説明

シート体用搬送機構

【課題】シート体用搬送機構における吸着手段の変位を簡便且つ確実に規制する。
【解決手段】蓄積性蛍光体シートを吸着保持する吸着手段30と、前記吸着手段30を所定の搬送軌跡に沿って案内するガイド手段32と、前記吸着手段30を移動させる駆動手段34と、前記吸着手段30の変位を規制可能なロック手段36とを備える。このロック手段36は、ガイド手段32に沿って案内される可動アーム部材64のフランジ66を、側板38bに設けられたピン駆動機構84の駆動作用下にピン82を挿入させて係止することにより、吸着手段30を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置内でシート体を移送可能なシート体用搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体等の放射線画像を記録する画像記録担体として、例えば、X線写真フイルムが知られている。また、X線写真フイルムに代えて、放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等)を照射すると、その放射線エネルギの一部を蓄積し、後にレーザ光や可視光等の励起光を照射することで、蓄積されたエネルギに応じた輝尽発光を示す蓄積性蛍光体層を有する蓄積性蛍光体シートも多用されている。
【0003】
これらの画像記録担体(シート体)は、通常、遮光性のカセッテやマガジンに収納した状態で取り扱われる。カセッテは、シート状の画像記録担体を1枚ずつ収納するように構成されている。このカセッテが用いられるシステムでは、例えば、予め放射線画像情報が記録された画像記録担体が収容されたカセッテを装填するカセッテ装填部と、前記カセッテから取り出された前記画像記録担体に担持された放射線画像情報を読み取る読取部と、前記画像記録担体に残存する放射線画像情報を消去する消去部とを組み込むカセット方式の画像情報読取装置が採用されている。
【0004】
本出願人は、読取部に対する振動の付与を防止可能な防振構造を有する画像情報読取装置を提案している(特許文献1参照)。この画像読取装置では、読取部が収容されるユニットの下部にゴム製の防振部材が設けられ、前記ユニットに付与される振動が前記読取部に伝達されることを防振部材によって防止している。
【0005】
【特許文献1】特開2000−122198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の画像情報読取装置では、カセッテ内から画像記録担体を取り出すと共に、読み取り及び消去処理後の前記画像記録担体を前記カセッテ内に戻すための吸着手段を有する移送機構を備えている。この吸着手段は、画像記録担体を移送するために移動可能に設けられているが、前記画像情報読取装置を、例えば、車両等に搭載して搬送する際に、走行中の振動が吸着手段に対して付与されて該吸着手段が変位してしまい他の機構に接触することが懸念される。
【0007】
そのため、移送機構に対する振動の付与を防止するために、従来技術に係る画像読取装置に適用された防振構造を適用することが考えられるが、この移送機構は、ユニットに対して直接固定される構造であると共に、画像記録担体及びカセッテが装填されるカセッテ装填部を備えているため、上述したような防振部材を有する防振構造を適用することが困難である。
【0008】
そのため、従来の画像情報読取装置では、例えば、車両によって搬送する際、吸着手段の変位を規制する押え治具をカセッテ装填部に装填し、該押え治具を吸着手段に当接させることにより前記吸着手段を固定し、搬送時において生じる振動によって前記吸着手段が変位してしまうことを防止している。この場合、画像情報読取装置の搬送が終了した後には、前記押え治具をカセッテ装填部から取り外して吸着手段を使用可能な状態に復帰させている。
【0009】
しかしながら、押え治具をカセッテ装填部に対して装填又は離脱させ、移送機構の吸着手段を固定又は固定解除する際の作業が煩雑であると共に、画像読取装置に対して押え治具をそれぞれ準備する必要があり、前記押え治具に要するコストが増大すると共に、その収容スペース等が必要になる。
【0010】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、吸着手段の変位を簡便且つ確実に規制することが可能なシート体用搬送機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明は、処理装置内でシート体を搬送するためのシート体用搬送機構において、
