シート付き渦巻きコイル、シート付き渦巻きコイルの製造方法、渦巻き巻線装置およびシート付き渦巻きコイルの製造装置
【課題】高周波損失が小さく且つコイル形状保持性が良いシート付き渦巻きコイルを提供する。
【解決手段】複数の自己融着絶縁素線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(1)が、シート(4)の表面接着層(2)上に、編組線(1)の長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻回されて接着されていると共に、素線同士が融着されている。
【効果】編組線(1)の長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻くため、コイル厚を薄型化できる。編組線(1)を用いるため、高周波損失を低減できる。素線同士を融着しているので、良好なコイル形状保持性を得ることが出来る。
【解決手段】複数の自己融着絶縁素線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(1)が、シート(4)の表面接着層(2)上に、編組線(1)の長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻回されて接着されていると共に、素線同士が融着されている。
【効果】編組線(1)の長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻くため、コイル厚を薄型化できる。編組線(1)を用いるため、高周波損失を低減できる。素線同士を融着しているので、良好なコイル形状保持性を得ることが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート付き渦巻きコイル、シート付き渦巻きコイルの製造方法、渦巻き巻線装置およびシート付き渦巻きコイルの製造装置に関し、さらに詳しくは、高周波損失が小さく且つコイル形状保持性が良いシート付き渦巻きコイル、そのシート付き渦巻きコイルの製造方法および装置、並びに、シート上に電線を渦巻き状に巻回するための渦巻き巻線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平角線の長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻回(平巻)した渦巻きコイルが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平6−236796号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の渦巻きコイルでは、平角線の長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻回しているため、コイル厚がほぼ平角線の短辺と等しくなり、薄型化できる利点がある。
しかし、平角線を用いた渦巻きコイルは、高周波損失が大きい問題点がある。
これに対して、平角線に代えて編組線を用いると、高周波損失を小さく出来る。
ところが、編組線は柔軟性が高いため、コイル形状を保持し難い問題点がある。
そこで、本発明の目的は、高周波損失が小さく且つコイル形状保持性が良いシート付き渦巻きコイル、そのシート付き渦巻きコイルの製造方法および装置、並びに、シート上に電線を渦巻き状に巻回するための渦巻き巻線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、複数の自己融着絶縁素線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(1)が、表面接着層(2)を持つシート(4)の前記表面接着層(2)上に、長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻回されて接着されていると共に、素線同士が融着されていることを特徴とするシート付き渦巻きコイル(10)を提供する。
上記構成において、扁平形状の幅/厚さは2以上とする。複数の自己融着絶縁素線を管状に編んだ編組線を潰して断面を偏平形状にした編組線を用いてもよい。
隣接するターンの編組線同士を密着させると、ターン間での融着も期待できる。他方、隣接するターン間に空隙を空けると、編組線側が凹面になるように変形させるのに都合が良くなる。
シートの素材および厚さにより、柔軟性を選べる。柔軟性を高くすると変形が容易になり、柔軟性を低くすると変形し難くなる。
渦巻き形状は、円弧部と直線部とがあるトラック形や直線部を繋いだような角形であってもよい。
上記第1の観点によるシート付き渦巻きコイルでは、長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻くため、コイル厚を薄型化できる。また、編組線を用いるため、高周波損失を低減できる。
そして、シートの表面接着層上に編組線を渦巻き状に巻回しただけでは、編組線の一部が浮き上がってシートに接着していない部分を生じる場合があるが、本発明では素線同士を融着しているので、このような場合でも、良好なコイル形状保持性を得ることが出来る。
【0005】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点によるシート付き渦巻きコイルにおいて、前記シート(4)が、前記表面接着層(2)と反対側の面に、裏面接着層(5)を有することを特徴とするシート付き渦巻きコイル(20)を提供する。
上記第2の観点によるシート付き渦巻きコイルでは、裏面接着層(5)を利用して例えば磁性部材やコイル保持板などを取り付けることが出来る。
【0006】
第3の観点では、本発明は、前記第1または前記第2の観点によるシート付き渦巻きコイルにおいて、前記シート(4)の前記表面接着層(2)と反対側の面に、磁性部材(7)を具備することを特徴とするシート付き渦巻きコイル(30)を提供する。
上記構成において、磁性部材はシートの一部だけに設けてもよいし、シートの全面に設けてもよい。また、磁性部材をコイル保持板として利用してもよい。
上記第3の観点によるシート付き渦巻きコイルでは、磁性部材により、漏れ磁束を抑制すると共に、表面側の磁束を強めることが出来る。
【0007】
