説明

シート材切断装置、これを用いてなる携帯プリンタ

【課題】 本発明は、簡易な構造を有して携帯機器や車載装置などへの搭載に好適となるほどの軽量化やコンパクト化がなされ、簡易な操作で付与した小さな外力により動作することができるシート材切断装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、薄板状の可動刃および固定刃を備え、一端が支持され他端が揺動するクランク部材と、クランク部材の他端側と可動刃とを連結する連接部材と、クランク部材に外力を付与する外力付与手段とを具備する可動刃駆動機構を有し、外力付与手段で付与した外力によるクランク部材の揺動運動により連接部材が切断方向に揺動運動することで可動刃を切断方向に移動させ固定刃と噛み合わせてシート材を切断するシート材切断装置である。また、本発明のシート材切断装置を搭載することでコンパクト性に優れる携帯プリンタが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にポータブル機器とかモバイル機器といわれる携帯あるいは車載して利用可能な印字機能を有する通信機器、情報機器、車載装置への搭載が好適なシート材切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、POS用通信端末などの携帯機器やタクシー用領収チケットプリンタなどの車載装置における印字装置として、小型のサーマル式プリンタが多用されている。さらに近年、携帯して利用可能な携帯電話やデジタルカメラやパーソナルコンピュータなどに対し、これらに接続可能なサーマル式の携帯プリンタの利用が増えつつある。
【0003】
上述した携帯プリンタの一例としては、例えば特許文献1が開示するポータブルプリンタや特許文献2が開示する携帯プリンタなどが知られている。これらのプリンタにおいては、機械的機構を有してシート材を切断するシート材切断装置は搭載されず、印字後、シート材の切断予定個所をノコ刃状もしくは直線状の刃先線を有する刃物に押し当てて引き千切ることでシート材を切断していた。
【0004】
また例えば、携帯可能と推定される小型なラベルプリンタが特許文献3に開示されている。該ラベルプリンタにおいては、駆動源を有して刃物を突出移動させる機械的機構が搭載され、印字後、センサの検知信号に基づき突出した刃物にラベル紙の切断予定個所を押し当てて引き千切ることでラベル紙を切断することができる。
【0005】
一方、機械的機構を有してシート材を切断するシート材切断装置としては、例えば略円柱状の回転刃が薄板状の固定刃に噛み合いながら1回転する間にシート材を切断することができるロータリカッタや、薄板状の可動刃が薄板状の固定刃に噛み合いながら1往復移動する間にシート材を切断することができるギロチンカッタが知られている。薄板状の可動刃を用いるギロチンカッタは、可動刃が略円柱状の回転刃よりも安価に形成でき、大きな通紙口を確保可能な上に薄型化が期待できることなど、ロータリカッタに比べ、シート材切断装置の廉価化、コンパクト化、軽量化に係って有利な点が多い。
【0006】
上述したギロチンカッタは、当然のことながら可動刃を切断方向に移動させるための機械的機構を具備する。例えば特許文献4が開示する回転スライダクランク機構を適用したギロチンカッタは、回転スライダクランク機構をなすクランクを1回転することにより可動刃を切断方向に移動している。具体的には、上述したギロチンカッタにおいては、駆動モータによりギヤ機構を介してホイールを回転し、該ホイールに設けた駆動ピンをクランクとして回転運動させることにより、該駆動ピンに連結した可動刃を切断方向および離間方向に直線的に往復運動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−245466号公報
【特許文献2】特開2006−168055号公報
【特許文献3】特開2005−238754号公報
【特許文献4】特開2005−324301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1〜3が開示するいずれの印字装置においても、印字後のシート材の切断をシート材を刃物に押し当てるなどして引き千切るように行っていたため、切断したシート材の切断端が凹凸状であったり破れて一部欠損していたりと切断品位に関する不満は多く、シート材切断装置の搭載が望まれていた。このような要求に対し、携帯機器や車載装置に搭載しても薄型化が期待できるなどの利点を有する上述したギロチンカッタは好適と考えられた。