ケーシングと、
前記ケーシングの内部に配設され、前記シート体を吸着保持する吸着盤を有する吸着手段と、
前記吸着手段を所定の搬送軌跡に沿って案内するガイド手段と、
前記吸着手段を前記ガイド手段の案内作用下に移動させる駆動手段と、
前記吸着手段の変位を規制する変位規制手段と、
を備え、
前記変位規制手段は、前記ガイド手段に沿って案内され、前記吸着盤が装着される可動アーム部材の端部に設けられる第1規制部と、前記ケーシングに前記第1規制部と対向して設けられる第2規制部とからなることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、シート体を吸着保持する吸着手段が、駆動手段の駆動作用下にガイド手段を介して所定の搬送軌跡に沿って移動すると共に、前記吸着手段による前記シート体の吸着保持が行われていない場合に、前記吸着手段の変位を変位規制手段によって規制可能に構成している。この変位規制手段は、可動アーム部材に設けられて可動側となる第1規制部が、ケーシングに設けられて固定側となる第2規制部に対して係止されることにより、前記可動アーム部材を含む吸着手段が、ケーシングに対して変位することがないよう保持される。
【0013】
従って、吸着手段を変位規制手段によって簡便且つ確実に規制してケーシングに対して固定することができるため、例えば、この吸着手段を有する処理装置を車両等で搬送する場合でも、その振動による吸着手段の変位を防止することができる。その結果、従来の処理装置に用いられていた吸着手段の変位を防止するための押え治具を不要とすることができ、それに伴って、前記押え治具を装着又は離脱させるという煩雑な作業を廃止し、且つ、前記押え治具に要するコストの削減を図ることも可能となる。
【0014】
また、第1規制部を、可動アーム部材の端部に開口した孔部とし、第2規制部を、前記第1規制部側に向かって進退自在に設け、前記孔部に対して挿入可能な係止ピンとするとよい。これにより、吸着手段の変位を規制する際に、可動アーム部材の端部を第2規制部と対向させ、前記第2規制部の係止ピンを変位させて第1規制部となる孔部に挿入することにより、前記吸着手段を構成する可動アーム部材の変位を規制することができる。
【0015】
そのため、進退自在な係止ピンをケーシングに設けると共に、可動アーム部材の端部に孔部を設けるという簡素な構成で、吸着手段をケーシングに対して簡便且つ確実に保持することができる。
【0016】
さらに、第1規制部を、可動アーム部材の端部に設けられ、第2規制部側に突出した係止軸とし、第2規制部を、ガイド手段のガイド溝に形成され、前記係止軸が係合される凹部とするとよい。これにより、吸着手段を構成する可動アーム部材を変位させ、第1規制部となる係止軸を第2規制部となる凹部に係合させることにより、ガイド手段のガイド作用下に変位していた吸着手段の変位を規制することができる。
【0017】
そのため、ガイド手段に対して凹部からなる第2規制部を設けるという簡素な構成で、可動アーム部材を含む吸着手段をケーシングに対して簡便且つ確実に保持することができる。
【0018】
さらにまた、第2規制部を磁性体とすることにより、吸着手段を構成する可動アーム部材の第1規制部を、磁性体からなる第2規制部に対向した位置において、該磁性体の磁力により保持することが可能となる。そのため、磁性体からなる第2規制部をケーシングに設けるという簡素な構成で、吸着手段をケーシングに対して簡便且つ確実に保持することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0020】
すなわち、吸着手段の変位を規制可能な変位規制手段を設け、可動アーム部材に設けられた第1規制部を、ケーシングに設けられた第2規制部に対して係止されることにより、前記可動アーム部材を含む吸着手段のケーシングに対する変位が規制される。このように、吸着手段を変位規制手段によって簡便且つ確実に固定することができるため、処理装置を搬送している際に発生する振動による吸着手段の変位を防止し、従来の処理装置における吸着手段の保持作業が不要となると共に、前記吸着手段を保持する際の治具を不要としてコストの削減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係るシート体用搬送機構について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0022】
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係るシート体用搬送機構が組み込まれた画像読取装置を示す。
