説明

シート排出装置

【課題】製造コストの高騰化を生じることなく、かつシートの排出性を損なうことなく、異音の発生を防止可能なシート排出装置を提供する。
【解決手段】複合機1は、装置本体10とシート押さえ17との間に軸支手段30を備えている。軸支手段30は、排出口20aの上縁を超える上方揺動端Uから排出口20aの下縁を超える下方揺動端Dまでの揺動範囲でシート押さえ17を装置本体10に揺動可能に軸支している。軸支手段30は、シート押さえ17に形成された揺動軸31a、31bと、装置本体10のハウジング20に形成され、揺動軸31a、31bを揺動可能に支持する軸受穴41a、41bとを有する。揺動軸31a、31bと軸受穴41a、41bとがなす径方向の隙間は、シート押さえ17が排出口20aの中央領域にあれば広く、上方揺動端U又は下方揺動端Dに近づくに従って狭くされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のシート排出装置が開示されている。このシート排出装置は、排出口が形成されているとともに、排出口の下方に載置トレイを有する装置本体と、装置本体内に設けられ、排出口から載置トレイ上にシートを排出する排出手段とを備えている。
【0003】
また、このシート排出装置は、排出口から排出されたシートを載置トレイ上に押さえ付けるシート押さえを備えている。装置本体とシート押さえとの間には軸支手段が設けられている。具体的には、装置本体には揺動軸が水平に設けられており、シート押さえには揺動軸が挿通される軸受穴が形成されている。
【0004】
このシート排出装置は画像形成装置の一部とされ得る。この画像形成装置等において、シート押さえは、シートの排出前においては、自己の下端部が自重によって下げられた待機位置にある。そして、シート押さえは、シートが排出され始めると、シートによって押圧されて一時的に下端部を上方に持ち上げるように揺動する。そして、シートの後端部がシート押さえから離れた時、シートの押圧力がなくなるため、再び待機位置に戻る。こうして、シート押さえの下端部が自重によって載置トレイ上のシートを押さえ付ける。このため、このシート排出装置によれば、載置トレイ上のシートを整列させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−77339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のシート排出装置では、軸支手段が排出口の上縁を超える上方揺動端から排出口の下縁を超える下方揺動端までの揺動範囲でシート押さえを装置本体に揺動可能に軸支しているため、シート押さえがシートによって押圧されて上方に持ち上げるように揺動する際、又はシート押さえが再び待機位置に戻る際、シート押さえの一部が装置本体と衝突し、異音が発生し易い。
【0007】
この異音の発生を抑制するため、シート押さえが衝突する装置本体の一部にスポンジ等の緩衝材を設けることも考えられる。また、シート押さえが勢いよく揺動しないように軸支手段にばね等の付勢手段を設けることも考えられる。
【0008】
しかしながら、このように緩衝材や付勢手段等を設けるとすれば、部品点数が増大してしまい、シート排出装置の製造コストが高価になってしまう。また、付勢手段によってシート押さえの揺動を制限すると、シート押さえがシートの排出性を損なってしまう。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、部品点数が増加することなく、かつシートの排出性を損なうことなく、異音の発生を防止可能なシート排出装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のシート排出装置は、排出口が形成されているとともに、前記排出口の下方に載置トレイを有する装置本体と、
前記装置本体内に設けられ、前記排出口から前記載置トレイ上にシートを排出する排出手段と、
