説明

シート巻取装置

【課題】見栄えを良くしつつシートとケーシングの引出用開口の開口縁部との間の異音を抑制すること。
【解決手段】車両用トノカバー装置10は、トノカバーシート20を引出及び収納可能に巻き取る装置である。本装置10は、トノカバーシート20と、トノカバーシート20の基端部が取り付けられた巻取シャフトと、巻取シャフトが、回転可能且つトノカバーシート20の巻取方向に回転付勢された状態で収容支持され、トノカバーシート20を引出及び収納可能な引出用開口44を有するケーシング40と、トノカバーシート20の少なくとも一方の面のうち、引出状態で引出用開口44の開口縁部に位置する部位においてトノカバーシート20の引出収納方向に直交する方向に亘って全体に対して取り付けられた緩衝部材60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを引出及び収納可能なシート巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート巻取装置は、シートと、シートを巻き取る巻取シャフトと巻取シャフトが収容支持されたケーシングとを備える装置である。そして、シートは、ケーシングに形成される引出用開口を通じて引き出される。このようなシート巻取装置では、シートの引出状態において、シート巻取装置に対して振動が加えられると、シートと引出用開口の開口縁部との間において衝突音等の異音が発生する恐れがある。
【0003】
特許文献1には、シート巻取装置として、ハッチバック式等の自動車において、リアシートとバックドアとの間に形成されるラゲージルームを覆うための車両用トノカバー装置が開示されている。この車両用トノカバー装置は、トノカバーを巻取り収容する巻取り収容ボックスの引出し用開口に設けられた縁取り用スペーサにおけるトノカバーと当接する部位に緩衝テープが貼付されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−264627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、巻取り用収容ボックスの縁取り用スペーサに緩衝テープが貼り付けられているため、巻取り用収容ボックスの外部から、特にトノカバーの収納時において緩衝テープが見えてしまい、見栄えが悪かった。
【0006】
そこで、この発明は、見栄えを良くしつつシートとケーシングの引出用開口の開口縁部との間の異音を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、シートと、前記シートの基端部が取り付けられた巻取シャフトと、前記巻取シャフトが、回転可能且つ前記シートの巻取方向に回転付勢された状態で収容支持され、前記シートを引出及び収納可能な引出用開口を有するケーシングと、前記シートの少なくとも一方の面のうち、前記シートの引出状態で前記引出用開口の開口縁部に位置する部位において前記シートの引出収納方向に直交する方向に亘って全体又は一部に対して取り付けられたシート状の緩衝部材と、を備える。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係るシート巻取装置であって、前記緩衝部材は、前記シートの少なくとも一方の面のうち、引出状態で前記引出用開口の開口縁部に位置する部位において前記シートの引出収納方向に直交する方向に亘って全体が取り付けられている。
【0009】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るシート巻取装置であって、前記緩衝部材は、前記シートに対して縫い付けられている。
【0010】
第4の態様は、第1〜第3のいずれか一態様に係るシート巻取装置であって、前記緩衝部材は、不織布製のシートである。
【0011】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか一態様に係るシート巻取装置であって、前記ケーシングの少なくとも一端部に対して前記巻取シャフトの軸方向に移動可能に取り付けられると共に、前記ケーシングの前記引出用開口に連通する引出用溝が形成されたホルダを備え、前記シートは、前記引出用開口及び前記引出用溝を通じて引出及び収納される。
