説明

シート搬送装置、プリント装置およびジャム処理方法

【課題】シート搬送装置におけるジャムトラブル回復操作による装置内への紙片の残存防止。
【解決手段】シートを搬送する第1搬送機構を含む第1ユニット8と、第1ユニット8に隣接して設けられ、シートを搬送する第2搬送機構を含む第2ユニットと、第1ユニット8と第2ユニットとの間に設けられ、シートを切断する切断手段24と、シート搬送にトラブルが生じた場合に、シート端部が前記切断手段24の切断位置よりも前記第1ユニット8の側にくるまで前記第1搬送機構を駆動するよう制御する制御部13と、を有するシート搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続したシートを用いたシート搬送装置、プリント装置およびこれらの装置におけるジャム処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の搬送ユニットを備え連続したシートにプリントする装置について、ジャムが発生した場合にシートの除去を容易にする構成が知られている。例えば特許文献1は、第1シート搬送ユニットでジャムの検知が行われたら、第2シート搬送ユニットのシート搬送動作を解除させ、第1シート搬送ユニットのシート搬送動作を停止させると共に搬送方向とは逆方向に所定距離だけ搬送する構成を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−259100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のシート搬送ユニットを備えた装置において、第1シート搬送ユニット、第2シート搬送ユニット、および第1シート搬送ユニットと第2シート搬送ユニットとの間のシート切断手段を含む構成を想定する。この構成において、2つのユニットの間にシートが存在する場合にシート切断手段を操作すると、シートの状態によっては、第2シート搬送ユニットの入口近傍にシートの小さな紙片が生じて装置内に落下する。一旦落下した紙片は装置から排出することが容易ではない。
【0005】
本発明の目的は、隣接するユニット間にシート切断部を備えるシート搬送装置において、ジャムによるシートの停止状態にかかわらず、シート切断部を操作しても装置内への紙片の残存が生じにくくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプリント装置は、シートを搬送する第1搬送機構を含む第1ユニットと、第1ユニットに隣接して設けられ、シートを搬送する第2搬送機構を含む第2ユニットと、第1ユニットと第2ユニットとの間に設けられ、シートを切断する切断手段と、シート搬送にトラブルが生じた場合に、シート端部が前記切断手段の切断位置よりも前記第1ユニットの側にくるまで前記第1搬送機構を駆動するよう制御する制御部と、を有するを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ジャムによるシートの停止状態にかかわらず、シートを切断した際に装置内に紙片が残存しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリント装置の内部構成を示す概略図である。
【図2】制御部の概念を示すブロック図である。
【図3】乾燥部の内部構造を示す斜視図である。
【図4】(a)および(b)はプリント装置本体の断面図である。
【図5】ユニット同士がドロワーコネクタで着脱される状態を示す図である。
【図6】(a)から(c)は片面プリントモードにおけるジャム発生の状況を示す図である。
【図7】(a)から(c)は両面プリントモードの表面プリントにおけるジャム発生の状況を示す図である。
【図8】(a)から(c)は両面プリントモードの裏面プリントにおけるジャム発生の状況を示す図である。
【図9】ジャム発生時のメンテナンス情報の表示例を示す図である。
【図10】(a)から(c)はカットシートが存在する場合のシートの停止状態を示す図である。
【図11】(a)および(b)はカットシートが存在する場合のシートの停止状態を示す図である。
【図12】(a)から(c)はカットシートが存在する場合のシートの停止状態を示す図である。
【図13】(a)から(c)はカットシートが存在する場合のシートの停止状態を示す図である。
【図14】(a)および(b)はカットシートが存在する場合のシートの停止状態を示す図である。
【図15】カットシートのジャム回復手順を示す図である。
【図16】(a)から(c)は連続シートが存在する場合のシートの停止状態を示す図である。
【図17】連続シートのジャム回復手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施する為の最良の形態について、以下に図面を用いて説明する。
【実施例】
【0010】
以下、インクジェット方式を用いたプリント装置の実施形態を説明する。本例のプリント装置は、長尺で連続したシート(搬送方向において繰り返しのプリント単位(1ページあるいは単位画像という)の長さよりも長い連続したシート)を使用し、片面プリントおよび両面プリントの両方に対応した高速ラインプリンタである。例えば、プリントラボ等における大量の枚数のプリントの分野に適している。なお、本明細書では、1つのプリント単位(1ページ)の領域内に複数の小さな画像や文字や空白が混在していたとしても、当該領域内に含まれるものをまとめて1つの単位画像という。つまり、単位画像とは、連続したシートに複数のページを順次プリントする場合の1つのプリント単位(1ページ)を意味する。プリントする画像サイズに応じて単位画像の長さは異なる。例えばL版サイズの写真ではシート搬送方向の長さは135mm、A4サイズではシート搬送方向の長さは297mmとなる。
【0011】
本発明はプリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置、各種デバイスの製造装置などのプリント装置に広く適用可能である。プリント処理はインクジェット方式、電子写真方式、熱転写方式、ドットインパクト方式、液体現像方式など方式は問わない。また、本発明はプリント処理に限らずロールシートに種々の処理(記録、加工、塗布、照射、読取、検査など)を行うシート処理装置にも適用可能である。
【0012】
