説明

シート搬送装置、これを用いた画像形成装置

【課題】効率的にシート搬送時の騒音を防止することが可能なシート搬送装置を提供する。
【解決手段】ガイド部材18の表面18aで規定される搬送経路において、複数の給紙部からシートPを搬送する搬送経路内で段差が生じている部位よりもシート搬送方向下流側に回動可能に当接部材15を配置する。当接部材15は、一の搬送経路を外れた位置に回動支点15−3を持ち、それより搬送経路下流側に第一の当接部15−1、上流側に第二の当接部15−2を有する。搬送中のシートP先端が第一の当接部15−1に当接して押すと、回動支点15−3を中心に当接部材15が回動し、第二の当接部15−2側が搬送経路内へ出現し、シートPの搬送経路をガイド部材18の表面のガイド面18aで規定される搬送経路からずらし、段差部位をシート後端が通過する際の騒音を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機などの画像形成装置に用いられ、シートを所定の方向に搬送するシート搬送装置と、これを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置におけるシート搬送経路には、ユニット同士の境目等に、用紙の先端が引っ掛からないように、用紙搬送経路の用紙搬送方向下流側のユニットが上流側のユニットよりも用紙搬送経路から退避するように段差部が設けられている。
【0003】
また、用紙搬送経路が合流する箇所では、2つの搬送経路が合流する場合を例にとると、2つの用紙搬送経路から合流地点を経て下流側へ滑らかに搬送するために、合流地点よりも下流側の方が、合流地点よりも上流側のそれぞれの用紙搬送経路よりも広くなっている。
【0004】
画像形成装置を構成する各部(給紙部、画像形成部、転写部、定着部等)の配置は、所望の機能目的から様々に選択されるため、必要に応じて用紙搬送経路は湾曲した経路となることが多々ある。湾曲した用紙搬送経路に上述したユニット同士の境目がくる場合、段差部を設けることになるが、この段差部を用紙の後端が通過する際に、搬送経路によって湾曲させられた用紙がその元に(直線状に)戻ろうとする復元力によって用紙の後端が用紙搬送経路から若干退避している部分を打ち付け跳ね音が生じる、いわゆる用紙の後端跳ねが生じてしまう。
【0005】
また、用紙搬送経路が合流する合流地点を有する用紙搬送経路が湾曲している場合、合流地点よりも下流側の方が、合流地点よりも上流側のそれぞれの用紙搬送経路よりも広くなっているため、この合流地点前後で用紙搬送経路に段差が生じており、そのため湾曲した用紙搬送経路に上述したユニット同士の境目がくる場合と同様に用紙の後端跳ねが生じてしまう。この様な跳ね音を解消するため、特許文献1には、継ぎ目をなす部品の下流側の部材にシート後端を浮かせる形状を持たせることにより跳ね音を防止している。しかしながら、この形状では確実にシートの後端を浮かせるためにはシート流入経路からシート先端が下流側のガイド部材に突入するときにシートの先端の突入部の相対角度が大きくなるため、下流側のガイドから受ける搬送負荷が増大してジャムとなる恐れがある。さらにシートを所定の形状に沿わせる時、シートのコシが強い程直線に戻ろうとする力が大きいため、本来の目的であるコシが強いシートによる跳ね音の緩和の効果は薄れてしまう。
【0006】
また、特許文献2には、ガイド部品の継ぎ目の形状が幅方向に対して角度を持ち、シートの後端を瞬間的ではなく順次に当接させることにより跳ね音を防止している。この構成は、跳ね音を緩和することができるがなくすことはできない。また効果を得る為に角度を十分に取る必要があり、狭い搬送経路の場合レイアウト自体不可能となってしまう場合がある。
【0007】
なお特許文献3においては、搬送経路合流部に回動部材を設け、一方の流入経路から用紙が搬送される場合は他方の流入経路の隙間を埋めるように制御された機構に関するが、制御手段によるシーケンス反映方法、および回動させるための駆動部材が必要となるためコスト面でデメリットが大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、用紙が段差部を有する用紙搬送経路を搬送される時に生じる騒音を低減させることのできる用紙搬送装置を提供すること、またその様な用紙搬送装置を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシート搬送装置は、シートを搬送する第1シート搬送手段と、該第1シート搬送手段よりも下流側に配置され、該シートを搬送する第2シート搬送手段と、該第1シート搬送手段から該第2シート搬送手段に至る湾曲したシート搬送経路と、を有し、該シート搬送経路のシート搬送方向における下流側がシート搬送方向における上流側よりも前記シート搬送経路から退避しているシート搬送装置において、前記シート搬送経路の下流側に前記シートと当接する当接部材を有し、該当接部材は、前記シートの先端部と当接し前記シート搬送経路から退避する方向へ移動する第1当接部と、該第1当接部の移動に連動し該第1当接部よりもシート搬送方向における上流側に出現し前記シートの少なくとも腹部に当接する第2当接部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のシート搬送装置は、前記シート搬送経路は、シート搬送方向と交わる方向において分割され、該分割される分割位置のシート搬送方向下流側が該分割位置のシート搬送方向上流側よりも前記シート搬送経路から退避していることを特徴とする。