【0012】
第6の態様は、第1〜第5のいずれか一態様に係るシート巻取装置であって、前記巻取シャフトは、自身の外周部の接線のうち前記引出用開口の貫通方向に沿った接線が前記引出用開口の中心からずれる位置で、前記ケーシングに収容支持され、前記緩衝部材は、前記シートのうち少なくとも前記巻取シャフトがずれた側の面に取り付けられている。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様に係るシート巻取装置によると、緩衝部材が、シートの少なくとも一方の面のうち、シートの引出状態でケーシングの引出用開口の開口縁部に位置する部位においてシートの引出収納方向に直交する方向に亘って全体又は一部に対して取り付けられているため、シートの収納状態では、緩衝部材がケーシング内に収められる。また、シートの引出状態において、振動等によりシートが揺れ動いても、緩衝部材が引出用開口の開口縁部に当接し、シートと引出用開口の開口縁部とが当接するのを避けることができる。これにより、見栄えを良くしつつシートとケーシングの引出用開口の開口縁部との間の異音を抑制することができる。
【0014】
第2の態様に係るシート巻取装置によると、緩衝部材が、シートの少なくとも一方の面のうち、引出状態で引出用開口の開口縁部に位置する部位においてシートの引出収納方向に直交する方向に亘って全体が取り付けられているため、より効果的に異音を抑制することができる。
【0015】
第3の態様に係るシート巻取装置によると、緩衝部材がシートに対して縫い付けられているため、より確実にシートから緩衝部材が外れることを抑制することができる。
【0016】
第4の態様に係るシート巻取装置によると、緩衝部材が不織布製のシートであるため、緩衝作用に優れると共に、シートの巻き取り時に巻取シャフトの外周に沿ってスムーズに巻き取られることができる。
【0017】
第5の態様に係るシート巻取装置によると、ケーシングの引出用開口に連通する引出用溝が形成されたホルダがケーシングの少なくとも一端部に対して巻取シャフトの軸方向に移動可能に取り付けられることにより、適用対象箇所に対する取り付けを容易にすることができる。そして、このような構成においても、引出用開口及び引出用溝を通じて引出及び収納されるシートに対して緩衝部材が取り付けられるため、引出用開口及び引出用溝の全域に亘って異音の抑制を図ることができる。
【0018】
第6の態様に係るシート巻取装置によると、巻取シャフトが、自身の外周部の接線のうち引出用開口の貫通方向に沿った接線が引出用開口の中心からずれる位置でケーシングに収容支持されることにより、引出用開口の開口縁部のうち引出状態のシートが衝突し得る部分が決定され、シートのうち少なくとも巻取シャフトがずれた側の面に緩衝部材が取り付けられているため、より確実に異音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】シート引出状態のシート巻取装置の斜視図である。
【図2】シート収納状態のシート巻取装置の斜視図である。
【図3】収縮状態のケーシングにおけるホルダの様子を示す図である。
【図4】伸長状態のケーシングにおけるホルダの様子を示す図である。
【図5】図1のV−V線断面図である。
【図6】トノカバーシート上の緩衝部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態に係るシート巻取装置について説明する。このシート巻取装置は、シートを引出及び収納可能にする装置である。ここでは、シート巻取装置を、車両用トノカバー装置10として適用する例で説明する(図1、図2参照)。車両用トノカバー装置10とは、ハッチバック式の自動車等において、後部座席とバックドアとの間に形成されるラゲージスペース2を覆うための装置である。
【0021】
車両用トノカバー装置10は、シートとしてのトノカバーシート20と、引出部材24と、巻取シャフト30と、ケーシング40と、ホルダ50と、緩衝部材60とを備えている。
【0022】
トノカバーシート20は、布、樹脂シート、合皮等を裁断及び縫製することにより、車両のラゲージスペース2の上方を部分的又は全体的(ここでは後述する引出部材24と共に全体的)に覆うことが可能な形状及び大きさに形成されたシート状部材である。ここでは、トノカバーシート20は、幅広で、基端部より先端部の方が幅狭に形成されている。