図1はプリント装置の内部構成を示す断面の概略図である。本実施形態のプリント装置は、ロール状に巻かれたシートを用いて、シートの第1面と第1面の背面側の第2面に両面プリントすることが可能となっている。プリント装置本体はシート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、プリント部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12、制御部13の処理ユニットを備える。これらの処理ユニットは、装置本体の筐体に内蔵されている。筐体の前面(図1の紙面方向)には独立して開閉可能な複数のメンテナンス扉が設けられている。シートは、図中の実線で示したシート搬送経路に沿ってローラ対やベルトからなる搬送機構で搬送され、各処理ユニットで処理がなされる。なお、シート搬送経路の任意の位置において、シート供給部1に近い側を「上流」、その逆側を「下流」という。
【0013】
シート供給部1は、ロール状に巻かれた連続シートを保持して供給するためのユニットである。シート供給部1は、2つのロールR1、R2を収納することが可能であり、択一的にシートを引き出して供給する構成となっている。なお、収納可能なロールは2つであることに限定はされず、1つ、あるいは3つ以上を収納するものであってもよい。また、連続したシートであれば、ロール状に巻かれたものに限らない。例えば、単位長さごとのミシン目が付与された連続したシートがミシン目ごとに折り返されて積層され、シート供給部1に収納されるものでもよい。
【0014】
デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートのカール(反り)を軽減させるユニットである。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを用いて、カールの逆向きの反りを与えるようにシートを湾曲させて通過させることでデカール力を作用させカールを軽減させる。後述するように、デカール部2はデカール力を調整することが可能となっている。
【0015】
斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(本来の進行方向に対する傾き)を矯正するユニットである。基準となる側のシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。
【0016】
プリント部4は、搬送されるシートに対して上方からプリントヘッド14によりシート上にプリント処理を行なって画像を形成するユニットである。つまり、プリント部4はシートに所定の処理を行う処理部である。プリント部4は、シートを搬送する複数の搬送ローラも備えている。プリントヘッド14は、使用が想定されるシートの最大幅をカバーする範囲でインクジェット方式のノズル列が形成されたライン型プリントヘッドを有する。プリントヘッド14は、複数のプリントヘッドが搬送方向に沿って平行に並べられている。本例ではC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、LC(ライトシアン)、LM(ライトマゼンタ)、G(グレー)、K(ブラック)の7色に対応した7つのプリントヘッドを有する。なお、色数およびプリントヘッドの数は7つには限定はされない。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、インクタンクからそれぞれインクチューブを介してプリントヘッド14に供給される。
【0017】
検査部5は、プリント部4でシートにプリントされた検査パターンや画像をスキャナによって光学的に読み取って、プリントヘッドのノズルの状態、シート搬送状態、画像位置等を検査して画像が正しくプリントされたかを判定するためのユニットである。スキャナはCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを有する。
【0018】
カッタ部6は、プリント後のシートをモータの駆動力によって所定長さに切断する機械的なオートカッタを備えたシート切断ユニットである。本例ではカッタ部6はオートカッタとして説明する。カッタ部6は、シートを次工程に送り出すための複数の搬送ローラも備えている。カッタ部6の近傍にはゴミ箱27が設けられている。ゴミ箱27は、カッタ部6で切り落とされゴミとして排出される小さなシート片を収容するものである。カッタ部6には、切断したシートをゴミ箱27に排出するか、本来の搬送経路に移行させるかの振り分け機構が設けられている。
【0019】
情報記録部7は、切断されたシートの非プリント領域にプリントのシリアル番号や日付などのプリント情報(固有の情報)を記録するユニットである。記録はインクジェット方式、熱転写方式などで文字やコードをプリントすることで行なわれる。
【0020】
乾燥部8は、プリント部4でプリントされたシートを加熱して、付与されたインクを短時間に乾燥させるためのユニットである。乾燥部8の内部では通過するシートに対して少なくともインク付与面である下側から熱風を付与してインク付与面を乾燥させる。
【0021】
以上のシート供給部1から乾燥部8までのシート搬送経路を第1経路と称する。第1経路はプリント部4から乾燥部8までの間にプリント装置内でUターンする形状を有し、カッタ部6はUターンの形状の途中に位置している。
【0022】
反転部9は両面プリントを行う際に表面プリントが終了した連続シートを一時的に巻き取って表裏反転させるためのユニットである。反転部9は、乾燥部8を通過したシートを再びプリント部4に供給するための、乾燥部8からデカール部2を経てプリント部4に到る経路(ループパス)(第2経路と称する)の途中に設けられている。反転部9はシートを巻き取って収容するための回転する巻取回転体(ドラム)を備えている。表面のプリントが済んで切断されていない連続シートは巻取回転体に一時的に巻き取り収容される。巻き取りが終わったら、巻取回転体が逆回転して巻き取り済みシートはデカール部2に供給され、プリント部4に送られる。このシートは表裏反転しているのでプリント部4で裏面にプリントを行うことができる。両面プリントのより具体的な動作については後述する。
【0023】
排出搬送部10は、カッタ部6で切断され乾燥部8で乾燥させられたシートを搬送して、ソータ部11までシートを受け渡すためのユニットである。排出搬送部10は、反転部9が設けられた第2経路とは異なる経路(第3経路と称する)に設けられている。第1経路を搬送されてきたシートを第2経路と第3経路のいずれか一方に選択的に導くために、経路の分岐位置には可動フラップを有する経路切替機構が設けられている。
【0024】
ソータ部11と排出部12は、シート供給部1の側部で且つ第3経路の末端に設けられている。ソータ部11は必要に応じてプリント済みシートをグループ毎に仕分けるためのユニットである。仕分けられたシートは、複数のトレイからなる排出部12に排出される。このように、第3経路はプリント装置内でシート供給部1の下方を通過してシート供給部1を挟んでプリント部4や乾燥部8とは逆側にシートを排出するレイアウトとなっている。
【0025】
