説明

シートリクライニング装置

【目的】 スライド部材のガイド壁に対するカタギを解消すること。
【構成】 第2歯部(8a)の歯先より突出すると共にガイド壁(43,44)と当接可能な壁部(81)をスライド部材(8)に設け、第1歯部(23a)と第2歯部(8a)との噛合状態において、シートバック(3)の回動方向の荷重が加わった場合に第2歯部(8a)を挟んで本体部(8d)と壁部(81)をガイド壁(43,44)に対して当接させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スライド部材の摺動動作によりラチェットと噛合及び噛合解除してシートバックのシートクッションに対する回動を規制及び許容するシートリクライニング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のシートリクライニング装置としては、特開平7−136032号公報に示されるものでが知られている。これは、シートクッション側に設けられ第1歯部が形成されたラチェットと、シートクッションに対して回動自在なシートバック側に設けられたガイド壁と、ガイド壁に摺動自在に案内され摺動動作によりラチェットの第1歯部と噛合及び噛合解除される第2歯部が形成されたスライド部材とを有するものであった。この従来装置では、スライド部材のガイド部材に案内された摺動動作により第1歯部と第2歯部とが噛合することで、シートバックのシートクツションに対する回動が規制され、スライド部材のガイド部材に案内された摺動動作により第1歯部と第2歯部とが噛合解除することで、シートバックのシートクツションに対する回動が許容されるものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来装置のスライド部材は、その摺動を確保するためにガイド壁に対して所定のスキをもってその両側面でガイド壁に案内され、ガイド壁に案内される両側面と略直交する一方の端面にラチェットの第1歯部と噛合する第2歯部が形成されたものである。このスライド部材においては、第2歯部の成形上、一般的に、両側壁から第2歯部へと連続する部分は、両側面に対して傾斜したものとなる。このため、第1歯部と第2歯部との噛合状態において、シートバックの回動方向の荷重が加わると、この傾斜部分とガイド壁との当接でガイド壁とスライド部材との間のスキによりスライド部材にガイド壁に対するカタギ(スライド部材のガイド壁に対する側壁と傾斜部分との交点を中心とした揺動)が生じる恐れがある。
【0004】故に、本発明は、スライド部材のガイド壁に対するカタギを解消することを、その技術的課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記技術的課題を解決するために本発明において講じた技術的手段は、スライド部材を、ガイド壁に案内されると共に第2歯部が形成された本体部及び前記第2歯部の歯先より突出すると共に前記ガイド壁と当接可能な壁部を有して構成した、ことである。
【0006】より好ましくは、前記壁部を、前記第2歯部の歯間を連結するように前記本体部から延在して形成する、と良い。
【0007】
【作用】上記技術的手段によれば、第1歯部と第2歯部との噛合状態において、シートバックの回動方向の荷重が加わった場合、第2歯部を挟んで本体部と壁部がガイド壁に対して当接することとなる。これにより、スライド部材は、ガイド壁に対して両持ちで支えられることとなり、結果、スライド部材のガイド壁に対するカタギが解消され得る。
【0008】
【実施例】以下、本発明の一実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0009】図2及び図3に示されるように、シートクッション1(図1示)に固定されたロアアーム4及びシートバック3(図1示)に固定されたアッパアーム2には、両アーム4,2を貫通した形で回転軸5が回転自在に支持されている。アッパアーム2は、ロアアーム4に対して回転軸5を中心として回動自在とされており、ロアアーム4に回転軸5周りのガイド構造6を介して回動自在に支持されている。尚、ガイド構造は、アッパアーム2に半抜き形成された凸部21とロアアーム4に形成された凹部41との嵌合により構成される。
