説明

シートベルト用リトラクタ

【課題】プリテンショナ機構部のウエビングの引き込み性能を低温環境下から高温環境下の広範な地域において確保することが可能なシートベルト用リトラクタを提供する。
【解決手段】車両衝突時等に巻取ドラムを巻き取り方向に回転させてウエビングを巻き取るプリテンショナ機構部を備えたシートベルト用リトラクタにおいて、前記プリテンショナ機構部は、ガスを発生させるガス発生部材と、一端部に前記ガス発生部材が装着される長筒状のシリンダと、前記シリンダ内に移動可能に収容されて前記ガス発生部材から発生したガスの圧力で前記シリンダ内を押圧駆動されて前記巻取ドラムを前記巻き取り方向へ回転させるピストンと、前記ピストンのガス受圧側端部に重なるように取り付けられて該ピストンと前記シリンダの内壁との隙間をシールする複数のシール部材と、を備え、前記複数のシール部材は、耐環境性の異なる少なくとも2種類のシール部材を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突時等の緊急時にウエビングの弛みを除去するためのシートベルト用リトラクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両衝突時等の緊急時にシートベルトの弛みを除去するためのシートベルト用リトラクタに関して種々提案されている。
例えば、シリンダ内に摺動可能に保持されて、ラックが形成された略円柱状のピストンのガスの圧力を受ける受圧側面にOリングから構成されるシール部材を重ね、更に、このOリングに円板状の受圧板を重ねて配置したプリンテンショナ機構を備えたシートベルト用リトラクタがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−202213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した特許文献1に記載されたOリングから構成されるシール部材は、ゴム等の弾性材料から形成されている場合が多い。このようなゴム材料では、一般的に低温特性に優れている場合には、高温特性が犠牲になる傾向があり、逆に、高温特性に優れている場合には、低温特性が犠牲になる傾向がある。一方、シートベルト用リトラクタのプリテンショナ機構作動時のウエビングの引き込み性能を、自動車が使用されうる全ての温度環境下で、つまり、極地等の寒冷地から赤道直下の砂漠等の熱帯地までの、低温環境下から高温環境下の広範な地域において確保する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、プリテンショナ機構部のウエビングの引き込み性能を低温環境下から高温環境下の広範な地域において確保することが可能なシートベルト用リトラクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため請求項1に係るシートベルト用リトラクタは、ウエビングを巻回収納する巻取ドラムと、前記巻取ドラムを回転可能に支持するハウジングと、車両衝突時等の緊急時に前記巻取ドラムを巻き取り方向に回転させて前記ウエビングを巻き取るプリテンショナ機構部と、を備えたシートベルト用リトラクタにおいて、前記プリテンショナ機構部は、ガスを発生させるガス発生部材と、一端部に前記ガス発生部材が装着される長筒状のシリンダと、前記シリンダ内に移動可能に収容されて前記ガス発生部材から発生したガスの圧力で前記シリンダ内を押圧駆動されて前記巻取ドラムを前記巻き取り方向へ回転させるピストンと、前記ピストンのガス受圧側端部に重なるように取り付けられて該ピストンと前記シリンダの内壁との隙間をシールする複数のシール部材と、を備え、前記複数のシール部材は、耐環境性の異なる少なくとも2種類のシール部材を有することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係るシートベルト用リトラクタは、請求項1に記載のシートベルト用リトラクタにおいて、前記複数のシール部材は、シリコーンゴムにより形成されたシール部材とニトリルゴムにより形成されたシール部材とを有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係るシートベルト用リトラクタは、請求項1又は請求項2に記載のシートベルト用リトラクタにおいて、前記ピストンは、ガス受圧側の端面に形成された所定深さの取付凹部を有し、前記複数のシール部材は、前記ピストンのガス受圧側の端面と略同一形状の平板状部材で該端面に当接されると共に、前記取付凹部に対向する位置に形成された貫通孔を有する第1シール部材と、前記ピストンのガス受圧側の端面と略同一形状の平板状部材で、前記取付凹部に対向する位置に立設された取付凸部を有する第2シール部材と、を有し、前記第2シール部材は、前記取付凸部が前記第1シール部材の前記貫通孔に挿通されると共に前記ピストンの前記取付凹部に嵌入されて該ピストンに取り付けられることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係るシートベルト用リトラクタは、請求項3に記載のシートベルト用リトラクタにおいて、前記第2シール部材は、前記取付凸部を厚さ方向に貫通するように形成されたガス抜き孔を有し、前記ピストンは、前記取付凹部から前記ピストンの移動方向に沿って貫通するように形成された連通孔を有することを特徴とする。
【0010】
更に、請求項5に係るシートベルト用リトラクタは、請求項3又は請求項4に記載のシートベルト用リトラクタにおいて、前記第1シール部材は、シリコーンゴムにより形成され、前記第2シール部材は、ニトリルゴムにより形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係るシートベルト用リトラクタでは、プリテンショナ機構部のシリンダ内に移動可能に収容されたピストンのガス受圧側端部には、耐環境性の異なる少なくとも2種類のシール部材が取り付けられて、該ピストンとシリンダの内壁との隙間がシールされる。これにより、プリテンショナ機構部のウエビングの引き込み性能を低温環境下から高温環境下の広範な地域において確保することが可能となる。
【0012】
また、請求項2に係るシートベルト用リトラクタでは、プリテンショナ機構部のシリンダ内に移動可能に収容されたピストンのガス受圧側端部には、シリコーンゴムにより形成されたシール部材とニトリルゴムにより形成されたシール部材とが取り付けられる。これにより、低温特性が優れたシリコーンゴムにより形成されたシール部材と高温特性が優れたニトリルゴムにより形成されたシール部材とによって、プリテンショナ機構部のウエビングの引き込み性能を低温環境下から高温環境下の広範な地域において確実に確保することが可能となる。
【0013】
また、請求項3に係るシートベルト用リトラクタでは、第2シール部材の取付凸部を第1シール部材の貫通孔に挿通して、更に、この取付凸部をピストンの受圧側端面に形成された所定深さの取付凹部に嵌入することによって、平板状の第1シール部材と第2シール部材とを重ね合わせて、該ピストンの受圧側端面に一体に組み付けることができ、取付作業効率の向上を図ることができる。
【0014】
また、第1シール部材と第2シール部材は、ピストンのガス受圧側の端面と略同一形状の平板状部材であるため、各シール部材が取り付けられたピストンを受圧面側からシリンダ内に挿入する際に、各シール部材のシリンダ内壁との摩擦によるねじれ、ずれ、外れ等を防止できる。これにより、各シール部材の取付不良によるシール性能の低下を確実に防止し、プリテンショナ機構部のウエビングの引き込み性能を低温環境下から高温環境下の広範な地域において更に確実に確保することが可能となる。
【0015】
また、請求項4に係るシートベルト用リトラクタでは、第2シール部材のガス抜き孔と、ピストンの連通孔とが連通する。これにより、ウエビングに作用する引き出し力が所定値以上になるとウエビングを引き出して乗員への衝撃を緩和するエネルギー吸収機構をシートベルト用リトラクタが備える場合に、プリテンショナ機構部の作動後において、ピストンが通常位置へ移動する時に、第2シール部材とガス発生部材との間のシリンダ内に残存する残存ガスを該ガス抜き孔及び連通孔を介して外部へ逃がすことができ、残存ガスの圧力がエネルギー吸収機構の動作を妨げることを防止できる。
【0016】
また、第2シール部材の取付凸部は中空となるため撓み易く、ピストンの取付凹部に容易に嵌入することができ、第1シール部材と第2シール部材のピストンへの取付作業効率の更なる向上を図ることができる。
【0017】
更に、請求項5に係るシートベルト用リトラクタでは、第1シール部材と第2シール部材のうち、ガス発生部材から発生した高温のガスが直接受圧側面に接触する第2シール部材を高温特性が優れたニトリルゴムによって形成することによって、シリコーンゴムによって形成された第1シール部材を高温のガスから保護しつつ、プリテンショナ機構部のウエビングの引き込み性能を低温環境下から高温環境下の広範な地域において確保することができる。また、低温特性が優れたシリコーンゴムによって形成された第1シール部材を、ピストンの受圧側端面とニトリルゴムによって形成された第2シール部材との間に配置することによって、低温環境下におけるプリテンショナ機構部のウエビングの引き込み性能を確実に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係るシートベルト用リトラクタの外観斜視図である。
【図2】シートベルト用リトラクタをユニット別に分解した斜視図である。
【図3】プリテンショナユニットの分解斜視図である。
【図4】プリテンショナユニットの分解斜視図である。
【図5】プリテンショナユニットの一部切り欠き側面図である。
【図6】ピストンの受圧面側から見た斜視図である。
【図7】ピストンの断面図である。
【図8】図7のパイプシリンダの要部拡大断面図である。
