説明

シート材の位置調整装置

【課題】貼合されるシート材の幅方向の端辺を揃える位置調整を、簡易な構成で精密に制御することができる位置調整装置を提供する。
【解決手段】位置調整装置1は、回転しない第一バー11及び第二バー12と、第一バー及び第二バーを間隔をあけて平行に且つ異なる高さに支持する一対のバー支持部10と、第一バーと第二バーとの間の仮想点を中心点とする円弧状部21を有し各バー支持部の外側に取り付けられた係合片20を備えると共に、円弧状部と係合する溝31が周面に形成され、架台50からそれぞれ立設された一対の固定支持部51に支持された車輪30を備える回転支持機構Mと、バー支持部に水平方向の力を加えるシリンダ装置40とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールシートの製造工程において、走行しつつ貼り合わされるシート材の幅方向の端辺を揃えるために使用される、シート材の位置調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
段ボールシートの製造においては、コルゲータにおいて、中芯原紙を波形に成形しライナと貼合することにより片面段ボールシートを製造する工程、片面段ボールシートの段頂にライナを貼合する工程等、中芯原紙、ライナ、片面段ボールシート等のシート材を貼合する工程が行われる。このような貼合工程は、シート材を走行させながら行われるが、シート材の幅方向の位置のずれにより、貼合されるシート材同士で幅方向の端辺が不揃いとなることがある。一般的に、段ボールシートの幅方向の寸法精度を確保するために、両端を化粧断ちするための落し代が予め設定されているが、端辺における不揃い幅が落し代を超えると、その部分の段ボールシートは廃棄対象となり大きな無駄となる。そこで、段ボールシートの製造工程においては、走行するシート材の幅方向の端辺を揃える位置調整、いわゆる「耳合わせ」が行われる。
【0003】
従来、この位置調整は、波形に成形された中芯原紙にライナを貼合するシングルフェーサや、片面段ボールシートにライナを貼合するダブルフェーサにおいて、端辺がずれていることを確認した作業者が、ライナや中芯原紙の原紙ロールが装着されたミルロールスタンドにおいて、原紙が供給される位置を調整することにより行っていた。ところが、シート材を貼合するシングルフェーサやダブルフェーサと、原紙を供給するミルロールスタンドとでは、距離が大きく離れている。そのため、ミルロールスタンドにおける位置調整がシート材の貼合位置に反映されるまで、シート材が走行してしまう距離はかなり長く、無駄が大きいという問題があった。
【0004】
加えて、複両面段ボールシートや複々両面段ボールシートを製造する際に、貼合される片面段ボールシート同士の端辺にずれがある場合は、ミルロールスタンドにおける調整では、端辺を揃える位置調整はできないという問題があった。
【0005】
そこで、本出願人は、シート材の貼合位置に近いところで端辺の位置調整を行うことが可能な位置調整装置100を提案している(特許文献1参照)。これは、図5に示すように、回転する一対のロール101,102を平行に所定間隔をあけて配置すると共に、ロール101,102を異なる高さに支持したものである。そして、図5(a)に示すように、段ボールシートの製造工程において走行するシート材110を、一方のロール101に外側から周回するように巻き掛けた上で、ロール101,102間の間隙を通し、更に他方のロール102に、ロール101に巻き掛けたときとは反対方向に周回するように巻き掛ける。
【0006】
かかる構成の位置調整装置100では、図5(b)に示すように、ロール101,102の軸方向がシート材の走行方向(図示、矢印)に直交しているとき、ロール101,102を通過した後のシート材110の幅方向の端辺の位置は、鎖線で図示するように、ロール101,102を通過する前と変わらない。一方、ロール101,102間の位置関係を維持したまま、ロール101,102の軸方向をシート材の走行方向に直交する方向から傾けると、端辺の位置はロール101,102を通過する前後で幅方向に変位する。そして、その変位量Lはロール101,102の軸方向を傾ける角度によって調整することができる。従って、位置調整装置100をシート材の貼合位置の直前に配置することにより、シート材の端辺を揃える位置調整を効率良く行うことができ、端辺が不揃いであるとして廃棄対象となる段ボールシートを低減することができる。
【0007】
また、シート材110が巻き掛けられるロール101,102は平行であるため、ロール101,102に巻き掛けられる前後でシート材110が捻れることがない。これにより、シート材110に無理な張力を発生させることなく、端辺を揃える位置調整を行うことができる。
