説明

シート後処理装置

【課題】トレイ上に積載されている用紙のずれを防止することが可能なシート後処理装置を提供すること。
【解決手段】可撓性のパドル88aを支持する支持体87を回転させて、トレイ上に積載されている用紙束の最上位の用紙S1をパドル88aにより搬送方向に整合する構成において、回転する支持体87を停止させたときのパドル88aの停止姿勢を、パドルの先端部182が用紙S1に沿って撓む姿勢、かつ支持体87が移動軌跡180に沿って上方向に移動を開始してからパドルの先端部182が用紙S1から離間するまでの間に、用紙S1に対し、パドル88aの復元力によりストッパー63に向かう方向と同方向の力f1が作用するような姿勢とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置から出力されて、後処理用のトレイに収容されたシートに対してステープル綴じなどの後処理を施すシート後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどの画像形成装置で実行されるジョブにより画像形成装置から出力されるプリント後のシートを1枚ずつ後処理用のトレイ(以下、「トレイ」という。)上に積載して収容し、トレイ上に積載されたシート束に、ステープル綴じなどの後処理を行うシート後処理装置が開発されている。
シート束に対して後処理を行う場合、トレイ上のシート束の各シートが整合されていることが望ましく、例えばシート搬送方向の整合(以下、「シートの整合」という。)をとるシート後処理装置として、特許文献1に示すような構成がある。
【0003】
図13(a)は、特許文献1に記載のシート後処理装置の構成を簡略化して示す図であり、図13(b)は、シート後処理装置を図13(a)の上から見たときの図である。
両図に示すように、シート後処理装置は、トレイ900と、トレイ900よりも上に設けられ、一方端が支点906に支持されたL字状のアーム901と、アーム901の支点906側とは反対側の他方端に設けられ、矢印xで示す方向に回転する支持体902と、支持体902の周面に支持された可撓性を有する2本のパドル903と、支持体902よりもシート搬送方向下流に設けられたストッパー904と、シートの幅方向に沿って移動可能なステープラー905を備えている。
【0004】
画像形成装置からのシートSが1枚ずつトレイ900上に搬送されるごとに、支持体902の回転に伴ってパドル903が矢印xで示す方向に回転し、回転するパドル903の先端部をトレイ900に収容されている最上位のシートS1の面に押し当てて、パドルの回転力によりシートS1をストッパー904に向けて搬送しつつ、ストッパー904によりシートS1の搬送を規制する。これにより、各シートが整合される。
【0005】
ステープル綴じすべき全枚数のシートSがトレイ900上に収容されると、ステープラー905がシートSの幅方向にシートの端縁に沿ってステープル綴じ位置(図13(b)の破線で示す位置)まで移動して、トレイ900上のシート束がステープル綴じされる。
このような構成をとる場合、通常、シートの座屈等をなくすためにパドル903をできるだけストッパー904に近い位置に配することが行われるが、ストッパー904の近くにはステープラー905も配されている。
【0006】
このため、パドル903をストッパー904の近くに配すると、ステープラー905の移動域にアーム901の一部(図13(a)の911)が入る(干渉する)構成になる場合がある。また、支持体902を中心とするパドル903の回転移動域を装置内に確保する必要があるが、パドル903をストッパー904に近づけると、パドル903の回転移動域もステープラー905の移動域と干渉する構成になる場合もある。
【0007】
ステープラー905の移動域に、アーム901の一部911が干渉する構成の場合、ステープラー905の移動時にステープラー905がアーム901に当たってしまうことになり、また、ステープラー905の移動域に、停止中のパドル903の先端部が入った状態でステープラー905が移動すると、パドル903の先端部がステープラー905に当たって破損や変形することが生じ得る。
【0008】
そこで、特許文献1では、アーム901を、支点906を中心に矢印yで示す方向に上下に揺動可能にして、ステープラー905の移動に先立って、図13(a)で示すように支持体902を、2つのパドル903の先端部がステープラー905とは反対側に向くようになると共に、一方のパドル903の先端部が用紙Sの上面に当たって撓むような姿勢で静止するようになる回転位置で停止させ、ステープラー905の移動の際には、アーム901を上方に移動させて、アーム901をステープラー905の移動域から逃がす制御が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−143678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の制御では、図13(c)に示すように、支持体902の回転が停止している状態でアーム901が上方に移動して、パドル903の先端部Paが最上位のシートS1から離間する際、シートS1に、パドル903の先端部Paとの間に生じる、搬送方向とは逆方向(矢印zで示す方向)の摩擦力が作用して、シートS1が矢印zで示す方向に動き、シート先端Saがストッパー904から離間して、整合が完了した姿勢からずれるという問題がある。
【0011】
最上位のシートS1がずれた状態でステープル綴じが行われると、ステープル綴じされたシート束は、ずれた分だけシートS1が他のシートに対して飛び出したようになり、見栄えが大変悪く、ずれ量によってはステープル綴じをやり直す必要も生じる。
このようなシートがずれるという問題は、アーム901がステープラー905の移動域と干渉する構成に限られず、例えばシート1枚ごとに、パドル903の回転と停止を切り替える制御を行う場合にも生じ得る。
【0012】
具体的には、n枚目のシートの整合が終わると、次の(n+1)枚目のシートがトレイ900に搬送されるまでの間、パドル903の先端部をn枚目のシートの上面に押し当てた状態で支持体902の回転を一旦停止させ、(n+1)枚目のシートがトレイ900上に搬送されて来ると、(n+1)枚目のシートの搬送に邪魔にならないように、アーム901を上方に移動して、パドル903をn枚目のシートから離間させ、(n+1)枚目のシートの先端がパドル903の直下を通過するタイミングに合わせて、アーム901を下方に移動させつつ支持体902を回転させる制御である。
【0013】
この制御を行えば、停止中のパドル903がn枚目のシートを上から押さえることにより、n枚目のシートの整合が乱れることを防止でき、また支持体902を停止させずに回転し続ける構成に比べて、回転するパドル903がシートを叩くときに生じるパタパタという当たり音の発生時間が短くなり、ユーザが耳障りと感じる音を低減できる。
しかしながら、このような回転と停止を切り替える制御を行う場合でも、パドル903の停止位置を図13(a)で示す位置と同じにすれば、上記と同様にn枚目(最上位)のシートが矢印zで示す方向にずれてしまう。n枚目のシートがずれた状態で、その上に(n+1)枚目のシートが重ねられ、整合がとれていないシートが含まれたシート束に対して、ステープル綴じ等の後処理が実行されることになる。
【0014】
上記のような問題は、ステープル綴じに限られず、例えばシート束に孔を開けるパンチ処理を後処理として実行する場合にも生じ得る。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、シートのずれを防止することが可能なシート後処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係るシート後処理装置は、画像形成装置から出力され、後処理用のトレイに積載された最上位のシートの上面に、当該シートの幅方向に沿った軸を中心に回転する支持体に支持された可撓性のパドルの先端部を押し当てて、パドルの回転力により当該シートを搬送し、その押し当て位置よりも搬送方向下流のストッパーで当該シートの搬送を規制することにより、当該シートを搬送方向に整合した後、後処理を施すシート後処理装置であって、回転している支持体を、パドルの先端部が前記シートの上面に当たる第1位置で所定の停止姿勢になるように停止させる停止手段と、第1位置で停止されている支持体を、当該シートから遠ざかる方向にパドルの先端部が当該シートから離間する第2位置まで移動させる移動手段と、を備え、前記所定の停止姿勢は、パドルの先端部が前記シートの上面に押し当てられて撓む姿勢、かつ、支持体が第1位置から第2位置まで移動するときにパドルの先端部が当該シートから離間するまでの間に生じる、パドルの先端部の復元力により、当該シートに前記ストッパーに向かわせる方向の力が作用するようになる姿勢であることを特徴とする。
【0016】