【0011】
本発明のシート搬送装置は、前記シート搬送経路は、他の少なくとも1つのシート搬送経路が合流する合流地点を有し、該合流地点のシート搬送方向下流側が該合流地点のシート搬送方向上流側よりも前記シート搬送経路から退避していることを特徴とする。
【0012】
本発明のシート搬送装置は、前記当接部材は、前記シート搬送経路の下流側よりも更に前記シート搬送経路から退避した位置であり、且つ前記第1当接部よりもシート搬送方向における上流側であり前記第2当接部よりもシート搬送方向における下流側である位置に回動支点を有することを特徴とする。
【0013】
本発明のシート搬送装置は、前記第1当接部が前記シートの先端に当接し、前記回動支点を中心に搬送方向下流側へ向けて回動することにより、前記第2当接部が前記回動支点を中心に搬送方向下流側へ向けて回動し、該第2当接部は、前記シート搬送経路上に出現して前記シートの少なくとも腹部に当接することを特徴とする。
【0014】
本発明のシート搬送装置は、前記当接部材は、くの字型の曲折形状を有し、該曲折形状の曲折部に前記回動支点を有することを特徴とする。
【0015】
本発明のシート搬送装置は、前記第1当接部、前記回動支点、及び前記第2当接部のなす角度が、90°以上であり180°よりも小さいことを特徴とする。
【0016】
本発明のシート搬送装置は、前記当接部材が、前記第1当接部と前記回動支点とを結ぶ直線が前記第2当接部と前記回動支点とを結ぶ直線よりも長くなるように構成されることを特徴とする。
【0017】
本発明のシート搬送装置は、前記当接部材を、前記第2当接部が前記シート搬送経路よりも退避した位置にある姿勢に付勢する付勢手段を有することを特徴とする。
【0018】
本発明のシート搬送装置は、前記当接部材が、前記第2当接部が前記シート搬送経路よりも退避した位置にある姿勢に、該当接部材の自重により前記回動支点を中心に回動することを特徴とする。
【0019】
本発明のシート搬送装置は、前記当接部材は、少なくとも前記第1当接部及び前記第2当接部の摩擦係数が前記シート搬送経路の表面の摩擦係数よりも低いことを特徴とする。
【0020】
本発明のシート搬送装置は、前記当接部材は、前記第1当接部及び前記第2当接部の少なくとも一方に回転可能なコロを有することを特徴とする。
【0021】
本発明のシート搬送装置は、前記当接部材の姿勢が変化したことを検知する検知手段を有することを特徴とする。
【0022】
本発明のシート搬送装置は、前記当接部材が、シート搬送方向と直交する方向に複数配設されることを特徴とする。
【0023】
本発明のシート搬送装置は、前記当接部材の少なくとも1つが、搬送対象となるシートの内で最小サイズのシートに当接可能な位置に配設されることを特徴とする。
【0024】
本発明のシート搬送装置は、前記当接部材は、前記シート搬送経路のシート搬送方向と直交する方向における略中央に配設されることを特徴とする。
【0025】
本発明のシート搬送装置は、前記当接部材は、前記シート搬送経路のシート搬送方向と直交する方向における側辺部に配設されることを特徴とする。
【0026】
本発明の画像形成装置は、前記いずれかのシート搬送装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、搬送経路を構成する部品間の段差をシート後端が通過する際の騒音を防止することができ、また当接部材の姿勢を安定に保つことを追加部品なく実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の画像形成装置の全体断面図
【図2】図1の装置のシートの搬送路に設けるガイド部材と、これに設けた当接部材を示す概念的断面図
【図3】図2に示したガイド部材と当接部材を詳細に示す模式図
【図4】図2に示した当接部材の動作を示す模式図
【図5】当接部材の変形例を示す図4相当の模式図
【図6】当接部材の他の変形例を示す図4相当の模式図
【図7】本発明の第2の実施例を示す図
【図8】本発明の第3の実施例を示す図
【図9】定着ローラ後の搬送経路を示す図
【図10】図2に示した当接部材の斜視図
