向に位置し、任意のウェールにおいて多重編目10aを構成している編糸Aの形成するタックループ11tから続くタックシンカーループ11sが、その任意のウェールに隣り合うウェールにおける短編目21のニットシンカーループへと続いており、その任意のウェールに隣り合う2つのウェールにおいて編糸B・Cの形成する短編目21と短編目21の間で連続しているウエルトシンカーループ(30・30)に交叉することになる。
【0053】
[参考例]
図6に示すシングルジャージは、本発明に対する参考例であり、3種類の編糸A・B・Cを順次給糸する第1給糸(F1a、F2a)と第2給糸(F1b、F2b)と第3給糸(F1c、F2c)によって第1給糸群F1と第2給糸群F2が構成されている。第1給糸群F1における第1編針41への編糸Aの第1給糸F1aはニット、編糸Bの第1給糸F1bはウエルト、編糸Cの第1給糸F1cはニットであり、第2編針42への編糸Aの第1給糸F1aはタック、編糸Bの第2給糸F1bはニット、編糸Cの第3給糸F1cはウエルトになっている。第2給糸群F2における第1編針41への編糸Aの第1給糸F2aはタック、編糸Bの第2給糸F2bはニット、編糸Cの第3給糸F2cはウエルトであり、第2編針42への編糸Aの第1給糸F2aはニット、編糸Bの第2給糸F2bはウエルト、編糸Cの第3給糸F2cはニットになっている。
【0054】
第1給糸群F1と第2給糸群F2の間においては、第1〜第3給糸における第1編針41と第2編針42の選針パターンが入れ替るので、第1と第2給糸群(F1・F2)においてウエルトに選針された編糸B・Cは、それぞれ第1ウェールW1と第2ウェールW2の何れかに交叉するウエルトシンカーループ30を形成し、第1給糸群F1の第2給糸F1bにおいて編糸Bが第1ウェールW1に交叉して構成するウエルトシンカーループ30aと第1給糸群F1の第3給糸F1cにおいて編糸Cが第2ウェールW2に交叉して構成するウエルトシンカーループ30b、および、第2給糸群F2の第2給糸F2bにおいて編糸Bが第1ウェールW2に交叉して構成するウエルトシンカーループ30bと第2給糸群F2の第3給糸F2cにおいて編糸Cが第2ウェールW1に交叉して構成するウエルトシンカーループ30aは、それぞれ互い違いに現われる。
しかし、第1給糸群F1の第3給糸F1cにおいて編糸Cが第2ウェールW2に交叉して構成するウエルトシンカーループ30bと、その編糸Cに隣り合って第2給糸群F2の第2給糸F2bにおいて編糸Bが第1ウェールW2に交叉して構成するウエルトシンカーループ30bとは互い違いにならず、又、第2給糸群F2の第3給糸F2cにおいて編糸Cが第2ウェールW1に交叉して構成するウエルトシンカーループ30aと、その編糸Cに隣り合って第1給糸群F1の第2給糸F1bにおいて編糸Bが第1ウェールW1に交叉して構成するウエルトシンカーループ30aも互い違いにならない。
従って、この参考例においては、ウエルトシンカーループ30は、市松模様状には互い違いに現われない(図6)。
【0055】
又、参考例においては、第1編針41に対し、第1給糸群F1の第1給糸F1aにおいて編糸Aがニットで、第1給糸群F1の第2給糸F1bにおいて編糸Bがウエルトで、第1給糸群F1の第3給糸F1cにおいて編糸Cがニットで選針されると、第1給糸群F1の第1給糸F1aにおいてニットで選針された編糸Aは、第1給糸群F1の第1給糸F1aから第1給糸群F1の第3給糸F1cまで続く編目52を形成し、第1給糸群F1の第3給糸F1cにおいて編糸Cがニットで、第2給糸群F2の第1給糸F2aにおいて編糸Aがタックで、第2給糸群F2の第2給糸F2bにおいて編糸Bがニットで選針されると、第1給糸群F1の第3給糸F1cにおいてニットで選針された編糸Cは、第1給糸群F1の第3給糸F1cから第2給糸群F2の第2給糸F2bまで続く編目50を形成し、第2給糸群F2の第2給糸F2bにおいて編糸Bがニットで、第2給糸群F3の第3給糸F2cにおいて編糸Cがウエルトで、第1給糸群F1の第2給糸F1aにおいて編糸Aがニットで選針されると、第2給糸群F2の第2給糸F2bにおいてニットで選針された編糸Bは、第2給糸群F2の第2給糸F2bから第1給糸群F1の第2給糸F1aまで続く編目51を形成する。