また、前記支持体には、前記パドルとは別の1以上のパドルが、支持体の回転方向の異なる位置に支持されており、複数のパドルは、1つのパドルが所定の停止姿勢で停止したときに、他のパドルが前記シートから離間する状態になるように、支持体における回転方向の支持位置が設定されており、前記停止手段は、回転している支持体を、前記1つのパドルが所定の停止姿勢になるように停止させることを特徴とする。
【0017】
ここで、複数のパドルは、それぞれ弾性力が異なることを特徴とする。
また、搬送されるシートの種類ごとに、複数のパドルのうち、その種類のシートに適した弾性力を有するパドルが対応付けられており、前記停止手段は、複数のパドルのうち、搬送されるシートの種類に対応するパドルが前記1つのパドルとして所定の停止姿勢になるように、回転している支持体を停止させることを特徴とする。
【0018】
さらに、トレイ上におけるシート積載枚数に応じて、複数のパドルのうち、その枚数に適した弾性力を有するパドルが対応付けられており、前記停止手段は、複数のパドルのうち、シート積載枚数に対応するパドルが前記1つのパドルとして所定の停止姿勢になるように、回転している支持体を停止させることを特徴とする。
また、前記所定の停止姿勢には、当該停止姿勢でのパドルの復元力による、トレイ上における最上位のシートの上面が押圧される力が第1の大きさになる第1停止姿勢と、第1の大きさよりも小さい第2の大きさになる第2停止姿勢が含まれ、前記停止手段は、搬送されるシートの種類に応じて、所定の停止姿勢が第1停止姿勢と第2停止姿勢のいずれかに切り替わるように、回転している支持体を停止させることを特徴とする。
【0019】
さらに、前記トレイ上に積載されたシートの端縁に沿って第1後処理位置と第2後処理位置との間を移動自在であり、当該シートに対して後処理を実行する後処理部を備え、前記移動手段は、第1後処理位置に位置する後処理部が第2後処理位置まで移動して後処理を実行する場合には、その移動に先立って第1位置で停止されている支持体を第2位置に移動させ、後処理部が第2後処理位置に移動せずに第1後処理位置で後処理を実行する場合には、支持体の第1位置から第2位置への移動を禁止することを特徴とする。
【0020】
また、前記支持体を回転駆動する駆動手段と、前記停止手段と移動手段と駆動手段を制御する制御手段と、を備え、前記移動手段は、支持体を第1位置と第2位置の間を移動可能であり、前記制御手段は、トレイ上に搬送される複数枚のシートの搬送間隔が所定時間以上の場合に、トレイ上に収容されているn(1以上の整数)枚目のシートの次に(n+1)枚目のシートがトレイに搬送されて来るタイミングに応じて、n枚目のシートに対してパドルの先端部が所定の停止姿勢になるように第1位置で停止している支持体を第2位置に移動させた後、第2位置から下降しつつ回転を開始させ、トレイ上の(n+1)枚目のシートに対するパドルによる整合の後、(n+1)枚目のシートに対してパドルの先端部が所定の停止姿勢になるように支持体を第1位置で停止させる第1制御と、前記搬送間隔が所定時間よりも短い場合に、支持体の回転の停止と第1位置から第2位置への移動とを禁止して、n枚目と(n+1)枚目に関わらず、支持体を回転し続けて、トレイ上に搬送されて来るシートをパドルにより整合する第2制御と、を切り替えて実行することを特徴とする。
【0021】
さらに、前記シートの幅方向に当該シートを整合する幅方向整合手段を備え、前記停止手段は、前記幅方向整合手段による整合が終了した後に、回転している支持体を停止させることを特徴とする。
また、所定の支点を中心に上下に揺動するアームを備え、前記支持体は、アームに回転自在に設けられていることを特徴とする。
【0022】
さらに、前記後処理は、複数枚のシートを綴じるステープル綴じであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
上記のように構成すれば、所定の停止姿勢で停止しているパドルが第1位置から第2位置に移動する際に、パドルの先端部がトレイ上の最上位のシートから離間するまでの間に、当該シートに対してストッパーの位置する方向の力が作用するので、当該シートの端縁がストッパーに当接される状態が維持されることになり、反対方向へのシートのずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】シート後処理装置の全体構成を示す図である。
【図2】シート後処理装置の用紙整合部の構成を示す斜視図である。
【図3】用紙整合部のサブパドル部を図2の矢印Aで示す方向から見たときの図である。
【図4】用紙整合部のアームが上下に揺動する様子を示す模式図である。
【図5】トレイに積載されている最上位の用紙の上面に、次に搬送されて来た用紙の先端が当たっている様子を示す図である。
【図6】用紙整合部のパドルの停止姿勢を拡大して示す図である。
【図7】パドルの復元力を用紙の面における水平方向成分と垂直方向成分に分けたときの力の関係を示す模式図である。
【図8】ステープラーの移動域の大きさを示す平面図である。
【図9】シート後処理装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図10】パドル制御情報格納部に格納されているパドル制御情報の内容例を示す図である。
【図11】用紙の整合とステープル綴じの動作を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【図12】用紙の整合とステープル綴じの動作を説明するためのフローチャートにおける残りの部分を示す図である。
【図13】従来のシート後処理装置の構成等を簡略化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るシート後処理装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(1)全体構成
図1は、シート後処理装置2の全体構成を示す図である。
同図に示すように、シート後処理装置2は、用紙搬入部11と、搬送路切替部12,13と、用紙排出部14と、排出トレイ15と、用紙整合部16と、ステープラー17と、積載トレイ部18と、用紙折り部19と、制御部20などを備え、画像形成装置1の排出ローラー対10から出力された用紙に対し、ステープル綴じを行うステープル綴じ機能や2つ折りする用紙折り機能などを含む後処理を施すものである。
【0026】
用紙搬入部11は、画像形成装置1から排出された用紙を受け入れて、搬送ローラー対により搬送路切替部12に搬送する。
搬送路切替部12は、制御部20の指示により、用紙搬入部11からの用紙の搬送先を搬送路31,32のいずれかに切り替える。用紙に対して後処理を行わない場合またはステープル綴じ機能を行う場合には、搬送路31に切り替えられ、用紙折り機能を行う場合には、搬送路32に切り替えられる。
【0027】
搬送路切替部13は、制御部20の指示により、搬送路31の用紙を、当該用紙に対して後処理を行わない場合には用紙排出部14に送り、ステープル綴じ機能を行う場合には分岐路33に導く。
用紙排出部14は、搬送路31を搬送される用紙を機外に排出して、排出トレイ15に収容させる。
【0028】
分岐路33に導かれた用紙は、搬送ローラー対21により矢印aで示す方向に搬送され、その搬送方向前方に配置された排出ローラー対22に向かう。
排出ローラー対22は、下側のローラーに対して上側のローラーが上下方向に移動可能になっており、ステープル綴じの実行前には、上側のローラーが下側のローラーから離間すると共に上側と下側のローラーの回転が停止された状態で待機される。
【0029】
搬送ローラー対21により搬送される用紙の先端が排出ローラー対22の上側と下側のローラー間を通過した後、その用紙の搬送方向後端が搬送ローラー対21を通過すると、その用紙は、矢印bで示す方向に1回転されるパドル23に上から叩かれ、これにより用紙整合部16のトレイ50に導かれる。
トレイ50は、排出ローラー対22が位置する側が上方、ステープラー17の位置する側が下方になるように傾斜した状態で配置されており、トレイ50上に落とされた用紙は、重力によりトレイ50上を矢印cで示す方向に滑降してステープラー17に向かう。
【0030】
用紙整合部16は、1枚の用紙がトレイ50上に搬送されて来るごとに、その用紙がトレイ50上をステープラー17に向けて搬送されるときの搬送方向(FD方向)に沿う整合(以下、「FD整合」という。)と、当該搬送方向に直交する用紙幅方向に沿う整合(以下、「CD整合」という。)を行う。
用紙に対するFD整合は、FD整合部51により行われ、CD整合は、CD整合部52により行われる。用紙の整合の詳細については、後述する。
【0031】
ステープラー17は、ステープル綴じすべき全枚数の用紙がトレイ50上に収容されると、その用紙束に対してステープル綴じを施す。
ステープル綴じが終了すると、排出ローラー対22の上側のローラーがトレイ50上の用紙束(ステープル綴じ後のもの)を介して下側のローラーに圧接する状態に遷移し、その後、同図に示す方向に回転駆動されることにより、ステープル綴じ後の用紙束が排出ローラー対22により矢印eで示す方向に搬送され、積載トレイ部18に排出される。
【0032】
