説明

シート排出装置及び画像形成装置

【課題】シートの排出方向が下方になり過ぎたり上方になり過ぎたりすることを制限し、排紙性能の向上、及び排紙オプションを接続した際の安定した受渡しが可能となるシート排出装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】シート排出装置1では、搬送路13及び搬送路16から第1の排出角θ及び第2の排出角θで進入して排出ローラ対5から夫々排出されるシートSの排出角θ,θの角度差βが小さくなるように、例えば排出上ローラ6を移動させる。これにより、シートSの排出方向が下方になり過ぎたり上方になり過ぎたりすることを制限し、装置外方への排紙性能を向上させて、排紙オプションを接続した際の安定した受渡しを行うことが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート排出装置及び画像形成装置に関し、特に、排出トレイの直前にて2つの搬送路が合流する搬送路を有する、複写機、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機等の画像形成装置では、排出トレイ上にシートの画像面を裏向きに排出して積載する態様(以下フェイスダウン(FD)排紙)と、シートの画像面を表向きに排出して積載する態様(以下フェイスアップ(FU)排紙)とを備えるものがあった。
【0003】
FD排紙とFU排紙を提供する手段としては、夫々に応じた排出トレイを設ける構成(排出トレイが2箇所)と、FD排紙又はFU排紙の何れか一方のシートを装置本体内で反転させて同一の排出トレイへ排出する構成(排出トレイが1箇所)の構成とがあった。
【0004】
また、多機能プリンタ(MFP)等では、画像形成部の上部に自動原稿搬送装置(ADF)が、下部に給紙デッキが配置されることが多く、排出トレイを製品の側面に設けることで、装置高さを抑え、排紙オプションを接続させる構成のものがあった。
【0005】
ここで、図3及び図4を参照して、従来のシート排出装置を用いた画像形成装置について説明する。図3は従来のシート排出装置101を用いた画像形成装置100の概略図、図4(a)はシート排出装置101におけるFD排紙状態を示す概略図、図4(b)はシート排出装置101におけるFU排紙状態を示す概略図である。
【0006】
図3に示すように、シート排出装置101を備える画像形成装置100は、給紙カセット112から給送ローラ113によって送り出されるシートSを転写部119に搬送する搬送路106を備えている。また、画像形成装置100は、転写部119でトナー画像を転写されたシートSを定着部115に搬送する搬送路107と、定着部115でトナー画像を定着されたシートSを排出トレイ11にFU排紙するように搬送する搬送路109とを備えている。更に、画像形成装置100は、定着部115でトナー画像を定着されたシートSを排出トレイ11にFD排紙するように搬送する搬送路116,117,118を備えている。また、画像形成装置100は、搬送路109と搬送路118との合流位置近傍の下流に配置されてシートSを排出トレイ11に排出する排出ローラ対105と、各部を統括的に制御する制御部17とを備えている。
【0007】
画像形成装置100では、給紙カセット112に積載されたシートSが、給送ローラ113によって搬送路106を矢印L方向に搬送され、画像形成部114にて形成されたトナー画像を転写部119で転写される。トナー画像を転写されたシートSは、定着部115でトナー画像を定着され、切換え部材102(図4参照)により、FU排紙の場合は搬送路109を介して矢印J方向へ、定着部115のローラによって搬送される。また、FD排紙の場合は搬送路116を介して矢印F方向へ、定着部115のローラによって搬送される。そして、FD排紙の場合は、更に搬送路117を反転ローラ対103によって搬送され、シートSの後端が反転切換え部材104を越えた位置で、反転ローラ対103の回転とともに一旦停止される。
【0008】
その後、シートSは、反転ローラ対103が逆回転することでシート搬送方向を反転されて搬送路117,118を矢印G方向へと搬送され、更に排出ローラ対105によって排出され、排出トレイ11上に積載される。一方、FU排紙の場合には、定着部115のローラから、矢印J方向に搬送され、そのまま排出ローラ対105によって排出され、排出トレイ11上に積載される。
