説明

シート取付構造

【課題】小型バスの最後列シートのシート取付構造において、十分な強度を維持しつつ、トランクルームへの荷物の搭載性を向上させること。
【解決手段】下方が開口した略U字状のフレームの開口端部を車幅方向略全域に延在したリヤ着座用フレーム46に連結したシート20の背凭れ用フレーム41と、背凭れ用フレーム41の下端に車両前後方向に配設され後部が連結したシート20の着座用フレーム42と、着座用フレーム42の下方に車幅方向に延在し、両端部が車体内側部に固着される梯子状のサポート部材80とを備え、サポート部材80に着座用フレーム42を載置・固定するとともに、着座用フレーム42の車体100の内側部に対向した部分をシートレール108に固着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両最後列シートのシートクッション下部にトランクルームを配設し、該トランクルーム後部で車両のリヤウィンドウが形成されたリヤボディにトランクリッドが設けられた車両、例えば小型バスの最後列シートのシート取付構造に関し、特に十分に強度・剛性をもって取り付けられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
小型バスの最後列シートには、左右にそれぞれ2人掛け用のシートが設置されたものがある。図9は、このようなシートを小型バスに取り付けるための取付構造の一例を示す断面図である。なお、図9中100はボディ、200はシートを示している。
【0003】
車体100は、床構造部材101と、リアボディ102とを備えている。リアボディ102の上部にはリアウインドウ103、下部には開口部104が設けられ、この開口部104には開閉自在のトランクリッド105が取り付けられている。
【0004】
シート200は、シートクッション210と、このシートクッション210を支持するシートフレーム220とを備えている。支持部材シートフレーム220は、中央脚240及び後脚250によって床構造部材101上に支持されている。また、図9に示すようにシート200の真下にはトランクルーム106が形成されている。
【0005】
図10はシートフレーム220を示す斜視図である。シートフレーム220は、車幅方向へ略U字状に形成されて下方が開口して配置される左右の背凭れ用フレーム221、221を隣接して配置し、隣接する背凭れ用フレーム221、221の夫々の開口端を着座用フレーム222によって結合する。また、背凭れ用フレーム221の頂部中央にはそれぞれへッドレストフレーム223が取り付けられ、片側の肩部にはシートべルトの折返部を形成するシートべルトショルダ224が設けられている。
【0006】
着座用フレーム222は、フロント着座用フレーム225とリヤ着座用フレーム226とを有し、車幅方向の両側にはサイドフレーム227、228がそれぞれ設けられて、略四角形状態のフレーム構造を形成している。左右のサイドフレーム227、228にはそれぞれシートべルトバックル230、231が取り付けられ、車幅方向の中央部に設けられたセンターフレーム232には、3点式シートべルトのファイナルアンカ233が左右用それぞれ取り付けられている。
【0007】
また、後脚250は、センターフレーム232とリヤ着座用フレーム226との接合部分に取り付けられて床面に向かって立設されている。3点式シートべルトのリトラクタ234を取り付けるリトラクタブラケット235は後脚250の近傍のリヤ着座用フレーム226に固着されて下方に伸びて取り付けられている。
【0008】
シート200の車体100への取り付け構造は、車体内側のサイドフレーム227は、該サイドフレーム227に固着された中央脚240によって床構造部材101に取り付けられ、車体外側のサイドフレーム228は、該サイドフレーム228に固着されたサイドボディ取付ブラケット241によって車体の側壁面の強度部材(不図示)に直接ボルトによって取り付けられる。
【0009】
後脚250は、リトラクタ234への入力荷重を床構造部材101へと伝達するために設けられている。
【0010】
一方、先行技術として、バスの車両において、車体に直接シートを取り付けるために、バスのフェンダ部等の斜面上に取り付けられる座席に用いて好適なシートフレーム構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、路線バスにおいて、タイヤハウスの上や段差部分に取り付けることができる折りたたみ式のシート構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−272388号公報
【特許文献2】特開2002−102002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したシート取付構造では、次のような問題があった。すなわち、図9,10に示すシート200においては、3点式シートべルトへの入力荷重を支持するとともに、シート200自体の車体100への取付強度を増すために、後脚250を車体強度部材に取り付ける必要があり、この後脚250はシート200の車幅方向の略中央に位置するため、トランクルーム106の内部空間を上下方向に貫通して取り付けなければならず、トランクルーム106を左右に2分割する構造となり、トランクルーム106への荷物の搭載性が悪化する問題を有していた。
【0012】
一方、上述した先行技術には、バス車体へ脚部を介さずに、又は前側の脚部だけでシートを固定する技術が示されているだけであり、リトラクタ内蔵のシート構造やシートクッションの下方にトランクルームを形成するシート構造までは示されていない。
【0013】