【0008】
しかしながら、上記の位置調整装置100では、ロール101,102の軸方向を傾けた際に、ロール101,102の回転方向とシート材の走行方向が一致しない。すなわち、ロール101から送り出されるシート材、及び、ロール102に送り込まれるシート材の走行方向はロール101,102それぞれの回転方向と一致するが、ロール101に送り込まれるシート材、及びロール102から送り出されるシート材の走行方向はロール101,102の回転方向と一致しない。そのため、回転するロール101,102からシート材に働く力によって、シート材の走行方向が影響を受け、シート材の端辺を揃える位置調整を精密に制御することが困難となるおそれがあった。
【0009】
また、ロール101,102を走行方向に大きく動かすことなく軸方向を傾けるためには、ロール101,102間に位置する回転軸周りにロール101,102を回転させることが望ましいが、シート材110が横切る位置には回転軸を設けることができない。ここで、二本のロールの両端をそれぞれ支持する部材を、シート材の走行する高さより高い位置、或いは、シート材の走行する高さより低い位置で連結し、この連結する部材に回転軸を取り付け、モータ等で回転駆動する構成も想到し得る。ところが、段ボールシートを製造するための原紙の幅は2000mm〜3000mmとかなり長いため、これを巻き掛けるロールも長いものとなる。そして、長いロールが撓まないためには、剛性の高い材料で太く形成する必要があるため、ロールは大型で重量のある構成となる。
【0010】
従って、大型で重量のあるロールを支持する部材を、下方から載置するように支持する回転軸、或いは、上方から垂下するように支持する回転軸は、かなり頑丈なものとしなければならず、これを回転駆動するモータ等も大型のものが必要である。そのため、より簡易な構成で、シート材の端辺の位置を調整できる装置が望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、段ボールシートの製造工程において走行しつつ貼り合わされるシート材の幅方向の端辺を揃える位置調整を、簡易な構成で精密に制御することができるシート材の位置調整装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるシート材の位置調整装置は、「回転しない第一バーと、該第一バーの両端部がそれぞれ取り付けられ、前記第一バーを水平に支持する一対のバー支持部と、一対の該バー支持部に両端部がそれぞれ取り付けられ、前記第一バーと間隔をあけて平行に、且つ、前記第一バーとは異なる高さに支持されている回転しない第二バーと、前記第一バーと前記第二バーとの間に位置する仮想点を中心点とする仮想円の一部である円弧状部をそれぞれ有する一対の係合片を備えると共に、前記円弧状部と係合する溝が周面に形成され鉛直な軸周りに回転自在な車輪を前記一対の係合片のそれぞれに対して二以上備え、設置面に載置される架台からそれぞれ立設された一対の固定支持部に一対の前記バー支持部を前記仮想点周りに回転可能に支持させる回転支持機構と、一対の前記バー支持部の少なくとも一方に水平方向の力を加える駆動装置とを具備し、前記回転支持機構において、一対の前記係合片のそれぞれは一対の前記バー支持部のそれぞれの外側に取り付けられ外周に沿って前記円弧状部となっており、前記車輪は前記固定支持部に支持されている」ものである。
【0013】
「シート材」は、ライナ、波形に成形された中芯原紙、片面段ボールシート、及び、片面段ボールシート同士を二層以上に貼合したシートを指している。
【0014】
上記構成によれば、上述の特許文献1の位置調整装置100と同様の原理で、シート材の幅方向の端辺の位置を調整することができ、ひいては、貼合されたシート材の端辺を揃えることができる。ここで、本発明の第一バー及び第二バーは回転しない構成であるため、特許文献1の位置調整装置100とは異なり、シート材の走行方向がロールの回転方向によって影響を受けるという問題を有してない。これにより、第一バー及び第二バーの軸方向を傾ける角度、換言すれば、一対のバー支持部を仮想点を通る鉛直な軸周りに回転させる角度と、シート材の端辺の位置の変位量との相関性が高く、シート材の端辺の位置を精密に制御することができる。
【0015】
また、一対のバー支持部を回転させる回転支持機構として、円弧状部を有する係合片と、円弧状部と係合する溝を備えた車輪という構成を採用したことにより、シート材が横切る位置に実在の回転軸を設けることなく、一対のバー支持部を回転させることができる。
【0016】