【0009】
ここで、排出ローラ対105から排出されるシートSの排出角は、排出ローラ対105のニップ角度の他に、排出ローラ対105の上流の搬送路の影響を受ける。このため、図4(a)に示すように、FD排紙の場合には、排出ローラ対105の上流の搬送路が水平方向に近い角度となっており、シートSは、矢印Iで示す方向へと排出されることとなる。
【0010】
一方、図4(b)に示すように、FU排紙の場合には、排出ローラ対105の上流の搬送路が垂直方向に近い角度になっているため、シートSは、矢印K方向へと排出されることとなる。よって、FD排紙時の排出角(排出方向)とFD排紙時の排出角(排出方向)との間には、排出角度差γが生じることとなる。排出角度差γは、FD排紙状態とFU排紙状態との各排出方向でなす角度である。
【0011】
ここで、排出角が下方になりすぎると、シート先端の垂れ下がりによって、排出トレイ11の手前側に接地するようになる。このため、シート先端の引っ掛かりや丸まり、シート後端が排出トレイ近傍にもたれ掛かることによって整列性を損なう等の不都合を生じやすくなる。また、排出角が上方になりすぎても、前記等の不都合が生じやすくなる。
【0012】
このように、排紙性能は、排出角による影響を受けるため、FD排紙とFU排紙の排出角度差γが大きくなる場合には、FD排紙とFU排紙とで排紙性能を両立させることが困難であった。そのため、排出トレイ下流側に突出したガイド部材を配置して、排出角を水平方向よりも上方向に向かせることで、FD排紙とFU排紙とで排出角が下方になりすぎないように構成されたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−111370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、上記従来技術では、排出トレイでの引掛り等を生じさせないために、排出トレイ下流側へのガイド部材の突出量は限られており、排出角が下方になりすぎることは制限できるものの、上方への規制はなかった。このため、FD排紙とFU排紙の排出角度差を小さくすることは困難であった。更に、排紙オプション等を装着した場合、排出トレイから排紙オプションへのシートの受渡しが不安定になるのを防止するためには、排出トレイ、及び排紙オプションの受取り側の構成も制約が多くなり困難であった。
【0015】
本発明は、シートの排出方向が下方になり過ぎたり上方になり過ぎたりすることを制限し、排紙性能の向上、及び排紙オプションを接続した際の安定した受渡しが可能となるシート排出装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、シートを装置外方に排出する排出ローラ対と、シートを水平方向に対する第1の傾斜角で前記排出ローラ対に進入させるように搬送する第1搬送路と、シートを前記第1の傾斜角よりも小さな第2の傾斜角で前記排出ローラ対に進入させるように搬送する第2搬送路と、を備え、前記排出ローラ対により排出されるシートの排出角を変更するように前記排出ローラ対の少なくとも一方の排出ローラを移動させるローラ移動部を備え、前記ローラ移動部は、前記第1及び第2搬送路から前記第1及び第2の傾斜角で進入して前記排出ローラ対からそれぞれ排出されるシートの第1の排出角と第2の排出角との角度差が小さくなるように前記排出ローラ対の少なくとも一方の排出ローラを移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、第1搬送路から進入して排出されるシートの第1の排出角と第2搬送路から進入して排出されるシートの第2の排出角とを近づけて、第1の排出角と第2の排出角との角度差を従来に比べて小さくすることができる。これにより、シートの排出方向が下方になり過ぎたり上方になり過ぎたりすることを制限し、装置外方への排紙性能を向上でき、排紙オプションを接続した際の安定した受渡しを可能にするシート排出装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本発明に係る第1の実施形態におけるシート排出装置1のFD排紙状態を示す概略図、(b)は第1の実施形態におけるシート排出装置1のFU排紙状態を示す概略図。
