説明

シート搬送装置及び画像形成装置

【課題】 薄紙での斜行補正能力を向上させる。
【解決手段】 シートの搬送方向に沿って配置され、シートの側端の位置決めをする基準面311に向けてシートの側端を斜行補正ローラ32a〜32cにより斜めに突き当ててシートの斜行を補正する構成で、基準面311に向けて搬送されるシートの側端を凹凸形状に撓ませて剛性を高めるための撓み形成手段を備え、撓み形成手段は、搬送されるシートの側部を基準面311に案内可能に配置された上ガイド312及び下ガイド313と、シートの搬送方向に沿って設けられる可撓性のシート状ガイド部材312a、313aと、シート状ガイド部材312a、313aをシートの搬送方向に沿って撓ませるための突き出し部材320と、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプリンタやファクシミリ、複写機またはこれらの機能を合わせ持つ複合機などの画像形成装置に用いられるシート搬送装置及びこのシート搬送装置を設けた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には電子写真方式、オフセット印刷方式、インクジェット方式等の複数の方式が挙げられるが、ここでは電子写真方式を用いたカラ−の画像形成装置を一例に挙げて従来の技術について説明する。
【0003】
電子写真方式のカラーの画像形成装置は、複数の感光ドラムを並べて配置したタンデム方式や複数の感光ドラムを円筒状に配置したロータリー方式などがある。また、転写方式としては、感光ドラムから直接シートにトナー像を転写する直接転写方式や一旦感光ドラムからトナー像を中間転写体に転写した後、中間転写体からシートにトナー像を転写する中間転写方式などに分類される。
【0004】
近年このような電子写真方式の画像形成装置では、オフセット印刷機などに比べて版が必要ないというメリットを生かし、小部数の印刷を行う軽印刷市場(POD:Print On Demand 市場)を狙った装置が提供されてきている。しかしながら、このような軽印刷市場で受け入られるためには、高画質を達成しなければならず、その一つの要因としてシートに対する画像位置精度が重視されている。なお、この画像位置精度としてはシートに両面画像を形成する際の表裏の画像のズレも含まれる。
【0005】
そして、シートに対する画像位置は、シートの搬送方向の位置、シートの搬送方向と直交する方向の位置、画像の倍率、シートの斜行などの要因に影響され、これらの要因によるばらつきの量により位置精度が決まる。
【0006】
これらの要因において、シートの搬送位置および画像の倍率については電気的な制御で補正が容易に行えるが、シートの斜行については電気的な制御で補正することは困難である。
【0007】
例えば、シートの搬送位置は感光ドラムへの画像信号に基づくレーザー光の照射タイミングや照射位置を調整することにより補正することが可能であり、画像の倍率についても、感光ドラムへのレーザー光の照射範囲を調整することで補正が可能である。
【0008】
これに対してシートの斜行に対しての電気的な制御としては、シート斜行を検知して、これに合わせて傾いた画像を作成することでシートに対する画像位置を補正することは可能である。しかしながら、特に3色または4色を重ね合わせるカラー画像の場合には、シートごとに画像を傾けると各色のドット形成のズレにより斜行量の異なるシートごとに色味が変わってしまう。さらに、画像を傾けるための計算に時間が掛かってしまうので生産性の著しい低下を招く。よって、シートの斜行の補正については機構的に補正を行うのが一般的である。シートの斜行を補正する機構としては、大きく分けて次に説明する方式がある。
【0009】
まず、一般的に用いられてきている方式として、転写部の上流に一対のレジストレーションローラ対を配置し、搬送されてきた転写材であるシートの先端を停止しているレジストレーションローラ対のニップ部に突き当てて斜行を補正する方式がある。この方式では、レジストレーションローラ対のニップ部にシート先端を突き当てた状態でシートをさらに送り込んでループ形成をしてシートの先端をニップ部に倣わせることにより斜行補正が行われる。
【0010】
その他の方式としては、シートの斜行量をシート先端の傾きの検知に基づいて算出する手段とシートの搬送方向と直交する方向に2つの独立に駆動可能なローラとを備える方式のものがある。この方式では、算出されたシートの斜行量に応じて各独立した駆動ローラの搬送速度を変えることでシートを旋回させて斜行を補正する。
【0011】
さらに、その他の方式としては、シートの搬送方向に沿って設けられた基準面に対し、斜送ローラによりシートを斜めに搬送してシートの側面を基準面に突き当てながら搬送することによりシートの斜行を補正する方式がある。
