説明

シートをスタックに排紙して積み重ねるための装置

【課題】スタックにシートを排紙して積み重ねるための装置であって、スタック上の位置にシートを周期的に前進移動させるための少なくとも1つの搬送エレメントが設けられており、積み重ねられたシートのための、往復運動する少なくとも1つの方向調整エレメントが設けられており、計算機を備えた、方向調整エレメントの運動を制御するための装置が設けられている形式のものを改良して、スタックに対するシート方向調整の改善されたものを提供する。
【解決手段】方向調整エレメント2を運動させるために、少なくとも1つのリニアアクチュエータ8が設けられており、リニアアクチュエータ8が、計算機によって制御されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタックにシートを排紙して積み重ねるための装置であって、スタック上の位置にシートを周期的に前進移動させるための少なくとも1つの搬送エレメントが設けられており、積み重ねられたシートのための、往復運動する少なくとも1つの方向調整エレメントが設けられており、計算機を備えた、方向調整エレメントの運動を制御するための装置が設けられている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19806100号明細書から、シート印刷機の排紙装置に設けられた2つまたは3つ以上の紙揃え装置を制御するための配置構造が公知であり、ここではストッパプレートは、ニューマチック式の駆動装置によって、周期的に往復運動される。ストッパプレートの運動は、時間経過で、それぞれ異なるパラメータ、たとえば機械速度、紙サイズ、被印刷物およびテーマに適合される。ニューマチック式の駆動装置のための調節エレメントとして制御弁が役立つ。機械サイクルで制御弁を作動させるための時点は、計算機によって求められ、計算機は、排紙動作に影響を及ぼすパラメータを含んだ特性曲線の格納された記憶装置にアクセスする。このような配置構造では、固定的な特性曲線に基づいて、制御弁の作動に関する時点が調節され、この場合運動経過は影響を受けない。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19627241号明細書による、枚用紙印刷機の排紙装置における枚用紙パイルを形成する装置では、振動板は片側で振動され、つまりばねに懸架されていて、かつ励振装置と接続されており、励振装置は排紙サイクルとは無関係に励振する。振動板は、励振装置と非接触式に連結されている。励振装置として、可動コイルが役立ち、可動コイルは固定的な振動周波数で作動し、振動周波数は、弾性的に懸架された振動板の共鳴周波数に近似して位置するが、正確に共鳴周波数上には位置しない。運動経過は、懸架に基づいて、実質的に正弦状であり、変化しない。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3413179号明細書による、シート印刷機の排紙装置では、シート揃え装置の運動は、計算機および記憶された特性曲線によって、シートごとの個々のストロークから振動運動に変換することができる。特性曲線の選択は、紙の重さ、シートサイズおよびシート印刷機の回転数に関する入力に基づいて行われる。シート揃え装置の運動経過は、個々の往復運転および振動運転で固定的に設定されている。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許第19616422号明細書には、シート印刷機のシート排紙装置においてサイドストッパを制御するための装置が記載されており、ここでは排紙して積み重ねようとするシートの固有の条件に応じて、シートにサイドストッパの作用する時点が、回転スライダを調節することによって手動で変化される。回転スライダは、サイドストッパに周期的に圧縮空気を供給する。サイドストッパの作用する際の運動経過は一定に維持される。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第2942855号明細書による、シート印刷機のためのスタック形成装置では、励振装置のための駆動装置が、電磁式の発振器として形成されており、発振器の振動周波数は、制御装置を介して、供給(回路網)周波数に対して大幅に低下されている。1構成では、振動周波数は、供給周波数と重畳するので、振動板のゆっくりとした往復運動以外に迅速な励振運動も形成される。発振器として、励磁巻線と可動子軸とを備えたリニア振動装置が使用可能であり、リニア振動装置は振動板と連結されている。振動板の往復運動は、ほぼ正弦状の2つの運動の重畳として形成される。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4001560号明細書には、シート印刷機のシート排紙装置が記載されており、ここではシートストッパが、シート印刷機の、シート排紙動作に影響を及ぼすパラメータ、特に運転パラメータに応じて、アクティブ化される。パラメータは、計算機に供給されて、シートストッパを制御するための調節信号として用いられる。調節信号は、シートストッパの運動経過において特定の遅延を生じさせ、この場合運動経過自体は変化しない。