【図9】ハウジングユニットの分解斜視図である。
【図10】シートベルト用リトラクタのロックユニットを取り除いた状態の側面図である。
【図11】プリテンショナ機構のガス発生部材の作動によってピストンが移動して回転レバーの下端部がギヤ側アームの先端部から外れた状態を示す説明図である。
【図12】図11に対応するパウルの動作を示す説明図である。
【図13】ウエビングの引き込み性能を比較した比較結果の一例を示す引き込み性能比較表である。
【図14】他の実施形態1に係る第1シールプレートと第2シールプレートの一例を示す斜視図である。
【図15】図14の第1シールプレートと第2シールプレートをピストンに取り付けた一例を示すパイプシリンダの要部拡大断面図である。
【図16】他の実施形態2に係るピストンの受圧面側から見た斜視図である。
【図17】図16のピストンに取り付けられた第1シールプレートと第2シールプレートの一例を示すパイプシリンダの要部拡大断面図である。
【図18】他の実施形態3に係る枠状に形成された第1シール部材と第2シール部材をピストンに取り付けた一例を示すパイプシリンダの要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るシートベルト用リトラクタについて具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
[概略構成]
先ず、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の概略構成について図1及び図2に基づき説明する。
図1は本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の外観斜視図である。図2はシートベルト用リトラクタ1をユニット別に分解した斜視図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、シートベルト用リトラクタ1は、車両のウエビング3を巻き取るための装置であって、ハウジングユニット5と、巻取ドラムユニット6と、プリテンショナユニット7と、巻取バネユニット8と、ロックユニット9とから構成されている。
また、ロックユニット9は、ハウジングユニット5を構成するハウジング11の側壁部12に固設され、ウエビング3の急激な引き出しや車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング3の引き出しを停止する起動動作を行う。
【0022】
また、後述のプリテンショナ機構17(図3参照)を備えたプリテンショナユニット7は、平面視略コの字状のハウジングユニット5の相対向する各側板部13、14の上下端縁部から略直角内側方向に延出されてネジ孔が形成された各ネジ止め部13A、13B、14Aと貫通孔が形成されたピン止め部14Bに、プリテンショナユニット7の外側から挿通される各ネジ15によってネジ止めされ、また、ハウジング11の内側から挿通されるストッパーピン16と該ストッパーピン16に挿入されるプッシュナット18によって固定される。これにより、プリテンショナユニット7は、ハウジング11の側壁部12に相対向する他方の側壁部を構成する。
【0023】
また、巻取バネユニット8は、プリテンショナユニット7の外側にバネケース19に一体形成された各ナイラッチ8Aによって固設される。
そして、ウエビング3が巻装される巻取ドラムユニット6は、ハウジングユニット5の側壁部12に固設されたロックユニット9とプリテンショナユニット7との間に回転自在に支持される。また、巻取ドラムユニット6は、ガイドドラム21と、ドラムシャフト22と、ワイヤプレート25と、ラチェットギヤ26等とから構成されている。
【0024】
ガイドドラム21は、アルミ材等により形成されて、プリテンショナユニット7側の端面部が閉塞された略円筒状に形成されている。また、ガイドドラム21の軸心方向のプリテンショナユニット7側の端縁部には、外周部から径方向に延出され、更に略直角外側方向に延出されたフランジ部27が形成されている。また、このフランジ部27の内周面には、車両衝突時に各クラッチパウル29(図3参照)が係合してピニオンギヤ体33(図3参照)の回転が伝達されるクラッチギヤ30が形成されている。
【0025】
また、ガイドドラム21のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置には、円筒状の取付ボス31が立設され、スチール材等により形成されるドラムシャフト22が圧入等によって固着されている。また、この取付ボス31は、後述のクラッチ機構48(図3参照)を構成するポリアセタール等の合成樹脂材により形成された軸受部材32の筒状部32A(図3参照)に嵌入される。
【0026】
これにより、巻取ドラムユニット6の一端側は、軸受部材32を介してプリテンショナユニット7を構成するピニオンギヤ体33の軸受け部33A(図4参照)に回転可能に支持される。また、巻取ドラムユニット6のドラムシャフト22の先端部が、巻取バネユニット8内の渦巻バネに結合され、渦巻バネの付勢力によって巻取ドラムユニット6をウエビング3の巻き取り方向に常時付勢する構造とされる。
【0027】
また、ガイドドラム21の軸心方向のロックユニット9側には、端縁部から少し内側の外周面から径方向に延出されたフランジ部35が形成されている。また、フランジ部35の外周部は、アルミ材等により形成された側面視略卵形のワイヤプレート25で覆われている。また、ワイヤプレート25の外側中央部には、ラチェットギヤ26が、カシメ等によって固着されている。
【0028】
このラチェットギヤ26は、スチール材等により形成された円板状で、外周面に、後述のように車両衝突時等の緊急時にパウル37(図9参照)が係合するラチェットギヤ部26Aが形成されている。また、ラチェットギヤ26の外側中心位置には、軸部28が立設されている。この軸部28の外周面には、スプラインが形成され、巻取ドラムユニット6は、この軸部28を介してロックユニット9に回転可能に支持される。
【0029】
[プリテンショナユニットの概略構成]
次に、プリテンショナユニット7の概略構成について図2乃至図8に基づいて説明する。
図3及び図4はプリテンショナユニット7を分解した分解斜視図である。図5はプリテンショナユニット7の一部切り欠き側面図である。図6はピストン47の受圧面側から見た斜視図である。図7はピストン47の断面図である。図8は図5のパイプシリンダ42の要部拡大断面図である。
【0030】
図2乃至図4に示すように、プリテンショナユニット7は、プリテンショナ機構17と、ハウジングユニット5の側壁部12に軸支されたパウル37(図10参照)を回動させる強制ロック機構51と、カバープレート53とから構成されている。
【0031】
[プリテンショナ機構]
図3乃至図5に示すように、プリテンショナ機構17は、車両衝突時等の緊急時にガス発生部材41を作動させ、このガス発生部材41によるガスの圧力を利用して巻取ドラムユニット6のフランジ部27を介して該巻取ドラムユニット6をウエビング3の巻き取り方向に回転させる機構である。
【0032】
ここで、プリテンショナ機構17は、ガス発生部材41と、パイプシリンダ42と、ガス発生部材41のガス圧を受けてパイプシリンダ42内を移動する第1シールプレート43、第2シールプレート44及びピストン47と、このピストン47に形成されたラック47Aに噛合して回転するピニオンギヤ体33と、このパイプシリンダ42が取り付けられるベースプレート45と、このベースプレート45にパイプシリンダ42のピニオンギヤ体33側の側面に当接して配設される略直方体状のベースブロック体46と、ベースプレート45の外側面に配設されるクラッチ機構48とから構成されている。
【0033】
また、ピニオンギヤ体33は、スチール材等で形成された略円筒状で、その外周部にピストン47に形成されたラック47Aに噛合するピニオンギヤ部55が形成されている。また、このピニオンギヤ部55の軸心方向カバープレート53側の端部から外側方向に延出される円筒状の支持部56が形成されている。また、この支持部56は、ピニオンギヤ部55の谷径を外径として、このカバープレート53の厚さ寸法にほぼ等しい長さに形成されている。
【0034】
また、このピニオンギヤ部55の軸心方向ベースプレート45側の端部には径方向に張り出すフランジ部57が形成されている。さらに、このフランジ部57から外側方向に略円筒状で巻取ドラムユニット6のドラムシャフト22が挿通されると共に、軸受部材32の筒状部32Aが嵌入される軸受け部33Aが形成されたボス部58が形成されている。また、このボス部58の外周面には、基端部の外径を有する3個ずつのスプラインが中心角約120度間隔で形成されている。
【0035】
また、クラッチ機構48は、ポリアセタール等の合成樹脂材により形成された軸受部材32と、スチール材等で形成された略円環状のパウルベース61と、スチール材等で形成された3個のクラッチパウル29と、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されて、パウルベース61と共に各クラッチパウル29を挟持する略円環状のパウルガイド62とから構成されている。
【0036】
この軸受部材32は、図3及び図4に示すように、ガイドドラム21のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置に立設された円筒状の取付ボス31が回転可能に嵌入される略円筒状の筒状部32Aと、その筒状部32Aのガイドドラム21側の端縁部の外周から径方向外側に延出された円環状のフランジ部32Bとから形成されている。
【0037】
また、このフランジ部32Bの周縁部には、中心角約120度間隔で径方向外側に正面視略三角形の先細りの平板状に延出された3個の突出部32Cが形成されている。また、各突出部32Cの径方向外側先端部には、それぞれ係止片32Dが、筒状部32Aの外周面に対して軸方向平行に対向するように、クラッチ機構48の厚さ寸法よりも少し低い高さ寸法で立設されている。更に、各係止片32Dの先端部には、略直角外側方向に側断面略直角三角形状に突出した係合突起が形成されている。