【0009】
しかしながら、上述した携帯機器や車載装置に適用すべくギロチンカッタを搭載してなる携帯プリンタなどは未だ周知されているとはいえない。
本発明の目的は、上述したギロチンカッタの利点を活かし、近年多用されている回転スライダクランク機構を適用した可動刃駆動機構よりも簡易な構造を有して携帯機器や車載装置などへの搭載に好適となるほどの軽量化やコンパクト化がなされ、簡易な操作で付与した小さな外力により動作することができるシート材切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述したギロチンカッタにおいて可動刃を切断方向に移動させる機械的構成として、クランクを1回転すなわち360度回転するのではなく、クランクを鋭角をなす揺動角をもって揺動運動することにより、上述の問題が解決できることを見出し本発明に想到した。
【0011】
すなわち本発明は、シート材を切断する薄板状の可動刃と、該可動刃と噛み合う薄板状の固定刃と、前記可動刃を駆動する可動刃駆動機構とを有し、該可動刃駆動機構は、一端が支持され他端が揺動するクランク部材と、該クランク部材の他端側と前記可動刃とを連結する連接部材と、前記クランク部材に外力を付与する外力付与手段とを具備し、前記外力付与手段による外力で前記クランク部材を揺動運動することにより、前記連接部材を前記可動刃の切断方向に揺動運動することで前記可動刃を切断方向に移動させる、シート材切断装置である。
【0012】
本発明においては、前記クランク部材と前記連接部材は弾性部材を有して一体形成されてなることができる。
【0013】
また、本発明においては、前記弾性部材はねじりコイルばねでなり、該ねじりコイルばねの2つの腕が前記クランク部材および前記連接部材に対応することができる。
【0014】
また、本発明においては、前記弾性部材の弾性作用により前記連接部材が揺動運動することで前記可動刃を前記固定刃から離間移動させることができる。
【0015】
上述した本発明のシート材切断装置を搭載することにより、コンパクト性に優れるコンパクト性に優れる本発明の携帯プリンタを得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上述したギロチンカッタにおいて、クランク部材を従来の回転スライダクランク機構のように回転運動せずに揺動運動することで可動刃を切断方向に移動させることができるため、可動刃の駆動に要する機械的構造を簡易に構成することができる。
よって、本発明は、シート材切断装置の構造簡易化、コンパクト化、軽量化に極めて有効な技術となり、該技術を適用することにより携帯機器や車載装置などへの搭載に好適なシート材切断装置を得ることができる。さらには、本発明のシート材切断装置を搭載する携帯機器や車載装置などの軽量化やコンパクト化に寄与でき、例えば従来よりもコンパクト性に優れた携帯プリンタなどを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一例となるシート材切断装置を搭載してなる本発明の携帯プリンタの一例であって、特にシート材切断装置の要部の概略構成につき、一部断面を含んで示す構成図である。
【図2】図1に示す携帯プリンタを構成する各構成部材の配置関係を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の重要な特徴は、可動刃を切断方向に移動させる機械的機構にクランク部材および連接部材を含んでなるスライダクランク機構を適用し、クランク部材を回転運動するのではなく揺動運動することで連接部材を可動刃の切断方向に揺動運動する構成を採用したことである。具体的には、本発明における可動刃駆動機構は、一端が支持され他端が揺動するクランク部材と、該クランク部材の他端側と前記可動刃とを連結する連接部材と、前記クランク部材に外力を付与する外力付与手段とを具備する。
【0019】
本発明のシート材切断装置は、スライダクランク機構をなすクランク部材に対し、外力付与手段により外力を付与することで該クランク部材を揺動運動させる。そして、該クランク部材の揺動運動に追従するように、スライダクランク機構をなす連接部材を可動刃の切断方向に揺動運動させる。このように揺動運動する連接部材に対して可動刃を連結しておくことにより、可動刃を切断方向に移動させることができる。そして、切断方向に移動された可動刃が固定刃と噛み合うこととなってシート材を切断することができる。