【0008】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19808310号明細書による、シート印刷機の排紙装置における校正刷りシートを収容するための装置では、シートストッパは、シートスタックから離間した第2の係止位置に移動可能である。シート搬送装置は、校正刷りシートが前縁でシートスタックから離間したシートストッパまで搬送され、シートストッパが第2の係止位置から取出位置に移動可能であるように、調節可能である。シートストッパは、各係止位置で停止する。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19806100号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19627241号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許出願公開第3413179号明細書
【特許文献4】ドイツ連邦共和国特許第19616422号明細書
【特許文献5】ドイツ連邦共和国特許出願公開第2942855号明細書
【特許文献6】ドイツ連邦共和国特許出願公開第4001560号明細書
【特許文献7】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19808310号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の課題は、シートをスタックに排紙して積み重ねるための装置を改良して、スタックに対するシート方向調整の改善されたものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するための本発明の装置によれば、方向調整エレメントを運動させるために、少なくとも1つのリニアアクチュエータが設けられており、リニアアクチュエータが、計算機によって制御されるようになっている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のように構成では、シートの方向調整エレメントを運動させるために、少なくとも1つのリニアアクチュエータが設けられており、リニアアクチュエータは計算機によって制御可能である。したがって自由に規定可能な運動プロフィールに基づいて方向調整エレメントを運動させることができるので、スタック形成が改善される。方向調整エレメントの運動は、シートを排紙する機械の位相位置に関して、また機械の別の調節に関して同期化することができる。計算機によって制御されるリニアアクチュエータ、特に可動コイルアクチュエータは、自由にプログラミング可能な制御装置によって、方向調整エレメントをフレキシブルに運動させることができる。これによって様々な運転形式、特に所定の種類の被印刷物、被印刷物厚さおよび被印刷物サイズに関して方向調整過程を適合させることができる。方向調整エレメントの位置は、持続的にセンサ、たとえばホールセンサを用いて、磁界の直接的な触知によって検出することができる。リニアアクチュエータと方向調整エレメントとは、弾性的な連結部材によって機械的に分離することができる。グリッパでシートを搬送するシート印刷機において、このような装置を使用すると、リニアアクチュエータによって、機械サイクルに関する方向調整エレメントの位相位置、グリッパ開口の調節、シートの前縁の位置、シートの制動作用および別の方向調整エレメントの位置を調節することができる。さらにシートを簡単に取り出すための方向調整エレメントの始動および停止位置を調節することができる。さらにこのような装置によって、シートを、スタックにおけるマーキングに対して所望の形式で移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に図示の実施例につき、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0013】