【0010】ロアアーム4及びアッパアーム2の回転軸5が貫通する部位には、回転軸支持部42,22が互いに対向する方向における外側に向かって半抜き形成されており、ロアアーム4とアッパアーム2との間には、回転軸支持部42,22の形成により回転軸5が挿通される空間7が形成されている。又、この回転軸支持部42,22の形成により、アッパアーム2には、空間7に露呈するラチエット23が形成されており、ロアアーム4には空間7に露呈し且つラチエット23と回転軸5との間に夫々配置される対のガイド壁43,44が形成されている。このラチエット23は、回転軸7を中心とした所定幅の円弧状の歯部23aを有しており、対のガイド壁43,44は、回転軸7の径方向に平行に延在し且つ互いに対向するものである。更に、アッパアーム2には、空間7に露呈し且つガイド壁43,44を挟んで互いに対向する対のストッパ壁24,25も回転軸支持部22の形成により形成されている。
【0011】空間7内には、ポール8及びカム9が配設されている。ポール8は、矩形状を呈した本体部8dを主とした矩形形状を呈しており、回転軸5周りに配置され、ロアアーム4のガイド壁43,44間に本体部8dの両側面が所定のスキをもってガイド壁43,44と接するように回転軸5の径方向にガイド壁43,44に沿ってスライド自在にロアアーム4に支持されている。このポール8の本体部8dのラチエット23の歯部23aと対向する面には、歯部8aが形成されており、スライド動作によりアッパアーム2のラチエット23の歯部23aと噛合及び噛合解除される。又、ポール8の本体部8dの歯部8aが形成される面とは反対の面には、回転軸8の径方向にカム状とされたカム面8bが形成されている。カム9は、回転軸5と一体に回転するように回転軸5に支持されている。このカム9のポール8のカム面8bと対向する部位には、突部9aが形成されており、回転動作によりポール8のカム面8bと当接及び当接解除され、このポール8のカム面8bとカム9の突部9aとの当接によりポール8をスライド動作させるように押圧し、ポール8の歯部8aとラチエット23の歯部23aとの噛合をなす。
【0012】又、ポール8の本体部8dには、径方向にカム状とされたカム溝8cが、カム9には、カム溝8aと係合可能な腕部9bが回転軸8の周方向に延在するように夫々形成されており、カム9の回転動作によりカム溝8cと腕部9bとが係合され、この挿通によりポール8をスライド動作させポール8の歯部8aとラチエット23の歯部23aとの噛合を解除させる。
【0013】図3及び図4に示されるように、ロアアーム4の回転軸支持部42は、ガイド壁43,44がアッパアーム2のラチエット23の歯部23aを横断し且つ空間7がガイド機構6を構成するアッパアーム2の突部21と対向する部位まで存在するように成形されている。図3ないし図5に示されるように、ポール8の歯部8aは、ポール8の板厚半分でアッパアーム2側に形成されており、残りのロアアーム4側の板厚半分には、壁部81を形成している。この壁部81は、歯部8aより突出するように且つ歯部8aの歯間を連結するように本体部8dから延在しており、ポール8の歯部8aとラチエット23の歯部23aの噛合状態で突部21と空間7のアッパアーム2の突部21と対向する部位に配置され、本体部8dの側面から連続する側面81aでガイド壁43,44と当接可能となっている。
【0014】このように構成されたラチエット23,ポール8,ガイド壁43,44及びカム9の突部9aは、同様なものがもう一つづつ配設されており、回転軸5を挟んで互いに対向する一組のものとされている。
【0015】尚、回転軸5周りには、アッパアーム2をロアアーム4に対して図1示反時計方向に回動付勢するスプリング11が配設されており、シートバック3は、スプリング11の付勢力を受けてシートクッション1に対して前倒しとなるようになっている。又、回転軸5周りには、回転軸5をロアアーム4に対して図2示反時計方向に回転付勢するスプリング12も配設されており、カム9は、スプリング12の付勢力を受けて突部9aがポール8のカム面8bと当接してラチエット23の歯部23aとポール8の歯部8aとの噛合が維持されるようになっている。
【0016】次に作動について説明する。
【0017】図2において、一組のポール8は、ポール8のカム面8bとカム9の突部9aとの当接により押圧されてラッチ23の歯部23aとポール8の歯部8aとの噛合がなされており、これにより、アッパアーム2は、ロアアーム4に対して回動規制されている。