【図11】本発明の第2の実施例の具体的な形状構成を斜視図
【図12】ガイド部材に当接部材を取付けた構成図
【図13】本発明を実施するのに好適な画像形成装置の一例である複写機の概念的断面図
【図14】当接部材の機構の一例を示す斜視図
【図15】図2に示した、段差がある部位の要部拡大図
【図16】図2に示した、段差がある部位の要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0029】
本件発明の特徴は、湾曲していて、上流側よりも下流側が退避している、すなわち段差がある用紙搬送経路の下流側(段差の退いてる側)に第1当接部と第2当接部を有する当接部材を設け、第1当接部材に用紙先端が当接すると、第1当接部材は用紙搬送経路から退避する位置に移動し、第1当接部の移動に連動して第2当接部が用紙搬送経路上に出現するという構成により、シートの後端が前述の段差部を通過した後に自身の復元力によって下流側の用紙搬送経路を打ち付けることによって生じる跳ね音を低減させることができる、というものである。
【0030】
そのため、第1当接部(トリガー)と第2当接部を別部材で構成し、第1当接部の移動をトリガーとして第2当接部が用紙搬送路中に出現するような装置も本発明の範囲に含めている。すなわち、本発明のシート搬送装置は、シートを搬送する第1シート搬送手段と、該第1シート搬送手段よりも下流側に配置され、該シートを搬送する第2シート搬送手段と、該第1シート搬送手段から該第2シート搬送手段に至る湾曲したシート搬送経路とを有する。前記シート搬送経路のシート搬送方向における下流側がシート搬送方向における上流側よりも前記シート搬送経路から退避している。また前記シート搬送経路の下流側に前記シートと当接する当接部材を有する。この当接部材は、前記シートの先端部と当接し前記シート搬送経路から退避する方向へ移動する第1当接部と、該第1当接部の移動に連動し該第1当接部よりもシート搬送方向における上流側に出現し前記シートの少なくとも腹部に当接する第2当接部とを備えている。したがって本発明は、湾曲部をもつ搬送経路において下流側ガイド面がシート搬送経路から退避している場合に当接部材によりシート後端の跳ね音を防止することを可能にする。
【0031】
また本発明は、前記段差が生じる要因のうち、ユニットが用紙搬送路の途中で分割されている場合を考慮し、前記シート搬送装置において、前記シート搬送経路を、シート搬送方向と交わる方向において分割している。その分割位置の前記シート搬送方向下流側が前記分割位置のシート搬送方向上流側よりも前記シート搬送経路から退避している。そのため本発明は、湾曲部を持つ搬送経路をユニットとして分割して構成することを可能にする。
【0032】
また本発明は、前記差が生じる要因のうち、用紙搬送路の途中に他の用紙搬送路との合流地点がある場合を考慮し、前記シート搬送装置において、前記シート搬送経路は、他の少なくとも1つのシート搬送経路が合流する合流地点を有する。そしてこの合流地点のシート搬送方向下流側が該合流地点のシート搬送方向上流側よりも前記シート搬送経路から退避している。そのため本発明は、シートの搬送経路が合流する位置でシート後端の跳ね音を防止することを可能にする。
【0033】
また本発明は、前記第1当接部と第2当接部が一体であり、その場合の回動支点の位置を規定するために、前記シート搬送装置において、前記当接部材は、前記シート搬送経路の下流側よりも更に前記シート搬送経路から退避した位置であり、且つ前記第1当接部よりもシート搬送方向における上流側であり前記第2当接部よりもシート搬送方向における下流側である位置に回動支点を有する。そのため本発明は、回動支点で当接部材を回転可能とし、1部品で跳ね音を防止することを可能にする。
【0034】
また本発明は、前記当接部材の動作を規定するために、前記シート搬送装置において、前記第1当接部が前記シートの先端に当接し、前記回動支点を中心に搬送方向下流側へ向けて回動することにより、前記第2当接部が前記回動支点を中心に搬送方向下流側へ向けて回動し、該第2当接部は、前記シート搬送経路上に出現して前記シートの少なくとも腹部に当接する。そのため本発明は、当接部材が一方向に動作し、第2の当接部がシートの腹部にあたる事で跳ね音を防止することを可能にする。
【0035】
また本発明では、跳ね音を防止する事ができるように、当接部材の形状に、くの字型の曲折形状を採用し、該曲折形状の曲折部に前記回動支点を有するように構成できる。
【0036】
また本発明は、前記第1当接部、前記回動支点、及び前記第2当接部のなす角度が、90°以上であり180°よりも小さい構成とし、前記当接部と回動支点の角度を具体的に制限して跳ね音防止の効果を高め得る。
【0037】