前記排出口から排出された前記シートを前記載置トレイ上に押さえ付けるシート押さえと、
前記装置本体と前記シート押さえとの間に設けられ、前記排出口の上縁を超える上方揺動端から前記排出口の下縁を超える下方揺動端までの揺動範囲で前記シート押さえを前記装置本体に揺動可能に軸支する軸支手段とを備え、
前記軸支手段は、前記装置本体及び前記シート押さえの一方に形成された揺動軸と、前記装置本体及び前記シート押さえの他方に形成され、前記揺動軸を揺動可能に支持する軸受穴とを有し、
前記揺動軸と前記軸受穴とがなす径方向の隙間は、前記シート押さえが前記排出口の中央領域にあれば広く、前記上方揺動端又は前記下方揺動端に近づくに従って狭くされていることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
このシート排出装置では、シート押さえの近傍に緩衝材や付勢手段等を設ける必要がないため、部品点数を増やすことなく、製造コストの低廉化を実現できる。
【0012】
また、このシート排出装置では、シート押さえが排出口の中央領域で待機位置にあれば、揺動軸と軸受穴とがなす径方向の隙間が広いので、シート押さえはシートによって容易に上方に揺動する。このため、シートの排出性は損なわれない。
【0013】
また、この際、シート押さえが勢いよく上方に揺動したとしても、シート押さえが上方揺動端に近づくに従い、揺動軸と軸受穴とがなす径方向の隙間が狭くされているため、揺動軸と軸受穴との摩擦面積が徐々に増え、シート押さえの揺動が徐々に制動される。このため、シート押さえが排出口の上縁に干渉することがなく、異音を生じない。
【0014】
他方、排出口から排出されたシートの後端部が排出手段から外れれば、シートはシート押さえによって載置トレイ上に押さえ付けられる。この際、シート押さえが勢いよく下方に揺動したとしても、シート押さえが下方揺動端に近づくに従い、揺動軸と軸受穴とがなす径方向の隙間が狭くされているため、揺動軸と軸受穴との摩擦面積が徐々に増え、シート押さえの揺動が徐々に制動される。このため、シート押さえが排出口の下縁に干渉することがなく、異音を生じない。
【0015】
したがって、本発明のシート排出装置では、製造コストの高騰化を生じることなく、かつシートの排出性を損なうことなく、異音の発生を防止することが可能である。
【0016】
揺動軸は軸線に沿って延び得る。この揺動軸は、軸線と平行であり、軸線から第1距離の位置にある第1位置線と、軸線と平行であり、第1位置線から軸線を中心とした周方向に規制角度ずれた位置にあり、かつ軸線から第1距離より小さい第2距離の位置にある第2位置線と、軸線と平行であり、軸線と第1位置線とを接続する面内にあり、かつ軸線から第1距離より小さい第3距離の位置にある第3位置線と、第1位置線から第3位置線まで延びる軸側当接面と、第1位置線から軸側当接面と交差する方向へ湾曲しつつ第2位置線まで延びる軸側湾曲面とを備え得る。規制角度は360°を等分にする角度で任意に選択され得る。
【0017】
また、軸受穴は軸受線に沿って延び得る。この軸受穴は、軸受線と平行であり、軸受線から第1距離より大きい第4距離の位置にある第4位置線と、軸受線と平行であり、第4位置線から軸受線を中心とした周方向に規制角度ずれた位置にあり、かつ軸受線から第4距離より小さい第5距離の位置にある第5位置線と、軸受線と平行であり、軸受線と第4位置線とを接続する面内にあり、かつ軸受線から第3距離より大きく、第4距離より小さい第6距離の位置にある第6位置線と、第4位置線から第6位置線まで延びる軸受側当接面と、第4位置線から軸受側当接面と交差する方向へ湾曲しつつ第5位置線まで延びる軸受側湾曲面とを備え得る。規制角度は360°を等分にする角度で任意に選択され得る。
【0018】
そして、シート押さえは、軸側当接面が軸受側当接面に当接する第1規制位置と、軸側湾曲面が軸受側湾曲面に当接する第2規制位置とにおいて、それぞれ移動規制され得る(請求項2)。
【0019】
