説明

シンチレータパネル

【課題】放射線画像を精度よく取得することができるシンチレータパネルを提供する。
【解決手段】シンチレータパネル10は、支持基板1と、支持基板1の表面1a上に設けられ入射した放射線を光に変換するシンチレータ層2と、を備えている。支持基板1は、複数のCFRPシート4が互いに積層されて構成されており、これらのCFRPシート4のうち最も表面1a側に積層されたCFRPシート4aは、分散された炭素繊維を含有する炭素繊維強化樹脂シートである。よって、支持基板1の表面1aにおいては、CFRPシート4の炭素繊維に起因する光反射率のムラを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンチレータパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシンチレータパネルとしては、支持基板と、この支持基板の一主面上に設けられ入射した放射線を光に変換するシンチレータ層と、を備えたものが知られている。このようなシンチレータパネルでは、例えば下記特許文献1,2に示すように、炭素繊維が一定方向に配向された炭素繊維強化樹脂シートを複数積層して支持基板を構成する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−219416号公報
【特許文献2】特開2004−212189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなシンチレータパネルにおいては、例えば、シンチレータ層で変換した光の強度分布(シンチレータ層の輝度分布)に基づき放射線画像を取得する場合、次のおそれがある。すなわち、例えば支持基板を構成する炭素繊維強化樹脂シートの炭素繊維パターンが放射線画像に移り込むことがあり、放射線画像を精度よく取得することが困難となるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、放射線画像を精度よく取得することが可能なシンチレータパネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、支持基板の一主面上にシンチレータ層を設ける場合、この一主面においての光反射率のムラが放射線画像の精度に大きく寄与するということを見出した。そして、かかる一主面の光反射率のムラを抑制できれば、放射線画像を精度よく取得可能であることに想到し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係るシンチレータパネルは、一主面及び他主面を有する支持基板と、支持基板の一主面上に設けられ、入射した放射線を光に変換するシンチレータ層と、を備え、支持基板は、複数のシートが互いに積層されて構成され、複数のシートのうち最も一主面側に積層されたシートは、分散された炭素繊維を含有する炭素繊維強化樹脂シートであることを特徴とする。
【0008】
このシンチレータパネルでは、複数のシートのうち最も一主面側に積層されたシートは、分散された炭素繊維を含有する炭素繊維強化樹脂シートとされている。よって、支持基板の一主面において炭素繊維強化樹脂シートの炭素繊維に起因する光反射率のムラを抑制でき、放射線画像を精度よく取得することが可能となる。
【0009】
また、複数のシートのうち最も他主面側に積層されたシートは、分散された炭素繊維を含有する炭素繊維強化樹脂シートであることが好ましい。この場合、支持基板において一主面側の剛性と他主面側の剛性とが互いに同等なものとなるため、支持基板の反りを抑制することができる。
【0010】
また、複数のシートは、最も一主面側のシートと最も他主面側のシートとの間に積層された中間シートを複数有し、複数の中間シートは、一定方向に配向された炭素繊維を含有する炭素繊維強化樹脂シートであり、複数の中間シートのうち一の中間シートと他の中間シートとの間において炭素繊維の一定方向は、互いに交差していることが好ましい。この場合、炭素繊維の配向方向に起因する支持基板の撓み(変形)を抑制することができ、支持基板の剛性を高めることが可能となる。
【0011】
また、複数のシートは、最も一主面側のシートと最も他主面側のシートとの間に積層された中間シートを複数有し、複数の中間シートは、一定方向に配向された炭素繊維を含有する炭素繊維強化樹脂シートであり、複数の中間シート間において炭素繊維の一定方向は、互いに等しいことが好ましい。この場合、支持基板の剛性に、炭素繊維の配向方向による方向性を与えることができる。
【0012】
また、複数のシートは、分散された炭素繊維を含有する炭素繊維強化樹脂シートであることが好ましい。この場合、支持基板を構成する複数のシート全てが、分散された炭素繊維を含有する炭素繊維強化樹脂シートとなり、支持基板が柔軟性を有することとなる。
【0013】