【0023】
トノカバーシート20の引出側端部には、引出部材24が取り付けられている。また、トノカバーシート20の基端部(収納側端部)は、巻取シャフト30の外周部に取り付けられている。
【0024】
ここで、トノカバーシート20を引出及び収納可能にする構成について、概略的に説明しておく。トノカバーシート20が取り付けられた巻取シャフト30は、トノカバーシート20を巻取可能にケーシング40内に収容支持されている(図5参照)。すなわち、トノカバーシート20は、ケーシング40内に引出及び収納可能な態様で、巻取シャフト30により巻き取られている。このケーシング40は、車両の後部座席の後方、換言するとラゲージスペース2の前端の位置に配設される。そして、トノカバーシート20は、ケーシング40から車両の前後方向後方に向けて引き出されることにより、ラゲージスペース2を覆う(図1参照)。
【0025】
巻取シャフト30は、長尺円筒状の部材である。そして、トノカバーシート20は、基端部が巻取シャフト30に対して長手方向に沿って固定され、巻取シャフト30の外周部に対して巻回されている。
【0026】
ケーシング40は、巻取シャフト30を、軸周りに回転可能且つトノカバーシート20の巻取方向に回転付勢された状態で収容支持する部分である。また、ケーシング40は、内部に収容された巻取シャフト30に巻き取られるトノカバーシート20を、引出及び収納時に通過可能な引出用開口44を有する。このケーシング40は、長尺筒状のケーシング本体42と、ケーシング本体42の両端部に取り付けられた一対の端部部材46とが組み立てられて構成される(図3参照)。
【0027】
ケーシング本体42は、トノカバーシート20を巻き取った状態の巻取シャフト30を、内面に非接触の態様で収容可能な大きさに設定されている。このケーシング本体42には、長手方向に沿ったスリット状の引出用開口44が形成されている。引出用開口44の長手方向寸法は、トノカバーシート20の幅寸法より大きく設定されている(図1参照)。また、ここでは、ケーシング本体42は、長手方向に直交する断面視において、略矩形状を成している。
【0028】
一対の端部部材46は、巻取シャフト30の各端部を、それぞれ回転可能に支持している。ここでは、一対の端部部材46は、巻取シャフト30の端部の内側に挿入される支持用軸部を有している。また、一対の端部部材46の少なくとも一方と巻取シャフト30とは、巻取シャフト30の内側に配設される図示省略のねじりコイルばねにより連結され、巻取シャフト30が端部部材46に対して巻取方向に回転付勢されている。
【0029】
この一対の端部部材46は、ケーシング本体42の両端部に対して、それぞれ嵌入して固定されている。また、ここでは、一対の端部部材46は、ケーシング本体42の両端部において、外周側から内周側に向けて貫通挿入されたボルト48がケーシング本体42の内部に配設される部位に対して螺合されることによっても固定されている(図3参照)。このボルト48は、頭部が巻取シャフト30の外周面から外周側に突出する形態で設けられ、後述するホルダ50の移動範囲を規制する部材としての役割も担っている。
【0030】
ここでは、ケーシング40は、車両の後部座席の後方の位置に、引出用開口44を後方に向ける姿勢で配設される。そして、トノカバーシート20は、車両の前後方向に沿って引出及び収納される。このトノカバーシート20が引出及び収納される方向を引出収納方向という。
【0031】
引出部材24は、トノカバーシート20を引出及び収納操作するための部材である。この引出部材24は、トノカバーシート20と一体となって、ラゲージスペースの上方を全体的に覆うことが可能な形状に形成されている。ここでは、引出部材24は、トノカバーシート20の引出側端部と略同じ幅寸法に設定され、ラゲージスペースの後方の形状に沿った形状の幅広板状に形成されている。
【0032】
そして、引出部材24を引出収納方向に移動させることにより、トノカバーシート20がケーシング40の引出用開口44を通じて引出及び収納される。ここで、トノカバーシート20について、引き出されずに巻取シャフト30に全体的に巻き取られた状態を収納状態、全体的に引き出された状態、すなわち引出部材24と共にラゲージスペース2の上方を全体的に覆った状態を引出状態という。