以上のように、シート供給部1から乾燥部8までが第1経路に順に設けられている。乾燥部8の先は第2経路と第3経路とに分岐され、第2経路は途中に反転部9が設けられ反転部9の先は第1経路に合流する。第3経路の末端には排出部12が設けられている。
【0026】
デカール部2、斜行矯正部3、プリント部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、排出搬送部10はそれぞれ独立した処理ユニットである。ジャム回復動作時などのメンテナンスを容易にするため、操作者が手動で任意のユニットを独立して脱着可能にプリント装置本体から手前側に引き出すことが可能となっている。
【0027】
これらの各ユニットにおいて、ユニット近傍のシート搬送経路の上流側と下流側にそれぞれ、連続シートを切断するためのカッタが設けられている。引き出すユニット上下流近傍で操作者はジャム回復動作時にカッタを用いてシートを切断することができ、ユニット引き出しを容易に行うことが可能となる。これらのカッタは操作者が手動で操作するハンドカッタであり、操作者の手動の力もしくは操作者の指示に基づいてアクチュエータで駆動される。図1に示すように、装置内のシート搬送経路の合計9箇所に第1カッタ17から第9カッタ25の9つのハンドカッタが設けられている。第1カッタ17はシート供給部1とデカール部2との間に設けられている。同様に、第2カッタ18はデカール部2と斜行矯正部3との間に、第3カッタ19は斜行矯正部3とプリント部4との間に、第4カッタ20はプリント部4と検査部5との間に、第5カッタ21は検査部5とカッタ部6との間に、それぞれ設けられている。カッタ部6よりも下流側では、第6カッタ22はカッタ部6と情報記録部7との間に、第7カッタ23は情報記録部7と乾燥部8との間に、第8カッタ24は乾燥部8の近傍の下流側にそれぞれ設けられている。第9カッタ25は反転部9とデカール部2との間に設けられている。なお、排出搬送部10から下流には連続シートが搬送されることはないので、連続シートを切断するカッタを設ける必要はない。
【0028】
制御部13は、プリント装置全体の各部の制御を司るユニットである。制御部13は、CPU、記憶装置、各種制御部を備えたコントローラ、外部インターフェース、および操作者が入出力を行う操作部15を有する。プリント装置の動作は、コントローラまたはコントローラに外部インターフェースを介して接続されるホストコンピュータ等のホスト装置16からの指令に基づいて制御される。
【0029】
図2は制御部13の概念を示すブロック図である。制御部13に含まれるコントローラ(破線で囲む範囲)は、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、画像処理部207、エンジン制御部208、個別ユニット制御部209から構成される。CPU201(中央演算処理部)はプリント装置の各ユニットの動作を統合的に制御する。ROM202はCPU201が実行するためのプログラムやプリント装置の各種動作に必要な固定データを格納する。RAM203はCPU201のワークエリアとして用いられたり、種々の受信データの一時格納領域として用いられたり、各種設定データを記憶させたりする。HDD204(ハードディスク)はCPU201が実行するためのプログラム、プリントデータ、プリント装置の各種動作に必要な設定情報を記憶読出することが可能である。操作部15は操作者との入出力インターフェースであり、ハードキーやタッチパネルの入力部、および情報を提示する表示器や音声発生器などの出力部を含む。
【0030】
高速なデータ処理が要求されるユニットについては専用の処理部が設けられている。画像処理部207は、プリント装置で扱うプリントデータの画像処理を行う。入力された画像データの色空間(たとえばYCbCr)を、標準的なRGB色空間(たとえばsRGB)に変換する。また、画像データに対し解像度変換、画像解析、画像補正等、様々な画像処理が必要に応じて施される。これらの画像処理によって得られたプリントデータは、RAM203またはHDD204に格納される。エンジン制御部208は、CPU201等から受信した制御コマンドに基づいてプリントデータに応じてプリント部4のプリントヘッド14の駆動制御を行う。エンジン制御部208は更にプリント装置内の各部の搬送機構の制御を行う。個別ユニット制御部209は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12の各ユニットを個別に制御するためのサブコントローラである。CPU201による指令に基づいて個別ユニット制御部209によりそれぞれのユニットの動作が制御される。外部I/F205は、コントローラをホスト装置16に接続するためのインターフェース(I/F)であり、ローカルI/FまたはネットワークI/Fである。以上の構成要素はシステムバス210によって接続されている。
【0031】
ホスト装置16は、プリント装置にプリントを行わせるための画像データの供給源となる装置である。ホスト装置16は、汎用または専用のコンピュータであってもよいし、画像リーダ部を有する画像キャプチャ、デジタルカメラ、フォトストレージ等の専用の画像機器であってもよい。ホスト装置16がコンピュータの場合は、コンピュータに含まれる記憶装置にOS、画像データを生成するアプリケーションソフトウェア、プリント装置用のプリント装置ドライバがインストールされる。なお、以上の処理の全てをソフトウェアで実現することは必須ではなく、一部または全部をハードウェアによって実現するようにしてもよい。
【0032】
次に、プリント時の基本動作について説明する。プリントには、片面プリントモードと両面プリントモードとがあり、片面プリントモードと両面プリントモードとでは動作が異なるので、それぞれについて説明する。
【0033】
片面プリントモードでは、シート供給部1から供給され、デカール部2、斜行矯正部3でそれぞれ処理されたシートは、プリント部4において表面(第1面)のプリントがなされる。長尺の連続シートに対して、搬送方向における所定の単位長さの画像(単位画像)を順次プリントして複数の画像を並べて形成していく。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において単位画像ごとに切断される。切断されたカットシートは、必要に応じて情報記録部7でシートの裏面にプリント情報が記録される。そして、カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され乾燥が行なわれる。その後、排出搬送部10を経由して、ソータ部11を経て排出部12に順次排出され積載されていく。一方、最後の単位画像の切断でプリント部4の側に残されたシートは、シート供給部1に送り戻されて、ロールR1またはR2に巻き取られる。このように、片面プリントにおいては、シートは第1経路と第3経路を通過して処理され、第2経路は通過しない。