【0020】
本発明において、可動刃駆動機構に適用したスライダクランク機構とは、一般に4つの節を有し、このうち2つの節が回り対偶となり、1つの節がすべり対偶となり、残る1つの節が固定されて連鎖をなす4節リンク機構の一種であって、回転運動を直線運動に、もしくは直線運動を回転運動に変換する機械的機構をいう。また、一般に、回転運動を行う節を回転節、限定された範囲で揺動運動を行う節を揺動節、該揺動節と前記回転節とを連結するリンクを連接棒、前記回転節とその回転軸に対応する節を連結するリンクをクランクという。そして、前記クランクが最小長さのリンクとなる。また、上述の対偶とは、隣り合ったリンクが互いに接して運動する構成において、互いに接する接触部分の組み合わせ部をいう。本発明においては、上述のクランクが前記クランク部材に、上述の連接棒が前記連接部材に対応する。
【0021】
本発明のシート材切断装置の基本構成は、薄板状の可動刃が切断方向に移動されて薄板状の固定刃と噛み合うことでシート材を切断するいわゆるギロチンカッタである。そして、可動刃と固定刃とは互いの刃先が交差し圧接しながら摺動して噛み合うように配置される。なお、薄板状の可動刃および固定刃は、上述したように互いの刃先が交差し圧接しながら摺動して噛み合うことが可能となる形状を有する刃物に形成されていればよい。
【0022】
また、シート材を切断する薄板状の可動刃は、シート材の切断品位を損なわない限り薄板状に形成することでき、例えば板厚0.7mm乃至0.5mm程度、より薄い0.3mm程度、さらに薄い0.1mm程度のステンレス鋼などでなる板材を打抜いて簡易に得ることができる。また、可動刃の刃先は、幅方向の一端から他端に向かって徐々に傾斜する刃先線や、幅方向の中央に向かってV字状などに徐々に窪むように傾斜する刃先線を有することができる。望ましくはV字状に窪む刃先線を有してなる刃先であり、幅方向の両側からシート材を切断でき、切断に要する可動刃の移動量を短縮することができる。
【0023】
また、上述した可動刃と噛み合うことのできる薄板状の固定刃は、シート材の切断品位を損なわない限り可動刃と同様に薄板状に形成することができる。また、固定刃の刃先は直線状に形成されてなる刃先線を有することができ、帯材や板材あるいは角材などの角縁を研磨するなどの簡易な製法によって容易に刃先を形成することができる。あるいは、固定刃として格別に刃物を配設しなくても、例えば機器装置に有するフレームなどの端縁に刃付け加工を施して固定刃としても構わない。
【0024】
上述したように本発明のシート材切断装置は、可動刃駆動機構がクランク部材を揺動運動することで可動刃を切断方向に移動させる簡易な構成を有してなるため従来よりもコンパクトかつ軽量であって、携帯機器や車載装置などへの搭載に好適となる。よって、本発明のシート材切断装置を搭載することにより、携帯機器や車載装置などの軽量化やコンパクト化にも寄与でき、例えば従来よりもコンパクト性に優れた携帯プリンタなどを得ることができる。
【0025】
以下、本発明のシート材切断装置および携帯プリンタにつき、一例を挙げて図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の一例となるシート材切断装置(以下、カッタという)を搭載した本発明の携帯プリンタ(以下、プリンタ1という)の一例であって、特にカッタの要部の概略構成につき一部断面を含んで示す構成図である。なお、可動刃3、固定刃4、ダブルトーションバネ5、ロール紙Sを除き、各部材は幅方向中央において断面を示す。また、図2は、図1に示すプリンタ1を構成する各構成部材の配置関係を示す構成図である。
【0026】
プリンタ1は、上ケース14と下ケース15および可動カバー2により画成される内部空間に、感熱式シート材でなるロール紙Sとともにカッタを搭載してなる。該カッタは、薄板状に形成した可動刃3および固定刃4と、可動刃3を切断方向および離間方向に往復移動するための可動刃駆動機構とを具備する。
【0027】