積載トレイ部18は、ステープル綴じされた用紙束を収容する。ここでは、収容される用紙束の量が多くなるに連れて、積載トレイ部18が自動的に下降して、大容量の用紙束を収容することができるようになっている。
搬送路切替部12により搬送路32に搬送された用紙は、用紙折り部19に導かれ、用紙折り部19において2つ折り等の折り動作がなされると、折られた状態で、機外に排出され、専用のトレイ(不図示)に収容される。
【0033】
分岐路33に近接した位置であり、搬送ローラー対21よりも搬送方向上流の位置には、分岐路33を搬送される用紙の搬送方向先端と後端を検出する用紙検出センサー24が配置されている。
用紙検出センサー24は、例えば反射型の光学センサーなどが用いられるが、搬送される用紙を検出可能なものであれば、透過型や他の方式の検出器を用いることができる。用紙検出センサー24による用紙先端と後端の検出信号は、制御部20に送られる。
【0034】
制御部20は、用紙搬入部11〜用紙折り部19などの各部を統括的に制御して、用紙の整合、ステープル綴じ、折りなどの用紙に対する後処理を円滑に実行させる。
(2)用紙整合部16の構成
図2は、用紙整合部16の構成を示す斜視図である。
同図に示すように、用紙整合部16は、トレイ50と、FD整合部51と、CD整合部52などを備え、FD整合部51に近い位置にステープラー17が配置されている。
【0035】
ステープラー17は、ステープル針を打ち出す針出部6と、針出部6よりも下に位置する針受部7を有し、針出部6と針受部7の間の空間8に用紙束の端縁が介在している状態で、針出部6が用紙束を介して針受部7の位置まで下がりつつ針出部6からステープル針が打ち出されることにより、用紙束に対するステープル綴じが行われる。
ステープラー17は、後述のように用紙端縁に沿って移動可能になっており、同図では、用紙Sがトレイ50上においてFD整合部51に向かう方向(FD方向:以下、「用紙搬送方向」という。)に対し、約45°傾斜した姿勢でホーム位置に位置する様子を示している。用紙幅方向において、ステープラー17がホーム位置に位置する側を装置正面側、その反対側を装置背面側としている。
【0036】
トレイ50は、平板状であり、その上面に、搬送されて来る用紙Sが積載される。
(3)CD整合部52の構成
CD整合部52は、トレイ50の用紙搬送方向下流側に設けられており、一対の整合板521,522と、整合板駆動部523(図4)などを備える。
一対の整合板521,522は、トレイ50上において装置正面側と装置背面側に用紙幅方向に間隔をおいてその主面が対向するように立設されていると共に、用紙幅方向に沿って移動自在にトレイ50に支持されており、整合板駆動部523の駆動力により、相互に近づく方向と遠ざかる方向に移動可能になっている。
【0037】
整合板521,522によるCD整合は、用紙Sがトレイ50上に1枚ずつ搬送されて来る毎に、その用紙Sを介して整合板521,522が相互に近づく方向に用紙Sの幅の大きさに相当する間隔の位置(整合位置)まで移動すると一旦停止し、その後、用紙Sから遠ざかる方向に反転して、元の位置(ホーム位置)に戻る動作により行われる。
このCD整合により、用紙Sが用紙搬送方向に対して斜めになっている場合に真っ直ぐな姿勢に矯正される。
【0038】
(4)FD整合部51の構成
FD整合部51は、CD整合部52よりも用紙搬送方向下流に配され、パドル部61と、ストッパー部62を備える。
パドル部61は、サブパドル部71,72,73と、回転軸74,75と、駆動モーター76,77などを有する。
【0039】
サブパドル部71,72,73は、用紙幅方向に間隔をおいて配置されており、回転軸74と装置筐体(不図示)の一部であるフレームFとに支持されてなる。
図3は、用紙幅方向中央に位置するサブパドル部71を図2の矢印Aで示す方向から見たときの図である。なお、図3では、フレームFが省略して示されており、またサブパドル部71の構成を見易くするために、トレイ50を水平姿勢にして示している。このことは、後述の図4などについても同様である。以下、図2と図3に基づきサブパドル部71の構成を説明する。
【0040】
各図に示すように、サブパドル部71は、アーム81と、プーリー82,83と,2段プーリー84と、歯付きタイミングベルト85,86と、パドル支持体87と、パドル88a,88bと、カム89などを有する。
アーム81は、第1直線部811と、第1直線部の一方端から下方に屈曲してなる第2直線部812とを有するL字状の部材であり、第1直線部811の他方端側が軸受部材90(図2)を介して回転軸74に回転自在に支持されている。
【0041】
プーリー82は、回転軸74の、軸受部材90の軸方向近傍の位置に嵌め込まれており、ここでは回転軸74と一緒に回転するように回転軸74に固定支持されている。
プーリー83は、アーム81の第2直線部812の下端部に立設されたピン91に回転自在に嵌め込まれている。2段プーリー84は、アーム81の屈曲部に立設されたピン92に回転自在に嵌め込まれている。
【0042】
歯付きタイミングベルト85は、プーリー82と2段プーリー84の一方の段に掛け渡されており、歯付きタイミングベルト86は、プーリー83と2段プーリー84の他方の段に掛け渡されている。
パドル支持体87は、円筒状であり、プーリー83と一体に固定された状態でピン91に回転自在に支持されてなる。
【0043】
パドル88a,88bは、ゴムやシリコンなどの材料からなる可撓性を有する細長の板状の部材であり、パドル支持体87の周面に、その接線方向に近い角度で、周方向に間隔をおいて取着されており、ここでは同じ材料、同じサイズ、例えば長手方向の長さが30〜35〔mm〕、厚みが1.5〜2〔mm〕の範囲のものが用いられる。なお、パドル88a等は、上記の材料に限定されず、可撓性を有する弾性部材を用いることができる。
【0044】
カム89は、アーム81の第1直線部811よりも上に位置する回転軸75に固定支持されており、カム89の周面がアーム81の第1直線部811の上面に当接している。
アーム81に立設されたピン92は、その先端部が図2に示すようにフレームFの端部に設けられた上下方向に長い長孔Faを貫通しており、その貫通している部分に、フレームFに支持された引っ張りバネ99が掛けられている。この引っ張りバネ99の復元力により、ピン92を介してアーム81には常時、上方への付勢力が付与されており、この付勢力によりアーム81の第1直線部811の上面がカム89の周面を押圧した状態に維持されるようになっている。
【0045】
サブパドル部72と73は、サブパドル部71と基本的に同じ構成であるが、図2に示すようにサブパドル部72と73のパドル88c〜88fは、パドル88a,88bよりも幅が狭くなっており、この点が異なっている。パドルによる用紙の搬送力を用紙幅方向の中央部の方が両端部よりも強くしたものであるが、これに限られない。なお、各パドルを特に区別して説明する必要がないときは、以下、単に「パドル」ということとする。
【0046】
サブパドル部72と73は、パドルを除いてサブパドル部71と同じ構成であるので、ここではサブパドル部72と73の構成については、その説明を省略する。
回転軸74,75は、それぞれが用紙幅方向に沿って平行に配置されてなる。
回転軸74は、駆動モーター76の回転駆動力により回転し,駆動モーター76が停止すると回転を停止する。同様に、回転軸75は、駆動モーター77の回転駆動力により回転し,駆動モーター77が停止すると回転を停止する。駆動モーター76,77は、例えばステッピングモーターからなり、その回転と停止は、制御部20により制御される。
【0047】
上記のような構成において、回転軸74が矢印fで方向に回転すると、その回転駆動力がプーリー82、歯付きタイミングベルト85、2段プーリー84、歯付きタイミングベルト86、プーリー83を介してパドル支持体87に伝わり、パドル支持体87がピン91を中心にその周囲を矢印dで示す方向に回転する。パドル支持体87に回転に伴い、パドルもピン91を中心に矢印dで示す方向に回転する。このことを、以下、パドルの回転という。
【0048】
パドルが回転して、パドルの先端部がトレイ50上に収容されている最上位の用紙Sの上面に沿って撓みつつその上面を摺擦する際に(図3の破線の姿勢)、パドルによる用紙Sへの押し当てによるパドルと用紙Sとの間の摩擦力により、用紙Sにパドルの回転力が搬送力として付与されて、用紙Sがストッパー部62に向けて搬送される。
用紙Sの用紙搬送方向先端(以下、単に「先端」という。)がストッパー部62のストッパー63に当たると、その搬送が規制され、用紙Sの先端がストッパー63の位置で揃い、用紙搬送方向に整合(FD整合)される。
【0049】
一方、回転軸75が回転すると、カム89が回転し、カム89の回転によりアーム81が回転軸74を支点として上下に揺動する。
図4は、アーム81が上下に揺動する様子を示す模式図である。
このアーム81の上下の揺動量は、トレイ50上の収容枚数に関わりなく(最大枚数の用紙が収容されていても)、アーム81が最上位に位置すると、どのパドルもトレイ50上に積載されている最上位の用紙から離間して最上位の用紙の上面には当たらず、アーム81が最上位から降下して最下位に至るまでの間に、回転するパドルの先端部が最上位の用紙の面に押し当てられて撓んだ状態になるように予め決められている。