【0033】
また、引出部材24は、トノカバーシート20の収納状態及び引出状態を維持可能に構成されている。すなわち、引出部材24は、基端部(トノカバーシート20側端部)の少なくとも一部(ここでは長手方向両端部)に、ケーシング40の引出用開口44の周りの部位に係止可能なように、引出用開口44の隙間より肉厚に形成された係止部26を有している。この係止部26が引出用開口44の開口縁部に係止することにより、トノカバーシート20が収納状態からさらに巻き取られることが規制され、トノカバーシート20を収納状態に維持される。また、引出部材24には、車両の内部における両側部に形成された凹部内に配設されてその壁部に対して係止可能な引出維持部28が設けられている。この引出維持部28は、引出部材24の幅方向両端部からその両側方に突出する形状に形成されている。引出維持部28が凹部における壁部に係止することにより、トノカバーシート20が引出状態から巻き取られることが規制され、トノカバーシート20を引出状態に維持することができる。
【0034】
本車両用トノカバー装置10は、車両に対して主として両端部が支持されることにより取り付けられるが、車両に対する取り付け時に、長手方向において取付箇所より狭い部分を通じて該取付箇所に配設される。また、車両用トノカバー装置10自体の寸法誤差、車両に対する取り付け誤差が生じる恐れがあり、車両取り付け時にこれらの誤差を吸収可能であることが好ましい。そこで、車両用トノカバー装置10は、全体として、長手方向に伸縮可能に構成されている。このための構成として、車両用トノカバー装置10は、ホルダ50を備えている。
【0035】
より具体的には、ホルダ50は、ケーシング40の少なくとも一端部(ここでは両端部)に対して巻取シャフト30の軸方向に移動可能に取り付けられている。このホルダ50は、ケーシング40の端部を挿入した状態でその長手方向に摺動可能で、一端部が閉鎖された筒状に形成されている。ここでは、ホルダ50は、断面視において、ケーシング40に対応した略矩形状に形成され、ケーシング40の外部形状と同じかそれより大きい(ここでは僅かに大きい)内部形状に設定されている。
【0036】
このホルダ50のケーシング40に対する移動範囲は、ケーシング40に設けられた移動範囲規制部材としてのボルト48と、ホルダ50に形成されたガイド溝56との組み合わせにより規制される。ガイド溝56は、ホルダ50の外周側と内周側とを結ぶ方向に貫通し、深さ方向(ケーシング40の長手方向)に長尺な溝状に形成されている。このガイド溝56の溝幅は、ボルト48の頭部と同じかそれより大きい(ここでは僅かに大きい)寸法に設定されている。また、ガイド溝56の長手方向の寸法は、車両用トノカバー装置10の車体に対する取り付け時に必要な収縮寸法、製品誤差及び取り付け誤差等を考慮して決定されるとよい。
【0037】
そして、ケーシング本体42の外周部から外周側に突出したボルト48の頭部が、ガイド溝56内に配設され、ガイド溝56の長手方向端部における開口縁部に当接することにより、ケーシング40に対するホルダ50の移動が規制される。また、ボルト48がガイド溝56の長手方向に沿った開口縁部に当接することによりケーシング40の長手方向に案内される。
【0038】
また、ホルダ50は、ケーシング40に対して長手方向外側に付勢されて設けられている。より具体的には、ホルダ50は、その内部で、端部部材46との間に圧縮状態のコイルスプリングである付勢部材58を介在させて設けられている。付勢部材58は、一端部がケーシング40の端部部材46の外側端部に形成された凹部に嵌め入れられると共に、他端部がホルダ50内部に設けられた凸部に外嵌めされて、端部部材46とホルダ50との間に介在している。
【0039】
そして、車両用トノカバー装置10は、長手方向において両端部に外力が作用しない状態では、付勢部材58の付勢力によりホルダ50が長手方向外側の位置に維持され、伸長状態に保たれる。また、車両用トノカバー装置10は、長手方向において両端部に付勢部材58の付勢力より大きい外力が内側に向けて加えられると、ホルダ50が長手方向内側の位置に移動され、収縮される。また、車両用トノカバー装置10は、収縮状態から外力が解除されると、付勢部材58の付勢力により伸長状態となる。