【図2】(a)は本発明に係る第2の実施形態におけるシート排出装置21のFD排紙状態を示す概略図、(b)は第2の実施形態におけるシート排出装置21のFU排紙状態を示す概略図。
【図3】従来技術のシート排出装置101を用いた画像形成装置100の概略図。
【図4】(a)は従来のシート排出装置101におけるFD排紙状態を示す概略図、(b)はシート排出装置101におけるFU排紙状態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、本実施の形態に記載している構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置等は、発明を適用する装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0020】
<第1の実施形態>
図1(a)は、本実施形態におけるシート排出装置1のFD排紙状態を示す概略図、図1(b)は、本実施形態におけるシート排出装置1のFU排紙状態を示す概略図である。なお、本実施形態の画像形成装置は、図3を参照して説明した画像形成装置100とシート排出装置1以外の構成に関しては同様であるため、共通の部分に同一符号を付してその説明を省略する。
【0021】
本実施形態における画像形成装置100は、画像形成部114(図3参照)により画像が形成されたシートSを上記シート排出装置1によって排出するように構成されている。図1(a),(b)に示すように、本画像形成装置100のシート排出装置1は、トナー画像の定着後に搬送路12を搬送されてきたシートSを排出トレイ11にFU排紙するように搬送する搬送路13を備えている。また、シート排出装置1は、トナー画像の定着後に搬送されてきたシートSを排出トレイ11にFD排紙するように搬送する搬送路14,15,16を備えている。更にシート排出装置1は、搬送路13と搬送路16との合流部10の下流近傍に配置されて、搬送路13,16から夫々搬送されるシートSを装置外方の排出トレイ11に排出する排出ローラ対5を備えている。排出ローラ対5は、互いに圧接された排出上ローラ(排出ローラ)6と排出下ローラ(排出ローラ)7とからなる。なお、図3及び図1における符号Hは、画像形成装置100を設置した状態での水平方向を示している。
【0022】
搬送路13は、シートSを水平方向Hに対する第1の傾斜角θで排出ローラ対5に進入させるように搬送する第1搬送路を構成している。また、搬送路16は、シートSを第1の傾斜角θよりも小さな第2の傾斜角θで排出ローラ対5に進入させるように搬送する第2搬送路を構成している。本実施形態では、搬送路(第1搬送路)13は、上流から搬送されるシートSを反転させずに装置外方の排出トレイ11に導く搬送路であり、搬送路(第2搬送路)16は、上流から搬送されるシートSを反転させた後に装置外方の排出トレイ11に導く搬送路である。
【0023】
搬送路14と搬送路(第2搬送路)16との合流部には、画像形成装置の装置本体側に軸4aで回動支持された反転切換え部材4が、実線位置と破線位置とに切り換え可能に配置されている。この反転切換え部材4は、自重で実線状態を保持するように構成されている。
【0024】
また、搬送路13と搬送路14との合流部には、画像形成装置100の装置本体側に軸2aで回動支持された切換え部材2が、実線位置と破線位置とに切り換え可能に配置されている。この切換え部材2は、第1搬送路である搬送路13又は第2搬送路である搬送路16に上流からのシートSを選択的に導くように構成されている。切換え部材2は、軸2aより先端側が長尺に形成されて搬送路13,14のいずれかに切換え可能にされると共に、これより短い後端側に、連動リンク9の一端部が軸9aで回動自在に連結されている。
【0025】
合流部10の下流近傍には、排出下ローラ7及び排出上ローラ6を回転可能に支持した支持リンク8が、軸7aを支点として回動自在となるように装置本体に支持されている。支持リンク8の下端部には排出下ローラ7が軸7aで回転自在に支持され、支持リンク8における排出下ローラ7の上側には排出上ローラ6が軸6aで回転自在に支持されている。支持リンク8の上端部には、連動リンク9の他端部が軸9bで回動自在に連結されている。このように、下端部を軸7aで回動可能に保持された支持リンク8は、上端部の位置を連動リンク9によって規制されている。