しかし、これらの編糸Aの形成する編目52と、編糸Cの形成する編目50と、編糸Bの形成する編目51は、何れも1回のタックやウエルトの選針の後に、つまり、給糸2回につき1個の割合で形成され、それらの編目50・51・52の間に長短差は生じない。
【0056】
そして、参考例においては、第1給糸群F1と第2給糸群F2の間において、第1〜第3給糸における第1編針41と第2編針42の選針パターンが入れ替るので、第2編針42に対し、第1給糸群F1の第2給糸F1bにおいて編糸Bがニットに選針されて形成する編目51も、第2給糸群F2の第1給糸F2aにおいて編糸Aがニットに選針されて形成する編目52も、第2給糸群F2の第3給糸F2cにおいて編糸Cがニットに選針されて形成する編目50も、第1編針41によって形成される編目50・51・52と同様に、同じ長さとなる。
【0057】
第1編針41への第2給糸群F2の第1給糸F2aにおいてタックで選針された編糸Aが第2給糸群F2の第2給糸F2bにおいて編糸Cの編目50と共にタックループ(50t)を形成し、それらの編目50とタックループ(50t)が多重編目10aを構成するとしても、その編目50に交叉するウエルトシンカーループ(30a)は形成されない。
【0058】
編糸Aの形成する編目52や編糸Bの形成する編目51にウエルトシンカーループ30aが交叉するとしても、それらの編目52・51は多重編目10aを構成しない。
【0059】
このように、図6に示す参考例のシングルジャージは、隣り合う第1編針41の形成する第1ウェールW1と第2編針42の形成する第2ウェールW2を単位ウェール(L)とし、第1編針41と第2編針42に3回編糸を供給する第1〜第3給糸(F1a、F1b、F1c)から成る第1給糸群F1と、第1編針41と第2編針42に第1給糸群F1における選針回数と同数となる3回編糸を供給する第1〜第3給糸(F2a、F2b、F2c)から成る第2給糸群F2との合計6回の給糸を単位給糸(E)において、第1編針41と第2編針42にニットとタックとウエルトを交えて3種類の編糸A・B・Cを順次給糸し、第1給糸群F1と第2給糸群F2の間においては、第1〜第3給糸における第1編針41と第2編針42の選針パターンを入れ替えて編成されるが、多重編目10を構成している編目50がウエルトシンカーループ30aと交叉することはなく、3種類の編糸A・B・Cの形成する編目50・51・52の編込み長さは等しく、長短異なる編目が何れのウェールW1・W2においても編成長さ方向Yに交互に続かない点において、前記具体例のシングルジャージとは構成を異なるものとなる。
【0060】
上記の具体例と参考例に記載の通り、編目の編込み長さ(H・K)は、任意のウェールWにおいて編成長さ方向Yに続く任意の編目が形成されてから次の編目が形成されるまでに編糸が給糸される選針回数(H・K)によって設定される。
【実施例】
【0061】
[実施例1]
[表1]に示す規格の編糸Aと編糸Bを使用し、図2に示す編組織に従って[表1]に示す規格のシングルジャージを編成する。
【0062】
[実施例2]
[表1]に示す規格の編糸Aと編糸Bと編糸Cを使用し、図4に示す編組織に従って[表1]に示す規格のシングルジャージを編成する。
【0063】
[実施例3]
[表1]に示す規格の編糸Aと編糸Bと編糸Cと編糸Dを使用し、図5に示す編組織に従って[表1]に示す規格のシングルジャージを編成する。
【0064】
[比較例]
[表1]に示す規格の編糸Aと編糸Bと編糸Cを使用し、図6に示す編組織に従って[表1]に示す規格のシングルジャージを編成する。
【0065】
[表1]に示す通り、図6に示す編組織に従って編成した比較例のシングルジャージでは、編目をカットすると編成長さ方向に続く伝線(タテラン)が発生するが、図2と図4と図5に示す編組織に従って編成した本発明の実施例1〜3のシングルジャージでは、編目をカットしても編成長さ方向に続く伝線は発生しない。