また、支持基板の一主面とシンチレータ層との間に設けられた金属反射膜をさらに備えることが好ましい。この場合、一主面においての光反射率のムラが抑制されていることから、シンチレータ層で変換された光を金属反射膜で積極的に反射させる必要性が低減されているため、金属反射膜の膜厚を薄くしても放射線画像を精度よく取得することが可能となる。
【0014】
ここで、上記作用効果を好適に奏する構成として、具体的には、分散された炭素繊維は、短繊維状の炭素繊維原糸を抄紙することで形成されている構成が挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、放射線画像を精度よく取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係るシンチレータパネルを示す概略側断面図である。
【図2】図1のシンチレータパネルの支持基板を示す概略斜視図である。
【図3】シンチレータパネルによる放射線画像の一例を示す写真図である。
【図4】図1のシンチレータパネルの他の例を示す概略側断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るシンチレータパネルにおける支持基板を示す概略斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るシンチレータパネルにおける支持基板を示す概略斜視図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係るシンチレータパネルを示す概略側断面である。
【図8】図7のシンチレータパネルの支持基板を示す概略斜視図である。
【図9】図7のシンチレータパネルの他の例を示す概略側断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係るシンチレータパネルにおける支持基板を示す概略斜視図である。
【図11】本発明の第6実施形態に係るシンチレータパネルにおける支持基板を示す概略斜視図である。
【図12】図1のシンチレータパネルの他の例を示す概略側断面図である。
【図13】図12のシンチレータパネルの支持基板を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るシンチレータパネルを示す概略側断面図であり、図2は、図1のシンチレータパネルの支持基板を示す概略斜視図である。図1に示すように、本実施形態のシンチレータパネル10は、X線等の放射線Rを光に変換して検出するためのものであり、例えばマンモグラフィー装置、胸部検査装置、CT装置、及び歯科口内撮影装置等に用いられるものである。
【0019】
このシンチレータパネル10は、支持基板1と、支持基板1の表面(一主面)1a上に設けられたシンチレータ層2と、支持基板1及びシンチレータ層2を被覆するように設けられた保護膜3と、を備えている。
【0020】
支持基板1は、樹脂に炭素繊維(カーボンファイバ)を含侵させたCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)シート(炭素繊維強化樹脂シート)4を複数積層されてなるものである。ここでの支持基板1は、シート面から見て矩形状のプリプレグであるCFRPシート4が5枚積層された後、例えばオートクレーブ処理等の加熱加圧処理が施されて形成されている。CFRPシート4の母材としては、種々の樹脂が用いられ、ここでは、耐熱性樹脂が用いられている。
【0021】
シンチレータ層2は、入射した放射線Rを光(可視光)に変換する蛍光体層であり、入射した放射線Rの線量に応じて発光する。このシンチレータ層2は、林立した複数の針状結晶(柱状結晶)であるTl(タリウム)ドープのCsI(ヨウ化セシウム)が、表面1aに真空蒸着されて形成されている。
【0022】
保護膜3は、支持基板1及びシンチレータ層2を湿気等から保護するためのものであり、ポリパラキシリレン等の有機膜や無機膜が用いられている。なお、シンチレータパネル10は、その表面1a側に、シンチレータ層2においての光強度分布を検出するセンサ(不図示)が接続されている。
【0023】
このシンチレータパネル10は、例えば次に例示する方法によって製造することができる。すなわち、まず、CFRPシート4を積層し支持基板1を形成した後、この支持基板1を洗浄水で洗浄する。続いて、支持基板1の表面1aをセリア研磨し、さらに洗浄水で洗浄する。そして、斜方蒸着によってCsIを表面1aに成膜してシンチレータ層2を形成し、その後、支持基板1及びシンチレータ層2を覆うように保護膜3を形成する。これにより、シンチレータパネル10を得ることができる。
【0024】
以上のように構成されたシンチレータパネル10では、支持基板1の表面1aと反対側の裏面(他主面)1b側から放射線Rが入射される。入射された放射線Rは、支持基板1を透過された後シンチレータ層2に入射され、該シンチレータ層2にて光に変換される。そして、センサ(不図示)によってシンチレータ層2の光強度分布が検出され、かかる光強度分布に基づき放射線画像(放射線Rの線量分布に関する画像)が取得される。