【0026】
支持リンク8に支持された排出上ローラ6は、バネ等の不図示の付勢部材によって排出下ローラ7方向に付勢されている。排出上ローラ6及び排出下ローラ7は、所定圧で互いに接した状態で図1の反時計方向と時計方向とに回転することで、搬送路13,16からそれぞれ到達したシートSを排出トレイ11に向けて排出するように構成されている。
【0027】
切換え部材2の実線位置と破線位置への回動動作、排出ローラ対5の回転動作、及び反転ローラ対3の回転動作は、それぞれ制御部17(図3参照)によって適時制御される。
【0028】
切換え部材2は、図1(a)の実線位置においては連動リンク9を牽引して、支持リンク8を排出上ローラ6と共に搬送路16の上流側に傾斜させ得るように各長さ及び位置が設定されている。また、切換え部材2は、図1(b)の破線位置においては連動リンク9を押して、支持リンク8を排出上ローラ6と共に搬送路16の下流側に傾斜させ得るように各長さ及び位置が設定されている。支持リンク8は、図1(a)の傾斜位置と図1(b)の傾斜位置との間で可変角度αをなすように傾動する。
【0029】
連動リンク9及び支持リンク8により、排出ローラ対5により排出されるシートSの排出角を変更するように排出ローラ対5の少なくとも一方の排出ローラ(本実施形態では排出上ローラ6)を移動させるローラ移動部が構成されている。ローラ移動部は、搬送路13、16から第1及び第2の傾斜角θ,θで進入して排出ローラ対5から夫々排出されるシートSの第1の排出角θと第2の排出角θとの角度差βが従来の角度差γよりも小さくなるように、排出上ローラ6を移動させる。
【0030】
具体的には、本実施形態のローラ移動部は、切換え部材2の切換え動作に連動して、排出ローラ対5の排出上ローラ6を排出下ローラ7に対して移動させて排出ローラ対5のニップの接線方向Mを変更するように作動する。言い換えると、ローラ移動部は、搬送路13からのシートSを排出ローラ対5により排出する際の排出方向E(第1の排出角θ)と、搬送路16からのシートSを排出ローラ対5により排出する際の排出方向C(第2の排出角θ)とを近づけるように作動する。これにより、角度差βを、従来の排出方向K,Iの排出角θと排出角θとの角度差γに比して減少させる。
【0031】
本実施形態では、FD排紙の場合、搬送路14を矢印A方向に搬送されたシートSは、搬送路15に配置された反転ローラ対3によって搬送され、シートSの後端が反転切換え部材4を越えた位置で、反転ローラ対3の回転とともに一旦停止される。その後、シートSは、反転ローラ対3が逆回転することでシート搬送方向を反転されて矢印B方向へと搬送され、更に排出ローラ対5によって、矢印Cで示す排出方向に排出され、排出トレイ11上に積載される。一方、FU排紙の場合には、定着部115のローラから、矢印D方向に搬送されたシートSは、そのまま排出ローラ対5によって矢印Eで示す排出方向に排出され、排出トレイ11上に積載されるように構成されている。
【0032】
すなわち、FD排紙の場合、図1(a)に示すように、転写部119(図3参照)でトナー画像を定着されたシートSが、定着部115の搬送ローラの搬送力を受けて、切換え部材2にて案内されて矢印A方向へ搬送される。矢印A方向に搬送されたシートSは、反転ローラ対3によって更に搬送され、シート後端が反転切換え部材4を越えた位置で、反転ローラ対3の回転とともに一旦停止される。一旦停止したシートSは、反転ローラ対3が逆回転をすることで、シート搬送方向が反転されて矢印B方向へと搬送される。
【0033】
つまり、反転切換え部材4をシートSが通過する際には、反転切換え部材4がシートSにより図1(a)の破線位置に跳ね上げられることで搬送路15が開放され、シート通過後には反転切換え部材4は自重で図1(a)の実線位置に戻る。このため、シートSは、定着部115側へ逆戻りすることなく、矢印B方向に搬送されることになる。そして、反転ローラ対3から搬送されたシートSは、FU排紙時の搬送路13との合流部10を経て、着脱可能な排出トレイ11へと排出ローラ対5によって排出される。この際、排出されるシートSは、排出ローラ対5のニップの接線方向Mと、排出ローラ対5上流の搬送路16とによる影響を受けて、矢印Cで示す排出方向に排出される。
