説明

シンチレータ結晶のスペクトル性能を最適化する方法

本発明は、分光シンチレータの分光性能を最適化する方法を提供し、この方法は、シンチレータを反射体材料で取り囲み、PMTの近傍又は結晶の下部(PMTの近傍)に少なくとも1つの位置が存在し、シンチレータのPMTから離れた端部に少なくとも1つの位置が存在する、結晶の3又はそれ以上の軸方向位置において分解能及び光出力を測定する走査を行い、結晶及び/又は反射体の表面仕上げを、結晶の長さ及び異なる方位角にわたって均等な光出力及び最適な分解能を得るように調整することによって行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2009年5月20日に出願された米国仮特許出願第61/179,916号に対する優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
核ガンマ線分光法は、放射線検出器で検出された核放射線を分析するために用いられる技法である。スペクトル分析を行う場合、核検出器を使用して核放射線を検出する。検出器の情報をスペクトルの形で記録し、これが、記録した様々な核エネルギー及びこれらの検出率のヒストグラムとなる。ガンマ線スペクトルの分析により、研究する試料の組成を識別するとともに、試料を構成する様々な元素の量を特定することができる。
【0003】
核ガンマ線分光法は、ワイヤライン検層、掘削同時検層などの油田探査用途を含む多くの分野で使用されている。油田用途では、例えば核分光法を使用して、炭化水素の調査における評価のために、ウェル周辺の地層の地球化学的組成を分析する。
【0004】
核分光に一般的に使用される1つの種類の放射線検出器にシンチレーション検出器があり、この検出器は、シンチレーション結晶及び光電子増倍管(PMT)又はシンチレータの光信号を電気信号に変換するのに適したその他の装置で構成される。シンチレーション結晶とは、光電子増倍管が感じやすい波長を有する、核放射線を光学的放射線又は光に変換する特性を持った物質である。
【0005】
全体的信号(すなわちシンチレーション検出器の場合には総光子数)は、核放射によって付与されるエネルギー量及びシンチレータの光子変換効率の関数である。この組み合わせた関数が応答関数となる。分光法の性能が良好であるためには、付与エネルギーの光子数への変換率が付与エネルギーに依存せず、又はほとんど依存しないことが必須である。
【0006】
核分光分析の質における重要な要素は、シンチレーション結晶が、同量の付与エネルギーの場合に一貫して同量の光を生みだす能力を有することである。理論的には、単一の核放射線エネルギーに対する検出器の応答は、光子から電子へのエネルギー変換における統計的処理によって促進され、ガウス幅が狭いほどスペクトルデータの質が高くなるというガウス型スペクトル形状によって概算することができる。ピークの幅は、所与のシンチレータ材料の「分解能」と呼ばれるパラメータによって定量化され、この分解能が良好であるほど検出器の質が高い。理論的には、光出力が付与エネルギーに比例すると仮定した場合、ガウスの幅、すなわち分解能は、検出される核粒子により付与されるエネルギーの平方根に応じて変化する。実際には、単一のエネルギーに対する検出器の応答は、必ずしもガウス型になるとは限らず、応答の幅は、必ずしもエネルギーの平方根に従うとは限らない。結晶の異なる部分では異なる量の光が生み出され、或いは場所によって光収集が異なるので、分解能などは、検出器の容積内の到来するガンマ線がぶつかる場所に依存することがある。このような不完全な挙動は、核分光で得られるデータの品質に悪影響を及ぼす。
【0007】
シンチレーション結晶補償は、検出器の応答関数を改善するように結晶表面を改質する処理である。この処理は、その基本形式において広く知られている。Saint Gobain Crystals and Detectors社は、全反射を通じて結晶内に光が捕捉されるのを避けるために、同社のシンチレータ結晶の、PMTに結合された表面を除く全ての表面を粗面化するという事実(技術情報記録文献#526)を発表している。
【0008】
米国特許第5,866,908号には、センサ全体にわたってより均一な出力レベルを得るために、シンチレータアレイ内の個々の結晶の反射特性をどのように変更できるかが記載されている。このように、従来技術では、検出器の感度レベルに影響を与える方法についての記載はあるものの、検出器のスペクトル反応の形状又は核エネルギーの範囲全体にわたる検出器応答の挙動についての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,866,908号明細書