【0023】
この画像読取装置(処理装置)10は、図1に示されるように、装置本体(ケーシング)12の内部に予め被写体の放射線画像情報が一旦記録されたシート状記録担体である蓄積性蛍光体シートSが収容されたカセッテ14を装填するカセッテ装填部16と、前記放射線画像情報が記録された前記蓄積性蛍光体シートSに励起光であるレーザ光Lを照射して前記放射線画像情報を光電的に読み取る読取部18と、読み取り後に前記蓄積性蛍光体シートSに残存する放射線画像情報を消去する消去部20とが組み込まれる。なお、装置本体12の前面上部には、操作部及びモニタの機能を有するタッチパネル22が設けられる。
【0024】
カセッテ14は、蓄積性蛍光体シートSを収容する筐体24と、前記蓄積性蛍光体シートSの取り出し動作及び挿入動作を行うために、前記筐体24の端部に開閉可能に装着される蓋体26とを備える。
【0025】
カセッテ装填部16には、カセッテ14が水平姿勢で挿入され、蓋体26を開閉する図示しない蓋体開閉手段と、蓄積性蛍光体シートSを吸着保持して前記カセッテ14から取り出すと共に、読み取り及び消去処理後の前記蓄積性蛍光体シートSを前記カセッテ14に送り込むシート体用搬送機構28(以下、単に搬送機構28という)とを備える。
【0026】
搬送機構28は、図1及び図2に示されるように、カセッテ装填部16で蓋体26が開放されたカセッテ14内の蓄積性蛍光体シートSを吸着保持可能な吸着手段30と、前記吸着手段30を所定の搬送軌跡に沿って案内するガイド手段32と、前記吸着手段30を前記ガイド手段32の案内作用下に移動させる駆動手段34と、前記画像読取装置10の搬送時等に吸着手段30の変位を規制するロック手段(変位規制手段)36とを備える。
【0027】
この搬送機構28は、蓄積性蛍光体シートSの取り出し方向(矢印X方向)と交差する矢印Y方向に所定の間隔だけ離間する側板38a、38bを含む。一方の側板38aには、駆動手段34を構成するモータ40が固定され、このモータ40の駆動軸42に駆動歯車44が軸着される。この駆動歯車44には、複数の歯車で構成される歯車列46が噛合すると共に、前記歯車列46に従動歯車48が噛合する。従動歯車48は、他方の側板38b側に向かって矢印Y方向に延在した回転軸50の一端側に固着され、前記回転軸50は側板38a、38bに対して両端支持されている。そして、回転軸50の両端には旋回アーム52がそれぞれ固着され、前記旋回アーム52の突出端部にリンクアーム54の一端が揺動自在に連結される。
【0028】
側板38a、38bには、カセッテ14の装填側となる端部に装填口56を有する端板58が設けられ、前記装填口56を介して回転軸50側(矢印X方向)に向かってカセッテ14が装填される。この端板58の近傍には、前記カセッテ14を排出する際に回転駆動する排出ローラ60が回転自在に設けられている。
【0029】
また、側板38a、38bには、蓄積性蛍光体シートSの被吸着面(記録面とは反対側の裏面)に対して吸着手段30を上方から斜め下方へと移動させるためにガイド手段32を構成する一組のガイド溝62a、62bが設けられる。このガイド溝62a、62bは、互いに所定の間隔だけ離間してそれぞれ所定形状に設定され、吸着手段30を上方から斜め下方へと傾斜する搬送軌跡に沿って移動させることが可能である。
【0030】
吸着手段30を構成する可動アーム部材64は、金属製材料から形成され、一方の側板38aと他方の側板38bとの間に矢印Y方向に延在するように設けられる。そして、可動アーム部材64の両端には、略鉛直上方に向かって折曲した一組のフランジ66が形成される。このフランジ66には、前記ガイド溝62a、62bに対応して第1支軸(係止軸)68及び第2支軸(係止軸)70が所定間隔離間して固着されている(図2及び図3参照)。そして、前記第1支軸68は、第2支軸70より長尺に形成され、下方側となる一方のガイド溝62aから側板38a、38bの外方に突出してリンクアーム54の他端に係合する。また、前記第1及び第2支軸68、70は、連結部材72によって互いに支持されている。
【0031】
また、可動アーム部材64には、一組の吸着盤74a、74bが装着された取付部材76が設けられている。この吸着盤74a、74bは、取付部材76と一体的に可動アーム部材64に対して着脱可能に構成される。
【0032】
吸着盤74a、74bには、その上部側にホース接続用の継手78が装着されると共に、前記継手78にホース(図示しない)がそれぞれ連結されている。このホースには、図示しない真空発生源が接続され、該ホースを通じて吸着盤74a、74bへと負圧流体が供給される。