【0034】
一方、FU排紙では、図1(b)に示すように、定着部115(図3参照)によってトナー画像を定着されたシートSが、定着部115の搬送ローラの搬送力によって切換え部材2に案内され、切換え部材2に沿って矢印D方向に導かれる。切換え部材2は、軸2aで回動可能に保持された状態で連動リンク9を回動可能に支持している。切換え部材2は、制御部17の制御に基づく切換え装置(不図示)により、FD排紙状態(図1(a)の実線位置)とFU排紙状態(図1(b)の実線位置)とに切り換えられる。
【0035】
これにより、切換え部材2の回動に連動する連動リンク9が支持リンク8の上端部を押して図1(b)の反時計方向に回動させるため、排出上ローラ6が排出下ローラ7の軸7aを中心として回動する。このため、FD排紙状態からFU排紙状態に切り換わることで、排出ローラ対5のニップの接線方向Mが連動的に変更される。従って、反転ローラ対3の反転動作で搬送されるシートSは、合流部10を経て、排出ローラ対5によって装置外方の排出トレイ11へと排出される。このとき、排出されるシートSは、排出ローラ対5のニップの接線方向Mと、排出ローラ対5上流の搬送路13とによる影響を受けて、矢印Eで示す排出方向に排出される。
【0036】
FD排紙とFU排紙の夫々の状態で、支持リンク8の可変角度αは、排出されるシートSが排出ローラ対5の上流の搬送路13又は搬送路16の影響により変わる排出角θ,θ分に相当する角度となるように、連動リンク9等が構成されている。これにより、FU排紙状態とFD排紙状態との各排出方向E,Cとでなす角度(第1の排出角θと第2の排出角θとの角度差(排出角度差)β)を、従来に比して小さくすることができる。従って、2つの搬送路13,16が合流して排紙させるシート排出装置1において、それぞれの搬送路13,16からの排出角θ,θを近づけることができ、排紙性能の向上を図ることができる。また、FD排紙状態とFU排紙状態との排出角度差βを小さくすることにより、排紙オプションを接続した際の安定した受渡しが可能となる。
【0037】
本実施形態によると、搬送路13から進入して排出されるシートSの第1の排出角θと搬送路16から進入して排出されるシートSの第2の排出角θとを近づけて、第1の排出角θと第2の排出角θとの角度差βを従来に比して小さくすることができる。これにより、シートSの排出方向が下方になり過ぎたり上方になり過ぎたりすることを制限し、装置外方への排紙性能を向上でき、排紙オプションを接続した際の安定した受渡しを可能にするシート排出装置1、及びこれを備えた画像形成装置100を提供できる。
【0038】
なお、本実施形態では、ローラ移動部を、装置本体に支持された排出下ローラ7に対して排出上ローラ6を移動させる構成としたが、これに限定されるものではなく、排出下ローラ7、又は排出ローラ対5を複数部材を介して回動させても良い。つまり、排出上ローラ6を軸6aで装置本体に支持し、この排出上ローラ6の軸6aを支点として排出下ローラ7を移動させるように構成することができる。また、排出上ローラ6及び排出下ローラ7を一体的に移動(回動)させて接線方向Mを変更することもできる。この場合は、支持リンク8と連動リンク9を一体化したリンクとし、且つ連動リンク9をやや延ばして軸9a側に屈曲させ、この屈曲部を装置本体に回動自在に支持した状態で、その先端を切換え部材2の後端部に軸9aで連結する。これにより、切換え部材2の切換え動作に連動させ、支持リンク8に支持した排出ローラ対5を全体的に傾動させてニップの接線方向Mを変更して、上記と同様の効果を得ることができる。
【0039】
また、本実施形態では、切換え部材2と排出上ローラ6を連動させるために、切換え部材2と支持リンク8との間に連動リンク9を設けたが、この構成に限定されるものではない。つまり、切換え部材2に連動して排出ローラ対5が回動すれば良いため、連動リンク9に限らず、複数部材を介しても、弾性部材等を用いることによっても、本実施形態における効果、及び利点を同様に得ることができる。
【0040】
<第2の実施形態>