また本発明は、前記当接部材が、前記第1当接部と前記回動支点とを結ぶ直線が前記第2当接部と前記回動支点とを結ぶ直線よりも長くなる形状に構成し、前記回動支点から前記第2の当接部の距離が、回動支点から第1の当接部の距離よりも短くなるように設定することで、反発力の強いシートに対しても効果的に跳ね音を防止することを可能にする。
【0038】
また本発明は、前記当接部材を、前記第2当接部が前記シート搬送経路よりも退避した位置にある姿勢に付勢する付勢手段を有するようにすること、すなわち前記当接部材に対して前記付勢手段を追加する事で、当接部材の待機時の姿勢を常に保ち、シートジャムを防止することを可能にする。
【0039】
また本発明は、前記当接部材が、前記第2当接部が前記シート搬送経路よりも退避した位置にある姿勢に、該当接部材の自重により前記回動支点を中心に回動するようにすることで、追加の付勢手段を設けること無く低コストで目的とする効果を得ることを可能にする。
【0040】
また本発明は、前記当接部材が、少なくとも前記第1当接部及び前記第2当接部の摩擦係数が前記シート搬送経路の表面の摩擦係数よりも低い構成を有するようにすることで、シートの搬送負荷を下げ、シートジャムなどの副作用を防止することを可能にする。
【0041】
また本発明は、前記当接部材が、前記第1当接部及び前記第2当接部の少なくとも一方に回転可能なコロを追加することにより、摩擦係数をより低くし、またシート搬送中の摩擦などによる磨耗を防止し、紙粉の発生も防止することを可能にする。
【0042】
また本発明は、前記当接部材の姿勢が変化したことを検知する検知手段を有するし、前記当接部材の動きを検知することにより、シートの位置やサイズの検出に用い、駆動系制御手段と連動してシートへの画像形成やシートジャム検知などに利用することを可能にする。
【0043】
また本発明は、前記当接部材が、シート搬送方向と直交する方向に複数配設される事により、複数のサイズ幅のシートの跳ね音を防止することを可能にする。
【0044】
また本発明は、前記当接部材の少なくとも1つが、搬送対象となるシートの内で最小サイズのシートに当接可能な位置に配設される事により、装置が対応する全てのサイズのシートに対して跳ね音を防止することを可能にする。
【0045】
また本発明は、前記当接部材が、前記シート搬送経路のシート搬送方向と直交する方向における略中央に配設されることで、センター基準でシートが搬送される場合において、対応する全ての幅サイズのシートの跳ね音を防止することを可能にする。
【0046】
さらに本発明は、サイド基準でシートが搬送される場合に前記当接部材が一つであれば側辺部に設ける事により、側辺基準でシートを搬送する装置においては、対応する全ての幅サイズのシートの跳ね音を防止することを可能にする。
【0047】
さらに本発明に係るシート搬送装置を用いた多くの種類の画像形成装置では、搬送経路に湾曲部を持つっていてもシートの跳ね音を防止する効果を期待できる。
【実施例】
【0048】
以下本発明を図面に示す実施例を参照しつつ説明する。なお本発明は、図に示すタイプの画像形成装置、同シート搬送装置には限定されず、他の種々のタイプの装置に適用可能である。
【0049】
<実施例1>
図1は本発明の実施対象となる画像形成装置の一例の全体断面図を示す。図中線XはシートPの搬送経路を示す。装置本体の内外に設置された給紙部30、31の近傍に設けてあり、第1シート搬送手段を構成する給紙ローラ1a〜1cにより給紙部30、31に積載したシート束P1、P2からシートPが1枚ずつ分離され、第2シート搬送手段を構成するレジスト駆動ローラ2、従動ローラ3を経て転写駆動ローラ4b、従動ローラ5に達する。感光体6〜9から中間転写ベルト4aに画像が形成されて転写駆動ローラ4bによりシートPに画像が転写され、定着ローラ対10、11により画像が加熱定着され、排紙ローラ対12、13により排紙部14にシートPが排出される。
【0050】
本実施例装置は、図2において示すように、給紙部30、31からの給紙経路中に、給紙ガイドを行わせるためにガイド部材18を配し、これに当接部材15を設けてある。なお、当接部材15は、図14にて示すように、第一当接部材15c、第二当接部材15dのように複数に分かれ、連動して動作する機構を用いても良い。後述するが、シート自身の反発力を利用して動作するためには1部品で形成するのが好ましい。
【0051】
