説明

シート排出装置及び画像形成装置

【課題】シートが排出部上流側の搬送ガイド部にて押し付けられながら搬送されることで発生する画像のダメージを軽減させる構成を備えたシート排出装置を提供する。
【解決手段】駆動部(29,30,33)は、第1及び第2搬送ガイド板28A,28Bを、排出ローラ対24へのシート到達前には所定の第1間隔をあけてシートSをガイドする第1ガイド状態に保持する。さらに駆動部は、第1及び第2搬送ガイド板を、排出ローラ対24にシートが到達する際には、これよりも広い第2間隔をあけてシートをガイドする第2ガイド状態に移行させる。これにより、シート排出装置18でシートを波打たせて剛性を付与した際に、排出ローラ対上流の搬送ガイド部28にシートの凸部が強く押し付けられることがないため、画像がダメージを受けるような問題を有効に解消することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート排出装置及び画像形成装置に関し、詳しくは、シート排出時の画像のダメージを軽減させる構成を備えたシート搬送装置、及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファクシミリ、複写機、プリンタ、或いは、ファクシミリ・複写機・プリンタとしての機能を併せ持つ複合機(MFP)では、排出部で排出されるシートの先端が垂れ下がり、排出部上の排出部に近い位置にシート先端が触れることがある。この場合、排出部でシートが丸まり、排出部に積載されているシートを押し出してしまうおそれがある。
【0003】
この問題に対し、排出ローラ対の、複数のローラ本体をシートの表裏で互い違いになるように対向させ且つオーバーラップさせて配置させた櫛歯ローラにより、搬送するシートを排出方向と直交する幅方向で波打ち形状に変形させた状態で排出する装置がある。この装置では、幅方向で波打ち形状に変形させることにより排出するシートの排出方向の剛度(剛性)を高める排出ローラ対を用いてシートの排出方向先端が垂れ下がるのを防止している。さらに、シート先端が排出部の排出方向の下流位置に触れるようにすることで、排出部と排出シート間の摺擦により排出シートが丸まり、又は積載シートと排出シート間の摺擦により積載シートを押し出すような問題を防止するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−227007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の従来技術によると、以下に述べるような課題があった。即ち、排出ローラ対を櫛歯ローラとすることにより排出するシートを幅方向で波打たせると、排出ローラ対の上流側でもシートが波打つため、シート排出方向全長に亘って剛性が付いてしまう。排出ローラ対直前の搬送路は、排出ローラ対を構成する2つのローラ中心を含む平面に対して略垂直に構成することが望ましいが、近年の画像形成装置本体の小型化により、排出ローラ対の直前の搬送路を該平面に対して略垂直に配置できない場合がある。
【0006】
特に、画像読取装置を画像形成装置の上部に有する複合機(MFP)では、トナー像をシートに定着した後、画像形成装置の外装面より外側にある排出トレイにシートを排出する際に、排出ローラ対の直前の搬送路を略垂直に配置できない場合がある。そのような場合、排出ローラ対の上流で波打ち剛性が付いたシートの凸部が、排出ローラ対の直前の搬送路に押し付けられる。定着部で熱を加えられて溶融したトナーが再び冷却されてシート表面に固着する際に、シートが搬送路に押し付けられると、シートの押し付けられた場所から搬送路に熱が伝わり冷却される。搬送路に押し付けられた場所と、押し付けられない場所とでは、トナーの冷却速度に差が生じて、トナー表面の状態に差が生じる。
【0007】
また、シートが押し付けられることにより、トナー表面が擦れて粗くなると、光沢斑や筋状の画像ダメージを受けることがある。図10は、ダメージを受けた画像サンプルの一例であり、シートS上に縦スジ状の光沢斑47が生じている。特に光沢紙で高印字率の画像をプリントする際には、傷や光沢斑となって顕著に発生し、両面印字のときは傷や光沢斑が両面に発生する場合もある。
【0008】