更に、第一バー及び第二バーは、バー支持部、バー支持部に取り付けられた係合片、係合片の円弧状部と係合する車輪、及び、車輪が支持された固定支持部を介して、架台に支持されているため、第一バー及び第二バーが重量物であっても安定的に支持することができる。加えて、バー支持部に取り付けられている係合片が車輪と係合していることにより、バー支持部が支持している第一バー及び第二バーが重量物であっても、小さな力でバー支持部を回転させることができる。従って、実在の回転軸を有しない簡易な構成でありながら、第一バー及び第二バーが重量物であっても安定して支持できると共に、小さな力で回転させることができ、第一バー及び第二バーの回転によるシート材の端辺の位置の調整を精密に行うことができる。
【0017】
一方、本発明にかかるシート材の位置調整装置は、上記構成に替えて「回転しない第一バーと、該第一バーの両端部がそれぞれ取り付けられ、前記第一バーを水平に支持する一対のバー支持部と、一対の該バー支持部に両端部がそれぞれ取り付けられ、前記第一バーと間隔をあけて平行に、且つ、前記第一バーとは異なる高さに支持されている回転しない第二バーと、前記第一バーと前記第二バーとの間に位置する仮想点を中心点とする仮想円の一部である円弧状部をそれぞれ有する一対の係合片を備えると共に、前記円弧状部と係合する溝が周面に形成され鉛直な軸周りに回転自在な車輪を前記一対の係合片のそれぞれに対して二以上備え、設置面に載置される架台からそれぞれ立設された一対の固定支持部に一対の前記バー支持部を前記仮想点周りに回転可能に支持させる回転支持機構と、一対の前記バー支持部の少なくとも一方に水平方向の力を加える駆動装置とを具備し、前記回転支持機構において、一対の前記係合片のそれぞれは一対の前記固定支持部のそれぞれの内側に取り付けられ内周に沿って前記円弧状部となっており、前記車輪は前記バー支持部に支持されている」ものであっても良い。
【0018】
上述の構成との相違は、回転支持機構を構成する係合片及び車輪がそれぞれ取り付けられる対象が、反対になっている点である。かかる構成によっても、上記構成と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の効果として、段ボールシートの製造工程において走行しつつ貼り合わされるシート材の幅方向の端辺を揃える位置調整を、簡易な構成で精密に制御することができるシート材の位置調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一実施形態のシート材の位置調整装置の平面図である。
【図2】図1のシート材の位置調整装置の斜視図である。
【図3】図1のシート材の位置調整装置における位置調整を説明する図である。
【図4】本発明の第二実施形態のシート材の位置調整装置の平面図である。
【図5】特許文献1の位置調整装置による位置調整の原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の第一実施形態であるシート材の位置調整装置1(以下、単に「位置調整装置1」と称する)について、図1乃至図3に基づいて説明する。位置調整装置1は、回転しない第一バー11と、第一バー11の両端部がそれぞれ取り付けられ、第一バー11を水平に支持する一対のバー支持部10と、一対のバー支持部10に両端部がそれぞれ取り付けられ、第一バー11と間隔をあけて平行に、且つ、第一バー11とは異なる高さに支持されている回転しない第二バー12と、第一バー11と第二バー12との間に位置する仮想点Pを中心点とする仮想円Cの一部である円弧状部21をそれぞれ有する一対の係合片20を備えると共に、円弧状部21と係合する溝31が周面に形成され鉛直な軸37周りに回転自在な車輪30を一対の係合片20のそれぞれに対して二以上備え、設置面に載置される架台50からそれぞれ立設された一対の固定支持部51に一対のバー支持部10を仮想点P周りに回転可能に支持させる回転支持機構Mと、一対のバー支持部10の少なくとも一方に水平方向の力を加える駆動装置とを具備し、回転支持機構Mにおいて、一対の係合片20のそれぞれは一対のバー支持部10のそれぞれの外側に取り付けられ外周に沿って円弧状部21となっており、車輪30は固定支持部51に支持されているものである。
【0022】
より詳細には、第一バー11及び第二バー12は同一の長さで、共に中実または中空の丸棒状であり、断面の外形の円は同一径である。このような第一バー11及び第二バー12は、金属など高剛性で高強度の材料で形成することができる。そして、第一バー11及び第二バー12は、平板状のバー支持部10の一対が鉛直方向に立てられた状態で平行に配置された間に横架されるように、それぞれの両端がバー支持部10の内側面に対して回転不能に支持されている。なお、本実施形態では、第二バー12は第一バー11より高い位置に支持されている。また、第一バー11と第二バー12との間には、シート材の厚さより広い間隙が形成されている。
【0023】