当接部材15の斜視図を図10に示す。当接部材15は、図2の例では、くの字型の曲折形状を有しており、シートPの搬送経路Xのシート搬送方向における上流側と、該上流側よりも退避している下流側とを分割する位置に位置しており、シートPがガイド部材18の一面側のガイド面18a(図示の例では給紙部31側としてあるが、これに限定されない)を通過していない時、ガイド部材18のガイド面18aが図示の姿勢を取っている構成としてある。そのため図3にも示すように、シートPの先端がガイド面18aの下流側(シートPの搬送方向で)に達したとき、搬送経路Xの曲率とシートPのコシにより、当接部材15が図3で示す姿勢15aを取り、シートPの搬送方向下流側の第1の当接部15−1をシートPに押し付け、回動支点である回転中心15−3を中心に回転し、シートPの搬送方向上流側の端部である第2の当接部15−2がシートPを押し返す力を持ってシートPに当接する。この状態を図4(B)に示す。すると、元々ガイド部材18のガイド面18aに沿って姿勢を保っていたシートPは、この2点の当接によりガイド面18aから浮くことになり、シートPの後端は、給紙部30、31からの給紙経路中に生じてしまう段差部位19a(図2参照)から離れる。そのため、既述の跳ね音が生じることを防止できる。
【0052】
また、この防止効果は他にも、図2に示すように第1シート搬送手段を構成する給紙ローラ1a後の搬送経路をなすガイド面16bと、下流側ガイド面18bにおける段差部位19b(図16に拡大して示す)、また図9において示すように、定着ローラ後の搬送経路をなすガイド面101aと、下流側のガイド面102aにおける段差部位19cなど単一経路中の段差部位、また図2において示すように、給紙ローラ1aおよび1bからなる2つの搬送経路の合流地点である部位におけるガイド部材18と下流側ガイド面103aのなす段差部位19d(図15に拡大して示す)といったような搬送経路合流部における段差部位など、用紙を搬送する経路が湾曲し、湾曲経路の外側にガイド面の段差部位がある場合において全て適用する事ができる。
【0053】
またガイド面18aにおいて段差部位19からシート搬送方向に距離をとった場所に当接部材15を設置すれば、装置本体に対して可動するガイド部材15との間に生じる段差部位であっても動作を阻害すること無く同様の効果を得ることができる。ただし段差部位を回避することを考慮すれば、当接部材15は段差部位に近い程、当然に効果は得やすくなるため、前述のような可動ガイドでない場合は段差部位に近い位置に当接部材を設置することが好ましい。
【0054】
以上を図3〜図6、図10によりさらに詳細に当接部材15について説明する。
当接部材15は図4(A)の姿勢で待機しており、印刷動作により用紙P先端が当接部材15の第1の当接部15−1に接触すると、当接部材15は回転中心15−3により反時計回りに回動し、第2の当接部15−2が用紙Pの腹部に当接して用紙Pをガイド面から退避させる。すなわち、シートPの搬送経路Xは、図2からもよくわかるように、シート搬送方向における下流側(レジスト駆動ローラ2、従動ローラ3側)がカーブしてシート搬送方向における上流側(給紙ローラ1a〜1c側)よりも退避している、換言すれば当接部材15が無い場合の経路よりもレジスト駆動ローラ2側へ離れる形状となっているので、これに沿って用紙Pが退避することになる。この時、当接部材15が用紙Pをガイド面から退避させるには少なくとも第1の当接部15−1を含む外形線L1と、第2の当接部15−2を含む外形線L2の内角をαとすると、α=180°以下となるため、当接部材15を1部品で形成するには、くの字型をしていると良い。
【0055】
当接部材15のシート搬送方向下流側の第1の当接部15−1を含む部位にシートPの先端が接触しつつ移動していくものとすると、図3、図4に示す例ではα=120°となるが、図5に示す90°の例、図6に示す60°の例なども考え得る。
【0056】
これらの例においては、第1の当接部15−1と回動支点である回転中心15−3とを結ぶ直線が、第2当接部15−2と回転中心15−3とを結ぶ直線よりも長くなるように構成されている。図示の例では、当接部材15とシートPが接触している時のガイド面18aからシートPまでの距離をL31、L32、L33とすると、L31<L32<L33となる。シートPの後端を段差部位から遠ざけるためには、内角αは0°に近づくことになるが、あまりαを小さくし、L1とガイド面18aがなす角度が90°よりも小さくなると、シートPの先端が当接部材の外形線上を通過する時、第1の当接部15−1を含む外形線がシートPの先端の動きを阻害することがあり得るようになるため適切ではない。限定はされないが、内角αは90°以上とすることが好ましい。そうすればシートPはスムーズに搬送できる。また内角αが180°に近づくとシートPの面とガイド面18aまでの距離が小さくなり、段差部位19の影響を受け得ることになるため、段差部位19の高さよりもガイド面18aからシートPまでの高さを大きく取れるように適宜の値の内角αを設定することがもちろん好ましい。なお、ガイド面18aがシートの搬送方向に十分スペースがある場合は外形線L1、L2の長さを大きくとれば内角αも大きくとることができる。また、回転軸15−3を支点、15−1を力点、15−2を作用点の釣り合いを力学的に考えると、シート後端を十分にガイド面から遠ざけるには、L1>L2の関係が好ましい。