そこで本発明は、シートが排出部上流側の搬送ガイド部にて押し付けられながら搬送されることで発生する画像のダメージを軽減させる構成を備えたシート排出装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、対向配置された第1搬送ガイド板及び第2搬送ガイド板によりシートの表裏をガイドして搬送する搬送ガイド部と、前記搬送ガイド部を介して送られるシートをシート排出方向と直交する幅方向にて波打ち形状にして排出する排出部と、を備え、前記搬送ガイド部の前記第1及び第2搬送ガイド板は、シートが前記排出部へ向けて搬送される際は所定の第1間隔をあけてシートをガイドし、シートが前記排出部を通過する際には前記第1間隔よりも広い第2間隔に変更してシートをガイドすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、排出部でシートを波打たせて剛性を付与した際に、排出ローラ対上流の搬送ガイド部の間隔を広げることで、搬送ガイド板にシートの波打ち形状における凸部が強く押し付けられる等の不都合の発生を防止することができる。これにより、排出されるシートの画像がダメージを受けるような不都合の発生を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る第1の実施形態における画像形成装置の断面図。
【図2】(a)は第1の実施形態における片面ジョブの定着部近傍の断面図、(b)は両面ジョブの1面目印字時の定着部近傍の断面図、(c)は両面ジョブの反転搬送時の定着部近傍の断面図。
【図3】(a)は第1の実施形態におけるシート排出装置の斜視図、(b)は排出ローラ対にシートが搬送される前のシート排出装置の断面図。
【図4】(a)は第1の実施形態におけるシート排出装置の側面図、(b)はシートが排出ローラ対に搬送されたときのシート排出装置の斜視図。
【図5】(a)は第1の実施形態におけるシートが排出ローラ対に搬送されたときのシート排出装置の動作図、(b)はシートが排出ローラ対に搬送されたときのシート排出装置の側面図。
【図6】(a)は本発明に係る第2の実施形態におけるシート排出装置の斜視図、(b)は第2の実施形態におけるシート排出装置の側面図。
【図7】(a)は第2の実施形態における排出ローラ対にシートが搬送される前のシート排出装置の断面図、(b)は第2の実施形態におけるシートが排出ローラ対に搬送されたときのシート排出装置の斜視図。
【図8】(a)は第2の実施形態におけるシートが排出ローラ対に搬送されたときのシート排出装置の動作図、(b)は第2の実施形態におけるシートが排出ローラ対に搬送されたときのシート排出装置の側面図。
【図9】第2の実施形態における搬送ガイド対の移動量を少なくする際のシート排出装置の側面図。
【図10】従来技術による画像斑の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
以下、図1〜図5を参照して、本発明に係る第1の実施形態について説明する。図1は画像形成装置の主断面図である。図1に示すように、画像形成装置は、画像形成装置本体1の上部に画像読取装置100を備えている。
【0013】
まず、画像読取装置100について説明する。画像読取装置100は、画像読取スキャナ部100Aと、自動原稿給送部100Bとを備えている。自動原稿給送部100Bは、複数枚の原稿が積載可能な原稿積載トレイ101を備えている。原稿積載トレイ101に積載された原稿は、給送ローラ102、分離パット103により一枚ずつ分離搬送され、画像読取部104によって画像情報を読み取られる。画像読取部104により読み取られた情報は、CCDで光電変換され、電気信号としてレーザスキャナユニット12に送信される。
【0014】
次に、画像形成装置本体1及び画像形成工程について説明する。図1において、レーザビーム画像形成等の画像形成装置本体1(以下、装置本体1という)は、シートSを収納したカセット2を底部に有している。カセット2の右端部には、ピックアップローラ3が配設されており、プリント信号にあわせて、カセット2からシートSを給送する。その下流側には、リタードローラ対4が配設されており、シートSがリタードローラ対4にニップされた状態で、リタードローラ対4の回転速度を変えることで、ピックアップローラ3から送られたシートSのうち一枚を取り出して、レジストローラ対5まで給送する。この時点では、レジストローラ対5は停止している。装置本体1内には、画像形成装置の各動作を統括的に制御するCPU等の制御部42が配設されている。
【0015】
次に、画像を書き出すタイミングに合わせてレジストローラ対5を回転させることにより、シートSは、画像形成領域に搬送されると同時に、シートサイズ検知部6によってシートサイズが判別される。
【0016】