【0033】
ロック手段36は、図3及び図4に示されるように、側板38bに設けられ、ガイド溝62a、62bのガイド作用下に変位する可動アーム部材64の変位を規制している。このロック手段36は、前記側板38bの孔部80を通じて進退自在なピン(係止ピン)82を有するピン駆動機構84からなる。このピン駆動機構84は、吸着手段30が蓄積性蛍光体シートSの吸着作業を終了し、次の吸着作業に備えてガイド手段32に沿って初期位置へと復帰した際に、前記吸着手段30のフランジ66と対向する位置に設けるとよい。
【0034】
ピン駆動機構84は、例えば、通電作用下に軸線方向に沿って変位自在な弁体を有する電磁弁からなり、図示しない弁体の端部にピン82が連結されている。このピン駆動機構84は、例えば、非通電時においてスプリング(図示せず)の弾発力によってピン82が可動アーム部材64のフランジ66側(図5中、矢印C方向)へと突出し、通電時には図示しない弁体の変位作用下に前記ピン82が前記フランジ66から離間する方向(図5中、矢印D方向)に変位する。
【0035】
フランジ66には、前記ピン82が挿入されるピン穴86が形成され、前記ピン穴86は、可動アーム部材64がガイド溝62a、62bに沿って移動した際に、側板38bの孔部80と対向する位置に形成される。
【0036】
また、ピン駆動機構84は、上述した電磁弁の代わりとして、例えば、スプリングの弾発作用下にボールを軸線方向に自在に変位させるボールプランジャを採用するようにしてもよい。このボールプランジャでは、前記ボールの代わりに前記ピン82を進退させる構成を採用することにより、可動アーム部材64の変位を規制することが可能である。
【0037】
なお、上述したロック手段36では、ピン駆動機構84を側板38bの一方のみに設けた場合について説明したがこれに限定されるものではなく、一組のピン駆動機構84を側板38a、38bに対してそれぞれ設けるようにしてもよい。これにより、単一のピン駆動機構84で可動アーム部材64の変位を規制する場合と比較し、一組のピン駆動機構84によって前記可動アーム部材64の変位をより一層確実に規制することが可能となる。
【0038】
一方、装置本体12には、図1に示されるように、搬送機構28から取り出された蓄積性蛍光体シートSが搬送される搬送路88が形成され、前記搬送路88に沿って消去部20及び読取部18が配設される。
【0039】
この搬送路88は、複数の互いに対をなすローラ対90を備えており、前記搬送機構28から鉛直下方向に延在する部位に消去部20が配置される。この消去部20は、蓄積性蛍光体シートSの記録面側に配置される消去ユニット92を備えており、前記消去ユニット92内には、複数の消去用光源94が鉛直方向に配列されている。
【0040】
この搬送路88において水平方向に延在する部位には読取部18が配設される。この読取部18は、蓄積性蛍光体シートSを副走査方向(矢印A方向)に搬送する副走査搬送機構96と、副走査方向に搬送される蓄積性蛍光体シートSの主走査方向(副走査方向と略直交する方向)に励起光であるレーザビームLを照射する走査ユニット98と、このレーザビームLの照射によって蓄積性蛍光体シートSから生ずる輝尽発光光を光電的に読み取る読取ユニット100とを備える。副走査搬送機構96は、蓄積性蛍光体シートSを搬送する第1及び第2ローラ対102、104を備える。
【0041】
副走査搬送機構96の上部に配設される読取ユニット100は、蓄積性蛍光体シートSにおけるレーザビームLの走査位置に沿って一端部が配設される光ガイド106と、前記光ガイド106の他端部に装着されるフォトマルチプライヤ108とを備え、蓄積性蛍光体シートSから得られる輝尽発光光を集光する。
【0042】
また、搬送路88は、読取部18から上方向に向かって延在した後、水平方向に延在した退避路110に連通する。この退避路110は、読取部18の上部に配設される水平方向の搬送路88aを介して鉛直方向に延在して搬送路88へと接続される。
【0043】
本発明の第1の実施の形態に係るシート体用搬送機構28が組み込まれた画像読取装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0044】
先ず、図1に示されるように、装置本体12の上部に設けられているカセッテ装填部16にカセッテ14が水平方向に指向して装着される。このカセッテ14内には、予め図示しない被写体の放射線画像情報が記録された蓄積性蛍光体シートSを収容しており、前記カセッテ装填部16に設けられた図示しない蓋体開閉手段の作用下に蓋体26が開放される。