この場合、シート押さえが第1、2規制位置で規制される。例えば、第1規制位置をシート押さえが排出口の上縁に干渉する手前の位置とし、第2規制位置をシート押さえが排出口の下縁に干渉する手前の位置とすることができる。
【0020】
シート押さえが第1規制位置から第2規制位置に向かって揺動すれば、軸側湾曲面と軸受側湾曲面とが徐々に当接するので、ダンパー効果がある。
【0021】
揺動軸の軸側当接面と軸受穴の軸受側当接面とがともに径方向に延びていることにより、第1規制位置で揺動軸と軸受穴とが衝突しても、軸側当接面及び軸受側当接面はともに軸線や軸受線から近く、衝突時の速度が小さいため、シート押さえの下端部が干渉するよりも異音が極めて小さい。
【0022】
第1距離をLa1、第2距離をLa2、第2距離をLa3、第4距離をLa4、第5距離をLa5、第6距離をLa6、揺動軸が軸受穴に対して第1規制位置から揺動した角度をα(ラジアン)、定数をKとする。この場合、軸線から軸側湾曲面までの距離Laxは、La3≦Lax=La2+Kα≦La1であることが可能である。また、軸受線から軸受側湾曲面までの距離Lahは、La6≦Lah=La5+Kα<La4であることが可能である(請求項3)。これらは軸側湾曲面及び軸受側湾曲面が円弧でない場合の具体的構成である。
【0023】
軸線からずれた円中心線を仮想し、円中心線から第1位置線又は第2位置線までの距離をLb、円中心線から第4位置線又は第5位置線までの距離をLcとする。この場合、円中心線から軸側湾曲面までの距離Lbxは、Lbx=Lbであることが可能である。また、円中心線から軸受側湾曲面までの距離Lchは、Lch=Lcであることが可能である(請求項4)。これらは軸側湾曲面及び軸受側湾曲面が円弧の場合の具体的構成である。
【0024】
本発明の画像形成装置は上記シート排出装置を備えていることを特徴とする。この場合、画像形成装置において本発明の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のシート排出装置及び画像形成装置は、部品点数を増加させることなく、かつシートの排出性を損なうことなく、異音の発生を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1、2の複合機の斜視図である。
【図2】実施例1、2の複合機の内部構成を示す縦断面図である。
【図3】実施例1、2の複合機の要部拡大縦断面図である。
【図4】実施例1、2の複合機に係り、シート押さえの斜視図である。
【図5】実施例1、2の複合機に係り、シート押さえの要部拡大斜視図である。
【図6】実施例1、2の複合機に係り、装置本体の要部拡大斜視図である。
【図7】実施例1の複合機に係り、揺動軸と軸受穴との模式拡大断面図である。
【図8】実施例1の複合機に係り、揺動軸と軸受穴との模式拡大断面図である。
【図9】実施例1の複合機に係り、待機位置にある揺動軸と軸受穴との模式拡大断面図である。
【図10】実施例1の複合機に係り、上方揺動端近傍又は下方揺動端近傍にある揺動軸と軸受穴との模式拡大断面図である。
【図11】実施例2の複合機に係り、揺動軸と軸受穴との模式拡大断面図である。
【図12】実施例2の複合機に係り、揺動軸と軸受穴との模式拡大断面図である。
【図13】実施例2の複合機に係り、待機位置にある揺動軸と軸受穴との模式拡大断面図である。
【図14】実施例2の複合機に係り、上方揺動端近傍又は下方揺動端近傍にある揺動軸と軸受穴との模式拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0028】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の複合機1は、画像形成装置としての機能に加え、他の機能(例えば、画像読取装置や通信装置としての機能等)を兼ね備えたものである。なお、以下の説明においては、複合機1が備える各部の相対的な位置関係をわかりやすく説明するため、図中に併記した上下左右前後の各方向を利用する。