画像形成領域には、中間転写ベルト7と、中間転写ベルト7を駆動するための駆動ローラ8と、従動ローラ9と、感光体ドラム10a〜10dと、1次転写ローラ11a〜11dと、レーザスキャナユニット12とが配設されている。さらに、画像形成領域には、中間転写ベルトクリーナ13と、シートSに画像を転写するための2次転写ローラ14とが配設されている。
【0017】
次に、画像形成工程について説明する。まず、レーザスキャナユニット12によって感光体ドラム10a〜10d上に電気的な潜像が形成された後、現像ローラによって各感光体ドラム10a〜10d上の潜像にトナーを付着させることにより潜像を現像する。そして、1次転写ローラ11a〜11dによって、順次中間転写ベルト7上に4色の画像が載せられる。
【0018】
以上のようにして、中間転写ベルト7上に形成されたトナー画像を、2次転写ローラ14と中間転写ベルト7の駆動ローラ8とのニップにおいてシートS上に転写する。そして、中間転写ベルト7上に残った余分なトナーは、中間転写ベルトクリーナ13によって清掃され、次の画像形成工程に備える。以上が画像形成工程である。
【0019】
その後、シートSは、定着部15に搬送されて熱と圧力を加えられ、トナー像を定着される。シートSが片面印字の場合には、フラッパ16が図2(a)に示す位置にあり、シートSは、フラッパ16に案内されて中間搬送路17を通り、印字面を下側にしてシート排出装置18の排出ローラ対24を介して排出トレイ19上に排出される。
【0020】
本実施形態の画像形成装置は、外装面より内部に排出トレイ19を配置しない画像形成装置1である。この画像形成装置1は、定着部15の下流に中間搬送路17が配設され、外装面よりも外側に配置される排出トレイ19にシートSを排出する構成を有している。以上が、片面印字における本体の動作である。
【0021】
次に、両面印字時における本体の動作及び各部の名称について説明する。なお、片面印字にて説明した部分と重複する場合には、説明を省略する。
【0022】
即ち、シートSに両面印字を行う場合には、フラッパ16が図2(b)に示す状態にあり、定着部15によりトナー像を定着されたシートSは、同図の矢印A方向に搬送され、スイッチバックローラ対20へと送られる。1面目に画像を形成されたシートSは、スイッチバックローラ対20により画像読取装置100下面のスイッチバック搬送路21に搬送される。そして、シートSの後端が定着部15から抜けた後に一旦停止し、フラッパ16が矢印B方向に回動して図2(c)に示す位置に切り換えられ、スイッチバックローラ対20が反転することで、シートSは、2面目印字のための再給送搬送路22へ搬送される。
【0023】
さらに、再給送搬送路22内へ搬送されたシートSは、再給送ローラ対23(図1参照)にニップされた後、一旦停止して、先端レジストの補正が行なわれる。その後、シートSは、その位置で2面目印字のためのプリント信号が来るのを待つ。
【0024】
そして、2面目印字のためのプリント信号を本体が受けると、再給送ローラ対23を回転させて、再給送搬送路22に待機中のシートSをレジストローラ対5へ送る。シートSは、レジストローラ対5を介して画像形成部へ送られ、2面目の印字が行なわれる。その後、フラッパ16の位置が図2(a)の位置に戻されることで、シートSは、中間搬送路17を通ってシート排出装置18から排出トレイ19上に排出される。以上が、装置本体1及び画像形成工程についての説明である。なお、中間転写ベルト7における駆動ローラ8と2次転写ローラ14等により、シートSに画像を形成する上記画像形成部が構成されている。
【0025】
次に、第1の実施形態におけるシート排出装置18の構成及び動作について説明する。図3(a)は、シート排出装置18を示す斜視図である。
【0026】
図3(a)に示すように、画像形成部により画像が形成されたシートSを排出するシート排出装置18は、搬送ガイド部28と、排出ローラ対24と、を備えている。排出ローラ対24は、対向配置された一対のローラである第1排出ローラ24Aと第2排出ローラ24Bとを備えている。なお、排出ローラ対24は、搬送ガイド部28を介して送られるシートSをシート排出方向と直交する幅方向にて波打ち形状にして排出する排出部を構成している。
【0027】
第1排出ローラ24Aは、ローラ軸24cの軸方向に互いに所定間隔をあけて固定された複数(例えば4個)のローラ本体24aを有している。第2排出ローラ24Bは、ローラ軸24dの軸方向に互いに所定間隔をあけて固定された複数(例えば3個)のローラ本体24bを有している。第1排出ローラ24Aと第2排出ローラ24Bは、複数のローラ本体24a,24bをシートSの表裏で互い違いになるように対向し且つオーバーラップした状態に配置されている。また、第1排出ローラ24Aは、第2排出ローラ24Bの上側において第2排出ローラ24Bよりシート搬送方向の上流側に配置されている。