第4の観点では、本発明は、前記第1から前記第3のいずれかの観点によるシート付き渦巻きコイルにおいて、前記渦巻き状に巻回された編組線(4)が、カバー(8,9)で覆われていることを特徴とするシート付き渦巻きコイル(40,50)を提供する。
上記第4の観点によるシート付き渦巻きコイルでは、カバーにより編組線を保護することが出来るので、安定性、信頼性を向上できる。
【0008】
第5の観点では、本発明は、前記第1から前記第4のいずれかの観点によるシート付き渦巻きコイルにおいて、全体形状が湾曲していることを特徴とするシート付き渦巻きコイル(60)を提供する。
上記構成において、湾曲の形態は、例えば球面状や樋面状である。また、編組線側が凸面でもよいし、凹面でもよい。
上記第5の観点によるシート付き渦巻きコイルでは、シート付き渦巻きコイルを設置する面が湾曲している場合に好適である。具体的には、例えば釜の湾曲した底面にシート付き渦巻きコイルを設置する場合に好適である。
【0009】
第6の観点では、本発明は、前記第1から前記第5のいずれかの観点によるシート付き渦巻きコイルにおいて、前記表面接着層(2)が、熱硬化性接着材層であることを特徴とするシート付き渦巻きコイルを提供する。
上記第6の観点によるシート付き渦巻きコイルでは、巻線作業中は表面接着層を硬化させず、巻線後に表面接着層を熱硬化させればよいので、巻線工程の作業性が良くなる。
【0010】
第7の観点では、本発明は、複数の自己融着絶縁素線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(1)を、接着層(2)を持つシート(4)の前記接着層(2)上に、渦巻き状に巻回した後、素線同士を融着することを特徴とするシート付き渦巻きコイルの製造方法を提供する。
上記第7の観点によるシート付き渦巻きコイルの製造方法では、渦巻きコイル形状を整えた後に例えば通電加熱、熱風加熱または溶剤を用いて素線同士を融着することで、コイル形状を固定することが出来る。
【0011】
第8の観点では、本発明は、複数の自己融着絶縁素線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(1)を、接着層(2)を持つシート(4)の前記接着層(2)上に、前記シート(4)を平面状にした状態で渦巻き状に巻回した後、全体形状を湾曲面状にした状態で素線同士を融着することを特徴とするシート付き渦巻きコイルの製造方法を提供する。
上記第8の観点によるシート付き渦巻きコイルの製造方法では、巻線作業時はシートが平面状なので、巻線工程の作業性が良くなる。そして、巻線後に全体形状を湾曲させてから例えば通電加熱、熱風加熱または溶剤を用いて素線同士を融着することで、全体が湾曲したコイル形状を固定することが出来る。
【0012】
第9の観点では、本発明は、前記第7または第8の観点によるシート付き渦巻きコイルの製造方法において、前記渦巻き状に巻回した編組線(1)を前記表面接着層(2)へ押し付けながら素線同士を融着することを特徴とするシート付き渦巻きコイルの製造方法を提供する。
上記第9の観点によるシート付き渦巻きコイルの製造方法では、巻回した後に編組線の一部がシートから浮き上がっている部分を生じていても、編組線を表面接着層へ押し付けながら素線同士を融着するので、コイル形状を整形し、その整形したコイル形状を固定することが出来る。
【0013】
第10の観点では、本発明は、表面接着層(2)を持つシート(4)の前記表面接着層(2)を上にして前記シート(4)を保持し回転しうる回転台(101)と、前記回転台(101)の半径方向に中心側から外周側へと広がった笠状の外周面であって前記回転台(101)の表面との間に前記シート(4)および電線(1)を挟みうる間隙(g)を形成する笠状外周面(103)を有し且つ前記外周面(103)の中心軸(104)で回転しうる笠状ローラー(105)と、前記シート(4)の接着層(2)上に前記電線(1)を渦巻き状に巻回するために前記笠状ローラー(105)の笠状外周面(103)に沿って前記回転台(101)の中心側から外周側へと移動し前記笠状ローラー(105)に対する前記電線(1)の供給位置を前記回転台(101)の中心側から外周側へと移動させる電線案内手段(106)とを具備したことを特徴とする渦巻き巻線装置(100)を提供する。
上記構成において、回転台にシートを保持するのは、例えば容易に剥離可能な粘着テープや粘着材を用いてもよいし、回転台に空けた小さな孔から減圧吸引する手段を用いてもよいし、アームクランパーやチャックやネジ止めを用いてもよい。
上記第10の観点によるシート付き渦巻きコイルの製造方法では、回転台の表面と笠状ローラーの間にシートおよび電線を挟むので、電線が柔軟な編組線の場合に扁平形状にして巻き線することが出来る。また、円柱状のローラーでは、回転台の中心側と外周側での線送り速度の違いに対応できず通常は中心側で電線との摩擦が大きくなってしまうが、笠状ローラーを用いるため、回転台の中心側と外周側での線送り速度の違いに対応でき、電線との摩擦を全体的に小さくすることが出来る。
【0014】
第11の観点では、本発明は、前記第10の観点による渦巻き巻線装置(100)と、前記シート(4)へ渦巻き状に巻回した電線(1)を全体的に押さえつけるための押え装置(P)と、前記シート(4)へ渦巻き状に巻回した電線(1)を加熱するための加熱装置(G)とを具備したことを特徴とするシート付き渦巻きコイルの製造装置を提供する。
上記第11の観点によるシート付き渦巻きコイルの製造方法では、シート上に電線を渦巻き状に巻回し、電線をシートに押し付けて整形し、加熱によりコイル形状を固定することが出来る。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシート付き渦巻きコイルによれば、扁平形状の編組線の長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻くため、コイル厚を薄型化できる。また、編組線を用いるため、高周波損失を低減できる。そして、素線同士を融着しているので、良好なコイル形状保持性を得ることが出来る。
本発明のシート付き渦巻きコイルの製造方法および装置によれば、本発明のシート付き渦巻きコイルを好適に製造できる。
本発明の渦巻き巻線装置によれば、シート状に電線を渦巻き状に好適に巻回することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
図1は、実施例1に係るシート付き渦巻きコイル10を示す平面図である。図2は、図1のA−A’断面図である。