【0050】
以下、どのパドルも用紙の上面に当たらないようになるアーム81(支持体87)の、トレイ50に対する位置を「退避位置」、パドルの先端部が用紙の上面に押し当てられて撓んだ状態になる位置を「整合位置」という。
このようにアーム81を上下に揺動する機構をとっているのは、次の理由による。
すなわち、FD整合部51とステープラー17とが近接した位置関係にあり、ステープラー17が用紙幅方向に移動する際に、アーム81を上方に持ち上げることによりステープラー17の移動軌跡からアーム81を逃がして、ステープラー本体5の一部5aがアーム81に当たるといったことを避けるためである。
【0051】
また、本実施の形態では、1枚の用紙Sがトレイ50に搬送されて来るごとに、その用紙Sに対するパドルの回転と停止を繰り返すことにより、パドルが用紙Sの上面に当たるときの当たり音の生じる時間を短くする制御をとっている。
この制御では、パドルをその先端部が用紙Sの上面に押し当てられて撓んだ姿勢で停止させることが行われる。このような撓んだ姿勢でパドルを停止させるのは、FD整合の乱れを防止するためである。
【0052】
すなわち、図5に示すように、次の用紙Sbが搬送ローラー対21により矢印aで示す方向に搬送されて来たときに、その用紙Sbの先端Scが、トレイ50上に収容されている最上位の用紙S1の上面に当たると、用紙SbとS1間の摩擦力による矢印aで示す方向の力が用紙S1に付与され、用紙S1がその下の用紙S2に対して矢印aで示す方向に動いてFD整合が乱れることがある。
【0053】
このため、パドル88aをその撓みによる復元力(弾性力)で用紙S1を上から押さえ付けるような姿勢で停止させることにより、用紙Sbが用紙S1に当たっても用紙S1が矢印aで示す方向に動き難くして、FD整合の乱れを防止するものである。
図6は、パドルの停止姿勢を拡大して示す図であり、パドル88aの先端部が最上位の用紙S1の上面に当たりつつ、その上面に沿うように撓んだ状態になっており、パドル88bは、用紙S1とは離間した状態になっている。
【0054】
このパドルの停止姿勢では、パドル88aの先端部が用紙S1の上面に当たって撓んだ状態になっているので、このまま停止姿勢を維持すると、次の用紙がトレイ50に搬送されて来たときにその用紙がパドルに当たってしまい、その用紙の搬送の邪魔になる。
このため、パドルを停止させたままアーム81を一旦、上に移動して、パドルを退避位置まで退避させ、次の用紙が搬送されて来るタイミングに合わせて、アーム81を下げつつパドルの回転が開始される。退避位置からの下降量は、トレイ50上の用紙の積載枚数に応じて予め決められている。
【0055】
このような停止姿勢にあるパドルを用紙S1から離間させる場合、上記の「発明が解決しようとする課題」の項で説明したような、パドルの復元力により用紙S1が用紙搬送方向とは逆方向に動いて、FD整合が乱れるといったことを防止する必要がある
そこで、本実施の形態では、パドルの停止姿勢を、パドル88aの先端部が用紙S1の上面に押し当てられてその上面に沿って撓む姿勢、かつ、支持体87が整合位置(第1位置)から退避位置(第2位置)に移動するとした場合に、パドル88aの先端部が用紙S1の上面から離間するまでの間に生じる、パドル88aの先端部の、元の姿勢に戻ろうとする復元力により、用紙S1に対してストッパー63に向かわせる方向(用紙搬送方向と同方向に相当)の力が作用するようになる所定の姿勢としている。
【0056】
このパドルの停止姿勢は、次のようにして決めることができる。
すなわち、用紙S1の面に沿ってストッパー63に向かう方向を正、その反対方向を負、パドル88aの先端部から用紙S1にかかるパドルの復元力F1(図7)の、用紙S1の面に平行な水平成分(摩擦力)をf1、用紙S1にかかる重力の水平成分をf2、用紙S1とその下の用紙Sとの摩擦力をf3、(f1+f2+f3)を用紙S1にかかる水平成分の合力Fとしたとき、F≧0であれば、用紙S1にストッパー63から離れる方向の力が作用せず、用紙S1がストッパー63に当たった状態が維持され、F<0であれば、用紙S1がストッパー63から離れる方向の力が用紙S1に作用して、用紙S1がストッパー63から離間してずれた状態になる。
【0057】
力f2の大きさは、トレイ50の傾斜角によって決まり、力f3の大きさは、使用される用紙Sの摩擦係数などによって決まるが、トレイ50の傾斜角が小さい場合や用紙の摩擦係数が小さい場合など力f2とf3が力f1に対して極小であれば、上記の式からf2とf3を外すとしても良い。
力f1の大きさは、パドル88aの撓みによる元に戻ろうとする復元力(弾性力)F1によって決まり、復元力F1は、パドルの停止姿勢によって変わる。
【0058】
図7(a)は、復元力F1と力f1の関係を示す模式図であり、またパドル支持体87の外周面の移動軌跡180を二点鎖線で示している。
パドルが同図に示す停止姿勢にあるときには、パドル88aの先端部182が移動軌跡180上に位置しており、パドル88aの根元部181の、用紙S1に対する角度αと略同じ角度で、パドル88aの先端部182の復元力F1が用紙S1に作用するようになっており、力f1の向きがストッパー63に向かう方向になっている。
【0059】
この停止姿勢から移動軌跡180に沿ってパドル支持体87が矢印F2で示す斜め上に移動すると、パドルの姿勢が破線で示す姿勢に変わるが、力f1の方向はストッパー63に向かう方向のまま変わらない。パドル支持体87がさらに上に移動して、パドル88aの先端部182が用紙S1から離間するまでの間、力f1、すなわちパドル88aの先端部182と用紙S1の上面との間の摩擦力がストッパー63に向かう方向にかかるようになり、用紙S1は、常時、パドル88aにより、ストッパー63に突き当てられている状態が維持される。
【0060】
一方で、図7(b)に示す停止姿勢では、パドル88aの先端部182が移動軌跡180よりも外側に位置しており、用紙S1にかかるパドル88aの復元力が、ほとんど垂直成分になるために、用紙S1に作用する力f1がゼロに近い大きさになっている。
この停止姿勢から移動軌跡180に沿ってパドル支持体87が斜め上に移動すると、矢印F2の水平成分F21の力により、破線で示すように、パドル88aの先端部182がストッパー63から離れる方向(用紙搬送方向とは逆方向)に移動して、パドル88aの先端部182と用紙S1の上面との間の摩擦力F3がストッパー63から離れる方向にかかるようになり、用紙S1が用紙搬送方向とは逆方向に動き、ストッパー63から離れて、整合が乱れることになる。
【0061】
従って、図7(a)に例示するように、パドル88aの先端部182が用紙S1から離間するまでの間に、パドル88aの先端部182と用紙S1の上面との摩擦力がストッパー63に向かう方向に作用するようになれば、用紙S1がストッパー63から離れる方向に動くことがなく、FD整合の乱れを防止できることになる。
用紙S1にストッパー63に向かう方向の力が作用するようになる所定の停止姿勢は、パドル88aの根元部181の接線(一点鎖線)をα、接線αが用紙S1の上面に交わる位置をβ、接線αと、用紙S1における位置βよりも搬送方向上流側の面部分とのなす角をθとしたとき、パドルの停止姿勢を、図7(a)に示す姿勢から図7(b)に示す姿勢まで角度θの大きさを徐々に大きくして可変させるとしたときに、図7(a)に示す力Fの向きが正(ストッパー63に向かう方向)から負に変わるときの姿勢を境界にして、その姿勢よりも角度θが小さくなる範囲内の姿勢とすることができる。
【0062】
上記の境界としては、力f2とf3をゼロとすれば約90〔°〕になり、従って角度θを鋭角、より好ましくは65°〜80°の範囲内になるような停止姿勢を設定することができる。パドル88aの先端部182が用紙S1の上面から離間するまでの間、角度θが鋭角になっている状態を維持できる姿勢を所定の停止姿勢とすることができる。
また、図7(a)に示すようにパドル88aの先端部182が用紙S1の上面に接して押圧する位置がパドル支持体87の移動軌跡180上または移動軌跡180よりも内側(ストッパー63側)になるような姿勢を所定の停止姿勢の目安にすることもできる。
【0063】
何れにしても、装置構成に応じて角度θの適した範囲が存在し、その適した範囲を実験やシミュレーションなどから求め、所定の停止姿勢として予め設定することができる。
パドルを所定の停止姿勢で停止させるには、パドル支持体87の回転位置を制御する必要があり、本実施の形態では、回転軸74の回転角制御が採用されている。
すなわち、回転軸74が1回転したときにパドル支持体87(パドル)も丁度、1回転するようにプーリー82〜84の径(ギア比に相当)が予め決められており、回転軸74の回転とパドルの回転とが同期するように構成されている。従って、回転軸74の基準からの回転角が判れば、パドル88aの1周における回転位置も判ることになる。
【0064】
