説明

シート供給印刷機におけるシートの供給を実現又は制御するために周囲圧力と異なる圧力を生成して印刷機に供給する方法及び手段

シート供給印刷機において気圧と異なる空気圧力を生成して紙のシートに分配し、それにより印刷機におけるシートの移動を実現するか又は制御する方法であって、シートに作業圧力を放出するために設けられる手段において作業圧力を生成する工程を備える方法を開示する。この方法は、各単一の放出手段から又は各単一組の放出手段から放出される作業圧力を常に検出することに対応して、印刷機の対象シート及び/又は対象プロセスに適し且つ制御又は移送に有効な作業圧力に対する、各単一の放出手段から又は各単一組の放出手段から放出される作業圧力の連続的な調整によって特徴づけられる。同様に、シート供給印刷機のアセンブリであって、印刷機に可動に配置され且つ紙のシートに気圧と異なる圧力を放出するために設けられる手段を備え、放出される作業圧力により印刷機におけるシートの移送を実現するか又は制御するアセンブリを開示する。このアセンブリは、各単一の放出手段から又は各単一組の放出手段から放出される作業圧力を常に検出することに対応して、印刷機の対象シート及び/又は対象プロセスに適し且つ制御又は移送に有効な作業圧力に対する、放出される作業圧力の連続的な調整のための手段を放出手段が備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート供給印刷機における用紙の単数シートの供給に関する。より正確には、請求項1の前文に記載されるように、本発明は環境大気圧と異なる圧力(例えば高圧力(オーバー圧力)又は低圧力(サブ圧力))を生成してシートに放出し、それにより印刷機におけるシートの供給を実現するか又は制御する方法に関する。同様に、添付の装置に関する独立請求項の前文に記載されるアセンブリを更に本発明によって提供する。
【背景技術】
【0002】
印刷生産技術において、印刷機内におけるシートの移動を引き起こし及び/又は制御するために、圧力及び低圧力が、印刷機の異なる位置で通常用いられる。より大きいシート供給印刷機は、シート用供給路の10以上の離れた位置で圧力/低圧力によって作動するように設計され得る。したがって、圧力は例えば、分離の際に及び印刷シリンダアセンブリへの挿入の際にシート間の付着を回避するために、供給方向で見てシートスタックの前端にスロットによって向けられる空気の流れによって、印刷機械の供給端部に置かれたシートの束(スタック)において相互に積み重ねられたシートを分離するために使用され得る。本明細書で言及する圧力の使用に関する他の例は、シートの後端の損傷を引き起こす加速を回避するために、シートの後端が高速回転印刷シリンダ又は供給シリンダ内へ供給されるか又は高速回転印刷シリンダ又は供給シリンダから外へ供給されるときに、供給方向で見てシートの後端に向けられる空気の流れである。本明細書で言及する低圧力の使用に関する典型的な例は、シートのスタックから一番上のシートを分離して供給するために印刷機の供給端部で通常引き起こされるような、シートの持ち上げ及び移動のために操作可能な可動の保持手段による、シートの表面への低圧力の放出である。同様に、バンドコンベヤに支持されるシートの表面に向かって、移動中のシートをバンドコンベヤ上に固定させるために、バンドコンベヤに形成された穿孔を通して低圧力を放出することは公知である。本明細書で言及する低圧力の使用に関する他の具体例は、付着力を生成するためにシートの表面に低圧力を放出する穿孔を有する減速シリンダによって引き起こされるシート排出速度の減速(リタデーション)である。この減速によって、シートの速度は減速シリンダの制御された周速度に等しいか又は近くなるように低下される。
【0003】
印刷機の用途で対象となる低圧力は、完全な真空の状態にはほとんど達しないが、印刷機の異なる場所で環境大気圧の約10%から約80%まで変化する。したがって有効な低圧力は、気圧の局部的な変動、例えば海面より上の対象物の高さと関連した気圧の変動にも関連があるが、気候の変化とも関連する。
【0004】