一対のバー支持部10それぞれの外側面には、水平方向に庇状に張り出すように平板状の係合片20が取り付けられており、その外周の形状は仮想点Pを中心点とする円弧である。すなわち、係合片20の外周に沿って円弧状部21が形成されている。
【0024】
一方、一対の固定支持部51は、それぞれバー支持部10の外側で鉛直方向に延びるように架台50から立設されており、その上端から外側に向けて直角に延設された平板状の車輪支持部52を備えている。この車輪支持部52の上面には、周面を固定支持部51より内側に突出させた状態で、車輪30が軸支されている。この車輪30は、一対の固定支持部51のそれぞれに対して二個が設けられている。そして、それぞれの車輪30の周面には、係合片20の円弧状部21の厚さより僅かに幅の広い溝31が周方向に形成されており、係合片20の円弧状部21はこの溝31と係合している。すなわち、一つの係合片20は、二つの車輪30の溝31と係合している。
【0025】
これにより、第一バー11及び第二バー12は、バー支持部10、バー支持部10に取り付けられた係合片20、係合片20の円弧状部21と係合する車輪30、及び、車輪30が支持された固定支持部51を介して、架台50に支持されている。
【0026】
また、位置調整装置1は駆動装置として、エアまたは油圧で作動するシリンダ装置40を備えている。このシリンダ装置40の駆動シリンダ部41は、ピストンロッド45が前進後退する方向を水平方向とした状態で、一対の固定支持部51の一方に、取付部材55を介して鉛直な軸42周りに回転自在に軸支されている。そして、一対のバー支持部10の一方には、係合片20と干渉しない位置に突片17が設けられており、シリンダ装置40のピストンロッド45の先端が、この突片17に対して鉛直な軸46周りに回転自在に軸支されている。
【0027】
上記構成の位置調整装置1を使用する際は、図3に示すように、シート材Sを第一バー11及び第二バー12の一方に外側から周回するように巻き掛ける。ここでは、低い方の第一バー11から先にシート材Sを巻き掛ける場合を例示する。第一バー11に巻き掛けられたシート材Sは、第一バー11と第二バー12との間の間隙に通した上で、更に、第一バー11に巻き掛けた方向とは反対方向に周回するように、第二バー12に巻き掛けられる。
【0028】
そして、貼合されたシート材Sの幅方向の端辺が揃っている場合は、図3(a)に示すように、第一バー11及び第二バー12の軸方向を、シート材Sの走行方向(図示、矢印)に直交する方向と一致させておく。この場合は、位置調整装置1を通過する前後で、シート材Sの端辺の位置は変位しない。
【0029】
一方、貼合されたシート材Sの幅方向の端辺が不揃いとなった場合は、図3(b)に示すように、シリンダ装置40を作動させピストンロッド45を前進または後退させる。ここでは、ピストンロッド45を後退させた場合を例にとって図示している。これにより、突片17を介してバー支持部10に水平方向の力が作用するが、バー支持部10には、円弧状部21で車輪30と係合している係合片20が取り付けられている。そのため、第一バー11及び第二バー12によって連結されていることにより、一体的に運動する一対のバー支持部10は、円弧状部21の円弧の中心点である仮想点Pを通る鉛直な軸周りに、所定角度回転する。ここで、シリンダ装置40のピストンロッド45は直線的に前進後退する構成であるが、ピストンロッド45の先端および駆動シリンダ部41は、それぞれ鉛直な軸46,42周りに回動自在に軸支されているため、バー支持部10に支持されたピストンロッド45の先端は、バー支持部10の回転に伴って仮想点Pを中心とした円周に沿って移動する。
【0030】
一対のバー支持部10が上記のように運動することにより、第一バー11及び第二バー12の軸方向は、シート材Sの走行方向に直交する方向から所定角度分傾く。これにより、シート材Sの端辺の位置は、位置調整装置1を通過する前後で変位する。ここで、端辺の位置の変位量は、第一バー11及び第二バー12の軸方向をどれだけ傾けるかによって変化するため、ピストンロッド45を前進または後退させる長さによって調整することができる。
【0031】
例えば、貼合されたシート材の端辺のずれを定量的に検出する検出装置から送出される信号を、コンピュータやプログラマブルコントローラ等の制御装置で受け、予め設定されたプログラムによる制御によってシリンダ装置40を作動させ、ピストンロッド45を動作させる長さを調整することができる。ここで、シート材の端辺のずれを検出する検出装置としては、例えば、シート材の端辺の近傍を撮影するカメラと、カメラによる撮像を画像解析するプログラムを備えたコンピュータを備えたものを使用することができる。
【0032】