【0045】
次いで、図2に示される駆動手段34が駆動されて吸着盤74a、74bがカセッテ14内に移動する。すなわち、駆動手段34では、モータ40の駆動作用下に駆動歯車44、歯車列46及び従動歯車48を介して回転軸50が所定方向に回転する。このため、回転軸50の両端に固着されている一組の旋回アーム52が旋回し、前記旋回アーム52にリンクアーム54を介して連結された可動アーム部材64が、ガイド溝62a、62bの案内作用下にフランジ66を介してカセッテ14側に移動する。
【0046】
この可動アーム部材64には、吸着盤74a、74bが取り付けられており、前記吸着盤74a、74bは、ガイド手段32の案内作用下にカセッテ14内の蓄積性蛍光体シートSの被吸着面に対して上方から斜め下方に傾斜する搬送軌跡に沿って移動する。
【0047】
次に、吸着盤74a、74bにより蓄積性蛍光体シートSが吸着保持された状態で、駆動手段34を構成するモータ40が逆方向に駆動される。
【0048】
このため、可動アーム部材64と吸着盤74a、74bとが、ガイド溝62a、62bの案内作用下に一体的にカセッテ14内から搬送ローラ対112側に移動し、前記カセッテ14内の蓄積性蛍光体シートSは、前記吸着盤74a、74bに吸着されて前記カセッテ14から取り出される。このカセッテ14から取り出された蓄積性蛍光体シートSの先端が、搬送ローラ対112に挟持されるのと略同時に、前記吸着盤74a、74bによる前記蓄積性蛍光体シートSの吸着保持が解除される。
【0049】
これにより、蓄積性蛍光体シートSは、搬送ローラ対112を介して複数のローラ対90の回転作用下に鉛直下方向に向かって搬送される。この蓄積性蛍光体シートSは、消去部20を通過して読取部18を構成する副走査搬送機構96に送られる。
【0050】
副走査搬送機構96では、蓄積性蛍光体シートSが第1及び第2ローラ対102、104に挟持されて矢印A方向(水平方向)に副走査搬送される一方、走査ユニット98からレーザ光Lが導出される。このレーザ光Lが蓄積性蛍光体シートSを主走査し、その照射により得られた輝尽発光光は、光ガイド106を介してフォトマルチプライヤ108により光電的に読み取られる。
【0051】
放射線画像情報の読み取りが終了した蓄積性蛍光体シートSは、上方向に搬送されて一旦退避路110へと搬送された後、スイッチバックされて読取部18の上部の搬送路88aに搬入される。そして、蓄積性蛍光体シートSが矢印B方向に搬送されることにより鉛直方向に延在する搬送路88へと導かれて消去部20に送られる。この消去部20では、消去用光源94が付勢されており、蓄積性蛍光体シートSに残存する放射線画像情報の消去が行われる。消去後の蓄積性蛍光体シートSはカセッテ14に戻された後、蓋体26が閉じられると共に、前記カセッテ14がカセッテ装填部16から取り出され、図示しない放射線画像情報の撮影処理が再び施される。
【0052】
次に、上述した画像読取装置10を、例えば、車両等に搭載して移送する際、搬送機構28を構成する吸着手段30をロック手段36によって保持する場合について説明する。なお、ロック手段36を構成するピン駆動機構84は、その通電作用下に可動アーム部材64のフランジ66から矢印D方向(図5参照)に所定間隔だけ離間した状態にある。すなわち、吸着手段30を構成する可動アーム部材64は、ガイド手段32のガイド作用下に移動自在な状態にある。
【0053】
先ず、吸着手段30をロック手段36によって保持する場合には、該吸着手段30による蓄積性蛍光体シートSの吸着作業が終了した状態で、駆動手段34の駆動作用下に可動アーム部材64を、そのフランジ66が側板38bの孔部80と対向した初期位置へと移動させる。そして、ピン駆動機構84のピン82とフランジ66のピン穴86とが対向した状態で、前記ピン駆動機構84に対する通電を停止することにより、図示しないスプリングの弾発作用下に前記ピン82が前記フランジ66側(図5中、矢印C方向)に向かって変位し、前記ピン穴86に挿入される。
【0054】
これにより、前記ピン82によってフランジ66が係止されてその変位が規制されるため、該フランジ66を有する可動アーム部材64が側板38bに対して保持された状態となる。
【0055】
その結果、搬送機構28を含む画像読取装置10を、例えば、車両で搬送する場合においても、吸着手段30がピン駆動機構84から構成されるロック手段36によって確実に保持されているため、前記吸着手段30が前記車両から付与される振動によって他の部材に接触することを阻止することができ、前記吸着手段30を確実に保護することができる。
