説明

シート材打抜き機、打抜き機に用いられる刃当り調整シート

【課題】打抜き型の切り斑取り作業を行うことなく自動的に刃当りを調整することができる刃当り調整シートを提供する。
【解決手段】面板13の裏面側に刃当り調整シート17を貼着する。この刃当り調整シート17は上層シート19、中間シート21及び下層シート23が積層された三層構造であり、上層シート19と下層シート23は樹脂の一種であるポリエチレンテレフタレートで、中間シート21は合成ゴムの一種であるエチレン・プロピレンゴムで構成されている。打抜きの際に加圧にアンバランスが出たりデッドプレートの上面に錆びや埃Dが付着しても中間シート21の上下方向の弾性力により吸収され、刃当りはどの部位でも自動的にほぼ同じになる。中間シート21は上層シート19と下層シート23により左右方向の伸び縮みが確実に抑制され、シートを敷く作業中に邪魔にもならず、抜き作業中にゴムがヨレたりすることもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は板紙、段ボールシート等のシート材から包装箱等のブランクを打ち抜くためのシート材打抜き機、当該シート材打抜き機に用いられる刃当り調整シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
板紙、段ボールシート等のシート材を用いて例えば包装箱を作成するには、その包装箱の展開したものをシート材から打抜いて、この打抜かれた部材(一般にブランクといわれている。)を折り曲げる等して箱状に形成する。
シート材を打抜いてブランクを形成するには、例えば特許文献1に記載されたシート材打抜き機が用いられている。このシート材打抜き機に備えられた打抜き型は、シート材を切断する複数の打抜き刃を型基板に植設して構成されており、複数の打抜き刃はブランクの形状構成のために何箇所も交差している。
【0003】
このような打抜き型に対する受け側は平板によって構成されるから、打抜き刃の刃先が同一レベルに揃っている必要がある。しかし、打抜き刃の寸法を高精度に仕上げたとしても、打抜き刃にはどうしても僅かな不揃い箇所が生じることになり、特に打抜き刃の交差部分においてレベルを同一にすることは極めて困難である。
このため作業者(紙器などの製造業者)は、打抜き型を打抜き機の型装着部に装着してから、打抜き作業に先立って試験打ちして、切り斑取り作業を行っている。
【0004】
この切り斑取り作業について説明する。
試験打ち後にその打抜き型を型装着部から外す。そして、打抜き刃によるシート材の切り斑を確認して、打抜き型の裏面の切断がよくない打抜き刃に対応する箇所に粘着テープを貼り付ける。再度、打抜き型を打抜き機に装着して、切り斑を確認する。
上記テープ貼着部分が局部的に盛り上がるので、テープ貼着部分の打抜き刃が僅かながら押出されて、これにより切断がよくない箇所の刃当りが調整される。
上記作業を繰り返し行い、型全体の打抜き刃がシート材を確実に切断できること、即ち切り斑が無くなったことを確認した後に、打抜き作業を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−52129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、切り斑取り作業は相当な手間がかかり多くの時間を必要とするばかりか、熟練された作業者が必要となり、コストがアップするという問題がある。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、打抜き型の切り斑取り作業を行うことなく自動的に刃当りを調整することができ、利便性を有し作業効率の向上を図ることが可能となり、コストダウンを実現できるシート材打抜き機、シート材打抜き機に用いられる刃当り調整シートを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、上下方向へ駆動され打抜き刃を備える打抜き型と、前記打抜き刃に対向して備えられ前記打抜き刃によって打ち抜かれるシート材が載置される載置台とを有し、前記載置台は上面が硬質材から成る面板と、面板の下側に備えられる硬質材から成るデッドプレートとを有するシート材打抜き機において、前記面板の裏面側に弾性材から成る刃当り調整シートが貼着されていることを特徴とするシート材打抜き機である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載したシート材打抜き機において、弾性材から成る刃当り調整シートは、樹脂シートと、ゴムシートとが積層されて一体に構成されており、前記樹脂シートが面板側にあることを特徴とするシート材打抜き機である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載したシート材打抜き機において、弾性材から成る刃当り調整シートは、ゴムシートの上に樹脂シートがさらに積層されて三層構造で一体に構成されていることを特徴とするシート材打抜き機である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2または3に記載したシート材打抜き機において、刃当り調整シートを構成する樹脂シートはポリエチレンテレフタレートまたはポリプロピレンで形成されていることを特徴とするシート材打抜き機である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載したシート材打抜き機に用いられる刃当り調整シートである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシート材打抜き機、シート材打抜き機に用いられる刃当り調整シートによれば、打抜き型の切り斑取り作業を行うことなく自動的に刃当りを調整することができ、利便性を有し作業効率の向上を図ることが可能となり、コストダウンを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るシート材打抜き機の正面図である。
【図2】図1のシート材打抜き機に用いられる刃当り調整シートの斜視図である。
【図3】図2の刃当り調整シートのA−A断面図である。
【図4】シート材を打ち抜く様子を示す図である。
【図5】打ち抜いた後のシート材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係るシート材打抜き機1を図面にしたがって説明する。
符号3は打抜き型を示し、この打抜き型3は複数の打抜き刃5を備えている。これらの打抜き刃5はブランクB(図5参照)の形状に沿って配置されており、刃先は下方を向いている。また、打抜き型3には合成ゴムから成る押え部材7が設けられている。打抜き型3は装置本体の型装着部9に装着されており、この打抜き型3は上下方向へ駆動されるようになっている。