本発明が主に実施されるシート供給印刷機は、異なる等級、異なる面積当たり重量、異なる用紙寸法(通常A4(210x297mm)〜A0(840x1188mm)の規格判型(フォーマット)、又は更に特別な判型)の紙に単色印刷又は多色印刷するために設計され得る。より小さい判型については、最新のシート供給オフセットプリンタの印刷能力は、約20,000枚/時に達し、より大きなフォーマットについては約10〜12,000枚/時の能力に達し得る。したがって、3m/秒以上のオーダーの移動速度が可能であると同時に、多色印刷における印刷及び割出しの精度は、ずれが最大でも2/100mmであることを必要とする場合がある。紙は、環境の変化、例えば湿度/温度の変化に反応しやすい有機繊維を含む材料であり、環境の変化は、製造、輸送及び保管の間と、特に紙が印刷シリンダ及び供給シリンダ上に供給されながら印刷用インクが塗布される印刷の間、紙の特性に影響を及ぼし得ることが更に知られている。印刷機の高い性能及び紙の特性の変化は、シートを捉えて移動させるために印刷機に設けられる圧力放出手段に、機構及び保持精度に対する高い要求を設けている。
【0005】
印刷機で使用される保持手段は主に、低圧力源に接続された吸着カップである。グリッパは、シートが吸引によって吸着カップに付着するように、シートの表面一面への低圧力の分配をもたらすために、通常セットで設けられる。グリッパは、印刷機内において移動可能であり、保持位置から低圧力が遮断される供給位置まで、シートを持ち上げて移動するために駆動される。印刷機の最大の印刷能力を満たして達成するために、グリッパの動作を駆動する精密且つ信頼性が高い機械構造に加えて、短いサイクル時間が、低圧力システムに必要とされることが分かるであろう。
【0006】
印刷機の低圧力システムは概して、複数の吸着カップへの低圧力の全体の供給を制御する弁を通じて、1セット又は複数セットのグリッパに供給する、集中型の低圧力供給源/真空ポンプを含む。このタイプのシステムにおいて、低圧力供給源と吸着カップの間の距離が、短い動作サイクルを達成する可能性を制限する。これは、長い供給ラインに起因する、吸着カップの低圧力と気圧の間の切り替え(スイッチング)の遅れによるものである。集中型の供給システムはまた、吸着カップにおける漏れを補償し、且つ、表面のテクスチャ、多孔性(空隙率)、重さ、又は、温度及び湿度に敏感な紙に影響を及ぼす他のパラメータに関する様々なシート特性にもかかわらず充分な保持能力を確実にするように、過度の出力で、したがって過度の低圧力で通常は駆動される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、シート供給印刷機を通り抜けるシートの供給を実現するか又は制御するための、印刷機で使用可能なあらゆる手段において、短い動作サイクル及び有効な作業(ワーク)圧力を確実にすることができる方法で達成される。
【0009】
この目的は、添付の請求の範囲に記載の方法で達成される。
【0010】
簡潔には、本発明は、シート供給印刷機において大気と異なる圧力を生成してシートに分配する方法であって、シートに作業圧力を加え、それにより印刷機におけるシートの送り(供給)を実現するか又は制御するために設けられる放出手段において作業圧力を生成する工程を含む方法を提供する。この方法は、各々単一の放出手段から又は放出手段の各々単一のセットから加えられる作業圧力をそれぞれ常に検出することに対応して、印刷機における対象のシート及び/又は対象の処理に適した制御又は送りに有効な作業圧力に合わせて、各々単一の放出手段において又は放出手段の各々単一のセットにおいて加えられる圧力を連続的に調整する工程によって特徴づけられる。
【0011】
好ましい実施形態において、方法は更に以下の工程、すなわち、
高圧で作動されるエジェクタ(排出装置)に駆動圧力を供給する工程と、
エジェクタから放出される作業圧力を検出する工程と、
検出された作業圧力と予め定められた作業圧力の比較に応じて、エジェクタへの駆動圧力を調整する工程と、
を含む。
【0012】
作業圧力の検出は、エジェクタから放出される低圧力(サブ圧力)について又は高圧力(オーバー圧力)について行われる。
【0013】