【0029】
複合機1は、プリンタ部2と、プリンタ部2の上部に搭載されたスキャナ部3と、プリンタ部2の上部でスキャナ部3の前方に配設された操作部4とを備えている。スキャナ部3は、フラットベッド形イメージスキャナの上部カバーにADF(Automatic Document Feeder;自動原稿送り装置)を搭載した構造になっている。これらプリンタ部2、スキャナ部3及び操作部4が装置本体10を構成している。装置本体10はプリンタ部2の上面を載置トレイ18とするハウジング20を有している。ハウジング20には、図2に示すように、載置トレイ18に向かって開口する排出口20aが形成されている。
【0030】
プリンタ部2は、給紙カセット11、給紙機構12、プロセスカートリッジ13、レーザースキャナ14、定着器15、排出手段16等を備えている。
【0031】
排出手段16は、定着器15から送出される定着後のシートSを載置トレイ18へと搬送する機構である。この排出手段16は、図3に示すように、シートSに接触して回転するローラ16a、16bを有している。ハウジング20には、排出口20aから排出されたシートSを載置トレイ18上に押さえ付けるシート押さえ17が設けられている。
【0032】
ハウジング20とシート押さえ17との間には軸支手段30が設けられている。軸支手段30は、排出口20aの上縁を超える上方揺動端Uから排出口20aの下縁を超える下方揺動端Dまでの揺動範囲でシート押さえ17をハウジング20に揺動可能に軸支している。具体的には、図4及び図5に示すように、シート押さえ17には一対の揺動軸31a、31bが水平に設けられ、両揺動軸31a、31bは互いに遠ざかる方向に突出している。ハウジング20には揺動軸31a、31bが挿通される軸受穴41a、41bが形成されている。
【0033】
揺動軸31a、31bと軸受穴41a、41bとがなす径方向の隙間は、図7〜10に示すように、シート押さえ17が待機位置にあれば広く、上方揺動端Uに近づくに従って狭くされている。
【0034】
以下、揺動軸31a、31b及び軸受穴41a、41bの構成を詳細に説明する。図7及び図8に示すように、水平方向にx軸、上下方向にy軸をもつ空間座標を仮定する。この空間座標の原点に両揺動軸31a、31bの軸線Oを位置させる。
【0035】
両揺動軸31a、31bは、第1位置線P1、第2位置線P2、第3位置線P3、第1対称線P1’、軸側当接面F1、軸側湾曲面F2、軸側当接対称面F1’及び軸側湾曲対称面F2’によって形成されている。
【0036】
第1位置線P1は、軸線Oと平行であり、軸線Oから第1距離La1の位置にある。第2位置線P2は、軸線Oと平行であり、第1位置線P1から軸線Oを中心とした周方向に規制角度(180°)ずれた位置にあり、かつ軸線Oから第1距離La1より小さい第2距離La2の位置にある。第3位置線P3は、軸線Oと平行であり、軸線Oと第1位置線P1とを接続するy軸を含む面内にあり、かつ軸線Oから第1距離La1より小さい第3距離La3の位置にある。実施例1では、規制角度を180°としているため、第1対称線P1’は第1位置線P1をx軸に対して対称にした位置にある。この場合、第3位置線P3と第2位置線P2とはx軸に対して対称である。
【0037】
軸側当接面F1は、第1位置線P1から第3位置線P3までy軸と平行に延びている。軸側湾曲面F2は、第1位置線P1から軸側当接面F1と交差する方向(図中、右回り)へ湾曲しつつ第2位置線P2まで延びている。軸側当接対称面F1’は、軸側当接面F1をx軸に対して対称にした位置にある。軸側湾曲対称面F2’は、軸側湾曲面F2をx軸に対して対称にした位置にある。軸側湾曲面F2及び軸側湾曲対称面F2’は円弧ではない。
【0038】
また、空間座標の原点に両軸受穴41a、41bの軸線Qを位置させる。両軸受穴41a、41bは、第4位置線P4、第5位置線P5、第6位置線P6、第4対称線P4’、軸受側当接面F3、軸受側湾曲面F4、軸受側当接対称面F3’及び軸受側湾曲対称面F4’によって形成されている。