【0038】
また、図3及び図4に示すように、パウルベース61の内周面には、ピニオンギヤ体33のボス部58に形成されたスプラインが圧入されるスプライン溝が中心角約120度間隔で3個ずつ形成されている。また、パウルベース61には、各クラッチパウル29の回転支軸29Aが回転可能に嵌入される3個の挿通孔65と、各挿通孔65をパウルベース61の外径側で囲むように肉厚の各パウル支持ブロック66が設けられている。また、各パウル支持ブロック66の外径端には、それぞれ係止ブロック67が形成されている。
【0039】
また、パウルベース61のガイドドラム21側の面には、軸受部材32の筒状部32Aをパウルベース61に挿入した場合に、フランジ部32B及び各突出部32Cのほぼ全体が入り込むように嵌入される正面視略三角形状の窪み部68が形成されている。この窪み部68の深さは、平板状の各突出部32Cの厚さにほぼ等しい深さ寸法に形成されている。また、窪み部68の底面の各頂点部分には、軸受部材32の各係止片32Dが挿通される各貫通孔69が形成されている。
【0040】
また、図3及び図4に示すように、パウルガイド62の内周径は、パウルベース61のスプライン溝よりも大きく形成されると共に、このパウルガイド62の軸方向外側の側面部には、3個の細長い各位置決突起71が、中心角120度間隔で半径方向に沿って突設されている。また、パウルガイド62の外周部には、パウルベース62の各係止ブロック67と係合する3個の各係止フック72が形成されている。
【0041】
そして、パウルベース61の各貫通孔69に各クラッチパウル29の回転支軸29Aを嵌入して載置し、その上側からパウルガイド62の各係止フック72をパウルベース61の各係止ブロック67に係合させることによって、各クラッチパウル29が回転支軸29を中心に回転可能に収納された状態で保持される。続いて、クラッチ機構48のパウルガイド62の軸方向外側の側面部に突設される各位置決突起71を、ベースプレート45の各位置決孔75に嵌入して、該クラッチ機構48をベースプレート45の外側面に配置する。
【0042】
その後、ピニオンギヤ体33のボス部58を、ベースプレート45の略中央部に形成された貫通孔76に嵌入後、該ボス部58に形成される各スプラインをクラッチ機構48を構成するパウルベース61の各スプライン溝に圧入固定する。これにより、クラッチ機構48とピニオンギヤ体33とが、ベースプレート45に配設固定されるとともに、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部55が、図5に示す位置に常に位置決め固定される。
【0043】
これにより、後述のように、車両衝突時等の緊急時にピニオンギヤ体33が回転した場合には、パウルベース61が回転して各クラッチパウル29が半径方向外側へ回動されて該パウルベース61から半径方向外側へ突出後、ガイドドラム21のクラッチギヤ30に噛合する。更に、ピニオンギヤ体33が回転することによって、パウルガイド62の各位置決突起71が剪断されて、クラッチ機構48及びガイドドラム21がウエビング3の巻き取り方向へ回転する。
【0044】
続いて、図3及び図4に示すように、軸受部材32の各係止片32Dをパウルベース61の各貫通孔69に挿入しつつ、筒状部32Aをピニオンギヤ体33の軸受け部33Aに嵌入する。そして、軸受部材32のフランジ部32B及び各突出部32Cを窪み部68に嵌入させる。これにより、軸受部材32の各突出部32Cの両側面部は、窪み部68の各頂点部分の内側面に対向するように配置されるため、当該軸受部材32はパウルベース61に対して相対回転不能に取り付けられる。
【0045】
また、ベースブロック体46は、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されている。そして、このベースブロック体46の内側の側端縁部から内側方向に平面視略半円状に窪むように形成されると共に底面部が外側方向に突出する略リング状に形成されたギヤ収納部81の該底面部の貫通孔82内にピニオンギヤ体33のフランジ部57を挿通させる。また、このベースブロック体46のベースプレート45側の側面部に突出する各位置決めボス83を、ベースプレート45の各位置決孔85に嵌入して、該ベースブロック体46をベースプレート45の内側面に配置する。
【0046】
また、ベースブロック体46は、パイプシリンダ42のガス発生部材41が収納される収納部42Aに対向する下端部から該収納部42A近傍位置まで、ピストン47が収納されるピストン収納部42Bに対向するように同じ厚さで所定幅(例えば、約10mm幅である。)だけ延出されたブロック延出部87が形成されている。また、このブロック延出部87の下端部には、ネジ88(図2参照)が挿通される貫通孔89が形成されている。
【0047】
また、ベースブロック体46の外側側面部からベースプレート45側に延出されて、外側方向に弾性変形可能に形成された弾性係止片46Aと、このベースブロック体46の上側側面部及び下側側面部からベースプレート45側に延出されて、外側方向に弾性変形可能に形成された各弾性係止片46Bとをそれぞれベースプレート45の側端部に係止する。これにより、ベースブロック体46がベースプレート45に配設される。
【0048】
尚、ギヤ収納部81の高さは、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部55とフランジ部57の高さの和にほぼ等しくなるように形成されている。
【0049】
[強制ロック機構]
ここで、ベースブロック体46内に配設される強制ロック機構51について図3乃至図5に基づいて説明する。
図3乃至図5に示すように、ベースブロック体46には、強制ロック機構51を配設する凹部91が形成されて、該強制ロック機構51を構成するプッシュブロック92と、回転レバー93と、プッシュブロック92を回転レバー93側方向へ付勢するブロック付勢バネ92Aと、ギヤ側アーム94と、このギヤ側アーム94を回転レバー93側方向へ付勢する付勢バネ95とが配設されている。また、このギヤ側アーム94には、ベースプレート45の外側から該強制ロック機構51を構成する連結シャフト96と、メカ側アーム97が接続されている。
【0050】
この回転レバー93は、ポリアセタール等の合成樹脂やアルミ材等で形成されて、略くの字状に形成されると共に、曲がり部に貫通孔が形成されている。そして、図5に示すように、回転レバー93は、一端側がピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部55に対向するように、ベースブロック体46の凹部91の底面部に立設されるボス98に回転可能に支持されている。
【0051】
また、プッシュブロック92は、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されている。そして、図5に示すように、プッシュブロック92は、凹部91の底面部に立設される位置決突起101によって、一端がピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部55の歯の近傍に位置し、他端が回転レバー93の近傍に位置するように位置決めされている。また、このプッシュブロック92は、ブロック付勢バネ92Aによって回転レバー93側に付勢され、ガタツキが防止されている。
【0052】
従って、後述のようにピニオンギヤ体33が回転した場合には、回転レバー93は、ピニオンギヤ部55の歯に押されたプッシュブロック92によって外側方向(図5中、反時計方向)に回動可能に構成されている(図11参照)。また、プッシュブロック92は、ブロック付勢バネ92Aによってピニオンギヤ体33側に戻るのを防止される。
【0053】
また、ギヤ側アーム94は、ポリアセタール等の合成樹脂やアルミ材等で形成されて、略平板状に形成されると共に、ベースブロック体46側の側面部の回転レバー93から遠い一端側には、ベースブロック体46の凹部91の底面部に形成された貫通孔102に挿通されるボス103が立設されている。また、ギヤ側アーム94のボス103が立設される側面部には、連結シャフト96の一端側折曲部が挿通される所定深さの溝部105が形成されている。
【0054】
また、ギヤ側アーム94は、回転レバー93側の先端部上面に、該回転レバー93の他端側が当接される段差部106が形成されている。そして、このギヤ側アーム94は、ボス103が凹部91の底面部に形成される貫通孔102に挿入されて、回転レバー93側に回動可能に支持される。更に、ギヤ側アーム94は、段差部106に対向する他方の先端部下面を付勢バネ95によって回転レバー93側へ(図5中、上側方向である。)付勢されて、該段差部106が回転レバー93の他端側に当接されている。
【0055】
従って、回転レバー93が図5中、反時計方向に回動した場合には、この回転レバー93の他端側がギヤ側アーム94の先端部から離れ、ギヤ側アーム94が付勢バネ95の付勢力によって、外側方向(図5中、反時計方向である。)へ回動可能に構成されている。
【0056】
また、連結シャフト96は、スチール材等の線材で形成されて、両端が相互に約90度ずれて対向するように略直角に折り曲げられている。また。この連結シャフト96の直線部の長さは、ハウジングユニット5の各側板部13、14(図9参照)の幅より若干長く形成されている。
【0057】
また、図4に示すように、ベースブロック体46の凹部91の底面部に形成される貫通孔102には、連結シャフト96の一端側折曲部が挿通される溝107が外周部から延び出ている。また、ベースプレート45のギヤ側アーム94に対向する部分には、連結シャフト96の一端側折曲部が挿通される貫通孔108が形成されている。