有利には、各々単一の放出手段において又は放出手段の各々単一のセットにおいて、常に検出される作業圧力と気圧の差が、各々単一の放出手段に又は放出手段の各々単一のセットにそれぞれ個別に配置されるエジェクタへの駆動圧力を比例調整するために使用される。
【0014】
好ましくは、各々単一の放出手段において、エジェクタへの駆動圧力が、対象の放出手段に備えられたマイクロプロセッサに記憶されるSET値に対応する作業圧力の放出をもたらすように調整される。マイクロプロセッサにおいて、検出されたIS値がSET値と比較され、エジェクタへの駆動圧力が、同様に対象の放出手段に備えられた電磁気バルブによってマイクロプロセッサにより調整され、前記弁がエジェクタへの駆動圧力を制御する。
【0015】
エアシステムにおける放出手段への駆動圧力のSET値が、制御装置に記憶され、制御装置により、すべての放出手段が同時に個々のSET値に設定される。シートの種類及び/又は印刷機における動作の種類に対して決定される所定のSET値が、制御装置に記憶される。好ましくは、SET値は、シートの判型(フォーマット)、シートの面積当たりの重量、及びシートの表面平滑性に対して決定される。
【0016】
同様に、シート供給印刷機用のアセンブリが提供される。アセンブリは、印刷機に可動に支持され、且つ、作業圧力によって印刷機を通してのシートの供給を実現するか又は制御するために、気圧と異なる作業圧力をシートに加えるのに有効な放出手段を備える。アセンブリは、各放出手段が、各々単一の放出手段又は放出手段の各々単一のセットからそれぞれ放出される作業圧力を常に検出することに対応して、印刷機の対象のシート及び/又は対象の処理(プロセス)に適した制御又は送りに有効な作業圧力に合わせて、放出される圧力を連続的に調整するための手段を備えることを特徴とする。
【0017】
好ましい実施形態において、アセンブリは、前記放出手段内に、高圧作動されるエジェクタ、エジェクタを作動する圧力を制御する電磁弁、電磁弁を制御するマイクロプロセッサ、及びエジェクタから放出される検出作業圧力に応じてマイクロプロセッサに電気信号を入力するために配置される圧力センサを備える。
【0018】
放出手段は、低圧力の放出に有効な吸引手段として、又は、高圧力の放出に有効な吹出手段として構築される。例えば、放出手段は、吸着カップとして、穿孔されたコンベヤーベルトとして、減速シリンダにおける細長いスロット部として、ノズル又は類似の放出手段として実現されることができ、シートの移動をもたらすために又は制御するために印刷機に設置されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付の概略図を参照して、本発明を更に以下で説明する。
【図1】印刷機におけるシートの供給を実現するか又は制御するために大気と異なる圧力が使用されるシート供給印刷機の長手方向断面図である。
【図2】吸着カップを備え、本発明による方法を実施するために配置される放出手段の断面図である。
【図3】シートが排出される速度を低下するために低圧力によって作動される減速シリンダの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で使用されるように、「放出(排出)される低圧力(サブ圧力)」という語句は、気圧より低い圧力をもたらすことを意図する空気の排出を定義するように読み取られるものとする。「作業(ワーク)圧力」という語句は、気圧と異なる圧力、例えば低圧力(サブ圧力)又は高圧力(オーバー圧力)を定義するように読み取られるものとする。「駆動圧力」という語句は、この詳細な説明においては、エジェクタ(排出装置)を動かすのに有効な高圧を定めるように読み取られるものとする。
【0021】