【0039】
第4位置線P4は、軸受線Qと平行であり、軸受線Qから第1距離La1より大きい第4距離La4の位置にある。第5位置線P5は、軸受線Qと平行であり、第4位置線P4から軸受線Qを中心とした周方向に規制角度(180°)ずれた位置にあり、かつ軸受線Qから第4距離La4より小さい第5距離La5の位置にある。第6位置線P6は、軸受線Qと平行であり、軸受線Qと第4位置線P4とを接続するy軸を含む面内にあり、かつ軸受線Qから第3距離La3より大きく、第4距離La4より小さい第6距離La6の位置にある。第4対称線P4’は、第4位置線P4をx軸に対して対称にした位置にある。この場合、第6位置線P6と第5位置線P5とはx軸に対して対称である。
【0040】
軸受側当接面F3は、第4位置線P4から第6位置線P6までy軸と平行に延びている。軸受側湾曲面F4は、第4位置線P4から軸受側当接面F3と交差する方向(図中、右回り)へ湾曲しつつ第5位置線P5まで延びている。軸受側当接対称面F3’は、軸受側当接面F3をx軸に対して対称にした位置にある。軸受側湾曲対称面F4’は、軸受側湾曲面F4をx軸に対して対称にした位置にある。軸受側湾曲面F4及び軸受側湾曲対称面F4’は円弧ではない。
【0041】
そして、シート押さえ17は、図9及び図10に示すように、第1規制位置と第2規制位置とにおいて、それぞれ移動規制される。第1規制位置では、図9に示すように、軸側当接面F1が軸受側当接面F3に当接するとともに、軸側当接対称面F1’が軸受側当接対称面F3’に当接する。また、第2規制位置では、図10に示すように、軸側湾曲面F2が軸受側湾曲面F4に当接するとともに、軸側湾曲対称面F2’が軸受側湾曲対称面F4’に当接する。
【0042】
以上のように、軸側湾曲面F2、軸受側湾曲面F4、軸側湾曲対称面F2’及び軸受側湾曲対称面F4’を円弧でなく具体化する。この場合、揺動軸31a、31bが軸受穴41a、41bに対して第1規制位置から揺動した角度をα(ラジアン)、定数をKとすると、軸線Oから軸側湾曲面F2までの距離Laxは、La3≦Lax=La2+Kα≦La1である。また、軸受線Qから軸受側湾曲面F4までの距離Lahは、La6≦Lah=La5+Kα<La4である。
【0043】
この複合機1では、図3に示すように、定着器15から送出される定着後のシートSがローラ16a、16bによって搬出される。シート押さえ17は、シートSの排出前においては、自己の下端部17aが自重によって下げられた待機位置にある。そして、シート押さえ17は、シートSが排出され始めると、シートSによって押圧されて一時的に下端部17aを上方に持ち上げるように揺動する。
【0044】
この際、この複合機1では、シート押さえ17が待機位置にあれば、図9に示すように、揺動軸31a、31bと軸受穴41a、41bとがなす径方向の隙間が広いので、シート押さえ17はシートSによって容易に上方に揺動する。このため、シートSの排出性は損なわれない。
【0045】
また、シート押さえ17が勢いよく上方に揺動したとしても、図10に示すように、シート押さえ17が上方揺動端Uに近づくに従い、揺動軸31a、31bと軸受穴41a、41bとがなす径方向の隙間が狭くされているため、揺動軸31a、31bと軸受穴41a、41bとの摩擦面積が徐々に増え、ダンパー効果の下でシート押さえ17の揺動が徐々に制動される。このため、シート押さえ17が排出口20aの上縁に干渉することがなく、異音を生じない。
【0046】