【0057】
なお図3に示すように、当接部材15−1の裏面とガイド部材18の間に付勢手段として弾性部材20を設け、反発力を発生させることにより、当接部材15は姿勢15aを保つ力が発生する。すなわち、シートPの先端が接触するまでは確実に姿勢15bにはさせないようにすることにより、シートPの先端が当接部材15と引っかからなくなるため、搬送ジャムを防止あるいはほぼ防止することができる。図3において、ガイド部材18の一部からなる取付け面104と突き当て面105が設けられている。付勢手段20は取付け面104に取付けられ、当接部材15を時計回りの方向に対して付勢している。また突き当て面105は当接部材15が時計回りの方向に回転したとき、一定角度以上に回転しないように形成されている。この構成により、当接部材15に関して用紙が通過していない場合の待機状態15aと通過中の回転状態15bが常に決まる事になる。
【0058】
この時の付勢手段の付勢力は搬送するシートの負荷増大を抑えるため極力小さい方が好ましい。ただし当接部材15の回転負荷トルクを下回らないことが条件となる。付勢手段としては、圧縮コイルバネ、引張りコイルバネ、ネジリコイルバネのような弾性部材の他に、板バネ、当接部材の一部から形成される樹脂弾性形状部分、もしくはダンパなどの復元力を有する緩衝材を用いてもよい。
【0059】
また当接部材15の自重を利用して回転力を発生させれば付勢手段を使用しなくともシートPの搬送中以外は姿勢15aを保つことができる。例えば回転中心15−3に対して当接部材15の重心が図の右側にあるとき、回転支点15−3に対して重心が重力方向(下向き)に動こうとするため、当接部材15自体は常に図中時計回り方向の回転トルクが発生する。そのため、シートPの接触時以外は姿勢15aを保つことができる。すなわち上述と同じく当接部材15とシートPの引っ掛かりによる搬送ジャムを防止することができるうえ、付勢手段のための部品を追加しなくても良く、反発力がそもそも自重であるため長期間の効果を期待できる。なお当接部材15の回転トルクを大きくするためには、回転中心15−3から重心までの距離(回転中心15−3と重心を結ぶ線分の長さ)をできるだけ長くし、姿勢15aにおいてその線分が重力方向と直角に近くなる程好ましい。
【0060】
すなわち本発明では、当接部材15の当接部15−1、15−2のシートPに対する摩擦係数がガイド面の摩擦係数よりも低くなることにより、従来のガイド面から受けていた摩擦による搬送負荷が下がり、そのため摩擦負荷によるジャムが発生することを防止できるようになる。例えば、当接部15−1、15−2の部分に摩擦係数の小さいテフロン(登録商標)シートなどを貼り付けるなどがある。また当接部材の材質として、従来樹脂で形成するのであれば、PS、ABS、PC、金属であればSECC、SUSなどが一般的であるが、POM(ポリアセタール)など、摩擦係数の低い材質で形成するのが好ましい。
【0061】
<実施例2>
図7は本発明の第2の実施例を示す図である。図示のように、当接部材15の当接部15−1、15−2にコロ21、22を追設することにより、さらにシートPとの摩擦負荷を下げることができ、跳ね音の発生やジャムの発生をよりいっそう効果的に防止できるようになる。またシートPがコロ21、22とは摩擦摺動しないため、シートPにキズが付いたり、紙粉が発生したりといった不具合が発生しにくくなる。具体的な形状構成を斜視図11にて示す。コロ21、22は当接部材15の一部で形成された回転軸21a、22aによって回転可能に取付けられている。
【0062】
<実施例3>
図8は本発明の第3の実施例を示す図である。本実施例は、図示のように、当接部材15の姿勢を検知手段であるフォトインタラプタ24を用いて検知できるような構成としてある。すなわち、姿勢15aの状態から姿勢15bの状態に当接部材15の姿勢が変化したとき、当接部材15に一体的に形成されているフィラー部23がフォトインタラプタ24の光軸を遮蔽、あるいは非遮断と状態を変化させるので、それによるフォトインタラプタ24の電気信号のON、OFFで当接部材15の姿勢を判断するのである。
【0063】
この構成により、搬送中のシートが当接部材15の位置を通過中であることが検知できるため、例えばシートジャムが起こった場合などのジャムシート位置の検知、シートサイズの測定、また先端のタイミングを知ることにより、従来は搬送ローラ近辺で使われるセンサ機能を併せ持ち、駆動系制御手段と連動してシートへの画像形成、両面経路への反転制御などに利用することができる。
【0064】
<実施例4>