図1には、シート印刷機の排紙装置にスタック(パイル)1を形成するための装置を概略的に示した。スタック1の両側に2つの励振ユニットが配置されており、図1には単に一方を示した。励振ユニットは振動板2から成っており、振動板2は、戻しばね4,5で機械フレーム5に懸架されている。振動板2の、スタック1とは反対側の中央部分に、弾性的な連結部材6が取り付けられている。連結部材6は、可動コイルアクチュエータ8(Tauchspulenaktor)の引張可動子7と結合されている。可動コイルアクチュエータ8の励磁巻線9は、機械フレーム5に定置に取り付けられている。振動板2の運動は、ホールセンサ10によって検出され、ホールセンサ10は、振動板2に取り付けられたマグネット11に向けられている。選択的に可動コイルアクチュエータ8の磁界は、振動板2の距離認識のために利用することができる。ホールセンサ10の出口は、制御装置12と接続されており、制御装置12は、シート印刷機の機械角度のための回転センサ13用の入口と、振動板2の運動プロフィールのためのセンサ14用の入口とを備えている。制御装置12は、ホールセンサ10、回転センサ13およびセンサ14のデータを処理するための計算機を備えている。制御装置12には、さらに振動板2の速度プロフィールのためのセンサ15と、振動板2の力経過もしくはモーメント経過または励磁巻線9を制御しようとする電流のためのセンサ16とが接続されている。制御装置12は、電力出力段17と接続されており、電力出力段17は励磁コイル9と接続されている。
【0014】
シートが搬送方向18でグリッパの開放によってスタック上に落下されると、可動コイルアクチュエータ8は制御され、振動板2はまだ落下しているか、もしくは浮遊しているシートにコンタクトして、既に排出して積み重ねられたシートに対する方向調整(整列)が行われる。その目的は、突出するシートのないスタック1の鉛直方向の側面を有する正確なスタック形成である。可動コイルアクチュエータ8の制御は、制御装置12と電力出力段17とを介して行われる。引張可動子7と振動板2との間の弾性的な連結部材6もしくは別のばねエレメントは、機械的な分離作用および過負荷防止作用を有している。ホールセンサ10によって、持続的に搬送方向18に対して横向きの振動板2の位置が検出される。ホールセンサ10の信号は、振動板2の位置調整に関する実際値信号である。センサ14によって可動コイルアクチュエータ8に運動プロフィールが設定される。制御装置12において、実際の運動が、目標運動プロフィールからずれているかどうか検査される。目標値−実際値のずれが存在すると、計算機15によって、補償作用を有する調節値が形成されて、電力出力段17を介して励磁巻線9に供給される。センサ14によって運動プロフィールが設定される際に、振動板2の行程および周波数は、個別的に設定して調整される。過励振もしくは過制御(Uebersteuerung)によって、振動板2における外側の力と内側の力とは補償することができる。回転センサ13で検出されるシート印刷機の機械角度に基づいて、振動板2の位置調整はトリガすることができ、したがって機械サイクルおよび別の機械エレメントに関して位相調節可能に運転することができる。電力出力段17と励磁巻線9との間に生じる供給電流Iは、持続的に測定し、かつ過負荷の監視のためのホールセンサ10の信号と共に処理することができる。電力停止時には、振動板2は、戻しばね3,4の作用によって、所望の出発位置に移動する。
【0015】
図2および図3には、厚紙シートまたは厚みの僅かなシートに関する目標−運動プロフィールが、どのようにセンサ14によって設定されるか示した。振動板2の距離sの方向は、搬送方向18に対して垂直である。制御装置12にシート厚さに関する情報が入力され、これによって自動的に正確な運動プロフィールが選択される。厚紙シートを印刷する場合、図2に示した台形状の運動プロフィールが選択される。傾度は十分に大きくなっており、これによって落下する厚紙シートに対する振動板2の比較的大きな力の衝突により、厚紙シートの方向調整にとって十分な衝突エネルギが提供される。比較的薄いシートの場合、正弦状の運動プロフィールが設定され、これによってシートはスムーズにスタック1上の目標位置に送られる。必要な場合、運動プロフィールの行程および周波数は、現行の状況に適合させることができる。図2および図3の運動プロフィールにおいて、厚紙シートでは3つのハードな衝突が形成され、薄いシートでは1つのソフトな衝突が形成され、シートの軽いスライドが及ぼされる。
【0016】
同様の形式で、センサ15,16によって、機械角度またはシートを搬送するグリッパの開放角度に応じた、振動板2の速度および力の経過に関する台形状もしくは正弦状のプロフィールが設定される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】シートをスタックに排出して積み重ねるための装置を示す概略図である。
【図2】振動板の運動プロフィールを示す線図である。
【図3】振動板の運動プロフィールを示す線図である。
【符号の説明】
【0018】