【0018】この状態において、回転軸5をスプリング12の付勢力に抗して図2示時計方向に回転操作すると、カム9も回転軸5と共に図2示時計方向に回転し、このカム9の回転により、突部9aとカム面8aとの当接が解除されると共に脚部9bと係合溝8cとが係合して一組のポール8が回転軸5に向かってスライドさせられる。これにより、ポール8の歯部8aと一組のラチエット23の歯部23aとの係合が解除され、アッパアーム2がロアアーム4に対して回転軸5を中心にガイド機構6によりガイドされながら回動可能となる。アッパアーム2を所望の回動角までスプリング11の付勢力に抗して又はスプリング11の付勢力を受けてロアアーム4に対して回動させた後、回転軸5の回転操作を解除すると、スプリング12の付勢力を受けて回転軸5が前述とは逆に回転し、ポール8がラチエット23に向かってスライドさせられ、結果、ポール8の歯部8aとラチエット23の歯部23aとが再び噛合し、アッパアーム2のロアアーム4に対する回動が規制される。結果、シートバック3のシートクッション1に対する傾斜角調整がなされる。尚、アッパアーム2のロアアーム4に対する回動は、シートバック3をシートクッション1に対して回動させることでなされる。
【0019】アッパアーム2のロアアーム4に対する回動規制がなされるポール8の歯部8aとラチエット23の歯部23aとの噛合状態において、シートバック3に図1示矢印方向のモーメントMが加わると、そのモーメントMが図4示矢印方向の荷重Fとなってポール8の歯部8aとラチエット23の歯部23aとの噛合部位に加わるが、この時、ポール8の壁部81の側面81aがガイド壁43と当接し、荷重Fを図4示矢印方向の反力R1,R2として歯部8aと歯部23aとの噛合部位を挟んだ2か所で支える。これにより、ポール8は、ガイド壁43に対して両持ちで支えられることとなり、結果、ポール8のガイド壁43に対するカタギが解消される。又、荷重Fは、歯部8aに対して剪断力となって作用するが、歯部8aは、その歯間が壁部81によって連結され強度アップされているので、歯部8aの板厚を大きくする等の必要なしにこの荷重Fに十分に耐え得る。
【0020】
【発明の効果】本発明によれば、第2歯部の歯先より突出すると共にガイド壁と当接可能な壁部をスライド部材に設けたので、第1歯部と第2歯部との噛合状態において、シートバックの回動方向の荷重が加わった場合に第2歯部を挟んで本体部と壁部をガイド壁に対して当接させ、これにより、スライド部材をガイド壁に対して両持ちで支えることができる。よって、スライド部材のガイド壁に対するカタギを解消することができる。
【0021】又、本発明によれば、壁部を第2歯部の歯間を連結するように本体部から延在して形成したので、第2歯部の強度をスライド部材の板厚を大きくする等の必要なしに従来に比べ向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシートリクライニング装置を採用したシートの側面図である。
【図2】本発明に係るシートリクライニング装置の平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】本発明に係るシートリクライニング装置の主要部を示す図2の部分拡大図である。
【図5】本発明に係るシートリクライニング装置のポールの斜視図である。
【符号の説明】
1 シートクッション
3 シートバック
8 ポール(スライド部材)
8a 歯部(第2歯部)
8d 本体部
23 ラチェット
43,44 ガイド壁
23a 歯部(第1歯部)
81 壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 シートクッション及び該シートクッションに対して回動自在なシートバックのいずれか一方側に設けられ第1歯部が形成されたラチェットと、前記シートクッション及び前記シートバックのいずれか他方側に設けられたガイド壁と、該ガイド壁に摺動自在に案内され摺動動作により前記ラチェットの第1歯部と噛合及び噛合解除される第2歯部が形成されたスライド部材とを有するシートリクライニング装置において、前記スライド部材は、前記ガイド壁に案内されると共に前記第2歯部が形成された本体部及び前記第2歯部の歯先より突出すると共に前記ガイド壁と当接可能な壁部を有して構成される、シートリクライニング装置。
【請求項2】 前記壁部は、前記第2歯部の歯間を連結するように前記本体部から延在して形成される、請求項1記載のシートリクライニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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