図12にガイド部材18に当接部材15を取付けた構成図を示す。図12においては用紙の幅方向に15a〜15eの合計5個の当接部材を設置している。シートPの幅方向の寸法が大きい場合、当接部材15を1ヶ所に配置しただけでは後端の跳ね音を防止効果が低減することも考えられるため、複数の当接部材15をガイド部材18のガイド面18aの幅方向に沿って複数配置し、それによって上述のような音、ジャムの発生防止に関する効果を高めることができる。また、シートPの搬送方向と直角をなす線上に複数設置することで、搬送中のシートPの先端に掛かる搬送負荷が同時に掛かるため、シートPの斜行を防ぐこともできる。
【0065】
また、部品数を削減するために当接部材を減らすには、複数の用紙対応サイズを考えた場合、最小幅サイズのシート幅の内部に当接部材を設ける事で全てのサイズの用紙に対して当接部材の効果を得る事ができる。図12に示したLminが最小サイズ用紙であるとすると、点線の内側に掛かる当接部材15a、15c、15dのいずれか、あるいは複数設置すればよい。さらに、用紙搬送装置によっては用紙搬送の基準位置が、用紙幅の中央である場合と、端部である場合があり、基準が中央であれば中央部の当接部材15cのみ、端部であればその端部基準に対応する側辺部の当接部材15aあるいは15eを設置することで、全てのサイズの用紙に対して効果を得る事が出来る。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のような特徴をもつシート搬送装置は、ほぼあらゆる画像形成装置に応用可能であり、搬送経路を構成する部品間の段差をシート後端が通過する際の騒音を防止することができる。また、当接部材の姿勢を安定に保つことができ、この安定な姿勢を保つことを追加部品なく実現できる。図13にしめすような大型の画像形成装置の搬送経路にも使用できる。
【符号の説明】
【0067】
1a〜1c:給紙ローラ
2:レジスト駆動ローラ
3:従動ローラ
4a:中間転写ベルト
4b:転写駆動ローラ
5:従動ローラ
6〜9:感光体
10、11:定着ローラ対
12、13:排紙ローラ対
14:排紙部
15:当接部材
15−1:シートの搬送方向下流側の当接部
15−3:回動支点
15−2:シートの搬送方向上流側の端部
15a、15b:当接部材の姿勢
15a〜15e:複数配置された当接部材
16a、16b:上流側ガイド面
18:ガイド部材
18a〜b:下流側ガイド面
19a〜d:段差部位
20:弾性部材
21、22:コロ
21a、22a:回転軸(コロ)
23:フィラー部
24:フォトインタラプタ
30、31:給紙部
101〜103:ガイド部材
101a:上流側ガイド面
102a、103a:下流側ガイド面
104:取付け面
105:突き当て面
α:外形線のなす内角
L1、L2:当接部と回転中心を結んだ線分
Lmin:最小シート幅
P:シート
P1、P2:シート束
X:シートの搬送経路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開平10‐316273号公報
【特許文献2】特開2000‐219382号公報
【特許文献3】特開2000‐7184号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する第1シート搬送手段と、該第1シート搬送手段よりも下流側に配置され、該シートを搬送する第2シート搬送手段と、該第1シート搬送手段から該第2シート搬送手段に至る湾曲したシート搬送経路と、を有し、該シート搬送経路のシート搬送方向における下流側がシート搬送方向における上流側よりも前記シート搬送経路から退避しているシート搬送装置において、
前記シート搬送経路の下流側に前記シートと当接する当接部材を有し、
該当接部材は、前記シートの先端部と当接し前記シート搬送経路から退避する方向へ移動する第1当接部と、該第1当接部の移動に連動し該第1当接部よりもシート搬送方向における上流側に出現し前記シートの少なくとも腹部に当接する第2当接部と、
を備えることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート搬送装置において、
前記シート搬送経路は、シート搬送方向と交わる方向において分割され、
該分割される分割位置のシート搬送方向下流側が該分割位置のシート搬送方向上流側よりも前記シート搬送経路から退避している
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシート搬送装置において、
前記シート搬送経路は、他の少なくとも1つのシート搬送経路が合流する合流地点を有し、
該合流地点のシート搬送方向下流側が該合流地点のシート搬送方向上流側よりも前記シート搬送経路から退避している
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載のシート搬送装置において、
前記当接部材は、前記シート搬送経路の下流側よりも更に前記シート搬送経路から退避した位置であり、且つ