【0034】
一方、両面プリントモードでは、表面(第1面)プリントシーケンスに次いで裏面(第2面)プリントシーケンスを実行する。最初の表面プリントシーケンスでは、シート供給部1から検査部5までの各ユニットでの動作は上述の片面プリントの動作と同じである。カッタ部6では切断動作は行わずに、連続シートのまま乾燥部8に搬送される。乾燥部8での表面のインク乾燥の後、排出搬送部10の側の経路(第3経路)ではなく、反転部9の側の経路(第2経路)にシートが導かれる。第2経路においてシートは、順方向(図面では反時計回り方向)に回転する反転部9の巻取回転体に巻き取られていく。プリント部4において、予定された表面のプリントが全て終了すると、カッタ部6にて連続シートのプリント領域の後端が切断される。切断位置を基準に、搬送方向下流側(プリントされた側)の連続シートは乾燥部8を経て反転部9でシート後端(切断位置)まで全て巻き取られる。一方、反転部9での巻取りと同時に、切断位置よりも搬送方向上流側(プリント部4の側)に残された連続シートは、シート先端(切断位置)がデカール部2に残らないように、シート供給部1に送り戻されて、ロールR1またはR2に巻き取られる。この送り戻し(バックフィード)によって、以下の裏面プリントシーケンスで再び供給されるシートとの衝突が避けられる。
【0035】
上述の表面プリントシーケンスの後に、裏面プリントシーケンスに切り替わる。反転部9の巻取回転体が巻き取り時とは逆方向(図面では時計回り方向)に回転する。巻き取られたシートの端部(巻き取り時のシート後端は、送り出し時にはシート先端になる)は、図の破線の経路に沿ってデカール部2に送り込まれる。デカール部2では巻取回転体で付与されたカールの矯正がなされる。つまり、デカール部2は第1経路においてシート供給部1とプリント部4の間、ならびに第2経路において反転部9とプリント部4の間に設けられて、いずれの経路においてもデカールの働きをする共通のユニットとなっている。シートの表裏が反転したシートは、斜行矯正部3を経て、プリント部4に送られて、シートの裏面にプリントが行なわれる。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎に切断される。カットシートは両面にプリントされているので、情報記録部7での記録はなされない。カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され、排出搬送部10を経由して、ソータ部11を経て排出部12に順次排出され積載されていく。このように、両面プリントにおいてはシートは第1経路、第2経路、第1経路、第3経路の順に通過して処理される。
【0036】
次に、上述の構成のプリント装置における乾燥部8についてさらに詳しく説明する。図3は乾燥部8の筐体の内部構造を示す斜視図である。プリント部4でインクが付与されて搬送されるシートは、カッタ部6および情報記録部7を通過して、図3の矢印X方向から乾燥部8に導入される。乾燥部8はヒータ部42と搬送部43を有する。搬送部43は、回転駆動力が与えられたエンドレスベルトである搬送ベルト34と、搬送ベルト34に対向して搬送方向に沿って並べられた複数の搬送ローラ35および従動ローラを備える。隣り合う搬送ローラ35の間隔は最も小さいカットシートの長さよりも短い。乾燥部8に導入されたシートが連続シートであってもカットシートであっても、シートは搬送ベルト34と搬送ローラ35との間で挟持されながら滞りなく乾燥部8内を進行する。
【0037】
ヒータ部42は乾燥部8の筐体の内部で熱風を循環させてシートに熱風を吹き付けるためのものである。ヒータ部42は、空気を昇温(加熱)させて熱風を生成するためのヒータ36と、熱風を循環させてシートに熱風を吹き付けるためのファン37を備えている。ファン37で送風される熱風は、搬送ローラ35の隙間41から上向きに噴出して、シートの表面に吹き付けられる。その後、熱風は再びファン37に戻され、筐体の内部で循環する。
【0038】
搬送ベルト34の内側には、一体構造となった伝熱プレート38と面発熱体39が設けられている。面発熱体39で発生した熱は熱伝導体である伝熱プレート38に伝わる。搬送ベルト34が回転すると、搬送ベルト34の内側面は伝熱プレート38の表面に面接触しながら滑動する。接触によって、伝熱プレート38から搬送ベルト34に熱が伝わり、搬送ベルト34全体が昇温する。シートが乾燥部8の内部を搬送される際に、シートは搬送ベルト34の外側面と面接触して加熱されるので、シートの乾燥が促進される。つまり、シートはヒータ部42による表面(インク付与面)からの熱風吹きつけと、搬送ベルト34による裏面からの加熱によって両面から加熱され、高効率の乾燥動作がなされる。
【0039】
図4(a)および(b)はプリント装置本体の断面図であり、プリント部4と乾燥部8とを通る位置での断面を示す。乾燥部8は第1筐体構成物52(上カバー)と第2筐体構成物53(筐体主要部)とからなる筐体を有し、筐体内にヒータ部42と搬送部43とが収容されている。ヒータ部42と搬送部43の一部(搬送ローラ)は第2筐体構成物53に保持されている。第1筐体構成物52と第2筐体構成物53とはヒンジ54を支点に開閉する構造となっている。図4(a)はユニットがプリント装置本体の内部に収容され第1筐体構成物52が閉じた状態、図4(b)は乾燥部8において第1筐体構成物52が開いた状態を示す。乾燥部8の一部はプリント装置本体内に設けられたレール57に沿ってスライド移動してプリント装置から手前側(操作者が居る側)に引き出される。図4(b)のように乾燥部8を引き出した際に、搬送部43を含むユニットとヒータ部42を含むユニットとが分離して、ヒータ部42がプリント装置本体の内部に残るようになっている。
【0040】
図5に示すように、ヒータ部42と搬送部43とはドロワーコネクタ30で電気的に接続される。搬送部43にはドロワーコネクタ30を介して電力が供給される。さらに、ドロワーコネクタ30を介して制御のための信号線が接続される。乾燥部8をプリント装置本体に装着する(図4(a)の状態)とドロワーコネクタ30が接続され、乾燥部8をプリント装置本体から引き出す(図4(b)の状態)とドロワーコネクタ30の接続が切断されるようになっている。このような構成により、乾燥部8を手前に引き出した際には、高温のヒータ部42がプリント装置本体の内部に残り露出しないので、操作者は容易且つ確実にジャムトラブルの回復作業を行なうことができる。
【0041】