【0058】
従って、連結シャフト96の一端側折曲部は、ベースプレート45の貫通孔108と、ベースブロック体46の貫通孔102及び溝107を通って、ベースブロック体46の凹部91に配設されたギヤ側アーム94の溝部105内に嵌入される。
【0059】
また、メカ側アーム97は、ポリアセタール等の合成樹脂やアルミ材等で形成されて、略平板状の幅の狭い略扇形に形成されると共に、その中心角側の端縁部の外側面には、ハウジングユニット5の側壁部12(図9参照)に形成される貫通孔111(図9参照)に回転可能に嵌入されるボス112が立設されている。また、メカ側アーム97の外周側端縁部の側壁部12側の外側面には、切欠部113(図9、図10参照)内に挿通されるボス97Aが立設されている。また、メカ側アーム97の内側面には、中心線に沿って所定深さの溝部115が形成されている。
【0060】
従って、連結シャフト96の他端側折曲部をメカ側アーム97の溝部115内に嵌入することによって、メカ側アーム97は、このメカ側アーム97の中心角側の端縁部の外側面に立設されるボス112の軸心と連結シャフト96の軸心とがほぼ一直線状になるように、連結シャフト96の他端側に取り付けられる。
【0061】
そして、後述のようにプリテンショナユニット7がハウジングユニット5に取り付けられた場合には、メカ側アーム97のボス112は、側壁部12に形成される貫通孔105に回転可能に嵌入される(図10参照)。また、メカ側アーム97のボス97Aは、側壁部12に形成された切欠部138に挿入されて、側壁部12の内側に回動可能に取り付けられる。
【0062】
[プリテンショナ機構]
続いて、プリテンショナ機構17を構成するパイプシリンダ42の構成及び取り付けについて図3乃至図8に基づいて説明する。
図3乃至図5に示すように、パイプシリンダ42は、スチールパイプ材等で略L字状に形成されている。そして、その一端側(図3中、下側折曲部分)は、略円筒状の収納部42Aが形成されて、ガス発生部材41を収納するように構成されている。このガス発生部材41は、火薬を含んでおり、図示省略の制御部からの着火信号により該火薬を着火させてガス発生剤の燃焼でガスを発生させるように構成されている。
【0063】
また、パイプシリンダ42の他端側(図3中、上側折曲部分)は、断面略長方形のピストン収納部42Bが形成されて、ピニオンギヤ体33に対向する部分に切欠部117が形成され、ベースプレート45上に配設した場合に、該切欠部117内にピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部55が填り込むように構成されている。また、ピストン収納部42Bの上端部は、ベースプレート45とカバープレート53に当接される両側面部の幅方向略中央部から斜め外側方向へ傾斜するように切り欠かれた開口部118が設けられている。
【0064】
また、ピストン収納部42Bの両側面部には、上端部に形成された開口部118の外側方向へ傾斜する傾斜部118Aの下側に、プリテンショナユニット7をハウジングユニット5に取り付けると共に、ピストン47の抜け止めとして機能するストッパーピン16を挿通可能な相対向する一対の貫通孔121が形成されている。
【0065】
また、図3及び図4に示すように、第1シールプレート43は、シリコーンゴム等の低温特性に優れたゴム材等で形成されている。この第1シールプレート43は、ピストン収納部42Bの上端側から挿入可能な略長方形の平板状に形成され、ピストン47のガスを受圧するガス受圧側面と略同一形状である。また、第1シールプレート43は、ピストン47のガス受圧側面に形成された所定深さ(例えば、約4mmの深さである。)の断面円形の取付凹部122(図6参照)に対向する位置に、該取付凹部122の直径とほぼ同じ直径の貫通孔125が形成されている。
【0066】
また、第2シールプレート44は、ニトリルゴム等の高温特性に優れたゴム材等で形成されている。この第2シールプレート44は、ピストン収納部42Bの上端側から挿入可能な略長方形の平板状に形成され、ピストン47のガスを受圧するガス受圧側面と略同一形状である。また、第2シールプレート44は、ピストン47のガス受圧側面に形成された取付凹部122に対向する位置に、該取付凹部122に嵌入される略円柱状の取付凸部123が立設されている。
【0067】
この第2シールプレート44の取付凸部123は、第1シールプレート43の貫通孔125に嵌入後、第1シールプレート43を挟んで取付凹部122に嵌入可能な所定高さに形成されている。従って、第2シールプレート44は、取付凸部123を第1シールプレート43の貫通孔125に嵌入後、第1シールプレート43を挟んで取付凹部122に嵌入されて、ピストン47のガス受圧側面に取り付けられる。また、この取付凸部123の中央部には、軸心に沿って第2シールプレート44のガスを受圧する受圧側面から連通するガス抜き孔124が形成されている。
【0068】
また、図3乃至図7に示すように、ピストン47は、スチール材等で形成されて、ピストン収納部42Bの上端側から挿入可能な断面略長方形で、全体として長尺状の形状を有している。また、ピストン47のピニオンギヤ体33側の側面には、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部55に噛合するラック47Aが形成されている。また、ラック47Aの先端部(図3、図5中、上端部)の背面は、ストッパーピン16に当接可能な段差部126が形成されている。
【0069】
また、ピストン47のラック47Aに対して両側面部には、所定深さ(例えば、深さ約2mmである。)の一対の溝部127が、段差部126の上端縁からラック47Aの下端の刃先に対向する位置まで、ピストン47の長手方向に沿って互いに対向するように形成されている。また、一対の溝部127の下端部には、ピストン47の長手方向に沿って長い断面矩形状の貫通孔128が形成され、両側面部が連通されている。また、ピストン47の受圧側面に形成された取付凹部122と貫通孔128とは、ピストン47の長手方向に沿って形成された細径の連通孔131によって連通されている。
【0070】
そして、図5及び図8に示すように、第2シールプレート44の取付凸部123を第1シールプレート43の貫通孔125に嵌入後、ピストン47の受圧側面に形成された取付凹部122に嵌入して、第1シールプレート43及び第2シールプレート44をピストン47のガス受圧側面に取り付ける。そして、第1シールプレート43及び第2シールプレート44を奥側にして、ピストン47をピストン収納部42Bの上端側から奥に圧入する。また、第2シールプレート44のガス抜き孔124は、ピストン47の連通孔131を介して貫通孔128に連通している。
【0071】
従って、この状態で、ガス発生部材41で発生したガスの圧力によって、第1シールプレート43及び第2シールプレート44が押圧されて、ピストン47がピストン収納部42Bの上端側開口部118へ移動する。また、その後、ウエビング3が再度引き出される場合には、ピニオンギヤ体33の逆回転によってピストン47が下方に下がる際に、第2シールプレート44のガス抜き孔124、ピストン47の連通孔131及び貫通孔128を介してパイプシリンダ42内のガスが抜け、スムーズにピストン47が下がる。
【0072】
また、図5に示すように、ガス発生部材41が作動するまでの通常状態では、ピストン47はピストン収納部42Bの奥側に退避して、ラック47Aの先端がピニオンギヤ部55に非噛合状態となるように位置している。そして、このように構成されたピストン収納部42Bの切欠部117の内側に、ベースブロック体46のギヤ収納部81の両側端縁部から外側方向に突出する各突出部109を嵌入させつつ、ベースプレート45上にパイプシリンダ42を配置する。
【0073】
またこの時、ベースブロック体46のギヤ収納部81に立設された断面略U字状のラック止めピン133が、ラック47Aの上端のギヤ溝に挿入され、ピストン47の上下方向の移動が規制される。また、ピストン47の先端部は、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部55の近傍に位置して、非噛合状態になっている。
【0074】
これにより、パイプシリンダ42のピストン収納部42Bは、ベースブロック体46の側面部に立設される断面略三角形の各リブ134と、ベースプレート45の側端縁部のピニオンギヤ体33に対向する部分から略直角に延出された背当て部135によって、その両側面部が支持される。
【0075】
この背当て部135は、図3及び図5に示すように、ピストン収納部42Bとほぼ同じ高さになるように延出されており、延出方向端縁部の略中央部より上端側には、所定幅(例えば、幅約8mmである。)の切欠部136が所定深さ(例えば、約4mmである。)形成されている。また、背当て部135の下端縁部は、略直角外側方向に所定長さ(例えば、約4mmである。)延出され、この背当て部135の下側角部には、カバープレート53の厚さにほぼ高さの段差部137が形成されている。
【0076】
また、図3乃至図5に示すように、カバープレート53のベースプレート45の背当て部135に対向する側端部には、該背当て部135の先端部が挿通可能な各貫通孔141、142が形成されている。また、各貫通孔141、142の背当て部135の外側面に対向する側縁部は、内側方向(図4中、左側方向)へ所定高さ(例えば、約3mmの高さである。)窪んでいる。これにより、背当て部135の延出方向の各端縁部が各貫通孔141、142に挿入された場合には、各貫通孔141、142の内側面が、背当て部135の外側面に確実に当接するように構成されている。
【0077】