【0028】
第1排出ローラ24Aの一端部には駆動ギヤ25の第1駆動ギヤ25Aが固定され、第2排出ローラ24Bの一端部には駆動ギヤ25の第2駆動ギヤ25Bが固定され、これら駆動ギヤ25Aと25Bは互いに噛み合っている。第1駆動ギヤ25Aには、駆動源(不図示)から駆動を伝達する伝達ギヤ26が接続されている。排出ローラ対24の略上方には、光学式センサ27が配置されている。光学式センサ27は、排出ローラ対24においてのシートSの有無を検知するもので、シート先端が、排出ローラ対24の一対のローラ24A,24Bの中心を含む平面より下流側に搬送されたことを検知する。また、光学式センサ27は、シート後端が、排出ローラ対(排出部)24の一対のローラ24A,24Bの中心を含む平面より下流側に搬送されたことを検知する。
【0029】
図3(b)に示すように、排出ローラ対24の上流には、中間搬送路17から搬送されたシートSを排出ローラ対24に導く搬送ガイド部28が配設されている。搬送ガイド部28は、対向配置された第1搬送ガイド板28A及び第2搬送ガイド板28BによりシートSの表裏をガイドして搬送する。第1及び第2搬送ガイド板28A,28Bは、シートSが排出ローラ対24へ向けて搬送される際は所定の第1間隔をあけてシートSをガイドし、シートSが排出ローラ対24を通過する際には第1間隔よりも広い第2間隔に変更してシートSをガイドする。つまり、第1及び第2搬送ガイド板28A,28Bは、排出ローラ対24へのシート到達前には所定の第1間隔をあけてシートSをガイドする第1ガイド状態(図4(a)の状態)に保持されるように、不図示の支持部材によって支持される。第1及び第2搬送ガイド板28A,28Bは、排出ローラ対24にシートSが到達して通過する際には第1間隔よりも広い第2間隔をあけてシートSをガイドする第2ガイド状態(図5の状態)に移行可能となるように、上記支持部材によって支持される。
【0030】
図4(a)に示すように、装置本体1における搬送ガイド部28の図4(a)手前側には、第1リンクアーム29A及び第2リンクアーム29Bからなるリンク機構29、引っ張りバネ30、固定部31、及びソレノイド33が配設されている。
【0031】
第1リンクアーム29Aは、搬送ガイド部28の排出ローラ対24寄りに位置する回動軸39で装置本体1側に回動可能に支持されている。第2リンクアーム29Bは、搬送ガイド部28のソレノイド33寄りに位置する回動軸40で装置本体1側に回動可能に支持されている。
【0032】
第1リンクアーム29Aは、先端に係合突起29aを有している。第2リンクアーム29Bは、全体的に「ヘ」の字状に折り曲げた形状を有し、かつ先端の係合突起29cを、第1リンクアーム29Aの後端29bに下方から当接させている。第2リンクアーム29Bの後端29dは、ピン41によりソレノイド33のプランジャ32の先端に連結されている。
【0033】
第1搬送ガイド板28Aは、第2リンクアーム29Bの先端側が下方から係合可能となる位置に、図4(a)手前側に突出する突起部43を有している。第2搬送ガイド板28Bは、第1リンクアーム29Aの係合突起29aが上方から係合可能となるように、図4(a)手前側に突出する突起部44を先端に有している。
【0034】
第1リンクアーム29Aの先端には、上端が装置本体1側の固定部31に取り付けられた引っ張りバネ30の下端が取り付けられている。これにより、第1リンクアーム29Aは引っ張りバネ30によって、回動軸39を支点として時計回り方向に回動するように常時付勢されるが、後端29bが、図4(a)に示す位置の第2リンクアーム29Bの係合突起29cにより下方から担持されている。このため、第1リンクアーム29Aと第2リンクアーム29Bは、ソレノイド33がオンしてプランジャ32がソレノイド本体側に退入しない間、図4(a)に示す初期位置にある。
【0035】
なお、リンク機構29、引っ張りバネ30及びソレノイド33により、搬送ガイド部28を駆動する駆動部が構成されている。この駆動部により、第1及び第2搬送ガイド板28A,28Bは、排出ローラ対24へのシート到達前(シートが排出ローラ対24へ向けて搬送される際)には、所定の第1間隔をあけてシートSをガイドする第1ガイド状態に保持される。さらに、駆動部により、第1及び第2搬送ガイド板28A,28Bは、排出ローラ対24にシートSが到達して通過する際(シートが排出ローラ対24を通過する際)には、第1間隔よりも広い第2間隔をあけてシートSをガイドする第2ガイド状態に移行される。そして、駆動部は、排出ローラ対24からシートSが排出されると、搬送ガイド部28を第1ガイド状態に移行させ、次のシートSを第1ガイド状態でガイドさせる。