しかし、図5に示す編組織に従って編成した本発明の実施例3のシングルジャージでは、編目をカットすると編目が開き、編幅方向に編糸がズレ動き、比較例のシングルジャージにおける伝線(タテラン)程に長く連続することはないものの、ヨコ伝線(ヨコラン)の発生が認められた。
従って、実施例3からして、本発明を効果的に実施するためには、各ウェールW1・W2の編成長さ方向Yにおいて交互する長編目11と長編目11の間に介在する短編目21の数を1〜2個とし、短編目21と短編目21の間に介在する長編目11の数を1個とすることが推奨される。
【0066】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係るシングルジャージの拡大斜視図である。
【図2】図1に示すシングルジャージの編組織図であり、分図(a)は給糸と編針との関係図、分図(b)はシングルジャージの編組織構造図である。
【図3】本発明に係るシングルジャージの編組織図であり、分図(a)は給糸と編針との関係図、分図(b)はシングルジャージの編組織構造図である。
【図4】本発明に係るシングルジャージの編組織図であり、分図(a)は給糸と編針との関係図、分図(b)はシングルジャージの編組織構造図である。
【図5】本発明に係るシングルジャージの編組織図であり、分図(a)は給糸と編針との関係図、分図(b)はシングルジャージの編組織構造図である。
【図6】本発明に対応する参考例に係るシングルジャージの編組織図であり、分図(a)は給糸と編針との関係図、分図(b)はシングルジャージの編組織構造図である。
【符号の説明】
【0068】
10:多重編目
11:長編目
11n:ニットループ
11m:ニットシンカーループ
11t:タックループ
11s:タックシンカーループ
21:短編目
30:ウエルトシンカーループ
41:第1編針
42:第2編針
F1:第1給糸群
F2:第2給糸群
W1:第1ウェール
W2:第2ウェール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 任意のウェール(W)において編成長さ方向(Y)に続く任意の編目が形成されてから次の編目が形成されるまでに編糸が給糸される選針回数が少ない選針回数(H)の給糸によって形成された短編目(21)と、その選針回数が短編目(21)の選針回数(H)よりも多い選針回数(K)の給糸によって形成された長編目(11)が、各ウェール(W1・W2)の編成長さ方向(Y)において前後して続いており、
(b) 任意のウェールの短編目(21)が、その任意のウェールに隣り合う他のウェールの長編目(11)に編幅方向(X)において隣り合っており、
(c) 任意のウェールに隣り合う2つのウェールの中の一方のウェールの何れかの編目(11・21)と、その任意のウェールに隣り合う2つのウェールの中の他方のウェールの何れかの編目(11・21)が、その任意のウェールにおいてウエルトに選針された編糸の形成するウエルトシンカーループ(30)を介して連続しており、
(d) 任意のウェールに隣り合う2つのウェールの編目(11・21)と編目(11・21)の間で連続しているウエルトシンカーループ(30)が、その任意のウェールにおける長編目(11)に交叉しており、
(e) 長編目(11)が、そのウェールにおいてタックに選針された編糸の形成するタックループ(11t)に重なり合って多重編目(10)を構成していることを特徴とするシングルジャージ。
【請求項2】
多重編目(10を構成している長編目(11)のニットループ(11n)が、その多重編目(10)を構成しているタックループ(11t)よりも長く、任意のウェールの多重編目(10)を構成している長編目(11)のニットループ(11n)から続くニットシンカーループ(11m)が、その任意のウェールにおける短編目(21)を潜り抜けて、その任意のウェールに隣り合うウェールにおける多重編目(10)を構成しているタックループ(11t)から続くタックシンカーループ(11s)へと続いている前掲請求項1に記載のシングルジャージ。
【請求項3】