【0012】
ここで、この基準面にシートの側端を突き当てて斜行補正をする方式の一例について図面を用いて説明する。
【0013】
図11は、シートの斜行を補正するための斜行補正部をシートの搬送方向から見た図であり、シートは図面の手前から奥に搬送される。この斜行補正部は、斜行補正ローラ32と従動ローラ34とでシートSを挟持して斜めに搬送し、シートSの側端を基準ガイド部31に設けられている基準面311に突き当てて斜行を補正する構成である。図11(a)に示すように、斜行補正ローラ32と従動ローラ34とで斜送されるシートSの側端は基準ガイド部31の上下に配置されている上ガイド312と下ガイド313との間で案内されて基準面311に突き当てられる。また、上ガイド312と下ガイド313との間でシートを規制することによりシートの座屈(曲り)を防止している。
【0014】
ここで、基準面を用いてシートの側端を突き当てて斜行を補正する方式では次のような利点がある。シートの両面に画像を形成する場合に、シートがスイッチバックされることによりシートの1面目(表面)と2面目(ウラ面)でシートの先端と後端が入れ替わってしまうが、側端は入れ替わりがない。そして、シートの1面目、2面目共にシートの搬送方向と直交する方向では同一位置で斜行を補正できるため、シートの側端に対する画像の位置の精度が高まり、表裏の画像のズレを低減することが可能となる。
【0015】
なお、その他の斜行補正の方式では、シートの先端で斜行補正するため、1面目と2面目でシートの搬送方向と直交する方向での補正ができないため、斜行の補正能力が高くてもシートの側端に対する表裏のズレが発生するおそれがある。
【0016】
一方、軽印刷市場では、多種多様のマテリアルに対応することが要求されており、例えば、40g/m以下〜350g/m以上の坪量の普通紙や、コート紙やフィルム紙等の特殊な材質を用いたものなどの多様のものに画像形成することが要求されてきている。
【0017】
ここで、基準面にシートの側端を突き当てて斜行補正を行う方式は、上述したとおり、基準面に向けて斜めにシートを搬送してシートの側端を突き当てて搬送することによりシートの斜行を補正する構成である。しかし、近年は上述した種々の厚さや材質の異なるシートを搬送する必要性が増してきているため、搬送するシートが薄いシートのように剛度の低い材質である場合には、基準面に突き当てられた際にシートが座屈するおそれがあった。
【0018】
すなわち、図11(b)に示すように、剛度の低いシートSを基準面311に突き当てた際に、上下に配置されている上ガイド312と下ガイド313の間で図示するようなシートに座屈(曲り)が生じる場合がある。この場合には、斜行補正の精度が悪くなり、シートに対する画像位置の精度が低下する。また、シートの座屈によりジャム(シートの詰り)が発生したり、シートの側端に折れや破損等のダメージを与えたりするおそれもある。なお、上ガイド312と下ガイド313との間隔は、装置が搬送可能な最大の厚さのシートが搬送できるように最大の厚さのシートよりも大きく設定されている。そのため、薄いシートでは上ガイド312と下ガイド313との間では十分に規制をすることができないため座屈が生じる。
【0019】
そこで、座屈を発生することなく確実に基準面にシートの側端を突き当てながら搬送できるように、上下に配置されたガイドの間隔をシートの厚さに応じて調整する装置が提案されている(特許文献1参照)。この構成により、薄いシートのように剛度が低いシートの場合には上下のガイドの間隔を狭くして基準面に突き当てられたシートの側端を規制して座屈の発生を抑えるようにしている。
【特許文献1】特開2002−356250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上記従来例では、シートの厚さを検知して上下のガイドの間隔を調整しているため、検知手段の検知精度の課題が生じる。すなわち、シートの厚さを検知する検知手段としては接触式センサや反射式光学センサを用いて直接シートの厚さを検知したり、搬送ローラがシートを挟持したときのローラの変位量に基づいて算出したりする方法が一般的である。しかし、シートを搬送しながら検知する場合は、センサ自体の誤差の他にシートの搬送中のばたつきや搬送ローラの偏芯により、10%程度の検知誤差が生じることがある。また、搬送ローラがシートを挟持したときのローラの変位量に基づいてシートの厚さを検知するものでは、薄いシートの場合にはローラの変位量が小さいため、シートの厚さを正確に検知することが困難となる。
【0021】
また、シートの厚さを自動検知しなくとも、ユーザーから直接入力されたシートの厚さの情報を基に上下のガイド間隔の調整を行うことも考えられるが、この場合はユーザーの手間がかかると伴に設定ミスなどが考えられる。