【0036】
上記駆動部は、排出ローラ対24にシートSが到達する所定距離手前で(又は所定時間前に)、搬送ガイド部28を第1ガイド状態から第2ガイド状態に移行させる。上記所定距離手前の検知は、光学式センサ27のやや上流に配置された不図示の検知センサからの信号に基づいて制御部42が行う。一方、上記所定時間前の検知の場合は、不図示のタイマに基づいて制御部42が行うことになる。或いは、光学式センサ27によりシート先端が検知された時点で搬送ガイド部28を第1ガイド状態から第2ガイド状態に移行させるように制御することも可能である。
【0037】
以上の構成を有する本画像形成装置では、中間搬送路17から搬送されたシートSが搬送ガイド部28に位置するとき、ソレノイド33がオフしているため、リンク機構29は図4(a)の初期位置にある。従って、搬送ガイド部28は図3(b)に示す状態にあり、シートSは、下側の第2搬送ガイド板28Bに沿う形で搬送される。
【0038】
そして、シートSが排出ローラ対24の所定距離手前に位置していることが上記検知センサ(不図示)によって検知され、その検知信号が制御部42に送られると、制御部42からソレノイド33に電気信号が出力される。これに応答して、ソレノイド33がプランジャ32をソレノイド本体側に退入させる。これにより、第2リンクアーム29Bが回動軸40を支点として矢印E方向に回動するため、第1リンクアーム29Aが後端29bを係合突起29cにより押し上げられ、引っ張りバネ30の付勢力に抗して矢印F方向に回動する。
【0039】
このため、第1搬送ガイド板28Aが、突起部43を第2リンクアーム29Bの係合突起29c近傍の部分により上方に押し上げられ、第2搬送ガイド板28Bが、突起部44を第1リンクアーム29Aの係合突起29aによって下方に押し下げられる。これにより、搬送ガイド部28は、第1搬送ガイド板28Aが矢印G方向に平行移動し、第2搬送ガイド板28Bが矢印H方向に平行移動することで、図5(a),(b)に示す第2ガイド状態となる。
【0040】
シートSが排出ローラ対24に搬送されるとき、駆動源から伝達ギヤ26を介して駆動ギヤ25に駆動が伝達され、これにより排出ローラ対24が回転する。このため、シートSは、図4(b)に示すように、互い違いに配置されたローラ本体24a,24bによりシート排出方向と直交する方向に波打ち、シート搬送方向に剛性を持たされる。
【0041】
この際、排出ローラ対24により送られるシートSは、波打ち形状となり、図5(b)に示すように排出ローラ対24の上流側でも形成される。しかし、上記のように搬送ガイド部28が上下に離間することにより、シートSが搬送ガイド部28に強く押し付けられることはなく、画像ダメージの発生を防止しながらシートSを排出することができる。
【0042】
シートSの排出トレイ19に向けた排出が光学式センサ27で検知されると、制御部42の制御により、ソレノイド33がオフしてプランジャ32が突出する。そして、シート排出装置18は、図4(a)に示す初期位置(第1ガイド状態)に復帰し、次のシートSに備える。
【0043】
なお、本実施形態では、第1搬送ガイド板28A及び第2搬送ガイド板28Bの双方を上下方向に移動させて離間させる構成としたが、これに限定されることはない。つまり、第1搬送ガイド板28A及び第2搬送ガイド板28Bのいずれか一方を他方に対して移動させる構成としても、同様の効果が得られる。言い換えると、上記駆動部が、リンク機構29を介して第1搬送ガイド板28A及び第2搬送ガイド板28Bの少なくとも一方を移動させて第1ガイド状態と第2ガイド状態とに移行させるようにすれば良い。
【0044】
本実施形態では、ソレノイド33を使用することで、搬送ガイド部28の位置の切換え時間を短縮させることができるので、シートSが排出ローラ対24に搬送された際に画像ダメージを受ける領域を可及的に少なくすることができる。
【0045】
以上のように、本実施形態によると、シート排出装置18でシートSを波打たせて剛性を付与した場合に、排出ローラ対24上流の搬送ガイド部28にシートSの凸部が強く押し付けられることがない。これにより、画像がダメージを受けるような従来の問題を有効に解消することができる。
【0046】
<第2の実施形態>