そして、ベースプレート45上にベースブロック体46、強制ロック機構51やパイプシリンダ42等が配置された状態で、このベースブロック体46のカバープレート53側の側面部に突出する各位置決めボス143を、カバープレート53の各位置決孔144に嵌入して、ベースブロック体46、強制ロック機構51やパイプシリンダ42等の上側にカバープレート53を配置する。また同時に、ピニオンギヤ体33の円筒状の支持部56を、カバープレート53の略中央部に形成された支持孔145に嵌入する。
【0078】
また、ベースプレート45の側端縁部から略直角に延出された背当て部135を、カバープレート53の背当て部135に対向する側端縁部に形成された各貫通孔141、142に挿通する。そして、このベースブロック体46の外側側面部からカバープレート53側に延出されて、外側方向に弾性変形可能に形成された弾性係止片46Cと、このベースブロック体46の上側側面部からカバープレート53側に延出されて、外側方向に弾性変形可能に形成された弾性係止片46Dとをそれぞれカバープレート53の側端部に係止する。
【0079】
そして、カバープレート53のベースブロック体46の貫通孔89に対向する位置に形成された貫通孔157にネジ88を挿通して、ベースプレート45のバーリング加工によって形成されたネジ孔158に締結する。
【0080】
これにより、カバープレート53がベースブロック体46に配設固定され、パイプシリンダ42がカバープレート53とベースプレート45との間に取り付けられる。また、ピニオンギヤ体33の端部に形成された支持部56が、カバープレート53の支持孔145によって回転可能に支持される。従って、ピニオンギヤ体33の両端部に形成されたボス部58の基端部と支持部56とが、それぞれベースプレート45の貫通孔76とカバープレート53の支持孔145とによって回転可能に支持される。
【0081】
また、パイプシリンダ42の各貫通孔121と、カバープレート53の各貫通孔121に対向する位置に形成された貫通孔147と、ベースプレート45の各貫通孔121に対向する位置に形成された貫通孔148とが同軸上に配置される。これにより、図2に示すように、スチール材等で形成されたストッパーピン16をハウジング11のピン止め部14B側からベースプレート45の貫通孔148、パイプシリンダ42の各貫通孔121及びカバープレート53の貫通孔147へ挿通して、プッシュナット18によって固定することができる。
【0082】
従って、パイプシリンダ42は、カバープレート53とベースプレート45とによって挟持されると共に、ベースブロック体46と背当て部135とによって両側面部が挟持される。また、ガス発生部材41で発生したガスの圧力によって、第1シールプレート43及び第2シールプレート44が押圧されて、ピストン47がピストン収納部42Bの上端側開口部(図5中、上端部)へ移動した場合には、ピストン47の段差部126が、各貫通孔121に挿通されたストッパーピン16に当接して、停止させることができる。
【0083】
また、ピストン収納部42Bの上端側の開口部118は、カバープレート53の上端縁部から該ピストン収納部42Bの約半分の幅で略直角にベースプレート45側へ延出された第1延出部151によって、該開口部118のピストン収納部42Bの軸方向に対して垂直な平面部118Bが覆われる。また、この第1延出部151の開口部118の傾斜部118A側の側端縁部から斜め外側方向へ傾斜するように延出された第2延出部152によって、該傾斜部118Aが覆われる。また、第1延出部151のベースブロック体46側の端縁部は、直角下側方向へ所定長さ(例えば、長さ約4mmである。)延出されている。
【0084】
また、ベースプレート45の上端縁部から、カバープレート53の第2延出部152の延出方向外側端縁部に対向するように、所定幅(例えば、幅約3mmである。)で折り曲げ延出された押さえ部155が設けられている。この押さえ部155は、ベースプレート45の上端縁部の貫通孔148に対向する位置から、第2延出部152に対して平行になるように所定幅(例えば、幅約3mmである。)で、所定長さ(例えば、約8mmである。)延出されると共に、略中央部から該第2延出部152の延出方向外側端縁部に対向するように直角に折り曲げられている。
【0085】
これにより、ピストン収納部42Bの上端側の開口部118は、第1延出部151及び第2延出部152によって覆われる。また、カバープレート53の第2延出部152の延出方向外側端縁部は、ベースプレート45の押さえ部155の側面部に対向する。
【0086】
[ハウジングユニットの概略構成]
次に、ハウジングユニット5の概略構成について図9及び図10に基づいて説明する。
図9はハウジングユニット5の分解斜視図である。図10はシートベルト用リトラクタ1のロックユニット9を取り除いた状態の側面図である。
図9に示すように、ハウジングユニット5は、ハウジング11と、ブラケット161と、プロテクタ163と、パウル37と、パウルリベット165とから構成されている。
【0087】
また、ハウジング11は、スチール材等で平面視略コの字状に形成されて、奥側の側壁部12には巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ26の先端部が挿入される貫通孔166が形成されている。また、この貫通孔166の斜め下側のパウル37に対向する部分には、切欠部113が形成され、パウル37がスムーズに回動するようになっている。また、この切欠部113の横側にパウル37を回転可能に取り付けるための貫通孔168が形成されている。
【0088】
また、切欠部113のパウル37が当接する部分には、貫通孔168の同心円上に半円形状の案内部169が形成されている。一方、パウル37の案内部169に当接して摺動する部分は、側壁部12の厚さ寸法にほぼ等しい高さで、この案内部169の側縁と同じ曲率半径の円弧状に窪んだ段差部37Bが側壁部12の厚さ寸法より若干高く形成されている。また、図10に示すように、パウル37の外側の側面の先端部には、ロックユニット9を構成するクラッチ(不図示)のガイド溝(不図示)に挿入される案内ピン37Aが立設されている。
【0089】
また、図9に示すように、側壁部12の両側端縁部から相対向する各側板部13、14が延出されている。また、各側板部13、14の中央部には、それぞれ開口部が形成され、軽量化及びウエビング3の取り付け作業の効率化等が図られている。また、各側板部13、14の上下端縁部には、所定幅で略直角内側方向に延出された各ネジ止め部13A、13B、14Aとピン止め部14Bが形成されている。
【0090】
また、各ネジ止め部13A、13B、14Aには、各ネジ15がネジ止めされる各ネジ孔171がバーリングによって形成され、ネジ止め部14Bには、ストッパーピン16が挿通される貫通孔172が形成されている。従って、図2乃至図4に示すように、各ネジ15は、カバープレート53の各貫通孔185からベースプレート45の各貫通孔186に挿通されて、各ネジ孔171にネジ止めされる。
【0091】
また、側板部13の上端縁部に各リベット162によって取り付けられるブラケット161は、スチール材等で形成されて、側板部13の上端縁部から略直角内側方向に延出された延出部にウエビング3が引き出される横長の貫通孔173が形成され、ナイロン等の合成樹脂で形成された横長枠状のプロテクタ163が嵌め込まれている。また、側板部13の下端部には、車両の締結片175(図10参照)に取り付ける際に、ボルト176(図10参照)が挿通されるボルト挿通孔178が形成されている。
【0092】
また、図9及び図10に示すように、スチール材等で形成されたパウル37は、段差部37Bが案内部169に当接されて、側壁部12の外側から貫通孔168に回転可能に挿通されるパウルリベット165によって、回動可能に固定されている。これにより、パウル37の側面とラチェットギヤ26の側面とが、側壁部12の外側面とほぼ同一面になるように位置される。
【0093】
また、図10に示すように、プリテンショナユニット7を各ネジ15とストッパーピン16及びプッシュナット18によってハウジングユニット5に取り付けた場合には、連結シャフト96の他端側折曲部に取り付けられたメカ側アーム97のボス112が、側壁部12に形成された貫通孔111に回動可能に嵌入されて、切欠部113内に位置するパウル37の下側の側面部の近傍に位置している。また、メカ側アーム97の外側の側面に立設されたボス97Aが切欠部113に挿入されている。また、パウル37は、通常時には、メカ側アーム97に近接した状態で、且つ、ラチェットギヤ26に係合しないようになっている。
【0094】
また、側壁部12に取り付けられたパウル37及びメカ側アーム97の下方には、該側壁部12の下端面から所定高さ上側の位置(例えば、約10mm上側の位置である。)から所定幅(例えば、幅約10mmである。)で、このパウル37及びメカ側アーム97に対向するように内側方向(図7中、手前側方向である。)へ略直角に折り曲げられたアーム保護用折曲部180が設けられている。つまり、側壁部12に取り付けられたパウル37及びメカ側アーム97の下方には、所定幅でメカ側アーム97に対向するように略直角に所定長さ(例えば、長さ約10mmである。)内側方向へ延出されたアーム保護用折曲部180が設けられている。
【0095】
また、側壁部13の連結シャフト96に対向する部分には、該連結シャフト96のほぼ全長に渡って対向する横長の開口部181が形成され、この開口部181の下端縁部から内側方向へ略直角に折り曲げられたシャフト保護用折曲部182が設けられている。また、シャフト保護用折曲部182のガイドドラム21側の端縁部は、側壁部13に対向する連結シャフト96よりも内側になるように延出されている。また、このシャフト保護用折曲部182の下方には、ボルト挿通孔178が形成され、このボルト挿通孔178にボルト176が挿通されてナット177によって車両の締結片175に固着される。
【0096】
[強制ロック機構及びパウルの動作説明]