【0025】
ここで、本実施形態にあっては、図2に示すように、支持基板1を構成するCFRPシート4のうち最も表面1a側(図示上側)に積層されたCFRPシート4aの炭素繊維が、ランダムに分散されている。換言すると、最もシンチレータ層2側に位置する(すなわち、支持基板1の表面1aを構成する)CFRPシート4aに含有された炭素繊維は、細分化され散在されると共に、その配向方向がランダムとなっている。
【0026】
このCFRPシート4aにおける分散された炭素繊維は、短繊維状原糸を湿式又は乾式抄紙することで形成されている。なお、以下の説明においては、含有する炭素繊維が分散されたCFRPシートを、「CFRPペーパ材」と称する。
【0027】
また、支持基板1を構成するCFRPシート4のうち最も裏面1b側(図示下側)に積層されたCFRPシート4bも、その炭素繊維がランダムに分散されており、CFRPペーパ材とされている。つまり、複数のCFRPシート4は、CFRPペーパ材としてのCFRPシート4a,4bによって、積層方向の外側から挟まれるように重ねられている。
【0028】
また、CFRPシート4a,4b間に位置する中間CFRPシート(中間シート)4c,4d,4eのそれぞれにおいては、その炭素繊維が一定方向に配向(整列)されている。換言すると、各中間CFRPシート4c,4d,4eの炭素繊維は、シート面に沿う方向である一定方向に平行となるよう引き揃えられた状態で樹脂に含有されている。なお、以下の説明においては、含有する炭素繊維が一定方向に配向されたCFRPシートを、「UD(Uni Direction)材」と称し、炭素繊維が配向する方向を「配向方向」と称する。
【0029】
また、隣接する中間CFRPシート4c,4dの間、及び中間CFRPシート4d,4eの間では、炭素繊維の配向方向である一定方向が互いに直交(交差)されている。つまり、UD材である各CFRPシート2c,2d,2cは、その炭素繊維の配向方向が90°ずれるよう順に積層されている。具体的には、中間CFRPシート4c,4eは、その炭素繊維の配向方向である一定方向が、中間CFRPシート4c,4eの長手方向とされている。中間CFRPシート4dは、その炭素繊維の配向方向である一定方向が、中間CFRPシート4dの短手方向とされている。
【0030】
以上、本実施形態では、支持基板1を構成する複数のシートのうち最も表面1a側のシートが、ランダムに分散された炭素繊維を含有するCFRPシート4aとされている。よって、支持基板1の表面1aでは、炭素繊維に起因して光反射率にムラが生じてしまうのを抑制できると共に、その平面度のムラをも抑制できる。その結果、シンチレータ層2からの光が支持基板1の表面1aで反射されたとき、かかるムラによって反射光の強度が強弱するのを抑制でき、放射線画像を精度よく取得することが可能となる。
【0031】
また、本実施形態では、上述したように、支持基板1を構成する複数のシートのうち最も裏面1b側のシートも、ランダムに分散された炭素繊維を含有するCFRPシート4bとされている。よって、支持基板1の表面1a側の剛性と裏面1b側の剛性とが互いに同等なものとなり、支持基板1が積層方向で対称となるような構造を呈するため、支持基板1の反りや撓みを抑制することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態では、上述したように、UD材である中間CFRPシート4c〜4eの炭素繊維の一定方向が、中間CFRPシート4c,4d間及び中間CFRPシート4d,4e間(一の中間シートと他の中間シートとの間)において互いに直交している。よって、支持基板1では、炭素繊維の配向方向に起因する撓みが抑制することができ、支持基板1の剛性(強度)を高めることが可能となる。
【0033】
また、本実施形態では、比較的廉価なカーボン基板として支持基板1を構成できるため、アモルファス基板として支持基板1を構成する場合に比べ、低コスト化が可能となる。なお、シンチレータ層2を蒸着前に支持基板1に熱処理を施すことで、かかる蒸着時に支持基板1からガスが生じてCsI結晶に悪影響が及ぶのを抑制することができる。
【0034】
図3(a)は、本実施形態のシンチレータパネルによる放射線画像の一例を示す写真図であり、図3(b)は、従来のシンチレータパネルによる放射線画像の一例を示す写真図である。各図中における放射線画像は、線量分布が均一な放射線R入射時のものを示している。ここでの従来のシンチレータパネル(以下、単に「従来シンチレータパネル」という)では、支持基板が、UD材であるCFRPシートを複数積層することで構成されている。
【0035】