【0015】
符号11は載置台を示し、この載置台11は上記打抜き刃5に対向して備えられている。載置台11はステンレス等の硬質材から成る面板13と、この面板13の下側に備えられた鋼鉄等の硬質材から成るデットプレート15と、面板13とデットプレート15との間に介装された刃当り調整シート17とによって構成されている。
【0016】
刃当り調整シート17の詳細な構成について図2、図3にしたがって説明する。
刃当り調整シート17は上層シート19、中間シート21及び下層シート23が積層された三層構造となっている。
上層シート19と下層シート23は、樹脂の一種であるポリエチレンテレフタレートによって構成されており、厚さ寸法はそれぞれ0.1mmである。ポリエチレンテレフタレートの引張降伏応力は48〜73MPa、引張弾性率は2000〜4100MPaであり、剛性に優れることから、引っ張りには強い。
中間シート21は弾力性に優れる合成ゴムの一種であるエチレン・プロピレンゴムによって構成されており、厚さ寸法は0.5mmである。エチレン・プロピレンゴムは、伸びが80〜100%で、反発弾性や耐摩耗性に優れることから、衝撃吸収に適している。
【0017】
上層シート19と中間シート21、中間シート21と下層シート23は、それぞれ接着剤を介して固着されている。
そのため、上層シート19と下層シート23との間に中間シート21が挟まれて且つ接着されたことになるので、中間シート21を構成するゴムの上下方向の弾力性はそのまま保持される一方で、左右方向の伸び縮みは抑制される。
上記した構成の刃当り調整シート17が面板13に接着剤を介して固着されている。
【0018】
次に、シート材打抜き機1の動作について説明する。
図1に示すように載置台11にシート材Sを載置する。
打抜き型3が下方向へ駆動されて、図4に示すようにシート材Sは押え部材7によって押えられながら打抜き刃5によって打ち抜かれる。図5に示すようにシート材Sに切り込みKが形成されて、ブランクBが形成される。なお、ブランクBには、打抜き型3に備えられた図示しない罫押し刃(刃先が丸まっているもの)によって折り目Lが形成される。
【0019】
上記シート材Sが打ち抜かれる際には、打抜き刃5は面板13に向かって下降し、面板13を加圧するが、面板13の裏面側にはゴム製の中間シート21が一体に接着されているので、打抜き刃5に僅かな不揃い箇所が生じていたとしても打ち抜きの際の加圧のアンバランスは中間シート21の上下方向の弾性力により吸収され、刃当りはどの部位でも自動的にほぼ同じになる。また、ゴム製の中間シート21は樹脂製の上層シート19と下層シート23に挟まれているので、左右方向の伸び縮みが確実に抑制される。そのため、シートを敷く作業中に邪魔にもならず、抜き作業中にゴムがヨレたりすることもない。
【0020】
このように、従来のような切り斑を確認して粘着テープを貼り付ける等の相当な手間のかかる切り斑取り作業を別途行う必要がなく、自動的に刃当りを調整することができる。しかも、面板13の裏面側に刃当り調整シート17を貼着するだけなので、熟練された作業者を必要としない。従って、利便性を有し作業効率の向上を図ることが可能となり、製造のコストダウンを実現できる。
また、刃当り調整シート17は、上記の工夫した構造を有するので、結果として耐久性も飛躍的に向上する。
【0021】
なお、図4に示すようにデッドプレートの上面に錆びや埃Dが付着している場合であっても、中間シート21が弾性変形して凹凸を吸収するので、打抜き刃5の刃当りが悪くなってしまうのを防止することもできる。
【0022】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
上記実施の形態では、上層シート19と下層シート23をポリエチレンテレフタレートによって構成したが、上層シート19と下層シート23を、例えばポリプロピレンによって構成してもよい。
上層シート19、下層シート23、中間シート21の厚さ寸法は構成材料の特性により適宜設定することになり、上記した実施の形態の厚さ寸法に必ずしも、限定されないことは理解されたい。
【0023】
また、上記実施の形態では、三層構造になっているが、上層シート19と中間シート21からなる二層構造にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は包装箱等のブランクを打ち抜くためのシート材打抜き機、当該シート材打抜き機に用いられる刃当り調整シートの製造業に利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1…シート材打抜き機 3…打抜き型 5…打抜き刃
7…押え部材 9…型装着部 11…載置台
13…面板 15…デットプレート 17…刃当り調整シート
19…上層シート 21…中間シート 23…下層シート
B…ブランク S…シート材 K…切り込み
L…折り目 D…錆び、埃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向へ駆動され打抜き刃を備える打抜き型と、前記打抜き刃に対向して備えられ前記打抜き刃によって打ち抜かれるシート材が載置される載置台とを有し、前記載置台は上面が硬質材から成る面板と、面板の下側に備えられる硬質材から成るデッドプレートとを有するシート材打抜き機において、前記面板の裏面側に弾性材から成る刃当り調整シートが貼着されていることを特徴とするシート材打抜き機。
【請求項2】
請求項1に記載したシート材打抜き機において、弾性材から成る刃当り調整シートは、樹脂シートと、ゴムシートとが積層されて一体に構成されており、前記樹脂シートが面板側にあることを特徴とするシート材打抜き機。
【請求項3】
請求項2に記載したシート材打抜き機において、弾性材から成る刃当り調整シートは、ゴムシートの上に樹脂シートがさらに積層されて三層構造で一体に構成されていることを特徴とするシート材打抜き機。
【請求項4】
請求項2または3に記載したシート材打抜き機において、刃当り調整シートを構成する樹脂シートはポリエチレンテレフタレートまたはポリプロピレンで形成されていることを特徴とするシート材打抜き機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載したシート材打抜き機に用いられる刃当り調整シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−51078(P2012−51078A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196275(P2010−196275)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(503079181)株式会社ティーディーエス (2)
【Fターム(参考)】