次に、図6〜図9を参照して、本発明に係る第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態にて説明した部分と重複する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0047】
図6(a)は、本実施形態におけるシート排出装置18を示す斜視図である。図6(a)に示すように、シート排出装置18は、排出ローラ対(排出部)24と、排出ローラ対24の略上方に配置された光学式センサ27と、排出ローラ対24の上流に配置された搬送ガイド部28とを備えている。
【0048】
第1及び第2搬送ガイド板28A,28Bは、シートSが排出ローラ対24へ向けて搬送される際は所定の第1間隔をあけてシートSをガイドし、シートSが排出ローラ対24を通過する際には第1間隔よりも広い第2間隔に変更してシートSをガイドする。つまり、第1及び第2搬送ガイド板28A,28Bは、排出ローラ対24へのシート到達前には、所定の第1間隔をあけてシートSをガイドする第1ガイド状態(図6の状態)に保持されるように、不図示の支持部材により支持される。第1及び第2搬送ガイド板28A,28Bは、排出ローラ対24にシートSが到達して通過する際には、第1間隔よりも広い第2間隔をあけてシートSをガイドする第2ガイド状態(図8の状態)に移行可能となるように、上記支持部材により支持される。また、第1搬送ガイド板28A及び第2搬送ガイド板28Bは、不図示の付勢部材によって互いに接近する方向に常時付勢されている。
【0049】
本実施形態の排出ローラ対24では、第1排出ローラ24A及び第2排出ローラ24Bは、ローラ軸24c,24dの各軸方向にそれぞれ同じ数(例えば3個)のローラ本体24a,24bを備えている。しかし、ローラ本体24a,24bは、第1の実施形態とは異なり、シートSの表裏で互い違いになるように対向し且つオーバーラップした状態に配置されてはいない。ローラ本体24a,24bは、軸方向の同じ位置で互いに当接するように対向配置されている。
【0050】
第1排出ローラ24Aが、第2排出ローラ24Bの上側において第2排出ローラ24Bよりシート搬送方向の上流側に配置されている点は同様である。ローラ本体24a,24bとローラ本体24a,24bとの中間部分には、それぞれ突起部材37が配設されている。なお、排出ローラ対24及び突起部材37は、搬送ガイド部28から送られるシートSをシート排出方向と直交する幅方向にて波打ち形状にして排出する排出部を構成している。
【0051】
複数の突起部材37はそれぞれ、図6(b)に示すように、排出ローラ対24の中間部分(ニップ部分)に延びて、搬送ガイド部28を介して送られるシートSを排出ローラ対下流側に受け流すように滑らかに形成されたシート案内部37aを有している。突起部材37のローラ軸24dに向いた部分には、ローラ軸24dに接触しないように湾曲する湾曲部37bが形成されている。
【0052】
また、図6(a)に示すように、第1排出ローラ24Aのローラ軸24cの一端部には、駆動ギヤ25の第1駆動ギヤ25Aが固定されているが、ローラ軸24dの一端部には、第1の実施形態のような第2駆動ギヤ25Bは無い。第1駆動ギヤ25Aには、駆動源から駆動を伝達する伝達ギヤ26が噛合している。従って、本実施形態では、第2排出ローラ24Bは、ローラ本体24bをローラ本体24aに当接させた状態で第1排出ローラ24Aの回転力を受けて回転する従動ローラとして機能する。
【0053】
図6(a),(b)に示すように、第1搬送ガイド板28A及び第2搬送ガイド板28B夫々における同図手前側には、カムフォロア部45,46が形成されている。これらカムフォロア部45,46は、カム部材34の先端の膨出状のカム部34aを上下で収容するように湾曲する湾曲部45a,46aを有している。カムフォロア部45,46は、湾曲部45a,46aの各先端側に、第1搬送ガイド板28A及び第2搬送ガイド板28Bの各平面方向に沿うように平坦に形成された平坦部45b,46bを有している。
【0054】
カム部材34は、第1搬送ガイド板28Aの側面部に接した状態で図6(b)の左右方向に移動できるように、不図示の支持部材によって支持されている。このカム部材34は、シート搬送方向の上流側に配置されたピニオン35側に延びるように長尺に形成され、この長尺部分にラック34bが上向きに形成されている。装置本体1側には、カム部材34のラック34bに対向する位置に駆動モータ36が配置されている。駆動モータ36の回転軸にはピニオン35が取り付けられており、このピニオン35がラック34bに噛合することでラックアンドピニオンが構成されている。駆動モータ36は、制御部42(図1参照)の制御により駆動するように構成されている。