【特許文献2】米国仮特許出願第61/179,892号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在、核ガンマ線分光は、Schlumberger社により市販されている少なくとも3つの油田ツールで使用されており、その他の会社も自社独自のツールの生産を開始している。Schlumberger社のワイヤライン貯留層飽和ツール(RST)は、中性子相互作用からガンマ線スペクトルを取得して、その応答生成物を生成する。ワイヤライン元素捕獲分光ゾンデ(ECS)は、中性子相互作用から得られたガンマ線分光データを分析する別のツールである。最後に、EcoScope(商標)ツールは、掘削同時検層においてガンマ線分光応答生成物を提供する。これらのツールの性能は全て、検出器応答がガウス型でない場合、及び分解能が理論的なエネルギーの平方根のように変化しない場合、負の影響を受ける。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書で説明する方法は、核検出器の応答を最適化して、よりガウス型のスペクトル形状を取得し、最適なエネルギー平方根の挙動に近いガウス幅を得るために使用できる系統的処理である。この方法は、結晶を狭ビーム核放射線源で走査して異なる場所における結晶反応を測定するステップを含む。この処理の目的は、結晶のどこで核放射線を検出しても結晶反応が均一になるようにすることである。その後、この走査データを使用して、特定の領域における結晶反応を増減させるように結晶表面を改質することができる。特定の補償を行った後、結晶反応を最適化して核スペクトルの質を改善する。結晶表面特性の代わりに又はこれと組み合わせて、結晶の周囲に配置された光反射体の特性に影響を与えることにより、同じ方法を使用することができる。核分光シンチレーション検出器の質をより高めるために、本明細書に開示する方法が最適化する2つの決定的なパラメータは、応答の形及びエネルギーに関する応答である。
【0012】
本発明は、分光検出器の分光性能を最適化する方法を提供する。この検出器は、少なくともシンチレーション結晶と、光電子増倍管又は別の光子検出手段とを備える。この方法は、a)シンチレータ結晶を反射体材料で取り囲むステップと、b)PMTの近傍又は結晶の下方(PMTの近傍)に少なくとも1つの位置が存在し、シンチレータのPMTから離れた端部に少なくとも1つの位置が存在する、結晶の3又はそれ以上の軸方向位置において分解能及び光出力を測定する走査を行うステップと、c)結晶及び/又は反射体の表面仕上げを、結晶の長さ及び異なる方位角にわたって均等な光出力及び最適な分解能を得るように調整するステップとを含む。最良の結果を得るためにステップaからステップcまでを繰り返すことができる。
【0013】
以下の説明、図面及び特許請求の範囲からその他の又は別の特性が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】幅広ビーム662keVの137Cs源で照射した結晶のスペクトルデータ(処理前)を示す図である。
【図2】最適化方法を適用する前の結晶の3つの走査位置のスペクトル応答のグラフのオーバーレイである。
【図3】結晶の3つの位置の、22Na源からの3つの放射エネルギーのスペクトル応答のグラフのオーバーレイである。
【図4】光電子増倍管(PMT)に結合されたシンチレータを、結晶を走査するための平行な放射源とともに示す図である。
【図5】本方法の実施形態による、結晶を走査するための構成、軸方向位置1〜5、結晶底部のPMT近くの位置6、及びPMTから離れた結晶端部の位置7を示す図である。
【図6】最適化方法を適用した後の結晶の3つの走査位置のスペクトル応答のグラフのオーバーレイである。
【図7】最適化方法を適用した後の幅広ビーム662keVの137CS源で照射した結晶のスペクトルデータのグラフである。
【図8】マルチエネルギー22Na源で照射した結晶の、結晶補償を行った後の異なる位置のスペクトルデータのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明では、本開示を理解できるように数多くの詳細を示す。しかしながら、当業者であれば、これらの詳細を伴わずに本発明を実施できること、及び説明する実施形態から数多くの変形又は修正が考えられることを理解するであろう。
【0016】
効率を高めるために、最終的な検出器用途で検出されるであろうエネルギーと同様の核エネルギー源で結晶を照射することが望ましい。例えば、低エネルギーの印加には137CS(662keV)及び60Co(1173keV及び1333keV)を使用することができ、高エネルギーの印加には最適化のためにトリウム(208Tl娘生成物からの2615keV)を使用することができる。より広範囲にわたるガンマ線エネルギーの印加では、マルチエネルギー源を使用して、異なる深さで同時にシンチレータを調べることができる。511keV、1275keVに2つのエネルギーピークを有し、1786keVにサムピークを有する22Na源が好例である。この2つの異なるガンマ線エネルギーにより、結晶が異なる深さで有効に調べられ、エネルギーが高いほど結晶内の浸透が深い。このようにして、エネルギー範囲全体にわたって同時に結晶補償を最適化することができる。