【0056】
一方、搬送機構28における吸着手段30の保持状態を解除する場合には、ピン駆動機構84に対して通電を停止することにより、該ピン駆動機構84のピン82がスプリングの弾発作用下にフランジ66から離間するように変位するため(図5中、矢印D方向)、前記ピン82がフランジ66のピン穴86より離脱して前記フランジ66の変位が規制されたロック解除状態となる。この際、ピン82は、スプリングの弾発力によって前記ピン穴86から離間した位置で保持される。これにより、フランジ66を有する可動アーム部材64が、ガイド手段32を構成するガイド溝62a、62bに沿って移動可能となる。
【0057】
以上のように、第1の実施の形態では、吸着手段30の変位を規制可能なロック手段36を搬送機構28に設け、前記吸着手段30による蓄積性蛍光体シートSの吸着作業が行われず、且つ、例えば、搬送機構28を含む画像読取装置10を搬送する場合に、前記ロック手段36のピン駆動機構84を駆動させ、前記吸着手段30を構成する可動アーム部材64のフランジ66を係止することにより前記吸着手段30を保持することができる。
【0058】
このように、搬送機構28にロック手段36を設けることにより、必要に応じて吸着手段30の変位を簡便且つ確実に規制することができるため、従来、吸着手段の変位を防止するために用いられていた押え治具を不要とし、該押え治具に要していたコストを削減することができると共に、前記押え治具を画像読取装置毎に装着して吸着手段を固定するという煩雑な作業を不要とすることができる。
【0059】
すなわち、搬送機構28に対して振動が付与された場合にも、ロック手段36によって吸着手段30が側板38bに対して簡便且つ確実に保持されているため、前記振動から保護することが可能となる。
【0060】
次に、第2の実施の形態に係るシート体用搬送機構150を図6及び図7に示す。なお、以下に示す第2〜第4の実施の形態では、上述した第1実施の形態に係るシート体用搬送機構28と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0061】
このシート体用搬送機構150では、ロック手段152として、一組のガイド溝62a、62bにそれぞれ係合凹部(凹部)154a、154bを設け、吸着手段30を構成する可動アーム部材64に固着された第1及び第2支軸68、70を前記係合凹部154a、154bに係合させることにより、前記可動アーム部材64の変位を規制している点で、第1の実施の形態に係るシート体用搬送機構28と相違している。
【0062】
このシート体用搬送機構150の係合凹部154a、154bは、一組のガイド溝62a、62bに対してそれぞれ下方に向かって半円状に窪んで形成される。係合凹部154a、154bは、第1及び第2支軸68、70の直径と略同等若しくは若干だけ大きく形成されると共に、吸着手段30のフランジ66に対して所定間隔離間し且つ斜めに配置された前記第1及び第2支軸68、70の位置に対応して形成される。
【0063】
すなわち、側板38bの下方側となる一方のガイド溝62aに形成された係合凹部154aが、上方側となる他方のガイド溝62bの係合凹部154bに対して装填口56側に所定距離だけオフセットして斜め方向に設けられている。
【0064】
また、この係合凹部154a、154bは、吸着手段30が初期位置となった際に、第1及び第2支軸68、70が係合可能な位置に形成される。
【0065】
このように、一組のガイド溝62a、62bに対してそれぞれ係合凹部154a、154bを設け、前記ガイド溝62a、62bに沿って変位する可動アーム部材64の第1及び第2支軸68、70を係合させることにより、前記第1及び第2支軸68、70を介して可動アーム部材64のガイド溝62a、62bに沿った変位が規制される。換言すれば、可動アーム部材64を有する吸着手段30が、側板38bに対して保持された状態となる。
【0066】
そのため、シート体用搬送機構150を含む画像読取装置10を、例えば、車両で搬送する場合においても、吸着手段30が係合凹部154a、154bから構成されるロック手段152によって簡便且つ確実に保持され、前記吸着手段30が前記車両から付与される振動によって他の部材に接触することを防止することができ、前記吸着手段30が確実に保護される。
【0067】