このシート付き渦巻きコイル10は、複数の自己融着絶縁素線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線1が、シート4の表面接着層2上に、長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻回されて接着されていると共に、素線同士が融着されている構成である。
【0018】
編組線1は、外径0.1mmの自己融着絶縁素線を7本概略横に並べて1組としたものを24組用いて編組したものである。扁平形状の長辺は2mm、短辺は0.8mmである。
編組線1の渦巻きの平均内径は50mm、平均外径は200mmである。
【0019】
シート4は、樹脂フィルム3の表面に、表面接着層2を塗布したものである。
表面接着層2は、熱硬化性接着材層である。
【0020】
図2に示すように、シート4を平面状にした状態で、表面接着層2上に編組線1を渦巻き状に所定のターン数だけ巻回した後、巻初めと巻終りの端部の絶縁被覆を除去し、それら端部に通電加熱装置Gを接続し、通電加熱し、素線同士を融着させると共に接着層2を硬化させた後、冷却し、シート付き渦巻きコイル10を製造する。
【0021】
実施例1のシート付き渦巻きコイル10によれば、編組線1の長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻くため、コイル厚を薄型化できる。また、編組線1を用いるため、高周波損失を低減できる。そして、素線同士を融着しているので、良好なコイル形状保持性を得ることが出来る。
【実施例2】
【0022】
図3は、実施例2に係るシート付き渦巻きコイル20を示す断面図である。
このシート付き渦巻きコイル20は、実施例1のシート付き渦巻きコイル10の構成を基本とし、シート4に裏面接着層5を付加し、その裏面接着層5にコイル保持板6を接着した構成である。
【0023】
コイル保持具6は、変形し難い樹脂板である。
【0024】
実施例2のシート付き渦巻きコイル20によれば、コイル保持具6を有するため、良好なコイル形状保持性を得ることが出来る。
【実施例3】
【0025】
図4は、実施例3に係るシート付き渦巻きコイル30を示す断面図である。
このシート付き渦巻きコイル30は、実施例2のシート付き渦巻きコイル20の構成を基本とし、コイル保持板6に磁性部材7を埋設した構成である。
【0026】
磁性部材7は、フェライトである。
【0027】
実施例3のシート付き渦巻きコイル30によれば、磁性部材7を有するため、漏れ磁束を抑制すると共に、編組線1側の磁束を強めることが出来る。
【実施例4】
【0028】
図5は、実施例4に係るシート付き渦巻きコイル40を示す断面図である。
このシート付き渦巻きコイル40は、実施例3のシート付き渦巻きコイル30の構成を基本とし、編組線1をカバー8で覆った構成である。
【0029】
カバー8は、粘着フィルムである。
【0030】
実施例4のシート付き渦巻きコイル40によれば、編組線1がカバー8で保護されるため、安定性,信頼性を高めることが出来る。
【実施例5】
【0031】
図6は、実施例5に係るシート付き渦巻きコイル50を示す断面図である。
このシート付き渦巻きコイル50は、実施例3のシート付き渦巻きコイル30の構成を基本とし、編組線1をカバー9で覆った構成である。
【0032】
カバー9は、硬い樹脂製であり、フック機構によりコイル保持具6に係止されている。
【0033】
実施例5のシート付き渦巻きコイル50によれば、編組線1がカバー9で保護されるため、安定性,信頼性を高めることが出来る。また、カバー9を自由に着脱できる。
【実施例6】
【0034】
図7は、実施例6に係るシート付き渦巻きコイル60を示す断面図である。
このシート付き渦巻きコイル60は、実施例3のシート付き渦巻きコイル30の構成を基本とし、編組線1側を凸として球面状に全体を湾曲させた構成である。
【0035】
シート4を平面状にした状態で、表面接着層2上に編組線1を渦巻き状に所定のターン数だけ巻回した後、元々湾曲したコイル保持具6に貼り付けることにより、全体形状を湾曲面状にし、巻初めと巻終りの端部の絶縁被覆を除去し、それら端部に通電加熱装置Gを接続し、通電加熱し、素線同士を融着させると共に接着層2,5を硬化させた後、冷却し、シート付き渦巻きコイル60を製造する。
【0036】
実施例7のシート付き渦巻きコイル60によれば、湾曲した設置面に好適に設置することが出来る。
【実施例7】
【0037】
図8は、実施例7に係る巻線装置100を示す平面図である。図9は、図8のA−A’断面図である。
この巻線装置100は、回転台101と、笠状ローラー105と、電線案内機構106とを具備している。
【0038】
回転台101は、粘着テープ102により表面接着層2を持つシート4の表面接着層2を上にしてシート4を保持し、回転しうる。
【0039】
笠状ローラー105は、回転台101の半径方向に中心側から外周側へと広がった笠状外周面103を有しており、外周面103の中心軸104で回転しうる。
回転台101の表面と笠状外周面103の間に形成される間隙gは調整できる。図9では、シート4および電線1を挟みうる間隙に調整されている。
【0040】
電線案内機構106は、笠状ローラー105の笠状外周面103に編組線1を押し付けるための押えローラー107と、押えローラー107を保持しネジロッド109に螺合して支持されている移動ホルダー108と、回転することにより笠状外周面103に沿って中心軸104の方向に押えローラー107を移動させうるネジロッド109とを有している。
【0041】
実施例7に係る巻線装置100によれば、回転台101によりシート4を回転しつつ、移動ホルダー108およびネジロッド109により回転台101の中心側から外周側へと押えローラー107を移動して編組線1の供給位置を回転台101の中心側から外周側へと移動させることにより、編組線1をシート4の表面接着層2上に渦巻き状に巻回してゆくことが出来る。
【0042】
この時、回転台101の表面と笠状ローラー105の笠状外周面103の間にシート4および編組線1を挟むので、編組線1を扁平形状にして巻き線することが出来る。
また、笠状ローラー105を用いるため、回転台101の中心側と外周側での編組線1の線送り速度の違いに対応でき、編組線1と笠状外周面103の摩擦を全体的に小さくすることが出来る。