図3(a),(b)に示すように、本実施形態による放射線画像では、輝度が全域で一様となっており、炭素繊維パターンの映り込みもほとんど現れていない。一方、従来シンチレータパネルによる放射線画像では、炭素繊維パターンが映り込んでその配向方向に沿ったラインLが現れており、輝度のバラツキが発生している。これにより、放射線画像を精度よく取得できるという上記効果を確認することができると共に、本実施形態では、支持基板1に依存する炭素繊維パターンの悪影響を改善できることがわかる。
【0036】
さらに、図3(a)に示す本実施形態による放射線画像と、図3(b)に示す従来シンチレータパネルによる放射線画像とにおいて輝度平均値に対する輝度最大値と輝度最小値との差を比較した結果、従来シンチレータパネルによる放射線画像では1.3%であるのに対し、本実施形態による放射線画像では0.8%であった。これにより、本実施形態では、従来シンチレータパネルに対し、放射線画像における輝度のバラツキを約1/2に抑制できることがわかる。
【0037】
なお、本実施形態では、図4に示すように、支持基板1の表面1aとシンチレータ層2との間に、Al(アルミニウム)等を含む金属で形成された金属反射膜5をさらに備える場合がある。金属反射膜5は、シンチレータ層2で変換された光を反射させるためのものであり、支持基板1とシンチレータ層2との間に介在するように成膜されている。
【0038】
この場合、上述したように支持基板1の表面1aにおいての光反射率のムラが抑制されていることから、シンチレータ層2で変換された光を金属反射膜5で積極的に反射させる必要性が低減されている。よって、金属反射膜5の膜厚を薄くしても、放射線画像を精度よく取得することが可能となる。すなわち、金属反射膜5の薄膜化が可能となる。
【0039】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るシンチレータパネルについて説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0040】
図5は、本発明の第2実施形態に係るシンチレータパネルにおける支持基板を示す概略斜視図である。図5に示すように、本実施形態のシンチレータパネル20が上記シンチレータパネル10と異なる点は、支持基板1(図2参照)に代えて、支持基板21を備えた点である。
【0041】
支持基板21では、該支持基板21を構成するCFRPシート(シート)24のうち、最も表面21a側(一主面側,図示上側)に積層されたCFRPシート24aが、CFRPペーパ材とされている。つまり、最もシンチレータ層2側に位置するCFRPシート24aに含有された炭素繊維は、細分化され散在されると共に、その配向方向がランダムとなっている。また、CFRPシート24のうち最も裏面21b側(他主面側,図示下側)に積層されたCFRPシート24bも、CFRPペーパ材とされている。
【0042】
また、CFRPシート24a,24b間に位置する中間CFRPシート(中間シート)24c,24d,24eでは、そのシート内において炭素繊維の配向方向が直交されている。換言すると、中間CFRPシート24c,24d,24eそれぞれでは、炭素繊維が格子状に編み込むようにクロスされた状態で樹脂に含有されている。
【0043】
以上、本実施形態においても、上記効果と同様な効果、すなわち、CFRPシート24の炭素繊維に起因して支持基板41の表面21aにおいての光反射率にムラが生じるのを抑制でき、放射線画像を精度よく取得できるという効果を奏する。
【0044】
また、本実施形態では、上述したように、各中間CFRPシート24c,24d,24eの炭素繊維それぞれが格子状に編み込むよう構成されているため、支持基板21の撓みを抑制して支持基板21の剛性を高めることが可能となる。
【0045】
なお、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、支持基板21の表面21aとシンチレータ層2との間に、Al等を含む金属で形成された金属反射膜5をさらに備える場合がある。この場合にも、上述したように、金属反射膜5の膜厚を薄くしても放射線画像を精度よく取得できるため、金属反射膜5の薄膜化が可能となる。
【0046】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るシンチレータパネルについて説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0047】
図6は、本発明の第3実施形態に係るシンチレータパネルにおける支持基板を示す概略斜視図である。図6に示すように、本実施形態のシンチレータパネル30が上記シンチレータパネル10と異なる点は、支持基板1(図2参照)に代えて、支持基板31を備えた点である。
【0048】
支持基板31では、該支持基板31を構成するCFRPシート(シート)34のうち、最も表面31a側(一主面側,図示上側)に積層されたCFRPシート34aが、CFRPペーパ材とされている。つまり、最もシンチレータ層2側に位置するCFRPシート34aに含有された炭素繊維は、細分化され散在されると共に、その配向方向がランダムとなっている。また、CFRPシート34のうち最も裏面31b側(他主面側,図示下側)に積層されたCFRPシート34bも、CFRPペーパ材とされている。