【0022】
さらに、基準面に突き当てたときのシートの座屈を防止するためのパラメータは、シートの厚さではなく実際にはシートの剛度に基づくものである。これは、図12は多種類のシートの厚さとその剛度をプロットしたグラフであるが、同じ厚さのシートでも種類に応じて剛度は大きく異なることから分かる。さらに、このグラフから分かるように、シートの厚さが薄い紙は少しの厚さの差で極端に剛度が低くなる傾向がある。これらから、単純にシートの厚さに基づいて上下のガイド間隔を調整するだけでは、座屈を防止することは困難であることが分かる。すなわち、厚いシートであっても剛度が低い場合には座屈を防止するためにガイド間隔を狭くする必要があるが、従来の装置では、シートの厚さでガイド間隔を調整しているため、このような厚く剛度が低いシートの座屈を防止することができない。
【0023】
また、従来の装置のように、上下のガイドの間隔を調整する機構を設けることは、モータ等の駆動手段や駆動手段を制御する制御部等が必要となるため、装置コストを増大させることになる。
【0024】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、複雑な構成を用いることなく、種々の剛度の異なるシートに対してシートを基準面に突き当てたときに座屈を生じさせることなく確実に斜行補正が行えるシート搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、シートの搬送方向に沿って配置され、シートの側端が突き当てられる基準面と、
前記基準面に向けてシートの側端を斜めに突き当てるようにシートを搬送する斜送機構と、
前記斜送機構により前記基準面に向けて搬送されるシートの側端を撓ませる撓み形成手段と、を備え、前記撓み形成手段は、前記斜送機構により搬送されるシートの側端を前記基準面に案内可能に配置される一対のガイド部材と、シートの搬送方向に沿って前記ガイド部材に設けられる可撓性のシート状ガイド部材と、前記シート状ガイド部材をシートの搬送方向に沿って凹凸形状に撓ませるための湾曲手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、シート基準面に突き当てることにより、シートの斜行補正を行う装置において、剛性の弱いシートが上下ガイドの間で凹凸状態で撓むことによりシートの剛性を強めることができて、斜行補正能力を向上させることができる。また、多種のマテリアルに対し、マテリアル誤検知、ユーザー操作ミスによるジャムを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。まず、本発明が適用される電子写真方式の画像形成装置1の全体について図8を用いて概略説明する。
【0028】
転写材であるシートSは、シート給送装置10が有するリフトアップ装置11の上に積載されて収納されており、シート給送手段12により画像形成機構90の画像形成タイミングに合わせてシートの給送が開始される。ここで、シート給送手段12としては、給送ローラ等による摩擦分離を利用する方式やエアによる分離吸着を利用する方式等があるが、本実施形態ではエアによるシート給送方式を例に挙げている。
【0029】
シート給送手段12により送り出されたシートSは、搬送ユニット20の搬送パスを通過し、斜行補正装置30へと搬送される。シートSは、斜行補正装置30によって斜行補正が行われた後に、二次転写部での画像との位置合わせのためのタイミングの補正を行って二次転写部へと送られる。二次転写部は、対向する二次転写内ローラ43および二次転写外ローラ44により形成される転写ニップ部であり、所定の加圧力と静電的負荷バイアスを与えることでシートSに中間転写ベルト40上のトナー像(未定着画像)を転写させる。
【0030】
次に、シートに転写されるトナー像が形成されて二次転写部まで送られて来る画像形成工程について説明する。
【0031】
図8において、画像形成部の画像形成機構90は、主に感光ドラム91、露光装置93、現像器92、一次転写装置45、および感光体クリーナ95等から構成される。予め帯電手段により表面を一様に帯電された図中反時計方向に回転する感光ドラム91に対して、送られてきた画像情報の信号に基づいて露光装置93が発光し、反射手段94を経由して潜像が形成される。このようにして感光ドラム91上に形成された静電潜像に対して、現像器92によるトナー現像が行われ、感光体上にトナー像が形成される。その後、一次転写装置45により所定の加圧力および静電的負荷バイアスが与えられ、中間転写ベルト40上にトナー像が転写される。なお、感光体クリーナ95は、一次転写されて感光ドラム91上に残った転写残トナーを回収するものである。