【0040】
また、ホルダ50は、ケーシング40の引出用開口44に連通する引出用溝54を有している。引出用溝54は、ホルダ50の開口側端部の周方向一部で開口し、深さ方向に延在する溝状に形成されている。この引出用溝54は、ケーシング40の引出用開口44に対して引出方向側に存在し、その内部空間が連通している。すなわち、トノカバーシート20は、引出用開口44及び引出用溝54を通じて引出及び収納される。
【0041】
より具体的には、引出用溝54の溝幅は、引出用開口44の幅寸法と略同じ寸法に設定されている。また、引出用溝54の延在方向の寸法は、少なくとも車両用トノカバー装置10の車両に対する取り付け状態において、端部が引出及び収納状態のトノカバーシート20に対して干渉しない、好ましくは引出用開口44を遮らない寸法に設定されているとよい。また、引出用溝54の延在方向の寸法は、ケーシング40の長手方向において、ホルダ50がもっとも内側に移動された状態で、トノカバーシート20に干渉せず、且つ、引出用開口44を遮らない寸法に設定されていてもよい。
【0042】
上記トノカバーシート20には、引出状態において、トノカバーシート20とケーシング40の引出用開口44の開口縁部との接触による衝突音等の異音を抑制するための緩衝部材60が設けられている。この緩衝部材60は、トノカバーシート20の少なくとも一方の面のうち、引出状態で引出用開口44の開口縁部に位置する(すなわち開口縁部の内周側に位置する)部位においてトノカバーシート20の引出収納方向に直交する方向に亘って全体又は一部に対して取り付けられているシート状の部材である。ここでは、緩衝部材60は、トノカバーシート20のうち、引出状態で引出用開口44の開口縁部に位置する部位においてトノカバーシート20の引出収納方向に直交する方向に亘って全体が取り付けられている。
【0043】
本車両用トノカバー装置10は、引出状態のトノカバーシート20がケーシング40の引出用開口44の開口縁部における長手方向に沿った部分の一方に寄って存在するように構成されている。この構成は、引出用開口44と巻取シャフト30との位置関係により実現されている。すなわち、巻取シャフト30は、自身の外周部の接線のうち引出用開口44の貫通方向(引出収納方向に平行な方向)に沿った接線が引出用開口44の中心からずれる位置で、ケーシング40に収容支持されている(図5参照)。図5には、引出用開口44の中心線を一点鎖線で示している。ここで、トノカバーシート20は、前記接線に沿って引き出される。すなわち、巻取シャフト30から引き出されるトノカバーシート20は、少なくとも引出状態において、引出用開口44の間で、長手方向に沿った開口縁部のうちの一方に寄って介在する。ここでは、巻取シャフト30の上方で外周部を通る接線が、引出用開口44の長手方向に沿った開口縁部のうち上側に位置する部分に寄っている。これにより、引出状態のトノカバーシート20は、車両の振動等により揺れが生じた場合、引出用開口44の開口縁部に当接するとしたら、主として該開口縁部における長手方向に沿った部分のうち寄った側の部分に当接する。
【0044】
これに対応して、緩衝部材60は、トノカバーシート20のうち、引出状態で引出用開口44の開口縁部のうちの一方に寄る側の面、すなわち巻取シャフト30の外周部が引出用開口44の開口縁部の中心に対してずれた側の面(ここでは上面)に取り付けられている。
【0045】
ここでは、緩衝部材60として、帯状の不織布製のシートが採用されている。もっとも、緩衝部材は、トノカバーシート20と引出用開口44の開口縁部との接触による異音を抑制することができる部材であればよく、エラストマー製のシート等でもよい。また、緩衝部材60は、片面に粘着層を有しており、トノカバーシート20に対して貼り付けられている。さらに、緩衝部材60は、より確実に脱落を抑制するため、トノカバーシート20に対して縫い付けられている。好ましくは、緩衝部材60は、周縁部の僅かに内側で周縁部に沿って縫製されていると良い。図6では、縫製部分に符号64を付している。もっとも、緩衝部材60の縫い付け態様は上記のものに限られない。また、緩衝部材60のトノカバーシート20に対する取り付け方法は、貼り付け及び縫い付けの一方でもよい。