【実施例8】
【0043】
図10に示すように、実施例7に係る巻線装置100により表面接着層2上に編組線1を渦巻き状に所定のターン数だけ巻回した後、渦巻き状に巻回した編組線1を全体的に押え板Pで押えつけ、巻初めと巻終りの端部の絶縁被覆を除去し、それら端部に通電加熱装置Gを接続し、通電加熱し、素線同士を融着させると共に接着層2,5を硬化させた後、冷却すれば、シート付き渦巻きコイル10を製造できる。
【実施例9】
【0044】
まず、実施例7に係る巻線装置100によりシート4の表面接着層2上に編組線1を渦巻き状に所定のターン数だけ巻回する。
次に、図11に示すように、湾曲した内底面を持つ金型Mに、湾曲したコイル保持具6を入れ、裏面接着層5となる熱硬化性接着材をコイル保持具6の表面に塗布し、編組線1を渦巻き状に巻回したシート4を重ね、全体的に押え板Pで押えつけ、巻初めと巻終りの端部の絶縁被覆を除去し、それら端部に通電加熱装置Gを接続し、通電加熱し、素線同士を融着させると共に接着層2,5を硬化させた後、冷却すれば、シート付き渦巻きコイル60を製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のシート付き渦巻きコイルは、電力伝送電気回路や電源回路における空芯コイルまたはトランス、あるいはIHヒーターコイル等に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例1に係るシート付き渦巻きコイルを示す平面図である。
【図2】図1のA−A’断面図である。
【図3】実施例2に係るシート付き渦巻きコイルを示す断面図である。
【図4】実施例3に係るシート付き渦巻きコイルを示す断面図である。
【図5】実施例4に係るシート付き渦巻きコイルを示す断面図である。
【図6】実施例5に係るシート付き渦巻きコイルを示す断面図である。
【図7】実施例6に係るシート付き渦巻きコイルを示す断面図である。
【図8】実施例7に係る巻線装置を示す平面図である。
【図9】図8のA−A’断面図である。
【図10】実施例8に係るシート付き渦巻きコイルの製造方法を説明するための断面図である。
【図11】実施例9に係るシート付き渦巻きコイルの製造方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 編組線
2 表面接着層
3 樹脂フィルム
4 シート
5 裏面接着層
6 コイル保持具
7 磁性部材
8,9 カバー
10,20,30,40,50,60 シート付き渦巻きコイル
100 巻線装置
101 回転台
102 粘着テープ
103 笠状外周面
104 中心軸
105 笠状ローラー
106 電線案内機構
107 押えローラー
108 移動ホルダー
109 ネジロッド
G 通電加熱装置
P 押え板
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート付き渦巻きコイル、シート付き渦巻きコイルの製造方法、渦巻き巻線装置およびシート付き渦巻きコイルの製造装置に関し、さらに詳しくは、高周波損失が小さく且つコイル形状保持性が良いシート付き渦巻きコイル、そのシート付き渦巻きコイルの製造方法および装置、並びに、シート上に電線を渦巻き状に巻回するための渦巻き巻線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平角線の長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻回(平巻)した渦巻きコイルが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平6−236796号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の渦巻きコイルでは、平角線の長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻回しているため、コイル厚がほぼ平角線の短辺と等しくなり、薄型化できる利点がある。
しかし、平角線を用いた渦巻きコイルは、高周波損失が大きい問題点がある。
これに対して、平角線に代えて編組線を用いると、高周波損失を小さく出来る。
ところが、編組線は柔軟性が高いため、コイル形状を保持し難い問題点がある。
そこで、本発明の目的は、高周波損失が小さく且つコイル形状保持性が良いシート付き渦巻きコイル、そのシート付き渦巻きコイルの製造方法および装置、並びに、シート上に電線を渦巻き状に巻回するための渦巻き巻線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、複数の自己融着絶縁素線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(1)が、表面接着層(2)を持つシート(4)の前記表面接着層(2)上に、長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻回されて接着されていると共に、素線同士が融着されていることを特徴とするシート付き渦巻きコイル(10)を提供する。
上記構成において、扁平形状の幅/厚さは2以上とする。複数の自己融着絶縁素線を管状に編んだ編組線を潰して断面を偏平形状にした編組線を用いてもよい。
隣接するターンの編組線同士を密着させると、ターン間での融着も期待できる。他方、隣接するターン間に空隙を空けると、編組線側が凹面になるように変形させるのに都合が良くなる。
シートの素材および厚さにより、柔軟性を選べる。柔軟性を高くすると変形が容易になり、柔軟性を低くすると変形し難くなる。
渦巻き形状は、円弧部と直線部とがあるトラック形や直線部を繋いだような角形であってもよい。
上記第1の観点によるシート付き渦巻きコイルでは、長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻くため、コイル厚を薄型化できる。また、編組線を用いるため、高周波損失を低減できる。
そして、シートの表面接着層上に編組線を渦巻き状に巻回しただけでは、編組線の一部が浮き上がってシートに接着していない部分を生じる場合があるが、本発明では素線同士を融着しているので、このような場合でも、良好なコイル形状保持性を得ることが出来る。