上記のように、第一実施形態の位置調整装置1によれば、平行な第一バー11及び第二バー12にシート材を巻き掛け、第一バー11及び第二バー12の軸方向をシート材の走行方向に直交する方向に対して傾けることにより、シート材の幅方向の端辺の位置を変化させることができ、ひいては、貼合されるシート材の端辺の位置を揃えることができる。これにより、位置調整装置1をシート材の貼合工程の直前に配置することにより、端辺の位置が不揃いとなって廃棄対象となる段ボールシートを低減することができる。
【0033】
また、第一バー11及び第二バー12は自身の中心軸周りに回転しないため、回転するロールを用いていた従来の位置調整装置100とは異なり、シート材の走行方向がロールの回転方向によって影響を受けるという問題を有してない。これにより、第一バー11及び第二バー12の軸方向を傾ける角度、換言すれば、一対のバー支持部10を仮想点Pを通る鉛直な軸周りに回転させる角度と、シート材の端辺の位置の変位量との相関性が高く、シート材の端辺の位置を精密に制御することができる。
【0034】
加えて、一対のバー支持部10を回転させる回転支持機構Mとして、円弧状部21を有する係合片20と、円弧状部21と係合する溝31を備えた車輪30という構成を採用したことにより、回転中心に回転軸が実在しなくても、一対のバー支持部10を回転させることができる。すなわち、シート材が横切る位置に実在の回転軸を設けることなく、仮想の回転軸周りに一対のバー支持部10を回転させることが可能な構成となっている。
【0035】
ところで、一対のバー支持部10を、第一バー11及び第二バー12の上方または下方で連結し、この連結する部材に実際に回転軸を取り付け、モータ等で回転駆動する構成も想到し得る。しかしながら、シート材の幅が大きい場合は、これを巻き掛ける第一バー11及び第二バー12は、長く重いものとならざるを得ない。そのため、重量物である第一バー11及び第二バー12を支持するバー支持部10を下方から回転軸で支え、或いは、上方から垂下するように回転軸で支持した上で、回転軸を回転駆動するためには、回転軸をかなり頑丈なものとし、且つ、大型の駆動装置を使用する必要がある。
【0036】
これに対し、本実施形態の位置調整装置1では、一対のバー支持部10は一対の固定支持部51を介して架台50に支持されているため、第一バー11及び第二バー12が重量物であっても安定的に支持することができる。加えて、バー支持部10が支持している第一バー11及び第二バー12が重量物であっても、バー支持部10に取り付けられている係合片20が車輪30と係合していることにより、小さな力でバー支持部10を回転させることができる。
【0037】
次に、第二実施形態のシート材の位置調整装置2(以下、単に「位置調整装置2」と称する)について、図4を用いて説明する。位置調整装置2は、回転しない第一バー11と、第一バー11の両端部がそれぞれ取り付けられ、第一バー11を水平に支持する一対のバー支持部10と、一対のバー支持部10に両端部がそれぞれ取り付けられ、第一バー11と間隔をあけて平行に、且つ、第一バー11とは異なる高さに支持されている回転しない第二バー12と、第一バー11と第二バー12との間に位置する仮想点Pを中心点とする仮想円Cの一部である円弧状部21をそれぞれ有する一対の係合片20を備えると共に、円弧状部21と係合する溝31が周面に形成され鉛直な軸37周りに回転自在な車輪30を一対の係合片20のそれぞれに対して二以上備え、設置面に載置される架台50からそれぞれ立設された一対の固定支持部51に一対のバー支持部10を仮想点P周りに回転可能に支持させる回転支持機構Mと、一対のバー支持部10の少なくとも一方に水平方向の力を加える駆動装置とを具備し、回転支持機構Mにおいて、一対の係合片20のそれぞれは一対の固定支持部51のそれぞれの内側に取り付けられ内周に沿って円弧状部21となっており、車輪30はバー支持部10に支持されているものである。
【0038】
位置調整装置2が位置調整装置1と相違する点は、回転支持機構Mを構成する係合片20及び車輪30がそれぞれ取り付けられる対象が、反対になっている点である。具体的には、一対の固定支持部51それぞれの内側面には、水平方向に庇状に張り出すように平板状の係合片20が取り付けられており、その内周の形状は仮想点Pを中心点とする円弧である。すなわち、係合片20の内周に沿って円弧状部21が形成されている。
【0039】
一方、一対のバー支持部10それぞれの外側面には、水平方向に庇状に張り出すように平板状の車輪支持部52を備えている。この車輪支持部52の上面には、周面を車輪支持部52より外側に突出させる状態で、車輪30が軸支されている。この車輪30は、一対のバー支持部10のそれぞれに対して二個が設けられている。そして、それぞれの車輪30の構成は、位置調整装置1の車輪30と同様であり、係合片20の円弧状部21は車輪30の溝31に係合している。また、突片17は、車輪30に干渉しない位置で、バー支持部10に取り付けられている。