【0017】
この方法の1つの目的は、ガンマ線放射に対する検出器応答を結晶内の異なる地点において測定することである。第1のステップは、局所的結晶反応を精密にまとめることである。最適化ステップ中は、結晶をその最終用途に酷似するように、すなわち、最終的な検出器の組立品に関して同様の光反射体、光結合、及びPMTを使用して準備することが望ましい。この技法の目的は、結晶のどの部分が照射されても最高のピーク位置(光出力)及び最良の分解能を得ること、及び結晶が照射された場合にピーク位置及び分解能の変動をできるだけ抑えることである。この結果、調査するエネルギー範囲に関して最適な結晶分解能及び最適なスペクトル形状(ガウス型)が得られるようになる。研磨した結晶から開始しても、或いは粗い結晶から開始してもよいが、通常は、全体的に研磨した結晶から開始して結晶表面を徐々に粗面化する方が実際的である。しかしながら、粗い結晶表面から開始し、同じ方法を使用してこれらを徐々に研磨することもできる。
【0018】
方法は以下のステップを含む。
1.結晶の側面及び(PMTから離れた)遠端に軽く傷を付け又は別様に摩耗させることにより、最良と思われる結晶補償から開始する。
2.結晶を光反射体で取り囲み、PMTに結合する。
3.放射能源又はその他の放射源を使用して一連のスペクトル取得を行う。様々な放射源位置の数は、結晶のできるだけ多くを走査するように選択すべきである。円柱結晶では、図5に示すように、PMTから離れた結晶端部、結晶の軸に沿った複数の地点(軸方向走査)、結晶の半径周囲の複数の地点(方位角走査)、及びPMTの下方の放射源が配置された地点で測定を行うべきである。本発明の1つの実施形態では、図4に示すように平行な放射源を使用してこれを行い、ビームの横方向の範囲を制限する。代替の実施構成では、シンチレータの表面近くに平行でない放射源を配置する。平行性に欠ける上に与える鮮明度が低ければ、放射能量の低い放射源を使用することができる。
4.反射体を取り除いて結晶表面にアクセスする。
5.以下のステップは、最新性能の走査のためにいつでも中断してステップ2からステップ4を繰り返すことができる。所望の結果が得られるまで全てのステップを繰り返すことができる。
6.スペクトル取得物は、ピーク位置及びピーク分解能に注目することによって分析すべきである。この段階でいずれかの検出器ドリフト(すなわち、時間に伴う(単複の)ヒストグラム内のピーク位置の変化)が存在する場合、このドリフトに関して測定を補償する必要がある。
7.所望の結果は、全ての走査地点に関して同様のピーク位置、及び同様の及び最適な分解能が得られることである。
8.通常、結晶表面が粗面化している場合には、PMT内により多くの光を収集することができる。走査データを使用して、ピーク位置が平均よりも低い箇所の周辺の結晶表面の粗度を高める。
9.平均よりも低く測定された全ての位置が平均出力レベルへ向かって上昇するまでステップ6からステップ9までを繰り返す。(処理中に新たな平均がわずかに上昇する可能性がある。)
10.平均よりも低い領域に傷を付けることによってさらなる改善を得ることができない場合、今度は平均ピーク位置よりも高い箇所の表面を研磨して、信号レベルを平均へ向けて下げるべきである。
11.好ましい実施形態では、ステップ2からステップ4までを繰り返すことにより最終結果をチェックするが、走査を行う代わりに検出器から遠く離れたところに平行でない放射源を配置して、結晶全体が均一なガンマ線束にさらされるようにする。この結果得られる取得物は、(近似的な)ガウスピークを有するきれいなスペクトルを与えるべきである。均一な照射を実現するために、平行でない照射源を結晶の中央平面内に配置すべきである。放射源の結晶表面からの距離は、結晶の長さよりも短くすべきではない。
【0019】
この方法は、単結晶、多結晶材料、又はプラスチックなどのあらゆる固体シンチレータ材料に当てはまる。例として、NaI(Tl)、CsI(Na)、CsI(Tl)、LaCl3:Ce、LaBr3:CeなどのLaハライド、LPS、GSO、BGO、LuAp:Ce、LuAG:Pr、又はいずれかのプラスチックシンチレータが挙げられる。実施形態によっては、シンチレータ材料が、不純物を加えずに十分な時間にわたって励起及び減衰する固有シンチレータであるものもあれば、シンチレータ材料が活性剤又は少量の不純物を必要とするものもある。活性剤としては、タリウム、ナトリウム、セリウム及びプラセオジムがしばしば使用され、これらは一般に、化学組成の略語内に括弧でくくられた又はコロンで分離された物質として反映される。実施形態によっては、他の活性剤、又は存在するシンチレーション特性に実質的に寄与しない、一般に共ドーパント呼ばれる追加元素の痕跡を含むシンチレータ材料に関わるものもある。