【0032】
以上説明した画像形成部の場合には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)の4つの画像形成機構90、96、97、98が設けられている。なお、色は4色に限定されるものではなく、また色の並び順もこの限りではない。
【0033】
次に、中間転写ベルト40について説明する。中間転写ベルト40は駆動ローラ42、テンションローラ41および二次転写内ローラ43等のローラ類によって張架され、図中矢印Bの方向へと回転駆動される。そして、先述のY、M、CおよびBkの各画像形成ユニットにより並列処理される各色の画像は、中間転写ベルト40上に一次転写された上流のトナー像に順次重ね合わされる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト40上に形成されて、二次転写部へと搬送される。
【0034】
以上、それぞれ説明したシート搬送工程と画像形成工程を以って二次転写部においてシートS上にフルカラーのトナー像が二次転写される。なお、二次転写されて、中間転写ベルト40の表面に残った転写残トナーは、ベルトクリーナ46によって回収される。
【0035】
画像が転写されたシートSは定着前搬送部51により定着装置50へと搬送され、定着装置50では、対向するローラもしくはベルト等による所定の加圧力と、一般的にはハロゲンヒータ等の熱源により加熱されてシートS上にトナーを溶融固着させる。このようにして得られた定着画像を有するシートSは分岐搬送装置60により、そのまま排紙トレー61上に排出されるか、両面画像形成を行う場合には反転搬送装置70へと搬送される。
【0036】
反転搬送装置70へと送られたシートSはスイッチバック動作を行うことで先後端を入れ替え、両面搬送装置80へと搬送される。その後、シート給送装置10より搬送されてくるシートSとのタイミングを合わせて搬送ユニット20に合流して、二次転写部へと送られる。2面目の画像形成工程に関しては1面目と同様なので説明を省略する。
【0037】
なお、本実施形態では、シートに画像を形成する画像形成部は、画像形成機構90、中間転写ベルト40、二次転写内ローラ43および二次転写外ローラ44により構成される二次転写部、定着装置50などで構成される。
【0038】
次に、本発明の実施形態である斜行補正装置30の詳細な説明を行う。
【0039】
まず、図9は本発明の斜行補正装置30の全体図を表す上視図であり、図9(a)〜(d)で斜行補正装置30の動作について説明を行う。斜行補正装置30は主にレジストレーションローラ対37と、可動式ガイド35と、固定式ガイド33と、斜送機構を構成する斜行補正ローラ32a〜32c及び従動ローラ34a〜34cとから構成されている。従動ローラ34a〜34cは、斜行補正ローラ32a〜32cに対向して配置されており、図9では斜行補正ローラ32a〜32cが見えるよう省略している。可動式ガイド35は、シートSのサイズに応じてシート搬送方向と直交する方向に移動可能であり、突き当て基準ガイド部31および複数の斜行補正ロ−ラ32a〜32c、従動ローラ34a〜34cを備えている。斜行補正ロ−ラ32a〜32cはそれぞれシート搬送方向に対して角度αだけ傾いており、突き当て基準ガイド部31に対する突き当て搬送成分が得られるように設定されている。
【0040】
固定式ガイド33はシートSのサイズに関わらず不動で、シートSの搬送ガイドとして機能する。図9(a)に示すように、シートSが斜行角度βを有した状態で斜行補正装置に入ってきたとする。搬送ユニット20により、斜送機構である斜行補正ローラ32a〜32cに送られたシートSは、図9(b)に示すように突き当て基準ガイド部31に向かって斜めに搬送される。なお、斜行補正ローラ32a〜32cによりシートSが搬送され始めた時点で、搬送ユニット20の搬送ロ−ラニップは不図示のアクチュエータにより従動側コロの離間により解除される。次に、図9(c)で示されるように、シートSが突き当て基準ガイド部31に倣いながら搬送されることで斜行が補正され、その状態で、レジストレーションローラ対37に挟持される。レジストレーションローラ対37にシートが挟持されると斜行補正ローラ32a〜32cと対向の従動ローラ34a〜34cにより形成されるニップは、不図示のアクチュエータにより解除される。その後、図9(d)に示されるように、レジストレーションローラ対37を一定量横方向にスライドし、中間転写ベルト40上の画像位置にシートSの位置を合わせる。上記各動作の制御は不図示の本体内のコントローラによって行われる。
【0041】