【0040】
上記構成の位置調整装置2では、シリンダ装置40の作動によって車輪30は係合片20の円弧状部21に沿って移動し、支持バーは車輪30と共に仮想点Pを通る鉛直な軸周りに回転する。これにより、上記の位置調整装置1と同様の作用効果を得ることができる。
【0041】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0042】
例えば、上記の位置調整装置1,2では、駆動装置としてシリンダ装置40を使用した場合を例示したが、これに限定されず、バー支持部10の端部を把持して水平方向に押し引きするマニピュレータや多関節ロボットを使用可能である。
【0043】
また、上記の位置調整装置1,2では、駆動装置によって一対のバー支持部10の一方を駆動する場合を例示したが、これに限定されず、一対のバー支持部10の双方を駆動装置によって駆動し、これを同期させても良い。
【0044】
更に、上記の位置調整装置1,2では、一つの係合片20に二つの車輪30を係合させる場合を例示したが、これに限定されず、一つの係合片20を三以上の車輪30の係合によって、より安定的に支持することができる。
【符号の説明】
【0045】
1,2 位置調整装置
10 バー支持部
11 第一バー
12 第二バー
20 係合片(回転支持機構 M)
21 円弧状部
30 車輪(回転支持機構 M)
31 溝
40 シリンダ装置(駆動装置)
50 架台
51 固定支持部
P 仮想点
C 仮想円
S シート材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特開2007−261245号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しない第一バーと、
該第一バーの両端部がそれぞれ取り付けられ、前記第一バーを水平に支持する一対のバー支持部と、
一対の該バー支持部に両端部がそれぞれ取り付けられ、前記第一バーと間隔をあけて平行に、且つ、前記第一バーとは異なる高さに支持されている回転しない第二バーと、
前記第一バーと前記第二バーとの間に位置する仮想点を中心点とする仮想円の一部である円弧状部をそれぞれ有する一対の係合片を備えると共に、前記円弧状部と係合する溝が周面に形成され鉛直な軸周りに回転自在な車輪を前記一対の係合片のそれぞれに対して二以上備え、設置面に載置される架台からそれぞれ立設された一対の固定支持部に一対の前記バー支持部を前記仮想点周りに回転可能に支持させる回転支持機構と、
一対の前記バー支持部の少なくとも一方に水平方向の力を加える駆動装置とを具備し、
前記回転支持機構において、一対の前記係合片のそれぞれは一対の前記バー支持部のそれぞれの外側に取り付けられて外周面が前記円弧状部となっており、前記車輪は前記固定支持部に支持されている
ことを特徴とするシート材の位置調整装置。
【請求項2】
回転しない第一バーと、
該第一バーの両端部がそれぞれ取り付けられ、前記第一バーを水平に支持する一対のバー支持部と、
一対の該バー支持部に両端部がそれぞれ取り付けられ、前記第一バーと間隔をあけて平行に、且つ、前記第一バーとは異なる高さに支持されている回転しない第二バーと、
前記第一バーと前記第二バーとの間に位置する仮想点を中心点とする仮想円の一部である円弧状部をそれぞれ有する一対の係合片を備えると共に、前記円弧状部と係合する溝が周面に形成され鉛直な軸周りに回転自在な車輪を前記一対の係合片のそれぞれに対して二以上備え、設置面に載置される架台からそれぞれ立設された一対の固定支持部に一対の前記バー支持部を前記仮想点周りに回転可能に支持させる回転支持機構と、
一対の前記バー支持部の少なくとも一方に水平方向の力を加える駆動装置とを具備し、
前記回転支持機構において、一対の前記係合片のそれぞれは一対の前記固定支持部のそれぞれの内側に取り付けられて内周面が前記円弧状部となっており、前記車輪は前記バー支持部に支持されている
ことを特徴とするシート材の位置調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−241010(P2011−241010A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112462(P2010−112462)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(593155330)株式会社ホニック (8)
【出願人】(592247595)株式会社神戸製作所 (19)
【Fターム(参考)】