そして、図3に示すように、シートSの後端部がシート押さえ17から離れた時、シートSの押圧力がなくなるため、再び待機位置に戻る。この際、揺動軸31a、31bの軸側当接面F1と軸受穴41a、41bの軸受側当接面F3とがともに径方向に延び、かつ軸側当接対称面F1’と軸受側当接対称面F3’とがともに径方向に延びていることにより、第1規制位置で揺動軸31a、31bと軸受穴41a、41bとが衝突しても、軸側当接面F1及び軸受側当接面F3と、軸側当接対称面F1’及び軸受側当接対称面F3’とはともに軸線Oや軸受線Qから近く、衝突時の速度が小さいため、シート押さえ17の下端部17aが干渉するよりも異音が極めて小さい。なお、この際に揺動軸31a、31bと軸受穴41a、41bとがなす径方向の隙間が狭くなるようにすれば、この際の異音を防止することができる。
【0047】
こうして、この複合機1によれば、シート押さえ17の下端部17aが自重によって載置トレイ18上のシートSを押さえ付ける。このため、載置トレイ18上のシートSを整列させることが可能である。また、この複合機1では、このような作用効果を奏しつつ、シート押さえ17の近傍に緩衝材や付勢手段等を設ける必要がないため、製造コストの低廉化を実現できる。
【0048】
したがって、この複合機1では、製造コストの高騰化を生じることなく、かつシートSの排出性を損なうことなく、異音の発生を防止することが可能である。
【0049】
(実施例2)
実施例2の複合機1は、揺動軸31a、31b及び軸受穴41a、41bが図11〜14に示す構成を採用している。ここでは、軸側湾曲面F2、軸受側湾曲面F4、軸側湾曲対称面F2’及び軸受側湾曲対称面F4’を円弧によって具体化している。
【0050】
すなわち、図11及び図12に示すように、空間座標において、軸線Oからずれた円中心線Eを仮想し、軸側湾曲面F2は円中心線Eを中心とする円弧によって形成されている。また、軸受側湾曲面F4は、軸受線Qからずれた円中心線Eを中心とする円弧によって形成されている。
【0051】
この場合、円中心線Eから第1位置線P1までの距離をLb、円中心線Eから第5位置線P5までの距離をLcとする。この場合、円中心線Eから軸側湾曲面F2までの距離Lbxは、Lbx=Lbである。また、円中心線Eから軸受側湾曲面F4までの距離Lchは、Lch=Lcである。他の構成は実施例1と同様である。同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
この複合機1においても、シート押さえ17が待機位置にあれば、図13に示すように、揺動軸31a、31bと軸受穴41a、41bとがなす径方向の隙間が広いので、シート押さえ17はシートSによって容易に上方に揺動する。このため、シートSの排出性は損なわれない。
【0053】
また、シート押さえ17が勢いよく上方に揺動したとしても、図14に示すように、シート押さえ17が上方揺動端Uに近づくに従い、揺動軸31a、31bと軸受穴41a、41bとがなす径方向の隙間が狭くされているため、揺動軸31a、31bと軸受穴41a、41bとの摩擦面積が徐々に増え、ダンパー効果の下でシート押さえ17の揺動が徐々に制動される。このため、シート押さえ17が排出口20aの上縁に干渉することがなく、異音を生じない。
【0054】
したがって、実施例2の複合機1においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、複合機等の画像形成装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
20a…排出口
18…載置トレイ
10…装置本体
S…シート
16…排出手段
17…シート押さえ
U…上方揺動端
D…下方揺動端
30…軸支手段
31a、31b…揺動軸
41a、41b…軸受穴
O…軸線
La1…第1距離
P1…第1位置線
La2…第2距離
P2…第2位置線
La3…第3距離
P3…第3位置線
F1…軸側当接面
F2…軸側湾曲面
Q…軸受線
La4…第4距離
P4…第4位置線
La5…第5距離
P5…第5位置線
La6…第6距離
P6…第6位置線
F3…軸受側当接面
F4…軸受側湾曲面
E…円中心線
1…複合機(画像形成装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出口が形成されているとともに、前記排出口の下方に載置トレイを有する装置本体と、