多重編目(10)を構成している長編目(11)のニットループ(11n)が、その多重編目(10)を構成しているタックループ(11t)よりも長く、任意のウェールの多重編目(10)を構成している長編目(11)のニットループ(11n)から続くニットシンカーループ(11m)が、その任意のウェールにおける短編目(21)を潜り抜けて、その任意のウェールに隣り合うウェールに更に隣り合うウェールにおいて多重編目(10)を構成している長編目(11)のニットループ(11n)から続くニットシンカーループ(11m)へとウエルトシンカーループ(30)を介して連続している前掲請求項1に記載のシングルジャージ。
【請求項4】
任意のウェールにおいて多重編目(10a)を構成しているタックループ(11t)から続くタックシンカーループ(11s)が、その任意のウェールに隣り合うウェールにおける長編目(11)または短編目(21)のニットシンカーループへと続いており、その任意のウェールに隣り合う2つのウェールの編目(11・21)と編目(11・21)の間で連続しているウエルトシンカーループ(30)に交叉している前掲請求項1と請求項2と請求項3の何れかに記載のシングルジャージ。
【請求項5】
長編目(11)と短編目(21)が互いに異なる編糸によって構成されており、長編目(11)を構成している編糸の総繊度が短編目(21)を構成している編糸の総繊度よりも太い前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4の何れかに記載のシングルジャージ。
【請求項6】
長編目(11)を構成している編糸が捲縮繊維マルチフィラメント糸である前掲請求項5に記載のシングルジャージ。
【請求項7】
各ウェール(W1・W2)の編成長さ方向(Y)において交互する長編目(11)と長編目(11)の間に介在する短編目(21)の数が1〜2個であり、短編目(21)と短編目(21)の間に介在する長編目(11)の数が1個である前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4と請求項5と請求項6の何れかに記載のシングルジャージ。
【請求項8】
隣り合う第1編針(41)の形成する第1ウェール(W1)と第2編針(42)の形成する第2ウェール(W2)を単位ウェール(L)とし、第1編針(41)と第2編針(42)に2〜3回編糸を供給する2〜3回の給糸(F1a、F1b、F1c)から成る第1給糸群(F1)と、第1編針(41)と第2編針(42)に第1給糸群(F1)における選針回数と同数となる2〜3回編糸を供給する2〜3回の給糸(F2a、F2b、F2c)から成る第2給糸群(F2)との合計4回または6回の給糸を単位給糸(E)とし、第1給糸群(F1)と第2給糸群(F2)の間においては、2〜3回の給糸における第1編針(41)と第2編針(42)の選針パターンを入れ替えてシングルジャージを編成する過程において、第1給糸群(F1)における第1編針(41)への2〜3回の全ての給糸をニットとし、第2編針(42)への2〜3回の何れか1回の給糸をウエルトとし、その残りの1〜2回の給糸をタックとし、第2給糸群(F2)における第1編針(41)への2〜3回の中の何れか1回の給糸をウエルトとし、その残りの1〜2回の給糸をタックとし、第2編針(42)への2〜3回の全ての給糸をニットとし、第1ウェール(W1)と第2ウェール(W2)の間で交互して2〜3回の連続する給糸において2〜3個の編目(11・21)を連続形成し、その連続する2〜3回の給糸において、各ウェールに隣り合う2つのウェールの中の一方のウェールの1〜2個の編目(11・21)と、その隣り合う2つのウェールの中の他方の1〜2個のウェールの編目(11・21)の間を、ウエルトに選針した編糸によるウエルトシンカーループ(30)によって連続させることを特徴とするシングルジャージ編成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−79314(P2009−79314A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248649(P2007−248649)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000148151)株式会社川島織物セルコン (104)
【Fターム(参考)】