次に、車両衝突時等の緊急時において、プリテンショナ機構17のガス発生部材41の作動によって起動する強制ロック機構51及びパウル37の動作について図11及び図12に基づいて説明する。図11はプリテンショナ機構17のガス発生部材41の作動によってピストン47が移動して、回転レバー93の下端部がギヤ側アーム94の先端部から外れた状態を示す説明図である。図12は図11に対応するパウル37の動作を示す説明図である。
【0097】
図11に示すように、車両衝突時等の緊急時において、プリテンショナ機構17のガス発生部材41が作動した場合には、ガス発生部材41で発生したガスの圧力によって、パイプシリンダ42のピストン収納部42B内の第1シールプレート43及び第2シールプレート44が押圧される。これにより、ピストン47が図5に示す通常状態から、ラック止めピン133を剪断して上方に(矢印X1方向である。)に移動し、ピニオンギヤ体33を正面視反時計方向(矢印X2方向である。)への回転させる。また、回転レバー93の上端部は、ブロック付勢バネ92Aによって押されたプッシュブロック92によって更に押されるため、この回転レバー93の下端部が、ギヤ側アーム94の先端部から外れる。
【0098】
そのため、ギヤ側アーム94は、付勢バネ95によって外側方向に押圧されて、正面視反時計方向(矢印X3方向である。)へ回転する。尚、プッシュブロック92は、ブロック付勢バネ92Aによって外側方向へ押圧され、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部55と離間した状態で維持されると共に、回転レバー93の上端部を凹部91の内壁面に当接させた状態に維持する。
【0099】
また、図12に示すように、回転レバー93の下端部が、ギヤ側アーム94の先端部から外れた場合には、このギヤ側アーム94が、正面視反時計方向(矢印X3方向である。)へ回転するため、該ギヤ側アーム94の溝部105内に一端側折曲部が挿入されている連結シャフト96も、軸心回りに正面視反時計方向(矢印X3方向である。)へ回転する。
【0100】
このため、メカ側アーム97は、連結シャフト96の他端側折曲部が溝部115に挿入されているため、ギヤ側アーム94の回動に伴って正面視反時計方向(矢印X8方向である。)に回動して、パウル37をラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aに係合させる。尚、パウル37とラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aとは、巻取ドラムユニット6のウエビング3引き出し方向への回転を抑止し、ウエビング3巻き取り方向への回転を許容するように、噛み合う形状とされている。
【0101】
従って、パウル37とラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aとが係合した場合には、巻取ドラムユニット6のウエビング3引き出し方向への回転を抑止するロック動作が行われると共に、ウエビング3巻き取り方向への回転が許容される。尚、クラッチ機構48とピニオンギヤ体33が一体となって回転を開始する以前に、パウル37は巻取ドラムユニット6のウエビング3引き出し方向への回転を抑止しうる状態になる。
【0102】
また、ガス発生部材41から発生したガスは、第1シールプレート43及び第2シールプレート44の受圧側面を押圧すると共に、第2シールプレート44のガス抜き孔124からピストン47の受圧側面に形成された取付凹部122と貫通孔128とを連通する連通孔131を介して各矢印X4〜X7の方向へ流出する。
【0103】
そして、ピストン収納部42Bの開口部118を覆うカバープレート53の第1延出部151及び第2延出部152は、ガスの圧力によって外側方向へ押圧されるが、該第2延出部152の延出方向外側端縁部は、ベースプレート45の押さえ部155に当接して押さえられるため、ガスは開口部118と該第1延出部151及び第2延出部152との隙間から排出される。
【0104】
また、プリテンショナ機構17の動作後、ピニオンギヤ体33の回転が停止した後は、図11に示すように、回転レバー93の下端部が、ギヤ側アーム94の先端部から外れた状態が維持される。即ち、プリテンショナ機構17の動作後においては、パウル37とラチェットギヤ26のラチェットギヤ部26Aとの係合が維持される。このため、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ26及びワイヤプレート25が、ウエビング3引き出し方向へ回転するのが抑止される。
【0105】
ここで、第1シールプレート43と第2シールプレート44の材質を変更してウエビング3の引き込み性能を測定した一例を図13に基づいて説明する。図13はウエビング3の引き込み性能を比較した比較結果の一例を示す引き込み性能比較表191である。
【0106】
図13に示すように、引き込み性能比較表191は、実験番号を表す「No.」と、第1シールプレート43と第2シールプレート44のそれぞれの材質を表す「材質」と、「JIS K 7215」の「タイプA」の基準に基づいて測定した第1シールプレート43と第2シールプレート44の硬度を表す「硬度(HDA)」と、シール構造を表す「構成」と、ウエビング3の引き込み性能の判定結果を表す「引き込み性能判定」とから構成されている。
【0107】
尚、ウエビング3の引き込み性能の比較は、引き込み性能比較表191の下側に示す判定基準に従って行った。つまり、実験番号「No.1」の常温環境(例えば、外気温約20℃である。)におけるウエビング3の引き込み量(例えば、引き込み量は110mmである。)を基準に引き込み量の減少量が15%未満の場合には(例えば、引き込み量の減少量が16.5mm未満の場合である。)、判定結果を「二重丸」で表す。
【0108】
また、実験番号「No.1」の常温環境におけるウエビング3の引き込み量を基準に、引き込み量の減少が15%以上30%未満の場合には(例えば、引き込み量の減少が16.5mm以上33mm未満の場合である。)、判定結果を「一重丸」で表す。また、実験番号「No.1」の常温環境におけるウエビング3の引き込み量を基準に、引き込み量の減少が30%以上45%未満の場合には(例えば、引き込み量の減少が33mm以上49.5mm未満の場合である。)、判定結果を「三角形」で表す。更に、実験番号「No.1」の常温環境におけるウエビング3の引き込み量を基準に、引き込み量の減少が45%以上の場合には(例えば、引き込み量の減少が49.5mm以上の場合である。)、判定結果を「×」で表す。
【0109】
例えば、実験番号「No.1」の「材質」は、第1シールプレート43と第2シールプレート44を共にニトリルゴム(NBR)で形成した。また、実験番号「No.1」の「硬度」は、第1シールプレート43と第2シールプレート44の硬度を共に硬度「HDA 90」とした。また、実験番号「No.1」の「構成」は、ニトリルゴムで形成された第1シールプレート43と第2シールプレート44を重ねてピストン47の受圧側端面に取り付けた(図8参照)。
【0110】
そして、実験番号「No.1」の「常温環境」(例えば、外気温20℃である。)における判定結果は「二重丸」、つまり、ウエビング3の引き込み量は基準引き込み量(例えば、基準引き込み量は110mmである。)であった。また、「低温環境」(例えば、外気温−30℃である。)における判定結果は「×」、つまり、ウエビング3の引き込み量は、基準引き込み量に対して45%以上の減少であった。また、「高温環境」(例えば、外気温50℃である。)における判定結果は「一重丸」、つまり、ウエビング3の引き込み量は、基準引き込み量に対して15%以上30%未満の減少であった。
【0111】
また、実験番号「No.2」の「材質」は、第1シールプレート43と第2シールプレート44を共にシリコーンゴムで形成した。また、実験番号「No.2」の「硬度」は、第1シールプレート43と第2シールプレート44の硬度を共に硬度「HDA 90」とした。また、実験番号「No.2」の「構成」は、シリコーンゴムで形成された第1シールプレート43と第2シールプレート44を重ねてピストン47の受圧側端面に取り付けた(図8参照)。
【0112】
そして、実験番号「No.2」の「常温環境」(例えば、外気温20℃である。)における判定結果は「一重丸」、つまり、ウエビング3の引き込み量は、基準引き込み量に対して15%以上30%未満の減少であった。また、「低温環境」(例えば、外気温−30℃である。)における判定結果は「二重丸」、つまり、ウエビング3の引き込み量は、基準引き込み量に対して15%未満の減少であった。また、「高温環境」(例えば、外気温50℃である。)における判定結果は「×」、つまり、ウエビング3の引き込み量は、基準引き込み量に対して45%以上の減少であった。
【0113】
また、実験番号「No.3」の「材質」は、第1シールプレート43をシリコーンゴムで形成し、第2シールプレート44をニトリルゴム(NBR)で形成した。また、実験番号「No.3」の「硬度」は、第1シールプレート43と第2シールプレート44の硬度を共に硬度「HDA 90」とした。また、実験番号「No.3」の「構成」は、シリコーンゴムで形成された第1シールプレート43とニトリルゴムで形成された第2シールプレート44を重ねてピストン47の受圧側端面に取り付けた(図8参照)。
【0114】
そして、実験番号「No.3」の「常温環境」(例えば、外気温20℃である。)における判定結果は「二重丸」、つまり、ウエビング3の引き込み量は、基準引き込み量に対して15%未満の減少であった。また、「低温環境」(例えば、外気温−30℃である。)における判定結果は「一重丸」、つまり、ウエビング3の引き込み量は、基準引き込み量に対して15%以上30%未満の減少であった。また、「高温環境」(例えば、外気温50℃である。)における判定結果は「一重丸」、つまり、ウエビング3の引き込み量は、基準引き込み量に対して15%以上30%未満の減少であった。
【0115】