前記第1当接部よりもシート搬送方向における上流側であり前記第2当接部よりもシート搬送方向における下流側である位置に回動支点を有する
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシート搬送装置において、
前記第1当接部が前記シートの先端に当接し、
前記回動支点を中心に搬送方向下流側へ向けて回動することにより、前記第2当接部が前記回動支点を中心に搬送方向下流側へ向けて回動し、
該第2当接部は、前記シート搬送経路上に出現して前記シートの少なくとも腹部に当接する
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のシート搬送装置において、
前記当接部材は、くの字型の曲折形状を有し、
該曲折形状の曲折部に前記回動支点を有する
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項7】
請求項4から6の何れかに記載のシート搬送装置において、
前記第1当接部、前記回動支点、及び前記第2当接部のなす角度が、90°以上であり180°よりも小さい
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項8】
請求項4から7の何れかに記載のシート搬送装置において、
前記当接部材が、前記第1当接部と前記回動支点とを結ぶ直線が前記第2当接部と前記回動支点とを結ぶ直線よりも長くなるように構成される
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項9】
請求項4から8の何れかに記載のシート搬送装置において、
前記当接部材を、前記第2当接部が前記シート搬送経路よりも退避した位置にある姿勢に付勢する付勢手段を有する
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項10】
請求項4から8の何れかに記載のシート搬送装置において、
前記当接部材が、前記第2当接部が前記シート搬送経路よりも退避した位置にある姿勢に、該当接部材の自重により前記回動支点を中心に回動する
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項11】
請求項1から10の何れかに記載のシート搬送装置において、
前記当接部材は、少なくとも前記第1当接部及び前記第2当接部の摩擦係数が前記シート搬送経路の表面の摩擦係数よりも低い
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項12】
請求項1から11の何れかに記載のシート搬送装置において、
前記当接部材は、前記第1当接部及び前記第2当接部の少なくとも一方に回転可能なコロを有する
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項13】
請求項1から12の何れかに記載のシート搬送装置において、
前記当接部材の姿勢が変化したことを検知する検知手段を有する
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項14】
請求項1から13の何れかに記載のシート搬送装置において、
前記当接部材が、シート搬送方向と直交する方向に複数配設される
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項15】
請求項14に記載のシート搬送装置において、
前記当接部材の少なくとも1つが、搬送対象となるシートの内で最小サイズのシートに当接可能な位置に配設される
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項16】
請求項1から13の何れかに記載のシート搬送装置において、
前記当接部材は、前記シート搬送経路のシート搬送方向と直交する方向における略中央に配設される
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項17】
請求項1から13の何れかに記載のシート搬送装置において、
前記当接部材は、前記シート搬送経路のシート搬送方向と直交する方向における側辺部に配設される
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項18】
請求項1から17の何れかに記載のシート搬送装置を具備する画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−16658(P2011−16658A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60362(P2010−60362)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】