可動刃3は、幅方向の中央部をV字状に窪ませて形成した刃先3aを有し、該刃先3aの幅方向両側には固定刃4との噛み合いを案内するための案内部3bを有する。そして、可動刃3の板厚方向において両側面を挟み込むように基台6および基台下板9をネジ12で一体に形成して配置し、可動刃3の基台6側となる側面に設けた案内部材8とこれに対応して基台6の下面に設けたガイド溝(図示せず)とにより、可動刃3の切断方向および離間方向への往復移動を案内するとともに可動刃3を支持している。また、基台6の下面を可動刃3の板厚方向と同方向に僅かに凸状に形成しておくとともに、可動刃3が切断方向に移動する際に可動刃3の側面が基台6の下面に接触して摺動するように構成し、これにより可動刃3に弾性的に撓みを付与することで固定刃4との好適な交差、圧接、摺動を得ている。
【0028】
一方、固定刃4は、直線状に形成した刃先4aを有し、該刃先4a側をやや曲げ起こすことで可動刃3との噛み合いを容易化し、ネジ13を用いて下ケース15に固定している。
【0029】
上述のカッタにおいては、ダブルトーションバネ5とこれに外力を付与する押し具7とを有して可動刃駆動機構を構成しており、これにより機械的構造が極めて簡易化されている。ダブルトーションバネとは、2つのねじりコイルバネのそれぞれ一方のアーム同士を連結して一体に形成した図2に示すような形状を有するバネであって、2つのアーム5a、5bと2つのコイル5cを有してなる弾性部材である。
【0030】
ダブルトーションバネ5の一方のアーム5aは、2つのアームのそれぞれの先端側を連結して一体に形成してあり、一体となったその先端部を基台6に設けた係止部6aに掛け止めて支持している。このようにアーム5aの一端側を支持することにより、押し具7でアーム5aもしくはコイル5cに外力を付与した際、アーム5aのコイル5cと一体になった他端側を揺動させることができる。この構成により、ダブルトーションバネ5の一方のアーム5aをスライダクランク機構をなすクランク部材として機能させることができる。
【0031】
ダブルトーションバネ5の他方のアーム5bは、コイル5cと一体となった側から延伸する2つの先端部を可動刃3に設けた係止部3cにそれぞれ係止することにより、可動刃3に連結している。このようにアーム5bの一端側を可動刃3に連結することにより、アーム5aもしくはコイル5cが揺動することでアーム5aの揺動運動に追従するようにアーム5bを可動刃3の切断方向および離間方向に揺動運動させることができる。この構成により、ダブルトーションバネ5の他方のアーム5bをスライダクランク機構をなす連接部材として機能させることができる。
【0032】
上述のように構成している可動刃駆動機構において、スライダクランク機構における固定リンクとしての機能は、アーム5aの先端部を支持している基台6と、該基台6と一体となって可動刃3の往復移動を案内している基台下板9からなる構造体によって得ることができる。
【0033】
また、上述した押し具7は、ダブルトーションバネ5のアーム5aもしくはコイル5cを押圧することで外力を付与することが可能な外力付与手段となる。具体的には、押し具7をダブルトーションバネ5のコイル5c部分を覆うかのようにアーム5a近傍に設けることで該押し具7の押圧によりアーム5aのコイル5c側を確実に押圧してアーム5aを揺動できるようにし、これにより押し具7を手指で押圧するだけの簡単な操作で外力を付与してアーム5aを容易に揺動させることができる。すなわち、押し具7は、シート材の切断動作を行う際の押しボタンとして機能することができる。
【0034】
本発明においては、上述したカッタのように可動刃駆動機構を構成するにおいて、スライダクランク機構の主要部をなすクランク部材と連接部材は弾性部材を有して一体形成されてなる構成とすることが望ましい。また、前記弾性部材はねじりコイルばねでなり、該ねじりコイルばねの2つの腕がクランク部材および連接部材に対応する、上述したダブルトーションバネ5のような構成とすることが望ましい。例えば上述したダブルトーションバネ5であれば、一方のアーム5aがクランク部材としての機能、他方のアーム5bが連接部材としての機能、これらを連結するコイル5cが節となって回り対偶の機能を有することができ、唯一の部材によって本発明における主要構成部をなすことができる。
【0035】
