説明

シートヒータの制御装置

【課題】より快適で、しかも使い勝手の良いシートヒータを提供することを目的とするものである。
【解決手段】採暖用ヒータ8と、前記採暖用ヒータが配線されたシートの温度を検知する温度検知素子6と、前記採暖用ヒータへの通電をオン/オフする通電制御素子7と、前記温度検知素子によって検知した温度に基いて通電制御素子のオン/オフを制御する温度制御回路部3と、コンデンサ13と抵抗器14とを用いたタイマー回路部4とを備え、通電開始のあと所定時間経過後に前記温度制御回路部の温度制御レベルを切換えるようにしたもので、より快適な温度制御が可能で、かつ、安価で操作性の良いシートヒータを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用座席に取り付けられて、座席の暖房を行うシートヒータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシートヒータは、コンパレータ(比較器)等を用いて電源電圧を抵抗器で分圧した基準電圧とサーミスタ等の温度検知素子と抵抗器で分圧した電圧とを比較し、基準の温度以下の場合には通電制御素子をオンしてヒータへ通電してシートの温度を上げ、基準の温度を越えると通電制御素子をオフするような通電制御を行っている。
【0003】
すなわち、図3に示すように、採暖用ヒータ101と、シートの温度を検知するサーミスタ等からなる温度検知素子102と、採暖用ヒータ101への通電をオン/オフする通電制御素子103と、コンパレータ等を用いた温度制御回路部104とで構成されている。
【0004】
ここで、シートの温度は温度検知素子102であるサーミスタ等の抵抗値から検出し、検出した温度に応じて温度制御回路部104が採暖用ヒータ101への通電制御を行い、その温度を基準の値になるように制御している。
【0005】
さらに、基準の温度が一通りであると快適性を損なう場合があるので、手動操作により強出力と弱出力を切換える構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−211946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、基準となる温度が一通りなので、運転開始時の車内温度が低い時にシートの温度を急速に暖め、かつエアコン等で車内温度が上がってきた時にはシートを緩やかに暖めるという要求を満たすことができない。
【0008】
また、強出力と弱出力の切換え機能を設けても、運転中に手動操作を行わねばならいので、操作性の面で課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、より快適で使い勝手の良いシートヒータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明のシートヒータ制御装置は、採暖用ヒータと、前記採暖用ヒータが配線されたシートの温度を検知する温度検知素子と、前記採暖用ヒータへの通電をオン/オフする通電制御素子と、前記温度検知素子によって検知した温度に基いて通電制御素子のオン/オフを制御する温度制御回路部と、コンデンサと抵抗器とを用いたタイマー回路部とを備え、通電開始のあと所定時間経過後に前記温度制御回路部の温度制御レベルを切換えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシートヒータ制御装置によれば、運転開始時の車内温度が低い時に温度制御回路部の温度制御レベルを高く設定してシートの温度を急速に暖め、タイマー回路部によって所定時間経過した後に温度制御回路部の温度制御レベルを低く切換えてシートを緩やかに暖めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1におけるシートヒータ制御装置のブロック図
【図2】本発明の実施の形態2におけるシートヒータ制御装置のブロック図
【図3】従来のシートヒータ制御装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、採暖用ヒータと、前記採暖用ヒータが配線されたシートの温度を検知する温度検知素子とを備えたシートヒータの温度を制御する制御装置に於いて、前記採暖用ヒータへの通電をオン/オフする通電制御素子と、前記温度検知素子によって検知した温度に基いて通電制御素子のオン/オフを制御する温度制御回路部と、コンデンサと抵抗器とを用いたタイマー回路部とを備え、操作スイッチがオンされ制御装置への通電が開始してから所定時間経過後に温度制御回路部の温度制御レベルを切換えるようにしている。
これによって、より快適な温度制御が可能になる。
【0014】