引き出された乾燥部8は、第1筐体構成物52が引き出す方向において奥側のヒンジ54を中心に手前側(操作者の側)が回動してワニ口のように開く。開けられた第1筐体構成物52は、付勢機構(ガススプリング、ヒンジばね、トーションばねなど)で開放状態を維持するようになっている。第1筐体構成物52には、乾燥部8の搬送機構の上側の一部(搬送ベルト34、伝熱プレート38、面発熱体39)が保持され、第2筐体構成物53には搬送機構の下側の一部(搬送ローラ35)が保持されている。そのため、第1筐体構成物52を開けると、搬送機構が分離されて搬送ベルト34と搬送ローラ35との間に挟まれていたシートSが露出し、操作者は容易にシートSを取り除くことができる。
【0042】
次に、上述の構成のプリント装置におけるシート搬送のジャム発生の状態とその後の回復動作について説明する。図6(a)は片面プリントモードでプリント中のシートの搬送状態を示す。図6(b)はカッタ部6よりも上流側の経路でジャムが発生したケース、図6(c)はカッタ部6よりも下流側の経路でジャムが発生したケースである。図中の網点で示された部分がジャムトラブル発生の領域であり、操作者はこの領域内のシートを取り除いて破棄する必要がある。また、図7(a)は両面プリントモードの表面プリント中のシートの搬送状態を示す。図7(b)はカッタ部6よりも上流側の経路でジャムが発生したケース、図7(c)はカッタ部6よりも下流側の経路でジャムが発生したケースである。図8(a)は両面プリントモードの裏面プリント中のシートの搬送状態を示す。図8(b)はカッタ部6よりも上流側の経路でジャムが発生したケース、図8(c)はカッタ部6よりも下流側の経路でジャムが発生したケースである。それぞれのケースにおいて、図中の網点で示された部分がジャムトラブル発生の領域であり、操作者はこの領域内のシートを取り除いて破棄する必要がある。
【0043】
プリント装置にはジャム検知手段が設けられ、プリント動作中のシート搬送におけるジャムの発生およびジャムの発生箇所を検知する。ジャム検知手段がジャムを検知する方法には、シートの先端で搬送異常を検知する方法、およびシートの途中で搬送異常を検知する方法がある。前者の方法では、ローラの制御情報により演算される理論上のシート先端の位置情報と、隣接するローラ間に設置されたシートセンサの検知結果とを照らし合わせる。シート先端が通過すると推定される期間内にシートセンサでの検知がされなかったり、理論値に対して検知が極端に遅れた場合に、ジャム発生と判断する。一方、連続シートがシート搬送経路を移動する際に、ある箇所でシートの搬送不良が生じるとその部分の速度が低下し、極端な場合速度がゼロになる。すると速度が低下した箇所の後続のシートがどんどん送り込まれてループ状に溜まっていく。後者の方法では、これを検知する1つの手法として、搬送ローラのモータ回転数の低下やモータ負荷の異常が起きたらジャム発生と判断することができる。別の手法として、シートの移動状態(速度や移動量)を面の観点でダイレクトに計測するダイレクトセンサをシート搬送経路の複数位置に設けて、シートの搬送速度の異常が検知されたらジャム発生と判断することができる。別の手法として、シート搬送経路で意図的にシートのループ状の撓みが形成される箇所でループの大きさをセンサで検知して本来の大きさと異なっていたらジャム発生と判断することができる。
【0044】
制御部は、ジャム検知手段でジャムの発生が検知されたら、シート搬送経路のシート搬送にかかわるすべての搬送ローラの駆動モータを停止させる。これはジャムの影響をジャムが発生した箇所に留めて、影響が他に連鎖することを抑止するためである。そして制御部は、操作部15またはホスト装置16の表示器にジャム発生箇所と作業指示を表示させて、操作者に手動のジャムトラブル回復処理を促す。
【0045】
図9はジャム発生時のメンテナンス情報の表示器への表示例である。ジャムの発生箇所に応じて、操作者がプリント装置本体から引き出すべきユニット、当該ユニットに対応した開けるべきメンテナンス扉、シートを切断するために操作すべきハンドカッタが操作手順とともにグラフィカルに表示される。開けるべきメンテナンス扉や操作すべきハンドカッタが複数ある場合は操作の順番も表示する。この作業指示を受けて、操作者は、手作業でトラブル発生領域に残されたシートを取り除く手動のジャムトラブル回復処理行う。
【0046】
次に、乾燥部8(第1ユニット)とその下流側のユニット(第2ユニット)との間にシートが存在する場合にジャムが発生したケースの処理について具体的に説明する。乾燥部8の下流側のユニットには反転部9(第2経路)および排出搬送部10(第3経路)があり、上述のように経路切替機構(不図示)により第2経路と第3経路とが選択的に切り替えられる。以下の説明においては、乾燥部8から経路切替機構までの間の部分を共通に反転部9として表記するものとする。
【0047】
<カットシート搬送時のジャム処理>
まず、カットシートの搬送時にジャムが発生した場合の処理について以下に説明する。カットシート搬送時における乾燥部8と反転部9との間にシートが存在する場合であるから、図6(a)〜(c)および図8(a)〜(c)の場合に当てはまる。乾燥部8と反転部9の入口近傍の装置手前から見た断面図を図10から図14に示す。
【0048】
乾燥部8の入口には、乾燥部給紙ローラ60が配置され、出口には乾燥部排紙ローラ61が配置されている(第1搬送機構)。搬送ベルト34と乾燥部排紙ローラ61との間に、乾燥部のジャム検知センサ62が設けられている(第1検知手段)。反転部9には、反転部搬送ローラ63が複数配置され(第2搬送機構)、乾燥部排紙ローラ61と反転部搬送ローラ63との間に第8カッタ24が設けられている。
【0049】
乾燥部8と反転部9との間にカットシートが存在する場合のシートの停止状態を図10から図14に示し、図10(a)は、乾燥部排紙ローラ61と反転部搬送ローラ63とにシートS1がニップされた状態を示す。図10(b)は、乾燥部排紙ローラ61にシートS1がニップされ、第8カッタ24にもシートS1が存在し、反転部搬送ローラ63にはシートS1の前に搬送されたシートであるシートS2がニップされている状態を示している。また、図10(c)は、乾燥部排紙ローラ61にシートS1がニップされ、第8カッタ24にはシートS2が存在し、反転部搬送ローラ63にもシートS2がニップされている状態を示している。
【0050】
ここで、図10(b)または図10(c)に示すシート停止状態の場合、ジャムトラブル回復処理において操作者が第8カッタ24を操作してしまうと、第8カッタ24前後においてシートが短く切断された紙片が落下して残存することとなる。第8カッタ24および反転部9はユニットとしてプリント装置に組み込まれ、操作者が取り外すことができないため、紙片が残存してしまうと操作者が除去不能になってしまう可能性がある。
【0051】
そこで本実施形態では、乾燥部8と反転部9の間にシートが存在するときにジャムが発生した場合には、ジャムを検知してシートの搬送を停止した後に、装置内にシートの紙片が残存することを防止するための処理を実行する。その処理について具体的に以下に述べる。