【0055】
なお、駆動モータ36、ピニオン35、及び、ラック34bを有するカム部材34とカムフォロア部45,46からなるカム機構により、搬送ガイド部28を駆動する駆動部が構成されている。この駆動部により、第1及び第2搬送ガイド板28A,28Bは、排出ローラ対24へのシート到達前(シートが排出ローラ対24へ向けて搬送される際)には所定の第1間隔をあけてシートSをガイドする第1ガイド状態に保持される。さらに、駆動部により、第1及び第2搬送ガイド板28A,28Bは、排出ローラ対24にシートSが到達して通過する際(シートが排出ローラ対24を通過する際)には、第1間隔よりも広い第2間隔をあけてシートSをガイドする第2ガイド状態に移行される。そして、駆動部は、排出ローラ対24からシートSが排出されると、搬送ガイド部28を第1ガイド状態に移行させ、次のシートSを第1ガイド状態でガイドさせる。第1及び第2搬送ガイド板28A,28Bの一側部にてシート排出方向に往復移動可能に支持されたカム部材34は、その移動に応じてこれら第1及び第2搬送ガイド板間の間隔を変更して第1ガイド状態と第2ガイド状態とに移行させる。
【0056】
本実施形態においても、駆動部は、排出ローラ対24にシートSが到達する所定距離手前で(又は所定時間前に)、搬送ガイド部28を第1ガイド状態から第2ガイド状態に移行させる。上記所定距離手前の検知は、光学式センサ27のやや上流に配置された不図示の検知センサからの信号に基づいて制御部42が行う。一方、上記所定時間前の検知の場合は、不図示のタイマに基づいて制御部42が行う。或いは、光学式センサ27によりシート先端が検知された時点で搬送ガイド部28を第1ガイド状態から第2ガイド状態に移行させるように制御することも可能である。
【0057】
なお、第1搬送ガイド板28A及び第2搬送ガイド板28Bの双方を上下方向に移動させて離間させる構成としたが、本実施形態においても、これに限定されることはない。つまり、第1搬送ガイド板28A及び第2搬送ガイド板28Bのいずれか一方を他方に対して移動させる構成としても、同様の効果を得ることができる。言い換えると、上記駆動部が、カム機構(34,45,46)を介して第1搬送ガイド板28A及び第2搬送ガイド板28Bの少なくとも一方を移動させて第1ガイド状態と第2ガイド状態とに移行させるようにすれば良い。
【0058】
以上の構成を有する本シート排出装置18では、中間搬送路17から搬送されたシートSが搬送ガイド部28を通過する際、駆動モータ36の駆動でカム部34aがカムフォロア部45,46の湾曲部45a,46a内に収容されている。このため、搬送ガイド部28が図7(a)に示す第1ガイド状態にあり、シートSは、下側の第2搬送ガイド板28Bに沿って搬送される。
【0059】
そして、シートSが排出ローラ対24の所定距離手前に位置していることが上記検知センサ(不図示)によって検知され、その検知信号が制御部42に送られると、制御部42から駆動モータ36に電気信号が出力される。これにより、駆動モータ36が駆動して、ピニオン35からラック34bに駆動が伝達される。
【0060】
これにより、ピニオン35がカム部材34を図8(a)の矢印K方向に移動させるため、カム部34aが湾曲部45a,46aから第1搬送ガイド板28A及び第2搬送ガイド板28Bの各裏面28a,28b側に移動する。これにより、第1搬送ガイド板28Aと第2搬送ガイド板28Bとが互いに離間する方向(矢印I,J方向)に移動して、第2ガイド状態となる。
【0061】
シートSは、搬送ガイド部28から排出ローラ対24に送られると、次のようになる。つまり、ローラ本体24a,24bと突起部材37とにより、図7(b)に示すように、シート排出方向(同図の左方向)と直交する方向(同図の上下方向)に波打ち、シート搬送方向(同図の左右方向)に剛性を持つ。
【0062】
シートSの波打った形状は、図8(b)に示すように排出ローラ対24の上流でも形成されるが、上述のように搬送ガイド部28が第2ガイド状態になることで、シートSが搬送ガイド部28の間で強く押し付けられることがない。従って、画像斑を発生させることなくシートSを排出トレイ19に排出することができる。
【0063】
そして、シートSが排出されたことが光学式センサ27によって検知されると、制御部42の制御で駆動モータ36が逆回転駆動されることで、カム部材34が図8(a)の左方向に移動させられる。このため、第1搬送ガイド板28Aと第2搬送ガイド板28Bが、裏面28a,28bから湾曲部45a,46aに向けて移動するカム部34aの形状に沿って互いに接近する方向に移動し、図6(b)の第1ガイド状態に復帰して、次のシートSに備える。