そこで、本発明は、車両最後列シートのシートクッション下部にトランクルームを配設し、該トランクルーム後部で前記車両のリヤウィンドウが形成されたリヤボディにトランクリッドが設けられた車両、特に小型バスの最後列シートのシート取付構造において、十分な強度を維持しつつ、トランクルームへの荷物の搭載性を向上させるシート取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のシート取付構造は次のように構成されている。
【0015】
(1)車両最後列シートの下部にトランクルームを配設した車両におけるシート取付構造において、下方が開口した略U字状のフレームの開口端部を車幅方向略全域に延在した強度部材に連結した複数の上記シートの背凭れ用フレームと、上記背凭れ用フレームの下端に車両前後方向に配設され後部が連結した複数の上記シートの着座用フレームと、上記着座用フレームの下方に車幅方向に延在し、両端部が車体内側部に固着される梯子状のサポート部材とを備え、上記サポート部材に上記着座用フレームを載置・固定するとともに、上記着座用フレームの上記車体内側部に対向した部分を上記車体内側部に固着した。
【0016】
(2)(1)において、上記サポート部材は、車両前後方向に間隔を有し、車幅方向へ略平行に延在する長部材と、車両前後方向に上記長部材を架橋する短部材とを備え、上記長部材及び短部材は、断面が略矩形状の閉断面構造のパイプ材にて構成されている。
【発明の効果】
【0017】
(1)に記載したシート取付構造によれば、シートの取付強度を得るための脚部を設けることなく、十分な強度で車体に取り付けることができる。このため、トランクルーム内に突出する部材が無くなり、車体構造の大幅な変更を行うことなく、トランクルームへの荷物の搭載性を向上させることができる。
【0018】
(2)に記載したシート取付構造によれば、サポート部材の重量を大幅に増すことなく、十分な強度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明の一実施の形態に係るシート取付構造により取り付けられた後部座席シート10が組み込まれた小型バス1を示す斜視図、図2はシート20のシートフレーム40を示す斜視図、図3はシートフレーム40とサポート部材80とを分解して示す斜視図、図4は同小型バスの後部座席シートにおける締結位置を示す説明図、図5は同後部座席シートを図4におけるB−B線で切断して矢印方向に見た断面図、図6は同後部座席シートにおける三点シートベルトの取付構造を示す斜視図、図7は同後部座席シートの要部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)中C−C線で切断して矢印方向に見た断面図、図8は同後部座席シートとトランクルーム106との位置関係を示す説明図である。なお、これらの図において図9,10と同一機能部分には同一符号を付した。
【0020】
図1に示すように、小型バス1は、車体100を備え、内部に座席シート(不図示)を備えている。これらの座席シートのうち、図1中A部分で示す最後列シート10は、左右に2人掛け用のシート20が設置されている。
【0021】
車体100は、床構造部材101と、リアボディ102とを備えている。リアボディ102の上部にはリアウインドウ103、下部には開口部104が設けられ、この開口部104には開閉自在のトランクリッド105が取り付けられている(図8参照)。また、車体100は側壁部107を備え、側壁部107の内側面には車両前後方向に延びるシートレール108が設けられている。
【0022】
シート20は、シートクッション30と、このシートクッション30を支持するシートフレーム40とを備えている。シートフレーム40は、その一部が後述するブラケット49を介して、他の一部がはしご状のサポート部材80によってシートレール108を介して側壁部107に支持されている。
【0023】
シートフレーム40は、車幅方向へ略U字状に形成されて下方が開口して配置される左右の背凭れ用フレーム41を隣接して配置し、隣接する背凭れ用フレーム41の夫々の開口端を着座用フレーム42によって結合する。また、背凭れ用フレーム41の頂部中央にはそれぞれへッドレストフレーム43が取り付けられ、片側の肩部にはシートべルト50の折返部を形成するシートべルトショルダ44が設けられている。
【0024】
着座用フレーム42は、フロント着座用フレーム45とリヤ着座用フレーム46とを有し、車幅方向の両側にはサイドフレーム47、48がそれぞれ設けられて、略四角形状態のフレーム構造を形成している。図4に示すように、サイドフレーム48にはシートレール108とネジ止め結合するためのブラケット49が設けられている。
【0025】
図6中50はシートベルトを示している。左右のサイドフレーム47、48にはそれぞれシートべルトバックル51が取り付けられ、車幅方向の中央部に設けられたセンターフレーム52には、3点式シートべルトのファイナルアンカ53が左右用それぞれ取り付けられている。
【0026】
サイドフレーム47及びセンタフレーム52には、図3に示すように、後述するサポート部材80のブラケット83にネジ止め固定するためのブラケット54がそれぞれ取り付けられている。さらに、リヤ着座用フレーム46には、シートべルト用のリトラクタ61がボルト固定されるリトラクタブラケット60が設けられている。
【0027】
また、車幅方向に隣接する背凭れ用フレーム41間を背凭れ用フレーム41の高さ方向の中央部から上端部の間において連結するリヤボディ取付ブラケット65を設け、リヤボディ取付ブラケット65は略コ字状断面形状をして対向辺部分がそれぞれの背凭れ用フレーム41の縦フレーム部41aの部分で結合している。
【0028】
図6のP矢視図を示す図7の(a)、及び、この図7の(a)におけるC−C線断面図を示す図7の(b)に示すように、リヤボディ取付ブラケット65にはL字断面形状をしたシート側ブラケット67の一辺部がボルト68で取り付けられ、他の一辺がリヤボディ102側に張り出すようにして取り付けられている。
【0029】