【0052】
図11(a)は、図10(b)と同様に、乾燥部排紙ローラ61にシートS1がニップされ、第8カッタ24にもシートS1が存在し、反転部搬送ローラ63にはシートS1の前に搬送されたシートであるシートS2がニップされた状態を示す。ジャム発生を検知した後にこの状態でシートの搬送が停止されているものとする。上述したように、この状態で第8カッタ24を操作してしまうと紙片が第8カッタ24の下流(反転部9側)に残存してしまう。これを防止するための処理として、乾燥部8のシート搬送の駆動部の、搬送ベルト34および乾燥部排紙ローラ61を通常のシート搬送方向に対して逆転駆動させる。シート搬送方向は搬送駆動部の逆転駆動によって反転可能であり、反転させた搬送方向にシートを搬送する。乾燥部8側のシートが少なくともシート端部が第8カッタ24の切断位置よりも乾燥部8の側にくるまでシートを送り戻す。乾燥部ジャム検知センサ62でシートS1の先端を検知したらシートS1の逆転駆動を停止する。その状態を図11(b)に示しており、この状態でハンドカッタを操作しても、切断位置にシートが存在しないので紙片が発生することはない。
【0053】
図12(a)はジャム発生により搬送停止した別の状態を示す。図10(c)と同様に、乾燥部排紙ローラ61にシートS1がニップされ、第8カッタ24にはシートS2が存在し、反転部搬送ローラ63にもシートS2がニップされた状態である。ジャム発生を検知した後にこの状態でシートの搬送が停止されているものとする。この状態で第8カッタ24を操作すると第8カッタ24上流(乾燥部8側)にシートが残存する。シートの停止状態がどのような状態であるかに関わらず、まず、図11(a)の場合と同様の処理内容を行う。すなわち、乾燥部8のシート搬送の駆動部の、搬送ベルト34および乾燥部排紙ローラ61を通常のシート搬送方向に対して逆転駆動させることによって、反転させた搬送方向にシートを搬送する。その状態を図12(b)に示しており、この場合シートS1が上流側に搬送されただけで、シートS2の状態は変わらない。次に、反転部搬送ローラ63を正転駆動させることでシートS2を下流側に所定量搬送する。その搬送量は、乾燥部排紙ローラ61から第8カッタ24までの距離分以上であればよい。その状態を、図12(c)に示しており、この状態で第8カッタ24を操作しても、切断位置にシートが存在しないので紙片が発生することはない。
【0054】
図13(a)はジャム発生により搬送停止したさらに別の状態を示す。この状態では、シートS1の下流側先端が乾燥部ジャム検知センサ62から乾燥部排紙ローラ61の間に存在する。シートS2は、上流側が乾燥部排紙ローラ61にニップされ、且つ下流側も反転部搬送ローラ63にニップされている状態である。ジャム発生を検知した後にこの状態でシートの搬送が停止しているものとする。上述した場合と同様に、乾燥部8のシート搬送の駆動部の、搬送ベルト34および乾燥部排紙ローラ61を通常のシート搬送方向に対して逆転駆動させることによって、反転させた搬送方向にシートを搬送する。乾燥部排紙ローラ61のニップ力は反転部搬送ローラ63のニップ力よりも強く設定されているので、シートS1だけでなく、シートS2も搬送されることになる。そして、乾燥部ジャム検知センサでシートS1の先端を検知したらシートの逆転駆動を停止する。その状態を図13(b)に示す。この状態では、依然としてシートS2が第8カッタ24の切断位置に存在し、且つシートS2の下流側は反転部搬送ローラ63でニップされない状態である。そのため、第8カッタ24を操作すると装置内に紙片が残存することとなる。
【0055】
これを防止するため、逆転駆動を開始してからシートS1の先端を乾燥部ジャム検知センサ62で検知するまでの時間が所定時間(第1の閾値T1)よりも短かった場合には、再度乾燥部8のシート搬送機構を逆転駆動し、シートをさらに送り戻す。所定時間T1は、乾燥部ジャム検知センサ62から乾燥部排紙ローラ61までの長さ分を換算した値である。こうして追加で搬送して乾燥部ジャム検知センサ62がシートS2の下流側の端部を検知したら逆転駆動を停止する。シートS2を送り戻す際、ジャム検知センサ62はシートS2の下流側の端部を検知する前に上流側の端部も検知するので、最初の検知はスキップして検知を続ける。こうして停止した状態を図13(c)に示す。この状態で第8カッタ24を操作しても、切断位置にシートが存在しないので、紙片が発生することはない。
【0056】
図14(a)はジャム発生により搬送停止したさらに別の状態を示す。シートS1が最後のカットシートであり、それに続く後続のシートはなく、乾燥部8にはシートは存在しない。この場合は、乾燥部8のシート搬送機構を逆転駆動させても、乾燥部ジャム検知センサ62でシートの先端を検知できない。したがって、逆転駆動を開始してから所定時間(第2の閾値T2)を経過しても乾燥部ジャム検知センサ62の検知がなかった場合には駆動を停止する。その後、反転部搬送ローラ63を所定量正転駆動することで図14(b)の状態となる。この状態で第8カッタ24を操作しても、切断位置にシートが存在しないので、紙片が発生することはない。
【0057】
上述したカットシート搬送時のジャムトラブル回復処理の手順をまとめると、図15に示すフローチャートのようになる。ジャムによる停止状態がどのような状態であるかに関わらず、まず乾燥部8のシート搬送機構を逆転駆動する(ステップS101)。乾燥部8側のシートが少なくともシート端部が第8カッタ24の切断位置よりも乾燥部8の側にくるまでシートを送り戻す。乾燥部ジャム検知センサ62によるシート端部検知がT2[sec]以内の時間であり(ステップS102)、かつT1[sec]以内の時間であれば(ステップS103)、再度乾燥部8を逆転駆動する(ステップS101)。これは図13(a)〜(c)で説明した事例である。
【0058】
T1[sec]を越える時間であれば(ステップS103)、乾燥部8の逆転駆動を停止し(ステップS104)、次いで反転部9を所定量だけ正転駆動する(ステップS105)。これは図11(a)、(b)および図12(a)〜(c)で説明した事例である。
【0059】
また、乾燥部8の逆転駆動を開始してからT2[sec]の時間を経過しても乾燥部ジャム検知センサ62でシートの先端を検知できない場合は(ステップS102)、乾燥部8の逆転駆動を停止する(ステップS106)。そのときに、乾燥部ジャム検知センサ62にシートがない場合は、反転部搬送ローラ63を正転方向に所定量駆動して処理を終了する(ステップS107、S105)。これは図14(a)および(b)で説明した事例である。また、乾燥部ジャム検知センサ62にシートがある場合は、シートの送り戻しができない搬送不良と考えられるので、処理を終了する(ステップS107)。
【0060】