【0064】
また、シートSは坪量によって、排出ローラ対24で波打ったことにより付与される剛性の大きさと、排出ローラ対24の上流に発生する波打ち形状の距離が異なる。例えば普通紙(坪量:75g〜90g)は、厚紙(坪量:160g〜200g)に比べて剛性が小さく、波打ち形状も短い。このような普通紙をシートSとして用いる場合は、図9に示すように、ピニオン35の回転でカム部34aを、裏面28a,28bから離れる方向に位置する平坦部45b,46b側に移動させることができる。つまり、カム機構は、カム部材34の移動に応じて第2ガイド状態(第2間隔)における第1搬送ガイド板28A及び第2搬送ガイド板28B間の間隔を複数段階(ここでは、2段階)に変更することができる。この場合、搬送ガイド部28の上下移動量を小さくしながらも、画像ダメージを防止することができる。
【0065】
また、普通紙を連続通紙する場合には搬送速度が速くなり、連続する2枚のシートS間の時間が短くなるが、搬送ガイド部28の移動量が上記のように小さければ、移動に要する時間を短縮することができる。このため、連続通紙においても搬送ガイド部28を所望の位置へ、より的確に移動することができる。
【0066】
以上の第2の実施形態によっても、シート排出装置18でシートSを波打たせて剛性を付与した場合に、排出ローラ対24上流の搬送ガイド部28にシートSの凸部が強く押し付けられるような不都合を防止することができる。これにより、画像がダメージを受けるような従来の問題を有効に解消することができる。
【符号の説明】
【0067】
8,14…画像形成部(駆動ローラ,2次転写ローラ)、18…シート排出装置、24…排出部(排出ローラ対)、28…搬送ガイド部、28A…第1搬送ガイド板、28B…第2搬送ガイド板、28a,28b…裏面、29,30,33…駆動部(リンク機構,引っ張りバネ,ソレノイド)、34,45,46…駆動部,カム機構(カム部材,カムフォロア部,カムフォロア部)、35,36…駆動部(ピニオン,駆動モータ)、45,46…カムフォロア部、45a,46a…湾曲部、45b,46b…平坦部、S…シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された第1搬送ガイド板及び第2搬送ガイド板によりシートの表裏をガイドして搬送する搬送ガイド部と、前記搬送ガイド部を介して送られるシートをシート排出方向と直交する幅方向にて波打ち形状にして排出する排出部と、を備え、
前記搬送ガイド部の前記第1及び第2搬送ガイド板は、
シートが前記排出部へ向けて搬送される際は所定の第1間隔をあけてシートをガイドし、シートが前記排出部を通過する際には前記第1間隔よりも広い第2間隔に変更してシートをガイドする、
ことを特徴とするシート排出装置。
【請求項2】
前記搬送ガイド部を駆動する駆動部を備え、
前記駆動部は、リンク機構を介して前記第1及び第2搬送ガイド板の少なくとも一方を移動させて前記第1間隔と前記第2間隔とに移行させる、ことを特徴とする請求項1記載のシート排出装置。
【請求項3】
前記搬送ガイド部を駆動する駆動部を備え、
前記駆動部は、カム機構を介して前記第1及び第2搬送ガイド板の少なくとも一方を移動させて前記第1間隔と前記第2間隔とに移行させる、ことを特徴とする請求項1記載のシート排出装置。
【請求項4】
前記カム機構は、
前記第1及び第2搬送ガイド板の一側部にて前記シート排出方向に往復移動可能に支持されたカム部材を有し、
前記カム部材の移動に応じて前記第1及び第2搬送ガイド板間の間隔を変更して前記第1間隔と前記第2間隔とに移行させる、ことを特徴とする請求項3記載のシート排出装置。
【請求項5】
前記カム機構は、前記カム部材の移動に応じて前記第2間隔における前記第1及び第2搬送ガイド板間の間隔を複数段階に変更する、ことを特徴とする請求項4記載のシート排出装置。
【請求項6】
シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部により画像が形成されたシートを排出する請求項1乃至5のいずれか1項記載のシート排出装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−131589(P2012−131589A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283558(P2010−283558)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】