図1を参照すると、シート供給印刷機が概略的に示されており、このシート供給印刷機では、印刷される紙の複数のシートが全体的な供給方向Dにおいて供給端部から排出端部に向かって個々に供給される。シートのスタック(束)1が供給端部に置かれており、このシートスタックは上下に積み重なる複数のシートを含む。シートスタック1は、印刷機内に可動に配置されるグリッパ(把持部)2に向かってシートスタックを連続して持ち上げることが可能であるように、鉛直の向きに移動可能であってもよい。グリッパ2は、スタックの一番上のシートを1つずつ持ち上げるために、且つ、供給方向において下流に配置される印刷ユニット3へシートを移動するために作動する。シートスタックにおけるシート間の付着を防止するために、持ち上げ及び印刷ユニットへの移動の前にシートを分離するように、供給方向で見てスタックの一番上のシートの前端に高圧力空気を向けるように、ノズル4が配置され得る。更に詳細には開示しないが、印刷ユニット3は従来、着色したインクをシートに塗布するインク転写シリンダ及び印刷シリンダを含む。また、印刷ユニットには、印刷ユニット内の及び印刷ユニットから外へのシートの移動を低圧力及び高圧力によってそれぞれ制御するために有効なシリンダ及びノズルが含まれ得る。多色印刷機は通常、赤、黄色、青及び黒の色ごとに、少なくとも1つの印刷ユニットを備える。
【0022】
印刷機内での又は印刷機と任意の補助装置の間でのシートの直線移動を提供するために、貫通する穿孔を備えるエンドレスコンベヤーベルト5を形成することができ、移動の間のコンベヤーベルトへのシートの固定のために、穿孔を通してシート表面に低圧力が放出される。更に、印刷機の排出端部には、穿孔されたシリンダ壁を備える減速シリンダ6を形成することができ、吸引によりシートをシリンダに付着させるために、シートを強制してシート自身の移動速度を減速シリンダの制御された周速度に合わせて調整するように、穿孔されたシリンダ壁を通してシート表面に向かって低圧力が放出される。
【0023】
上記の全体的な説明は単に本発明の用途の分野の概略的な説明であって、最新のシート供給オフセット印刷機の包括的且つ詳細な説明をすることを意図していない点に留意すべきである。
【0024】
図2を参照すると、断面図で示されるグリッパ2が、印刷機におけるシートの移動をもたらすか又は制御するために、紙のシートの表面に低圧力を加え、低圧力によりシートを保持するために設けられる。グリッパは、漏斗のような吸着カップ7を備え、吸着カップ7は、その外縁エッジ8が、シートの表面と密封接触するように、且つ、下記でより細かく説明するように低圧力が放出されるキャビティ9の境界を定めるように成形される。
【0025】
低圧力はグリッパに、吸着カップのキャビティ9と内部で流体連通するチャネル10を介して供給される。チャネル10内に圧力センサ11が配置され、圧力センサは、チャネル10にひいてはキャビティ9に存在する作業圧力を常に検出する。好ましくは、圧力センサ11は、チャネル10内の現在の圧力と気圧の差を検出する圧力差センサである。例えば、圧電センサ、又は少なくとも+/−1バールの圧力差を感知できる他の圧力変換器(圧力トランスジューサ)を使用することができる。チャネル10において検出される作業圧力は、電気信号の形で圧力センサ11からマイクロプロセッサ12まで送られるIS値である。マイクロプロセッサにおいて、IS値は、対象のグリッパ及び対象の用途に対して予め設定されたSET値と比較される。SET値は、予め設定された、有効な作業圧力であり、少なくとも対象である紙の単一シートの判型(フォーマット)及び重量に対して決定され、また適当な場合には、グリッパの動作に関連する他のパラメータ(対象である紙のシートの表面平滑性、コーティング、湿度要因、平面性、多孔性など)に対して決定される。
【0026】
これに関連して、異なるタイプの紙シート及び/又は異なるタイプの印刷手順に対する所定のSET値を制御装置に記憶することができ、例えば、紙シートの判型の交換と関連して、又はコーティングした紙とコーティングしてない紙との交換などで、印刷機を切り替えるときに、制御装置からSET値が求められて、マイクロプロセッサ12にSET値の信号が送られることについて述べる。印刷機における異なるタイプの生産物に対するSET値は、プロセス交換の際の、低圧力システムのすべての作業圧力放出手段の同時設定のためにマトリックスで記憶されることができる。
【0027】
SET値とIS値の差が検出されると、差の大きさに比例した電気信号がマイクロプロセッサ12から電気磁気弁13へ出力される。弁13は、グリッパ2への低圧力の供給を制御する。集中型低圧力システムにおいて、弁は、グリッパとシステムに低圧力を供給するために専用されるチャネルとの流体連通(フローコミュニケーション)を比例的に絞るために設けられ得る。