なお、乾燥部8のシート搬送機構でシートを送り戻す際に、乾燥部給紙ローラ60は逆転させずに停止させたままにしてもよい。乾燥部給紙ローラ60を停止させると、送り戻されたシートが乾燥部8内に集まるので、その後、操作者が乾燥部8をプリント装置から引き出してユニット内のシートを取り出す作業が容易になる。乾燥部8は、搬送ベルト34によるベルト搬送を採用しているので、送り戻しの際にシートはベルト表面よりも外側にはみ出すことが無く乾燥部8内でより複雑なジャムが発生することが抑制される。
【0061】
また、第8カッタ24と反転部搬送ローラ63との間の距離よりも、反転部9から下流側のユニットにおける駆動ローラ間距離が長い場合を検討する。この場合、反転部搬送ローラ63の最上流にシート先端部がニップされた状態で、第8カッタ24を操作してしまうと、その後の操作者の処理で反転部9の駆動系をノブ等で回して排出させようとしても、ローラ間に紙片が滞留して処理不可能になる可能性がある。その状況を避けるために、反転部搬送ローラ63の最上流にシート先端部がニップされた状態のシートは、乾燥部8のシート搬送の駆動部の逆転駆動動作により、乾燥部8内に引き込む必要がある。したがって、乾燥部排紙ローラ61の搬送力(ニップ力)を反転部搬送ローラ63の少なくとも最上流の搬送力(ニップ力)よりも大きくすることが望ましい。
【0062】
<連続シート搬送時のジャム処理>
次に、連続シートの搬送時にジャムが発生した場合の処理について以下に説明する。カットシートの場合と異なるジャム回復の処理となる。
【0063】
連続シート搬送時における乾燥部8と反転部9との間にシートが存在する場合であるから、図7(a)から(c)の場合に当てはまる。乾燥部8と反転部9を装置手前から見た断面図を図16(a)から(c)に示す。
【0064】
反転部9の入口近傍までは図10から図14と同様であり、その先の搬送部には反転部ジャム検知センサ64が設けられている(第2検知手段)。
【0065】
乾燥部8と反転部9との間に連続シートが存在する場合は、図16(a)のように乾燥部ジャム検知センサ62と反転部ジャム検知センサ64にシートが存在する状態でのジャム発生状態が大半である。この場合第8カッタ24を操作させても小さな紙片が発生することはない。第8カッタ24を操作させることにより装置内に紙片が発生する停止状態は、図16(b)と図16(c)に示す場合である。
【0066】
まず、図16(b)の場合の処理について説明する。連続シート搬送中にジャムを検知し搬送を停止させた後、乾燥部ジャム検知センサ62および反転部ジャム検知センサ64におけるシートの有無をセンシングする。乾燥部ジャム検知センサ62にシートが存在し、且つ反転部ジャム検知センサ64にはシートが存在しない場合は、図16(b)の状態であると判断する。この状態で第8カッタ24を操作すると装置内に紙片が発生してしまう。そこで、乾燥部8のシート搬送機構を逆転駆動させて、乾燥部8側のシートが少なくともシート端部が第8カッタ24の切断位置よりも乾燥部8の側にくるまで、シートを送り戻す。乾燥部ジャム検知センサ62がシートS4の先端を検知するまで乾燥部8を逆転駆動することで、第8カッタ24の切断位置にはシートが存在しなくなる。乾燥部8の搬送力は、反転部9の停止したシート搬送機構でニップされているシートを引っ張って動かすだけの大きさを有している。
【0067】
次に、図16(c)の場合の処理について説明する。図16(b)の場合と同様に、乾燥部ジャム検知センサ62および反転部ジャム検知センサ64におけるシートの有無をセンシングする。乾燥部ジャム検知センサ62にシートが存在せず、且つ反転部ジャム検知センサ64にはシートが存在する場合は、図16(c)の状態であると判断する。この状態で第8カッタ24を操作すると装置内に小さな紙片が発生してしまう。そこで、反転部9のシート搬送機構を所定量だけ正転駆動させて、反転部9側のシートが少なくともシート後端部が第8カッタ24の切断位置よりも反転部9の側にくるまでシートを送る。その所定量は、乾燥部ジャム検知センサ62から第8カッタ24の距離分以上あればよい。
【0068】
上述した連続シート搬送時のジャムトラブル回復処理の手順をまとめると、図17に示すフローチャートのようになる。まず乾燥部ジャム検知センサ62でシートの有無を検知する(ステップS201)。シートが存在する場合は、反転部ジャム検知センサ64でシートの有無を検知する(ステップS202)。シートが存在する場合は、第8カッタ24を操作させても小さな紙片は発生せず、装置内に紙片が残存する可能性はないため、操作者に第8カッタ24で連続シートを切断するよう提示する。一方、シートが存在しない場合は、乾燥部8のシート搬送機構を所定量逆転するよう駆動する(ステップS203)。また、乾燥部ジャム検知センサ62でシートが存在しない場合も(ステップS201)、反転部ジャム検知センサ64でシートの有無を検知する(ステップS204)。シートが存在する場合は反転部9のシート搬送機構を所定量正転駆動する(ステップS205)。シートが存在しない場合は、第8カッタ24を操作させても小さな紙片は発生せず、装置内に紙片が残存する可能性はないため、そのまま処理は終了する。
【0069】
なお、連続シートの場合は、上記処理を省略するようにしてもよい。図16(b)に示す場合は乾燥部8よりも上流の例えばカッタ部6側から、操作者がシートを引き出してもよいし、図16(c)に示す場合は、反転部9下流側から操作者がシートを引き出してもよい。
【0070】
以上の実施形態によれば、カットシートおよび連続シートを搬送中にジャムが発生し、第1ユニットとそれに続く第2ユニットとの間にシートが存在する状態で停止した場合でも、カッタで切断して生じるシートの紙片が装置内に落下することが防止できる。搬送するシートがカットシートであるか連続シートであるかに応じて、シート回復のための処理を適切に変えるので、いずれの形態であっても適切なジャム回復処理がなされる。これにより、操作者のジャム処理手順を簡素化でき、ジャム処理の手順ミスを軽減すると共に、装置の稼働率を上げることが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
1 シート供給部
2 デカール部
3 斜行矯正部
4 プリント部
5 検査部
6 カッタ部
7 情報記録部
8 乾燥部
9 反転部
10 排出搬送部
11 ソータ部11
12 排出部
13 制御部
14 プリントヘッド
17 第1カッタ
18 第2カッタ
19 第3カッタ
20 第4カッタ
21 第5カッタ
22 第6カッタ
23 第7カッタ
24 第8カッタ
25 第9カッタ
27 ゴミ箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する第1搬送機構を含む第1ユニットと、