【0049】
また、CFRPシート34a,34b間に位置する中間CFRPシート(中間炭素繊維強化樹脂シート)34c,34d,34eのそれぞれは、UD材とされている。そして、中間CFRPシート34c〜34e間において炭素繊維の配向方向である一定方向が、互いに等しくなっている。
【0050】
以上、本実施形態においても、上記効果と同様な効果、すなわち、CFRPシート34の炭素繊維に起因して支持基板31の表面31aにおいての光反射率にムラが生じるのを抑制でき、放射線画像を精度よく取得できるという効果を奏する。
【0051】
また、本実施形態では、上述したように、UD材である中間CFRPシート34c〜34eの炭素繊維の配向方向が互いに等しくされている。よって、支持基板31は、配向方向である一定方向から見て撓み易くなっている。つまり、支持基板31の剛性に、炭素繊維の配向方向による方向性を与えることができる。その結果、例えばシンチレータパネル30をセンサ等へ取り付ける場合、かかる取付けを容易化することが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、支持基板31の表面31aとシンチレータ層2との間に、Al等を含む金属で形成された金属反射膜5をさらに備える場合がある。この場合にも、上述したように、金属反射膜5の膜厚を薄くしても放射線画像を精度よく取得できるため、金属反射膜5の薄膜化が可能となる。
【0053】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係るシンチレータパネルについて説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0054】
図7は、本発明の第4実施形態に係るシンチレータパネルを示す概略側断面であり、図8は、図7のシンチレータパネルの支持基板を示す概略斜視図である。図7,8に示すように、本実施形態のシンチレータパネル40が上記シンチレータパネル10と異なる点は、支持基板1(図2参照)に代えて、支持基板41を備えた点である。
【0055】
支持基板41では、該支持基板41を構成するCFRPシート(シート)44のうち、最も表面41a側(一主面側,図示上側)に積層されたCFRPシート44aが、CFRPペーパ材とされている。つまり、最もシンチレータ層2側に位置するCFRPシート44aに含有された炭素繊維は、細分化され散在されると共に、その配向方向がランダムとなっている。また、CFRPシート44のうち最も裏面41b側(他主面側,図示下側)に積層されたCFRPシート44bも、CFRPペーパ材とされている。
【0056】
また、図8に示すように、CFRPシート44a,44b間に位置する中間CFRPシート(中間シート)44c〜44fは、UD材とされている。また、隣接する中間CFRPシート44c,44dの間、及び中間CFRPシート44d,44eの間では、炭素繊維の配向方向である一定方向が互いに30°ずれている。中間CFRPシート44e,44fの間では、炭素繊維の配向方向である一定方向が互いに60°ずれている。つまり、UD材である各CFRPシート44c〜44fは、その炭素繊維の配向方向が少しずつ(鋭角な所定角度)ずれるように順に積層されている。
【0057】
具体的には、中間CFRPシート44cは、その炭素繊維の配向方向である一定方向が、該中間CFRPシート44cの長手方向に対し30°ずれた方向とされている。中間CFRPシート44dは、その炭素繊維の配向方向である一定方向が、該中間CFRPシート44dの長手方向されている。中間CFRPシート44eは、その炭素繊維の配向方向である一定方向が、該中間CFRPシート44eの長手方向に対し30°ずれた方向で、且つ中間CFRPシート44cの炭素繊維の配向方向に対し60°ずれた方向とされている。中間CFRPシート44fは、その炭素繊維の配向方向である一定方向が、該中間CFRPシート44fの短手方向とされている。
【0058】
以上、本実施形態においても、上記効果と同様な効果、すなわち、CFRPシート44の炭素繊維に起因して支持基板41の表面41aにおいての光反射率にムラが生じるのを抑制でき、放射線画像を精度よく取得できるという効果を奏する。
【0059】
また、本実施形態では、上述したように、全てのCFRPシート44c〜44fの間において炭素繊維の配向方向が互いにずれている。よって、支持基板41では、炭素繊維の配向方向に起因する撓みが一層抑制され、支持基板1の剛性を一層高めることが可能となる。
【0060】
なお、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、支持基板41の表面41aとシンチレータ層2との間に、Al等を含む金属で形成された金属反射膜5をさらに備える場合がある(図9参照)。この場合にも、上述したように、金属反射膜5の膜厚を薄くしても放射線画像を精度よく取得できるため、金属反射膜5の薄膜化が可能となる。