従って、シリコーンゴムで形成された第1シールプレート43とニトリルゴムで形成された第2シールプレート44を重ねてピストン47の受圧側端面に取り付けた場合は、「常温環境」及び「高温環境」におけるウエビング3の引き込み量の確保だけでなく、「低温環境」におけるウエビング3の引き込み量もニトリルゴムで形成された第1シールプレート43と第2シールプレート44を重ねてピストン47の受圧側端面に取り付けた場合よりも改善され、確保されている。
【0116】
ここで、巻取ドラムユニット6は、巻取ドラムの一例である。また、プリテンショナ機構17は、プリテンショナ機構部の一例である。また、パイプシリンダ42は、シリンダの一例である。また、第1シールプレート43は、第1シール部材の一例である。また、第2シールプレート44は、第2シール部材の一例である。
【0117】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1では、プリテンショナ機構17のパイプシリンダ42内に移動可能に収容されたピストン47のガス受圧側端部には、シリコーンゴムにより形成された第1シールプレート43とニトリルゴムにより形成された第2シールプレート44とが重なるように取り付けられて、該ピストン47とパイプシリンダ42の内壁との隙間がシールされる。また、低温特性が優れたシリコーンゴムによって形成された第1シールプレート43を、ピストン47の受圧側端面とニトリルゴムによって形成された第2シールプレート44との間に配置する。
【0118】
これにより、第1シールプレート43と第2シールプレート44のうち、ガス発生部材41から発生した高温のガスが直接受圧側面に接触する第2シールプレート44を高温特性が優れたニトリルゴムによって形成することによって、シリコーンゴムによって形成された第1シールプレート43を高温のガスから保護しつつ、プリテンショナ機構17のウエビング3の引き込み性能を低温環境下から高温環境下の広範な地域において確保することができる。
【0119】
また、低温特性が優れたシリコーンゴムによって形成された第1シールプレート43を、ピストン47の受圧側端面とニトリルゴムによって形成された第2シールプレート44との間に配置することによって、低温環境下におけるプリテンショナ機構17のウエビング3の引き込み性能を確実に確保することが可能となる。
【0120】
また、第2シールプレート44の取付凸部123を第1シールプレート43の貫通孔125に挿通して、更に、この取付凸部123をピストン47の受圧側端面に形成された所定深さの取付凹部122に嵌入することによって、平板状の第1シールプレート43と第2シールプレート44とを重ね合わせて、該ピストン47の受圧側端面に一体に組み付けることができ、取付作業効率の向上を図ることができる。
【0121】
また、第1シールプレート43と第2シールプレート44は、ピストン47のガス受圧側の端面と略同一形状の平板状部材であるため、各シール部材43、44が取り付けられたピストン47を受圧面側からパイプシリンダ42内に挿入する際に、各シール部材43、44のパイプシリンダ42の内壁との摩擦によるねじれ、ずれ、外れ等を防止できる。これにより、各シール部材43、44の取付不良によるシール性能の低下を確実に防止し、プリテンショナ機構17のウエビング3の引き込み性能を低温環境下から高温環境下の広範な地域において更に確実に確保することが可能となる。
【0122】
また、第2シールプレート44のガス抜き孔124と、ピストン44の連通孔131とが連通する。これにより、ウエビング3に作用する引き出し力が所定値以上になるとウエビング3を引き出して乗員への衝撃を緩和するエネルギー吸収機構をシートベルト用リトラクタ1が備える場合に、プリテンショナ機構17の作動後において、ピストン47が通常位置へ移動しても、第2シールプレート44とガス発生部材41との間のシリンダ内に残存する残存ガスを該ガス抜き孔124及び連通孔131を介して外部へ逃がすことができ、残存ガスの圧力がエネルギー吸収機構の動作を妨げることを防止できる。
【0123】
また、第2シールプレート44の取付凸部123は中空となるため撓み易く、ピストン47の取付凹部122に容易に嵌入することができ、第1シールプレート43と第2シールプレート44のピストン47への取付作業効率の更なる向上を図ることができる。
【0124】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
【0125】
[他の実施形態1]
(A)例えば、他の実施形態1に係るシートベルト用リトラクタ201では、上記シートベルト用リトラクタ1とほぼ同じ構成であるが、第1シールプレート43と第2シールプレート44に替えて、図14に示す第1シールプレート203と第2シールプレート204をピストン47の受圧側端面に取り付けるようにしてもよい。
【0126】
ここで、第1シールプレート203と第2シールプレート204について図14及び図15に基づいて説明する。図14は第1シールプレート203と第2シールプレート204の一例を示す斜視図である。図15は第1シールプレート203と第2シールプレート204をピストン47に取り付けた一例を示すパイプシリンダ42の要部拡大断面図である。尚、以下の説明において上記図1乃至図13の前記実施形態に係る第1シールプレート43と第2シールプレート44の構成等と同一符号は、該前記実施形態に係る第1シールプレート43と第2シールプレート44の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0127】
図14に示すように、第2シールプレート204は、上記第2シールプレート44とほぼ同じ構成であるが、第1シールプレート203に当接する面に、略円柱状の位置決め突起205が立設されている。この位置決め突起205の高さ寸法は第1シールプレート203の厚さに等しい寸法又は厚さよりも少し低い寸法に形成されている。一方、第1シールプレート203は、第2シールプレート204の取付凸部123を貫通孔125に嵌挿した際に、該第2シールプレート204の位置決め突起205に対向する位置に、該位置決め突起205の直径にほぼ等しい直径の位置決め孔206が貫通して形成されている。
【0128】
そして、図15に示すように、先ず、第2シールプレート204の取付凸部123を第1シールプレート203の貫通孔125に嵌入すると共に、第2シールプレート204の位置決め突起205を第1シールプレート203の位置決め孔206に嵌入する。その後、第2シールプレート204の取付凸部123をピストン47の受圧側面に形成された取付凹部122に嵌入して、第1シールプレート203及び第2シールプレート204をピストン47のガス受圧側面に取り付ける。
【0129】
そして、第1シールプレート203及び第2シールプレート204を奥側にして、ピストン47をピストン収納部42Bの上端側から奥に圧入する。また、第2シールプレート204のガス抜き孔124は、ピストン47の連通孔131を介して貫通孔128に連通している。
【0130】
従って、この状態で、ガス発生部材41で発生したガスの圧力によって、第1シールプレート203及び第2シールプレート204が押圧されて、ピストン47がピストン収納部42Bの上端側開口部118へ移動する。また、その後、ウエビング3が再度引き出される場合には、ピニオンギヤ体33の逆回転によってピストン47が下方に下がる際に、第2シールプレート204のガス抜き孔124、ピストン47の連通孔131及び貫通孔128を介してパイプシリンダ42内のガスが抜け、スムーズにピストン47が下がる。
【0131】
また、第2シールプレート204の取付凸部123と位置決め突起205を第1シールプレート203の貫通孔125と位置決め孔206に嵌入することによって、第1シールプレート203を第2シールプレート204に対して確実に位置決めした状態でピストン47のガス受圧側の端面に取り付けることができる。
【0132】
これにより、各シールプレート203、204が取り付けられたピストン47を受圧面側からパイプシリンダ42内に挿入する際に、各シールプレート203、204のパイプシリンダ42の内壁との摩擦によるねじれ、ずれ、外れ等を確実に防止できる。従って、各シールプレート203、204の取付不良によるシール性能の低下を確実に防止し、プリテンショナ機構17のウエビング3の引き込み性能を低温環境下から高温環境下の広範な地域において更に確実に確保することが可能となる。
【0133】
[他の実施形態2]
(B)また、例えば、他の実施形態2に係るシートベルト用リトラクタ211では、上記他の実施形態1に係るシートベルト用リトラクタ201とほぼ同じ構成である。しかし、ピストン47に替えて、図16に示すピストン213が装着される点で異なっている。また、第2シールプレート204に替えて、図17に示す第2シールプレート214がピストン213の受圧側端面に取り付けられる点で異なっている。
【0134】
ここで、ピストン213、第1シールプレート203及び第2シールプレート214について図16及び図17に基づいて説明する。図16はピストン213の受圧面側から見た斜視図である。図17は第1シールプレート203と第2シールプレート214をピストン213に取り付けた一例を示すパイプシリンダ42の要部拡大断面図である。尚、以下の説明において上記図1乃至図15の構成等と同一符号は、該図1乃至図15の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0135】
先ず、図17に示すように、第2シールプレート214は、他の実施形態1に係る第2シールプレート204とほぼ同じ構成であるが、位置決め突起205に替えて、略円柱状の位置決め突起215が、第1シールプレート203に当接する面に立設されている。この位置決め突起215の直径は、第1シールプレート203の位置決め孔206の直径にほぼ等しい直径に形成されている。また、位置決め突起215の高さ寸法は、該位置決め突起215を第1シールプレート203の位置決め孔206に嵌入した際に、所定高さ(例えば、高さ約2mmである。)突出するように形成されている。