第2の発明は、操作スイッチがオンされ制御装置への通電が開始してから所定時間経過後に温度制御回路部の温度制御レベルを通常到達しない低い温度レベルに切換えて、通電制御素子をオフ状態に保つようにしている。
【0015】
これにより無駄にシートヒータへ通電することを防止できる。
【0016】
第3の発明は、タイマー回路部を複数個備え、それぞれのタイマーの設定時間が経過するごとに温度制御回路部の温度制御レベルを切換えるようにしている。
【0017】
これによって、より快適できめ細かい温度制御が可能になる。
【0018】
第4の発明は、タイマー回路部を複数個備え、それぞれのタイマーの設定時間が経過するごとに温度制御回路部の温度制御レベルを切換えるように構成し、前記タイマーの最も長い設定時間が経過すると温度制御回路部の温度制御レベルを通常到達しない低い温度レベルに切換えて、通電制御素子をオフ状態に保つようにしている。
【0019】
これによって、より快適な温度制御が可能になり、かつ、無駄にシートヒータへ通電することを防止できる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1において、IGリレー1がオンされている状態で操作スイッチ2がオンされると、温度制御回路部3、およびタイマー回路部4に通電され、シートヒータユニット5の制御が開始される。
【0022】
温度検知素子6によって検出される温度が基準の温度以下であれば、前記温度制御回路部3は、通電制御素子7をオンしてシートヒータユニット5の採暖用ヒータ8に通電し、シートの温度を上昇させる。
【0023】
シートの温度が上昇して、温度検知素子6によって検出される温度が基準の温度を越えると、温度制御回路部3は、通電制御素子7をオフして採暖用ヒータ8への通電を停止する。
【0024】
前記通電制御素子7のオン/オフの繰返しでシートの温度は基準の温度の近傍に維持される。
【0025】
一方、タイマー回路部4は、通電が開始されてから所定の時間が経過すると温度制御回路部3の基準の電圧(基準の温度)を切換えるように動作する。
【0026】
タイマー回路部4の設定時間をエアコン等で車内温度が暖まるのに必要な時間に設定しておき、温度制御回路部3の基準の温度を切換え前は外気で冷えた使用者の身体を出来るだけ早く暖めるのに必要なレベルに設定し、タイマー回路部4によって切換えられた後は使用者が寒さを感じないよう保温するレベルに設定すれば、使用者にとって快適で無駄のないシートヒータユニットの温度制御が行える。
【0027】
また、温度制御回路部3の基準の温度の切換えは、タイマー回路部4によって自動的に行われるので、使用者にとって運転中に切換え操作する手間を省くことができる。
【0028】
前記温度制御回路部3、およびタイマー回路部4の回路構成を述べれば、温度制御回路部3の基準の温度は、電源電圧を抵抗器9,10で分圧した電圧レベルで与えられコンパレータ11の−端子に入力されている。
【0029】
シートの温度はサーミスタ等の温度検知素子6の抵抗値で検知され、電源電圧をこの抵抗値と抵抗器12で分圧した電圧レベルで与えられ、コンパレータ11の+端子に入力されている。
【0030】
シートの温度が低いと温度検知素子6の抵抗値が高くなり、コンパレータ11の+端子のレベルが基準の温度を示す同コンパレータ11の−端子のレベルより高くなり、その出力端子は通電制御素子7をオンさせる状態になる。
【0031】
シートの温度が上がると温度検知素子6の抵抗値が下がり、コンパレータ11の+端子のレベルが基準の温度を示すその−端子のレベルより低くなり、出力端子は通電制御素子7をオフさせる状態になる。
【0032】
タイマー回路部4の設定時間は、コンデンサ13が抵抗器14を介して充電される電位が電源電圧を抵抗器15,16で分圧した電圧レベルに達するまでの時間である。
【0033】
電源電圧を抵抗器15,16で分圧した電圧レベルがコンパレータ17の+端子に入力され、コンデンサ13の電圧レベルが同コンパレータ17の−端子に入力されている。
【0034】
タイマー回路部4へ通電が開始されると、抵抗器14を介してコンデンサ13が徐々に充電される。
【0035】
コンデンサ13の電圧レベルが電源電圧を抵抗器15,16で分圧した電圧レベルに達するまでは、コンパレータ17の出力がトランジスタ18をオフする状態になり、コンデンサ13の電圧レベルが電源電圧を抵抗器15,16で分圧した電圧レベルを越えるとコンパレータ17の出力はトランジスタ18をオンする状態になる。
【0036】
トランジスタ18がオフしている状態では、温度制御回路部3の基準の温度は電源電圧
を抵抗器9,10で分圧した電圧レベルで設定されている。
【0037】
トランジスタ18がオンすると抵抗器19を介して抵抗器10へ電流が流れ、コンパレータ11の−端子の電圧レベルが上がる。
【0038】