【0005】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点によるシート付き渦巻きコイルにおいて、前記シート(4)が、前記表面接着層(2)と反対側の面に、裏面接着層(5)を有することを特徴とするシート付き渦巻きコイル(20)を提供する。
上記第2の観点によるシート付き渦巻きコイルでは、裏面接着層(5)を利用して例えば磁性部材やコイル保持板などを取り付けることが出来る。
【0006】
第3の観点では、本発明は、前記第1または前記第2の観点によるシート付き渦巻きコイルにおいて、前記シート(4)の前記表面接着層(2)と反対側の面に、磁性部材(7)を具備することを特徴とするシート付き渦巻きコイル(30)を提供する。
上記構成において、磁性部材はシートの一部だけに設けてもよいし、シートの全面に設けてもよい。また、磁性部材をコイル保持板として利用してもよい。
上記第3の観点によるシート付き渦巻きコイルでは、磁性部材により、漏れ磁束を抑制すると共に、表面側の磁束を強めることが出来る。
【0007】
第4の観点では、本発明は、前記第1から前記第3のいずれかの観点によるシート付き渦巻きコイルにおいて、前記渦巻き状に巻回された編組線(4)が、カバー(8,9)で覆われていることを特徴とするシート付き渦巻きコイル(40,50)を提供する。
上記第4の観点によるシート付き渦巻きコイルでは、カバーにより編組線を保護することが出来るので、安定性、信頼性を向上できる。
【0008】
第5の観点では、本発明は、前記第1から前記第4のいずれかの観点によるシート付き渦巻きコイルにおいて、全体形状が湾曲していることを特徴とするシート付き渦巻きコイル(60)を提供する。
上記構成において、湾曲の形態は、例えば球面状や樋面状である。また、編組線側が凸面でもよいし、凹面でもよい。
上記第5の観点によるシート付き渦巻きコイルでは、シート付き渦巻きコイルを設置する面が湾曲している場合に好適である。具体的には、例えば釜の湾曲した底面にシート付き渦巻きコイルを設置する場合に好適である。
【0009】
第6の観点では、本発明は、前記第1から前記第5のいずれかの観点によるシート付き渦巻きコイルにおいて、前記表面接着層(2)が、熱硬化性接着材層であることを特徴とするシート付き渦巻きコイルを提供する。
上記第6の観点によるシート付き渦巻きコイルでは、巻線作業中は表面接着層を硬化させず、巻線後に表面接着層を熱硬化させればよいので、巻線工程の作業性が良くなる。
【0010】
第7の観点では、本発明は、複数の自己融着絶縁素線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(1)を、接着層(2)を持つシート(4)の前記接着層(2)上に、渦巻き状に巻回した後、素線同士を融着することを特徴とするシート付き渦巻きコイルの製造方法を提供する。
上記第7の観点によるシート付き渦巻きコイルの製造方法では、渦巻きコイル形状を整えた後に例えば通電加熱、熱風加熱または溶剤を用いて素線同士を融着することで、コイル形状を固定することが出来る。
【0011】
第8の観点では、本発明は、複数の自己融着絶縁素線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(1)を、接着層(2)を持つシート(4)の前記接着層(2)上に、前記シート(4)を平面状にした状態で渦巻き状に巻回した後、全体形状を湾曲面状にした状態で素線同士を融着することを特徴とするシート付き渦巻きコイルの製造方法を提供する。
上記第8の観点によるシート付き渦巻きコイルの製造方法では、巻線作業時はシートが平面状なので、巻線工程の作業性が良くなる。そして、巻線後に全体形状を湾曲させてから例えば通電加熱、熱風加熱または溶剤を用いて素線同士を融着することで、全体が湾曲したコイル形状を固定することが出来る。
【0012】
第9の観点では、本発明は、前記第7または第8の観点によるシート付き渦巻きコイルの製造方法において、前記渦巻き状に巻回した編組線(1)を前記表面接着層(2)へ押し付けながら素線同士を融着することを特徴とするシート付き渦巻きコイルの製造方法を提供する。
上記第9の観点によるシート付き渦巻きコイルの製造方法では、巻回した後に編組線の一部がシートから浮き上がっている部分を生じていても、編組線を表面接着層へ押し付けながら素線同士を融着するので、コイル形状を整形し、その整形したコイル形状を固定することが出来る。
【0013】
第10の観点では、本発明は、表面接着層(2)を持つシート(4)の前記表面接着層(2)を上にして前記シート(4)を保持し回転しうる回転台(101)と、前記回転台(101)の半径方向に中心側から外周側へと広がった笠状の外周面であって前記回転台(101)の表面との間に前記シート(4)および電線(1)を挟みうる間隙(g)を形成する笠状外周面(103)を有し且つ前記外周面(103)の中心軸(104)で回転しうる笠状ローラー(105)と、前記シート(4)の接着層(2)上に前記電線(1)を渦巻き状に巻回するために前記笠状ローラー(105)の笠状外周面(103)に沿って前記回転台(101)の中心側から外周側へと移動し前記笠状ローラー(105)に対する前記電線(1)の供給位置を前記回転台(101)の中心側から外周側へと移動させる電線案内手段(106)とを具備したことを特徴とする渦巻き巻線装置(100)を提供する。
上記構成において、回転台にシートを保持するのは、例えば容易に剥離可能な粘着テープや粘着材を用いてもよいし、回転台に空けた小さな孔から減圧吸引する手段を用いてもよいし、アームクランパーやチャックやネジ止めを用いてもよい。
上記第10の観点によるシート付き渦巻きコイルの製造方法では、回転台の表面と笠状ローラーの間にシートおよび電線を挟むので、電線が柔軟な編組線の場合に扁平形状にして巻き線することが出来る。また、円柱状のローラーでは、回転台の中心側と外周側での線送り速度の違いに対応できず通常は中心側で電線との摩擦が大きくなってしまうが、笠状ローラーを用いるため、回転台の中心側と外周側での線送り速度の違いに対応でき、電線との摩擦を全体的に小さくすることが出来る。
【0014】
第11の観点では、本発明は、前記第10の観点による渦巻き巻線装置(100)と、前記シート(4)へ渦巻き状に巻回した電線(1)を全体的に押さえつけるための押え装置(P)と、前記シート(4)へ渦巻き状に巻回した電線(1)を加熱するための加熱装置(G)とを具備したことを特徴とするシート付き渦巻きコイルの製造装置を提供する。