【0020】
137CSの662keVピークなどの既知のガンマ線ピークの位置を繰り返し測定すること、及び結晶を走査しようと試みる前にその位置が安定することを確実にすることにより、検出器ドリフトを判定することができる。これとは別に、或いはこれに加え、走査の最初の測定を周期的に繰り返して、ピーク位置が変化していないことをチェックし、或いは1つの特定の測定定数に関してピーク位置を保つようにPMT又は増幅器の利得を調整することができる。
【0021】
図1に、最適化方法を適用する前に幅広ビーム662keVの137CS源で照射した結晶のスペクトルデータを示す。ピーク形状はガウス型ではなく、分解能は非常に悪い。
【0022】
図2には、最適化方法を適用する前の結晶の3つの走査位置のスペクトル応答のオーバーレイを示す。このグラフは、放射源の結晶に対する位置によってピーク位置及びピーク形状が大きく変化することを示している。
【0023】
図3には、結晶の3つの位置の、22Na源からの3つの放射エネルギーのスペクトル応答のオーバーレイを示す。
【0024】
図4には、PMTに結合されたシンチレータを、本方法の評価において使用する結晶を走査するための平行な放射源とともに示す。放射能源400に、コリメータの開口部404を取り囲んで配置された遮蔽物402を設けることにより、ガンマ線ビーム406(すなわち、放射能源400により放射された放射線)がシンチレーション結晶408の中へ導かれる。シンチレータは、光電子増倍管の窓412において光電子増倍管(PMT)に結合される。
【0025】
図5には、本方法の実施形態による、シンチレータ結晶の様々な走査を得るための構成を示しており、1〜5は軸方向走査であり、6はPMTの近くの結晶底部から取得するものであり、7はPMTから離れた端部から走査するものである。
【0026】
図6には、最適化方法を適用した後の結晶の3つの走査位置のスペクトル応答のオーバーレイグラフを示す。このグラフは、結晶に対する放射源の位置間でピーク位置及び分解能がはるかに一貫していることを示す。
【0027】
図7には、最適化方法を適用した後に幅広ビーム662keVのCs137源で照射した結晶のスペクトルデータを示す。ピーク形状は理想的なガウス形状に非常に近く、分解能(ピーク幅)は大きく改善されている。
【0028】
図8には、マルチエネルギー22Na源で照射した結晶の、最適化した結晶補償を行った後の異なる位置のスペクトルデータを示す。ピーク形状及び分解能は、全てのエネルギーに関して最適化されている。
【0029】
或いは、結晶の表面粗度を変化させる代わりに、又はこれに加えて、結晶の異なる軸方向位置及びPMTから離れた結晶の端部に異なる表面特性の反射体を使用することができる。これには、以下に限定されるわけではないが、異なる表面粗度を有する異なる反射フッ素重合体の使用が含まれる。他の反射体として、拡散反射率の高い白色エラストマ、反射率の高い粉末(TiO2、BaSO4など)、反射粉末を埋め込んだ高分子ホイル、さらには反射率の非常に高い他の材料上に蒸着した金属ホイル又は金属皮膜も考えられる。この用途のための高反射性材料は、主にAg及びAlである。
【0030】
反射体の表面仕上げは、ほぼ正反射を許容するもの(光沢から艶出し仕上げ)から、ほぼ拡散反射(正反射を制限又は除去する艶無し仕上げ)まで様々であってよい。ほとんどの材料は、艶無し表面仕上げのものでさえも何らかの正反射量を有する。
【0031】
高温環境での使用を意図された反射体は、(米国仮特許出願第61/179892号、代理人整理番号49.0422に開示されるように)材料の将来的な老朽化、及び光出力及び補償の劣化を防ぐために、温度又は上昇圧力で前処理することができる。
【0032】
結晶の粗度の変化は、異なる粗度の(研磨紙又は天然ダイヤのパッドなどの)研磨パッドで表面に傷を付けることにより、適当な硬度及び粒度の材料でサンドブラスト処理することによる摩耗を利用して、結晶を回転させて軸方向に移動させながら鋭利な器具で表面に傷を付けることにより、又は軸方向に段階的に変化する表面粗度を与える他のいずれかの手段により実現することができる。後者は、旋盤又は同様の装置内で結晶を回転及び移動させながら細い先端又は刃で材料に傷を付けることによって実現することができる。このような装置を数値的に制御して、粗度が軸方向に変化する表面仕上げを予想及び反復可能な方法で得ることができる。研磨材は、以下に限定されるわけではないが、アルミナ酸化物、炭化ケイ素、酸化物クロム、ダイヤモンドなどの、シンチレータ材料の硬度と比べて十分に硬い材料の1つであることが好ましい。
【0033】