以下、本発明に係る第2の実施形態について説明する。本第2の実施形態は、FD排紙、FU排紙における搬送路の切り換え、及び搬送路については、上述した第1の実施形態と同様の構成であり、第1の実施形態と同様の構成部分については、同一の符号を付してその説明は省略するものとする。なお、図2(a)は本実施形態のシート排出装置21におけるFD排紙状態を示す概略図、図2(b)は本実施形態のシート排出装置21におけるFU排紙状態を示す概略図である。
【0041】
図2(a),(b)に示すように、第1の実施形態と同様の反転切換え部材4が搬送路14と搬送路(第2搬送路)16との合流部に配置されている。また、搬送路(第1搬送路)13と搬送路14との合流部に配置された切換え部材22は、本実施形態では支持リンク28との連結が不要であるため、軸22aより後端側の部分は形成されてはいない。
【0042】
合流部10の下流近傍には、排出下ローラ7及び排出上ローラ6を回転可能に支持した支持リンク28が、軸7aを支点として装置本体に回動自在に支持されている。支持リンク28の下端部には排出下ローラ7が軸7aで回転自在に支持され、支持リンク28における排出下ローラ7の上側には排出上ローラ6が軸6aで回転自在に支持されている。排出上ローラ6は、不図示の付勢部材によって排出下ローラ7方向に付勢されている。
【0043】
支持リンク28の上端部には、支持リンク28の長手方向に沿って形成された長穴部28aが形成されている。装置本体における支持リンク28の近傍には、アクチュエータであるソレノイド29が配置されている。ソレノイド29は、本体29a、及び本体29aから出没自在(進退自在)なプランジャ29bを有しており、プランジャ29bの先端がピン29cを介して長穴部28aに摺動自在に係合している。支持リンク28は、下端部が軸7aで位置を規制されていると共に、上端部がソレノイド29のプランジャ29bで位置を規制されている。
【0044】
切換え部材22の実線位置と破線位置への回動動作、この回動動作に連動するソレノイド29の作動、排出ローラ対5の回転動作、及び反転ローラ対3の回転動作は、それぞれ制御部17(図3参照)によって適時制御される。
【0045】
切換え部材22の実線位置では、プランジャ29bが本体29a側に退入して、支持リンク28を排出ローラ対5と共に搬送路16の上流側に所定の角度で傾斜させる。また、破線位置では、プランジャ29bが本体29aから突出して、支持リンク28を搬送路16の下流側に所定の角度で傾斜させ得るように、支持リンク28、長穴部28aの長さ及び位置、プランジャ29bの位置及び進退時のストロークが夫々設定されている。このような支持リンク28は、図2(a)の傾斜位置と図2(b)の傾斜位置との間で可変角度αをなすように傾動する。
【0046】
なお、ソレノイド29及び支持リンク28により、排出ローラ対5によって排出されるシートSの排出角を変更するように排出ローラ対5の少なくとも一方の排出ローラ(本実施形態では排出上ローラ6)を移動させるローラ移動部が構成されている。このローラ移動部は、搬送路13、16から第1及び第2の傾斜角θ,θで進入して排出ローラ対5から夫々排出されるシートSの第1の排出角θと第2の排出角θとの角度差βが従来の角度差γよりも小さくなるように、排出上ローラ6を移動させる。
【0047】
具体的には、ローラ移動部は、切換え部材22の切換え動作にタイミングを合わせて作動するソレノイド29により、排出ローラ対5の排出上ローラ6を排出下ローラ7に対して移動させて排出ローラ対5のニップの接線方向Mを変更するように作動する。言い換えると、ローラ移動部は、搬送路13からのシートSを排出ローラ対5により排出する際の排出方向E(第1の排出角θ)と、搬送路16からのシートSを排出ローラ対5により排出する際の排出方向C(第2の排出角θ)とを近づけるように作動する。これにより、角度差βを、従来の排出方向K,Iの排出角θと排出角θとの角度差(排出角度差)γに比して減少させる。
【0048】
以上の構成では、制御部17の制御で作動する切換え装置(不図示)によって切換え部材22が図2(a)のFD排紙状態から図2(b)のFU排紙状態に切り換えられると、切換え装置と連動してソレノイド29が作動する。これにより、支持リンク28が回動し、軸7aを中心として排出上ローラ6が回動する。
【0049】