続いて、本発明のシートの搬送方向と平行な側端を撓ませるための湾曲手段を備えた斜行補正装置30の要部について詳細に説明する。図1は見やすくするためにこの突き当て基準ガイド部31の基準面311で部分的に切断した断面図である。図2は斜行補正装置30を斜め上方から見た斜視図であり、図3は構成を分かり易くするために拡大して模式的に図示した斜視図である。なお、図2及び図3では、シートの状態を見やすくするために基準面311を取り外した状態を示している。
【0042】
突き当て基準ガイド部31は図11で示した従来技術と同じく搬送方向入口側から見て、コの字型の断面形状をしている。突き当て基準ガイド部31はコ字型の奥の面を構成する基準面311(図1で一部図示)、一対のガイド部材である上ガイド312及び下ガイド313によりシートのガイド面を形成している。
【0043】
図3に示すように、シートを案内可能な上ガイド312の下面側及び下ガイド313の上面側には、可撓性のシート状ガイド部材312a、313aがそれぞれ設けられている。この可撓性のシート状ガイド部材312a、313aは、上ガイド312、下ガイド313のガイド面と同等に摩擦係数が低い材料で、且つ伸縮可能な材料が選択して使用される。また、上ガイド312と下ガイド313の開口部側(シートが挿入される側)には、シートが搬送されてくる際にシートが進入しやすいよう斜面ガイド312b、313bが形成されている。そして、シート状ガイド部材312a,313aの端部は、図3に示すように斜面ガイド312b、313bの頂上部より低い位置に配置されている。
【0044】
上ガイド312と下ガイド313にはそれぞれのガイド面から突き出し可能な突き出し部材320がそれぞれシート搬送方向に沿って複数設けられている。本実施形態の場合は、上ガイド312には2個、下ガイド313には3個の突き出し部材320が設けられ、図1に示すように一定の間隔を置いて上下で互い違いに設けられている。
【0045】
シート状ガイド部材312aが凸状に撓む位置とシート状ガイド部材313aが凹状に撓む位置とがシート搬送方向で対向し、シート状ガイド部材312aが凹状に撓む位置とシート状ガイド部材313aが凸状に撓む位置とがシート搬送方向で対向する。
【0046】
突き出し部材320の搬送方向の間隔は約40mmに設定されている。また、突き出し部材320は不図示のアクチュエータにより上下方向に予め設定されている量でスライドして突出可能に設けられている。
【0047】
そして、厚紙を搬送する時(以下、厚紙通紙時という)には、突き出し部材320が、上ガイド312の下面及び下ガイド313の上面のそれぞれから突出量は0mmに設定されている。すなわち、シート状ガイド部材312a、313aの先端は、上ガイド312、下ガイド313のガイド面と同一面となっていて平面状となっている。
【0048】
上側に設けられたシート状ガイド部材312aは、下側の突き出し部材320の位置に対応する部分が上ガイド312に固定されている。同様に下側に設けられたシート状ガイド部材313aは、上側の突き出し部材320の位置に対応する部分が下ガイド313に固定されている。
【0049】
図1及び図4はシート搬送方向と直交する方向から見た正面図である。図1及び図4(a)は厚紙通紙時の基準ガイド部31の状態を示しており、図4(b)は薄紙を搬送する時(以下、薄紙通紙時という)の基準ガイド部31の状態を示している。
【0050】
普通紙や厚紙などの剛性(剛度)が強く座屈が生じにくいシートを斜行補正する際は、図4(b)に示すように、突き出し部材320をガイド面から突出させないようにし、真直ぐな状態で搬送することにより搬送抵抗を減らして搬送不良が抑えられる。
【0051】
薄紙Snや剛性(剛度)の弱いシートを斜行補正する際は、図1及び図4(b)のように突き出し部材320の、上ガイド312のガイド面(下面)からの突出量及び下ガイド313のガイド面(上面)からの突出量が約3mmに設定されている。この突出量は、ユーザーが任意に設定することも可能である。
【0052】
突き出し部材320を上ガイド312及び下ガイド313のガイド面からそれぞれ突出させると、シート状ガイド部材312a、313aは図1及び図4(b)の様に凹凸形状に湾曲する。この状態で薄紙Snや剛性(剛度)の弱いシートを通紙すると、シートはこのシート状ガイド部材の形状にならい波型に湾曲して剛性が強くなった状態で搬送される。
【0053】
図5は本実施形態の制御ブロック図を表しており、コントローラ500はCPU501、プログラム格納用ROM503、データの一時保管用RAM502、通信用I/O 504から構成される。ユーザーが操作部112からシートSの紙厚情報を入力するか、AD変換部505を介して紙厚検知センサ111によってシートSの厚さを認識することにより、ドライバ506を介してソレノイド106を駆動して、突き出し部材320を動作させる。