コンパレータ11の−端子の電圧レベルが上がると、温度制御回路部3の基準の温度は下がり、トランジスタ18がオフしている場合より低い温度でシートの温度を制御するようになる。
【0039】
なお、タイマー回路部に通電が開始されてから所定の時間が経過してトランジスタ18がオンすると、温度制御回路部3の基準の電圧(基準の温度)が切換えられるが、抵抗器19の抵抗値を小さく設定すれば、通常到達しない低い温度レベルに基準の温度を設定することができる。
【0040】
タイマー回路部4の設定時間をエアコン等で車内温度が暖まりシートヒータでの採暖を必要としなくなるまでの時間を設定しておき、タイマー回路部4に通電が開始されてから所定の時間が経過後に温度制御回路部3の基準の温度を通常到達しない低い温度レベルに切換えることでシートヒータへの無駄な通電を防止する。
【0041】
(実施の形態2)
図2は実施の形態2を示し、複数のタイマー回路部4a,4bを備え、複数の温度制御レベルを設定するようにしたものである。
【0042】
なお、図1と同作用を行う構成には同一符号を付し、具体的説明は実施の形態1のものを援用する。
【0043】
IGリレー1がオンされている状態で操作スイッチ2がオンされると、温度制御回路部3、タイマー回路部4a,4bに通電され、シートヒータユニットの温度制御が開始される。
【0044】
タイマー回路部4aは、通電が開始されてから所定の時間Aが経過すると温度制御回路部3の基準の電圧(基準の温度)を基準温度レベルAに切換え、タイマー回路部4bは通電が開始されてから所定の時間Bが経過すると温度制御回路部3の基準の電圧(基準の温度)を基準温度レベルBに切換えるように動作する。
【0045】
このように、複数の温度制御レベルを設けることで、車内温度の変化に適したよりきめ細かいシートヒータの制御が行える。
【0046】
コンパレータ等のICは、複数個の回路を1つのパッケージに収納したものが多く市販されており、タイマー回路を複数個備えることは、制御装置の小型化にあまり支障にはならない。
【0047】
なお、複数のタイマー回路部のうち最も設定時間の長いタイマー回路部について、前述したように、タイマー回路部に通電が開始されてから所定の時間が経過したとき、温度制御回路部3の基準の温度制御レベルを通常到達しない低い温度レベルに設定すると、車内温度の変化に適したよりきめ細かいシートヒータの制御を行うとともに、シートヒータへの無駄な通電を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかるシートヒータ制御装置は、コンデンサと抵抗器とを用い
たタイマー回路部を備え、操作スイッチがオンされ制御装置への通電が開始してから所定時間経過後に温度制御回路部の温度制御レベルを切換えるようにしているので、車載採暖用シートヒータに適用でき、より快適な温度制御が可能で、かつ、安価で操作性の良いシートヒータを提供することができる。
【符号の説明】
【0049】
2 操作スイッチ
3 温度制御回路部
4 タイマー回路部
6 温度検知素子
7 通電制御素子
8 採暖用ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採暖用ヒータと、前記採暖用ヒータが配線されたシートの温度を検知する温度検知素子と、前記採暖用ヒータへの通電をオン/オフする通電制御素子と、前記温度検知素子によって検知した温度に基いて通電制御素子のオン/オフを制御する温度制御回路部と、コンデンサと抵抗器とを用いたタイマー回路部とを備え、通電開始のあと所定時間経過後に前記温度制御回路部の温度制御レベルを切換えることを特徴とするシートヒータの制御装置。
【請求項2】
温度制御回路部の温度制御レベルを通常到達しない低い温度レベルに切換えて、通電制御素子をオフ状態に保つようにした請求項1記載のシートヒータの制御装置。
【請求項3】
タイマー回路部を複数個備え、それぞれのタイマー回路部の設定時間が経過するごとに温度制御回路部の温度制御レベルを切換えること特徴とする請求項1記載のシートヒータの制御装置。
【請求項4】
タイマー回路部を複数個備え、それぞれのタイマー回路部の設定時間が経過するごとに温度制御回路部の温度制御レベルを切換えるように構成し、前記タイマー回路部の最も長い設定時間が経過すると温度制御回路部の温度制御レベルを通常到達しない低い温度レベルに切換えて、通電制御素子をオフ状態に保つようにした請求項3記載のシートヒータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−264936(P2010−264936A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119522(P2009−119522)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】