前記装置本体内に設けられ、前記排出口から前記載置トレイ上にシートを排出する排出手段と、
前記排出口から排出された前記シートを前記載置トレイ上に押さえ付けるシート押さえと、
前記装置本体と前記シート押さえとの間に設けられ、前記排出口の上縁を超える上方揺動端から前記排出口の下縁を超える下方揺動端までの揺動範囲で前記シート押さえを前記装置本体に揺動可能に軸支する軸支手段とを備え、
前記軸支手段は、前記装置本体及び前記シート押さえの一方に形成された揺動軸と、前記装置本体及び前記シート押さえの他方に形成され、前記揺動軸を揺動可能に支持する軸受穴とを有し、
前記揺動軸と前記軸受穴とがなす径方向の隙間は、前記シート押さえが前記排出口の中央領域にあれば広く、前記上方揺動端又は前記下方揺動端に近づくに従って狭くされていることを特徴とするシート排出装置。
【請求項2】
前記揺動軸は軸線に沿って延び、
前記揺動軸は、前記軸線と平行であり、前記軸線から第1距離の位置にある第1位置線と、
前記軸線と平行であり、前記第1位置線から前記軸線を中心とした周方向に規制角度ずれた位置にあり、かつ前記軸線から前記第1距離より小さい第2距離の位置にある第2位置線と、
前記軸線と平行であり、前記軸線と前記第1位置線とを接続する面内にあり、かつ前記軸線から前記第1距離より小さい第3距離の位置にある第3位置線と、
前記第1位置線から前記第3位置線まで延びる軸側当接面と、
前記第1位置線から前記軸側当接面と交差する方向へ湾曲しつつ前記第2位置線まで延びる軸側湾曲面とを備え、
前記軸受穴は軸受線に沿って延び、
前記軸受穴は、前記軸受線と平行であり、前記軸受線から前記第1距離より大きい第4距離の位置にある第4位置線と、
前記軸受線と平行であり、前記第4位置線から前記軸受線を中心とした周方向に前記規制角度ずれた位置にあり、かつ前記軸受線から前記第4距離より小さい第5距離の位置にある第5位置線と、
前記軸受線と平行であり、前記軸受線と前記第4位置線とを接続する面内にあり、かつ前記軸受線から前記第3距離より大きく、前記第4距離より小さい第6距離の位置にある第6位置線と、
前記第4位置線から前記第6位置線まで延びる軸受側当接面と、
前記第4位置線から前記軸受側当接面と交差する方向へ湾曲しつつ前記第5位置線まで延びる軸受側湾曲面とを備え、
前記シート押さえは、前記軸側当接面が前記軸受側当接面に当接する第1規制位置と、前記軸側湾曲面が前記軸受側湾曲面に当接する第2規制位置とにおいて、それぞれ移動規制される請求項1記載のシート排出装置。
【請求項3】
前記第1距離をLa1、前記第2距離をLa2、前記第2距離をLa3、前記第4距離をLa4、前記第5距離をLa5、前記第6距離をLa6、前記揺動軸が前記軸受穴に対して前記第1規制位置から揺動した角度をα(ラジアン)、定数をKとすれば、
前記軸線から前記軸側湾曲面までの距離Laxは、
La3≦Lax=La2+Kα≦La1
であり、
前記軸受線から前記軸受側湾曲面までの距離Lahは、
La6≦Lah=La5+Kα<La4
である請求項2記載のシート排出装置。
【請求項4】
前記軸線からずれた円中心線を仮想し、前記円中心線から前記第1位置線又は前記第2位置線までの距離をLb、前記円中心線から前記第4位置線又は前記第5位置線までの距離をLcとすれば、
前記円中心線から前記軸側湾曲面までの距離Lbxは、
Lbx=Lb
であり、
前記円中心線から前記軸受側湾曲面までの距離Lchは、
Lch=Lc
である請求項2記載のシート排出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のシート排出装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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