【0046】
緩衝部材60の幅寸法は、引出用開口44の開口縁部のトノカバーシート20の引出収納方向長さより大きく設定されている。また、緩衝部材60の幅寸法は、車両用トノカバー装置10の組み立て時における各部の組付け誤差、トノカバーシート20の引出状態の誤差等を考慮し、各誤差の範囲を含むように設定されるとよい。
【0047】
そして、引出部材24を引出方向側に移動操作してトノカバーシート20を引出状態まで引き出すと、引出用開口44の開口縁部には、緩衝部材60が介在する。より具体的には、緩衝部材60は、引出用開口44の開口縁部の長手方向に沿った部分のうちトノカバーシート20が寄った一方側で、トノカバーシート20と引出用開口44との間に介在している。
【0048】
また、引出部材24を収納方向側に移動操作してトノカバーシート20を収納状態にすると、緩衝部材60はトノカバーシート20と一緒に巻取シャフト30に巻き取られケーシング40内に収納される。すなわち、緩衝部材60は、トノカバーシート20の収納状態(引出状態からトノカバーシート20を収納する途中の状態から収納状態)では、ケーシング40の外方からは隠れた状態となる。
【0049】
上記構成に係る車両用トノカバー装置10によると、緩衝部材60が、トノカバーシート20の少なくとも一方の面のうち、引出状態でケーシング40の引出用開口44の開口縁部に位置する部位においてトノカバーシート20の引出収納方向に直交する方向に亘って全体又は一部に対して取り付けられているため、トノカバーシート20の収納状態では、緩衝部材60がケーシング40内に収められる。また、トノカバーシート20の引出状態において、振動等によりトノカバーシート20が揺れ動いても、緩衝部材60が引出用開口44の開口縁部に当接し、トノカバーシート20と引出用開口44の開口縁部とが当接するのを避けることができる。これにより、見栄えを良くしつつトノカバーシート20とケーシング40の引出用開口44の開口縁部との間の異音を抑制することができる。また、トノカバーシート20の引出状態において、引出用開口44の開口縁部からトノカバーシート20を保護することもできる。
【0050】
また、トノカバーシート20の収納状態では、緩衝部材60がケーシング40内に隠れているため、外部からの接触がなく、緩衝部材60の剥がれや損傷を抑制することができる。
【0051】
また、緩衝部材60が、トノカバーシート20の少なくとも一方の面のうち、引出状態で引出用開口44の開口縁部に位置する部位においてトノカバーシート20の引出収納方向に直交する方向に亘って全体が取り付けられている構成によると、より効果的に異音を抑制することができる。
【0052】
また、緩衝部材60がトノカバーシート20に対して縫い付けられている構成によると、より確実にトノカバーシート20から緩衝部材60が外れることを抑制することができる。すなわち、緩衝部材60をトノカバーシート20に取り付ける構成を採用しているため、縫い付けることが可能であり、より確実に剥がれを抑制することができる。また、引出用開口44の開口縁部及び引出用溝の開口縁部全体に亘って、トノカバーシート20との衝突音を抑制できる。
【0053】
また、ケーシング40の引出用開口44に連通する引出用溝54が形成されたホルダ50がケーシング40の少なくとも一端部に対して巻取シャフト30の軸方向に移動可能に取り付けられることにより、適用対象箇所に対する取り付けを容易にすることができる。そして、このような構成においても、引出用開口44及び引出用溝64を通じて引出及び収納されるトノカバーシート20に対して緩衝部材60が取り付けられるため、引出用開口44及び引出用溝64の全域に亘って異音の抑制を図ることができる。また、ケーシング本体の長尺方向の寸法よりトノカバーシートの幅寸法が大きい場合でも、トノカバーシートの幅方向全体に亘って異音の抑制を図ることができる。
【0054】
また、巻取シャフト30が、自身の外周部の接線のうち引出用開口44の貫通方向に沿った接線が引出用開口44の中心からずれる位置でケーシング40に収容支持されることにより、引出用開口44の開口縁部のうち引出状態のトノカバーシート20が衝突し得る部分が決定され、トノカバーシート20のうち少なくとも巻取シャフト30がずれた側の面に緩衝部材60が取り付けられているため、より確実に異音を抑制することができる。