また、上述したダブルトーションバネ5に類似する機能部材は、互いの連結部でその両側が自在に揺動可能となる蝶番のような部材であって、ダブルトーションバネ5の他、例えば、略V字形状に形成した板バネや、1つのコイルから2つのアームが延伸するねじりコイルバネを組み合せてなる部材などを適用することができる。あるいはまた、可動刃自体を略V字形状に湾曲して形成することにより、可動刃に対して上述した板バネと同様な機能を持たせることも可能である。上述したダブルトーションバネ5などや湾曲形成した可動刃の適用により、スライダクランク機構の主要構成部を極めて簡易な構造で実現することができ、例えば唯一の部材で構成する可能性も期待でき、これに係る構成部品数や収納空間の削減が可能となるため、シート材切断装置のコンパクト化や軽量化に極めて有効となる。
【0036】
さらに上述したカッタの可動刃駆動機構においては、押し具7によりアーム5aに対して外力を付与した後、ダブルトーションバネ5に有する弾性作用によって生じた反発力により、押し具7を再び待機位置に押し戻すことができる。つまり、コイル5cに有する弾性作用により、格別の機械的機構を有することなく押し具7の復帰機能を持たせることができる。このとき、ほぼ同時に、切断方向に揺動移動していたアーム5bが該反発力により再び待機位置に押し戻され、これにより可動刃3を離間方向に移動して待機位置に戻すことができる。なお、押し具7に替えて、例えば梃子を適用したレバーを設けてアーム5aのコイル5c側を押圧する構成とすることも可能である。
【0037】
上述した構成により、2つのアーム5a、5bとコイル5cを有するダブルトーションバネ5と、係止部3cを有する可動刃3との間を連結でき、かつ、アーム5aの一端を基台6により支持し固定しながら基台下板9により可動刃3の往復移動を案内することができる。それ故に、ダブルトーションバネ5のアーム5aをクランクに対応させ、ダブルトーションバネ5のアーム5bを連接棒に対応させ、可動刃3をスライダに対応させ、基台6および基台下板9を固定リンクに対応させて、スライダクランク機構として動作させることができる。
【0038】
プリンタ1において、上述したカッタを、2つのガイドネジ11を用いて該カッタの各構成部材を可動カバー2に組み付けている。具体的には、ガイドネジ11を、印字してロール紙Sを外部に送り出すプラテンローラ16を回転可能に支持するローラフレーム10に連通した上で、まず基台下板9に設けたガイド溝に連通し、次いで可動刃3に設けたガイド溝に連通し、さらに基台6を貫通させて可動カバー2に締結することによる。このように構成することにより、本発明の一例となる上述したカッタを搭載したプリンタ1を得ることができる。
【0039】
次に、上述したプリンタ1に搭載したカッタにより、図1において矢印19で示す方向に送り出された印字後のシート材Sを切断する一連の動作を説明する。
シート材Sの切断は、手指により押し具7を押し込んで外力を付与することで行うことができる。具体的には、押し具7を図1において矢印17で示す方向に押し込むことによりダブルトーションバネ5の一方のアーム5aとコイル5cが切断方向に押されて揺動する。そして、ほぼ同時に、ダブルトーションバネ5の他方のアーム5bが押されて切断方向に揺動する。そしてさらに、アーム5bに連結する可動刃3がアーム5bに押されて矢印18で示す切断方向に直線的に移動される。
【0040】
このようにプリンタ1に搭載したカッタにおいて、押し具7で付与した外力によるダブルトーションバネ5の一方のアーム5aの揺動運動により他方のアーム5bを揺動運動することで可動刃3を切断方向に移動させることができる。
【0041】
この後、切断方向に移動し始めた可動刃3は、固定刃4の刃先4aに対して案内部3bが摺動しながら切断方向すなわち固定刃4への近接方向に移動され、さらに刃先3aが固定刃4の刃先4aと交差し圧接して噛み合いながら移動され、終には押し具7の押し込み限によって決定される切断方向の最前位置まで移動される。そして、このように可動刃3が切断方向に移動される過程において、可動刃3と固定刃4の互いの刃先3a、4a同士が噛み合ってシート材Sを切断することができる。
【0042】
シート材Sの切断後、押し具7から手指を離して外力の付与を止めることにより、ダブルトーションバネ5の弾性作用で生じていた反発力が作用することで押し具7が元の位置に押し戻される。そして、外力から解放されたダブルトーションバネ5の一方のアーム5aが揺動されて元の位置に戻る。そして、ほぼ同時に、ダブルトーションバネ5の他方のアーム5bが引き戻されて待機位置の方向に揺動する。そしてさらに、アーム5bに連結する可動刃3がアーム5bに引き戻されて固定刃4からの離間方向に直線的に移動され、終には可動刃3を待機位置に戻すことができる。