【0136】
また、図16に示すように、ピストン213は、上記ピストン47とほぼ同じ構成であるが、受圧側端面には、第2シールプレート214の取付凸部123に対向する位置に取付凹部122が形成されると共に、第2シールプレート214の位置決め突起215に対向する位置に、該位置決め突起215の直径とほぼ同じ直径の位置決め凹部216が形成されている。また、この位置決め凹部216の深さ寸法は、位置決め突起215が第1シールプレート203から突出する高さ寸法よりも少し深くなるように形成されている。
【0137】
そして、図17に示すように、先ず、第2シールプレート214の取付凸部123を第1シールプレート203の貫通孔125に嵌入すると共に、第2シールプレート214の位置決め突起215を第1シールプレート203の位置決め孔206に嵌入する。その後、第2シールプレート214の取付凸部123をピストン47の受圧側面に形成された取付凹部122に嵌入すると共に、位置決め突起215を位置決め凹部216に嵌入して、第1シールプレート203及び第2シールプレート214をピストン213のガス受圧側面に取り付ける。
【0138】
そして、第1シールプレート203及び第2シールプレート214を奥側にして、ピストン213をピストン収納部42Bの上端側から奥に圧入する。また、第2シールプレート214のガス抜き孔124は、ピストン213の連通孔131を介して貫通孔128に連通している。
【0139】
従って、この状態で、ガス発生部材41で発生したガスの圧力によって、第1シールプレート203及び第2シールプレート214が押圧されて、ピストン213がピストン収納部42Bの上端側開口部118へ移動する。また、その後、ウエビング3が再度引き出される場合には、ピニオンギヤ体33の逆回転によってピストン213が下方に下がる際に、第2シールプレート214のガス抜き孔124、ピストン213の連通孔131及び貫通孔128を介してパイプシリンダ42内のガスが抜け、スムーズにピストン213が下がる。
【0140】
また、第2シールプレート214の取付凸部123と位置決め突起215を第1シールプレート203の貫通孔125と位置決め孔206に嵌入することによって、第1シールプレート203を第2シールプレート204に対して確実に位置決めした状態でピストン213のガス受圧側の端面に取り付けることができる。また、第2シールプレート214の位置決め突起215をピストン213の位置決め凹部216に嵌入することによって、ピストン213に対する各シールプレート203、214の回転を確実に防止することができる。
【0141】
これにより、各シールプレート203、214が取り付けられたピストン213を受圧面側からパイプシリンダ42内に挿入する際に、各シールプレート203、214のパイプシリンダ42の内壁との摩擦によるねじれ、ずれ、外れ等を確実に防止できる。従って、各シールプレート203、214の取付不良によるシール性能の低下を確実に防止し、プリテンショナ機構17のウエビング3の引き込み性能を低温環境下から高温環境下の広範な地域において更に確実に確保することが可能となる。
【0142】
[他の実施形態3]
(C)例えば、他の実施形態3に係るシートベルト用リトラクタ221では、上記シートベルト用リトラクタ1とほぼ同じ構成であるが、第1シールプレート43、第2シールプレート44及びピストン47に替えて、図18に示す第1シール部材223、第2シール部材224及びピストン225をパイプシリンダ42内に装着するようにしてもよい。
【0143】
ここで、第1シール部材223、第2シール部材224及びピストン225について図18に基づいて説明する。図18は枠状に形成された第1シール部材と第2シール部材をピストンに取り付けた一例を示すパイプシリンダの要部拡大断面図である。尚、以下の説明において上記図1乃至図13の前記実施形態に係る第1シールプレート43、第2シールプレート44、ピストン47の構成等と同一符号は、該前記実施形態に係る第1シールプレート43、第2シールプレート44、ピストン47の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0144】
図18に示すように、ピストン225は、前記実施形態に係るピストン47とほぼ同じ構成である。但し、ピストン225の受圧側端面の近傍の側面部には、全周に渡って所定深さ(例えば、深さ約2mmである。)のシール取付溝226が形成されている。このシール取付溝226のピストン225の長手方向の幅寸法は、第1シール部材223と第2シール部材224の厚さ寸法の合計にほぼ等しい寸法に形成されている。また、ピストン225の受圧側端面と貫通孔128とは、ピストン225の長手方向に沿って形成された細径の連通孔227によって連通されている。
【0145】
また、第1シール部材223は、硬度が「HDA 90」のシリコーンゴムで枠状に形成され、ピストン225のシール取付溝226の断面よりも内周面が小さく形成され、該シール取付溝226内に嵌合される。従って、第1シール部材223は、シール取付溝226の貫通孔128側に取り付けられて、ピストン225とパイプシリンダ42の内壁との隙間をシールするようにされている。
【0146】
また、第2シール部材224は、硬度が「HDA 90」のニトリルゴムで枠状に形成され、ピストン225のシール取付溝226の断面よりも内周面が小さく形成され、該シール取付溝226内に嵌合される。従って、第2シール部材224は、シール取付溝226の受圧側に取り付けられて、ピストン225とパイプシリンダ42の内壁との隙間をシールするようにされている。
【0147】
これにより、第1シール部材223と第2シール部材224のうち、ガス発生部材41から発生した高温のガスが直接受圧側面に接触する第2シール部材224を高温特性が優れたニトリルゴムによって形成することによって、シリコーンゴムによって形成された第1シール部材223を高温のガスから保護しつつ、プリテンショナ機構17のウエビング3の引き込み性能を低温環境下から高温環境下の広範な地域において確保することができる。
【符号の説明】
【0148】
1 シートベルト用リトラクタ
3 ウエビング
5 ハウジングユニット
6 巻取ドラムユニット
7 プリテンショナユニット
11 ハウジング
17 プリテンショナ機構
41 ガス発生部材
42 パイプシリンダ
43、203 第1シールプレート
44、204、214 第2シールプレート
47、213 ピストン
122 取付凹部
123 取付凸部
124 ガス抜き孔
125 貫通孔
131、227 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエビングを巻回収納する巻取ドラムと、
前記巻取ドラムを回転可能に支持するハウジングと、
車両衝突時等の緊急時に前記巻取ドラムを巻き取り方向に回転させて前記ウエビングを巻き取るプリテンショナ機構部と、
を備えたシートベルト用リトラクタにおいて、
前記プリテンショナ機構部は、
ガスを発生させるガス発生部材と、
一端部に前記ガス発生部材が装着される長筒状のシリンダと、
前記シリンダ内に移動可能に収容されて前記ガス発生部材から発生したガスの圧力で前記シリンダ内を押圧駆動されて前記巻取ドラムを前記巻き取り方向へ回転させるピストンと、
前記ピストンのガス受圧側端部に重なるように取り付けられて該ピストンと前記シリンダの内壁との隙間をシールする複数のシール部材と、
を備え、
前記複数のシール部材は、耐環境性の異なる少なくとも2種類のシール部材を有することを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
【請求項2】
前記複数のシール部材は、シリコーンゴムにより形成されたシール部材とニトリルゴムにより形成されたシール部材とを有することを特徴とする請求項1に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項3】
前記ピストンは、ガス受圧側の端面に形成された所定深さの取付凹部を有し、
前記複数のシール部材は、
前記ピストンのガス受圧側の端面と略同一形状の平板状部材で該端面に当接されると共に、前記取付凹部に対向する位置に形成された貫通孔を有する第1シール部材と、
前記ピストンのガス受圧側の端面と略同一形状の平板状部材で、前記取付凹部に対向する位置に立設された取付凸部を有する第2シール部材と、
を有し、
前記第2シール部材は、前記取付凸部が前記第1シール部材の前記貫通孔に挿通されると共に前記ピストンの前記取付凹部に嵌入されて該ピストンに取り付けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項4】
前記第2シール部材は、前記取付凸部を厚さ方向に貫通するように形成されたガス抜き孔を有し、
前記ピストンは、前記取付凹部から前記ピストンの移動方向に沿って貫通するように形成された連通孔を有することを特徴とする請求項3に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項5】
前記第1シール部材は、シリコーンゴムにより形成され、
前記第2シール部材は、ニトリルゴムにより形成されたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のシートベルト用リトラクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−25207(P2012−25207A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163166(P2010−163166)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】