【0028】
本発明で好ましく教示されることによれば、グリッパを介して加えられる低圧力は、高圧の空気によって作動され且つそれ自体は公知であるエジェクタ(排出装置)によって生成される。したがって弁13は、エジェクタ14への高圧Pの供給の調整のために配置され、エジェクタの効率は、放出される作業圧力において所定のSET値を維持するためにこのように調整可能である。グリッパの現在の作業圧力を連続的にモニタすることによって、また連続的に且つ比例的にエジェクタの効率を調整することによって、一定の作業圧力をもたらすことができるだけでなく、対象の紙シートに常に適合する有効な作業圧力をもたらすことができる。
【0029】
有利には、エジェクタ14は、グリッパとの一体化に適しているより小さいサイズの多段エジェクタである。それぞれの単一のグリッパは、対象の用途に適した作業圧力をこのように個別に供給される。また、グリッパとエジェクタを駆動する高圧供給源の間の距離はもはや重大でない。さらにまた、集中型低圧力システムと関連する、1つ又はいくつかのグリッパにおけるいかなる漏れにもかかわらず充分な作業圧力を確実にするために、グリッパにおいて低圧力を過度に大きくする必要性を、このように回避することができる。グリッパにおける一体化又は取付けに適したミニポンプのいくつかの例が入手できる。本願明細書に例示される回転対称形のエジェクタ14は、単に1つの例であるが好ましいものであり、このエジェクタは、商品名COAX(登録商標)で出願人により製造されるエジェクタと一致して特に一体化に適している。当業者に公知であるそのエジェクタのより詳細な説明は、EP1064464Blから入手でき、したがって詳細な説明は本明細書では必要とされない。
【0030】
既に説明したように、それぞれの単一のグリッパを専用のポンプ/エジェクタによって個別に作動することができる一方で、グリッパに作業圧力をもたらすために空にする(排気する)必要がある空気のボリュームを、集中型低圧力システムの中央に置かれる低圧力供給源への流体連通に起因する死容積(デッドボリューム)と比較して、かなり低減することができる。このようにして、最新のシート供給オフセット印刷機の最大能力とよく調和する、極めて短い動作サイクルが得られる。
【0031】
グリッパの作業圧力の個別の高度な調整は、更に、加えられる作業圧力を紙のシートの局部的な変化に対して適合することができるという効果を提供する。このような局部的な変化は、さもなければ、正しくシートを保持するためのグリッパの能力を危うくする可能性がある。また、充分な保持能力を確実にするために必要以上に大きい作業圧力でグリッパを作動する必要性をこのように回避することができ、これにより、過大な作業圧力によって生じるシートの損傷の危険性も回避される。
【0032】
この効果による一部の利益は、単一の又はいくつかのグリッパが共通のエジェクタによってセットで駆動されるときにも、前記エジェクタがグリッパのセットの近くに置かれるか又はグリッパのセットのうちの1つのグリッパに組み込まれる場合にも、得ることが可能である。シートのスタック1から印刷ユニット3まで紙の個々のシートを持ち上げて移動するために、通常、多くのグリッパ2は、作業圧力をシートの表面に分配する、異なるサイズを有するマトリックスで構成される。この目的のため、マトリックスに含まれるすべてのグリッパを、それぞれのグリッパのための別個のポンプで、個々に作動することができる。或いは、マトリックスに含まれる一組のグリッパのための共通のポンプにより、いくつかのグリッパを一緒に(共同で)作動することができる。いずれの場合においても、外部の制御装置に記憶され且つ対象のシートサイズと調和するSET値の対応するマトリックスによってなされる選択の結果、作業圧力が調整される。したがって、マトリックスのすべてのグリッパの動作を必要としない判型を印刷するときは、グリッパのセット又は個々のグリッパを非作動状態又は非加圧状態に制御することができる。
【0033】