上記第11の観点によるシート付き渦巻きコイルの製造方法では、シート上に電線を渦巻き状に巻回し、電線をシートに押し付けて整形し、加熱によりコイル形状を固定することが出来る。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシート付き渦巻きコイルによれば、扁平形状の編組線の長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻くため、コイル厚を薄型化できる。また、編組線を用いるため、高周波損失を低減できる。そして、素線同士を融着しているので、良好なコイル形状保持性を得ることが出来る。
本発明のシート付き渦巻きコイルの製造方法および装置によれば、本発明のシート付き渦巻きコイルを好適に製造できる。
本発明の渦巻き巻線装置によれば、シート状に電線を渦巻き状に好適に巻回することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
図1は、実施例1に係るシート付き渦巻きコイル10を示す平面図である。図2は、図1のA−A’断面図である。
このシート付き渦巻きコイル10は、複数の自己融着絶縁素線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線1が、シート4の表面接着層2上に、長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻回されて接着されていると共に、素線同士が融着されている構成である。
【0018】
編組線1は、外径0.1mmの自己融着絶縁素線を7本概略横に並べて1組としたものを24組用いて編組したものである。扁平形状の長辺は2mm、短辺は0.8mmである。
編組線1の渦巻きの平均内径は50mm、平均外径は200mmである。
【0019】
シート4は、樹脂フィルム3の表面に、表面接着層2を塗布したものである。
表面接着層2は、熱硬化性接着材層である。
【0020】
図2に示すように、シート4を平面状にした状態で、表面接着層2上に編組線1を渦巻き状に所定のターン数だけ巻回した後、巻初めと巻終りの端部の絶縁被覆を除去し、それら端部に通電加熱装置Gを接続し、通電加熱し、素線同士を融着させると共に接着層2を硬化させた後、冷却し、シート付き渦巻きコイル10を製造する。
【0021】
実施例1のシート付き渦巻きコイル10によれば、編組線1の長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻くため、コイル厚を薄型化できる。また、編組線1を用いるため、高周波損失を低減できる。そして、素線同士を融着しているので、良好なコイル形状保持性を得ることが出来る。
【実施例2】
【0022】
図3は、実施例2に係るシート付き渦巻きコイル20を示す断面図である。
このシート付き渦巻きコイル20は、実施例1のシート付き渦巻きコイル10の構成を基本とし、シート4に裏面接着層5を付加し、その裏面接着層5にコイル保持板6を接着した構成である。
【0023】
コイル保持具6は、変形し難い樹脂板である。
【0024】
実施例2のシート付き渦巻きコイル20によれば、コイル保持具6を有するため、良好なコイル形状保持性を得ることが出来る。
【実施例3】
【0025】
図4は、実施例3に係るシート付き渦巻きコイル30を示す断面図である。
このシート付き渦巻きコイル30は、実施例2のシート付き渦巻きコイル20の構成を基本とし、コイル保持板6に磁性部材7を埋設した構成である。
【0026】
磁性部材7は、フェライトである。
【0027】
実施例3のシート付き渦巻きコイル30によれば、磁性部材7を有するため、漏れ磁束を抑制すると共に、編組線1側の磁束を強めることが出来る。
【実施例4】
【0028】
図5は、実施例4に係るシート付き渦巻きコイル40を示す断面図である。
このシート付き渦巻きコイル40は、実施例3のシート付き渦巻きコイル30の構成を基本とし、編組線1をカバー8で覆った構成である。
【0029】
カバー8は、粘着フィルムである。
【0030】
実施例4のシート付き渦巻きコイル40によれば、編組線1がカバー8で保護されるため、安定性,信頼性を高めることが出来る。
【実施例5】
【0031】
図6は、実施例5に係るシート付き渦巻きコイル50を示す断面図である。
このシート付き渦巻きコイル50は、実施例3のシート付き渦巻きコイル30の構成を基本とし、編組線1をカバー9で覆った構成である。
【0032】
カバー9は、硬い樹脂製であり、フック機構によりコイル保持具6に係止されている。
【0033】
実施例5のシート付き渦巻きコイル50によれば、編組線1がカバー9で保護されるため、安定性,信頼性を高めることが出来る。また、カバー9を自由に着脱できる。
【実施例6】
【0034】
図7は、実施例6に係るシート付き渦巻きコイル60を示す断面図である。
このシート付き渦巻きコイル60は、実施例3のシート付き渦巻きコイル30の構成を基本とし、編組線1側を凸として球面状に全体を湾曲させた構成である。
【0035】
シート4を平面状にした状態で、表面接着層2上に編組線1を渦巻き状に所定のターン数だけ巻回した後、元々湾曲したコイル保持具6に貼り付けることにより、全体形状を湾曲面状にし、巻初めと巻終りの端部の絶縁被覆を除去し、それら端部に通電加熱装置Gを接続し、通電加熱し、素線同士を融着させると共に接着層2,5を硬化させた後、冷却し、シート付き渦巻きコイル60を製造する。
【0036】
実施例7のシート付き渦巻きコイル60によれば、湾曲した設置面に好適に設置することが出来る。
【実施例7】
【0037】
図8は、実施例7に係る巻線装置100を示す平面図である。図9は、図8のA−A’断面図である。
この巻線装置100は、回転台101と、笠状ローラー105と、電線案内機構106とを具備している。
【0038】
回転台101は、粘着テープ102により表面接着層2を持つシート4の表面接着層2を上にしてシート4を保持し、回転しうる。
【0039】
笠状ローラー105は、回転台101の半径方向に中心側から外周側へと広がった笠状外周面103を有しており、外周面103の中心軸104で回転しうる。
回転台101の表面と笠状外周面103の間に形成される間隙gは調整できる。図9では、シート4および電線1を挟みうる間隙に調整されている。
【0040】