このため、切換え部材22に連動して排出ローラ対5のニップの接線方向Mが変更される。FD排紙とFU排紙の夫々の状態で、支持リンク28の可変角度αは、排出されるシートSが排出ローラ対5の上流の搬送路13又は搬送路16の影響で変わる排出角θ,θ分に相当する角度となるように、ソレノイド29の動作量等が設定されている。
【0050】
本実施形態では、排出ローラ対5のニップ線方向を可変させるためにソレノイド29を用いることで、例えば、片面印字や両面印字、シートサイズ等の搬送条件によって、最適な動作量を設定することが可能となり、より最適な排出角を得ることが可能となる。
【0051】
以上の本実施形態でも、搬送路13から進入して排出されるシートSの第1の排出角θと搬送路16から進入して排出されるシートSの第2の排出角θとを近づけて、第1の排出角θと第2の排出角θとの角度差βを従来に比べて小さくすることができる。このため、シートSの排出方向が下方になり過ぎたり上方になり過ぎたりすることを制限し、装置外方への排紙性能を向上でき、排紙オプションを接続した際の安定した受渡しを可能にするシート排出装置21、及びこれを備えた画像形成装置100を提供できる。
【0052】
なお、本実施形態では、支持リンク28をソレノイド29の作動で回動させるように構成したが、これに限定されるものではなく、排出下ローラ7、又は排出ローラ対5全体を複数部材を介して回動させる構成とすることもできる。この場合も、本実施形態における効果、及び利点を同様に得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1,21…シート排出装置、2,22…切換え部材、5…排出ローラ対、6…排出ローラ(排出上ローラ)、7…排出ローラ(排出下ローラ)、8,9…ローラ移動部(支持リンク,連動リンク)、10…合流部、13…第1搬送路(搬送路)、16…第2搬送路(搬送路)、28,29…ローラ移動部(支持リンク,ソレノイド)、100…画像形成装置、114…画像形成部、H…水平方向、M…ニップの接線方向、S…シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを装置外方に排出する排出ローラ対と、
シートを水平方向に対する第1の傾斜角で前記排出ローラ対に進入させるように搬送する第1搬送路と、
シートを前記第1の傾斜角よりも小さな第2の傾斜角で前記排出ローラ対に進入させるように搬送する第2搬送路と、を備え、
前記排出ローラ対により排出されるシートの排出角を変更するように前記排出ローラ対の少なくとも一方の排出ローラを移動させるローラ移動部を備え、
前記ローラ移動部は、前記第1及び第2搬送路から前記第1及び第2の傾斜角で進入して前記排出ローラ対からそれぞれ排出されるシートの第1の排出角と第2の排出角との角度差が小さくなるように前記排出ローラ対の少なくとも一方の排出ローラを移動させる、
ことを特徴とするシート排出装置。
【請求項2】
前記第1搬送路又は前記第2搬送路に上流からのシートを選択的に導く切換え部材を備え、
前記ローラ移動部は、前記切換え部材の切換え動作に連動して、前記排出ローラ対の少なくとも一方の排出ローラを移動させて前記排出ローラ対のニップの接線方向を変更する、ことを特徴とする請求項1に記載のシート排出装置。
【請求項3】
前記第1搬送路は、上流から搬送されるシートを反転させずに装置外方の排出トレイに導く搬送路であり、
前記第2搬送路は、上流から搬送されるシートを反転させた後に装置外方の排出トレイに導く搬送路である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート排出装置。
【請求項4】
画像を形成する画像形成部を備え、
前記画像形成部により画像が形成されたシートを請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート排出装置によって排出する、ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−126480(P2012−126480A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277646(P2010−277646)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】