【0055】
これまで、シート巻取装置の一例として車両用トノカバー装置10について説明してきたが、シート巻取装置は、他にもシェードシートによりウインドウを遮蔽するための車両用シェード装置としても適用することができる。
【0056】
なお、本シート巻取装置は、特にシートが鉛直方向に対して交差する方向に引出及び収納される場合に効果的である。すなわち、引出状態のシートに対して、該シートと引出用開口の開口縁部とが当接する方向に重力の分力が作用する場合、車両の振動等によるシートの前記当接方向における揺れが大きくなって、異音が発生し易い。
【0057】
また、車両用トノカバー装置10が一対のホルダ50を備える例について説明してきたが、ホルダ50は、1つでも省略されてもよい。
【0058】
また、緩衝部材60がトノカバーシート20の一方の面のみに取り付けられる例を説明してきたが、緩衝部材60は、トノカバーシート20の両面に取り付けられてもよい。また、緩衝部材は、トノカバーシート20の幅方向において一部だけに設けられていてもよい(断続的に設けられる場合も含む)。
【符号の説明】
【0059】
10 車両用トノカバー装置
20 トノカバーシート
30 巻取シャフト
40 ケーシング
44 引出用開口
50 ホルダ
54 引出用溝
60 緩衝部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートと、
前記シートの基端部が取り付けられた巻取シャフトと、
前記巻取シャフトが、回転可能且つ前記シートの巻取方向に回転付勢された状態で収容支持され、前記シートを引出及び収納可能な引出用開口を有するケーシングと、
前記シートの少なくとも一方の面のうち、前記シートの引出状態で前記引出用開口の開口縁部に位置する部位において前記シートの引出収納方向に直交する方向に亘って全体又は一部に対して取り付けられたシート状の緩衝部材と、
を備える、シート巻取装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート巻取装置であって、
前記緩衝部材は、前記シートの少なくとも一方の面のうち、引出状態で前記引出用開口の開口縁部に位置する部位において前記シートの引出収納方向に直交する方向に亘って全体が取り付けられている、シート巻取装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシート巻取装置であって、
前記緩衝部材は、前記シートに対して縫い付けられている、シート巻取装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のシート巻取装置であって、
前記緩衝部材は、不織布製のシートである、シート巻取装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のシート巻取装置であって、
前記ケーシングの少なくとも一端部に対して前記巻取シャフトの軸方向に移動可能に取り付けられると共に、前記ケーシングの前記引出用開口に連通する引出用溝が形成されたホルダを備え、
前記シートは、前記引出用開口及び前記引出用溝を通じて引出及び収納される、シート巻取装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のシート巻取装置であって、
前記巻取シャフトは、自身の外周部の接線のうち前記引出用開口の貫通方向に沿った接線が前記引出用開口の中心からずれる位置で、前記ケーシングに収容支持され、
前記緩衝部材は、前記シートのうち少なくとも前記巻取シャフトがずれた側の面に取り付けられている、シート巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−67289(P2013−67289A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207782(P2011−207782)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】