一方、ロック手段152による吸着手段30の保持状態を解除する場合には、吸着手段30に対してガイド溝62a、62bに沿って変位させるように駆動手段34の駆動力を付勢する。これにより、可動アーム部材64の第1及び第2支軸68、70が、係合凹部154a、154bから離脱するように変位してガイド溝62a、62bへと移動する。詳細には、第1及び第2支軸68、70が、駆動手段34の駆動作用下に係合凹部154a、154bの内壁面に沿って上方へと変位して再びガイド溝62a、62bに係合された状態となる。
【0068】
これにより、吸着手段30の第1及び第2支軸68、70が係合凹部154a、154bに係合され、前記可動アーム部材64の変位が規制されたロック状態が解除されるため、可動アーム部材64から構成される吸着手段30が、ガイド手段32を構成するガイド溝62a、62bに沿って移動可能となる。
【0069】
次に、第3の実施の形態に係るシート体用搬送機構200を図8に示す。
【0070】
このシート体用搬送機構200では、可動アーム部材64の変位を規制可能なロック手段202として該可動アーム部材64を吸引可能な磁性体204を設けている点で、上述した第1及び第2の実施の形態に係るシート体用搬送機構28、150と相違している。
【0071】
このロック手段202として機能する磁性体204は、例えば、永久磁石からなり、側板38bの内側面に装着される。詳細には、この磁性体204は、吸着手段30が初期位置となった際にフランジ66と対向するように設けられる。すなわち、前記フランジ66が第1及び第2支軸68、70のガイド溝62a、62bのガイド作用下に変位する際の変位軌跡と対向する位置に設けられ、前記フランジ66が磁性体204と対向した際に、該磁性体204の磁力によって前記フランジ66が吸引される。
【0072】
なお、前記磁性体204は、前記フランジ66と所定間隔離間するように設けられ、前記磁性体204とフランジ66とが接触することがない。
【0073】
これにより、シート体用搬送機構200における側板38bに対して磁性体204を装着するという簡素な構成で、前記磁性体204の磁力によってフランジ66を保持可能となり、該フランジ66を有する可動アーム部材64を側板38bに対して簡便且つ確実に保持することができる。
【0074】
その結果、シート体用搬送機構200を含む画像読取装置10を、例えば、車両で搬送する場合にも、吸着手段30が磁性体204からなるロック手段202によって確実に保持されるため、前記吸着手段30が前記車両から付与される振動によって他の部材に接触することを防止することができ、前記吸着手段30を確実に保護することができる。
【0075】
次に、第4の実施の形態に係るシート体用搬送機構250を図9に示す。
【0076】
この第4の実施の形態に係るシート体用搬送機構250では、可動アーム部材64の変位を規制可能なロック手段252として、側板38bの外側面にリンクアーム54の回動動作を規制可能な保持部材254を設けている点で、上述した第1〜第3の実施の形態に係るシート体用搬送機構28、150、200と相違している。
【0077】
このロック手段252として機能する保持部材254は、例えば、断面略L字状となるプレート状の板ばねからなり、その一端部が側板38bに対して固定されると共に、他端部が前記一端部を支点として撓曲自在に設けられる。保持部材254は、固定された一端部から下方に向かって所定角度傾斜した延在部256と、前記延在部256の端部から上方に向かって略直角に折曲した折曲部258とを含む。
【0078】
そして、可動アーム部材64から構成される吸着手段30が初期位置にある場合に、折曲部258を介してリンクアーム54の他端部を保持する。これにより、保持部材254によってリンクアーム54の回動動作が規制されるため、該リンクアーム54に接続された可動アーム部材64が変位することがない。これにより、シート体用搬送機構250における側板38bに対して保持部材254を装着するという簡素な構成で、前記保持部材254によってリンクアーム54を保持可能となり、該リンクアーム54の回動作用下にガイド手段32に沿って移動する可動アーム部材64を側板38bに対して簡便且つ確実に保持することができる。
【0079】
その結果、シート体用搬送機構250を含む画像読取装置10を、例えば、車両で搬送する場合にも、吸着手段30が保持部材254からなるロック手段252によって確実に保持されるため、前記吸着手段30が前記車両から付与される振動によって他の部材に接触することを防止することができ、前記吸着手段30を確実に保護することができる。
【0080】