そこで、図2に示すように回転軸74に、回転軸74と一体となって回転する、切り欠きを有する円板41を取着すると共に、円板41の切り欠きを検出するための回転位置検出センサー42を設け、さらに回転軸74にロータリーエンコーダー43を取り付けることにより、1回転ごとに、回転位置検出センサー42による切り欠きの検出時を基準に、ロータリーエンコーダー43から出力される回転角に応じたパルス信号の数をカウントして、回転軸74の、基準からの回転角を検出する構成をとっている。
【0065】
パドル88aが図6に示す所定の停止姿勢になるときの、基準からの回転軸74の回転角に対応するパルス信号のカウント値(目標値)を予め設定しておき、回転中のパドルを停止させる際には、基準からのパルス信号のカウント値がその目標値に到達した時点で回転軸74を停止させることにより、パドルを所定の停止姿勢で停止させることができる。
同様に、パドル88aを退避位置と整合位置に切り替えるために、カム89の回転角制御が行われる。すなわち、回転軸75に、回転軸75と一体となって回転する、切り欠きを有する円板44を取着すると共に、円板44の切り欠きを検出するための回転位置検出センサー45を設け、さらに回転軸75にロータリーエンコーダー46を取り付けることにより、1回転ごとに、回転位置検出センサー45による切り欠きの検出時を基準に、ロータリーエンコーダー46から出力される回転角に応じたパルス信号の数をカウントして、回転軸75(カム89)の、基準からの回転角を検出するものである。
【0066】
回転位置検出センサー45による円板44の切り欠きの検出時に、パドルが退避位置に位置するようにカム89と円板44の回転方向の位置関係を予め設定しておくことにより、切り欠きの検出時にパドルが退避位置まで移動したことを判断することができる。
また、ロータリーエンコーダー46から出力されるパルス信号のカウント値の大きさと、アーム81の上下方向の揺動によるパドルの移動量とを対応付けておくことにより、そのカウント値の大きさに基づき、パドルが退避位置を基準にどれだけ下に位置しているかを検出することができる。
【0067】
なお、トレイ50上の用紙積載枚数、すなわち用紙束の厚さによって、最上位の用紙S1の、トレイ50からの高さ位置が異なり、パドル88aの先端部182が用紙S1を押し付けるときの用紙S1の上面に対する当接角も変わるので、用紙束の厚さによって、パドルの、退避位置からの下降量と回転停止時のカウント値の目標値をそれぞれ適した値に切り替えることが望ましい。
【0068】
上記の回転角制御は、ステッピングモーターからなる駆動モーター76,77への駆動パルスを停止させるなどにより行うことができるが、これとは別に、例えばブレーキ機構などを設けるとしても良い。
図2に戻って、ストッパー部62は、トレイ50上の用紙Sの用紙搬送方向への搬送を規制するものであり、用紙幅方向に間隔をおいて4個のストッパー63,64,65,66と、ストッパー駆動部67(図4)を備える。
【0069】
ストッパー63〜66は、それぞれがパドルによる用紙への押し当て位置よりも用紙搬送方向下流に位置し、用紙幅方向に移動可能にトレイ50に支持されており、ストッパー駆動部67の駆動力を受けて用紙幅方向に移動される。
ストッパー駆動部67は、制御部20から指示された位置にストッパー63〜66を移動させる。このようにストッパーを用紙幅方向に移動させるのは、ステープラー17の移動に伴い、ステープラー17と一部のストッパーが干渉する場合があり、そのストッパーをステープラー17と干渉しない位置まで退避させるためである。
【0070】
(5)ステープラー17の移動
図8は、ステープラー17の移動域の大きさを示す平面図である。
同図に示すように、ステープラー17は、駆動部9の案内部9aに沿って移動自在に支持されている。案内部9aは、用紙幅方向に平行な直線部と、装置正面側と背面側において直線部の端部から用紙搬送方向とは逆方向に向かって曲がる曲線部を有する。
【0071】
ステープラー17が装置正面側の曲線部に位置するときがホーム位置になり、ホーム位置から直線部を介して装置背面側の曲線部までの間を移動することができ、その移動域内の任意の位置で停止して、トレイ50上に収容されている用紙束に対して、ステープル綴じを行うことができる。
ステープラー17とストッパー63(64〜66も同じ)とは、図4に示すように、ステープラー17の針出部6と針受部7との間の空間8の方がストッパー63の大きさよりも広くなっているため、ステープラー17がストッパー63に当たることはない。
【0072】
ところが、図8に示すようにステープル綴じ位置が、破線で示すストッパー66の位置に重なる場合、ストッパー66を移動させなければステープル綴じを行えないので、ストッパー66を実線の位置まで移動して、ステープル綴じを行えるようにするものである。
用紙束に対するステープル綴じ位置は、用紙サイズなどによって予め決まっており、ステープル綴じがどの位置で行われるかによって、どのストッパーをどこにどれだけ移動させれば良いかを予め決めておくことにより、ステープラー17の位置に関わりなく、ステープル綴じを実行することが可能になる。
【0073】
ステープラー17の移動は、トレイ50上にステープル綴じすべき全枚数の用紙Sが収容されてから開始されるが、ステープラー17の移動に先立って、アーム81の退避位置への移動と、必要に応じてストッパーの移動とが行われる。この移動制御は、制御部20により実行される。
(6)制御部20の構成
図9は、制御部20の構成を示すブロック図である。
【0074】
同図に示すように、制御部20は、CPU201と、ROM202と、RAM203と、パドル制御部204と、パドル制御情報格納部205と、タイマー206を備える。
CPU201は、画像形成装置1との間でプリントジョブの実行に関する情報をやりとりして、円滑な用紙搬送、排出、整合、ステープル綴じなどの各動作を実行する。
また、画像形成装置1からプリントジョブの開始、終了、設定モード(ステープル綴じモードなど)、用紙情報(サイズ(A4、B5など)、枚数、種類など)を取得して、プリントジョブが開始されたこと、終了したこと、ステープル綴じモードの指示があったこと、搬送される用紙Sのサイズ、ステープル綴じすべき用紙束の枚数、用紙種類などを知ることができる。
【0075】
ROM202は、用紙整合やステープル綴じなどの各動作のプログラムが格納されている。RAM203は、CPU201のワークエリアとなる。
パドル制御部204は、パドルを支持するパドル支持体87を回転可能に支持するアーム81の上下の移動と、パドル支持体87の回転駆動と停止を制御する。
パドル制御情報格納部205は、図10に示すように用紙種類ごとに、トレイ50上の用紙積載枚数に応じて、パドルの退避位置からの下降量と、パドルの所定の停止姿勢に対する、ロータリーエンコーダー43からのパルス信号のカウント値(パドル停止カウント)の目標値とが対応付けてなるパドル制御情報が格納されている。
【0076】
用紙種類には、普通紙、薄紙、厚紙が含まれており、種類の違いによって厚さが異なるので、どの用紙種類でもパドルによる用紙の押し付け量(押圧力)が略同じ条件になるように、用紙積載量によってパドルの下降量が異なる値に設定されている。
具体的には、用紙積載枚数が同じでも厚紙の方が薄紙よりも用紙束の厚みが厚いので、パドルの下降量は、厚紙の方が薄紙よりも小さな値に設定される。
【0077】
パドル停止カウントの目標値は、上記のようにトレイ50上の用紙束の厚みによって、パドル88aの用紙S1の上面に対する当接角が異なるので、用紙積載枚数の異なる範囲ごとに、その範囲に適した目標値が設定されている。
上記のパドル制御情報は、装置構成に応じて予め決められて、パドル制御情報格納部205の不揮発性の記憶部に書き込まれている。
【0078】
(7)用紙のFD整合とステープル綴じの動作
図11と図12は、用紙の整合とステープル綴じの動作を説明するためのフローチャートであり、制御部20により実行される。なお、当該動作が開始される時点では、トレイ50上に用紙が1枚も収容されていない状態で、パドルが退避位置に位置しているものとする。
【0079】
図11に示すように、用紙の枚数を示す変数nを1に設定する(ステップS1)。
そして、n枚目、ここでは1枚目の用紙に先端が検出されたか否かを判断する(ステップS2)。この用紙先端の検出は、用紙検出センサー24による用紙先端の検出信号を受け付けることにより行われる。
1枚目の用紙の先端が検出されたことを判断すると(ステップS2で「YES」)、タイマー206の計時を開始する(ステップS3)。
【0080】
タイマー206のカウント値が所定の時間T1に達したか否かを判断する(ステップS4)。この時間T1は、n枚目の用紙の先端が検出されてから、その用紙の先端が排出ローラー対22の上下のローラー間を通過するまでに要する時間に相当し、予め求められている。
タイマー206のカウント値が時間T1に達したことを判断すると(ステップS4で「YES」)、アーム81(支持体87)を退避位置に移動させる(ステップS5)。なお、1枚目の場合は、既に退避位置に位置しているので、退避位置の検出だけが行われ移動は行われない。
【0081】