前記第1ユニットに隣接して設けられ、シートを搬送する第2搬送機構を含む第2ユニットと、
前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に設けられ、シートを切断する切断手段と、
シート搬送にトラブルが生じた場合に、シート端部が前記切断手段の切断位置よりも前記第1ユニットの側にくるまで前記第1搬送機構を駆動するよう制御する制御部と、
を有することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記第1搬送機構の近傍に設けられ、搬送されるシートを検知する第1検知手段をさらに有し、
前記制御部は、シート搬送にトラブルが生じた場合に、前記第1検知手段でシート端部が検知されるまで、前記第1搬送機構をシートの搬送方向が前記第2ユニットから遠ざかる方向となるように駆動するよう制御することを特徴とする、請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1搬送機構の駆動の後、前記第2搬送機構をシートの搬送方向が前記第1ユニットから遠ざかる方向となるように駆動するよう制御することを特徴とする、請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1検知手段でシート端部が検知されるまでの時間が所定の時間よりも短い場合、前記第2搬送機構を駆動する前に、再度、前記第1搬送機構をシート搬送方向が前記第2ユニットから遠ざかる方向となるように駆動するよう制御することを特徴とする、請求項3に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1搬送機構の駆動が所定の時間を経過しても前記第1検知手段でシート端部を検知しない場合には、前記第1搬送機構の駆動を停止するよう制御することを特徴とする、請求項2から4のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記第1搬送機構の搬送力が前記第2搬送機構の搬送力よりも大きいことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記第1搬送機構がシート搬送のための複数の駆動部を有し、シート搬送にトラブルが生じた場合に前記第1搬送機構を駆動する際には、前記複数の駆動部のうち少なくとも1つの駆動部の駆動を停止させることを特徴とする、請求項1から6いずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記第2搬送機構の近傍に設けられ、搬送させるシートを検知する第2検知手段をさらに有し、
前記制御部は、連続シートの搬送にトラブルが生じた場合に、前記第1検知手段および前記第2検知手段の検知を元にシートの状態を判断することを特徴とする、請求項2から7のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1検知手段でシートが検知され且つ前記第2検知手段でシートが検知されなかった場合、前記第1搬送機構をシート搬送方向が前記第2ユニットから遠ざかる方向となるように駆動するよう制御することを特徴とする、請求項8に記載のシート搬送装置。
【請求項10】
前記第1検知手段でシートが検知されず且つ前記第2検知手段でシートが検知された場合、前記第2搬送機構をシート搬送方向が前記第1ユニットから遠ざかる方向となるように駆動するよう制御することを特徴とする、請求項8に記載のシート搬送装置。
【請求項11】
連続したシートを保持して供給するためのシート供給部と、
前記シート供給部からシートが供給される経路において、シートにプリントを行なうプリント部と、
前記経路において前記プリント部の下流に設けられ、シートを切断するカッタ部と、
前記経路において前記カッタ部の下流に設けられ、前記プリント部でプリントされたシートを乾燥させる乾燥部と、
前記乾燥部を通過したシートを、その表裏を反転させて再び前記プリント部に供給する反転部と、
前記乾燥部を通過したシートを排出する排出部と、
を含む複数の処理ユニットを備えるプリント装置であって、
請求項1から10のいずれか1項のシート搬送装置を有し、前記第1ユニットおよび前記第2ユニットは、前記複数の処理ユニットのうち、前記経路において連続する2つのユニットであることを特徴とするプリント装置。
【請求項12】
前記複数の処理ユニットは、デカール部、斜行矯正部、検査部、情報記録部のうちの少なくとも1つをさらに備えることを特徴とする、請求項11に記載のプリント装置。
【請求項13】
前記第1ユニットはメンテナンスのために装置本体からユニットごと取り出すことが可能であることを特徴とする、請求項11または12に記載のプリント装置。
【請求項14】
シートを搬送する第1搬送機構を含む第1ユニットと、
前記第1ユニットに隣接して設けられ、シートを搬送する第2搬送機構を含む第2ユニットと、
前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に設けられ、シートを切断する切断手段と
を備えるシート搬送装置におけるジャム処理方法であって、
シート搬送にトラブルが生じた場合に、前記第1ユニットの側にあるシートのシート端部が前記切断手段の切断位置をよりも前記第1ユニットの側にくるまで、前記第1搬送機構で当該シートを搬送することを特徴とするジャム処理方法。
【請求項15】
シート搬送にトラブルが生じた場合に、前記第1搬送機構でシートを搬送した後、前記第2ユニットの側にあるシートのシート端部が前記切断手段の切断位置よりも前記第2ユニットの側にくるまで、前記第2搬送機構で当該シートを搬送することを特徴とする請求項14に記載のジャム処理方法。
【請求項16】
シートを搬送する第1搬送機構を含む第1ユニットと、
前記第1ユニットに隣接して設けられ、シートを搬送する第2搬送機構を含む第2ユニットと、
前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に設けられ、シートを切断する切断手段と、
を備えるシート搬送装置におけるジャム処理方法であって、
シート搬送にトラブルが生じた場合に、搬送するシートがカットシートであるか連続シートであるかに応じて、シート回復のための処理を変えることを特徴とするジャム処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−86452(P2013−86452A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231517(P2011−231517)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】