【0043】
このようにプリンタ1に搭載したカッタにおいて、押し具7による外力の付与を止めることにより、弾性部材であるダブルトーションバネ5に有する弾性作用による一方のアーム5aの揺動運動により他方のアーム5bを揺動運動することで可動刃3を離間移動させることができる。
【0044】
以上、本発明のシート材切断装置は、可動刃駆動機構に適用したスライダクランク機構におけるクランク部材の揺動運動により可動刃を切断方向に移動できるため、可動刃駆動機構が簡易化でき、これに係る収納空間が低減でき、さらには、簡易な操作で付与した小さな外力で可動刃の動作が可能となる。また、上述のクランク部材を揺動運動するだけの機構構成を採用したことにより、従来のクランクを360度回転させる機構構成よりも外力付与手段を含めた機械的構造の簡易化を図ることが可能となるため、シート材切断装置のコンパクト化にはより一層有効となる。加えて、クランク部材の揺動運動がなす揺動角は鋭角となるためクランク部材の揺動に要する操作量が少量化できる。よって、クランク部材を揺動するための外力付与手段として、駆動モータなどを使用することもできるが、手指に拠っても容易に行うことができる構成となる。
【0045】
よって、本発明は、シート材切断装置の構造簡易化、コンパクト化、軽量化に極めて有効な技術となり、これにより携帯機器や車載装置などへの搭載に好適となるほどのシート材切断装置を得ることができる。また、本発明のシート材切断装置を搭載することにより、上述したプリンタ1のようにコンパクト性に優れた本発明の携帯プリンタを得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1.プリンタ、2.可動カバー、3.可動刃、3a.刃先、3b.案内部、3c.係止部、4.固定刃、4a.刃先、5.ダブルトーションバネ、5a,5b.アーム、5c.コイル、6.基台、6a.係止部、7.押し具、8.案内部材、9.基台下板、10.ローラフレーム、11.ガイドネジ、12,13.ネジ、14.上ケース、15.下ケース、16.プラテンローラ、17〜19.矢印、S.ロール紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を切断する薄板状の可動刃と、該可動刃と噛み合う薄板状の固定刃と、前記可動刃を駆動する可動刃駆動機構とを有し、該可動刃駆動機構は、一端が支持され他端が揺動するクランク部材と、該クランク部材の他端側と前記可動刃とを連結する連接部材と、前記クランク部材に外力を付与する外力付与手段とを具備し、前記外力付与手段による外力で前記クランク部材を揺動運動することにより、前記連接部材を前記可動刃の切断方向に揺動運動することで前記可動刃を切断方向に移動させることを特徴とするシート材切断装置。
【請求項2】
前記クランク部材と前記連接部材は弾性部材を有して一体形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のシート材切断装置。
【請求項3】
前記弾性部材はねじりコイルばねでなり、該ねじりコイルばねの2つの腕が前記クランク部材および前記連接部材に対応することを特徴とする請求項2に記載のシート材切断装置。
【請求項4】
前記弾性部材の弾性作用により前記連接部材が揺動運動することで前記可動刃を前記固定刃から離間移動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシート材切断装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のシート材切断装置を搭載してなるコンパクト性に優れることを特徴とする携帯プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−228030(P2010−228030A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76979(P2009−76979)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【出願人】(305022598)株式会社日立メタルプレシジョン (69)
【Fターム(参考)】