【0061】
ちなみに、各CFRPシート44c〜44f間における炭素繊維の配向方向のずれは、上記角度に限定されず、様々な角度としてもよい。
【0062】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係るシンチレータパネルについて説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0063】
図10は、本発明の第5実施形態に係るシンチレータパネルを示す概略側断面である。図10に示すように、本実施形態のシンチレータパネル50が上記シンチレータパネル10と異なる点は、支持基板1(図2参照)に代えて、支持基板51を備えた点である。
【0064】
支持基板51では、該支持基板51を構成するCFRPシート(シート)54が全てペーパ材とされている。具体的には、最も表面51a側(一主面側,図示上側)に積層されたCFRPシート54aは、CFRPペーパ材とされている。つまり、最もシンチレータ層2側に位置するCFRPシート54aに含有された炭素繊維は、細分化され散在されると共に、その配向方向がランダムとなっている。また、CFRPシート54のうち最も裏面41b側(他主面側,図示下側)に積層されたCFRPシート54b、及びCFRPシート54a,54b間に位置する中間CFRPシート(中間シート)54c〜54eも、CFRPペーパ材とされている。
【0065】
以上、本実施形態においても、上記効果と同様な効果、すなわち、CFRPシート54の炭素繊維に起因して支持基板51の表面51aにおいての光反射率にムラが生じるのを抑制でき、放射線画像を精度よく取得できるという効果を奏する。
【0066】
また、本実施形態では、上述したように、複数のCFRPシート54のそれぞれがペーパ材とされているため、支持基板51が柔軟性を有してフレキシブルなものとなる。さらに、支持基板51の放射線透過率(放射線吸収率)のムラをも抑制することができる。
【0067】
なお、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、支持基板51の表面51aとシンチレータ層2との間に、Al等を含む金属で形成された金属反射膜5をさらに備える場合がある。この場合にも、上述したように、金属反射膜5の膜厚を薄くしても放射線画像を精度よく取得できるため、金属反射膜5の薄膜化が可能となる。
【0068】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係るシンチレータパネルについて説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0069】
図11は、本発明の第6実施形態に係るシンチレータパネルを示す概略側断面である。図11に示すように、本実施形態のシンチレータパネル60が上記シンチレータパネル10と異なる点は、支持基板1(図2参照)に代えて、支持基板61を備えた点である。
【0070】
支持基板61では、該支持基板61を構成するCFRPシート(シート)64のうち、最も表面61a側(一主面側,図示上側)に積層されたCFRPシート64aが、CFRPペーパ材とされている。つまり、最もシンチレータ層2側に位置するCFRPシート64aに含有された炭素繊維は、細分化され散在されると共に、その配向方向がランダムとなっている。また、CFRPシート64のうち最も裏面61b側(他主面側,図示下側)に積層されたCFRPシート64bも、CFRPペーパ材とされている。
【0071】
また、CFRPシート64a,64b間に位置する中間CFRPシート(中間シート)64c,64eは、その炭素繊維の配向方向である一定方向が該中間CFRPシート64c,64eの長手方向されたUD材とされている。さらに、中間CFRPシート64c,64e間に位置する中間CFRPシート(中間シート)44dは、CFRDペーパ材とされている。つまり、支持基板61は、CFRDペーパ材とUD材とが交互に積層されて構成されている。
【0072】
以上、本実施形態においても、上記効果と同様な効果、すなわち、CFRPシート64の炭素繊維に起因して支持基板61の表面61aにおいての光反射率にムラが生じるのを抑制でき、放射線画像を精度よく取得できるという効果を奏する。
【0073】
なお、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、支持基板61の表面61aとシンチレータ層2との間に、Al等を含む金属で形成された金属反射膜5をさらに備える場合がある。この場合にも、上述したように、金属反射膜5の膜厚を薄くしても放射線画像を精度よく取得できるため、金属反射膜5の薄膜化が可能となる。