時間T1の経過時は、n枚目の用紙の先端が排出ローラー対22の上下のローラー間を通過する時点であり、図5で説明したようにトレイ50上に既に用紙が収容されている場合には、n枚目の用紙の先端がトレイ50上に収容されている用紙束の最上位の用紙に丁度、当たる時点に相当する。従って、時間T1の経過を待って、アーム81を退避地位に移動させることにより、トレイ50上に収容されている用紙束の最上位の用紙がパドル88の先端部で押さえ付けられた状態で、n枚目の用紙の先端が搬送されて来ることになり、搬送されて来たn枚目の用紙の先端が、トレイ50上に収容されている用紙束の最上位の用紙に当たっても、用紙束に対するパドルによる押圧力の作用により、用紙がFD方向にずれ難くなり、FD整合の乱れを防止することができる。
【0082】
タイマー206のカウント値が所定の時間T2に達したか否かを判断する(ステップS6)。この時間T2は、n枚目の用紙の後端が検出されてから、その後端が搬送ローラー対21を通過した直後に至るまでに要する時間に相当し、予め求められている。
タイマー206のカウント値が時間T2に達したことを判断すると(ステップS6で「YES」)、搬送パドル23を図1の矢印bで示す方向に1回転させる(ステップS7)。これにより、n枚目の用紙が搬送パドル23により上から叩かれて、トレイ50上に落とされる。
【0083】
タイマー206のカウント値が所定の時間T3に達したか否かを判断する(ステップS8)。この時間T3は、n枚目の用紙の後端が検出されてから、その用紙がトレイ50上を降下して搬送され、その搬送方向先端(下端)がパドル88aの直下位置に至るまでに要する時間に相当し、予め求められている。
タイマー206のカウント値が時間T3に達したことを判断すると(ステップS8で「YES」)、パドル下降量を取得する(ステップS9)。パドル下降量の取得は、パドル制御情報格納部205に格納されているパドル制御情報を参照し、用紙情報に示される用紙の種類と用紙積載枚数に対応するパドル下降量を読み出すことにより行われる。例えば、用紙種類が普通紙、枚数n=1であれば、図10からパドル下降量D1が取得される。
【0084】
続いて、アーム81を退避位置からパドル下降量に応じた距離だけ下降させて整合位置に位置させつつパドルの回転を開始させる(ステップS10)。これにより、n枚目の用紙に対するパドルによるFD整合が開始される。
そして、整合板521,522によるCD整合を行う(ステップS11)。
次に、図12に示すように、タイマー206のカウント値が所定の時間T4に達したか否かを判断する(ステップS12)。この時間T4は、時間T3に、パドルによるn枚目の用紙に対するFD整合が開始されてから、その用紙の先端がストッパー63に当接するまでに要すると想定される時間を加算した時間に相当し、予め求められている。
【0085】
時間T4を長くし過ぎると、n枚目の用紙の先端がストッパー63に当たっているのにパドルが回転し続け、n枚目の用紙にパドルによる搬送力が付与され続ける時間が長くなり、n枚目の用紙の、パドルとの当接位置から先端までの部分に座屈が生じ易くなる。
一方で、時間T4を短くし過ぎると、n枚目の用紙の先端がストッパー63に当たる直前または当たった直後にパドルの回転が停止して、FD整合が中途半端で終わるおそれがあるので、FD整合に適した時間が設定される。
【0086】
タイマー206のカウント値が時間T4に達したことを判断すると(ステップS12で「YES」)、パドル停止カウントの目標値を取得する(ステップS13)。パドル停止カウントの目標値の取得は、パドル制御情報格納部205に格納されているパドル制御情報を参照し、用紙情報に示される用紙の種類と用紙積載枚数に対応する目標値を読み出すことにより行われる。例えば、用紙種類が普通紙、枚数n=1であれば、図10から目標値pt1が取得される。
【0087】
そして、パドルの回転方向における基準位置を検出したか否かを判断する(ステップS14)。この基準位置の検出の判断は、パドル停止カウントの目標値の取得後、最初に、回転位置検出センサー42による円板41の切り欠きが検出されたことにより行われる。
基準位置の検出を判断すると(ステップS14で「YES」)、ロータリーエンコーダー43により出力されるパルス信号の数をカウントして(ステップS15)、そのカウント値がパドル停止カウントの目標値に達したか否かを判断する(ステップS16)。
【0088】
カウント値がパドル停止カウントの目標値に達したことを判断すると(ステップS16で「YES」)、パドルの回転を停止させる(FD整合の終了)(ステップS17)。パドルの回転の停止は、駆動モーター76を停止させることにより行われ、パドル88aが上記の所定の停止姿勢で停止されることになる。この意味で、制御部20は、ステップS13〜S17の処理を実行する際に、パドルを所定の停止姿勢で停止させる停止手段として機能するものといえる。
【0089】
タイマー206のカウント値をゼロにリセットした後(ステップS18)、n枚目の用紙がステープル綴じすべき用紙束の最終紙であるか否かを判断する(ステップS19)。
最終紙ではないことを判断すると(ステップS19で「NO」)、現在の変数nに「1」をインクリメントして(ステップS20)、図11に示すステップS2に戻る。現在の変数nが1であれば、n=2とされて、ステップS2以降の処理が繰り返し実行される。
【0090】
ステップS19で最終紙と判断されるまで、ステップS2〜S20の処理が、トレイ50上に搬送されて来る用紙1枚ごとに実行され、1枚単位で、CD整合と、パドルの回転と停止とが切り替えられつつパドルの回転による用紙のFD整合と、パドルの所定の停止姿勢によるFD整合の乱れの防止とが実行される。
搬送されて来た用紙が最終紙と判断すると(ステップS19で「YES」)、ステープル綴じにおいてステープラー17がホーム位置から移動するか否かを判断する(ステップS21)。ステープラー17が移動する場合には(ステップS21で「YES」)、所定の停止姿勢でパドルが停止している状態でアーム81を退避位置に移動した後(ステップS22)、ステープラー17をホーム位置からステープル綴じ位置まで移動させて、トレイ50上の用紙束に対するステープル綴じを行う(ステップS23)。
【0091】
ステープラー17の移動前に(先立って)、アーム81を退避位置に移動させることにより、移動中のステープラー17にアーム81が当たることがなく、また、いずれのパドルもステープラー17に当たることがない。
一方、ステープラー17が移動しない場合には(ステップS21で「NO」)、アーム81の退避位置への移動とステープラー17の移動を禁止して、ホーム位置に位置するステープラー17によりトレイ50上の用紙束に対するステープル綴じを行う。
【0092】
ステープル綴じが終了すると、トレイ50上の、ステープル綴じ後の用紙束を排出ローラー対22により排出して(ステップS24)、積載トレイ部18に収容させて、当該フローチャートによる処理を終了する。
以上、説明したように本実施の形態では、パドルの所定の停止姿勢を、パドルの先端部が用紙束における最上位の用紙S1の上面に押し当てられて撓む姿勢、かつ、アーム81(パドル支持体87)が整合位置(第1位置)から退避位置(第2位置)まで移動するときにパドルの先端部が用紙S1から離間するまでの間に生じる、パドルの先端部の復元力により、用紙S1に対しストッパー63に向かわせる方向の力が作用するようになる姿勢としたので、用紙S1がストッパー63とは反対の方向に移動することにより、用紙S1が、その下の用紙に対してFD方向にずれることを防止することができる。
【0093】
本発明は、シート後処理装置に限られず、シート後処理装置が実行するパドルの停止制御方法であるとしてもよい。また、その方法をコンピュータが実行するプログラムであるとしてもよい。また、本発明に係るプログラムは、例えば磁気テープ、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、DVD−ROM、DVD−RAM、CD−ROM、CD−R、MO、PDなどの光記録媒体、フラッシュメモリ系記録媒体等、コンピュータ読み取り可能な各種記録媒体に記録することが可能であり、当該記録媒体の形態で生産、譲渡等がなされる場合もあるし、プログラムの形態でインターネットを含む有線、無線の各種ネットワーク、放送、電気通信回線、衛星通信等を介して伝送、供給される場合もある。
【0094】
(変形例)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施の形態では、1つのパドル支持体87に2つのパドル88a,88bが回転方向に所定の間隔をおいて取り付けられる構成例を説明したが、パドルの数は2つに限られず、例えば1つ、または3以上の複数であっても良い。
【0095】
また、複数のパドルの場合、回転方向に隣り合うパドル間の間隔が上記の大きさに限られることはなく、パドルの個数に応じてFD整合に適した間隔を設定することができる。
さらに、パドル88a,88bを同じ形状、材料のものを用いるとしたが、これに限られない。複数のパドルのそれぞれについて、長さ、幅、厚み、材料のいずれかまたは2以上を相互に異ならせ、複数のパドルのうち、所定の停止姿勢で停止して最上位の用紙S1を押さえる1つのパドルと、用紙S1に接しない(離間する)他のパドルとを用紙(シート)種類に応じて切り替える構成をとることもできる。
【0096】
具体的には、用紙種類として例えば、普通紙(例えば60〜80〔g/m〕程度:第1の種類)と、普通紙よりも厚みが薄い薄紙(第2の種類)があり、複数のパドルとして、第1の厚みの第1パドルと、第1の厚みよりも薄い(第1のパドルとは弾性力の異なる)第2パドルが含まれる場合、所定の停止姿勢で停止させるパドルを、普通紙に対して第1パドル、薄紙に対して第2パドルに切り替える構成をとることができる。
【0097】
薄紙は、普通紙や厚紙よりも腰が弱いので、停止中におけるパドルによる薄紙への押圧力(復元力)が大きいと、薄紙の、パドルによる押付位置からストッパー63までの間の部分に座屈が生じるおそれがある。このため薄紙については押圧力の小さい方の第2パドルを用いるものである。この構成をとる場合、パドルの所定の停止姿勢は、どのパドルが用いられても同じ姿勢(図7の角度θが同じ)とされる。
【0098】
なお、用紙の厚みに限られず、用紙種類を腰の強さで区別する(第1の強さの第1種類、第1よりも弱い第2種類など)としても良い。パドルの復元力(弾性力)は、パドルの厚みに限られず、長さ、幅、材料などの条件によっても変わり得るので、異なる用紙種類ごとに、その種類の用紙(シート)に適した弾性力を有するパドルを対応付けておいて、異なる複数のパドルのうち、使用される用紙の種類に対応するパドルを所定の停止姿勢で停止させるパドルとする構成をとることができる。
【0099】
また、用紙種類に代えて、トレイ50上の積載枚数に応じてパドルを切り替える構成としても良い。すなわち、積載枚数が少ない場合と多い場合とでパドルが用紙S1に当たる角度などが変わるので、積載枚数、例えば1〜10枚、11〜20枚などの範囲ごとに、その範囲に適したパドルを予め対応付けておいて、トレイ50への複数枚の用紙の搬送中に、用紙の積載枚数が多くなるに連れて、その積載枚数に対応するパドルを所定の停止姿勢で停止させるパドルとして切り替える構成をとることができる。
【0100】
(2)上記の(1)では、用紙種類などに応じて所定の停止姿勢で停止させるパドルを切り替える場合、どのパドルも同じ停止姿勢にするとしたが、これに限られず、例えば停止姿勢を異ならせる構成をとることもできる。
すなわち、図7におけるパドル88aの根元部181の接線αと用紙S1の上面との角度θの大きさをθ1としたときの所定の停止姿勢を第1停止姿勢、角度θ1よりも小さい角度をθ2としたときの所定の停止姿勢を第2停止姿勢としたとき、第1停止姿勢と第2停止姿勢を用紙種類に応じて切り替えるものである。
【0101】
角度θの大小で例えばθ1よりもθ2の方がパドルによる用紙S1への押圧力が大きくなる場合に、用紙種類として普通紙に対して角度θ2の第2停止姿勢、薄紙に対して角度θ1の第1停止姿勢に切り替えるとすることができる。薄紙は、普通紙よりも腰が弱いので、パドルによる押圧力がある程度、少ない方が薄紙の座屈を防止することができるからである。このことは、厚紙と普通紙の関係についても適用することができる。
【0102】
また、普通紙と光沢紙、ざら紙など用紙表面の摩擦係数の大きさが異なる種類のシートにも適用することができる。例えば、摩擦係数が小さいためにパドルと用紙とが滑り易い場合には、滑り難い用紙に対するよりも押圧力がある程度、大きくなる姿勢に切り替える構成をとることができる。
すなわち、所定の停止姿勢でのパドルの復元力による、用紙S1の上面が押圧される力が第1の大きさになる姿勢を第1停止姿勢、同じパドルによる用紙S1の上面への押圧力が第1の大きさよりも小さい第2の大きさになる姿勢を第2停止姿勢として、搬送される用紙の種類に応じて、所定の停止姿勢が第1停止姿勢と第2停止姿勢のいずれかに切り替わるように、回転しているパドル支持体87を停止させる制御を行うことができる。
【0103】
パドルの第1停止姿勢と第2停止姿勢が、所定の停止姿勢として、パドルの先端部が用紙S1から離間するまでの間に、パドルによる復元力が用紙S1に対してストッパー63に向かう方向が作用するようになるという所定の条件を満たす姿勢であれば良い。
(3)上記実施の形態では、複数のパドルのうち、1つのパドルだけを所定の停止姿勢で停止させて最上位の用紙S1を押さえ、他の1以上のパドルを用紙S1から離間するようにしたが、これに限られない。アーム81が持ち上げられる際に、用紙S1がストッパー63から離間する方向に動くようなことが生じなければ良く、例えば、回転停止中に複数のパドルが同時に用紙S1に接し、複数のパドルのうち、少なくとも1つが所定の停止姿勢で停止するように構成するとしても良い。所定の停止姿勢でパドルを停止させる制御は、上記と同様の回転角制御を適用することができる。
【0104】
また、複数のパドル支持体87を用紙(シート)幅方向に間隔をおいて配置する構成例を説明したが、これに限られず、1つのパドル支持体だけを配置し、そのパドル支持体に1または複数のパドルを設ける構成をとるとしても良い。この場合、パドル支持体を用紙搬送路の幅方向中央に相当する位置に配する構成をとることが望ましい。
(4)上記実施の形態では、トレイ50に用紙が1枚、搬送されて来るごとに、パドルの回転と停止とを繰り返す制御(第1制御)を行うとしたが、これに限られない。
【0105】
例えば、n枚目と、次に搬送される(n+1)枚目との用紙間隔(時間)が所定時間以上の場合、上記の第1制御を行い、所定時間よりも短い場合、第1制御に代えて(禁止して)、パドル支持体87(パドル)の回転停止を禁止して、その回転を継続する第2制御を行うとしても良い。
第2制御において、例えばパドルの回転の継続により用紙S1に座屈が生じるおそれがある場合には、パドル支持体87を回転し続けた状態で、上記と同様にアーム81を退避位置まで移動させてから(パドルをn枚目の用紙S1から離間させてから)、(n+1)枚目の用紙が搬送されて来るタイミングに応じてアーム81を整合位置まで下ろし、(n+1)枚目の用紙に対するFD整合を行うことができる。
【0106】
また、第2制御において、例えば用紙S1に座屈が生じることがないような場合には、パドル支持体87(パドル)の回転停止とアーム81の整合位置(第1位置)から待機位置(第2位置)への移動とを両方、禁止して、そのままの整合位置でパドルの回転を継続して、n枚目と(n+1)枚目に関わらず、トレイ50上に搬送されて来る用紙のそれぞれに対してFD整合を行う制御をとることもできる。なお、座屈が生じるか否かは、例えば用紙種類(厚みなど)から判断することができる。
【0107】
(5)上記実施の形態では、トレイ50に用紙が搬送されて来るタイミングに応じて、パドルの回転が停止した状態でアーム81を待機位置から整合位置に下降させつつ回転を開始させる動作(FD整合開始動作)を行う例を説明したが、FD整合開始動作の開始タイミングを用紙1枚ごとに同じとする構成に限られず、例えば特定の条件に応じて可変するとしても良い。
【0108】
例えば、1枚目(n=1)と2枚目以降とで開始タイミングを異ならせる構成が考えられる。具体的には、2枚目以降の用紙に対する開始タイミングを基準として、1枚目については、基準よりも早いタイミングに設定することができる。
例えば、n枚目の用紙がトレイ50に収容されており、次の(n+1)枚目の用紙が搬送されて来る前からFD整合開始動作を開始させると、その時点でトレイ50に収容されているn枚目の用紙の上面に、回転するパドルが断続的に当たっている状態が続き、それから(n+1)枚目の用紙がトレイ50上に搬送されて来ることになる。
【0109】
回転するパドルが用紙を叩いている時間が長いと、それだけ、その当たり音が発生している時間も長くなり、ユーザーにとって耳障りになるおそれがある。一方で、トレイ50上に用紙が収容されていないときには、トレイ50の上面をパドルが叩くことになるが、トレイ50が通常、板金または樹脂で形成されているために、積載されている用紙の上面を叩く場合よりも当たり音の音量が低いことが多い。
【0110】
そこで、トレイ50に既に1枚以上の用紙が収容されているときには(n≧2)、FD整合に支障が生じない範囲内で、できるだけFD整合開始動作の開始を遅らせ、トレイ50に用紙がまだ収容されていない1枚目のとき(n=1)には、1枚目の用紙に対するFD整合の開始タイミングを早めて、FD整合の準備を完了しておくことができる。1枚目の用紙がその静電気の影響などによりトレイ50の上面を滑り難くなるような場合などに、特に有効である。
【0111】
FD整合の開始タイミングを早めることは、ステープル綴じされた後の用紙束をトレイ50から排出して、次にステープル綴じすべき用紙の1枚目がトレイ50に搬送されて来るときにも適用することができる。プリントの生産性を高めるべく、用紙の搬送間隔が極めて短い場合に、ステープル綴じによる用紙束の排出後、直ぐに次のステープル綴じのために1枚目の用紙がトレイ50に搬送されて来るときに、用紙束の排出動作と並行して、FD整合開始動作を開始することにより、次に搬送されて来る1枚目の用紙に対するFD整合の準備を完了しておき、その1枚目の用紙に対するパドルによる搬送かつFD整合をより良好に実行することができるようになる。