さらに別の実施形態では、化学エッジングを通じて表面仕上げを変化させることができる。表面の一部にマスキングを施すことにより、或いは表面がエッチング剤にさらされる時間を制御して変化させることにより、軸に沿った変化を得ることができる。
【0034】
表面仕上げを変化させるための別の実施形態は、プラズマエッチングの使用によるものである。これを局所的に及び軸方向に変化させて適用することもできる。
【0035】
上述のように最適化したシンチレータを、光電子増倍管、又はアバランシェフォトダイオード(APD)、マイクロチャネルプレート(MCP)ベースのPMT、又はシリコン光電子増倍管などの同様の装置と一体化することができる。このような検出器は、ダウンホールツールにおいて高分解能ガンマ線分光に使用することができる。
【0036】
限られた数の実施形態に関連して本発明を開示したが、本開示の恩恵を受ける当業者であれば、これらから数多くの修正及び変形を理解するであろう。添付の特許請求の範囲は、このような修正及び変形を、本発明の真の思想及び範囲に含まれるものとして網羅することが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンチレータ結晶及び光電子増倍管(PMT)を備えた分光シンチレータの分光性能を最適化する方法であって、
前記シンチレータ結晶に、該シンチレータ結晶を実質的に取り囲む反射体材料を提供するステップと、
前記シンチレータ結晶をガンマ線源で照射するステップと、
前記PMTの閾値距離内に少なくとも第1の位置が存在し、前記シンチレータ結晶の、前記シンチレータの前記PMTから離れた反対端に少なくとも第2の位置が存在する、前記シンチレータ結晶の3又はそれ以上の軸方向位置における分解能及び光出力を測定する走査を行うステップと、
1)前記シンチレーション結晶、及び2)前記反射体材料の一方の表面仕上げを、前記シンチレーション結晶の長さ及び1又はそれ以上の異なる方位角に関して均等な光出力及び最適な分解能を得るように調整するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ガンマ線源が137Csを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガンマ線源が、232Th及び232Thの娘生成物で構成される群から選択された線源を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ガンマ線源が22Naを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シンチレータ結晶の表面仕上げのみを調整するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反射体材料のみを調整するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記シンチレータ材料が、固有材料及び活性材料の一方を含み、1)単結晶、2)多結晶材料、3)セラミック、及び4)プラスチックで構成される群から選択された材料を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記シンチレーション結晶が、以下に限定されるわけではないが、NaI:Tl、CsI:Na、CsI:Tl、LaCl3:Ce、LaBr3:Ce、CeBr3LPS、GSO:Ce、BGO、LuAP:Ce、YAP:Ce、LuAG:Pr及び(単複の)プラスチックシンチレータで構成される群から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載のステップを複数回繰り返して実行するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
22Naガンマ線スペクトルにおける3つのエネルギーピークを使用して調整を行うステップと、
前記調整を、3つの全てのピークに対して同時に又は連続して行うステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記表面仕上げを調整するステップが、前記シンチレータ結晶の表面に研磨材で傷を付けるステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記研磨材が、異なる粗度を特徴として有する、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記表面仕上げを調整するステップが、サンドブラスト処理を行うステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記表面仕上げを調整するステップが、鋭利な先端を用いて規則的な軸方向に依存するパターンで前記表面に傷を付けるステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記傷を付けるステップを数値制御(NC)機械によって制御するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記表面仕上げを調整するステップが、化学エッチング処理を適用するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記表面仕上げを調整するステップが、プラズマエッチング処理を適用するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記表面仕上げを好ましい方向に従って調整するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記表面仕上げに対する前記調整の結果が、前記結晶軸にほぼ沿って位置合わせされた粗度マークを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記反射体材料が、炭素フッ素重合体を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記反射体材料が、反射エラストマを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記反射体材料が、高反射性金属ホイルを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記反射体材料が、プラスチックホイル上に蒸着された高反射性金属皮膜を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記反射体材料が、Ag及びAlで構成される群から選択された材料を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
反射体材料の平均光出力を上回る領域に低い反射率を与えるステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項26】
反射体材料の平均光出力を下回る領域に高い反射率を与えるステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記反射体材料を熱で前処理するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記反射体材料を圧力で前処理するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項29】
検出器ドリフトのための補償を適用するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記検出器ドリフトのための補償が、基準ガンマ線ピークを使用して繰り返し測定した基準位置の使用に基づいて決定される、
ことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記検出器ドリフトが、前記検出器の内部活動によるスペクトル特性を参照することによりモニタされる、
ことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項32】
最適化された分光性能を有するシンチレータであって、前記分光性能が、シンチレータ結晶を反射体材料で実質的に取り囲むことと、前記シンチレータ結晶の下方に少なくとも第1の位置が存在し、前記シンチレータの光電子増倍管から離れた反対端に少なくとも第2の位置が存在する、前記シンチレータ結晶の3又はそれ以上の軸方向位置における分解能及び光出力を測定する走査を行うことと、1)前記結晶、及び2)前記反射体の一方の表面仕上げを、前記シンチレータ結晶の長さ及び異なる方位角にわたって均等な光出力及び最適な分解能を得るように調整することとによって得られる、
ことを特徴とするシンチレータ。
【請求項33】
前記シンチレータ結晶及び前記反射体材料の両方の前記表面仕上げを順番に調整する、
ことを特徴とする請求項32に記載のシンチレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−527618(P2012−527618A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511951(P2012−511951)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/035217
【国際公開番号】WO2010/135298
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(500177204)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】Schlnmberger Holdings Limited
【Fターム(参考)】