また、シート側ブラケット67に対向するリヤボディ102には、L字断面形状をしたボディ側ブラケット69が、その一辺部をリヤボディ102にボルト70で取り付け、他の一辺をシート側に張り出すようにして取り付けられている。そして、シート側ブラケット67の他の一辺と、ボディ測ブラケット69の他の一辺とはそれぞれ略L字状の1辺部で略平板状に形成されて、かつ締結用孔71が形成され、締結用孔71は上下方向に重合されて締結用のボルト73で締結されるようになっている。
【0030】
この上下方向の重合はボディ側ブラケット69の他の一辺の上側にシート側ブラケット67の他の一辺が載置される。そして、ボルトの挿入側と反対側の面、すなわち、ボディ側ブラケット69の他の一辺の裏側にはナット72が螺着されている。
【0031】
サポート部材80は、図2,3に示すように、車両前後方向に間隔を有し、車幅方向へ略平行に延在する長部材81と、車両前後方向に長部材81を架橋する短部材82とを備えている。長部材81及び短部材82は、断面が略矩形状の閉断面構造のパイプ材にて構成されており、高い強度を有している。
【0032】
長部材81の短部材82が設けられている位置又は、その近傍には、前述したブラケット54を取り付けるためのブラケット83が取り付けられている。さらに長部材81の車幅方向端部には前述したシートレール108にネジ止め固定するためのブラケット84が取り付けられている。
【0033】
次に、シート20の取り付け手順について説明する。すなわち、サポート部材80のブラケット84をシートレール108に取り付ける。次に、シートフレーム40を載置する。そして、サポート部材80のブラケット84及びシートフレーム40のブラケット49をシートレール108にネジ止め固定する。最後にシートフレーム40のブラケット54とサポート部材80のブラケット83とをネジ止めする。
【0034】
以上のように本実施形態に係るシート取付構造によれば、シート20の一部を直接、他の一部をサポート部材80を介して間接的に車体100に取り付けるようにしたので、従来技術のような後脚250(図9、10参照)を設置することなく、十分な取付強度を得ることができる。このため、トランクルーム106内に突出する部材が無くなり、車体構造の大幅な変更を行うことなく、トランクルーム106への荷物の搭載性が向上する。
【0035】
したがって、本発明によれば、車両最後列シートのシートクッション下部にトランクルームを配設し、該トランクルーム後方のリヤボディにトランクリッドが設けられた車両、特に小型バスの最後列シートのシート取付構造において、トランクルームへの荷物の搭載性を悪化させることなく、さらに車体の大幅な変更を生じることなく可能となるため、小型バスの最後列シート構造への適用に際して有益である。
【0036】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態に係るシート取付構造により取り付けられた後部座席シートが組み込まれた小型バスを示す斜視図。
【図2】同シートのシートフレームを示す斜視図。
【図3】同シートフレームとサポート部材とを分解して示す斜視図。
【図4】同小型バスの後部座席シートにおける締結位置を示す説明図。
【図5】同後部座席シートを図4におけるB−B線で切断して矢印方向に見た断面図。
【図6】同後部座席シートにおける三点シートベルトの取付構造を示す斜視図。
【図7】同後部座席シートの要部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)中C−C線で切断して矢印方向に見た断面図。
【図8】同後部座席シートとトランクルームとの位置関係を示す説明図。
【図9】従来の後部座席シートとトランクルームとの位置関係を示す説明図。
【図10】従来の後部座席シートのシートフレームを示す斜視図。
【符号の説明】
【0038】
1…小型バス(車両)、10…最後列シート、20…シート、30…シートクッション、40…シートフレーム、41…背凭れ用フレーム、42…着座用フレーム、45…フロント着座用フレーム、46…リヤ着座用フレーム、47、48…サイドフレーム、49…ブラケット、54…ブラケット、60…リトラクタブラケット、65…リヤボディ取付ブラケット、80…サポート部材、81…長部材、82…短部材、83…ブラケット、84…ブラケット、100…車体、101…床構造部材、102…リアボディ、103…リアウインドウ、104…開口部、105…トランクリッド、106…トランクルーム、107…側壁部、108…シートレール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両最後列シートの下部にトランクルームを配設した車両におけるシート取付構造において、
下方が開口した略U字状のフレームの開口端部を車幅方向略全域に延在した強度部材に連結した複数の上記シートの背凭れ用フレームと、
上記背凭れ用フレームの下端に車両前後方向に配設され後部が連結した複数の上記シートの着座用フレームと、
上記着座用フレームの下方に車幅方向に延在し、両端部が車体内側部に固着される梯子状のサポート部材とを備え、
上記サポート部材に上記着座用フレームを載置・固定するとともに、上記着座用フレームの上記車体内側部に対向した部分を上記車体内側部に固着したことを特徴とするシート取付構造。
【請求項2】
上記サポート部材は、車両前後方向に間隔を有し、車幅方向へ略平行に延在する長部材と、車両前後方向に上記長部材を架橋する短部材とを備え、
上記長部材及び短部材は、断面が略矩形状の閉断面構造のパイプ材にて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシート取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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