【0112】
(6)上記実施の形態では、ステープラー17が用紙端縁に沿って移動可能としたが、これに限られず、一箇所に固定としても良い。この場合、ストッパーが固定支持されるとしても良い。
また、トレイ50に用紙Sが搬送されて来るごとに1枚の用紙Sに対してパドルの回転と停止を切り替えつつアーム81を上下動させる構成としたが、これに限られない。
【0113】
例えばステープラー17の移動域がアーム81と干渉する構成において、1枚の用紙ごとにアーム81を上下動させることをせずに、ステープル綴じすべき全枚数の用紙が収容された後、ステープル綴じのためにステープラー17が移動する際にだけアーム81を上に移動して、ステープラー17の移動域から逃がす構成をとることもできる。パドルが用紙を叩くときの当たり音がユーザの耳触りになることがほとんどない程度の低音である場合に、パドルの回転と停止を切り替える動作を行わないような構成に適用できる。
【0114】
さらに、上記では所定の支点を中心に上下に揺動するアーム81を用いる構成例を説明したが、パドル支持体87(パドル)を最上位の用紙S1よりも上の位置で当該用紙S1に対して、近づく方向と遠ざかる方向に移動可能な構成であれば、アームの揺動機構に限られず、他の機構をとることもできる。
(7)上記実施の形態では、本発明に係るシート後処理装置をステープル綴じ動作を実行するものに適用した場合の例を説明したが、これに限られない。後処理として、例えばシートに1または複数個の孔を開けるパンチ処理を行う機能を有するシート後処理装置に適用できる。シート束に含まれる何枚かのシートが他のシートに対してずれた状態でシート束へのパンチ処理を行うと、シート1枚ごとにその孔の位置がずれることになる。パンチ処理機能を有するシート後処理装置に適用する場合、パンチを行うユニットがシートの端縁に沿って移動可能な構成とすることができる。
【0115】
また、上記実施の形態及び上記変形例の内容をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、シートに対するステープル綴じなどの後処理を行うシート後処理装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0117】
1 画像形成装置
2 シート後処理装置
16 用紙整合部
17 ステープラー
20 制御部
50 後処理用のトレイ
51 FD整合部
52 CD整合部
61 パドル部
62 ストッパー部
63,64,65,66 ストッパー
76,77 駆動モーター
81 アーム
88a,88b,88c,88d,88e パドル
181 パドルの根元部
182 パドルの先端部
204 パドル制御部
205 パドル制御情報格納部
S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置から出力され、後処理用のトレイに積載された最上位のシートの上面に、当該シートの幅方向に沿った軸を中心に回転する支持体に支持された可撓性のパドルの先端部を押し当てて、パドルの回転力により当該シートを搬送し、その押し当て位置よりも搬送方向下流のストッパーで当該シートの搬送を規制することにより、当該シートを搬送方向に整合した後、後処理を施すシート後処理装置であって、
回転している支持体を、パドルの先端部が前記シートの上面に当たる第1位置で所定の停止姿勢になるように停止させる停止手段と、
第1位置で停止されている支持体を、当該シートから遠ざかる方向にパドルの先端部が当該シートから離間する第2位置まで移動させる移動手段と、を備え、
前記所定の停止姿勢は、
パドルの先端部が前記シートの上面に押し当てられて撓む姿勢、かつ、支持体が第1位置から第2位置まで移動するときにパドルの先端部が当該シートから離間するまでの間に生じる、パドルの先端部の復元力により、当該シートに前記ストッパーに向かわせる方向の力が作用するようになる姿勢であることを特徴とするシート後処理装置。
【請求項2】
前記支持体には、前記パドルとは別の1以上のパドルが、支持体の回転方向の異なる位置に支持されており、
複数のパドルは、
1つのパドルが所定の停止姿勢で停止したときに、他のパドルが前記シートから離間する状態になるように、支持体における回転方向の支持位置が設定されており、
前記停止手段は、
回転している支持体を、前記1つのパドルが所定の停止姿勢になるように停止させることを特徴とする請求項1に記載のシート後処理装置。
【請求項3】
複数のパドルは、
それぞれ弾性力が異なることを特徴とする請求項2に記載のシート後処理装置。
【請求項4】
搬送されるシートの種類ごとに、複数のパドルのうち、その種類のシートに適した弾性力を有するパドルが対応付けられており、
前記停止手段は、
複数のパドルのうち、搬送されるシートの種類に対応するパドルが前記1つのパドルとして所定の停止姿勢になるように、回転している支持体を停止させることを特徴とする請求項3に記載のシート後処理装置。
【請求項5】
トレイ上におけるシート積載枚数に応じて、複数のパドルのうち、その枚数に適した弾性力を有するパドルが対応付けられており、
前記停止手段は、
複数のパドルのうち、シート積載枚数に対応するパドルが前記1つのパドルとして所定の停止姿勢になるように、回転している支持体を停止させることを特徴とする請求項3に記載のシート後処理装置。
【請求項6】
前記所定の停止姿勢には、
当該停止姿勢でのパドルの復元力による、トレイ上における最上位のシートの上面が押圧される力が第1の大きさになる第1停止姿勢と、第1の大きさよりも小さい第2の大きさになる第2停止姿勢が含まれ、
前記停止手段は、
搬送されるシートの種類に応じて、所定の停止姿勢が第1停止姿勢と第2停止姿勢のいずれかに切り替わるように、回転している支持体を停止させることを特徴とする請求項1に記載のシート後処理装置。
【請求項7】
前記トレイ上に積載されたシートの端縁に沿って第1後処理位置と第2後処理位置との間を移動自在であり、当該シートに対して後処理を実行する後処理部を備え、
前記移動手段は、
第1後処理位置に位置する後処理部が第2後処理位置まで移動して後処理を実行する場合には、その移動に先立って第1位置で停止されている支持体を第2位置に移動させ、後処理部が第2後処理位置に移動せずに第1後処理位置で後処理を実行する場合には、支持体の第1位置から第2位置への移動を禁止することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシート後処理装置。
【請求項8】
前記支持体を回転駆動する駆動手段と、
前記停止手段と移動手段と駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記移動手段は、支持体を第1位置と第2位置の間を移動可能であり、
前記制御手段は、
トレイ上に搬送される複数枚のシートの搬送間隔が所定時間以上の場合に、トレイ上に収容されているn(1以上の整数)枚目のシートの次に(n+1)枚目のシートがトレイに搬送されて来るタイミングに応じて、n枚目のシートに対してパドルの先端部が所定の停止姿勢になるように第1位置で停止している支持体を第2位置に移動させた後、第2位置から下降しつつ回転を開始させ、トレイ上の(n+1)枚目のシートに対するパドルによる整合の後、(n+1)枚目のシートに対してパドルの先端部が所定の停止姿勢になるように支持体を第1位置で停止させる第1制御と、
前記搬送間隔が所定時間よりも短い場合に、支持体の回転の停止と第1位置から第2位置への移動とを禁止して、n枚目と(n+1)枚目に関わらず、支持体を回転し続けて、トレイ上に搬送されて来るシートをパドルにより整合する第2制御と、
を切り替えて実行することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシート後処理装置。
【請求項9】
前記シートの幅方向に当該シートを整合する幅方向整合手段を備え、
前記停止手段は、
前記幅方向整合手段による整合が終了した後に、回転している支持体を停止させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のシート後処理装置。
【請求項10】
所定の支点を中心に上下に揺動するアームを備え、
前記支持体は、
アームに回転自在に設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のシート後処理装置。
【請求項11】
前記後処理は、
複数枚のシートを綴じるステープル綴じであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のシート後処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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