【0074】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、炭素繊維強化樹脂シートを中間シートとして用いたが、これに代えて若しくは加えて、グラファイト(黒鉛)シート、アモルファスカーボンシート、Alシート、及び樹脂シート等の少なくとも1つを中間シートとして用いてもよい。
【0075】
また、上記実施形態のそれぞれは、支持基板を構成するシートのうち最も裏面側に、CFRPペーパ材であるCFRPシート4b,24b,34b,44b,54b,64bを備えているが、これらCFRPシート4b,24b,34b,44b,54b,64bを備えない場合もある。例えば上記第1実施形態では、図12,13に示すように、CFRPシート4a,4c,4d,4eを積層して支持基板1を構成してもよい。
【0076】
なお、支持基板を構成するシートのうち最も裏面側のシートは、CFRPペーパ材でなくともよく、UD材、グラファイトシート、アモルファスカーボンシート、Alシート又は樹脂シート等であってもよい。
【0077】
また、本発明において支持基板を構成するシートの枚数は限定されるものではなく、複数であればよい。すなわち、例えば、上記第1及び第4実施形態では、炭素繊維の配向方向がずれるよう中間CFRPシートを順に積層すればよい。また、例えば、上記第2、第3及び第5実施形態では、中間CFRPシートを1又は2枚設けてもよく、4枚以上でもよい。また、例えば上記第6実施形態では、CFRDペーパ材とUD材とを交互に積層できればよい。
【符号の説明】
【0078】
1,21,31,41,51,61…支持基板、1a,21a,31a,41a,51a,61a…表面(一主面)、1b,21b,31b,41b,51b,61b…裏面(他主面)、2…シンチレータ層、4,24,34,44,54,64…CFRPシート(炭素繊維強化樹脂シート,シート)、4a,24a,34a,44a,54a,64a…CFRPシート(最も一主面側のシート)、4b,24b,34b,44b,54b,64b…CFRPシート(最も他主面側のシート)、4c〜4e,24c〜24e,34c〜34e,44c〜44f,54c〜54e,64c〜64e…中間CFRPシート(中間シート,炭素繊維強化樹脂シート,シート)、5…金属反射膜、10,20,30,40,50,60…シンチレータパネル、R…放射線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一主面及び他主面を有する支持基板と、
前記支持基板の前記一主面上に設けられ、入射した放射線を光に変換するシンチレータ層と、を備え、
前記支持基板は、複数のシートが互いに積層されて構成され、
前記複数のシートのうち最も前記一主面側に積層されたシートは、分散された炭素繊維を含有する炭素繊維強化樹脂シートであることを特徴とするシンチレータパネル。
【請求項2】
前記複数のシートのうち最も前記他主面側に積層されたシートは、分散された炭素繊維を含有する炭素繊維強化樹脂シートであることを特徴とする請求項1記載のシンチレータパネル。
【請求項3】
前記複数のシートは、最も前記一主面側のシートと最も前記他主面側のシートとの間に積層された中間シートを複数有し、
前記複数の中間シートは、一定方向に配向された炭素繊維を含有する炭素繊維強化樹脂シートであり、
前記複数の中間シートのうち一の中間シートと他の中間シートとの間において炭素繊維の前記一定方向は、互いに交差していることを特徴とする請求項1又は2記載のシンチレータパネル。
【請求項4】
前記複数のシートは、最も前記一主面側のシートと最も前記他主面側のシートとの間に積層された中間シートを複数有し、
前記複数の中間シートは、一定方向に配向された炭素繊維を含有する炭素繊維強化樹脂シートであり、
前記複数の中間シート間において炭素繊維の前記一定方向は、互いに等しいことを特徴とする請求項1又は2記載のシンチレータパネル。
【請求項5】
前記複数のシートは、分散された炭素繊維を含有する炭素繊維強化樹脂シートであることを特徴とする請求項1又は2記載のシンチレータパネル。
【請求項6】
前記支持基板の前記一主面と前記シンチレータ層との間に設けられた金属反射膜をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載のシンチレータパネル。
【請求項7】
前記分散された炭素繊維は、短繊維状の炭素繊維原糸を抄紙することで形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項記載のシンチレータパネル。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−33466(P2011−33466A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179709(P2009−179709)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】