なお、上述した第1〜第4の実施の形態では、ロック手段36、152、202、252を、側板38bの一方のみに設けた場合について説明したがこれに限定されるものではなく、側板38aの他方のみに設けるようにしてもよいし、一組の側板38a、38bの両方にそれぞれ設けるようにしてもよい。これにより、単一のロック手段36、152、202、252をで吸着手段30の変位を規制する場合と比較し、一組のロック手段36、152、202、252によって前記吸着手段30の変位をより一層確実に規制することが可能となる。
【0081】
また、上述の説明では、画像読取装置10を車両に搭載して移送する場合について説明したが、該画像読取装置10に対して振動が付与されるような環境であれば特に車両に搭載される場合に限定されず、吸着手段30の変位をロック手段36、152、202、252によって好適に規制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシート体用搬送機構が適用された画像読取装置の概略縦断面説明図である。
【図2】図1のシート体用搬送機構の概略斜視図である。
【図3】図2に示すシート体用搬送機構の概略側面図である。
【図4】図2に示すシート体用搬送機構の拡大斜視図である。
【図5】ロック手段を構成するピン駆動機構のピンが、吸着手段のフランジに係合され、前記吸着手段の変位が規制された状態を示す拡大断面図である。
【図6】第2の実施の形態に係るシート体用搬送機構の拡大側面図である。
【図7】図6のシート体用搬送機構において、ガイド溝の係合凹部に吸着手段の第1及び第2支軸が係合され、前記吸着手段の変位が規制された状態を示す側面図である。
【図8】第3の実施の形態に係るシート体用搬送機構の拡大斜視図である。
【図9】第4の実施の形態に係るシート体用搬送機構の側面図である。
【符号の説明】
【0083】
10…画像読取装置 12…装置本体
14…カセッテ 16…カセッテ装填部
18…読取部 20…消去部
28、150、200、250…シート体用搬送機構
30…吸着手段 32…ガイド手段
34…駆動手段
36、152、202、252…ロック手段
38a、38b…側板 50…回転軸
52…旋回アーム 54…リンクアーム
56…装填口 62a、62b…ガイド溝
64…可動アーム部材 66…フランジ
68…第1支軸 70…第2支軸
72…連結部材 74a、74b…吸着盤
80…孔部 82…ピン
84…ピン駆動機構 86…ピン穴
88、88a…搬送路 90…ローラ対
92…消去ユニット 96…副走査搬送機構
98…走査ユニット 100…読取ユニット
154a、154b…係合凹部 204…磁性体
254…保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理装置内でシート体を搬送するためのシート体用搬送機構において、
ケーシングと、
前記ケーシングの内部に配設され、前記シート体を吸着保持する吸着盤を有する吸着手段と、
前記吸着手段を所定の搬送軌跡に沿って案内するガイド手段と、
前記吸着手段を前記ガイド手段の案内作用下に移動させる駆動手段と、
前記吸着手段の変位を規制する変位規制手段と、
を備え、
前記変位規制手段は、前記ガイド手段に沿って案内され、前記吸着盤が装着される可動アーム部材の端部に設けられる第1規制部と、前記ケーシングに前記第1規制部と対向して設けられる第2規制部とからなることを特徴とするシート体用搬送機構。
【請求項2】
請求項1記載のシート体用搬送機構において、
前記第1規制部は、前記可動アーム部材の端部に開口した孔部からなり、前記第2規制部は、前記第1規制部側に向かって進退自在に設けられ、前記孔部に対して挿入可能な係止ピンからなることを特徴とするシート体用搬送機構。
【請求項3】
請求項1記載のシート体用搬送機構において、
前記第1規制部は、前記可動アーム部材の端部に設けられ前記第2規制部側に突出した係止軸からなり、前記第2規制部は、前記ガイド手段のガイド溝に形成され前記係止軸が係合される凹部からなることを特徴とするシート体用搬送機構。
【請求項4】
請求項1記載のシート体用搬送機構において、
前記第2規制部は、磁性体からなることを特徴とするシート体用搬送機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−186316(P2007−186316A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7354(P2006−7354)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】