【0054】
例えばシートが厚紙であればソレノイド106は動作せず、上ガイドのシート状ガイド部材312aと下ガイドのシート状ガイド部材313aにて形成されるシートの上下方向のガイド面は平面状である。薄紙であればソレノイド106が駆動され、ガイド面は湾曲状となる。なお、コントローラ500は画像形成装置全体の制御も行うが、詳細説明は省略する。
【0055】
次に、突き出し部材320の動作について、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0056】
ステップ1(S1)で、ユーザーは操作部112からシートSの紙厚や紙サイズなどの情報を入力する。プリント動作が開始されると、ステップ2(S2)で、プリンタは搬送ユニット20内に設けられた紙厚検知センサ(不図示)により紙厚の検知を行う。ステップ3(S3)で、この紙厚検知センサの出力値と、先にユーザーが入力した紙厚情報を比較する。両者に不整合が無い場合(yes)は、ステップ4(S4)でシートSが厚紙か薄紙かを判断する。厚紙であれば、ソレノイドはOFFとしてガイド面形状は平面状のままとしてステップ5に進み、プリントを開始し、薄紙であれば、ステップ6(S6)でソレノイドをONしてガイド面形状を湾曲形状とする。
【0057】
操作部112からのシートの紙厚情報と紙厚検知センサからの出力値が異なった場合は、ステップ7(S7)において、操作部上にユーザー入力情報と紙厚検知センサ出力値とが異なっている旨を表示する。そして、ステップ8(S8)において、ユーザーが再度紙厚情報を入力し直すか、それともこの状態で強制的にプリントを再開するかを選択する。強制的にプリントを再開させることができる理由は、機械の使用環境やシートの吸湿状態等により、厚紙であってもガイド形状を湾曲形状とし、シートの斜行補正能力を優先させたい場合にも対応するためである。
【0058】
次に、剛性(剛度)の弱いシートを撓ませて搬送する理由を説明する。
【0059】
撓みや座屈は断面2次モーメントIに比例することが知られている。例えば、紙厚0.05mmの40g/m紙を高低差2mmの波型にしたときに、断面2次モーメントIは平板状態の約6300倍となり、最厚口0.4mmの断面2次モーメントIを遥かに超えることが分かる。図7に示すように、横軸は断面2次モーメントI、実線はシート厚tおよび、破線はt=0.05mmの時の波型高低差aを変化させた値を表している。よって、薄紙などの剛性(剛度)の弱いシートでも突き当て面へ確実に突き当てることが可能となり、座屈によるジャムやループによる斜行発生を抑えることができる。
【0060】
逆に厚紙の様に剛性(剛度)が強く座屈が発生しにくいシートでは、上述したように突き出し部材320をガイド面から突出させないようにし、搬送抵抗を減らし、搬送不良を抑えている。
【0061】
更にシートの搬送性能や斜行補正能力を向上させるには斜行補正ローラの数を増やしたり、突き出し部材320の数を更に増やしたり、突き出し部材320の突き出し量を大きくしてもよい。
【0062】
図10は本発明の他の実施形態を表すものである。
【0063】
図10(a)に示すように、上下一対のガイド部材である上ガイド312及び下ガイド313をそれぞれシート搬送方向において複数に分割し、それぞれのガイド部を一定の間隔を置いて配置している。上ガイド312、下ガイド313の分割位置は相互に異なった位置に配置されており、本実施形態では一方のガイド部の中央に他方のガイド部の分割部が対応するように配置されている。また、それぞれのガイド部は、シートの搬送方向に接離可能に設けられていて、図示しないアクチュエータで移動可能となっている。シート状ガイド部材312a、313aは、それぞれ各ガイド部に部分的に固定されていて、シート状ガイド部材312aを湾曲させたい時は、分割された上ガイド312同士が接近するように不図示のアクチュエータにより上ガイド312をシート搬送方向に沿って移動させる。同様に、シート状ガイド部材313aを湾曲させたい時は、分割された下ガイド313同士が接近するように不図示のアクチュエータにより下ガイド313をシート搬送方向に沿って移動させる。
【0064】
この移動により、シート状ガイド部材312aは上ガイド312に部分的に固定されているため、図10(b)に示すようにシート状ガイド部材312aは湾曲する。同様な構成で下ガイド313にもシート状ガイド部材313aが設けられているが、下ガイド313の分割位置は上ガイド312の分割位置の丁度中間点である。このため、図10(b)に示すように、そして、シート状ガイド部材312aが凸状に撓む位置とシート状ガイド部材313aが凹状に撓む位置とがシート搬送方向で対向する。また、シート状ガイド部材312aが凹状に撓む位置とシート状ガイド部材313aが凸状に撓む位置とがシート搬送方向で対向する。このように、下ガイド313のシート状ガイド部材313aは、上ガイド312のシート状ガイド部材312aとほぼ同形状で湾曲し、シート状ガイド部材312aと313aは一定の間隔をもった湾曲形状紙パスを形成する。