グリッパ2に関連して既に説明したことと対応して、減速シリンダ6が、印刷機の対象のプロセスに適合する一定の作業圧力を提供するために設けられ得る。減速シリンダ6は、基本的に、回転を(順番に)駆動されるシリンダであって、軸方向において複数の部分(セクション)15に分割されている。セクション15は穿孔されたシリンダ壁16を備える。穿孔されたシリンダ壁16を通して、紙のシートの表面に、シリンダ上のシートの移動を実現するか又は制御するために作業圧力が分配される。より詳しくは、減速シリンダは、供給方向で見て最後のものである印刷ユニットから排出される印刷されたシートの供給速度を低下させるために有効である。前述したように、供給速度は、A0のシート判型に対して3m/秒のオーダーに達する場合があるが、そのオーダーの速度は、急停止の場合にシートに損傷を引き起こす危険性がある。端部ストッパに激しくぶつかることを回避するために、減速シリンダは、シートが減速シリンダの制御された周速度まで減速されるか又は周速度に近くなるよう促すように、シリンダ表面に向けての紙のシートの吸引のために作動される。減速シリンダのセクションが区切られて、各々から切り離されてもよく、各セクションがそれぞれのセクションのための別々のポンプ/エジェクタで個別に作動されてもよい。グリッパ2の先の説明と同様に、減速シリンダの複数のセクションは、一組のセクションに対して共通のポンプ/エジェクタによりセットで作動される場合がある。作業圧力は、減速シリンダの中心を通ってセクションへ、或いは、作業圧力を供給するために配置されるチャネル17を通って減速シリンダの周辺部へ転送される。前記チャネルに又は前記チャネルとの直接の連絡通路(コミュニケーション)に、圧力センサ11が上記のように対応して配置され、マイクロプロセッサ12及び電気磁気弁13を介して、対象のセクションに作業圧力を供給する高圧作動エジェクタ14用の駆動圧力を調整する。
【0034】
減速シリンダのセクションは、偏差が検出された場合に、各種の紙シート又は印刷機において作動される各種のプロセスに対して決定されるSET値に対応する作業圧力を維持するか又は再設定するために、このように個別に又はセットで制御される。減速シリンダの全長にわたって異なる作業圧力を調整して分配するこの能力の効果及び必要性は、紙シートの面積当りの重量が、塗布された印刷用インクの結果、シートの非インク部分と比較して局所的にかなり変化するという事実により説明され、認められている。付加された重量は結果的に運動エネルギーの増加となり、不均一にインクが塗られた場合、運動エネルギーの増加によりシートの位置ずれが生じる可能性がある。減速シリンダに、より高い作業圧力の場所を設け、それによりリタデーション能力を増大することによって、このような位置ずれを打ち消すことができ、排出されるシートの正確なスタッキング(積み重ね)が達成できる。
【0035】
上述したものと同様に更に、本発明の基本的な教示は、吹出手段(例えばノズル4又はシート供給印刷機に含まれる他の任意の吹出手段)に所定の作業圧力を設定して維持するために適用され得る。このような場合、圧力センサ11は、言うまでもなくエジェクタからの放出口Vに置かれ、圧力センサは、気圧とエジェクタから放出される高圧力の差を検出する。グリッパ及び減速シリンダの前記説明によれば、エジェクタの駆動圧力Pの調整は、マイクロプロセッサにおいて予め設定されるSET値を維持するために、上記の通りに達成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気圧と異なる圧力を生成して、シート供給印刷機内の紙のシートに分配する方法であって、シートに作業圧力を放出するために設けられる手段において作業圧力を生成し、それにより印刷機におけるシートの移動を実現するか又は制御する工程を備え、
高圧作動されるエジェクタ(14)に駆動圧力を供給する工程と、
前記エジェクタから放出される作業圧力を検出する工程と、
前記検出された作業圧力と予め設定された作業圧力の比較に応じて前記エジェクタに供給される駆動圧力を調整し、それにより、対象のシート及び/又は印刷機の対象のプロセスに適した、制御又は移動に有効な作業圧力に対する、それぞれの単一の放出手段から又は放出手段のそれぞれの単一のセットから放出される作業圧力の連続的な調整を、それぞれの単一の放出手段から又は放出手段のそれぞれの単一のセットから放出される作業圧力を常に検出することに応じて達成する工程と、によって特徴づけられる方法。