1 励振ユニット、 2 振動板、 3,4 戻しばね、 5 機械フレーム、 6 連結部材、 7 引張可動子、 8 可動コイルアクチュエータ、 9 励磁巻線、 10 ホールセンサ、 11 マグネット、 12 制御装置、 13,14,15,16 センサ、 17 電力出力段、 18 搬送方向、 I 供給電流、 s 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタックにシートを排紙して積み重ねるための装置であって、
スタック上の位置にシートを周期的に前進移動させるための少なくとも1つの搬送エレメントが設けられており、
積み重ねられたシートのための、往復運動する少なくとも1つの方向調整エレメントが設けられており、
計算機を備えた、方向調整エレメントの運動を制御するための装置が設けられている形式のものにおいて、
方向調整エレメント(2)を運動させるために、少なくとも1つのリニアアクチュエータ(8)が設けられており、
該リニアアクチュエータ(8)が、計算機によって制御されるようになっていることを特徴とする、スタックにシートを排紙して積み重ねるための装置。
【請求項2】
リニアアクチュエータとして可動コイルアクチュエータ(8)が設けられており、該可動コイルアクチュエータ(8)が、振動板(2)に連結されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
方向調整エレメント(2)の運動を検出するセンサ(10)が、制御装置(12)と接続されている、請求項1記載の装置。
【請求項4】
方向調整エレメント(2)に磁気的な構成部材(11)が取り付けられており、ホールセンサ(10)が、該構成部材(11)に向けられている、請求項3記載の装置。
【請求項5】
リニアアクチュエータ(8)の磁界に関するセンサ(10)が、制御装置(12)と接続されている、請求項1記載の装置。
【請求項6】
リニアアクチュエータ(8)の制御電流を測定するための配置構造が、制御装置(12)と接続されている、請求項1記載の装置。
【請求項7】
輪転印刷機の排紙装置にシートを排紙して積み重ねる際に、シートを搬送するエレメントの回転位置に関するセンサ(13)が、制御装置(12)と接続されている、請求項1記載の装置。
【請求項8】
方向調整エレメント(2)の位相位置が、搬送エレメントのサイクルに関して調節されるようになっている、請求項1記載の装置。
【請求項9】
規定の時点でスタック(1)上の位置にシートを前進移動させるために開放可能なグリッパが設けられており、方向調整エレメント(2)の位相位置が、前記時点に関して調節されるようになっている、請求項1記載の装置。
【請求項10】
スタック(1)の両側に方向調整エレメント(2)が設けられており、これらの方向調整エレメント(2)の位相位置が、互いに調節されるようになっている、請求項1記載の装置。
【請求項11】
方向調整エレメント(2)の運動プロフィールが、調節されるようになっている、請求項1記載の装置。
【請求項12】
方向調整エレメント(2)が、規定の始動−停止位置に調節されるようになっている、請求項1記載の装置。
【請求項13】
リニアアクチュエータ(8)として、リニアモータ−ステップ駆動装置が設けられている、請求項1記載の装置。
【請求項14】
方向調整エレメント(2)の加速度を検出するためのセンサ(10)が設けられており、該センサ(10)が、制御装置と接続されている、請求項1記載の装置。
【請求項15】
方向調整エレメント(2)の運動が、シートに及ぼされる衝突エネルギに応じて制御されるようになっている、請求項1記載の装置。
【請求項16】
方向調整エレメント(2)とリニアアクチュエータ(8)との間に、弾性的な連結部材(6)が配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項17】
方向調整エレメント(2)が、シートの品質を表す信号に応じて調節されるようになっている、請求項1記載の装置。
【請求項18】
スタック(8)に、シートのためのマーキング装置が対応配置されており、方向調整エレメント(2)が、マーキング装置に関する制御信号に応じて調節されるようになっている、請求項1記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−111450(P2006−111450A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296525(P2005−296525)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(390009232)ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト (347)
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60,Heidelberg,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】