【0065】
よって本実施の形態においても第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0066】
以上、電子写真方式を用いた画像形成装置に対して本発明を適用した例について説明したが、BJ方式や熱転写方式等その他の画像形成装置について、本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施形態における斜行補正装置の正面図
【図2】図1に示す斜行補正装置の斜視図
【図3】図2の斜行補正装置を拡大した模式図
【図4】(a)図1に示す斜行補正装置において厚紙通紙時の状態を示す図、(b)図1に示す斜行補正装置において薄紙通紙時の状態を示す図
【図5】図1に示す斜行補正装置を制御するための制御部のブロック図
【図6】図5のブロック図による制御のフローチャート
【図7】断面2次モーメントIと紙厚及びガイド高低差の関係を表す図
【図8】本発明の実施形態の斜行補正装置が設けられている画像形成装置の断面図
【図9】斜行補正装置の動作を説明するための平面図
【図10】(a)本発明の第2の実施形態における斜行補正装置の厚紙通紙時の状態を示す正面図、(b)本発明の第2の実施形態における斜行補正装置の薄紙通紙時の状態を示す正面図
【図11】従来の斜行補正装置のシート搬送方向から見た図
【図12】紙厚と剛性(剛度)の関係を表す図
【符号の説明】
【0068】
1 画像形成装置(プリンタ)
30 斜行補正装置
31 突き当て基準ガイド部
32a〜32c 斜行補正ローラ
32a〜32c 従動ローラ
90 画像形成部
311 基準面
312 上ガイド
313 下ガイド
312a、313a シート状ガイド部材
320 突き出し部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの搬送方向に沿って配置され、シートの側端が突き当てられる基準面と、
前記基準面に向けてシートの側端を斜めに突き当てるようにシートを搬送する斜送機構と、
前記斜送機構により前記基準面に向けて搬送されるシートの側端を撓ませる撓み形成手段と、を備え、
前記撓み形成手段は、
前記斜送機構により搬送されるシートの側端を前記基準面に案内可能に配置される一対のガイド部材と、
シートの搬送方向に沿って前記ガイド部材に設けられる可撓性のシート状ガイド部材と、
前記シート状ガイド部材をシートの搬送方向に沿って凹凸形状に撓ませるための湾曲手段と、
を備えることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記湾曲手段は、前記ガイド部材にシート搬送方向に沿って複数設けられ、前記ガイド部材のガイド面から突出可能な突き出し部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記湾曲手段は、一対のガイド部材をそれぞれシート搬送方向に複数に分割して接離可能なガイド部で構成し、前記ガイド部を接離させるためのアクチュエータを備え、前記シート状ガイド部材を前記ガイド部に部分的に固定して、前記アクチュエータにより前記ガイド部を接離させることにより前記シート状ガイド部材を撓ませることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記ガイド部材の一方のガイドに設けられるシート状ガイド部材が凸状に撓む位置と他方のガイドに設けられるシート状ガイド部材が凹状に撓む位置とがシート搬送方向で対向しており、一方のガイドに設けられるシート状ガイド部材が凹状に撓む位置と他方のガイドに設けられるシート状ガイド部材が凸状に撓む位置とがシート搬送方向で対向していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のシート搬送装置と、
前記シート搬送装置により搬送されるシートに画像を形成する画像形成部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−6511(P2010−6511A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166088(P2008−166088)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】