電線案内機構106は、笠状ローラー105の笠状外周面103に編組線1を押し付けるための押えローラー107と、押えローラー107を保持しネジロッド109に螺合して支持されている移動ホルダー108と、回転することにより笠状外周面103に沿って中心軸104の方向に押えローラー107を移動させうるネジロッド109とを有している。
【0041】
実施例7に係る巻線装置100によれば、回転台101によりシート4を回転しつつ、移動ホルダー108およびネジロッド109により回転台101の中心側から外周側へと押えローラー107を移動して編組線1の供給位置を回転台101の中心側から外周側へと移動させることにより、編組線1をシート4の表面接着層2上に渦巻き状に巻回してゆくことが出来る。
【0042】
この時、回転台101の表面と笠状ローラー105の笠状外周面103の間にシート4および編組線1を挟むので、編組線1を扁平形状にして巻き線することが出来る。
また、笠状ローラー105を用いるため、回転台101の中心側と外周側での編組線1の線送り速度の違いに対応でき、編組線1と笠状外周面103の摩擦を全体的に小さくすることが出来る。
【実施例8】
【0043】
図10に示すように、実施例7に係る巻線装置100により表面接着層2上に編組線1を渦巻き状に所定のターン数だけ巻回した後、渦巻き状に巻回した編組線1を全体的に押え板Pで押えつけ、巻初めと巻終りの端部の絶縁被覆を除去し、それら端部に通電加熱装置Gを接続し、通電加熱し、素線同士を融着させると共に接着層2,5を硬化させた後、冷却すれば、シート付き渦巻きコイル10を製造できる。
【実施例9】
【0044】
まず、実施例7に係る巻線装置100によりシート4の表面接着層2上に編組線1を渦巻き状に所定のターン数だけ巻回する。
次に、図11に示すように、湾曲した内底面を持つ金型Mに、湾曲したコイル保持具6を入れ、裏面接着層5となる熱硬化性接着材をコイル保持具6の表面に塗布し、編組線1を渦巻き状に巻回したシート4を重ね、全体的に押え板Pで押えつけ、巻初めと巻終りの端部の絶縁被覆を除去し、それら端部に通電加熱装置Gを接続し、通電加熱し、素線同士を融着させると共に接着層2,5を硬化させた後、冷却すれば、シート付き渦巻きコイル60を製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のシート付き渦巻きコイルは、電力伝送電気回路や電源回路における空芯コイルまたはトランス、あるいはIHヒーターコイル等に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例1に係るシート付き渦巻きコイルを示す平面図である。
【図2】図1のA−A’断面図である。
【図3】実施例2に係るシート付き渦巻きコイルを示す断面図である。
【図4】実施例3に係るシート付き渦巻きコイルを示す断面図である。
【図5】実施例4に係るシート付き渦巻きコイルを示す断面図である。
【図6】実施例5に係るシート付き渦巻きコイルを示す断面図である。
【図7】実施例6に係るシート付き渦巻きコイルを示す断面図である。
【図8】実施例7に係る巻線装置を示す平面図である。
【図9】図8のA−A’断面図である。
【図10】実施例8に係るシート付き渦巻きコイルの製造方法を説明するための断面図である。
【図11】実施例9に係るシート付き渦巻きコイルの製造方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 編組線
2 表面接着層
3 樹脂フィルム
4 シート
5 裏面接着層
6 コイル保持具
7 磁性部材
8,9 カバー
10,20,30,40,50,60 シート付き渦巻きコイル
100 巻線装置
101 回転台
102 粘着テープ
103 笠状外周面
104 中心軸
105 笠状ローラー
106 電線案内機構
107 押えローラー
108 移動ホルダー
109 ネジロッド
G 通電加熱装置
P 押え板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の自己融着絶縁素線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(1)が、表面接着層(2)を持つシート(4)の前記表面接着層(2)上に、長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻回されて接着されていると共に、素線同士が融着されていることを特徴とするシート付き渦巻きコイル(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のシート付き渦巻きコイルにおいて、前記シート(4)が、前記表面接着層(2)と反対側の面に、裏面接着層(5)を有することを特徴とするシート付き渦巻きコイル(20)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシート付き渦巻きコイルにおいて、前記シート(4)の前記表面接着層(2)と反対側の面に、磁性部材(7)を具備することを特徴とするシート付き渦巻きコイル(30)。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のシート付き渦巻きコイルにおいて、前記渦巻き状に巻回された編組線(4)が、カバー(8,9)で覆われていることを特徴とするシート付き渦巻きコイル(40,50)。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のシート付き渦巻きコイルにおいて、全体形状が湾曲していることを特徴とするシート付き渦巻きコイル(60)。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のシート付き渦巻きコイルにおいて、前記表面接着層(2)が、熱硬化性接着材層であることを特徴とするシート付き渦巻きコイル。
【請求項7】
複数の自己融着絶縁素線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(1)を、接着層(2)を持つシート(4)の前記接着層(2)上に、渦巻き状に巻回した後、素線同士を融着することを特徴とするシート付き渦巻きコイルの製造方法。
【請求項8】
