説明

シート成形容器および金型

【課題】 成形時に金型の動作を制御することによって壁面にシート厚の倍厚の縦リブを設けて、対押しつぶし強度を高めることができる容器構造を開示する。
【解決手段】 固定型と、この固定型に対して出入りする移動型とからなり、固定型の底面には少なくともシートの2倍の幅を有する段差をもって内側に貫通穴が設けられ、移動型はこの貫通穴に密に出入り可能とする。シート成形当初に前記段差と同一面にあった前記移動型を、金型内側に対して押し上げる。移動型は固定型の底面と同一面まで押し上げる。固定型とこの固定型に対して出入りする移動型とからなり、固定型の側壁面には垂直方向に沿って一定幅の溝を設け、溝の底部には少なくともシートの2倍の幅を有する段差をもって内側に溝と同方向に設けられたスリットを有し、移動型はこのスリットに対して出入り可能とし、シート成形当初に前記段差と同一面にあった前記移動型を、金型内側に対して押し上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄肉シート成形によって製造される容器に係り、軽量化を図りながら強度の高い容器の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から例えばいちごなどの果物の容器をシート成形によって製造する技術は広く知られている。
【0003】
これらのシート成形容器は、まず薄肉の合成樹脂シートを昇温して柔軟化させ、これを真空成形金型あるいは圧空成形金型、又は真空圧空成形金型によって容器に成形するものである。したがって、このようにして成形された容器は基本的には一定の厚みからなることになる。
【0004】
【特許文献1】特開平09−169377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した公知技術は、典型的なシート成形品を示しており、強度を保証するためにリブが設けられているが、複雑な形状のリブを採用しているために金型の費用がかさむ。また、リブ自体も金型の表面形状に沿った形状であり、細幅のリブは構造上採用することができない。そうすると、シート成形容器としての強度は基本的にはシートの厚さに依存せざるを得ないということになる。
【0006】
ところで、スーパーマーケットなどで広く採用されているシート成形容器は、内容物の種類にもよるが、0.3mm程度の厚さのシートを利用することが多い。しかしながら、近年の石油製品の高騰のため、同じ強度を保証することができるのであればシート厚が薄いほど単価を抑制することができる。
【0007】
本発明は、このような観点からなされたもので、成形時に金型の動作を制御することによって壁面にシート厚の倍厚の縦リブを設けて、対押しつぶし強度を高めることができる容器構造を開示するものであり、ひいては採用するシート厚を薄くすることができる技術を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では上述した課題を解決するために、固定型と、この固定型に対して出入りする移動型とを用いた。そして、固定型の底面には少なくともシートの2倍の幅を有する段差をもって内側に貫通穴が設けられ、移動型はこの貫通穴に密に出入り可能とした。この構造において、移動型はシート成形当初には前記段差と同一面に位置させるが、真空成形あるいは圧空成形を行った状態において移動型を金型内側に対して押し上げるという手段を用いた。この手段では、前記段差の幅でシートに対してシートの倍の厚みのリブが形成されることになる。また、移動型を固定型の底面と同一面まで押し上げる請求項2の手段では、固定型において想定される底面と同一面を移動型で成形することになり、リブの高さは移動型の移動した距離の2分の1とすることになる。
【0009】
次に、第二の手段として、本発明では、同様に固定型と、この固定型に対して出入りする移動型とを用いた。そして、固定型の側壁面には垂直方向に沿って一定幅の溝が設けられ、この溝の底部には少なくともシートの2倍の幅を有する段差をもって内側に溝と同方向に設けられたスリットを有し、移動型はこのスリットに対して出入り可能とした。この構造において、シート成形当初に前記段差と同一面にあった移動型を、金型内側に対して押し上げるという手段を用いた。このようにして構成されたシート容器には、壁面に対して垂直方向にリブが出現することになる。また、移動型を固定型の内表面と同一面まで押し上げる請求項3の手段では、平坦な側壁面に対してリブが設けられた形状を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では上述した手段を採用することとしたので、シート成形容器の底面及び/又は側壁面にリブを設けることができた。しかも、段差の幅を調整することによってリブはシートの倍の厚みのあたかも1枚のリブとして出現させることができるので、その強度は極めて高いものとなる。したがって、その結果として従来と同様の強度を有する容器を本発明によって製造しようとすれば、採用するシートを薄くすることができ、コスト削減に大きく寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。なお、本発明では容器の底面、上面あるいは側面に補強を施す構成であるが、それぞれについて個々に説明する。
【0012】
図1は、容器の底面を補強する場合について説明したもので、図1aにおいて1はシート成形金型の固定型、2は移動型である。固定型1は本実施形態では、斜面状の壁面3、第一底面4、第二底面5、および第一底面4と第二底面5を接続する垂直面6によって構成されており、第二底面5の中央部には貫通穴7が設けられている。そして、第二底面5の横幅は、少なくとも成形の対象であるシートの2倍の厚みに相当する幅を有している。移動型2は、貫通穴7に密に出入りする方向で往復動を行う。このように構成された一組の金型によって成形を行うが、先ず移動型2を図1aの位置に設定した状態、即ち移動型2の上面が固定型1の第二底面5の高さに一致する高さに設置し、真空成形、熱盤圧空成形、真空圧空成形など、所定のシート成形を行う。そうすると、シートは図1aの固定型1および移動型2の金型内形状に沿って成形が行われる。この状態ではシートは加熱によって軟化している。続いて、図1bに示すように移動型2を適宜ピストンなどで上昇させる。そうすると、軟化状態のシートは真空又は圧空、あるいは真空圧空によって金型に密着した状態で底形状が変形し、図1bにおける金型内形状に沿った状態に成形される。ただし、シート自体は熱変形によって延びることはないので、垂直面6と移動型2によって挟まれた部分の高さは図1における高さhの2分の1の高さになる。このようにして成形された容器は、冷却されることによって底面にリブが存在するシート容器となる。なお、リブの幅は第二底面5の横幅に依存するが、上述したように横幅を極力シート厚の倍程度に近づければ、リブはシート厚の2倍の厚みを持ったものとなり、強度を確保することができる。図2は図1における金型に対して成形されるシートを書き加えた状態を示す。
【0013】
なお、図1の金型を用いれば、底面に設けられるリブは底の外周よりも第一底面4だけ内側に形成されることになるが、金型として第一底面4を省略すれば、リブは底の外周に沿って形成されることになる。即ち、リブ自体の平面形状については、垂直面6およびこれに対応する貫通穴7の形状に応じて適宜決定することができる。また、本実施形態で成形できる容器は、実および蓋の何れも可能である。
【0014】
次に、リブを側壁面に設けるための構成を説明する。図3は側壁面に対してリブを成形するための金型の要部を示したものであって、図3において、10は固定型、11は移動型であり、移動型11は、固定型10の空間部12の壁面に沿って斜め方向に移動する。そして、図4の拡大図に示すように、固定型10には垂直壁面に沿ってリブを設けようとする部分に細幅で一定幅の溝13が形成されており、この溝13の段差として機能する底部14には溝よりも狭い幅のスリットが形成され、このスリットに対して当初位置が底部14と同一平面になるように突条の移動型11が設けられている。本実施形態では、溝13の深さは2mmとする。続いて、このような側壁構造を有する金型に対して真空成形、圧空成形などによってシート成形を行うと、シートは固定型10と移動型11が組み合わされた表面形状に沿って成形される。そして、移動型11を固定型10の空間部12に沿って押し上げると、溝13の表面形状に沿って位置するシートが移動型11に従って押し上げられるが、移動型11の上面が固定型10の内面と同一面になるまで押し上げた場合には、高さ1mmのリブが形成されることになる。図5は移動型11を押し上げた状態の拡大図であり、図6は横断面図である。本実施形態では、図面に示したように移動型11の幅が比較的狭く、リブはその左右に一対形成されることになるが、溝13および移動型11の横幅を十分に広くすれば、一対のリブの間隔も広くなることはいうまでもない。
【0015】
なお、側壁面に形成される一対のリブについては、特にその横方向の間隔を限定するものではなく、側壁面に櫛歯状に多数形成することも可能であるし、数cm単位で出現させることも可能である。必要なことは、このようにして成形されたリブによって、上下押しつぶし方向に対する強度が向上することである。
【0016】
上述したように、本発明ではシート成形容器の底面および側面にリブを設けるものであるが、金型の構造を両者適用することによって双方同時に成形することも可能である一方、側壁のみにリブを出現させることも可能である。発明者の比較検討によると、従来のリブが存在しない厚さ0.3mmのシート容器とほぼ同等の強度は、リブを形成したものでは厚さを20〜50%削減した場合にも同様に達成することができた。果物などの包装容器として利用する場合には、従来例以上の強度は必要ないので、むしろ原材料のコスト削減に最適となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】底面にリブを設けるための金型の組合わせを示す横断面図
【図2】図1の金型を用いてシート成形を行う状態を示した横断面図
【図3】側壁面にリブを設けるための金型の組合わせを示す横断面図
【図4】同、要部拡大斜視図
【図5】移動型を押し上げたところを示す要部拡大斜視図
【図6】同、横断面図
【符号の説明】
【0018】
1・10 固定型
2・11 移動型
3 壁面
4 第一底面
5 第二底面
6 垂直面
7 貫通穴
12 空間部
13 溝
14 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート成形に用いる金型であって、固定型と、この固定型に対して出入りする移動型とからなり、前記固定型の底面には少なくともシートの2倍の幅を有する段差をもって内側に貫通穴が設けられ、前記移動型はこの貫通穴に密に出入り可能とし、シート成形当初に前記段差と同一面にあった前記移動型を、金型内側に対して押し上げることを特徴とするシート成形容器の金型。
【請求項2】
移動型は、固定型の底面と同一面まで押し上げられる請求項1記載のシート成形容器の金型。
【請求項3】
シート成形に用いる金型であって、固定型と、この固定型に対して出入りする移動型とからなり、前記固定型の側壁面には垂直方向に沿って一定幅の溝が設けられ、この溝の底部には少なくともシートの2倍の幅を有する段差をもって内側に溝と同方向に設けられたスリットを有し、この前記移動型はこのスリットに対して出入り可能とし、シート成形当初に前記段差と同一面にあった前記移動型を、金型内側に対して押し上げることを特徴とするシート成形容器の金型。
【請求項4】
移動型は、固定型の内表面と同一面まで押し上げられる請求項3記載のシート成形容器の金型。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの金型を用いて製造されたシート成形容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−334972(P2006−334972A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163842(P2005−163842)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(592035246)株式会社山田工作所 (8)
【Fターム(参考)】