【請求項2】
前記作業圧力の検出が前記エジェクタから放出される低圧力に関して行われることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項3】
前記作業圧力の検出が前記エジェクタから放出される高圧力に関して行われることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項4】
それぞれの単一の放出手段において又は放出手段のそれぞれの単一のセットにおいて、常に検出される作業圧力と気圧の差が単一の放出手段に又は放出手段の単一のセットに設けられるエジェクタに供給される駆動圧力の比例調整に使用されることを特徴とする、請求項1又は2の方法。
【請求項5】
それぞれの単一の放出手段において、対象の放出手段に設けられたマイクロプロセッサにおいて設定されたSET値に対応する作業圧力を放出するように前記エジェクタへの駆動圧力を制御することと、前記マイクロプロセッサが検出されたIS値を予め設定されたSET値と比較することと、前記マイクロプロセッサが前記対象の放出手段に支持される電磁弁を介して前記エジェクタへの駆動圧力を調整し、前記エジェクタへの駆動圧力の供給を制御することを特徴とする、請求項4の方法。
【請求項6】
前記エアシステムに含まれる前記放出手段用のための作業圧力のSET値を制御装置において記憶し、それにより、すべての放出手段を、同時に各放出手段のための個々のSET値に設定することを特徴とする、請求項5の方法。
【請求項7】
前記印刷機において処理される紙シートの種類及び/又はプロセスの種類に適した予め設定されたSET値を制御装置において記憶することを特徴とする、請求項6の方法。
【請求項8】
シート供給印刷機のアセンブリであって、前記印刷機内に可動に配置され且つ紙のシートに気圧と異なる圧力を放出するために設けられ、放出される作業圧力により前記印刷機内におけるシートの移動を実現するか又は制御する手段を備え、
高圧作動されるエジェクタが前記放出手段に支持される点と、
前記エジェクタへの駆動圧力の供給が調整可能である電気磁気弁と、
前記電気磁気弁を制御するマイクロプロセッサと、
前記エジェクタから放出される作業圧力に対応する電気信号の、マイクロプロセッサへの出力のために配置される圧力センサと、
を特徴とし、それにより、それぞれの単一の放出手段から又は放出手段のそれぞれの単一のセットから放出される作業圧力を常に検出することに応じて、印刷機における対象のシート及び/又は対象の処理に適した、制御又は移動のために有効な作業圧力に対する、放出される作業圧力の連続調整のために前記放出手段が配置される、アセンブリ。
【請求項9】
前記放出手段が低圧力を放出するために有効な吸引手段であることを特徴とする、請求項8のアセンブリ。
【請求項10】
前記放出手段が高圧力を放出するために有効な吹出手段であることを特徴とする、請求項8のアセンブリ。
【請求項11】
前記放出手段が吸着カップであることを特徴とする、請求項9のアセンブリ。
【請求項12】
前記放出手段が穿孔されたコンベヤーベルトであることを特徴とする、請求項9のアセンブリ。
【請求項13】
前記放出手段が減速シリンダの一部分であることを特徴とする、請求項9のアセンブリ。
【請求項14】
前記放出手段が送風ノズルであることを特徴とする、請求項10のアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−543748(P2009−543748A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520708(P2009−520708)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000685
【国際公開番号】WO2008/010763
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(504070675)
【Fターム(参考)】