複数の自己融着絶縁素線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(1)を、接着層(2)を持つシート(4)の前記接着層(2)上に、前記シート(4)を平面状にした状態で渦巻き状に巻回した後、全体形状を湾曲面状にした状態で素線同士を融着することを特徴とするシート付き渦巻きコイルの製造方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のシート付き渦巻きコイルの製造方法において、前記渦巻き状に巻回した編組線(1)を前記表面接着層(2)へ押し付けながら素線同士を融着することを特徴とするシート付き渦巻きコイルの製造方法。
【請求項10】
表面接着層(2)を持つシート(4)の前記表面接着層(2)を上にして前記シート(4)を保持し回転しうる回転台(101)と、前記回転台(101)の半径方向に中心側から外周側へと広がった笠状の外周面であって前記回転台(101)の表面との間に前記シート(4)および電線(1)を挟みうる間隙(g)を形成する笠状外周面(103)を有し且つ前記外周面(103)の中心軸(104)で回転しうる笠状ローラー(105)と、前記シート(4)の接着層(2)上に前記電線(1)を渦巻き状に巻回するために前記笠状ローラー(105)の笠状外周面(103)に沿って前記回転台(101)の中心側から外周側へと移動し前記笠状ローラー(105)に対する前記電線(1)の供給位置を前記回転台(101)の中心側から外周側へと移動させる電線案内手段(106)とを具備したことを特徴とする渦巻き巻線装置(100)。
【請求項11】
請求項10に記載の渦巻き巻線装置(100)と、前記シート(4)へ渦巻き状に巻回した電線(1)を全体的に押さえつけるための押え装置(P)と、前記シート(4)へ渦巻き状に巻回した電線(1)を加熱するための加熱装置(G)とを具備したことを特徴とするシート付き渦巻きコイルの製造装置。
【請求項1】
複数の自己融着絶縁素線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(1)が、表面接着層(2)を持つシート(4)の前記表面接着層(2)上に、長辺をコイル径方向に向けて渦巻き状に巻回されて接着されていると共に、素線同士が融着されていることを特徴とするシート付き渦巻きコイル(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のシート付き渦巻きコイルにおいて、前記シート(4)が、前記表面接着層(2)と反対側の面に、裏面接着層(5)を有することを特徴とするシート付き渦巻きコイル(20)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシート付き渦巻きコイルにおいて、前記シート(4)の前記表面接着層(2)と反対側の面に、磁性部材(7)を具備することを特徴とするシート付き渦巻きコイル(30)。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のシート付き渦巻きコイルにおいて、前記渦巻き状に巻回された編組線(4)が、カバー(8,9)で覆われていることを特徴とするシート付き渦巻きコイル(40,50)。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のシート付き渦巻きコイルにおいて、全体形状が湾曲していることを特徴とするシート付き渦巻きコイル(60)。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のシート付き渦巻きコイルにおいて、前記表面接着層(2)が、熱硬化性接着材層であることを特徴とするシート付き渦巻きコイル。
【請求項7】
複数の自己融着絶縁素線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(1)を、接着層(2)を持つシート(4)の前記接着層(2)上に、渦巻き状に巻回した後、素線同士を融着することを特徴とするシート付き渦巻きコイルの製造方法。
【請求項8】
複数の自己融着絶縁素線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(1)を、接着層(2)を持つシート(4)の前記接着層(2)上に、前記シート(4)を平面状にした状態で渦巻き状に巻回した後、全体形状を湾曲面状にした状態で素線同士を融着することを特徴とするシート付き渦巻きコイルの製造方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のシート付き渦巻きコイルの製造方法において、前記渦巻き状に巻回した編組線(1)を前記表面接着層(2)へ押し付けながら素線同士を融着することを特徴とするシート付き渦巻きコイルの製造方法。
【請求項10】
表面接着層(2)を持つシート(4)の前記表面接着層(2)を上にして前記シート(4)を保持し回転しうる回転台(101)と、前記回転台(101)の半径方向に中心側から外周側へと広がった笠状の外周面であって前記回転台(101)の表面との間に前記シート(4)および電線(1)を挟みうる間隙(g)を形成する笠状外周面(103)を有し且つ前記外周面(103)の中心軸(104)で回転しうる笠状ローラー(105)と、前記シート(4)の接着層(2)上に前記電線(1)を渦巻き状に巻回するために前記笠状ローラー(105)の笠状外周面(103)に沿って前記回転台(101)の中心側から外周側へと移動し前記笠状ローラー(105)に対する前記電線(1)の供給位置を前記回転台(101)の中心側から外周側へと移動させる電線案内手段(106)とを具備したことを特徴とする渦巻き巻線装置(100)。
【請求項11】
請求項10に記載の渦巻き巻線装置(100)と、前記シート(4)へ渦巻き状に巻回した電線(1)を全体的に押さえつけるための押え装置(P)と、前記シート(4)へ渦巻き状に巻回した電線(1)を加熱するための加熱装置(G)とを具備したことを特徴とするシート付き渦巻きコイルの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−218321(P2009−218321A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59166(P2008−59166)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】
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